未来編①
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見間違えるワケ、ない。
あれは、あの姿は…
『10年前の、恭弥…!』
風紀
すくっと立ち上がった雲雀は、真っ直ぐに幻騎士を見る。
「これは一体どういう事だい?僕は、学校の屋上にいたハズなんだけど。」
「(あどけなさの残るあの顔…あの姿……10年前の雲雀恭弥!!)」
話に聞いていたとは言え、目の前で起こったタイムトラベルに幻騎士は目を見開く。
同時に檸檬と蜜柑も、10年後の雲雀が言っていた“スケジュール”という単語がコレを指していたのかと疑問を抱いた。
が、今となってはそれを確認する事も出来ない。
瓦礫の上から飛び降りようとした雲雀は、真下に呆然と立っている檸檬を見て、足を止めた。
「檸檬…!?」
『恭弥……あの、ココは…』
説明しようとした檸檬の前に着地し、即座に抱きしめる雲雀。
「やっと…見つけた……」
『あ……』
本物だ…
この時代の恭弥と微妙に違う感触……
『恭弥っ……会いたかった…!』
涙を、止められない。
ずっとずっと、会いたかった。
「何してたの?何処にいたの?何で急にいなくなったの?それと…あいつは誰?」
『あ、えと……話せば長いんだけど…』
何から言おうか戸惑う檸檬。
一方蜜柑は幻騎士の隣に立ち、話しかける。
「どういう事かしら、タイムトラベルは白蘭の意向のハズよ。」
「あぁ、雲雀恭弥がそのタイミングを知っていたとは考えにくいが…」
「………まぁいいわ、私がやるべき事は変わってないから。」
「…俺もだ。」
蜜柑は、躊躇なく檸檬に銃を向けて、撃った。
ズガンッ、
『やばっ…!』
咄嗟に雲雀に背を向け、ナイフで炎を奪う檸檬。
「檸檬、今……」
『ごめん恭弥…今は一秒たりとも気を抜けないんだ……戦わなくちゃいけない相手がいるの。』
「相手……そうだよ、そこの君。」
ナイフを構える檸檬の横に立ち、雲雀は幻騎士に言った。
「並中なら、その眉毛は校則違反だ。」
「こ…これは…!」
「まぁいいさ、しかし何故、行方不明だったうちの生徒が倒れてるんだい?」
ラルと共に寝かされている山本を見て、雲雀は問う。
「山本武は俺が屠った。」
「ふぅん君が……じゃあ話は早いね。」
『恭弥…!?』
「君の行為を並中への攻撃とみなし、僕が制裁を加えよう。」
雲雀の発言に驚く檸檬と、軽く嘲笑する蜜柑。
「おめでたい人ね、この時代の事を何も理解しないで。」
「君……どこかで…」
檸檬と瓜二つだが大人びているその顔。
雲雀には、覚えがあった。
かつて檸檬を殺そうとした、双子の妹。
「幻騎士、いいかしら。」
「ああ、お前はDARQを殺ればいい。」
「檸檬、“ダーク”って…」
『えっと…色々説明すっ飛ばせば、つまりはあたしの事……』
少し言葉を詰まらせる檸檬を見て、雲雀は大体を察した。
「ふぅん……気に食わないね、それ。やはり君たちは、僕が咬み殺そう。」
『恭弥ダメっ…』
制止しようとする檸檬だったが、雲雀は真っ直ぐに幻騎士へと向かっていく。
仕込みトンファーと、雲のボンゴレリングを携えて。
「(ついている。雲のボンゴレリングを持ってくるとはな…)」
「いくよ。」
雲雀の攻撃は確かに俊敏なものだった。
しかし、そのトンファーが幻騎士に触れる前に…
ガッ、
『恭弥っ…!!』
幻騎士の刀の柄が、雲雀の頭を打った。
『(あのままじゃ瓦礫にぶつかる…!)』
檸檬が雲雀を受け止めに行こうとした、その時。
「姉さんの相手は、私よ。」
『きゃっ…!』
その行く手を阻むように、蜜柑が立って銃口を向けていた。
ズガガガ、
『くっ…』
先ほど銃弾から得た炎をブーツに移し、飛行で回避する檸檬。
しかし、
「炎弾…」
「キイィーッ!」
『(またこの猿…!)』
空中での行く手を阻む猿の口には、前と同じような光球が。
