未来編①
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一面が瓦礫と煙と化した第4ドックにて、壊れかけた無線が音声を発した。
-「アイリス!!ジンジャー!!あまき期待は出来ないが……もし無事なら応答してくれ。」
それを手に取り応答したのは、ツナだった。
「入江正一か。」
「(この声…!!)」
「お前が俺達を過去からこの時代に連れて来たのは分かってる。」
-「沢田綱吉か!!」
驚く入江に対し、ツナは問う。
「どこにいる?研究所と丸い装置は何処にあるんだ!!」
しかし次の瞬間、無線は小さな火花を散らして壊れてしまった。
数秒の直接会話だったが、入江に精神的ショックを与えるには十分だった。
「研究所と………丸い装置だと…!?」
「形状的に入江様の研究所以外考えられません。ボンゴレの潜入目的は研究所の破壊だと考えられます。」
「だから雲雀も研究所へ続く匣実験場へ……だが何故タイムトラベルが僕に起因していると…?」
「それはボンゴレを倒せば分かる事です。今はご指示を。」
チェルベッロの言葉に、入江はツナをマークするよう指示した。
「研究所も心配ないさ。この時代の雲雀と互角以上の戦いをした幻騎士が守ってるんだ。もうボンゴレ側に奴に敵う相手はいない。」
リングの炎
同じ頃、柄で殴り飛ばされた雲雀がグッと起き上がった。
「さっきから…刃でなく柄で倒そうなんて、随分ふざけてるね。」
鼻血を出したこと以外は何一つダメージを負っていないその姿を見て、幻騎士は静かに驚いた。
「(……霧の炎を込めた攻撃を生身の体で防ぐなど……)」
そこで、ハッと気がつく。
10年前から来たばかりでありながら、雲雀がリングの炎を使えるのではないかと。
しかし、10年前はリングの力が発見されて間もない頃…
知る者はごく一部のマフィアのみ。
雲雀が知っているハズが無いと思いつつ、幻騎士は尋ねた。
「貴様、この時代の戦い方を知っているか?」
全く分からないと言うように疑問符を浮かべる雲雀に、幻騎士は更に尋ねる。
「では、これを見たことはあるか?」
手に持ったのは、幻海牛の匣。
数秒の沈黙の後、雲雀は答える。
「オルゴールかい?」
「(やはり…踏み込みが甘かっただけか……)」
雲雀が何も知らないと判断した幻騎士は、そのまま匣に炎を注入した。
「ならば、圧倒的に倒すのみ。」
部屋の四方八方から雲雀の方を向いたミサイルが現れる。
勿論それは幻海牛の幻覚なのだが、雲雀には分からない。
「これは貴様の置かれた状況を、分かりやすく視覚化したものだ。」
何百という誘導弾に囲まれていて、
且つそられは霧の中の幻となる。
「成長したお前は“経験”によりコレを退けたが、貴様にそれは無い。俺と戦うには10年早いのだ。」
幻騎士が雲雀に見えない誘導弾を浴びせようとした、その時。
ドゴォッ、
「ゥガァッ…!」
横の壁を壊しながら、何かが2人の間に吹っ飛んで来た。
「(これは…)」
「グ……ガァァ!!」
苦しみながらも起き上がったソレは、紛れもなく蜜柑の匣兵器だった。
「(まさか、蜜柑が押されているのか…?)」
そう思った幻騎士は壁に空いた穴を見る。
立っていたのは、荒い呼吸をしつつ右脇腹を押える檸檬だった。
「DARQ…!」
『幻騎士……恭弥を傷つけたら、あたしが許さないから。』
ゴリラサイズのピグに、コツコツと歩み寄る檸檬。
幻騎士は、まだ残る煙の中で蜜柑を探す。
「檸檬…」
『大丈夫だよ、あたしは。』
雲雀に笑いかける檸檬に、ピグは再び拳を振り上げる。
しかし檸檬は、華麗に踊るような動きで翻弄し、一切の攻撃に当たらない。
『この猿を片付けたら次は貴方だよ、幻騎士。』
「手負いの身で何を言う。それに……」
「姉さんの相手は私だって、言ってるでしょ。」
ズガガン!
