未来編①
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現れた敵の剣を、グローブで防ぐ。
と、何か危険なモノが飛んで来るのを感じた。
その方向に炎の壁を作れば、何発か爆発が起こる。
「(これは……!?)」
同じものがまた来ると察した俺は、今度は飛び上って避けた。
その爆発物は、俺に剣を向けていた男に当たる。
しかし……
ヤツは本体じゃなかったらしい、何の抵抗も無く燃えていった。
沢田綱吉VS.幻騎士
「よく見破ったと言いたいが、」
「!!」
俺の背後に、いつの間にか居た男。
それはさっき燃えたヤツの本体なのだとすぐに分かった。
「相手が超直感を持つボンゴレである以上、驚きはしない。」
途端に、周囲の景色が変化し始める。
幻覚のコーティーングだろうか。
辺りと見回す俺の目に、さっき攻撃してきた蜜柑さんの姿が映った。
立ち止ったまま俺達を見上げてるあたり、もう攻撃はしないようだ。
「ココは通行止めだ。研究所には指一本触れることも叶わぬ。」
「幻覚を使うみてーだな。」
「……あ………」
ホログラムのリボーンと一緒にいたスパナが、俺に叫んだ。
「ボンゴレ!!そいつが6弔花の幻騎士だ!」
幻騎士…?
それって、草壁さんが言ってた…
山本や雲雀さんが戦ってるとかいう……
「な…何故ココに…?皆と戦っている相手のハズ………」
「おめでたい人ね。」
下から聞こえた呟き。
そうだ、そうだよ…
蜜柑さんがいるってことは、檸檬は…!?
「貴様の守護者なら…なかなか手こずったが今頃は、藻屑と化しているだろう。」
嘘だ、嘘だ嘘だ、
皆で帰って来るって決めたんだ。
入江正一に辿りついて、過去に帰るって決めたんだ。
なのに…!
「何をした!!」
たった1人に、皆が負けたっていうのか!?
加速して幻騎士に拳をぶつけようとするツナだが、用意された囮に当たるだけ。
その戦闘を見ていたスパナが、ふと横に視線を移した。
「蜜柑、また逢えたな。」
「本格的に寝返ったみたいね。」
同じくツナと幻騎士の戦闘を観戦している蜜柑に、今度はリボーンが話しかける。
「おい蜜柑、檸檬はどーしたんだ?」
「…生死・行方共に不明。雲の守護者の匣が暴走して、分断された。」
「で、ツナの迎撃を優先させたのか。」
「そうよ。」
淡々と答える蜜柑の視線は、戦闘に向けられたまま。
「何故、彼は来たのかしらね。」
「ん?」
「研究所に近付けば近付くほど、彼の生存可能性は低下していく……そんなこと、分かっていたでしょう?」
「あぁ、そーだな。」
幻騎士の圧倒的な力に、ツナは翻弄されるのみ。
勝敗の行方は既に明白だった。
「貴方達がボンゴレ10代目にどれほどの期待と希望を抱いているかは知らないけど、全ては無駄よ。」
「おめーも参加すんのか?」
「私が手を出すまでも無いわ。だって…」
ツナの拳を全て受け、また流し、幻覚を使って回り込み、
その背に刃を立てる。
「幻騎士は、強い。」
ツナの悲痛な叫びが響く。
そのまま宙返りをした幻騎士は、踵でツナを地に落とす。
「ボンゴレ!」
「ぐ…ああ……」
「確かに、奴はハンパねーな。」
リボーンが言う。
「俺の見る限り、10年後の雲雀と同じレベルの体術だ。今のツナじゃ歯が立たねぇ…」
「そ、そんな…」
倒れたままのツナを不安げに見るスパナ。
蜜柑は、まるでそれが当たり前の光景であるかのように、無機質な瞳を向けていた。
---
-------
-------------
『{しばらくぶりね、檸檬…}』
目の前に現れたこの人は、
この時代のあたし…
『な、何でココに…!?』
『{分からない?ココは……夢の中よ。}』
ゆ、夢…?
