未来編①
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イタリアに移動した直後、発作がぶり返して来た。
長距離だったから身体にも結構な負担が掛かったんだと思う。
持ってた最後の1本の神経麻痺剤を半分だけ投与して休んでたら、誰かの気配を感じた。
警戒してナイフを手に取ったけど、それはアロちゃんだったってワケ。
そしてあたしは今………
まさしくアロちゃんらしいアニマル匣を目の当たりにしてる。
ありえないこと
「すげぇ……あれが作戦隊長の匣兵器……その名の通りまさしく鮫!!」
「剣を抜くこともなく……」
「ったりめーだ、こんなぺーぺーのぺーに手こずってられるか。」
また変な日本語覚えてる……
可愛いなぁ、アロちゃん♪
そゆトコ変わってないのね。
「俺達の目的は6弔花級を討って白蘭を引きずり出すことだぁ。そろそろ無線を耳に付けろとボスに伝えろぉ!!嫌でも付けろとな。」
「はっ、了解しました!!」
敬礼する部下の人達は何故か冷や汗を流してる。
あ、ボスに物申すのは緊張するからね…
かと言ってアロちゃんにも逆らえない、と。
「う"お"ぉい!!」
「は、はい!!」
「肉は後で何とかしてやると言っとけぇ!!クソボスがぁ、っとな!!」
「(ぜってー言えねぇ!!)」
『アロちゃーん、それはいくら何でも無理じゃない?ボス、怒っちゃうよ。』
「うるせっ、いいんだぁ!」
「檸檬様……」
部下の人が目を潤ませてあたしを見る。
てゆーか…
『あの、その“檸檬様”っての…ちょっと……』
「…と、言いますと…?」
『呼び捨てでいいよ、あたしの方が年下だもん。』
どー見てもこの人たち、14歳以下じゃないし。
「し、しかし!ボス補佐の貴女を自分らが呼び捨てなど…無礼極まりないこと!」
『…………え?』
何かとんでもない単語が聞こえたような…
きょとんとするあたしに溜め息をついたアロちゃんが、部下達に言った。
「俺が説明しておく、早く行けぇカス共。」
「はいっ!失礼しまーす!」
『あ。(行っちゃった…)』
あたしの隣にシュタッと降り立つアロちゃん。
「いいかぁ檸檬、争奪戦でお前は雲の守護者だったろーがぁ。」
『うん。』
「本来モスカだったが、ぶっ壊れたからポジションが空いた。で、お前がそのまま引き継いだんだぁ。」
『なるほど!………って、あたしがボス補佐!?いいの!?だってあたし10代目直属もやってた、でしょ…?』
そんな掛けもちは出来るのかなーと思って聞くと、アロちゃんはあたしの頭に手を乗せた。
「檸檬だから、いーんだぁ。」
『何それ…』
グシャグシャ、
『ちょ、ちょっとアロちゃん!!あんまり髪の毛ボサボサにしないでーっ!てゆーか背ぇ縮む!』
「へっ、縮め縮めぇ!!」
心底楽しそうないじめっ子フェイスであたしの頭を押さえつけるアロちゃん。
最初は戸惑ったけど、だんだん対抗心が生まれてきて。
ぐいいーっ、
「う"お"ぉっ!何しやがる!!痛ぇじゃねーかぁ!!」
『伸びろ伸びろーっ!』
近くにあったアロちゃんの髪の毛を、ぐいぐい引っ張ってやった。
何とも地味で幼稚な喧嘩。
だけど、さっきまで少し沈んでた気分が、持ち直したように感じた。
しばらく睨みあったとこで、お互いの手を止めて休戦する。
「けっ、やっぱガキだなぁ、昔のお前は。」
『ガキ呼ばわり上等♪だってまだ未成年だし。』
にこりと笑ってみせると、アロちゃんはふいっと目を逸らした。
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-------------
「よーし、ここらで待ち伏せるか。」
南のある地点で、ベルとフランは木の枝の上に着地した。
「ベルセンパーイ、」
「あ?」
「背中に刺さった趣味の悪いナイフ、抜いてもいいですかー?いかにも“オリジナルナイフだぜー”って主張するこの形状が、相当恥ずかしいんで。」
ベルがしゃがんだ少し前方の枝には、背中にたくさんのナイフをくっつけているフランが。
「………綺麗に磨いて揃えて返せよ。」
「それは嫌ですー、こんなものこんなもの…」
抜いたナイフを二つに折って、そのまま地面に捨てるフラン。