『うっ…!』
その大きな炎を正面からナイフで受け止めた衝撃で、檸檬は後ろに大きく飛ばされる。
うまく着地し、放たれた炎をナイフで奪えたものの、檸檬の息は荒かった。
「続けましょうよ、私たちのデスマッチを。」
妖しく笑う蜜柑の隣で、人間と同じくらいの大きさの猿が一声鳴いた。
---
-----
-----------
「何だありゃ…人間なのか?」
「………元々はね。」
第4ドッグにて、肉体増殖をした4人の男にアイリスは早速指示を出す。
「さぁ捻っといで、下僕どもvV」
「プルァ!!」
雄叫びと共に、彼らのうち2体の腕があり得ないほど伸びる。
それはツナの両腕をとらえ、動きを封じた。
「(筋肉どころか、関節まで増殖してるのか?)」
考えている間にツナの足は浮く。
そして、3体目が足の筋肉を増強させ……
「プルルア!!」
「がっ…!」
ツナの腹部に重い蹴りを叩きこんだ。
壁を突き破って飛んでいくツナを見て、スパナが呟く。
「だから無理だって…」
「本当にあいつら人間なのか?」
「死茎隊…ミルフィオーレ人体覚醒部の被験体だ……」
彼らは肉体を改造されていて、特殊なスーツで全身を覆われ、
且つアイリスの鞭の雲の炎によって異常な体質変化を起こしているそうだ。
「で、人体に眠る攻撃能力が覚醒し、あーなってる。」
「人体実験か……ひでーことしやがるな。」
「……それは少し違う。あいつらは自ら進んで肉体の改造をしたんだ。」
被験体達は4人とも、元は人体覚醒部の博士だった。
彼らは皆、一人の助手・アイリスに惚れていた。
そして、好きなアイリスを喜ばせるために、他の者より秀でるために、競うように自分の肉体にメスを入れ、改造した。
「あれはその成れの果ての姿……生きがいは殺戮と、妖花アイリス。」
「よーくやったよ、下僕どもvV」
彼女が発した一つの褒め言葉に、群がるように集まる死茎隊。
その様子を見て、リボーンは言う。
「……イビツな関係だな。」
「さぁ、ボンゴレは壁の向こうだよ。開けてやるから腕ごとかっさらっといで!!」
バーを下げ、アイリスが開けた壁の向こうには、煙の中静かに立つツナが。
「へぇ、なかなかしぶといじゃないか。」
「…スパナ、何をしている。早くコンタクトを完成させてくれ。」
「え……」
ツナの台詞で、リボーンはピンと閃いた。
賛同するようにスパナを急かす。
「完成時間が変わらねぇのがポリシーなんだろ?早く作れ、スパナ。」
「……でも、死茎隊はキング・モスカより強いって言ったろ?無駄な足掻きだ。」
「ツナはそう感じてねーぞ。」
同時に、スパナとリボーンの横をツナが飛んでいく。
しかしアイリスは嘲るかのように言う。
「いいや無駄さね、やっちまいな。」
再び、腕が伸ばされる。
しかし今度は、無駄のない動きでかわしていくツナ。
そして、1体の顔面に膝蹴りをお見舞いした。
「プルァ!!」
同じく襲いかかって来た2体目も、難なく地に伏せさせる。
「何だい?どーなってんだい!?」
「ウチの知るボンゴレとは…まるで動きが違う……」
「キング・モスカ戦とでは、違う所が2つあるからな。」
1つは、キング・モスカを倒した経験が、戦闘能力を上げているという事。
もう1つは、相手が機械でなく人間であるという事。
「生身の人間だからこそ見せる、動きや考えの予兆……ツナはそれを感じ取ってんだ。」
それこそが、ボンゴレの血に継承される“見透かす力”。
「またの名を……超直感!!」
---
------
------------
「ピグ、」
「キィッ!」
蜜柑が小さく呼ぶだけで、ピッタリのコンビで攻撃してくる匣兵器の猿。
実質2人分の相手をしている檸檬は、攻撃をかわすので精一杯だった。
『このっ……!』
猿を激しく蹴り飛ばした直後の檸檬を、蜜柑の銃弾が襲う。
