未来編①
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第4ドックにて、ツナはヘッドホンに何かの音声が入って来たのを聞き取った。
「今……!」
「ああ、山本の声だな。」
ホログラムのリボーンも同じように聞こえたらしい。
ただ、その声が、幻騎士の攻撃を受けた為に発せられたものだとは気付く由も無かった。
山本武VS.幻騎士
手刀を入れた幻騎士は、何かがおかしい事に気がつく。
みるみるうちに山本の姿はぼやけていき……
『あれって…!!』
「(水面に映した姿か。)」
雨燕の纏う巨大な雨の炎に、山本が映っていただけだったのだ。
そして、本物の山本は……
「(時雨蒼燕流、攻式九の型………うつし雨!)」
『(すごいっ…!)』
しかし、幻騎士は飛び上がって難無くかわす。
そこでやっと2体が1体に戻った。
幻覚の混ざった戦いに、檸檬は目を擦る。
『(ダメだ……普通に見てたら騙される…)』
幻騎士は紛れも無く霧属性。
超五感をノンストップで使いながらではないと、檸檬は霧属性と戦えない。
でなければ、簡単に騙されてしまうのだ。
『武はいいな…』
リボーンに“生まれながらの殺し屋”と言われる程の、山本の戦闘におけるカンの良さ。
今もそれは抜群に機能しており、幻騎士の動きを追いつめて行く。
「(うつし雨から守式二の型……逆巻く雨!)」
空中で受け身が取りづらくなった幻騎士の視界を、波で遮る。
これで、山本が次にどこから攻撃をしてくるか分からなくなるという事だ。
そして、新たな技が繰り出された。
「(逆巻く雨から特式十一の型………)」
『あ、あの動き…!』
「燕の嘴(ベッカタ・ディ・ローンディネ)!!」
檸檬も見覚えのある、その動き。
山本が繰り出した技は、スクアーロの“鮫の牙”に酷似していた。
波で視界が利かない幻騎士は、水の下からの攻撃に驚く。
その絶え間ない剣撃に、自らも剣を1本抜き……
ドシュッ、
「ぐわっ!」
『武っ!』
右腕を斬りつけられ、跳ね飛ばされる山本。
一方きちんと着地した幻騎士の右手には、しっかりと剣が握られていた。
「やっぱ強ぇ、すさまじい殺気は伊達じゃないな。でもよ、剣…抜かせたぜ。」
『(そうだ、手刀だったのに……)』
少し愉しそうに口角を上げた山本を、幻騎士は立ち上がりながら見据える。
「………良かろう、悔いるがいい。」
そして今度は、剣を構えた状態で攻めよった。
---
------
-------------
「ウキッ!」
「……どうかした?」
肩の上で突然鳴いたマーに、蜜柑は立ち止まった。
マーは蜜柑の肩から降りて、床に耳をくっつける。
すると、蜜柑のイヤホンにも音が流れ込んで来た。
「………まさか、」
「キイッ!」
マーの鳴き声を聞いた後、蜜柑はクルリと方向転換した。
彼女とその匣は、聞き取ったのだ。
トレーニングルームから空間移動をした檸檬が、別の場所で声を発しているのを。
「本当に、嫌な力……」
呟きながら、蜜柑は足を速めた。
---
-----
------------
「そうこなくっちゃ!」
正面からぶつかるのかと思いきや、幻騎士の姿は霧の炎となって薄れて行く。
雨燕を先に行かせた山本。
「(また幻覚か…)」
しかし、幻騎士の姿こそ消えたものの、それが持っていた剣は本物で。
ガキィッ!
