未来編①
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「何を思い出そうと、姉さんの敗北は必然よ。」
『最後までトライしてみないと、分かんないでしょ?』
グッと立ちあがった檸檬に、蜜柑はすかさず撃ち込む。
檸檬はその炎を奪って、ナイフに宿した。
『攻撃には多彩さが必要……それって、お父さんの教えだよね、蜜柑。』
「だったら?」
『思い出させてくれてありがと。おかげでまた、ちゃんと踊れそうだよ♪』
にっこりと笑った檸檬を見て、蜜柑は思い出した。
檸檬は、自分たちの父と同じ戦い方をする人間だった…と。
完璧なX BURNER
一方、第4ドックにて。
「X BURNER…?」
「何だい!?」
「ツナ、コンタクトの使い方は分かってんな。」
「ああ。」
リボーンとツナの会話を聞き、動きを止めていたジンジャーは笑う。
「フフッ♪大層勿体つけてるけど、要は……ハッタリだね♪」
ズキュキュキュ、
放たれる爆発物を避けながら、ツナはコンタクトの表示を確認した。
---「説明するぞボンゴレ、まずコンタクトはあんたのヘッドフォンと音声で連動させてある。情報は耳からも入るハズだ。」
---「耳からも……?」
ディスプレイには2本のバーがあり、上のバーが右の炎、下のバーが左の炎の出力を表す。
そして剛の炎は赤、柔の炎は緑で表示される。
「(よし……正常に作動してる。)」
次に、X BURNER。
「オペレーションX」という掛け声で自動的にコンタクトが発射誘導プログラムを開始する。
画面がX BURNER専用に切り替わり、ターゲットの位置も表示され、左右のバランスラインも現れる。
---「安定したX BURNERを撃つには、ターゲットを中心に合わせて左右の出力を全く同じにすること。ラインを一直線にすること。」
死茎隊とジンジャーによる攻撃をかわしながら、ツナはスパナを庇うような位置に移動する。
そして、右手をフッと後ろに添えた。
「オペレーション…………X、」
ツナが静かにそう言っただけで、ヘッドフォンからアナウンスが流れた。
-「了解シマシタ、ボス。X BURNER発射シークエンスヲ開始シマス。」
その姿を地上から見ていたスパナは、小さく呟いた。
「………いきなり空中で…?」
---
------
-------------
同じ頃、起き上がった雲雀は再び幻騎士に攻め寄った。
「無駄な足掻きはやめたらどうだ。」
「君を咬み殺して、早く檸檬に話を聞かなくちゃいけないからね。」
幻騎士は雲雀のトンファーを軽々とかわしていく。
が、雲雀の方も押されることなく幻騎士の2刀流に追いついていた。
「さすが雲雀恭弥、というところか。この短時間で俺の剣について来れるようになるとはな。」
匣兵器もリングの炎も使わない攻防が続く中、幻騎士は言った。
「だが…所詮小童。」
「さっきから気に食わないな、その呼び方。」
「終わりだ。」
次の瞬間、先ほどと同じように雲雀は吹っ飛ばされた。
幻騎士の剣の、柄によって。
---
-----
-------------
「ピグ、」
「キィーッ!」
再び檸檬に襲いかかる、ピグの鋭い爪。
しかし今度は、檸檬が壁側に追い詰められる事はなかった。
「キイッ!」
「(ピグが…攪乱されてる…?)」
『five six seven and eight...』
檸檬の動きは、それまでとはまるで違っていた。
テンポよくリズムに乗るその姿は、蜜柑には出来なかった戦い方。
「………ざけないで……」
銃を持つ手を震わせた蜜柑は、ピグに向かって叫んだ。
「何としても叩き落とすのよ!!」
「キイーッ!」
『(蜜柑…?)』
檸檬には、視えた。
蜜柑の脳波が、それまでよりも激しく乱れているのが。
「キッ!」
『おっと!』
今の檸檬の“踊り方”は、蜜柑にも見覚えがあるモノ。
だからこそ、その記憶が脳裏に過って上手く銃を握れずにいた。
「……めて………」
『(蜜柑…やっぱり何か……)』
「その動き……バカにするのもいい加減にして…!!」
『なっ…!』
ズガガガガッ…
蜜柑の、狂ったような乱射が辺りに砂煙を作り出した。
前頭部を押さえて首を左右に振る蜜柑。
「(あの転調……あのテンポ……あの動き……!)」
『そんな隙作って、何考えてるの?』
「つっ…!」
煙のせいで、檸檬の位置は掴めなかった。
何処からともなく飛んできたナイフは、蜜柑の足を僅かに掠る。
その場にしゃがんだ蜜柑を守るように、ピグが周囲を警戒する。
「いつ…習得したの……」
