未来編①
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「スパナ…さん……?コンタクトの調整、何とか早く出来ませんか?」
「何を言われても完成時間は変わらない。ウチのポリシー。」
「……はぁ…」
「ふむ…」
変わらぬスピードでカタカタとパソコンをいじるスパナに、リボーンは別の話題を持ちかける。
「なぁスパナ、お前、白くてまるい装置のこと知ってるか?」
リボーンと同じように、ホログラムで装置の画像が出て来る。
と、スパナは表情を動かした。
「知ってるんですか?」
「正一の研究所にある装置だ。」
「何を研究してんだ?」
尋ねたリボーンに、スパナは包み隠さず話し始めた。
丸い装置
「ずっと前に聞いた時は、亜空間のエネルギーを捕まえるって呟いてたな。」
「そんなもん、何に使うんだ?」
「相当あり得ない話だよ。この時代でも自分の意志でソレを実行出来るのは、雨宮檸檬しかいない……」
「檸檬…!?」
「時空間移動絡みの……いわゆる、タイムトラベル。」
その単語を聞いたリボーンとツナは口を揃えて反復する。
「「タイムトラベル!!?」」
「あ…(言って良かったんだっけ…?)」
ようやく、点と点が繋がった。
入江がタイムトラベルの研究をしていたとすると、過去に戻るために彼を標的にするという話も辻褄が合う。
というより、入江は過去に帰れない元凶なのかも知れない。
「やっぱり、この侵入作戦は間違ってなかったんだ……これで入江を何の為に倒すのか、ハッキリ分かった…」
ツナの拳はグッと握られる。
「入江正一を捕まえて、俺達が過去に帰る方法を白状させるんだ!!」
「だな。」
「何に気付いたって、時すでに遅しだよ。」
不意に聞こえた第3者の声に、ツナはふっと振り向く。
そこには、額に死ぬ気の炎を灯した4人の男に囲まれた女が1人。
彼女と周りの男達を見て、スパナが呟く。
「…アイリスと死茎隊………」
と、そんなスパナを庇うように伸ばされる右手。
それは、咄嗟に超死ぬ気モードになったツナのものだった。
「下がっていろ。」
---
------
------------
「3人なのか?」
-「帰って来たのはニコラ隊長を含む3名の偵察部隊です。彼らに化けて敵は侵入したと考えられます。」
コントロールルームのモニターに、1枚の画像が映される。
-「1人は未だ不明ですが、うち2人は獄寺への突入部隊を襲撃する際、カメラが捉えました。」
「あれは!!10年前のクローム髑髏!!生きていたのか……」
そこにはしっかりと髑髏と草壁の姿が映されていた。
確認した入江は瞬時に状況を整理する。
「…よし、これはいい知らせだ。今やこの基地の布陣に死角はない。より多くのボンゴレリングを回収出来る。」
---
-----
-----------
ズガガガガ……
檸檬が動きを止めたのを一瞬で見破った蜜柑は、畳み掛けるように連射した。
何発かは壁に当たっているようで、壁の倒壊による土ぼこりが起こる。
「(死んではいないみたいね……)」
土ぼこりが部屋全体に広がり、蜜柑の視界は極度に悪くなっていた。
しかし、部屋のどこからか檸檬のか細い息づかいが聞こえる。
抜群の聴覚でそれを聞き取った蜜柑には、檸檬がまだ生きている事が分かっていた。
そして、先ほどよりも弱まっている事も。
「もう、終わりね。」
『…そんな事ないよ。』
ハッキリとした返事があった方向に、蜜柑は即座に目を向ける。
そして、本当に僅かだが驚いた。
『あんまり乱射するから、使わせてもらったよ。』
「Fブーツ……!?」
宙に浮く檸檬のFブーツに灯っていたのは、自分の銃弾に乗っていたハズの大空の炎だった。
否、蜜柑が驚いたのはそんな事に対してではなかった。
「何故、それを持っているの…」
『未来のあたしから、引き継いだの。』