それをかわせば今度は、“炎弾”が放たれる。
『はぁっ…はぁっ……』
「休憩できる立場?」
『(こう、なったら…!)』
一か八かの賭けに出た。
匣兵器は、リングの炎をエネルギーにして動いている。
つまり、猿の炎を全て奪えば動きを止めることが出来るかも知れない…
そう、思ったのだ。
「(的をピグにしぼった…?)」
『これでっ…どーよっ!!』
尾に灯った炎を、奪えるだけ奪う。
すると、
「キィィ…」
『(やっぱり!)』
空中に飛び上がっていた猿は動きを止め、落下していった。
そして、徐々にその大きさを縮めていく。
「ピグ、」
「キッ!」
『え…!?』
蜜柑が名を呼ぶと、小さくなった猿は元気そうにその肩に乗った。
倒れず蜜柑のもとに戻った猿に、檸檬は驚かされた。
『どう、して…』
「ピグは通常の匣兵器とは異なる、私の作品よ。」
蜜柑の言葉に、檸檬は目を見開く。
やはり、蜜柑は自作の匣を持っていた。
そしてそれは……普通じゃない匣。
「通常、匣兵器は炎のチャージが無くなるか、一定量を満たさなければ動きを止める。」
『なのに、何故…』
「この小さい猿こそ、本来の姿だからよ。炎を奪われても、形を保っていられる。」
「キイッ!」
確かに、人と同じ大きさよりも、手の平に満たないサイズの方が、必要な炎の量は少ない。
その為、炎を奪われても大きさが保てなくなるだけで、小さくなれば通常通り動けるのだ。
『事前に聞いてたよ、蜜柑がオリジナル匣を持ってるって話はね。』
「なら紹介してあげるわ。これで見収めでしょうから。」
蜜柑が言うと、猿はスタッと地面に降り立った。
「大空小猿(マーモセット・オブ・グレートヘヴン)………マーモセット属の中でも最小の、ピグミーマーモセット。」
『“Great Heaven”……“大空”の英訳ってワケね…』
「見せてあげるわ、ピグのプログラムを。」
くるりと銃を回した蜜柑は、ピグに銃口を向け、口角を上げた。
あれは、あの姿は…
『10年前の、恭弥…!』
風紀
すくっと立ち上がった雲雀は、真っ直ぐに幻騎士を見る。
「これは一体どういう事だい?僕は、学校の屋上にいたハズなんだけど。」
「(あどけなさの残るあの顔…あの姿……10年前の雲雀恭弥!!)」
話に聞いていたとは言え、目の前で起こったタイムトラベルに幻騎士は目を見開く。
同時に檸檬と蜜柑も、10年後の雲雀が言っていた“スケジュール”という単語がコレを指していたのかと疑問を抱いた。
が、今となってはそれを確認する事も出来ない。
瓦礫の上から飛び降りようとした雲雀は、真下に呆然と立っている檸檬を見て、足を止めた。
「檸檬…!?」
『恭弥……あの、ココは…』
説明しようとした檸檬の前に着地し、即座に抱きしめる雲雀。
「やっと…見つけた……」
『あ……』
本物だ…
この時代の恭弥と微妙に違う感触……
『恭弥っ……会いたかった…!』
涙を、止められない。
ずっとずっと、会いたかった。
「何してたの?何処にいたの?何で急にいなくなったの?それと…あいつは誰?」
『あ、えと……話せば長いんだけど…』
何から言おうか戸惑う檸檬。
一方蜜柑は幻騎士の隣に立ち、話しかける。
「どういう事かしら、タイムトラベルは白蘭の意向のハズよ。」
「あぁ、雲雀恭弥がそのタイミングを知っていたとは考えにくいが…」
「………まぁいいわ、私がやるべき事は変わってないから。」
「…俺もだ。」
蜜柑は、躊躇なく檸檬に銃を向けて、撃った。
ズガンッ、
『やばっ…!』
咄嗟に雲雀に背を向け、ナイフで炎を奪う檸檬。
「檸檬、今……」
『ごめん恭弥…今は一秒たりとも気を抜けないんだ……戦わなくちゃいけない相手がいるの。』
「相手……そうだよ、そこの君。」
ナイフを構える檸檬の横に立ち、雲雀は幻騎士に言った。
「並中なら、その眉毛は校則違反だ。」