『え…?』
「パパと同じ、“究極のリズム”を…!!」
10年前の世界で父が完成させた究極のリズム。
それは、相手の動きに乗じて何度も転調し、決して動きを読ませない戦い方。
砂煙が晴れゆく中、檸檬の影がぼんやり現れる。
『お父さんと戦った時、その脳波が一瞬視えたの。読み取った情報の中に、“究極のリズム”もあった。』
「それで…今更使い始めたワケ?」
『言ったでしょ、思い出したって。攻撃の多彩さを重視するお父さんの教えを忠実に表してるのは、この戦い方だもの。』
しばし檸檬を睨んでいた蜜柑だったが、ふぅと一息ついて立ちあがった。
ナイフを掠った右足は、ほとんどダメージを負っていないようだ。
「まぁいいわ、それも想定内よ。」
『え…!?』
「私は、この時代の姉さんを捕らえる為に生きて来た………中学生の姉さんが来ても、やる事は同じ!」
ズガガンッ、
連射される蜜柑の銃弾を、檸檬は独自のステップでかわす。
且つ、かわす際に銃弾にあった炎を全て奪っていった。
『今度はこっちの番だよ、蜜柑。』
言いながら檸檬は、炎が灯った状態のナイフを3本、蜜柑に向かって投げた。
「ピグ、」
「キイッ!」
蜜柑が一度呼べば、ピグは主に迫るナイフを跳ねのけようと爪を立てる。
しかし、
『(行けっ…!)』
ギュゥゥンッ、
「キイッ…!?」
ピグの爪は、空を切った。
「(加速…?)」
ナイフがピグの手をすり抜けるように加速し、自分の方に来ると察した蜜柑。
回避しようと右に避けた。
と、次の瞬間、
ドシュッ…
「つっ…!」
横から回り込むように飛んできたもう一本のナイフが、蜜柑の左腕に深く刺さった。
同時に、蜜柑の左手から銃がゴトリと落ちる。
まるで、指の力が抜けてしまったように蜜柑は手の平を開いていた。
「腕が…」
『形勢逆転だね、蜜柑。』
ナイフを持った檸檬が攻め寄る。
それが目の前で振り下ろされた瞬間、蜜柑は咄嗟に右手に持っていた銃で受け止めた。
「そう簡単に、私の首が取れるとでも?」
『首取るなんてしないよ。けど、蜜柑は動ける限りあたしの話を聞いてくれないから。』
「そうね、聞く気なんてないもの。」
『でも……この体勢なら少しは話せそうだね。』
檸檬の言う通り、今2人は簡単に動き出せる体勢ではなかった。
檸檬のナイフを蜜柑の銃口が受け止めた事により、2人共動きが封じられていた。
檸檬がナイフをまた振り上げて振り下ろそうとすれば、その間に蜜柑の銃が火を吹く。
しかし、蜜柑がすぐに発砲しようとすれば、銃口に刺さったナイフにより暴発してしまう。
「どうかしら。まだ…」
『あの猿なら、簡単に退けられる。』
「キイーッ!!」
檸檬の背後から爪を立てようと襲いかかって来たピグ。
しかし檸檬は一瞬だけ目を閉じて。
ドゴオッ、
「キッ…!」
猿は檸檬でなく、近くの壁に突っ込んだ。
それを見た蜜柑は憎らしそうに檸檬を睨む。
「空間移動……」
『これ、γ戦でも使えたんだよね。敵の突っ込む方向を瞬時に変えるの。』
檸檬が話す間も蜜柑は左手を動かそうとする。
が、全く動かないどころか、もはや感覚が無い。
『さっき、一本だけ刺さったでしょ。』
「……それが何。」
『あのナイフは、蜜柑の銃弾から貰った大空の炎を纏わせたモノ。推進力が格段に上がってたの。』
「………狙ったのは、神経ね…」
『そう、左腕を封じる為に…ね。』
推進力を上げた檸檬のナイフは、蜜柑の左腕に深く刺さった際、その神経を切っていた。
よって、肘より下のコントロールが利かなくなり、左手から銃が落ちたのだった。
---
-------
-----------
「炎を逆方向に噴射!?」
ツナの行動に驚いたアイリスとジンジャーに、通信が入る。
-「聞こえますか!?モスカのレコーダーから戦闘記録を解析したところ、ボンゴレのその攻撃は高エネルギーを前方に放つ技だと考えられます。」
-「真っ向から受けては危険だ!!回避だ!回避しろ!!」
その間も、ツナのグローブクリスタルには炎が溜まっていく。
「強力な飛び道具ってワケかい。」
「アイリス…?」
「面白いじゃないか。マックススクラムだよ!!」
鞭を振るったアイリス。
死茎隊は4人が最大限に大きくなり、アイリスを守る壁となる。
「受けて立つ気か…」
-「ターゲットロック、ライトバーナー炎圧再上昇。18万…19万……20万FV!!」
コンタクトの指示に従って、右の炎を固定する。
-「レフトバーナー炎圧上昇…19万……20万FV!!ゲージシンメトリー!発射スタンバイ!!」
「うおおっ!!」
X BURNER!!!