『なっ……!』
ピグと戦う檸檬の動きを正確に読み、撃たれた銃弾。
檸檬が気がついた時には、幻騎士の隣に蜜柑が立っていた。
『左腕使えなくなったってのに、まだ闘るつもり?蜜柑。』
「左が使えなくても、ピグがいる限り私たちの戦いは2対1よ。」
「ガァアーッ!!」
『まさかっ…!』
檸檬が視線をピグに戻した時には、もうピグはその姿を変えていた。
つい先ほど檸檬がかわした銃弾は、そのままピグに当たったのである。
更に巨大化したピグに、蜜柑は指示する。
「ピグ、炎弾。」
「ガアッ!」
『だからそれは効かないって言って…………!!?』
檸檬が炎弾の炎をナイフで奪おうと立ち止った、ほんの一瞬のことだった。
すかさず振り下ろされた強靭な腕が、檸檬に叩きつけられた。
「檸檬…!」
物凄い音と共に、大きな灰色の煙が立った。
「炎弾と殴打の挟み撃ち…これでダークは終わったな。」
「油断するからよ。」
蜜柑は口角を上げ、右手中指のリングに炎を灯す。
腰にある匣の一つに炎を注入すると、中からいつかと同じ卵型の容器が出て来た。
また、ピグはとどめをさした満足感からか、蜜柑の側に帰る。
「姉さんを捕らえて。」
蜜柑が言うと、その容器は煙の中に檸檬を探しに行った。
しかし…
「拒否信号…?」
「何?」
幻騎士と蜜柑には、容器の赤ランプが点灯しているのが見えた。
それはすなわち、檸檬を捕まえられないという意味。
「一体何故…」
煙が消え視界がクリアになると同時に、その理由が分かった。
「檸檬、檸檬…!」
『恭、弥…?』
炎弾は回避したものの、ピグの拳を食らいボロボロになった檸檬。
いち早く煙の中から檸檬を見つけた雲雀が抱き起こしていた。
「幻騎士、雲の守護者を始末して。」
蜜柑が言った。
「あの捕獲用兵器には1人しか入らない。捕獲対象が第3者と接触していては、無理なのよ。」
「そうだったか…」
「あの男はいつもいつも私の邪魔をして……この時代でも…」
蜜柑の右拳が固く握られたのが、見えた。
つまり、恭弥に抱きかかえられてる今の状態なら、捕らえられないって事?
けど幻騎士が恭弥に幻海牛の攻撃をしたら……
見えない攻撃に、今の恭弥は対応出来ない…。
『恭弥……離れて…』
「何言ってるの。」
あぁ、またあたしは…
恭弥にこんな表情をさせちゃった……
ごめん、ごめんね。
無力で、護れなくて。
護る為に、あたしはまた自分から傷つく。
それを恭弥が望んでないと、知りながら。
「こんな酷い出血して…」
『大丈夫だから……早く、離れて…』
じゃないと、恭弥まで幻騎士に倒されちゃう。
あたしは守護者じゃないから、いいんだよ。
だけど恭弥は、立派な雲の守護者。
ボンゴレにとって、
この戦いにおいて、
とってもとっても大事なんだよ。
『くっ…』
起き上がろうとしても、力が入らない。
もしかして……
ドクンッ、
『(やっぱり……こんな、時に…!)』
「檸檬…!?」
リバウンドが、来る。
第六感はちょっとずつ使ってたハズなのに……やっぱ負担が大きかったかな…
あと一回でも使ったら…ヤバいって事かな…?
『お願い、恭弥……早く離れて…』
「嫌だよ。」
『早くっ…!!』
「さらばだ、雲雀恭弥。」
視えた。
幻海牛が、恭弥に向かって来る。
あの爆破に襲われたら…!
『(こうなったらリバウンド覚悟で…!!)』
空間移動で恭弥を遠ざけようとした、その時だった。
ヒュッ、
『えっ…?』
見た事のある兵器が、あたしと恭弥を囲んだ。
ドドウッ!
