未来編①
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・雲雀恭弥
風紀財団
ボンゴレファミリー(?)
風紀財団委員長
雲の守護者(?)
雲系リング(精製度C) ×2
雲系リング(精製度D) ×4
霧系カモフラージュリング(精製度E)
ハリネズミ
ハリネズミ(レプリカ)×2
トンファー 等
雲雀恭弥VS.幻騎士
恭弥が…
本当に恭弥が来た……
幻騎士が匣を展開して、辺りはジャングルみたいになる。
『あっ…!』
生えて来た草木は、ラルや武を隠すように伸びていく。
倒れている人間には興味ない、ってコトだろう。
「幻騎士、これは…?」
「簡単には解かん、これがフィールドだと思っていい。」
隣に立つ蜜柑の問いに、幻騎士は恭弥を見据えながら答えた。
多分、蜜柑が考えてる事はあたしと同じ。
あたし達2人はどっちも五感が鋭いが故に幻術に弱い。
だから、幻騎士の意志によっては武のようになりかねない。
「ふぅん……どうやら君は霧の幻術使いのようだね。」
恭弥は緩く笑みを浮かべながら、殺気を強めた。
「それと、また会ったね。随分探したよ、LIGHT。」
「私は用は無いけど。」
「“また”、僕の檸檬を傷つけたようだね。」
「だったら?」
淡白な蜜柑の答え方に、恭弥は静かに言う。
「僕がここで、君を咬み殺す。」
『恭弥…!』
「でもまずは、そっちの君からだ。僕は術士が嫌いでね、這いつくばらせたくなる。」
恭弥のリングに、紫色の炎が灯る。
一方幻騎士は、何のアクションも起こそうとせずに言った。
「雲雀恭弥……ボンゴレ最強の守護者だという噂は聞いている。それが真かどうか…確かめよう。」
『(あっ…!)』
「(何か来る…!!)」
次の瞬間視えたのは、恭弥に向かっていく無数の“何か”。
あたしは波長で視えるけど、通常の視界じゃ見えないハズ。
だけど恭弥は見事に避けた。
『すごい…』
「余所見してる暇、あるの?」
ズガガンッ、
『わっ……と!』
幻騎士がフィールドを変えないと分かったからか、蜜柑はあたしヘの攻撃を再開した。
追尾型の銃弾が、あたし目掛けてやって来る。
『しょうがないなぁっ……』
第六感を継続発動させて、追尾型の炎を全て奪う。
それを即座にブーツに移し、空間移動で蜜柑の背後に回り込んだ。
『これで…どうよっ!』
「ぐっ…!」
背後に回り込んですぐ、脇腹に蹴りを叩き込んだ。
咄嗟の攻撃に、蜜柑は反応が鈍ったみたいで結構なダメージになったハズ。
『大空の炎で推進力を上げた蹴りはどう?』
木の壁に打ち付けられた蜜柑は、ゆっくりと起き上がる。
唇から漏れた一筋の血を親指で拭いながら、また妖しく笑った。
「追撃しないところが…甘いわね。」
『殺し合いに来たんじゃないもの。』
「どうだか。」
鼻で笑う蜜柑が再びリングに炎を灯した、その時。
ガキィ…!!