『{昔から変わらないわね……怖くなると、目を閉じてしまう…}』
『ココが夢なら…あたしは……』
『{目覚められないのは、心の内で恐怖しているから。}』
あたしの目の前で、少し背の高いあたしが言う。
その瞳はやっぱり何処か青暗くて、見てると胸が苦しくなる。
『{ねぇ檸檬、貴女は……今まで信じて来た仲間を、疑うの?}』
『えっ?』
『{皆が貴女を仲間として受け入れたから、貴女は弱くなったの?}』
『そんな事…!』
言葉は、途中で詰まった。
あたしはさっき、そう考えてたんだ。
皆のあったかさがあたしを弱くした…
そう、思い込んで塞ぎ込んだんだ。
『{檸檬にとって、皆はどんな存在?}』
あったかくて、
優しくて、
だからこそ、護りたい。
過去に帰る手伝いも、出来ることは全部やりたい。
当たり前のように一緒にいてくれる、
無くなったら生きていけない、
側にいてくれるから強くなれる、
一番近くで弱さを許してくれる、
空気みたいな、
水みたいな、
『必要な、人達……』
すうっと出て来た答えに、目の前に立つ檸檬は柔らかく微笑んだ。
『{なら檸檬は、皆にとってどんな存在でありたいの?}』
『あたし、は……』
ずっとずっと、独りだった。
独りぼっちで、泣いていた。
泣くのが嫌で、心を閉ざした。
だけど皆は、恭弥は……
泣くことを、許してくれた。
泣いてもいいよって、言ってくれた。
だから、あたしも------
『……いつか、』
何年後でも、何十年後でもいいから、
『誰かから、必要とされたいな……』
皆が「泣いてもいいよ」って言ってくれたみたいに、
あたしも誰かの「泣き場所」になれるといいな。
『{そうね……あたしも、そう在りたい…}』
『檸檬…?』
ほんの少し目線を落として、目の前の自分はまた青暗い空気をまとった。
『{だから、その日まで……}』
『………うん、分かった。』
今はまだ、必要とされてるかどうか分からない。
だけど、望むのは自由だから。
あたしが皆を信じてるように、
皆もあたしを信じてくれれば…って。
だから、立ちあがらなくちゃ。
目を開けて、向き合わなくちゃ。
『{そう……たとえどんなに自分を卑下しようとも…仲間だけは、疑わないで………}』
自分で自分を勝手に“見捨てられる存在”にするのは、
もう終わりにするよ。
信じてる。
だから、信じて。
抱え込まないで頼るから、
どうか、あたしにも苦しみを分けて。
『{目を開けて、良く見て……目の前にある大切な……モノと、人と、場所……}』
『あっ、檸檬っ…』
薄れゆく気配に、引きとめは無駄だと悟った。
だんだんおぼろげになった檸檬の姿は、白い光の粒になって、くしゅっと消えてしまった。
最後に優しく届いた言葉は……
『{もうすぐ……会える、から…}』
『檸檬っ…!』
辺りはまた、暗闇のみになった。
けれどあたしは、自分のすべきことが分かってた。
もう、迷わない。
迷わずに、夢から目覚めよう……!
---
------
---------------
極端な力量差のある2人の戦いは、モニターを通じて入江の目にも入っていた。
「まったく幻騎士と言うのは、恐ろしい男だな………」
マーレリングとその体技だけでも圧倒できるツナとの戦いに、彼は更に強力な兵器の使用許可を求めて来た。
霧属性最高ランク…骨残像(オッサ・インプレッショーネ)のヘルリング
ケーニッヒの残した霧属性最強の剣…幻剣(スペットロ・スパダ)
同じくケーニッヒ策と言われる甲冑(アルマトゥーラ)シリーズより…霧の2番(ネッビア・ヌーメロ・ドゥエ)
「どれも恐ろしく強力だが取り扱いが難しい為に白蘭サンの許可なしには使用出来ない。非常事態、特別強襲用の…いわば、」
大戦装備!!!