当然、それを見たベルは苛立つ。
「てんめっ、」
中指のリングに赤い嵐の炎を灯した。
「あ~、怒ったんですかー?折らずに捨てますから。」
「捨てんなっ!」
カチッ、ドシュッ、
開けられた匣から出て来たのは……
尾に赤い炎を纏った、嵐ミンク(ヴィゾーネ・テンペスタ)。
「それ以上捨ててみ、お前燃やす。」
「冗談…冗談ですよー。」
と言いながら、フランが手をパッと開けば持っていたナイフは落ちていく。
「あ…」
その行為が捨てたこととイコールになると、まるで今気づいたかのような反応。
「カチーン…」
「(ゴクリ)」
「死ねよ。」
ベルの合図と同時に、ミンクは真っ直ぐ前に飛び出す。
途中、木の幹に足をついて踏み台にし、更に加速。
そのままフランに向かっていくミンク。
「しっしっ、来んな。わっ!」
触れる直前に頭を下げて、避けたフラン。
しかしミンクは構わず進み、フランの後方に居た敵2人にその体を当てた。
「がっ!」
「げぇっ!」
ミンクに当たった2人は、赤い炎に包まれ燃えていく。
その光景に、フランは目を丸くした。
「おお、ベルセンパイ、敵がいるのに気づいてたんですねー。」
「ったりめーだ、数は30ってトコか。」
「ごくごく希にですが、本当に天才かもって思ったり、思わなかったり。」
「ししし、天才に決まってんじゃん。だって俺……王子だもん♪」
2人の前には、いつの間にか敵の部隊が集結していた。
そして、畳みかけるように攻めて来る。
「かかれ!」
しかし敵の襲来を無視して、フランはベルに言う。
「相変わらず、意味分からないんですけどー。そんなだから檸檬さんに逃げられるんですよー。」
「逃げられてねーし!お前そこで首洗って待ってろ。後で燃やす。」
フランにイライラを募らせながら、ベルはミンクに指示した。
「さぁやっちゃっていいぜ、ミンク。」
「キィィ…」
次の瞬間、ミンクは再び前方に飛び出し、敵の両サイドを嵐の炎で囲む。
ミルフィオーレが皆、炎に触れないようにと警戒したが、それは無駄なこと。
隊員達は次々とミンクに体をこすりつけられていく。
そしてそのまま、燃え上がっていった。
「しししっ、紅蓮の炎(フィアンマ・スカルラッタ)!!!」
「ぐわぁあ!!」
辺り一面赤い炎。
と、フランがごそっとメモ帳を取り出し、読み始める。
「嵐ミンクに体毛を擦りつけられた物体は、摩擦によって嵐属性の炎を発火し、分解しつくされるのだ………命令通りに解説しましたー。」
「ごくろ♪そーゆーのあった方が感じ出んだろ?しっかし、よく燃えてんなー。」
「環境破壊とか考えたことありますー?」
未だ衰える気配の無い炎を見つめる2人。
しかし、何処からか水のようなものが降り注ぎ、瞬く間に炎を消した。
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『ねぇアロちゃん、ここってヴァリアーの本陣じゃないよね?』
「あぁ"、ここは抜け道だぁ。今俺達が本拠にしてる城からは東と南に抜け道がある。で、こっちは東地点だぁ。」
『んじゃ、西に行けば本拠?』
「そぉだぁ………檸檬?」
『大丈夫…何でもな……』
ガクッ、
「う"お"ぉいっ!!」
笑顔を見せていた檸檬だったが、台詞の途中で膝を折る。
咄嗟に支えたスクアーロは、その顔色が悪くなっていることに気付いた。
「檸檬、お前…」
『あはは……ヤバいなぁ、充電切れそう…』
かろうじてクスリでリバウンドは軽減させているものの、それは“治している”ワケではない。
むしろ、神経を弱らせて身体の疲れを“感じないようにしている”だけなのだ。
「………何で来やがった…」
『え…?』
「こんな状態で!何でこっちにわざわざ顔出したかって聞いてんだぁ!!」
『アロちゃん…鼓膜破れそう、だよ……』
「いーから答えろぉ!!」
血走った眼で檸檬を見つめるスクアーロ。
溜め息をついて、檸檬はワケを話す。
何としてでも、蜜柑を日本から遠ざけたかった事。
その為には、自分が日本を離れるしかなかった事。
イタリアを選んだのは、仲間が残っている場所だからという事。
『……納得、してくれた?』
「………こんのアホがぁ…そのうち死ぬぞぉ。」