「ん…?」
『えっ!?』
響いた音は、恭弥のトンファーが幻騎士の剣とぶつかったものだった。
見えないハズの攻撃を読まれ、幻騎士の表情も困惑に染まっている。
「(見えている!?)」
「幻術には詳しいんだ、嫌いだからこそね。」
不敵な笑みを浮かべながら恭弥が言った、次の瞬間…
ドゴォッ、
今まで見た中で1番大きくなった球針態が、幻騎士を巻き込んで壁に激突した。
『倒、した…?』
「檸檬、こっちおいで。」
『え?』
「いいから。」
良く分からないまま、あたしは恭弥の隣に移動する。
『でもまだ、蜜柑との……』
「ライトは僕が咬み殺す。」
あたしが負傷してるのに、恭弥は気付いてるんだ…。
確かに、破壊の死ぬ気弾に一発当たっちゃったけど…
『でも…!』
「………ボンゴレには、甘い人間しかいないのかしらね。」
ちゃんとあたしが決着をつけたい、
恭弥にそう言おうとしたのを遮って、蜜柑が言った。
「白蘭の懐刀……それで折ったつもり?」
「キュウウ!!」
「ん?」
『まだ…!』
ブシャアッ、
蜜柑の言葉は確かだった。
球針態が破られて、幻騎士が奥から現れる。
そして、蜜柑の立つ付近に降り立った。
「手こずってるのか、蜜柑。」
「どっちが。」
「俺の方は、じきに終わる。」
「私もよ。………ただ、」
ほんの少し眼力を強くして正面を見る蜜柑に、幻騎士は疑問符を浮かべる。
「雲の守護者の介入は厄介だわ。」
「気にするな、俺が担う。」
蜜柑と幻騎士が話している間に、あたしは恭弥に聞いた。
『ミルフィオーレの突入部隊、皆やっつけて来たの?』
「当たり前でしょ。」
『さっすが恭弥!』
また会えたのが、嬉しくて。
まさかココで会うとは思ってなかったけれど。
「檸檬、その傷……」
『銃弾一発かすっただけ、問題無いよ。それに、ね…』
さっきまでの絶望感が、無力感が、嘘みたい。
神様はあたしに、最大の力の源をくれた。
『恭弥と喋ったら、全部回復しちゃった♪』
「無理は無しだよ、檸檬。」
『平気っ!』
そうだよ、あたしは平気。
恭弥がいる限り負けないって、約束したもん。
『んじゃ、喧嘩して来るね。恭弥、気をつけて。』
「檸檬も。」
あたしがナイフを取ったのと同時に、蜜柑も銃を握った。
そして幻騎士が剣を取り、恭弥もリングを指にはめる。
「確かに、貴様は出来る。俺の好敵手になり得る程にな。」
「それはどうだろうね。僕の好敵手にはそう簡単にはなれないよ。君にその資格があるかはまず、その横行な霧の幻術を解いてからだ。」
2つの球針態が匣から飛び出し、恭弥のリングが割れる。
それらは丸い軌道を描き、幻覚世界を削り始めた。
「君の幻覚は頭の中の想像を映像化したものだ。映像処理が間に合わない程の負荷を君に与えたら?」
『(この幻覚は崩壊して…匣兵器の本来の姿が見える!!)』
恭弥はやっぱり凄いと思いつつ、蜜柑の銃弾をかわす。
破壊の死ぬ気弾も追尾弾も、第六感を使えばかわせるし、炎も奪える。
本当に怖いのは………
『(まだ、開匣しないつもりなの…?)』
蜜柑が腰につけている匣兵器。
蜜柑の腰にある匣のうち、1つには二丁拳銃が入ってた。
そして1つには、前にあたしを捕まえようとした時の卵型カプセルが入ってるハズ。
だとしても、あと2つは余ってる。
もしかしたら……
もっと強力な兵器が…
---「最近、独自で匣を製作してるって話だよ。」
突入前に、恭弥が言ってた。
それがどんな物かは分からないけど、蜜柑の優秀な頭脳が生み出したんだ、並大抵の匣じゃないに決まってる。
『もう、銃弾は見切ったよ!』
継続発動で炎を奪いブーツに移して、すかさず接近して蹴り上げる。
「く……、」
『な…!』
腹部への蹴りを、腕で受け止めた…!?
腕が使えなくなったら、引き金を引く事も出来なくなるハズなのに……
「だから甘いのよ。」
『きゃっ…!』
蜜柑はその場で屈んで、回し蹴りをする。
咄嗟に身を引いたけど、ヒールの先が頬を掠った。
「一度食らえば威力は測定出来る。いくら大空の推進力が加わったと言っても、姉さんの蹴りは私を殺せない。」
『……殺さないって、言ったじゃない。』
「そんな台詞を吐いた時点で、敗北は決まってる。」
『んーん、あたしは負けないよ。だって、』
たった1人の妹を、傷つけたくない。
だけど、蜜柑は自分の体が動く限り、あたしへの攻撃をやめない。
どんなに傷ついても、あたしを殺そうと挑んで来る。
だから……
『話を聞いてくれるまで、反撃する事にしたから!』
と、その時。
「く……」
「…綻び始めたようだね。」
『うわっ…』
幻覚世界が、ボロボロと崩れ出した。
草木のビジョンが消え、その奥には真っ黒な空間が見える。
「これが君の匣兵器…」
「幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)…姿を見たのは貴様らが初めてだ。そして最後の人間となる。」
落下していた海牛がピタリと動きを止めて、一斉に恭弥に向かってく。
『恭弥…!』
「他人の心配をしてる場合?」