(アルマメント・ダ・グエーラ)
「まるで蟻を倒す為に戦車を引っ張って来るようなものだ……これが奴の任務に対する執念…」
----
-------
「更にゴツくなりやがったな。」
「…まるで騎士だ……あんな兵器、初めて見る…」
開匣された匣兵器により、その身を鎧に包む幻騎士。
周りには藍の炎が漂う。
「やべぇな、ただでさえ雲雀レベルだぞ。」
「ボンゴレの迎撃及び抹殺が、白蘭の命令だからよ。」
蜜柑の言葉に疑問符を浮かべるスパナとリボーン。
「そう…白蘭様は貴様を全力で倒せと仰せられた。白蘭様の言葉は神の啓示、覆ることはない。」
「覆ってはいけないもの、それが……幻騎士にとっての白蘭の命令。」
「無駄な抵抗はやめ、一息に殺されるがいい。俺との実力差は骨身にしみて分かったハズだ。」
幻騎士の、言う通り。
なのにボンゴレはまだ、抗おうとする。
私には分からない。
考えてみれば、生存の可能性を下げるかのように研究所へと向かって来た。
ココで最大の壁にぶつかると、分かっていたハズなのに。
私には分からない。
何故彼が今、拳を握り直しているのか。
この期に及んでまだ、抗おうとするのか。
「…同じ事を貴様の守護者共にも言ってきたが、どいつも力の差を分かりつつ抵抗し、無残に散った。」
あの出血では、もう全力は出せないでしょうに。
それを頭で理解してなお、戦う理由は一体何?
「貴様はそれほど愚かでもなかろう、ボンゴレX世。」
「……お前の強さは、良く分かった。…だが、」
腕の力で起き上がり、膝立ちするボンゴレ。
「分かっていても、俺は闘る!!」
ボンゴレには、理論的な考えを持つ人間がいないのかしら。
気力や信念なんて不確かなもので掴みとれるほど、勝利は安いものじゃない。
戦闘力や情報量……目に見えるものと数値化できるものが、全てなのに。
「(この目……!)」
幻騎士の殺意が一瞬だけ乱れたような気配がしたけれど、
この力量差の前では何の支障も来たさない。
「………蜜柑、」
「何?」
呼びかけられて目をやると、アルコバレーノは真っ直ぐボンゴレを見ていた。
その雰囲気からも伝わる、感情の一種。
私が最も認めたくない、“信頼”そのもの。
「おめーは手ぇ出さねんだよな?」
「さっきも言ったけど、そんな必要はないわ。」
「なら、大丈夫だな。」
分からない。
このアルコバレーノが何を考えているのか。
何をもって、そんな発言をしたのか。
直後、ボンゴレが小さく掛け声を口にした。
「オペレーション………X、」
と、何か危険なモノが飛んで来るのを感じた。
その方向に炎の壁を作れば、何発か爆発が起こる。
「(これは……!?)」
同じものがまた来ると察した俺は、今度は飛び上って避けた。
その爆発物は、俺に剣を向けていた男に当たる。
しかし……
ヤツは本体じゃなかったらしい、何の抵抗も無く燃えていった。
沢田綱吉VS.幻騎士
「よく見破ったと言いたいが、」
「!!」
俺の背後に、いつの間にか居た男。
それはさっき燃えたヤツの本体なのだとすぐに分かった。
「相手が超直感を持つボンゴレである以上、驚きはしない。」
途端に、周囲の景色が変化し始める。
幻覚のコーティーングだろうか。
辺りと見回す俺の目に、さっき攻撃してきた蜜柑さんの姿が映った。
立ち止ったまま俺達を見上げてるあたり、もう攻撃はしないようだ。
「ココは通行止めだ。研究所には指一本触れることも叶わぬ。」
「幻覚を使うみてーだな。」
「……あ………」
ホログラムのリボーンと一緒にいたスパナが、俺に叫んだ。
「ボンゴレ!!そいつが6弔花の幻騎士だ!」
幻騎士…?
それって、草壁さんが言ってた…
山本や雲雀さんが戦ってるとかいう……
「な…何故ココに…?皆と戦っている相手のハズ………」
「おめでたい人ね。」
下から聞こえた呟き。
そうだ、そうだよ…
蜜柑さんがいるってことは、檸檬は…!?
「貴様の守護者なら…なかなか手こずったが今頃は、藻屑と化しているだろう。」
嘘だ、嘘だ嘘だ、
皆で帰って来るって決めたんだ。
入江正一に辿りついて、過去に帰るって決めたんだ。
なのに…!
「何をした!!」
たった1人に、皆が負けたっていうのか!?