『幻覚の中に、混ざる本物……!』
「(本体は!?)」
『武っ、後ろっ!』
背後の斜め上から2本の剣を振りかざす幻騎士。
それを山本は受け止め、軽く弾いた。
「(攻式五の型……五月雨!!)」
『斬った!?』
「いんや………(こいつも幻覚!!)」
本体を捜す山本。
『あっ!』
「上か!!」
元からある両腕に加え、幻覚で作られた2本の腕にも剣を持つ幻騎士が、上から山本に向かって来る。
4本の剣は、一点を貫かんとするばかりに。
「くっ、」
一瞬受け止めたものの、半端でない威力に吹っ飛ぶ山本。
檸檬から見て右側の水道管に、全身をぶつけた。
『武っ…!』
「大…丈夫だぜ…」
水をきるように頭を振ってから、幻騎士の方に目をやる。
「あっぶね……」
しかし、自らの刀の異変に気付いた。
ピシッ…
『あっ!そ、そんな…』
「時雨金時が!!」
4本の剣による1点手中攻撃を受けた為であろう。
その部分からヒビが広がり、破片も少し落ちていく。
「これで貴様の勝ちは万に一つもなくなった。」
幻騎士が言う。
「俺とボンゴレの剣士とでは次元が違う。スクアーロも例外ではない。」
スクアーロが勝負の偽装に気がつかなかったのは、幻騎士の方が優れてたからだ……と。
そして、彼は背を向けたまま殺気を放つ。
「覚悟はいいか。」
「ぐっ、」
『(この殺気……すごい…!)』
溢れんばかりの殺気に、山本は本能的に恐怖を抱いた。
そして、思い出す。
修業中に見ていたDVDの中での、スクアーロの言葉を。
---
------
--「ギャッ!」
--「また勝ったわ~~~~!!破竹の80連勝よ~♪」
--『すっごーい!』
スクアーロが敵を倒した後、キャイキャイとはしゃぐルッスーリアと10年後の檸檬。
すると、その歓声を打ち消すかのようにスクアーロが語り始めた。
--「いいか。上を目指せば一生に何度か、心底恐ぇと感じる相手と対峙することがある。」
--『ん…?』
スクアーロは続けた。
恐いと感じるのは命を守る大事な本能だと。
そして、そんな相手とは闘わないのが賢い選択だと。
--「だが、」
--「ちょっとスクアーロ、誰に話してるの?」
--「剣士として避けて通れぬ戦いもある。」
--「スク…」
--『ルッスーリア、しーっ。』
カメラに向かって話すスクアーロを見て、檸檬は分かったのだろうか。
ルッスーリアと画面の端に寄る。
--「そう言う時はどうすればいいか、分かるか?」
画面を通じて伝わる重い雰囲気に、山本がゴクリとつばを飲んだ。
--「勝てえ!!!是が非でも勝てえぇ!!!」
「なっ…」
--「ワケわかんないわよ、スクアーロ!!言ってる事も共感し難いし………」
--「うるせぇ!!負けて死んじまったら得るものなんて何もねぇぞ!!」
--『まぁ、そうだけどさ……』
--「勝って手に入れられるモンにこそ価値があるんだぁ。そのリングもそうだったろうがぁ……」
不敵な笑みを見せるスクアーロに、檸檬はこう返していた。
--『あたしだったら、是が非でも避け続けるなー。』
--「そ、それは檸檬にしか出来ねぇんだよ!!」
--『あははっ!』
明るく笑う檸檬に溜め息をついてから、スクアーロはカメラに向かってもう一言。
--「いいかぁ、コイツ……檸檬は特殊なんだぁ。てめーは女王じゃねぇ、それを守る剣士だぁ!忘れんじゃねぇぞぉ…」
--『アロちゃーんっ、やっぱ100番目はあたしと勝負…』