「あり得ないわ……姉さんを捕獲した時に焼却処分し、設計図もボンゴレアジトから消し去ったもの。」
『でも残ってた。ジャンニーニの手元に。』
檸檬の答えに、蜜柑は眉を寄せた。
10年後の檸檬が万一脱走した時に、二度と同じブーツを入手出来ないようにと、処分したのだ。
それなのに、引き継がれている事が屈辱でならなかった。
「そう……あのメカニック…」
『悪いけど、あたしは意地でも武の無事を確認しに行くよ。』
今蜜柑と話している間にも、檸檬には山本の弱り切った波動が伝わって来ている。
隣の部屋だというのに、蜜柑がいるだけで通過すら困難な状況。
「大人しく捕獲されるなら、冥界で再会出来るわ。」
『そんな冗談、聞きたくない。』
「冗談かどうかは、自分の傷の具合を確かめてから考えてみたら?」
『…………っ!』
蜜柑の言葉に、檸檬は目を見開いた。
隠し通せていたハズなのだが、やはりダメだった。
野生動物並に発達した蜜柑の五感は誤摩化せず、檸檬の負傷は見抜かれていた。
「最初の1発、当たったようね。」
妖しい笑みを浮かべる蜜柑の視線は、檸檬の右脇腹に向いていた。
そこからは、じんわりと赤が滲む。
腕で隠していたようだが、やはり出血があるのと無いのとでは、息づかいが変わるのだ。
『……二重構造ってだけじゃなかった。あの弾には…追尾機能がついてた。』
「ええ。」
くるりと銃を回してから、蜜柑は再び構えた。
「だから、回避は不可能よ。」
『炎を…2段階で奪わない限りは、でしょ?』
「でもそれをすれば、姉さんのリバウンドは早まる。そのリスクを冒してまで私の銃を全てかわすつもり?」
ズガガガ…
蜜柑の放つ銃弾は、真直ぐ檸檬に向かって行く。
檸檬は瞬時に透視を使う。
『(5発中、2発が追尾弾…!!)』
ナイフを握り直した檸檬は、5つの弾から炎を奪い、Fブーツのアルミ盤に移す。
『(俊足っ!)』
ブーツに宿した炎の推進力と、元からあった俊足を同時に利用し、空中を移動する檸檬。
ツナのグローブやγ達のFシューズのように飛行し、追尾弾を避け続けた。
---
------
-------------
薄れ行き、消えそうになった意識を何とか奮い立たせ、瞼を持ち上げる。
見えて来たのは、今まで戦ってた相手の足だった。
「(あ、俺………倒れてんのか…)」
ぼんやりとした視界の中で、相手は…幻騎士は静かに言った。
「殺す前に遺言を聞いてやろうと思ったが……」
遺言なんて、ねぇよ……
立ち上がりたい、
立ち上がって、剣を握りたい、
剣を握って、勝ちたい。
勝ったら………
---「檸檬!生きて、また会おーなっ!」
---『………うん。』
また、あんな風に笑いかけてくれるだろうか。
その時初めて、守ったって言えるんじゃねーか。
今の、俺は………
「……口をきく事も出来ぬようだな。今、楽にしてやる。」
楽になんて、なれねーよ。
ここで死んだら、楽園にも行けねーと思うし。
言いたい事はたっくさん浮かぶってのに、
それを表に出す事すら出来ない。
そんな俺の足に何かが巻き付いて、引っ張った。
けどそれも、一瞬で。
「無駄な事を……」
「く…そぅ……」
あぁ、ラル・ミルチだ…
俺を助けようと、引き寄せようとしてくれてた…
ダメだ……
意識が続か、ねぇ……
ツナ……檸檬……みんな……
すま、ねぇ…
---
------
『(武っ……!!?)』
感じ取りたくない事を、感じ取ってしまった。
それは同時に、蜜柑にも分かったようで。
「雨の守護者の音、消えたわね。」
『………退いてっ!!!』
次の瞬間、あたしは無意識のうちに第六感を継続発動させていた。
継続発動は最長で5.5秒が限界。
それ以上続ければ、リバウンドを早める事になる。
「(これは…!)」
『ちょこまかと……追って来ないで!!』
蜜柑が撃って来た追尾弾から、全ての炎を奪った。
早く、早く武のトコに戻らなくちゃ……!