強大な炎が放たれる。
それは死茎隊を溶かし、ジンジャーの人形を壊し、部屋を破壊しつくしていく。
「安定…してる……」
見たかった完璧なX BURNERを見れて感嘆の声を漏らすスパナもまた、その熱風に軽く飛ばされた。
----
-------
一方、コントロールルームでは…
「カメラ破損!!」
「なっ…」
「大変です入江様!!第4ドックから3区画が…消滅しました!!!」
砂嵐しか映らなくなったモニターから、基地のマップに目を移す入江。
そこには、3つのバツ印が。
「しょ…消滅!!?」
彼は、みるみるうちに顔面蒼白になっていった。
---
-------
--------------
「そうまでして、私に何を聞くつもり?」
銃口とナイフをぶつけた状態のまま、蜜柑は問いかけた。
檸檬は落ち着いた口調で言う。
『最初に出会った時から、不思議に思ってた。どうして蜜柑は…雲属性じゃないの?』
「ふっ……ふふふ…何よ、そんな事?」
『普通、血縁者なら最も強い波動は同じハズだよ。なのに…』
「…ママよ。」
『え…!?』
「ママが私の波動を、捻じ曲げて大空に変えた。」
驚きを隠せない檸檬に、蜜柑は続ける。
「私が姉さんを殺す為に、ママはサポートをすると言ったわ……この波動は私の願望じゃないけど、良い補助になった。」
『全ての匣を開けられるから?それにしては、持ってる匣が少ないけど。』
「そんなのオプションよ。私が欲しかったのは、破壊力。」
そこで檸檬はハッとした。
蜜柑の波動が大空であるが故に苦戦した。
もし波動が大空でなかったら……
破壊の死ぬ気弾は存在しないのだ。
『なるほど、大空の炎の推進力が蜜柑にとってメリットだったってワケね。』
「逆よ、私の大空は完全じゃない。波動を捻じ曲げられてるんだもの。」
『完全じゃない…?それって、特性が無いって事?だから推進力を利用して…』
「端的に言えばそうね。大空の炎でありながら、大空の特性は備えて無い。ピグを見れば分かるでしょう?」
檸檬は思い出す。
蜜柑の銃弾を受けたことによりピグが肥大化したのを。
『アレは、もしかして……雲の特性…?』
「もう私が喋ることは無い。」
『なっ…!』
即座に最大限に屈み、低い回し蹴りをする蜜柑。
檸檬が飛び跳ねて避けたその隙に、詰められた間合いを元に戻す。
「私は姉さんを捕獲しに来たの、喋る為じゃない。」
『あたしは、蜜柑とちゃんと話したくて来たんだけどな…』
檸檬の言葉に、蜜柑は鼻で笑った。
その姿を見て、思う。
『(戦闘中は、ほんの少しだけど人間らしくなってる……)』
もっとも、それは最悪の形。
人を憎み殺そうとする、人間の姿。
「ピグ、いつまで寝てるの。」
「キィ…」
ズガガンッ、
「キ…キイーィッ!!!」
右手の銃だけでピグに再び炎をチャージする蜜柑。
『なっ!ただでさえ人間サイズなのに、これ以上撃ったら……!』
「初めからフルパワーを出させるとでも?」
口角を上げる蜜柑の横で、ゴリラサイズになったピグが、一声鳴いた。
「ガァアーッ!!」
『最後までトライしてみないと、分かんないでしょ?』
グッと立ちあがった檸檬に、蜜柑はすかさず撃ち込む。
檸檬はその炎を奪って、ナイフに宿した。
『攻撃には多彩さが必要……それって、お父さんの教えだよね、蜜柑。』
「だったら?」
『思い出させてくれてありがと。おかげでまた、ちゃんと踊れそうだよ♪』
にっこりと笑った檸檬を見て、蜜柑は思い出した。
檸檬は、自分たちの父と同じ戦い方をする人間だった…と。
完璧なX BURNER
一方、第4ドックにて。
「X BURNER…?」
「何だい!?」
「ツナ、コンタクトの使い方は分かってんな。」
「ああ。」
リボーンとツナの会話を聞き、動きを止めていたジンジャーは笑う。
「フフッ♪大層勿体つけてるけど、要は……ハッタリだね♪」
ズキュキュキュ、
放たれる爆発物を避けながら、ツナはコンタクトの表示を確認した。
---「説明するぞボンゴレ、まずコンタクトはあんたのヘッドフォンと音声で連動させてある。情報は耳からも入るハズだ。」