--「じょ、冗談じゃねぇ!!ふざけんなぁ!!」
---
-------
「(スクアーロ……)」
言っていた事は、間違っていなかった。
自分が勝って手にしたボンゴレリングは、確かに自分の力となっている。
「(そーだなっ、サンキュ!)」
『(武…?)』
「こりゃ、是が非でも勝たねーとな!!」
笑ってそう言った山本に、檸檬も幻騎士も少し驚いた。
「…見苦しいぞ、まだ足掻くか。」
「ああ。」
「貴様の勝利は無くなったのだ。いや、貴様らと言った方が妥当か…」
「ん?」
.山本に背を向けたまま、幻騎士はラルの側についている檸檬に目をやる。
「自ら乗り込むとは、愚か極まりないな。」
『……会って、話をつけるの。』
「せいぜいそこで一瞬でも長生きしていろ。お前の旋律は……いずれ消える。」
『あたしの、旋律……?』
疑問符を浮かべる檸檬に、黙り込む幻騎士。
そこで、山本はハッとする。
「(そっか、そーゆー事か…)」
スクアーロが最後に言っていた意味も、何となくだが理解できた。
自分は剣士であって、頂点じゃない。
だが、剣士であるが故の、何よりも強い根本的な決意がある。
「心配ねーよ、檸檬。」
『えっ…?』
避け続ける戦い方を覚える必要はない。
自分の戦法は、信念は、最初から決まっている。
「俺がコイツを倒して、お前を守るからさっ♪」
「何を迷い事を。」
「わりーけど、思い出しちまったんだ。時雨蒼燕流は、完全無欠・最強無敵ってさ。」
「…下らん。」
「それに、スクアーロがアンタが思ってるよりずっとスゲー奴だったって事も。」
『武……』
全てを確信した山本は、立ち上がった。
「今なら分かるぜ、スクアーロは勝つ事であんた攻略のヒントをくれたんだ。」
『えっ!?』
「2代目剣帝は見抜いてたぜ……あんたがワザと負けた事を!!」
檸檬は、未来の自分が見せた記憶の内容を思い出した。
スクアーロは確かに、幻騎士との勝負に違和感を抱いていた。
山本の言う事に檸檬が納得した、その時。
『(こ、この波長…!)』
2人が戦っている部屋の向こうから、強い波動を持つ者が接近してるのを感じ取った。
そして、直後に響く1つの銃声。
『危ない武!!』
山本が気付いた時には、檸檬は自分の右手側に立ってナイフを握っていた。
そして、足下には銃弾が1つ。
「檸檬…!?」
「…遅かったな。」
驚き目を見開く山本に対し、幻騎士は部屋の向こう側に呼びかける。
「途中で引き返したにしては、早い方よ。」
言いながら物陰から出て来たのは、白い服の女。
その姿を見て、檸檬は口角を上げる。
『やっと会えたね、蜜柑。』
「……そうね。」
『にしてもどーゆー事?一発目で武を撃とうとするなんて。』
「小手調べ、とでも言っておくわ。」
無表情で返す蜜柑に、檸檬は眼光を鋭くした。
一方山本は、初対面である10年後の蜜柑とDVDにいた10年後の檸檬の雰囲気の違いに驚いていた。
何より驚いたのは、蜜柑が檸檬に向けている殺気。
「(半端ねぇ…!幻騎士とも、小僧とも違う……)」
蜜柑の放つ殺気は、純粋な憎しみのみで出来ているかのようだった。
それを感じ取っているのだろう、檸檬の表情もいつもと全く違う。
「おい檸檬…」
『ごめんね武、勝負の邪魔しちゃって。』
山本が呼びかけた途端に檸檬は振り向き、笑顔を見せた。
まるで、明るいその雰囲気が見納めだとでも言うように。
一方の蜜柑は、斜め後ろの壁に向かって銃を乱射する。
ズガガガガンッ!!