『その時はその時よ…………あ。』
「あぁ"?」
スクアーロの肩を借りていた檸檬は何かに気づき、注射器に半分だけ残っていたクスリを全て投与する。
『分かってる、よね?』
「あぁ…お出ましだなぁ。」
『もーっ、アロちゃんがさっき怒鳴るからだよー。』
「うるせぇ!!」
言い合いをするスクアーロと檸檬の前に、ミルフィオーレの軍勢。
「いたぞ!ヴァリアーだ!!」
「アレは……ダーク!?ダークが何故ここに!!」
「構わん!纏めてやれ!!」
『随分舐めたこと言ってくれるね。』
「檸檬、いけんのかぁ?」
『数分はもつから大丈夫。』
真っ直ぐ敵を見据える檸檬を、スクアーロは横目で見てから地を蹴った。
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日本、メローネ基地。
入江が用意したベッドに、皆で怪我人を乗せていく。
ふと、髑髏に抱えられているランボを見て、入江が反応した。
「ランボさん!!だ、大丈夫なのかい…?」
「この子、寝てる……」
すると今度は獄寺が入江に、
「おい、一発殴らせろ。ワケありだったとしても、腹の虫が収まらねぇ!」
「い"っ!」
そしてそれに便乗するかのように…
「僕が先だよ。檸檬を行方不明にさせた罰だ。」
「ちょ、ちょっと君達…!」
「まぁ待て、お前達。入江にはまだ聞かなくちゃいけねーことがあるだろ?」
間に入ったリボーンが、仲裁する。
「それに雲雀、檸檬に止められただろ?入江をぼこるのは無しだ。」
リボーンの言葉に雲雀は眉を寄せ、ふっと背を向けた。
「で、白蘭の能力ってのは何なんだ?」
「………うん、一言で説明するのは難しいが、能力自体は極めて限定的な状況でしか使えないものなんだ。」
だがこの時代に起きているあり得ないことの多くが白蘭の能力に起因している……
そう、入江は言った。
「(あり得ないこと…?)」
「僕は…白蘭サンが蜜柑さんを部下に引き入れられたのも、その能力があったからだと思ってる。」
「え…!?」
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ミンクの炎を消したソレが、ベルとフランの前に姿を現した。
「雨属性の…ペリカン…?」
「お久しぶりです、ベル様。」
「ん?」
「私のことを、覚えてらっしゃいますか?」
ペリカンと共に現れた体格のいい執事の言葉にベルはしばし考えるが、答えは出ない。
「…誰だっけ?」
「ベル様が幼少の頃に、貴方の家で執事をさせて頂いた者です。」
「そーいや居たかもなー。」
「オルゲルトです。」
「んーなのいちいち覚えてねーって。」
顔ですら見覚えがあるかも知れない程度、まして名前など出て来ない。
そう思ったベルは、ふと問いかけた。
「もしかして、顔見知りってことで命乞いか?無理だぜ。俺、執事とかいらねーし。」
「滅相もございません。私はいずれ王になる王子にしか、仕えませんので。」
「……?それって俺じゃん。」
「そりゃ違うだろーよ、ベル。」
オルゲルトのいる更に向こう、煙の中からもう一人の声。
その姿が見えて来るにつれ、ベルは徐々にぽかんとし始め、フランもキョロキョロする。
「………ありっ?」
「え?」
「王になんのはお前が殺したハズの双子の兄貴………ジル様だ。」
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東地点。
「う"お"ぉい檸檬、」
『何っ!?』
それぞれの武器を振るいながら、会話をするスクアーロと檸檬。
「お前、一旦城に行けぇ。」
『はぁ!?何言ってんのよ、こんな大群の中にアロちゃん置いて行くワケ…』
「城にルッスーリアがいる!全回復してから戦線参加しろぉ!!」
『ルッスーリア……晴の活性で、ってこと!?でも…』
「早く行けぇ!ココでお前が動けなくなっちまったら、それこそ終わりだろーがぁ!!」
『アロちゃん……』
そこで2人は中央に追い込まれ、背中合わせ状態になる。
『分かった、ちょっと回復して来る。すぐ戻るからねっ!』
「こんな奴ら、俺一人で充分だぁ。」
スクアーロの返答にクスッと笑ってから、檸檬は言った。
『………2秒、ちょうだい。』