お願い……死んじゃイヤだっ…!!
『(局所移動…!)』
武の、酷く弱った波動が伝わって来る。
それを辿って、ピンポイントで移動した。
あれだけ修業したんだもん。
壁1枚越えるくらい、楽勝なハズ…!
---
-------
「ボンゴレ雨の守護者よ。」
幻騎士が、振り上げた剣に霧の炎を纏わせる。
地に臥せった山本は、もうピクリとも動かない。
「貴様に敬意を表し、我が剣最高の太刀で葬ってやる。」
そして、
「………さらばだ。」
振り下ろそうとした、その時。
ぐにゃり、幻騎士の目の前の“空間”が歪む。
「(何…!?)」
『……させない…』
「貴様は…!」
山本と幻騎士の間に、ナイフを構えた檸檬が現れた。
「DARQ……」
『絶対に、させない…!!』
一瞬だけ驚かされた幻騎士だが、檸檬の腹部からの出血を見て、溜め息をついた。
「蜜柑にやられたか。」
『関係ないでしょ。』
「だとしたら、貴様に勝ち目はない。」
『そんなの……まだ分からない。』
「いいえ、幻騎士は正しいわ。」
山本を庇う体勢のまま、檸檬は声のした方を向いた。
蜜柑も、隣の部屋から移って来たのだ。
「負傷した今の姉さんに、雨の守護者を庇いながら、私と幻騎士を相手するなんて出来るかしら。」
「第六感をもってしても、不可能だ。」
何で、何で、
どうしてあたしは無力なの?
どうしていつも、肝心な時にこうなっちゃうの?
護りたいの。
それだけなの。
いくらあたしが“闇”と呼ばれようと、
この力は、第六感は、
大切だと思う人達を護る力だって信じたいんだよ。
ねえ、どうして?
神様、お願い。
もしいるんだったら、今だけあたしの味方をして。
“闇”と呼ばれるあたしだけど、護るって決めたの。
だから、これが終わったら見捨ててもいいから、
今だけ願いを聞いて欲しいの。
「どちらを先に殺る。」
「姉さんは捕獲よ、殺したら白蘭の命令と食い違うわ。」
「そうか。」
『させないって、言ってるでしょ…!!』
「黙ってて。」
額に触れる、蜜柑の銃口。
その冷たさは、まるで蜜柑があたしに向けてる殺意みたいで。
あたしの中に残ってるハズの、
気力とか、希望とか、
全部凍らされて行くような気がして。
怖い、怖い。
今更になって、元から抱いてた恐怖が体を震わせ始める。
「退け、ダーク。雨の守護者は俺が始末する。」
『イ…ヤ……イヤ!!!』
神様。お願いだから、あたしに力を頂戴……
ビキッ…
「ん?」
突如、壁に走った亀裂。
恐怖の震えを上まる震動をあたしに与える、地響き。
そして………
ドオオッ…!