「こ…これは…!」
「まぁいいさ、しかし何故、行方不明だったうちの生徒が倒れてるんだい?」
ラルと共に寝かされている山本を見て、雲雀は問う。
「山本武は俺が屠った。」
「ふぅん君が……じゃあ話は早いね。」
『恭弥…!?』
「君の行為を並中への攻撃とみなし、僕が制裁を加えよう。」
雲雀の発言に驚く檸檬と、軽く嘲笑する蜜柑。
「おめでたい人ね、この時代の事を何も理解しないで。」
「君……どこかで…」
檸檬と瓜二つだが大人びているその顔。
雲雀には、覚えがあった。
かつて檸檬を殺そうとした、双子の妹。
「幻騎士、いいかしら。」
「ああ、お前はDARQを殺ればいい。」
「檸檬、“ダーク”って…」
『えっと…色々説明すっ飛ばせば、つまりはあたしの事……』
少し言葉を詰まらせる檸檬を見て、雲雀は大体を察した。
「ふぅん……気に食わないね、それ。やはり君たちは、僕が咬み殺そう。」
『恭弥ダメっ…』
制止しようとする檸檬だったが、雲雀は真っ直ぐに幻騎士へと向かっていく。
仕込みトンファーと、雲のボンゴレリングを携えて。
「(ついている。雲のボンゴレリングを持ってくるとはな…)」
「いくよ。」
雲雀の攻撃は確かに俊敏なものだった。
しかし、そのトンファーが幻騎士に触れる前に…
ガッ、
『恭弥っ…!!』
幻騎士の刀の柄が、雲雀の頭を打った。
『(あのままじゃ瓦礫にぶつかる…!)』
檸檬が雲雀を受け止めに行こうとした、その時。
「姉さんの相手は、私よ。」
『きゃっ…!』
その行く手を阻むように、蜜柑が立って銃口を向けていた。
ズガガガ、
『くっ…』
先ほど銃弾から得た炎をブーツに移し、飛行で回避する檸檬。
しかし、
「炎弾…」
「キイィーッ!」
『(またこの猿…!)』
空中での行く手を阻む猿の口には、前と同じような光球が。
『うっ…!』
その大きな炎を正面からナイフで受け止めた衝撃で、檸檬は後ろに大きく飛ばされる。
うまく着地し、放たれた炎をナイフで奪えたものの、檸檬の息は荒かった。
「続けましょうよ、私たちのデスマッチを。」
妖しく笑う蜜柑の隣で、人間と同じくらいの大きさの猿が一声鳴いた。
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-----------
「何だありゃ…人間なのか?」
「………元々はね。」
第4ドッグにて、肉体増殖をした4人の男にアイリスは早速指示を出す。
「さぁ捻っといで、下僕どもvV」
「プルァ!!」
雄叫びと共に、彼らのうち2体の腕があり得ないほど伸びる。
それはツナの両腕をとらえ、動きを封じた。
「(筋肉どころか、関節まで増殖してるのか?)」
考えている間にツナの足は浮く。
そして、3体目が足の筋肉を増強させ……
「プルルア!!」
「がっ…!」
ツナの腹部に重い蹴りを叩きこんだ。
壁を突き破って飛んでいくツナを見て、スパナが呟く。
「だから無理だって…」
「本当にあいつら人間なのか?」
「死茎隊…ミルフィオーレ人体覚醒部の被験体だ……」
彼らは肉体を改造されていて、特殊なスーツで全身を覆われ、
且つアイリスの鞭の雲の炎によって異常な体質変化を起こしているそうだ。
「で、人体に眠る攻撃能力が覚醒し、あーなってる。」
「人体実験か……ひでーことしやがるな。」
「……それは少し違う。あいつらは自ら進んで肉体の改造をしたんだ。」
被験体達は4人とも、元は人体覚醒部の博士だった。
彼らは皆、一人の助手・アイリスに惚れていた。
そして、好きなアイリスを喜ばせるために、他の者より秀でるために、競うように自分の肉体にメスを入れ、改造した。
「あれはその成れの果ての姿……生きがいは殺戮と、妖花アイリス。」
「よーくやったよ、下僕どもvV」
彼女が発した一つの褒め言葉に、群がるように集まる死茎隊。