「任せろぉ。」
「かかれぇ!!」
ミルフィオーレ勢が一斉に突撃するのと同時に、檸檬は目を閉じた。
長距離だったから身体にも結構な負担が掛かったんだと思う。
持ってた最後の1本の神経麻痺剤を半分だけ投与して休んでたら、誰かの気配を感じた。
警戒してナイフを手に取ったけど、それはアロちゃんだったってワケ。
そしてあたしは今………
まさしくアロちゃんらしいアニマル匣を目の当たりにしてる。
ありえないこと
「すげぇ……あれが作戦隊長の匣兵器……その名の通りまさしく鮫!!」
「剣を抜くこともなく……」
「ったりめーだ、こんなぺーぺーのぺーに手こずってられるか。」
また変な日本語覚えてる……
可愛いなぁ、アロちゃん♪
そゆトコ変わってないのね。
「俺達の目的は6弔花級を討って白蘭を引きずり出すことだぁ。そろそろ無線を耳に付けろとボスに伝えろぉ!!嫌でも付けろとな。」
「はっ、了解しました!!」
敬礼する部下の人達は何故か冷や汗を流してる。
あ、ボスに物申すのは緊張するからね…
かと言ってアロちゃんにも逆らえない、と。
「う"お"ぉい!!」
「は、はい!!」
「肉は後で何とかしてやると言っとけぇ!!クソボスがぁ、っとな!!」
「(ぜってー言えねぇ!!)」
『アロちゃーん、それはいくら何でも無理じゃない?ボス、怒っちゃうよ。』
「うるせっ、いいんだぁ!」
「檸檬様……」
部下の人が目を潤ませてあたしを見る。
てゆーか…
『あの、その“檸檬様”っての…ちょっと……』
「…と、言いますと…?」
『呼び捨てでいいよ、あたしの方が年下だもん。』
どー見てもこの人たち、14歳以下じゃないし。
「し、しかし!ボス補佐の貴女を自分らが呼び捨てなど…無礼極まりないこと!」
『…………え?』
何かとんでもない単語が聞こえたような…
きょとんとするあたしに溜め息をついたアロちゃんが、部下達に言った。
「俺が説明しておく、早く行けぇカス共。」
「はいっ!失礼しまーす!」
『あ。(行っちゃった…)』
あたしの隣にシュタッと降り立つアロちゃん。
「いいかぁ檸檬、争奪戦でお前は雲の守護者だったろーがぁ。」
『うん。』
「本来モスカだったが、ぶっ壊れたからポジションが空いた。で、お前がそのまま引き継いだんだぁ。」
『なるほど!………って、あたしがボス補佐!?いいの!?だってあたし10代目直属もやってた、でしょ…?』
そんな掛けもちは出来るのかなーと思って聞くと、アロちゃんはあたしの頭に手を乗せた。
「檸檬だから、いーんだぁ。」
『何それ…』
グシャグシャ、
『ちょ、ちょっとアロちゃん!!あんまり髪の毛ボサボサにしないでーっ!てゆーか背ぇ縮む!』
「へっ、縮め縮めぇ!!」
心底楽しそうないじめっ子フェイスであたしの頭を押さえつけるアロちゃん。
最初は戸惑ったけど、だんだん対抗心が生まれてきて。
ぐいいーっ、
「う"お"ぉっ!何しやがる!!痛ぇじゃねーかぁ!!」
『伸びろ伸びろーっ!』
近くにあったアロちゃんの髪の毛を、ぐいぐい引っ張ってやった。
何とも地味で幼稚な喧嘩。
だけど、さっきまで少し沈んでた気分が、持ち直したように感じた。
しばらく睨みあったとこで、お互いの手を止めて休戦する。
「けっ、やっぱガキだなぁ、昔のお前は。」
『ガキ呼ばわり上等♪だってまだ未成年だし。』
にこりと笑ってみせると、アロちゃんはふいっと目を逸らした。
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「よーし、ここらで待ち伏せるか。」
南のある地点で、ベルとフランは木の枝の上に着地した。
「ベルセンパーイ、」
「あ?」
「背中に刺さった趣味の悪いナイフ、抜いてもいいですかー?いかにも“オリジナルナイフだぜー”って主張するこの形状が、相当恥ずかしいんで。」
ベルがしゃがんだ少し前方の枝には、背中にたくさんのナイフをくっつけているフランが。
「………綺麗に磨いて揃えて返せよ。」
「それは嫌ですー、こんなものこんなもの…」
抜いたナイフを二つに折って、そのまま地面に捨てるフラン。
当然、それを見たベルは苛立つ。
「てんめっ、」
中指のリングに赤い嵐の炎を灯した。