倒壊して行く壁に、こんなにも大きな期待を抱いてしまったのは何故だろう。
その答えは、すぐに分かった。
「あぁ君……丁度いい。」
この声を、この波長を、
あたしは知ってる…
「白く丸い装置は、この先だったかな?」
「あの男…」
「ボンゴレ雲の守護者、雲雀恭弥か…」
降って来る瓦礫を避ける為に、蜜柑は数メートル下がる。
あたしも咄嗟に空間移動で武を避難させて、もっかい目をこすってよく見た。
『恭……弥っ……』
「檸檬…また、会えたね。」
『うん………うんっ…!!』
本物、だった。
色んな感情が混ざって、涙が零れそうになる。
けど次の瞬間、
「その問いに、答える必要は無い。貴様はここで死ぬのだからな。」
妖し気な幻覚世界が、広がり始めた。
「何を言われても完成時間は変わらない。ウチのポリシー。」
「……はぁ…」
「ふむ…」
変わらぬスピードでカタカタとパソコンをいじるスパナに、リボーンは別の話題を持ちかける。
「なぁスパナ、お前、白くてまるい装置のこと知ってるか?」
リボーンと同じように、ホログラムで装置の画像が出て来る。
と、スパナは表情を動かした。
「知ってるんですか?」
「正一の研究所にある装置だ。」
「何を研究してんだ?」
尋ねたリボーンに、スパナは包み隠さず話し始めた。
丸い装置
「ずっと前に聞いた時は、亜空間のエネルギーを捕まえるって呟いてたな。」
「そんなもん、何に使うんだ?」
「相当あり得ない話だよ。この時代でも自分の意志でソレを実行出来るのは、雨宮檸檬しかいない……」
「檸檬…!?」
「時空間移動絡みの……いわゆる、タイムトラベル。」
その単語を聞いたリボーンとツナは口を揃えて反復する。
「「タイムトラベル!!?」」
「あ…(言って良かったんだっけ…?)」
ようやく、点と点が繋がった。
入江がタイムトラベルの研究をしていたとすると、過去に戻るために彼を標的にするという話も辻褄が合う。
というより、入江は過去に帰れない元凶なのかも知れない。
「やっぱり、この侵入作戦は間違ってなかったんだ……これで入江を何の為に倒すのか、ハッキリ分かった…」
ツナの拳はグッと握られる。
「入江正一を捕まえて、俺達が過去に帰る方法を白状させるんだ!!」
「だな。」
「何に気付いたって、時すでに遅しだよ。」
不意に聞こえた第3者の声に、ツナはふっと振り向く。
そこには、額に死ぬ気の炎を灯した4人の男に囲まれた女が1人。
彼女と周りの男達を見て、スパナが呟く。
「…アイリスと死茎隊………」
と、そんなスパナを庇うように伸ばされる右手。
それは、咄嗟に超死ぬ気モードになったツナのものだった。
「下がっていろ。」
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「3人なのか?」
-「帰って来たのはニコラ隊長を含む3名の偵察部隊です。彼らに化けて敵は侵入したと考えられます。」
コントロールルームのモニターに、1枚の画像が映される。
-「1人は未だ不明ですが、うち2人は獄寺への突入部隊を襲撃する際、カメラが捉えました。」
「あれは!!10年前のクローム髑髏!!生きていたのか……」
そこにはしっかりと髑髏と草壁の姿が映されていた。
確認した入江は瞬時に状況を整理する。
「…よし、これはいい知らせだ。今やこの基地の布陣に死角はない。より多くのボンゴレリングを回収出来る。」
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ズガガガガ……
檸檬が動きを止めたのを一瞬で見破った蜜柑は、畳み掛けるように連射した。
何発かは壁に当たっているようで、壁の倒壊による土ぼこりが起こる。
「(死んではいないみたいね……)」
土ぼこりが部屋全体に広がり、蜜柑の視界は極度に悪くなっていた。
しかし、部屋のどこからか檸檬のか細い息づかいが聞こえる。
抜群の聴覚でそれを聞き取った蜜柑には、檸檬がまだ生きている事が分かっていた。
そして、先ほどよりも弱まっている事も。
「もう、終わりね。」
『…そんな事ないよ。』
ハッキリとした返事があった方向に、蜜柑は即座に目を向ける。
そして、本当に僅かだが驚いた。
『あんまり乱射するから、使わせてもらったよ。』