『わっ……』
無数の追尾弾が、あたしに向けて撃たれる。
『(継続発動っ…!)』
瞬時に全ての弾の炎を奪って、蜜柑の背後に回り込んだ。
「(また後ろ…!)」
『これでちょっとは、大人しくしててっ!!』
今までは、斜め後ろから腹部ばかり狙っていたけど、今度はちょっと変えた。
真後ろから、蜜柑の背中のど真ん中を蹴り飛ばした。
向こうの壁に正面からぶつかれば、さすがの蜜柑でもダメージは大きいだろう。
何せ、背中でぶつかるのとワケが違う。
『(恭弥っ…!)』
蜜柑を退けてから、慌てて恭弥の方を見る。
幻海牛による爆発を、全てかわしているようだった。
「読めたぞ。リングの炎をレーダーの代わりにしているのだな。」
恭弥は雲の炎を薄く広げて、その揺らぎで幻海牛の位置や爆発のタイミングを見切ってたみたい。
でも、その戦法は………
パリンッ、
波動の強さでリングを割ってしまう恭弥には、使える回数が限られるやり方。
「タネさえ分かれば怖くない。対処すればいいだけの話だ。」
「いいや、もうその必要な無いな。」
『(3つのリング…?)』
幻騎士と同じく、疑問符を浮かべるあたし。
と、恭弥は不意にこっちを見て。
「しばらく休んでてもらうよ、檸檬。」
『えっ?』
「君もね、ライト。」
恭弥が視線を移した先には、
「冗談じゃないわ。何するつもりか知らないけど、邪魔しないでくれる?」
『うそ…!』
正面から壁に激突したハズなのに、ほぼ無傷の蜜柑。
砂埃を払うかのように首を振り、ツインテールを靡かせる。
何で!?だってさっき確かに……
真後ろから蹴り飛ばしたのに、激突を免れた?
追突直前に方向転換するなんて、いくら何でも出来っこ無い…!
蜜柑へのダメージが予想外に少なかった事に困惑するあたし。
でも恭弥は、本当に今からあたし達が休憩する事になるかのように続ける。
「あの中には、2人しか入れないんだ。」
『“あの中”…?』
「だから檸檬、そこから見てなよ。」
3つのリングを指にはめた恭弥は、幻騎士の方を向いた。
「光栄に思うといい。君は、かつて味わった事の無い世界で……咬み殺してあげる。」
ドキリと心臓が跳ねるような、恭弥の不敵な笑み。
だけど、その考えは全くと言っていい程分からなくて。
『恭弥……』
無意識に、胸の前で拳を作っていた。
風紀財団
ボンゴレファミリー(?)
風紀財団委員長
雲の守護者(?)
雲系リング(精製度C) ×2
雲系リング(精製度D) ×4
霧系カモフラージュリング(精製度E)
ハリネズミ
ハリネズミ(レプリカ)×2
トンファー 等
雲雀恭弥VS.幻騎士
恭弥が…
本当に恭弥が来た……
幻騎士が匣を展開して、辺りはジャングルみたいになる。
『あっ…!』
生えて来た草木は、ラルや武を隠すように伸びていく。
倒れている人間には興味ない、ってコトだろう。
「幻騎士、これは…?」
「簡単には解かん、これがフィールドだと思っていい。」
隣に立つ蜜柑の問いに、幻騎士は恭弥を見据えながら答えた。
多分、蜜柑が考えてる事はあたしと同じ。
あたし達2人はどっちも五感が鋭いが故に幻術に弱い。
だから、幻騎士の意志によっては武のようになりかねない。
「ふぅん……どうやら君は霧の幻術使いのようだね。」
恭弥は緩く笑みを浮かべながら、殺気を強めた。
「それと、また会ったね。随分探したよ、LIGHT。」
「私は用は無いけど。」
「“また”、僕の檸檬を傷つけたようだね。」
「だったら?」
淡白な蜜柑の答え方に、恭弥は静かに言う。
「僕がここで、君を咬み殺す。」
『恭弥…!』
「でもまずは、そっちの君からだ。僕は術士が嫌いでね、這いつくばらせたくなる。」
恭弥のリングに、紫色の炎が灯る。
一方幻騎士は、何のアクションも起こそうとせずに言った。
「雲雀恭弥……ボンゴレ最強の守護者だという噂は聞いている。それが真かどうか…確かめよう。」
『(あっ…!)』
「(何か来る…!!)」
次の瞬間視えたのは、恭弥に向かっていく無数の“何か”。
あたしは波長で視えるけど、通常の視界じゃ見えないハズ。
だけど恭弥は見事に避けた。
『すごい…』
「余所見してる暇、あるの?」
ズガガンッ、
『わっ……と!』
幻騎士がフィールドを変えないと分かったからか、蜜柑はあたしヘの攻撃を再開した。
追尾型の銃弾が、あたし目掛けてやって来る。
『しょうがないなぁっ……』
第六感を継続発動させて、追尾型の炎を全て奪う。
それを即座にブーツに移し、空間移動で蜜柑の背後に回り込んだ。
『これで…どうよっ!』
「ぐっ…!」
背後に回り込んですぐ、脇腹に蹴りを叩き込んだ。
咄嗟の攻撃に、蜜柑は反応が鈍ったみたいで結構なダメージになったハズ。
『大空の炎で推進力を上げた蹴りはどう?』
木の壁に打ち付けられた蜜柑は、ゆっくりと起き上がる。
唇から漏れた一筋の血を親指で拭いながら、また妖しく笑った。
「追撃しないところが…甘いわね。」
『殺し合いに来たんじゃないもの。』
「どうだか。」
鼻で笑う蜜柑が再びリングに炎を灯した、その時。
ガキィ…!!
