未来編①
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山本はただ、檸檬の後ろ姿を見つめていた。
「(いつもの檸檬じゃ、ねーんだな……)」
感じ取れる殺気は、本物だった。
それこそ、蜜柑と対等に渡り合える程のもの。
しかし、殺気の種類はまるで違う。
檸檬のは、チリチリ焼ける火花のような殺気。
熱を持っていて、何処か温かみが残る。
蜜柑のは、ビキビキ凍る吹雪のような殺気。
全てを凍てつかせる程の、負の感情。
何も言わずに隣の部屋に移動しようとする檸檬に、山本は咄嗟に言った。
「檸檬!生きて、また会おーなっ!」
『………うん。』
振り向いた時の柔らかい檸檬の笑みは、10年後の檸檬に酷似していた。
もっとも、同一人物なのだから面影が重なって当たり前なのだが。
霧
檸檬と蜜柑が隣の部屋に姿を消し、山本は改めて幻騎士と対峙する。
すると、先ほどの言葉が気になったのか、幻騎士が問いかけた。
「2代目剣帝が勝負の偽装に気付いてたというのは、本当か。」
「ああ、そうだ。」
「根拠はあるのか。」
「今からそれを証明してみせるぜ。」
山本の返答に「無理だ」と一言返した幻騎士は、更に言う。
「何をする気か知らないが、今一度我に返るがいい。貴様の刀はひび割れ寸前だ。」
「確かにこれじゃあ……一振りで粉々になっちまうな………けどよ、」
時雨金時に炎を灯し、真直ぐ幻騎士に向かって行く。
「あんたも分かってるハズだ!!」
DVDにあった、スクアーロの言葉を思い出す。
幻騎士との戦いの後、足早に去ったスクアーロ。
幻術のレベルはカメラを騙せる程になったが、己の感覚を信じる事で、それは見破れると。
「(今なら分かるぜ、スクアーロが敢えて幻騎士戦をカウントしなかったって。それに、己の感覚を信じろってのもな。)」
一際強く刀を握りしめ、
「(俺の感覚では、この傷は……お前の作った幻覚だ!!)」
幻騎士に強く、打ち込んだ。
---
------
-----------
「待ってたのよ、ずっと。」
銃をくるくる回しながら言う蜜柑に、檸檬は何も答えなかった。
「姉さん、私に会いに来たそうね……他殺志願かしら?」
『そうじゃない。あたしは、蜜柑と話をしに来たの。』
「……話す事なんて何も無いわ。」
蜜柑の殺気と視線が鋭くなる。
構わず檸檬は続けた。
『蜜柑は、あたしの第六感が世界の脅威になるって言ってたよね?そしてコレを使って、あたしが蜜柑と両親を殺すって。』
「それが、ママの予言よ。未来視の正確さは、知ってるでしょう?」
『けどあたしは!絶対蜜柑を殺したりしない。』
「口では何とでも言えるわ。」
回していた銃を檸檬に向け、蜜柑は言う。
「何を言われようと私は姉さんが憎い。だから殺すの。姉さんも、死にたくないから私を迎え撃つんでしょう?」
『そんなの違っ……』
チュインッ、
ついに、引き金が引かれた。
檸檬が咄嗟に俊足で避けた為、弾は壁に当たる。
『(やっぱり、ダメか……)』
眉を下げながら、蜜柑の銃弾を確実にかわして行く。
当たれば大ダメージになる、破壊の死ぬ気弾。
「前よりはマシな動きね。」
『骨折、治ったしね。』
「じゃあコレならどうする?」
言いながら蜜柑は口角を上げる。
物凄い早撃ちで、檸檬を中心とした8方向を塞ぐように連射した。
そして9発目は、行く手を阻まれた檸檬の額を狙って。
「回避は不可能よ。」
『くっ…』
檸檬は歯を食いしばり、腰にあるナイフを一本手に取った。
---
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強く刀を打ち込んだ瞬間、ひび割れは消えて行った。
山本の感覚通り、傷は全て幻覚だったのだ。
「何故刀が無傷と分かった。」
「毎日振ってんだ。たとえ0.01グラムでも欠けたんなら感覚で分かる。」
と、その時。
幻騎士は自分の腕がマヒしていることに気がついた。