---「耳からも……?」
ディスプレイには2本のバーがあり、上のバーが右の炎、下のバーが左の炎の出力を表す。
そして剛の炎は赤、柔の炎は緑で表示される。
「(よし……正常に作動してる。)」
次に、X BURNER。
「オペレーションX」という掛け声で自動的にコンタクトが発射誘導プログラムを開始する。
画面がX BURNER専用に切り替わり、ターゲットの位置も表示され、左右のバランスラインも現れる。
---「安定したX BURNERを撃つには、ターゲットを中心に合わせて左右の出力を全く同じにすること。ラインを一直線にすること。」
死茎隊とジンジャーによる攻撃をかわしながら、ツナはスパナを庇うような位置に移動する。
そして、右手をフッと後ろに添えた。
「オペレーション…………X、」
ツナが静かにそう言っただけで、ヘッドフォンからアナウンスが流れた。
-「了解シマシタ、ボス。X BURNER発射シークエンスヲ開始シマス。」
その姿を地上から見ていたスパナは、小さく呟いた。
「………いきなり空中で…?」
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同じ頃、起き上がった雲雀は再び幻騎士に攻め寄った。
「無駄な足掻きはやめたらどうだ。」
「君を咬み殺して、早く檸檬に話を聞かなくちゃいけないからね。」
幻騎士は雲雀のトンファーを軽々とかわしていく。
が、雲雀の方も押されることなく幻騎士の2刀流に追いついていた。
「さすが雲雀恭弥、というところか。この短時間で俺の剣について来れるようになるとはな。」
匣兵器もリングの炎も使わない攻防が続く中、幻騎士は言った。
「だが…所詮小童。」
「さっきから気に食わないな、その呼び方。」
「終わりだ。」
次の瞬間、先ほどと同じように雲雀は吹っ飛ばされた。
幻騎士の剣の、柄によって。
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「ピグ、」
「キィーッ!」
再び檸檬に襲いかかる、ピグの鋭い爪。
しかし今度は、檸檬が壁側に追い詰められる事はなかった。
「キイッ!」
「(ピグが…攪乱されてる…?)」
『five six seven and eight...』
檸檬の動きは、それまでとはまるで違っていた。
テンポよくリズムに乗るその姿は、蜜柑には出来なかった戦い方。
「………ざけないで……」
銃を持つ手を震わせた蜜柑は、ピグに向かって叫んだ。
「何としても叩き落とすのよ!!」
「キイーッ!」
『(蜜柑…?)』
檸檬には、視えた。
蜜柑の脳波が、それまでよりも激しく乱れているのが。
「キッ!」
『おっと!』
今の檸檬の“踊り方”は、蜜柑にも見覚えがあるモノ。
だからこそ、その記憶が脳裏に過って上手く銃を握れずにいた。
「……めて………」
『(蜜柑…やっぱり何か……)』
「その動き……バカにするのもいい加減にして…!!」
『なっ…!』
ズガガガガッ…
蜜柑の、狂ったような乱射が辺りに砂煙を作り出した。
前頭部を押さえて首を左右に振る蜜柑。
「(あの転調……あのテンポ……あの動き……!)」
『そんな隙作って、何考えてるの?』
「つっ…!」
煙のせいで、檸檬の位置は掴めなかった。
何処からともなく飛んできたナイフは、蜜柑の足を僅かに掠る。
その場にしゃがんだ蜜柑を守るように、ピグが周囲を警戒する。
「いつ…習得したの……」
『え…?』
「パパと同じ、“究極のリズム”を…!!」
10年前の世界で父が完成させた究極のリズム。
それは、相手の動きに乗じて何度も転調し、決して動きを読ませない戦い方。
砂煙が晴れゆく中、檸檬の影がぼんやり現れる。
『お父さんと戦った時、その脳波が一瞬視えたの。読み取った情報の中に、“究極のリズム”もあった。』
「それで…今更使い始めたワケ?」
『言ったでしょ、思い出したって。攻撃の多彩さを重視するお父さんの教えを忠実に表してるのは、この戦い方だもの。』