誘導弾は全て、防がれた。
「へ……借りは返したぜ…」
『(あ…)』
生きてた…
また、会えた……
「つってもてめーじゃ分かんねーか…」
『隼人……』
「恭さん!!檸檬さん!!」
『草壁さん…』
了平さんに髑髏、ランボちゃんにイーピンちゃんまで…
「……10年前の姿に…!!」
隼人と了平さんを担いで来た草壁さんは、入れ替わった恭弥を見て驚いた。
一方の恭弥は、不機嫌オーラを放つ。
『(恭弥…?)』
「助っ人か……死に損ないと一般人では役に立たぬぞ。」
「また、邪魔が増えた……」
幻騎士と蜜柑が言った直後、獄寺が膝を折る。
草壁は同時にしゃがみ、辺りを見回す。
ラルと山本が気絶しているのを見て、現状が最悪の展開だと察した。
「(恭さんも入れ替わり、檸檬さんもかなり消耗している……それでいて相手は幻騎士とLIGHT…!)」
焦りの表情を浮かべる草壁に、檸檬を抱えたまま雲雀が呼び掛けた。
「草壁哲矢、いつ群れていいと言った?君には風紀委員を退会してもらう。」
「(俺を中坊だと思ってる!しかも退会!!)」
『きょ、恭弥…!違うの、あのね……』
「それに、いつから檸檬を名前で呼ぶようになったのか、教えて欲しいね。」
「そ、それは…」
返答に困る草壁に代わって、檸檬が言った。
『あたしが、そう呼んでって…お願いしたの!』
「檸檬が…どうして。」
『えーっと……』
その場しのぎの口実を考えようとする檸檬だったが、リバウンド状態も近づいてるせいか、頭痛に襲われる。
そんな中、幻騎士が 蜜柑に聞いた。
「蜜柑、どれを先に殺る。」
「勿論、邪魔者。」
「腕は…」
「右があれば充分よ。ピグ、捻り潰しなさい。」
「ガアーッ!!」
蜜柑の隣で大人しくしていたピグが、草壁達に向かっていった。
『やばっ…』
咄嗟に考える。
雲雀から離れて草壁達を護るには、空間移動しかない。
しかし、あと一度でも使えばリバウンドの発作が起こってしまう。
そうなれば、足手まといになるのは確実。
『(どうすれば…………ちょっと待って、確か…)』
檸檬は確認した。
草壁が連れて来ているメンバーを。
『(よし、いける…!)』
グッと意気込んだ檸檬は、空間移動で雲雀の腕をすり抜けた。
「この兵器は…!!」
「でっかいでっかいゴリラだもんね!!」
「ガアアッ!!」
負傷者をたくさん連れている草壁には、ピグの攻撃は回避不可能だった。
しかし…
ガッ、
「な……!」
『危ないから…皆と2、3歩下がっててくれませんか…?草壁さん…』
「檸檬さん…!!」
草壁と同時に、蜜柑も目を見開いた。
「あら、まだ動けたの?」
『まぁ…ね……』
ピグの重い拳を、檸檬はナイフ一本で防いでいたのである。
そして…
『(剛腕っ…!)』
見事に遠くまで弾き飛ばした。
だが直後に、力尽きたようにバタリと倒れ込む。
「檸檬さんっ!!」
『はぁっ…はぁっ……』
「(これは…リバウンド初期症状!)」
『はぁっ…うっ、ぐっ……』
「(第六感使用による負荷か…!)」
檸檬をも倒れた今、雲雀に賭けるしかない。
そう判断した草壁は、必死に叫んだ。
「恭さん、リングの炎です!!匣で応戦を!!」
「リングの炎…?ボックス…?」
「無駄だ。」
「諦めが悪いわね。」
呆れた台詞を口にする幻騎士と蜜柑。
「ボックスが何かは知らないけど、リングの炎……跳ね馬みたいな口ぶりがイラつくな。」
「(まさか、知っている…?)」
「(跳ね馬…?10年前のディーノか?)」
疑問に思う草壁をよそに、雲雀は続ける。
「あの男も、これからの戦いに重要になるのはリングの炎だとうるさくてね。」
次の瞬間、トンファーを握る右手中指にあるリングが、大きな紫色の炎を発する。
その輝きに、場にいる誰もが驚いた。
「(これほど…!!)」