その様子を見て、リボーンは言う。
「……イビツな関係だな。」
「さぁ、ボンゴレは壁の向こうだよ。開けてやるから腕ごとかっさらっといで!!」
バーを下げ、アイリスが開けた壁の向こうには、煙の中静かに立つツナが。
「へぇ、なかなかしぶといじゃないか。」
「…スパナ、何をしている。早くコンタクトを完成させてくれ。」
「え……」
ツナの台詞で、リボーンはピンと閃いた。
賛同するようにスパナを急かす。
「完成時間が変わらねぇのがポリシーなんだろ?早く作れ、スパナ。」
「……でも、死茎隊はキング・モスカより強いって言ったろ?無駄な足掻きだ。」
「ツナはそう感じてねーぞ。」
同時に、スパナとリボーンの横をツナが飛んでいく。
しかしアイリスは嘲るかのように言う。
「いいや無駄さね、やっちまいな。」
再び、腕が伸ばされる。
しかし今度は、無駄のない動きでかわしていくツナ。
そして、1体の顔面に膝蹴りをお見舞いした。
「プルァ!!」
同じく襲いかかって来た2体目も、難なく地に伏せさせる。
「何だい?どーなってんだい!?」
「ウチの知るボンゴレとは…まるで動きが違う……」
「キング・モスカ戦とでは、違う所が2つあるからな。」
1つは、キング・モスカを倒した経験が、戦闘能力を上げているという事。
もう1つは、相手が機械でなく人間であるという事。
「生身の人間だからこそ見せる、動きや考えの予兆……ツナはそれを感じ取ってんだ。」
それこそが、ボンゴレの血に継承される“見透かす力”。
「またの名を……超直感!!」
---
------
------------
「ピグ、」
「キィッ!」
蜜柑が小さく呼ぶだけで、ピッタリのコンビで攻撃してくる匣兵器の猿。
実質2人分の相手をしている檸檬は、攻撃をかわすので精一杯だった。
『このっ……!』
猿を激しく蹴り飛ばした直後の檸檬を、蜜柑の銃弾が襲う。
それをかわせば今度は、“炎弾”が放たれる。
『はぁっ…はぁっ……』
「休憩できる立場?」
『(こう、なったら…!)』
一か八かの賭けに出た。
匣兵器は、リングの炎をエネルギーにして動いている。
つまり、猿の炎を全て奪えば動きを止めることが出来るかも知れない…
そう、思ったのだ。
「(的をピグにしぼった…?)」
『これでっ…どーよっ!!』
尾に灯った炎を、奪えるだけ奪う。
すると、
「キィィ…」
『(やっぱり!)』
空中に飛び上がっていた猿は動きを止め、落下していった。
そして、徐々にその大きさを縮めていく。
「ピグ、」
「キッ!」
『え…!?』
蜜柑が名を呼ぶと、小さくなった猿は元気そうにその肩に乗った。
倒れず蜜柑のもとに戻った猿に、檸檬は驚かされた。
『どう、して…』
「ピグは通常の匣兵器とは異なる、私の作品よ。」
蜜柑の言葉に、檸檬は目を見開く。
やはり、蜜柑は自作の匣を持っていた。
そしてそれは……普通じゃない匣。
「通常、匣兵器は炎のチャージが無くなるか、一定量を満たさなければ動きを止める。」
『なのに、何故…』
「この小さい猿こそ、本来の姿だからよ。炎を奪われても、形を保っていられる。」
「キイッ!」
確かに、人と同じ大きさよりも、手の平に満たないサイズの方が、必要な炎の量は少ない。
その為、炎を奪われても大きさが保てなくなるだけで、小さくなれば通常通り動けるのだ。
『事前に聞いてたよ、蜜柑がオリジナル匣を持ってるって話はね。』
「なら紹介してあげるわ。これで見収めでしょうから。」
蜜柑が言うと、猿はスタッと地面に降り立った。
「大空小猿(マーモセット・オブ・グレートヘヴン)………マーモセット属の中でも最小の、ピグミーマーモセット。」
『“Great Heaven”……“大空”の英訳ってワケね…』
「見せてあげるわ、ピグのプログラムを。」
くるりと銃を回した蜜柑は、ピグに銃口を向け、口角を上げた。