「あ~、怒ったんですかー?折らずに捨てますから。」
「捨てんなっ!」
カチッ、ドシュッ、
開けられた匣から出て来たのは……
尾に赤い炎を纏った、嵐ミンク(ヴィゾーネ・テンペスタ)。
「それ以上捨ててみ、お前燃やす。」
「冗談…冗談ですよー。」
と言いながら、フランが手をパッと開けば持っていたナイフは落ちていく。
「あ…」
その行為が捨てたこととイコールになると、まるで今気づいたかのような反応。
「カチーン…」
「(ゴクリ)」
「死ねよ。」
ベルの合図と同時に、ミンクは真っ直ぐ前に飛び出す。
途中、木の幹に足をついて踏み台にし、更に加速。
そのままフランに向かっていくミンク。
「しっしっ、来んな。わっ!」
触れる直前に頭を下げて、避けたフラン。
しかしミンクは構わず進み、フランの後方に居た敵2人にその体を当てた。
「がっ!」
「げぇっ!」
ミンクに当たった2人は、赤い炎に包まれ燃えていく。
その光景に、フランは目を丸くした。
「おお、ベルセンパイ、敵がいるのに気づいてたんですねー。」
「ったりめーだ、数は30ってトコか。」
「ごくごく希にですが、本当に天才かもって思ったり、思わなかったり。」
「ししし、天才に決まってんじゃん。だって俺……王子だもん♪」
2人の前には、いつの間にか敵の部隊が集結していた。
そして、畳みかけるように攻めて来る。
「かかれ!」
しかし敵の襲来を無視して、フランはベルに言う。
「相変わらず、意味分からないんですけどー。そんなだから檸檬さんに逃げられるんですよー。」
「逃げられてねーし!お前そこで首洗って待ってろ。後で燃やす。」
フランにイライラを募らせながら、ベルはミンクに指示した。
「さぁやっちゃっていいぜ、ミンク。」
「キィィ…」
次の瞬間、ミンクは再び前方に飛び出し、敵の両サイドを嵐の炎で囲む。
ミルフィオーレが皆、炎に触れないようにと警戒したが、それは無駄なこと。
隊員達は次々とミンクに体をこすりつけられていく。
そしてそのまま、燃え上がっていった。
「しししっ、紅蓮の炎(フィアンマ・スカルラッタ)!!!」
「ぐわぁあ!!」
辺り一面赤い炎。
と、フランがごそっとメモ帳を取り出し、読み始める。
「嵐ミンクに体毛を擦りつけられた物体は、摩擦によって嵐属性の炎を発火し、分解しつくされるのだ………命令通りに解説しましたー。」
「ごくろ♪そーゆーのあった方が感じ出んだろ?しっかし、よく燃えてんなー。」
「環境破壊とか考えたことありますー?」
未だ衰える気配の無い炎を見つめる2人。
しかし、何処からか水のようなものが降り注ぎ、瞬く間に炎を消した。
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『ねぇアロちゃん、ここってヴァリアーの本陣じゃないよね?』
「あぁ"、ここは抜け道だぁ。今俺達が本拠にしてる城からは東と南に抜け道がある。で、こっちは東地点だぁ。」
『んじゃ、西に行けば本拠?』
「そぉだぁ………檸檬?」
『大丈夫…何でもな……』
ガクッ、
「う"お"ぉいっ!!」
笑顔を見せていた檸檬だったが、台詞の途中で膝を折る。
咄嗟に支えたスクアーロは、その顔色が悪くなっていることに気付いた。
「檸檬、お前…」
『あはは……ヤバいなぁ、充電切れそう…』
かろうじてクスリでリバウンドは軽減させているものの、それは“治している”ワケではない。
むしろ、神経を弱らせて身体の疲れを“感じないようにしている”だけなのだ。
「………何で来やがった…」
『え…?』
「こんな状態で!何でこっちにわざわざ顔出したかって聞いてんだぁ!!」
『アロちゃん…鼓膜破れそう、だよ……』
「いーから答えろぉ!!」
血走った眼で檸檬を見つめるスクアーロ。
溜め息をついて、檸檬はワケを話す。
何としてでも、蜜柑を日本から遠ざけたかった事。
その為には、自分が日本を離れるしかなかった事。
イタリアを選んだのは、仲間が残っている場所だからという事。
『……納得、してくれた?』
「………こんのアホがぁ…そのうち死ぬぞぉ。」
『その時はその時よ…………あ。』
「あぁ"?」
スクアーロの肩を借りていた檸檬は何かに気づき、注射器に半分だけ残っていたクスリを全て投与する。