眩しさを感じ、うっすらと目を開けた檸檬も、小さくこぼす。
『凄い……炎……』
炎の中心に立った雲雀は、草壁達の方を見て言い放った。
「君達なんて、来なくても良かったのに。」
-「アイリス!!ジンジャー!!あまき期待は出来ないが……もし無事なら応答してくれ。」
それを手に取り応答したのは、ツナだった。
「入江正一か。」
「(この声…!!)」
「お前が俺達を過去からこの時代に連れて来たのは分かってる。」
-「沢田綱吉か!!」
驚く入江に対し、ツナは問う。
「どこにいる?研究所と丸い装置は何処にあるんだ!!」
しかし次の瞬間、無線は小さな火花を散らして壊れてしまった。
数秒の直接会話だったが、入江に精神的ショックを与えるには十分だった。
「研究所と………丸い装置だと…!?」
「形状的に入江様の研究所以外考えられません。ボンゴレの潜入目的は研究所の破壊だと考えられます。」
「だから雲雀も研究所へ続く匣実験場へ……だが何故タイムトラベルが僕に起因していると…?」
「それはボンゴレを倒せば分かる事です。今はご指示を。」
チェルベッロの言葉に、入江はツナをマークするよう指示した。
「研究所も心配ないさ。この時代の雲雀と互角以上の戦いをした幻騎士が守ってるんだ。もうボンゴレ側に奴に敵う相手はいない。」
リングの炎
同じ頃、柄で殴り飛ばされた雲雀がグッと起き上がった。
「さっきから…刃でなく柄で倒そうなんて、随分ふざけてるね。」
鼻血を出したこと以外は何一つダメージを負っていないその姿を見て、幻騎士は静かに驚いた。
「(……霧の炎を込めた攻撃を生身の体で防ぐなど……)」
そこで、ハッと気がつく。
10年前から来たばかりでありながら、雲雀がリングの炎を使えるのではないかと。
しかし、10年前はリングの力が発見されて間もない頃…
知る者はごく一部のマフィアのみ。
雲雀が知っているハズが無いと思いつつ、幻騎士は尋ねた。
「貴様、この時代の戦い方を知っているか?」
全く分からないと言うように疑問符を浮かべる雲雀に、幻騎士は更に尋ねる。
「では、これを見たことはあるか?」
手に持ったのは、幻海牛の匣。
数秒の沈黙の後、雲雀は答える。
「オルゴールかい?」
「(やはり…踏み込みが甘かっただけか……)」
雲雀が何も知らないと判断した幻騎士は、そのまま匣に炎を注入した。
「ならば、圧倒的に倒すのみ。」
部屋の四方八方から雲雀の方を向いたミサイルが現れる。
勿論それは幻海牛の幻覚なのだが、雲雀には分からない。
「これは貴様の置かれた状況を、分かりやすく視覚化したものだ。」
何百という誘導弾に囲まれていて、
且つそられは霧の中の幻となる。
「成長したお前は“経験”によりコレを退けたが、貴様にそれは無い。俺と戦うには10年早いのだ。」
幻騎士が雲雀に見えない誘導弾を浴びせようとした、その時。
ドゴォッ、
「ゥガァッ…!」
横の壁を壊しながら、何かが2人の間に吹っ飛んで来た。
「(これは…)」
「グ……ガァァ!!」
苦しみながらも起き上がったソレは、紛れもなく蜜柑の匣兵器だった。
「(まさか、蜜柑が押されているのか…?)」
そう思った幻騎士は壁に空いた穴を見る。
立っていたのは、荒い呼吸をしつつ右脇腹を押える檸檬だった。
「DARQ…!」
『幻騎士……恭弥を傷つけたら、あたしが許さないから。』
ゴリラサイズのピグに、コツコツと歩み寄る檸檬。
幻騎士は、まだ残る煙の中で蜜柑を探す。
「檸檬…」
『大丈夫だよ、あたしは。』
雲雀に笑いかける檸檬に、ピグは再び拳を振り上げる。
しかし檸檬は、華麗に踊るような動きで翻弄し、一切の攻撃に当たらない。
『この猿を片付けたら次は貴方だよ、幻騎士。』
「手負いの身で何を言う。それに……」
「姉さんの相手は私だって、言ってるでしょ。」
ズガガン!