「ん…?」
『えっ!?』
響いた音は、恭弥のトンファーが幻騎士の剣とぶつかったものだった。
見えないハズの攻撃を読まれ、幻騎士の表情も困惑に染まっている。
「(見えている!?)」
「幻術には詳しいんだ、嫌いだからこそね。」
不敵な笑みを浮かべながら恭弥が言った、次の瞬間…
ドゴォッ、
今まで見た中で1番大きくなった球針態が、幻騎士を巻き込んで壁に激突した。
『倒、した…?』
「檸檬、こっちおいで。」
『え?』
「いいから。」
良く分からないまま、あたしは恭弥の隣に移動する。
『でもまだ、蜜柑との……』
「ライトは僕が咬み殺す。」
あたしが負傷してるのに、恭弥は気付いてるんだ…。
確かに、破壊の死ぬ気弾に一発当たっちゃったけど…
『でも…!』
「………ボンゴレには、甘い人間しかいないのかしらね。」
ちゃんとあたしが決着をつけたい、
恭弥にそう言おうとしたのを遮って、蜜柑が言った。
「白蘭の懐刀……それで折ったつもり?」
「キュウウ!!」
「ん?」
『まだ…!』
ブシャアッ、
蜜柑の言葉は確かだった。
球針態が破られて、幻騎士が奥から現れる。
そして、蜜柑の立つ付近に降り立った。
「手こずってるのか、蜜柑。」
「どっちが。」
「俺の方は、じきに終わる。」
「私もよ。………ただ、」
ほんの少し眼力を強くして正面を見る蜜柑に、幻騎士は疑問符を浮かべる。
「雲の守護者の介入は厄介だわ。」
「気にするな、俺が担う。」
蜜柑と幻騎士が話している間に、あたしは恭弥に聞いた。
『ミルフィオーレの突入部隊、皆やっつけて来たの?』
「当たり前でしょ。」
『さっすが恭弥!』
また会えたのが、嬉しくて。
まさかココで会うとは思ってなかったけれど。
「檸檬、その傷……」
『銃弾一発かすっただけ、問題無いよ。それに、ね…』
さっきまでの絶望感が、無力感が、嘘みたい。
神様はあたしに、最大の力の源をくれた。
『恭弥と喋ったら、全部回復しちゃった♪』
「無理は無しだよ、檸檬。」
『平気っ!』
そうだよ、あたしは平気。
恭弥がいる限り負けないって、約束したもん。
『んじゃ、喧嘩して来るね。恭弥、気をつけて。』
「檸檬も。」
あたしがナイフを取ったのと同時に、蜜柑も銃を握った。
そして幻騎士が剣を取り、恭弥もリングを指にはめる。
「確かに、貴様は出来る。俺の好敵手になり得る程にな。」
「それはどうだろうね。僕の好敵手にはそう簡単にはなれないよ。君にその資格があるかはまず、その横行な霧の幻術を解いてからだ。」
2つの球針態が匣から飛び出し、恭弥のリングが割れる。
それらは丸い軌道を描き、幻覚世界を削り始めた。
「君の幻覚は頭の中の想像を映像化したものだ。映像処理が間に合わない程の負荷を君に与えたら?」
『(この幻覚は崩壊して…匣兵器の本来の姿が見える!!)』
恭弥はやっぱり凄いと思いつつ、蜜柑の銃弾をかわす。
破壊の死ぬ気弾も追尾弾も、第六感を使えばかわせるし、炎も奪える。
本当に怖いのは………
『(まだ、開匣しないつもりなの…?)』
蜜柑が腰につけている匣兵器。
蜜柑の腰にある匣のうち、1つには二丁拳銃が入ってた。
そして1つには、前にあたしを捕まえようとした時の卵型カプセルが入ってるハズ。
だとしても、あと2つは余ってる。
もしかしたら……
もっと強力な兵器が…
---「最近、独自で匣を製作してるって話だよ。」
突入前に、恭弥が言ってた。
それがどんな物かは分からないけど、蜜柑の優秀な頭脳が生み出したんだ、並大抵の匣じゃないに決まってる。
『もう、銃弾は見切ったよ!』
継続発動で炎を奪いブーツに移して、すかさず接近して蹴り上げる。
「く……、」
『な…!』
腹部への蹴りを、腕で受け止めた…!?