『分かってる、よね?』
「あぁ…お出ましだなぁ。」
『もーっ、アロちゃんがさっき怒鳴るからだよー。』
「うるせぇ!!」
言い合いをするスクアーロと檸檬の前に、ミルフィオーレの軍勢。
「いたぞ!ヴァリアーだ!!」
「アレは……ダーク!?ダークが何故ここに!!」
「構わん!纏めてやれ!!」
『随分舐めたこと言ってくれるね。』
「檸檬、いけんのかぁ?」
『数分はもつから大丈夫。』
真っ直ぐ敵を見据える檸檬を、スクアーロは横目で見てから地を蹴った。
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日本、メローネ基地。
入江が用意したベッドに、皆で怪我人を乗せていく。
ふと、髑髏に抱えられているランボを見て、入江が反応した。
「ランボさん!!だ、大丈夫なのかい…?」
「この子、寝てる……」
すると今度は獄寺が入江に、
「おい、一発殴らせろ。ワケありだったとしても、腹の虫が収まらねぇ!」
「い"っ!」
そしてそれに便乗するかのように…
「僕が先だよ。檸檬を行方不明にさせた罰だ。」
「ちょ、ちょっと君達…!」
「まぁ待て、お前達。入江にはまだ聞かなくちゃいけねーことがあるだろ?」
間に入ったリボーンが、仲裁する。
「それに雲雀、檸檬に止められただろ?入江をぼこるのは無しだ。」
リボーンの言葉に雲雀は眉を寄せ、ふっと背を向けた。
「で、白蘭の能力ってのは何なんだ?」
「………うん、一言で説明するのは難しいが、能力自体は極めて限定的な状況でしか使えないものなんだ。」
だがこの時代に起きているあり得ないことの多くが白蘭の能力に起因している……
そう、入江は言った。
「(あり得ないこと…?)」
「僕は…白蘭サンが蜜柑さんを部下に引き入れられたのも、その能力があったからだと思ってる。」
「え…!?」
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ミンクの炎を消したソレが、ベルとフランの前に姿を現した。
「雨属性の…ペリカン…?」
「お久しぶりです、ベル様。」
「ん?」
「私のことを、覚えてらっしゃいますか?」
ペリカンと共に現れた体格のいい執事の言葉にベルはしばし考えるが、答えは出ない。
「…誰だっけ?」
「ベル様が幼少の頃に、貴方の家で執事をさせて頂いた者です。」
「そーいや居たかもなー。」
「オルゲルトです。」
「んーなのいちいち覚えてねーって。」
顔ですら見覚えがあるかも知れない程度、まして名前など出て来ない。
そう思ったベルは、ふと問いかけた。
「もしかして、顔見知りってことで命乞いか?無理だぜ。俺、執事とかいらねーし。」
「滅相もございません。私はいずれ王になる王子にしか、仕えませんので。」
「……?それって俺じゃん。」
「そりゃ違うだろーよ、ベル。」
オルゲルトのいる更に向こう、煙の中からもう一人の声。
その姿が見えて来るにつれ、ベルは徐々にぽかんとし始め、フランもキョロキョロする。
「………ありっ?」
「え?」
「王になんのはお前が殺したハズの双子の兄貴………ジル様だ。」
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東地点。
「う"お"ぉい檸檬、」
『何っ!?』
それぞれの武器を振るいながら、会話をするスクアーロと檸檬。
「お前、一旦城に行けぇ。」
『はぁ!?何言ってんのよ、こんな大群の中にアロちゃん置いて行くワケ…』
「城にルッスーリアがいる!全回復してから戦線参加しろぉ!!」
『ルッスーリア……晴の活性で、ってこと!?でも…』
「早く行けぇ!ココでお前が動けなくなっちまったら、それこそ終わりだろーがぁ!!」
『アロちゃん……』
そこで2人は中央に追い込まれ、背中合わせ状態になる。
『分かった、ちょっと回復して来る。すぐ戻るからねっ!』
「こんな奴ら、俺一人で充分だぁ。」
スクアーロの返答にクスッと笑ってから、檸檬は言った。
『………2秒、ちょうだい。』
「任せろぉ。」
「かかれぇ!!」
ミルフィオーレ勢が一斉に突撃するのと同時に、檸檬は目を閉じた。