当然、真横の水道管からは大量の水が吹き出すが、それも数秒で収まった。
「移るのか。」
「ええ。貴方は貴方で続けてて、幻騎士。」
装填されていたのは「破壊の死ぬ気弾」だったらしく、水道管が壊れ壁も崩れて、隣の部屋への抜け穴が出来る。
部屋の広さは、やや広めと言ったところだろうか。
アイコンタクトでその部屋に移動する事を決めた檸檬と蜜柑。
そして彼女達は、
相反する雰囲気を纏い、
しかし同じような真剣味を帯びる。
『大丈夫。』
「安心して。」
檸檬は山本に、
蜜柑は幻騎士に。
『そっちの手助けは出来そうにないけど、』
「そっちがどうなろうと興味はないけど、」
ただ、姉妹の瞳は会話相手ではなく、
これから戦う血を分けた相手を真直ぐに見つめて。
「『
こ
っ
ち
は
あ
私 た
し
が
殺 闘
る る
か
ら
。
』」
「今……!」
「ああ、山本の声だな。」
ホログラムのリボーンも同じように聞こえたらしい。
ただ、その声が、幻騎士の攻撃を受けた為に発せられたものだとは気付く由も無かった。
山本武VS.幻騎士
手刀を入れた幻騎士は、何かがおかしい事に気がつく。
みるみるうちに山本の姿はぼやけていき……
『あれって…!!』
「(水面に映した姿か。)」
雨燕の纏う巨大な雨の炎に、山本が映っていただけだったのだ。
そして、本物の山本は……
「(時雨蒼燕流、攻式九の型………うつし雨!)」
『(すごいっ…!)』
しかし、幻騎士は飛び上がって難無くかわす。
そこでやっと2体が1体に戻った。
幻覚の混ざった戦いに、檸檬は目を擦る。
『(ダメだ……普通に見てたら騙される…)』
幻騎士は紛れも無く霧属性。
超五感をノンストップで使いながらではないと、檸檬は霧属性と戦えない。
でなければ、簡単に騙されてしまうのだ。
『武はいいな…』
リボーンに“生まれながらの殺し屋”と言われる程の、山本の戦闘におけるカンの良さ。
今もそれは抜群に機能しており、幻騎士の動きを追いつめて行く。
「(うつし雨から守式二の型……逆巻く雨!)」
空中で受け身が取りづらくなった幻騎士の視界を、波で遮る。
これで、山本が次にどこから攻撃をしてくるか分からなくなるという事だ。
そして、新たな技が繰り出された。
「(逆巻く雨から特式十一の型………)」
『あ、あの動き…!』
「燕の嘴(ベッカタ・ディ・ローンディネ)!!」
檸檬も見覚えのある、その動き。
山本が繰り出した技は、スクアーロの“鮫の牙”に酷似していた。
波で視界が利かない幻騎士は、水の下からの攻撃に驚く。
その絶え間ない剣撃に、自らも剣を1本抜き……
ドシュッ、
「ぐわっ!」
『武っ!』
右腕を斬りつけられ、跳ね飛ばされる山本。
一方きちんと着地した幻騎士の右手には、しっかりと剣が握られていた。
「やっぱ強ぇ、すさまじい殺気は伊達じゃないな。でもよ、剣…抜かせたぜ。」
『(そうだ、手刀だったのに……)』
少し愉しそうに口角を上げた山本を、幻騎士は立ち上がりながら見据える。
「………良かろう、悔いるがいい。」
そして今度は、剣を構えた状態で攻めよった。
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「ウキッ!」
「……どうかした?」
肩の上で突然鳴いたマーに、蜜柑は立ち止まった。
マーは蜜柑の肩から降りて、床に耳をくっつける。
すると、蜜柑のイヤホンにも音が流れ込んで来た。
「………まさか、」
「キイッ!」
マーの鳴き声を聞いた後、蜜柑はクルリと方向転換した。
彼女とその匣は、聞き取ったのだ。
トレーニングルームから空間移動をした檸檬が、別の場所で声を発しているのを。
「本当に、嫌な力……」
呟きながら、蜜柑は足を速めた。
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「そうこなくっちゃ!」
正面からぶつかるのかと思いきや、幻騎士の姿は霧の炎となって薄れて行く。
雨燕を先に行かせた山本。
「(また幻覚か…)」
しかし、幻騎士の姿こそ消えたものの、それが持っていた剣は本物で。
ガキィッ!