腕が使えなくなったら、引き金を引く事も出来なくなるハズなのに……
「だから甘いのよ。」
『きゃっ…!』
蜜柑はその場で屈んで、回し蹴りをする。
咄嗟に身を引いたけど、ヒールの先が頬を掠った。
「一度食らえば威力は測定出来る。いくら大空の推進力が加わったと言っても、姉さんの蹴りは私を殺せない。」
『……殺さないって、言ったじゃない。』
「そんな台詞を吐いた時点で、敗北は決まってる。」
『んーん、あたしは負けないよ。だって、』
たった1人の妹を、傷つけたくない。
だけど、蜜柑は自分の体が動く限り、あたしへの攻撃をやめない。
どんなに傷ついても、あたしを殺そうと挑んで来る。
だから……
『話を聞いてくれるまで、反撃する事にしたから!』
と、その時。
「く……」
「…綻び始めたようだね。」
『うわっ…』
幻覚世界が、ボロボロと崩れ出した。
草木のビジョンが消え、その奥には真っ黒な空間が見える。
「これが君の匣兵器…」
「幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)…姿を見たのは貴様らが初めてだ。そして最後の人間となる。」
落下していた海牛がピタリと動きを止めて、一斉に恭弥に向かってく。
『恭弥…!』
「他人の心配をしてる場合?」
『わっ……』
無数の追尾弾が、あたしに向けて撃たれる。
『(継続発動っ…!)』
瞬時に全ての弾の炎を奪って、蜜柑の背後に回り込んだ。
「(また後ろ…!)」
『これでちょっとは、大人しくしててっ!!』
今までは、斜め後ろから腹部ばかり狙っていたけど、今度はちょっと変えた。
真後ろから、蜜柑の背中のど真ん中を蹴り飛ばした。
向こうの壁に正面からぶつかれば、さすがの蜜柑でもダメージは大きいだろう。
何せ、背中でぶつかるのとワケが違う。
『(恭弥っ…!)』
蜜柑を退けてから、慌てて恭弥の方を見る。
幻海牛による爆発を、全てかわしているようだった。
「読めたぞ。リングの炎をレーダーの代わりにしているのだな。」
恭弥は雲の炎を薄く広げて、その揺らぎで幻海牛の位置や爆発のタイミングを見切ってたみたい。
でも、その戦法は………
パリンッ、
波動の強さでリングを割ってしまう恭弥には、使える回数が限られるやり方。
「タネさえ分かれば怖くない。対処すればいいだけの話だ。」
「いいや、もうその必要な無いな。」
『(3つのリング…?)』
幻騎士と同じく、疑問符を浮かべるあたし。
と、恭弥は不意にこっちを見て。
「しばらく休んでてもらうよ、檸檬。」
『えっ?』
「君もね、ライト。」
恭弥が視線を移した先には、
「冗談じゃないわ。何するつもりか知らないけど、邪魔しないでくれる?」
『うそ…!』
正面から壁に激突したハズなのに、ほぼ無傷の蜜柑。
砂埃を払うかのように首を振り、ツインテールを靡かせる。
何で!?だってさっき確かに……
真後ろから蹴り飛ばしたのに、激突を免れた?
追突直前に方向転換するなんて、いくら何でも出来っこ無い…!
蜜柑へのダメージが予想外に少なかった事に困惑するあたし。
でも恭弥は、本当に今からあたし達が休憩する事になるかのように続ける。
「あの中には、2人しか入れないんだ。」
『“あの中”…?』
「だから檸檬、そこから見てなよ。」
3つのリングを指にはめた恭弥は、幻騎士の方を向いた。
「光栄に思うといい。君は、かつて味わった事の無い世界で……咬み殺してあげる。」
ドキリと心臓が跳ねるような、恭弥の不敵な笑み。
だけど、その考えは全くと言っていい程分からなくて。
『恭弥……』
無意識に、胸の前で拳を作っていた。