「今の太刀は鮫衝撃っつってな、しばらくマヒは取れないぜ。こうも強く打ち込むとは思わなかったみてーだな。」
間合いを取ろうと後ろに下がる幻騎士。
しかしその際、足下もおぼつかない状態になっているのを感じた。
「全身の感覚も鈍くなってんだろ。衝撃と共に雨の“鎮静”の炎を流し込んだ強化版だからな。」
その炎の注入により、腕だけでなく体の動きも鈍くなっているのだ。
「どーやらあんた、相当人を騙すのが好きみてーだな。でも感心しないぜ。嘘つきは泥棒の始まりってな。」
「くっ…」
「仲間が待ってんだ、わりーけど終わらせるぜ。」
山本が構えると同時に、燕も大きな雨の炎を纏う。
おぼつかない足取りで横に逃げようとする幻騎士。
しかし、山本は「この奥義からは逃げられない」と。
「時雨蒼燕流、特式十の型………燕特攻!!!」
戦いの終わりかと思われた、その時だった。
ガキィッ、
山本は、大きな黒い鋼鉄の柱に全身を強打した。
そこには確かに何もなかったハズだった。
幻騎士に向かって、真直ぐ特式を放っていたハズだった。
だからこそ、信じられなかった。
自分の体に走る、酷い痛みを。
「…な……に……」
「かかったな。」
それまでとまるで違う景色。
水や水道管など存在しない“本当の”匣兵器実験場の中で、幻騎士は言った。
「幻を生み出す霧属性の匣の特徴は、構築。」
自分の幻術能力は、刀のヒビ程度のものではなく、
最初から山本が見ていた部屋の景色の全てこそが、幻騎士の匣が作り出した幻覚だったのだと。
「欺いてこそ霧……これほどの霧の術士は、ボンゴレにはいないだろうがな。」
その言葉をぼんやりと耳に響かせながら、山本はその場に倒れ込んだ。
---
------
-------------
キキキンッ、
蜜柑の耳には、檸檬が被弾した音は届いてこなかった。
それどころか、聞こえたのは銃弾を弾いた音のみ。
「(あり得ない…)」
破壊の死ぬ気弾は、その名の通り被弾した物体に衝撃波を与えて破壊する銃弾。
檸檬のナイフでそのまま弾くなど、不可能なのだ。
弾かれたのは9発のうち4発。
残った5発は壁に当たり、砂埃を起こしていた。
『出し惜しみなんてするもんじゃないね、やっぱり。』
「何をしたの。」
その砂埃の中から現れた檸檬の手に握られた1本のナイフには、炎が灯っていた。
それを見て、蜜柑は大体を察した。
『未来のあたしも、やってなかった?』
「………えぇ、全く同じだわ。」
ニコリと笑った檸檬に、蜜柑は冷たい視線を返す。
ナイフに灯っているのは、蜜柑が銃弾に乗せたハズの大空の炎。
『破壊の死ぬ気弾の破壊力は、大空の炎が持つ7属性で一番の推進力から生まれる。』
「炎を奪って、威力を通常の銃弾と同程度に戻した…」
『普通の銃弾なら、弾くのは簡単だからね。』
言いながら檸檬は、ナイフにあった大空の炎を、ブーツのアルミ盤に移す。
『前のあたしとは違うから、ちょっとやそっとじゃ倒れないよ。』
「……どうかしら。」
『え…?』
「お仲間は、もう倒れたみたいよ?」
怪しく笑い匣兵器実験場の方を見る蜜柑。
檸檬はハッとして、そちらを視た。
『(武……!)』
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同じ頃、偵察部隊のニコラ隊長が端末マップの不具合を、下っ端の隊員に訴えていた。
「基地内の配置が変わったんです。入江様が特殊な構造を施していたらしく…」
「そうか…悪いが新しいマップをくれないか?」
「でしたら、準備室のコンピュータで静脈認証さえすればダウンロード出来ます。」
「静脈認証か………はて、困った。」
次の瞬間、ニコラは会話相手の隊員を攻撃した。
戸惑うもう1人の見張りの前で、ニコラの姿は藍色の炎となって溶けていく。
「あ…!」
霧の幻術が解けて、“彼女”が姿を現した。
「ひいっ!何なんだ…!!」
「……ゴメン、」
「がっ…!」