『幻覚の中に、混ざる本物……!』
「(本体は!?)」
『武っ、後ろっ!』
背後の斜め上から2本の剣を振りかざす幻騎士。
それを山本は受け止め、軽く弾いた。
「(攻式五の型……五月雨!!)」
『斬った!?』
「いんや………(こいつも幻覚!!)」
本体を捜す山本。
『あっ!』
「上か!!」
元からある両腕に加え、幻覚で作られた2本の腕にも剣を持つ幻騎士が、上から山本に向かって来る。
4本の剣は、一点を貫かんとするばかりに。
「くっ、」
一瞬受け止めたものの、半端でない威力に吹っ飛ぶ山本。
檸檬から見て右側の水道管に、全身をぶつけた。
『武っ…!』
「大…丈夫だぜ…」
水をきるように頭を振ってから、幻騎士の方に目をやる。
「あっぶね……」
しかし、自らの刀の異変に気付いた。
ピシッ…
『あっ!そ、そんな…』
「時雨金時が!!」
4本の剣による1点手中攻撃を受けた為であろう。
その部分からヒビが広がり、破片も少し落ちていく。
「これで貴様の勝ちは万に一つもなくなった。」
幻騎士が言う。
「俺とボンゴレの剣士とでは次元が違う。スクアーロも例外ではない。」
スクアーロが勝負の偽装に気がつかなかったのは、幻騎士の方が優れてたからだ……と。
そして、彼は背を向けたまま殺気を放つ。
「覚悟はいいか。」
「ぐっ、」
『(この殺気……すごい…!)』
溢れんばかりの殺気に、山本は本能的に恐怖を抱いた。
そして、思い出す。
修業中に見ていたDVDの中での、スクアーロの言葉を。
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--「ギャッ!」
--「また勝ったわ~~~~!!破竹の80連勝よ~♪」
--『すっごーい!』
スクアーロが敵を倒した後、キャイキャイとはしゃぐルッスーリアと10年後の檸檬。
すると、その歓声を打ち消すかのようにスクアーロが語り始めた。
--「いいか。上を目指せば一生に何度か、心底恐ぇと感じる相手と対峙することがある。」
--『ん…?』
スクアーロは続けた。
恐いと感じるのは命を守る大事な本能だと。
そして、そんな相手とは闘わないのが賢い選択だと。
--「だが、」
--「ちょっとスクアーロ、誰に話してるの?」
--「剣士として避けて通れぬ戦いもある。」
--「スク…」
--『ルッスーリア、しーっ。』
カメラに向かって話すスクアーロを見て、檸檬は分かったのだろうか。
ルッスーリアと画面の端に寄る。
--「そう言う時はどうすればいいか、分かるか?」
画面を通じて伝わる重い雰囲気に、山本がゴクリとつばを飲んだ。
--「勝てえ!!!是が非でも勝てえぇ!!!」
「なっ…」
--「ワケわかんないわよ、スクアーロ!!言ってる事も共感し難いし………」
--「うるせぇ!!負けて死んじまったら得るものなんて何もねぇぞ!!」
--『まぁ、そうだけどさ……』
--「勝って手に入れられるモンにこそ価値があるんだぁ。そのリングもそうだったろうがぁ……」
不敵な笑みを見せるスクアーロに、檸檬はこう返していた。
--『あたしだったら、是が非でも避け続けるなー。』
--「そ、それは檸檬にしか出来ねぇんだよ!!」
--『あははっ!』
明るく笑う檸檬に溜め息をついてから、スクアーロはカメラに向かってもう一言。
--「いいかぁ、コイツ……檸檬は特殊なんだぁ。てめーは女王じゃねぇ、それを守る剣士だぁ!忘れんじゃねぇぞぉ…」
--『アロちゃーんっ、やっぱ100番目はあたしと勝負…』
--「じょ、冗談じゃねぇ!!ふざけんなぁ!!」
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「(スクアーロ……)」
言っていた事は、間違っていなかった。
自分が勝って手にしたボンゴレリングは、確かに自分の力となっている。
「(そーだなっ、サンキュ!)」
『(武…?)』
「こりゃ、是が非でも勝たねーとな!!」
笑ってそう言った山本に、檸檬も幻騎士も少し驚いた。