「Fブーツ……!?」
宙に浮く檸檬のFブーツに灯っていたのは、自分の銃弾に乗っていたハズの大空の炎だった。
否、蜜柑が驚いたのはそんな事に対してではなかった。
「何故、それを持っているの…」
『未来のあたしから、引き継いだの。』
「あり得ないわ……姉さんを捕獲した時に焼却処分し、設計図もボンゴレアジトから消し去ったもの。」
『でも残ってた。ジャンニーニの手元に。』
檸檬の答えに、蜜柑は眉を寄せた。
10年後の檸檬が万一脱走した時に、二度と同じブーツを入手出来ないようにと、処分したのだ。
それなのに、引き継がれている事が屈辱でならなかった。
「そう……あのメカニック…」
『悪いけど、あたしは意地でも武の無事を確認しに行くよ。』
今蜜柑と話している間にも、檸檬には山本の弱り切った波動が伝わって来ている。
隣の部屋だというのに、蜜柑がいるだけで通過すら困難な状況。
「大人しく捕獲されるなら、冥界で再会出来るわ。」
『そんな冗談、聞きたくない。』
「冗談かどうかは、自分の傷の具合を確かめてから考えてみたら?」
『…………っ!』
蜜柑の言葉に、檸檬は目を見開いた。
隠し通せていたハズなのだが、やはりダメだった。
野生動物並に発達した蜜柑の五感は誤摩化せず、檸檬の負傷は見抜かれていた。
「最初の1発、当たったようね。」
妖しい笑みを浮かべる蜜柑の視線は、檸檬の右脇腹に向いていた。
そこからは、じんわりと赤が滲む。
腕で隠していたようだが、やはり出血があるのと無いのとでは、息づかいが変わるのだ。
『……二重構造ってだけじゃなかった。あの弾には…追尾機能がついてた。』
「ええ。」
くるりと銃を回してから、蜜柑は再び構えた。
「だから、回避は不可能よ。」
『炎を…2段階で奪わない限りは、でしょ?』
「でもそれをすれば、姉さんのリバウンドは早まる。そのリスクを冒してまで私の銃を全てかわすつもり?」
ズガガガ…
蜜柑の放つ銃弾は、真直ぐ檸檬に向かって行く。
檸檬は瞬時に透視を使う。
『(5発中、2発が追尾弾…!!)』
ナイフを握り直した檸檬は、5つの弾から炎を奪い、Fブーツのアルミ盤に移す。
『(俊足っ!)』
ブーツに宿した炎の推進力と、元からあった俊足を同時に利用し、空中を移動する檸檬。
ツナのグローブやγ達のFシューズのように飛行し、追尾弾を避け続けた。
---
------
-------------
薄れ行き、消えそうになった意識を何とか奮い立たせ、瞼を持ち上げる。
見えて来たのは、今まで戦ってた相手の足だった。
「(あ、俺………倒れてんのか…)」
ぼんやりとした視界の中で、相手は…幻騎士は静かに言った。
「殺す前に遺言を聞いてやろうと思ったが……」
遺言なんて、ねぇよ……
立ち上がりたい、
立ち上がって、剣を握りたい、
剣を握って、勝ちたい。
勝ったら………
---「檸檬!生きて、また会おーなっ!」
---『………うん。』
また、あんな風に笑いかけてくれるだろうか。
その時初めて、守ったって言えるんじゃねーか。
今の、俺は………
「……口をきく事も出来ぬようだな。今、楽にしてやる。」
楽になんて、なれねーよ。
ここで死んだら、楽園にも行けねーと思うし。
言いたい事はたっくさん浮かぶってのに、
それを表に出す事すら出来ない。
そんな俺の足に何かが巻き付いて、引っ張った。
けどそれも、一瞬で。
「無駄な事を……」
「く…そぅ……」
あぁ、ラル・ミルチだ…
俺を助けようと、引き寄せようとしてくれてた…
ダメだ……
意識が続か、ねぇ……
ツナ……檸檬……みんな……
すま、ねぇ…
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『(武っ……!!?)』
感じ取りたくない事を、感じ取ってしまった。
それは同時に、蜜柑にも分かったようで。
「雨の守護者の音、消えたわね。」
『………退いてっ!!!』
次の瞬間、あたしは無意識のうちに第六感を継続発動させていた。
継続発動は最長で5.5秒が限界。
それ以上続ければ、リバウンドを早める事になる。
「(これは…!)」
『ちょこまかと……追って来ないで!!』
蜜柑が撃って来た追尾弾から、全ての炎を奪った。
早く、早く武のトコに戻らなくちゃ……!