しばし檸檬を睨んでいた蜜柑だったが、ふぅと一息ついて立ちあがった。
ナイフを掠った右足は、ほとんどダメージを負っていないようだ。
「まぁいいわ、それも想定内よ。」
『え…!?』
「私は、この時代の姉さんを捕らえる為に生きて来た………中学生の姉さんが来ても、やる事は同じ!」
ズガガンッ、
連射される蜜柑の銃弾を、檸檬は独自のステップでかわす。
且つ、かわす際に銃弾にあった炎を全て奪っていった。
『今度はこっちの番だよ、蜜柑。』
言いながら檸檬は、炎が灯った状態のナイフを3本、蜜柑に向かって投げた。
「ピグ、」
「キイッ!」
蜜柑が一度呼べば、ピグは主に迫るナイフを跳ねのけようと爪を立てる。
しかし、
『(行けっ…!)』
ギュゥゥンッ、
「キイッ…!?」
ピグの爪は、空を切った。
「(加速…?)」
ナイフがピグの手をすり抜けるように加速し、自分の方に来ると察した蜜柑。
回避しようと右に避けた。
と、次の瞬間、
ドシュッ…
「つっ…!」
横から回り込むように飛んできたもう一本のナイフが、蜜柑の左腕に深く刺さった。
同時に、蜜柑の左手から銃がゴトリと落ちる。
まるで、指の力が抜けてしまったように蜜柑は手の平を開いていた。
「腕が…」
『形勢逆転だね、蜜柑。』
ナイフを持った檸檬が攻め寄る。
それが目の前で振り下ろされた瞬間、蜜柑は咄嗟に右手に持っていた銃で受け止めた。
「そう簡単に、私の首が取れるとでも?」
『首取るなんてしないよ。けど、蜜柑は動ける限りあたしの話を聞いてくれないから。』
「そうね、聞く気なんてないもの。」
『でも……この体勢なら少しは話せそうだね。』
檸檬の言う通り、今2人は簡単に動き出せる体勢ではなかった。
檸檬のナイフを蜜柑の銃口が受け止めた事により、2人共動きが封じられていた。
檸檬がナイフをまた振り上げて振り下ろそうとすれば、その間に蜜柑の銃が火を吹く。
しかし、蜜柑がすぐに発砲しようとすれば、銃口に刺さったナイフにより暴発してしまう。
「どうかしら。まだ…」
『あの猿なら、簡単に退けられる。』
「キイーッ!!」
檸檬の背後から爪を立てようと襲いかかって来たピグ。
しかし檸檬は一瞬だけ目を閉じて。
ドゴオッ、
「キッ…!」
猿は檸檬でなく、近くの壁に突っ込んだ。
それを見た蜜柑は憎らしそうに檸檬を睨む。
「空間移動……」
『これ、γ戦でも使えたんだよね。敵の突っ込む方向を瞬時に変えるの。』
檸檬が話す間も蜜柑は左手を動かそうとする。
が、全く動かないどころか、もはや感覚が無い。
『さっき、一本だけ刺さったでしょ。』
「……それが何。」
『あのナイフは、蜜柑の銃弾から貰った大空の炎を纏わせたモノ。推進力が格段に上がってたの。』
「………狙ったのは、神経ね…」
『そう、左腕を封じる為に…ね。』
推進力を上げた檸檬のナイフは、蜜柑の左腕に深く刺さった際、その神経を切っていた。
よって、肘より下のコントロールが利かなくなり、左手から銃が落ちたのだった。
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「炎を逆方向に噴射!?」
ツナの行動に驚いたアイリスとジンジャーに、通信が入る。
-「聞こえますか!?モスカのレコーダーから戦闘記録を解析したところ、ボンゴレのその攻撃は高エネルギーを前方に放つ技だと考えられます。」
-「真っ向から受けては危険だ!!回避だ!回避しろ!!」
その間も、ツナのグローブクリスタルには炎が溜まっていく。
「強力な飛び道具ってワケかい。」
「アイリス…?」
「面白いじゃないか。マックススクラムだよ!!」
鞭を振るったアイリス。
死茎隊は4人が最大限に大きくなり、アイリスを守る壁となる。
「受けて立つ気か…」
-「ターゲットロック、ライトバーナー炎圧再上昇。18万…19万……20万FV!!」
コンタクトの指示に従って、右の炎を固定する。
-「レフトバーナー炎圧上昇…19万……20万FV!!ゲージシンメトリー!発射スタンバイ!!」
「うおおっ!!」
X BURNER!!!