「…見苦しいぞ、まだ足掻くか。」
「ああ。」
「貴様の勝利は無くなったのだ。いや、貴様らと言った方が妥当か…」
「ん?」
.山本に背を向けたまま、幻騎士はラルの側についている檸檬に目をやる。
「自ら乗り込むとは、愚か極まりないな。」
『……会って、話をつけるの。』
「せいぜいそこで一瞬でも長生きしていろ。お前の旋律は……いずれ消える。」
『あたしの、旋律……?』
疑問符を浮かべる檸檬に、黙り込む幻騎士。
そこで、山本はハッとする。
「(そっか、そーゆー事か…)」
スクアーロが最後に言っていた意味も、何となくだが理解できた。
自分は剣士であって、頂点じゃない。
だが、剣士であるが故の、何よりも強い根本的な決意がある。
「心配ねーよ、檸檬。」
『えっ…?』
避け続ける戦い方を覚える必要はない。
自分の戦法は、信念は、最初から決まっている。
「俺がコイツを倒して、お前を守るからさっ♪」
「何を迷い事を。」
「わりーけど、思い出しちまったんだ。時雨蒼燕流は、完全無欠・最強無敵ってさ。」
「…下らん。」
「それに、スクアーロがアンタが思ってるよりずっとスゲー奴だったって事も。」
『武……』
全てを確信した山本は、立ち上がった。
「今なら分かるぜ、スクアーロは勝つ事であんた攻略のヒントをくれたんだ。」
『えっ!?』
「2代目剣帝は見抜いてたぜ……あんたがワザと負けた事を!!」
檸檬は、未来の自分が見せた記憶の内容を思い出した。
スクアーロは確かに、幻騎士との勝負に違和感を抱いていた。
山本の言う事に檸檬が納得した、その時。
『(こ、この波長…!)』
2人が戦っている部屋の向こうから、強い波動を持つ者が接近してるのを感じ取った。
そして、直後に響く1つの銃声。
『危ない武!!』
山本が気付いた時には、檸檬は自分の右手側に立ってナイフを握っていた。
そして、足下には銃弾が1つ。
「檸檬…!?」
「…遅かったな。」
驚き目を見開く山本に対し、幻騎士は部屋の向こう側に呼びかける。
「途中で引き返したにしては、早い方よ。」
言いながら物陰から出て来たのは、白い服の女。
その姿を見て、檸檬は口角を上げる。
『やっと会えたね、蜜柑。』
「……そうね。」
『にしてもどーゆー事?一発目で武を撃とうとするなんて。』
「小手調べ、とでも言っておくわ。」
無表情で返す蜜柑に、檸檬は眼光を鋭くした。
一方山本は、初対面である10年後の蜜柑とDVDにいた10年後の檸檬の雰囲気の違いに驚いていた。
何より驚いたのは、蜜柑が檸檬に向けている殺気。
「(半端ねぇ…!幻騎士とも、小僧とも違う……)」
蜜柑の放つ殺気は、純粋な憎しみのみで出来ているかのようだった。
それを感じ取っているのだろう、檸檬の表情もいつもと全く違う。
「おい檸檬…」
『ごめんね武、勝負の邪魔しちゃって。』
山本が呼びかけた途端に檸檬は振り向き、笑顔を見せた。
まるで、明るいその雰囲気が見納めだとでも言うように。
一方の蜜柑は、斜め後ろの壁に向かって銃を乱射する。
ズガガガガンッ!!
当然、真横の水道管からは大量の水が吹き出すが、それも数秒で収まった。
「移るのか。」
「ええ。貴方は貴方で続けてて、幻騎士。」
装填されていたのは「破壊の死ぬ気弾」だったらしく、水道管が壊れ壁も崩れて、隣の部屋への抜け穴が出来る。
部屋の広さは、やや広めと言ったところだろうか。
アイコンタクトでその部屋に移動する事を決めた檸檬と蜜柑。
そして彼女達は、
相反する雰囲気を纏い、
しかし同じような真剣味を帯びる。
『大丈夫。』
「安心して。」
檸檬は山本に、
蜜柑は幻騎士に。
『そっちの手助けは出来そうにないけど、』
「そっちがどうなろうと興味はないけど、」
ただ、姉妹の瞳は会話相手ではなく、
これから戦う血を分けた相手を真直ぐに見つめて。
「『
こ
っ
ち
は
あ
私 た
し
が
殺 闘
る る
か
ら
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