お願い……死んじゃイヤだっ…!!
『(局所移動…!)』
武の、酷く弱った波動が伝わって来る。
それを辿って、ピンポイントで移動した。
あれだけ修業したんだもん。
壁1枚越えるくらい、楽勝なハズ…!
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「ボンゴレ雨の守護者よ。」
幻騎士が、振り上げた剣に霧の炎を纏わせる。
地に臥せった山本は、もうピクリとも動かない。
「貴様に敬意を表し、我が剣最高の太刀で葬ってやる。」
そして、
「………さらばだ。」
振り下ろそうとした、その時。
ぐにゃり、幻騎士の目の前の“空間”が歪む。
「(何…!?)」
『……させない…』
「貴様は…!」
山本と幻騎士の間に、ナイフを構えた檸檬が現れた。
「DARQ……」
『絶対に、させない…!!』
一瞬だけ驚かされた幻騎士だが、檸檬の腹部からの出血を見て、溜め息をついた。
「蜜柑にやられたか。」
『関係ないでしょ。』
「だとしたら、貴様に勝ち目はない。」
『そんなの……まだ分からない。』
「いいえ、幻騎士は正しいわ。」
山本を庇う体勢のまま、檸檬は声のした方を向いた。
蜜柑も、隣の部屋から移って来たのだ。
「負傷した今の姉さんに、雨の守護者を庇いながら、私と幻騎士を相手するなんて出来るかしら。」
「第六感をもってしても、不可能だ。」
何で、何で、
どうしてあたしは無力なの?
どうしていつも、肝心な時にこうなっちゃうの?
護りたいの。
それだけなの。
いくらあたしが“闇”と呼ばれようと、
この力は、第六感は、
大切だと思う人達を護る力だって信じたいんだよ。
ねえ、どうして?
神様、お願い。
もしいるんだったら、今だけあたしの味方をして。
“闇”と呼ばれるあたしだけど、護るって決めたの。
だから、これが終わったら見捨ててもいいから、
今だけ願いを聞いて欲しいの。
「どちらを先に殺る。」
「姉さんは捕獲よ、殺したら白蘭の命令と食い違うわ。」
「そうか。」
『させないって、言ってるでしょ…!!』
「黙ってて。」
額に触れる、蜜柑の銃口。
その冷たさは、まるで蜜柑があたしに向けてる殺意みたいで。
あたしの中に残ってるハズの、
気力とか、希望とか、
全部凍らされて行くような気がして。
怖い、怖い。
今更になって、元から抱いてた恐怖が体を震わせ始める。
「退け、ダーク。雨の守護者は俺が始末する。」
『イ…ヤ……イヤ!!!』
神様。お願いだから、あたしに力を頂戴……
ビキッ…
「ん?」
突如、壁に走った亀裂。
恐怖の震えを上まる震動をあたしに与える、地響き。
そして………
ドオオッ…!
倒壊して行く壁に、こんなにも大きな期待を抱いてしまったのは何故だろう。
その答えは、すぐに分かった。
「あぁ君……丁度いい。」
この声を、この波長を、
あたしは知ってる…
「白く丸い装置は、この先だったかな?」
「あの男…」
「ボンゴレ雲の守護者、雲雀恭弥か…」
降って来る瓦礫を避ける為に、蜜柑は数メートル下がる。
あたしも咄嗟に空間移動で武を避難させて、もっかい目をこすってよく見た。
『恭……弥っ……』
「檸檬…また、会えたね。」
『うん………うんっ…!!』
本物、だった。
色んな感情が混ざって、涙が零れそうになる。
けど次の瞬間、
「その問いに、答える必要は無い。貴様はここで死ぬのだからな。」
妖し気な幻覚世界が、広がり始めた。