『なっ……!』
ピグと戦う檸檬の動きを正確に読み、撃たれた銃弾。
檸檬が気がついた時には、幻騎士の隣に蜜柑が立っていた。
『左腕使えなくなったってのに、まだ闘るつもり?蜜柑。』
「左が使えなくても、ピグがいる限り私たちの戦いは2対1よ。」
「ガァアーッ!!」
『まさかっ…!』
檸檬が視線をピグに戻した時には、もうピグはその姿を変えていた。
つい先ほど檸檬がかわした銃弾は、そのままピグに当たったのである。
更に巨大化したピグに、蜜柑は指示する。
「ピグ、炎弾。」
「ガアッ!」
『だからそれは効かないって言って…………!!?』
檸檬が炎弾の炎をナイフで奪おうと立ち止った、ほんの一瞬のことだった。
すかさず振り下ろされた強靭な腕が、檸檬に叩きつけられた。
「檸檬…!」
物凄い音と共に、大きな灰色の煙が立った。
「炎弾と殴打の挟み撃ち…これでダークは終わったな。」
「油断するからよ。」
蜜柑は口角を上げ、右手中指のリングに炎を灯す。
腰にある匣の一つに炎を注入すると、中からいつかと同じ卵型の容器が出て来た。
また、ピグはとどめをさした満足感からか、蜜柑の側に帰る。
「姉さんを捕らえて。」
蜜柑が言うと、その容器は煙の中に檸檬を探しに行った。
しかし…
「拒否信号…?」
「何?」
幻騎士と蜜柑には、容器の赤ランプが点灯しているのが見えた。
それはすなわち、檸檬を捕まえられないという意味。
「一体何故…」
煙が消え視界がクリアになると同時に、その理由が分かった。
「檸檬、檸檬…!」
『恭、弥…?』
炎弾は回避したものの、ピグの拳を食らいボロボロになった檸檬。
いち早く煙の中から檸檬を見つけた雲雀が抱き起こしていた。
「幻騎士、雲の守護者を始末して。」
蜜柑が言った。
「あの捕獲用兵器には1人しか入らない。捕獲対象が第3者と接触していては、無理なのよ。」
「そうだったか…」
「あの男はいつもいつも私の邪魔をして……この時代でも…」
蜜柑の右拳が固く握られたのが、見えた。
つまり、恭弥に抱きかかえられてる今の状態なら、捕らえられないって事?
けど幻騎士が恭弥に幻海牛の攻撃をしたら……
見えない攻撃に、今の恭弥は対応出来ない…。
『恭弥……離れて…』
「何言ってるの。」
あぁ、またあたしは…
恭弥にこんな表情をさせちゃった……
ごめん、ごめんね。
無力で、護れなくて。
護る為に、あたしはまた自分から傷つく。
それを恭弥が望んでないと、知りながら。
「こんな酷い出血して…」
『大丈夫だから……早く、離れて…』
じゃないと、恭弥まで幻騎士に倒されちゃう。
あたしは守護者じゃないから、いいんだよ。
だけど恭弥は、立派な雲の守護者。
ボンゴレにとって、
この戦いにおいて、
とってもとっても大事なんだよ。
『くっ…』
起き上がろうとしても、力が入らない。
もしかして……
ドクンッ、
『(やっぱり……こんな、時に…!)』
「檸檬…!?」
リバウンドが、来る。
第六感はちょっとずつ使ってたハズなのに……やっぱ負担が大きかったかな…
あと一回でも使ったら…ヤバいって事かな…?
『お願い、恭弥……早く離れて…』
「嫌だよ。」
『早くっ…!!』
「さらばだ、雲雀恭弥。」
視えた。
幻海牛が、恭弥に向かって来る。
あの爆破に襲われたら…!
『(こうなったらリバウンド覚悟で…!!)』
空間移動で恭弥を遠ざけようとした、その時だった。
ヒュッ、
『えっ…?』
見た事のある兵器が、あたしと恭弥を囲んだ。
ドドウッ!