強大な炎が放たれる。
それは死茎隊を溶かし、ジンジャーの人形を壊し、部屋を破壊しつくしていく。
「安定…してる……」
見たかった完璧なX BURNERを見れて感嘆の声を漏らすスパナもまた、その熱風に軽く飛ばされた。
----
-------
一方、コントロールルームでは…
「カメラ破損!!」
「なっ…」
「大変です入江様!!第4ドックから3区画が…消滅しました!!!」
砂嵐しか映らなくなったモニターから、基地のマップに目を移す入江。
そこには、3つのバツ印が。
「しょ…消滅!!?」
彼は、みるみるうちに顔面蒼白になっていった。
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「そうまでして、私に何を聞くつもり?」
銃口とナイフをぶつけた状態のまま、蜜柑は問いかけた。
檸檬は落ち着いた口調で言う。
『最初に出会った時から、不思議に思ってた。どうして蜜柑は…雲属性じゃないの?』
「ふっ……ふふふ…何よ、そんな事?」
『普通、血縁者なら最も強い波動は同じハズだよ。なのに…』
「…ママよ。」
『え…!?』
「ママが私の波動を、捻じ曲げて大空に変えた。」
驚きを隠せない檸檬に、蜜柑は続ける。
「私が姉さんを殺す為に、ママはサポートをすると言ったわ……この波動は私の願望じゃないけど、良い補助になった。」
『全ての匣を開けられるから?それにしては、持ってる匣が少ないけど。』
「そんなのオプションよ。私が欲しかったのは、破壊力。」
そこで檸檬はハッとした。
蜜柑の波動が大空であるが故に苦戦した。
もし波動が大空でなかったら……
破壊の死ぬ気弾は存在しないのだ。
『なるほど、大空の炎の推進力が蜜柑にとってメリットだったってワケね。』
「逆よ、私の大空は完全じゃない。波動を捻じ曲げられてるんだもの。」
『完全じゃない…?それって、特性が無いって事?だから推進力を利用して…』
「端的に言えばそうね。大空の炎でありながら、大空の特性は備えて無い。ピグを見れば分かるでしょう?」
檸檬は思い出す。
蜜柑の銃弾を受けたことによりピグが肥大化したのを。
『アレは、もしかして……雲の特性…?』
「もう私が喋ることは無い。」
『なっ…!』
即座に最大限に屈み、低い回し蹴りをする蜜柑。
檸檬が飛び跳ねて避けたその隙に、詰められた間合いを元に戻す。
「私は姉さんを捕獲しに来たの、喋る為じゃない。」
『あたしは、蜜柑とちゃんと話したくて来たんだけどな…』
檸檬の言葉に、蜜柑は鼻で笑った。
その姿を見て、思う。
『(戦闘中は、ほんの少しだけど人間らしくなってる……)』
もっとも、それは最悪の形。
人を憎み殺そうとする、人間の姿。
「ピグ、いつまで寝てるの。」
「キィ…」
ズガガンッ、
「キ…キイーィッ!!!」
右手の銃だけでピグに再び炎をチャージする蜜柑。
『なっ!ただでさえ人間サイズなのに、これ以上撃ったら……!』
「初めからフルパワーを出させるとでも?」
口角を上げる蜜柑の横で、ゴリラサイズになったピグが、一声鳴いた。
「ガァアーッ!!」