後退りする見張りに、トライデントが振り下ろされた。
「(いつもの檸檬じゃ、ねーんだな……)」
感じ取れる殺気は、本物だった。
それこそ、蜜柑と対等に渡り合える程のもの。
しかし、殺気の種類はまるで違う。
檸檬のは、チリチリ焼ける火花のような殺気。
熱を持っていて、何処か温かみが残る。
蜜柑のは、ビキビキ凍る吹雪のような殺気。
全てを凍てつかせる程の、負の感情。
何も言わずに隣の部屋に移動しようとする檸檬に、山本は咄嗟に言った。
「檸檬!生きて、また会おーなっ!」
『………うん。』
振り向いた時の柔らかい檸檬の笑みは、10年後の檸檬に酷似していた。
もっとも、同一人物なのだから面影が重なって当たり前なのだが。
霧
檸檬と蜜柑が隣の部屋に姿を消し、山本は改めて幻騎士と対峙する。
すると、先ほどの言葉が気になったのか、幻騎士が問いかけた。
「2代目剣帝が勝負の偽装に気付いてたというのは、本当か。」
「ああ、そうだ。」
「根拠はあるのか。」
「今からそれを証明してみせるぜ。」
山本の返答に「無理だ」と一言返した幻騎士は、更に言う。
「何をする気か知らないが、今一度我に返るがいい。貴様の刀はひび割れ寸前だ。」
「確かにこれじゃあ……一振りで粉々になっちまうな………けどよ、」
時雨金時に炎を灯し、真直ぐ幻騎士に向かって行く。
「あんたも分かってるハズだ!!」
DVDにあった、スクアーロの言葉を思い出す。
幻騎士との戦いの後、足早に去ったスクアーロ。
幻術のレベルはカメラを騙せる程になったが、己の感覚を信じる事で、それは見破れると。
「(今なら分かるぜ、スクアーロが敢えて幻騎士戦をカウントしなかったって。それに、己の感覚を信じろってのもな。)」
一際強く刀を握りしめ、
「(俺の感覚では、この傷は……お前の作った幻覚だ!!)」
幻騎士に強く、打ち込んだ。
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「待ってたのよ、ずっと。」
銃をくるくる回しながら言う蜜柑に、檸檬は何も答えなかった。
「姉さん、私に会いに来たそうね……他殺志願かしら?」
『そうじゃない。あたしは、蜜柑と話をしに来たの。』
「……話す事なんて何も無いわ。」
蜜柑の殺気と視線が鋭くなる。
構わず檸檬は続けた。
『蜜柑は、あたしの第六感が世界の脅威になるって言ってたよね?そしてコレを使って、あたしが蜜柑と両親を殺すって。』
「それが、ママの予言よ。未来視の正確さは、知ってるでしょう?」
『けどあたしは!絶対蜜柑を殺したりしない。』
「口では何とでも言えるわ。」
回していた銃を檸檬に向け、蜜柑は言う。
「何を言われようと私は姉さんが憎い。だから殺すの。姉さんも、死にたくないから私を迎え撃つんでしょう?」
『そんなの違っ……』
チュインッ、
ついに、引き金が引かれた。
檸檬が咄嗟に俊足で避けた為、弾は壁に当たる。
『(やっぱり、ダメか……)』
眉を下げながら、蜜柑の銃弾を確実にかわして行く。
当たれば大ダメージになる、破壊の死ぬ気弾。
「前よりはマシな動きね。」
『骨折、治ったしね。』
「じゃあコレならどうする?」
言いながら蜜柑は口角を上げる。
物凄い早撃ちで、檸檬を中心とした8方向を塞ぐように連射した。
そして9発目は、行く手を阻まれた檸檬の額を狙って。
「回避は不可能よ。」
『くっ…』
檸檬は歯を食いしばり、腰にあるナイフを一本手に取った。
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強く刀を打ち込んだ瞬間、ひび割れは消えて行った。
山本の感覚通り、傷は全て幻覚だったのだ。
「何故刀が無傷と分かった。」
「毎日振ってんだ。たとえ0.01グラムでも欠けたんなら感覚で分かる。」
と、その時。
幻騎士は自分の腕がマヒしていることに気がついた。
「今の太刀は鮫衝撃っつってな、しばらくマヒは取れないぜ。こうも強く打ち込むとは思わなかったみてーだな。」