誘導弾は全て、防がれた。
「へ……借りは返したぜ…」
『(あ…)』
生きてた…
また、会えた……
「つってもてめーじゃ分かんねーか…」
『隼人……』
「恭さん!!檸檬さん!!」
『草壁さん…』
了平さんに髑髏、ランボちゃんにイーピンちゃんまで…
「……10年前の姿に…!!」
隼人と了平さんを担いで来た草壁さんは、入れ替わった恭弥を見て驚いた。
一方の恭弥は、不機嫌オーラを放つ。
『(恭弥…?)』
「助っ人か……死に損ないと一般人では役に立たぬぞ。」
「また、邪魔が増えた……」
幻騎士と蜜柑が言った直後、獄寺が膝を折る。
草壁は同時にしゃがみ、辺りを見回す。
ラルと山本が気絶しているのを見て、現状が最悪の展開だと察した。
「(恭さんも入れ替わり、檸檬さんもかなり消耗している……それでいて相手は幻騎士とLIGHT…!)」
焦りの表情を浮かべる草壁に、檸檬を抱えたまま雲雀が呼び掛けた。
「草壁哲矢、いつ群れていいと言った?君には風紀委員を退会してもらう。」
「(俺を中坊だと思ってる!しかも退会!!)」
『きょ、恭弥…!違うの、あのね……』
「それに、いつから檸檬を名前で呼ぶようになったのか、教えて欲しいね。」
「そ、それは…」
返答に困る草壁に代わって、檸檬が言った。
『あたしが、そう呼んでって…お願いしたの!』
「檸檬が…どうして。」
『えーっと……』
その場しのぎの口実を考えようとする檸檬だったが、リバウンド状態も近づいてるせいか、頭痛に襲われる。
そんな中、幻騎士が 蜜柑に聞いた。
「蜜柑、どれを先に殺る。」
「勿論、邪魔者。」
「腕は…」
「右があれば充分よ。ピグ、捻り潰しなさい。」
「ガアーッ!!」
蜜柑の隣で大人しくしていたピグが、草壁達に向かっていった。
『やばっ…』
咄嗟に考える。
雲雀から離れて草壁達を護るには、空間移動しかない。
しかし、あと一度でも使えばリバウンドの発作が起こってしまう。
そうなれば、足手まといになるのは確実。
『(どうすれば…………ちょっと待って、確か…)』
檸檬は確認した。
草壁が連れて来ているメンバーを。
『(よし、いける…!)』
グッと意気込んだ檸檬は、空間移動で雲雀の腕をすり抜けた。
「この兵器は…!!」
「でっかいでっかいゴリラだもんね!!」
「ガアアッ!!」
負傷者をたくさん連れている草壁には、ピグの攻撃は回避不可能だった。
しかし…
ガッ、
「な……!」
『危ないから…皆と2、3歩下がっててくれませんか…?草壁さん…』
「檸檬さん…!!」
草壁と同時に、蜜柑も目を見開いた。
「あら、まだ動けたの?」
『まぁ…ね……』
ピグの重い拳を、檸檬はナイフ一本で防いでいたのである。
そして…
『(剛腕っ…!)』
見事に遠くまで弾き飛ばした。
だが直後に、力尽きたようにバタリと倒れ込む。
「檸檬さんっ!!」
『はぁっ…はぁっ……』
「(これは…リバウンド初期症状!)」
『はぁっ…うっ、ぐっ……』
「(第六感使用による負荷か…!)」
檸檬をも倒れた今、雲雀に賭けるしかない。
そう判断した草壁は、必死に叫んだ。
「恭さん、リングの炎です!!匣で応戦を!!」
「リングの炎…?ボックス…?」
「無駄だ。」
「諦めが悪いわね。」
呆れた台詞を口にする幻騎士と蜜柑。
「ボックスが何かは知らないけど、リングの炎……跳ね馬みたいな口ぶりがイラつくな。」
「(まさか、知っている…?)」
「(跳ね馬…?10年前のディーノか?)」
疑問に思う草壁をよそに、雲雀は続ける。
「あの男も、これからの戦いに重要になるのはリングの炎だとうるさくてね。」
次の瞬間、トンファーを握る右手中指にあるリングが、大きな紫色の炎を発する。
その輝きに、場にいる誰もが驚いた。
「(これほど…!!)」
眩しさを感じ、うっすらと目を開けた檸檬も、小さくこぼす。
『凄い……炎……』
炎の中心に立った雲雀は、草壁達の方を見て言い放った。
「君達なんて、来なくても良かったのに。」