加速して幻騎士に拳をぶつけようとするツナだが、用意された囮に当たるだけ。
その戦闘を見ていたスパナが、ふと横に視線を移した。
「蜜柑、また逢えたな。」
「本格的に寝返ったみたいね。」
同じくツナと幻騎士の戦闘を観戦している蜜柑に、今度はリボーンが話しかける。
「おい蜜柑、檸檬はどーしたんだ?」
「…生死・行方共に不明。雲の守護者の匣が暴走して、分断された。」
「で、ツナの迎撃を優先させたのか。」
「そうよ。」
淡々と答える蜜柑の視線は、戦闘に向けられたまま。
「何故、彼は来たのかしらね。」
「ん?」
「研究所に近付けば近付くほど、彼の生存可能性は低下していく……そんなこと、分かっていたでしょう?」
「あぁ、そーだな。」
幻騎士の圧倒的な力に、ツナは翻弄されるのみ。
勝敗の行方は既に明白だった。
「貴方達がボンゴレ10代目にどれほどの期待と希望を抱いているかは知らないけど、全ては無駄よ。」
「おめーも参加すんのか?」
「私が手を出すまでも無いわ。だって…」
ツナの拳を全て受け、また流し、幻覚を使って回り込み、
その背に刃を立てる。
「幻騎士は、強い。」
ツナの悲痛な叫びが響く。
そのまま宙返りをした幻騎士は、踵でツナを地に落とす。
「ボンゴレ!」
「ぐ…ああ……」
「確かに、奴はハンパねーな。」
リボーンが言う。
「俺の見る限り、10年後の雲雀と同じレベルの体術だ。今のツナじゃ歯が立たねぇ…」
「そ、そんな…」
倒れたままのツナを不安げに見るスパナ。
蜜柑は、まるでそれが当たり前の光景であるかのように、無機質な瞳を向けていた。
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『{しばらくぶりね、檸檬…}』
目の前に現れたこの人は、
この時代のあたし…
『な、何でココに…!?』
『{分からない?ココは……夢の中よ。}』
ゆ、夢…?
『{昔から変わらないわね……怖くなると、目を閉じてしまう…}』
『ココが夢なら…あたしは……』
『{目覚められないのは、心の内で恐怖しているから。}』
あたしの目の前で、少し背の高いあたしが言う。
その瞳はやっぱり何処か青暗くて、見てると胸が苦しくなる。
『{ねぇ檸檬、貴女は……今まで信じて来た仲間を、疑うの?}』
『えっ?』
『{皆が貴女を仲間として受け入れたから、貴女は弱くなったの?}』
『そんな事…!』
言葉は、途中で詰まった。
あたしはさっき、そう考えてたんだ。
皆のあったかさがあたしを弱くした…
そう、思い込んで塞ぎ込んだんだ。
『{檸檬にとって、皆はどんな存在?}』
あったかくて、
優しくて、
だからこそ、護りたい。
過去に帰る手伝いも、出来ることは全部やりたい。
当たり前のように一緒にいてくれる、
無くなったら生きていけない、
側にいてくれるから強くなれる、
一番近くで弱さを許してくれる、
空気みたいな、
水みたいな、
『必要な、人達……』
すうっと出て来た答えに、目の前に立つ檸檬は柔らかく微笑んだ。
『{なら檸檬は、皆にとってどんな存在でありたいの?}』
『あたし、は……』
ずっとずっと、独りだった。
独りぼっちで、泣いていた。
泣くのが嫌で、心を閉ざした。
だけど皆は、恭弥は……
泣くことを、許してくれた。
泣いてもいいよって、言ってくれた。
だから、あたしも------
『……いつか、』
何年後でも、何十年後でもいいから、
『誰かから、必要とされたいな……』
皆が「泣いてもいいよ」って言ってくれたみたいに、
あたしも誰かの「泣き場所」になれるといいな。
『{そうね……あたしも、そう在りたい…}』
『檸檬…?』
ほんの少し目線を落として、目の前の自分はまた青暗い空気をまとった。
『{だから、その日まで……}』
『………うん、分かった。』
今はまだ、必要とされてるかどうか分からない。
だけど、望むのは自由だから。
あたしが皆を信じてるように、
皆もあたしを信じてくれれば…って。
だから、立ちあがらなくちゃ。
目を開けて、向き合わなくちゃ。
『{そう……たとえどんなに自分を卑下しようとも…仲間だけは、疑わないで………}』
自分で自分を勝手に“見捨てられる存在”にするのは、
もう終わりにするよ。
信じてる。
だから、信じて。
抱え込まないで頼るから、
どうか、あたしにも苦しみを分けて。
『{目を開けて、良く見て……目の前にある大切な……モノと、人と、場所……}』
『あっ、檸檬っ…』
薄れゆく気配に、引きとめは無駄だと悟った。
だんだんおぼろげになった檸檬の姿は、白い光の粒になって、くしゅっと消えてしまった。
最後に優しく届いた言葉は……
『{もうすぐ……会える、から…}』
『檸檬っ…!』
辺りはまた、暗闇のみになった。
けれどあたしは、自分のすべきことが分かってた。
もう、迷わない。
迷わずに、夢から目覚めよう……!