間合いを取ろうと後ろに下がる幻騎士。
しかしその際、足下もおぼつかない状態になっているのを感じた。
「全身の感覚も鈍くなってんだろ。衝撃と共に雨の“鎮静”の炎を流し込んだ強化版だからな。」
その炎の注入により、腕だけでなく体の動きも鈍くなっているのだ。
「どーやらあんた、相当人を騙すのが好きみてーだな。でも感心しないぜ。嘘つきは泥棒の始まりってな。」
「くっ…」
「仲間が待ってんだ、わりーけど終わらせるぜ。」
山本が構えると同時に、燕も大きな雨の炎を纏う。
おぼつかない足取りで横に逃げようとする幻騎士。
しかし、山本は「この奥義からは逃げられない」と。
「時雨蒼燕流、特式十の型………燕特攻!!!」
戦いの終わりかと思われた、その時だった。
ガキィッ、
山本は、大きな黒い鋼鉄の柱に全身を強打した。
そこには確かに何もなかったハズだった。
幻騎士に向かって、真直ぐ特式を放っていたハズだった。
だからこそ、信じられなかった。
自分の体に走る、酷い痛みを。
「…な……に……」
「かかったな。」
それまでとまるで違う景色。
水や水道管など存在しない“本当の”匣兵器実験場の中で、幻騎士は言った。
「幻を生み出す霧属性の匣の特徴は、構築。」
自分の幻術能力は、刀のヒビ程度のものではなく、
最初から山本が見ていた部屋の景色の全てこそが、幻騎士の匣が作り出した幻覚だったのだと。
「欺いてこそ霧……これほどの霧の術士は、ボンゴレにはいないだろうがな。」
その言葉をぼんやりと耳に響かせながら、山本はその場に倒れ込んだ。
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キキキンッ、
蜜柑の耳には、檸檬が被弾した音は届いてこなかった。
それどころか、聞こえたのは銃弾を弾いた音のみ。
「(あり得ない…)」
破壊の死ぬ気弾は、その名の通り被弾した物体に衝撃波を与えて破壊する銃弾。
檸檬のナイフでそのまま弾くなど、不可能なのだ。
弾かれたのは9発のうち4発。
残った5発は壁に当たり、砂埃を起こしていた。
『出し惜しみなんてするもんじゃないね、やっぱり。』
「何をしたの。」
その砂埃の中から現れた檸檬の手に握られた1本のナイフには、炎が灯っていた。
それを見て、蜜柑は大体を察した。
『未来のあたしも、やってなかった?』
「………えぇ、全く同じだわ。」
ニコリと笑った檸檬に、蜜柑は冷たい視線を返す。
ナイフに灯っているのは、蜜柑が銃弾に乗せたハズの大空の炎。
『破壊の死ぬ気弾の破壊力は、大空の炎が持つ7属性で一番の推進力から生まれる。』
「炎を奪って、威力を通常の銃弾と同程度に戻した…」
『普通の銃弾なら、弾くのは簡単だからね。』
言いながら檸檬は、ナイフにあった大空の炎を、ブーツのアルミ盤に移す。
『前のあたしとは違うから、ちょっとやそっとじゃ倒れないよ。』
「……どうかしら。」
『え…?』
「お仲間は、もう倒れたみたいよ?」
怪しく笑い匣兵器実験場の方を見る蜜柑。
檸檬はハッとして、そちらを視た。
『(武……!)』
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同じ頃、偵察部隊のニコラ隊長が端末マップの不具合を、下っ端の隊員に訴えていた。
「基地内の配置が変わったんです。入江様が特殊な構造を施していたらしく…」
「そうか…悪いが新しいマップをくれないか?」
「でしたら、準備室のコンピュータで静脈認証さえすればダウンロード出来ます。」
「静脈認証か………はて、困った。」
次の瞬間、ニコラは会話相手の隊員を攻撃した。
戸惑うもう1人の見張りの前で、ニコラの姿は藍色の炎となって溶けていく。
「あ…!」
霧の幻術が解けて、“彼女”が姿を現した。
「ひいっ!何なんだ…!!」
「……ゴメン、」
「がっ…!」
後退りする見張りに、トライデントが振り下ろされた。