---
------
---------------
極端な力量差のある2人の戦いは、モニターを通じて入江の目にも入っていた。
「まったく幻騎士と言うのは、恐ろしい男だな………」
マーレリングとその体技だけでも圧倒できるツナとの戦いに、彼は更に強力な兵器の使用許可を求めて来た。
霧属性最高ランク…骨残像(オッサ・インプレッショーネ)のヘルリング
ケーニッヒの残した霧属性最強の剣…幻剣(スペットロ・スパダ)
同じくケーニッヒ策と言われる甲冑(アルマトゥーラ)シリーズより…霧の2番(ネッビア・ヌーメロ・ドゥエ)
「どれも恐ろしく強力だが取り扱いが難しい為に白蘭サンの許可なしには使用出来ない。非常事態、特別強襲用の…いわば、」
大戦装備!!!
(アルマメント・ダ・グエーラ)
「まるで蟻を倒す為に戦車を引っ張って来るようなものだ……これが奴の任務に対する執念…」
----
-------
「更にゴツくなりやがったな。」
「…まるで騎士だ……あんな兵器、初めて見る…」
開匣された匣兵器により、その身を鎧に包む幻騎士。
周りには藍の炎が漂う。
「やべぇな、ただでさえ雲雀レベルだぞ。」
「ボンゴレの迎撃及び抹殺が、白蘭の命令だからよ。」
蜜柑の言葉に疑問符を浮かべるスパナとリボーン。
「そう…白蘭様は貴様を全力で倒せと仰せられた。白蘭様の言葉は神の啓示、覆ることはない。」
「覆ってはいけないもの、それが……幻騎士にとっての白蘭の命令。」
「無駄な抵抗はやめ、一息に殺されるがいい。俺との実力差は骨身にしみて分かったハズだ。」
幻騎士の、言う通り。
なのにボンゴレはまだ、抗おうとする。
私には分からない。
考えてみれば、生存の可能性を下げるかのように研究所へと向かって来た。
ココで最大の壁にぶつかると、分かっていたハズなのに。
私には分からない。
何故彼が今、拳を握り直しているのか。
この期に及んでまだ、抗おうとするのか。
「…同じ事を貴様の守護者共にも言ってきたが、どいつも力の差を分かりつつ抵抗し、無残に散った。」
あの出血では、もう全力は出せないでしょうに。
それを頭で理解してなお、戦う理由は一体何?
「貴様はそれほど愚かでもなかろう、ボンゴレX世。」
「……お前の強さは、良く分かった。…だが、」
腕の力で起き上がり、膝立ちするボンゴレ。
「分かっていても、俺は闘る!!」
ボンゴレには、理論的な考えを持つ人間がいないのかしら。
気力や信念なんて不確かなもので掴みとれるほど、勝利は安いものじゃない。
戦闘力や情報量……目に見えるものと数値化できるものが、全てなのに。
「(この目……!)」
幻騎士の殺意が一瞬だけ乱れたような気配がしたけれど、
この力量差の前では何の支障も来たさない。
「………蜜柑、」
「何?」
呼びかけられて目をやると、アルコバレーノは真っ直ぐボンゴレを見ていた。
その雰囲気からも伝わる、感情の一種。
私が最も認めたくない、“信頼”そのもの。
「おめーは手ぇ出さねんだよな?」
「さっきも言ったけど、そんな必要はないわ。」
「なら、大丈夫だな。」
分からない。
このアルコバレーノが何を考えているのか。
何をもって、そんな発言をしたのか。
直後、ボンゴレが小さく掛け声を口にした。
「オペレーション………X、」