未来編①
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匣兵器実験場を出た蜜柑は、マーを出して檸檬の居場所を探知させる。
「基地の音を全て聞き取って。」
「キイッ!」
マーが一声鳴いた次の瞬間、蜜柑の耳には膨大な量の音声情報が流れて来た。
目を閉じ、その中から檸檬の声を探す。
そして……
「…いた。」
「キィ?」
「もういいわ、分かったから。」
マーをそのまま肩に乗せ、蜜柑は歩き始めた。
「トレーニングルーム、ね……」
幻騎士
『その幻騎士って……ヴァリアーの剣士と戦った人…?』
「…さすがDARQと言ったところか。知るハズのないこの時代の情報を、簡単に入手しやがって。」
『じゃあ…本当なのね……』
先ほど未来の自分が見せた記憶は、確かなモノだったのだと理解する檸檬。
「アイツは…心底気に喰わねぇ。今だってそうだ、ホワイトスペルの女……てめぇの妹と短い会話ばかりしてやがる。」
「なっ……!」
『蜜柑と!?』
眉間の皺を濃くするγの言葉に、獄寺と檸檬は目を見開く。
γは続けた。
「どうやってあの女に取り入ったかは知らねぇが……奴はLIGHTの匣兵器を良く知ってるみてぇだしな…」
『蜜柑の、匣…!!』
「挙げ句、俺達第3部隊をライトの匣の実験台にしやがった。」
檸檬の拳が握られていくのを、獄寺は見落とさなかった。
幻騎士と接触をすれば、蜜柑の情報を得られるかも知れない……
そんな檸檬の思いは、獄寺にもきちんと分かっていたのだ。
「おい檸檬……」
『な、何?』
真直ぐγの方を見ながら、獄寺は言った。
「もう使えるか、空間移動は……」
『えっ…?』
「その、幻騎士って奴に会いに行け。」
---
-----
------------
「待っていたぞ。」
匣兵器実験場では、幻騎士が山本に向かって一言。
その姿を見て、山本も返す。
「あんた、霧のマーレリングの…幻術を使う剣士・幻騎士だろ?」
僅かに表情を動かす幻騎士に、「やっぱり」と呟き刀を竹刀に戻す山本。
後ろに下ろしたラルに「ちょっと行って来るぜ」と呼びかけて、ゲートを越えた。
と、ピシャッと跳ねる水の音。
どうやら辺りの床は、浸水しているようだ。
「何故俺を知る。」
「スクアーロのDVDで見たんだ。あんた……“剣帝への道”100番勝負、100番目の相手だったな。」
「貴様…この時代の2代目剣帝と接点があるのか。」
「へへっ、まーね。」
ニコリと笑う山本に、幻騎士は言った。
「……その通りだ。奴にはわざと負けてみせた。ミルフィオーレ結成の為にな。」
“わざと”という単語に、山本はピクリと反応した。
---
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-------------
思いも寄らない獄寺の言葉に、檸檬は戸惑う。
『な、何言ってるの!?こんな状態の隼人や了平さんを置いて…』
「こいつは!俺が必ずぶっ倒す。檸檬、自分の目的忘れたワケじゃねーよな…」
『隼人っ……』
確かに、獄寺の言う通り、檸檬が突入した目的は蜜柑に会って話をつけるコトだった。
しかし、それとこれとは話が違う。
『だったら!2人も一緒に…』
「バカ言ってんじゃねーよ!もし、傷だらけの俺達を連れた状態で蜜柑に遭遇したらどーすんだ!!」
怒鳴る獄寺に、檸檬は口を閉じる。
「いーか!俺はお前に逃げろっつってんじゃねぇ……ケリをつけるべき相手と、ケリつけろっつってんだ!!」
『ケリを、つけるべき……相手…』
すると、それまで2人の会話を聞いていたγが言った。
「おいおい、随分ナメたこと言ってくれてるが……俺はダークをこっから逃がす気も無いぜ。」
「あ"…?」
「ダークの捕獲は最高ランクの任務だ。ホワイトに手柄取らせるつもりはねぇよ。」
「ざけんじゃねーぞ……」
『は、隼人…!』
傷だらけの体で立ち上がる獄寺に、駆け寄ろうとする檸檬。
しかし、
「来んな!!早く行け!!」
檸檬に目を向ける事無く言い放ち、γを睨む獄寺。
「てめーの相手は俺で充分なんだよ。そんなボロボロ状態のてめーが檸檬と戦えば、こっちの圧勝は確実だしな。」
「ほぅ…言ってくれるじゃねーか、中学生が。」
「早くしやがれ檸檬!!芝生のことは、任せろ。」
その時、獄寺はやっと檸檬に視線を移した。
彼の口元は、ほんの少しだけ緩く弧を描いているように見えた。
溢れそうになる涙をこらえ、檸檬は声を絞る。
『……あ、りがと…。生きて、アジトでまた会おう、ね……隼人っ…』
「ああ。」
『了平さんと、絶対帰って来て……』
「……ったりめーだろ。」
直後、その場に座り込んだ檸檬は床に両手をつく。
目を閉じて集中力を高めるその姿に、γは黒狐へ指示を出した。
「ダークを殺れ!」
「食い止めろ、瓜!」
獄寺の指示で瓜が黒狐の行く手を阻んだその一瞬に、檸檬は姿を消した。
---『絶対帰って来て……』
最後に聞いた檸檬の言葉を、脳内で反芻する獄寺。
そして、一言呟いた。
「お前もな、檸檬…」
---
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------------
同じ頃、コントロールルーム。
山本と幻騎士を接触させることに成功した入江は、トレーニングルームの状況に目を移し、チェルベッロに問いかけた。
「ここに…ダークがいなかったか!?」
「それが入江様、先ほど空間移動を使った模様で。」
「なっ…一体何処へ…!?」
「計りかねます。」
大きな溜め息を一つ漏らした入江だが、γの働きには満足したようだ。
「γも、やれば出来るじゃないか。残りの鼠など、幻騎士さえいればどうとでもなる。ダークについては…」
「蜜柑様が匣兵器を使って捜索しております。」
「そうか……蜜柑さんはこの時代のダークを捕らえた実力を持ってるんだ、問題無いな。」
そこに、司令室から2つの報告が入って来た。
一つは、帰還した偵察部隊から、囮となった雲雀を追いつめつつあるという報告。
雲雀に無線を破壊されたため今まで報告が出来なかったとの事。
もう一つは、スパナの証言とモスカの戦闘記録が食い違っていたという報告。
しかも、スパナと連絡がつかないという。
「どういうことだ!?スパナを叩き起こしてでも事情を聞け!!」
-「もうやってるよ、大将。」
不意に、別のモニターからの音声が。
第12部隊のアイリスと第8部隊のジンジャーが、スパナの部屋に入っていた。
しかし、彼の部屋はもぬけの殻。
-「しっかし驚いたよ、この基地がビックリパズル構造になってたなんてさ。」
「嫌味なら後にしてくれ!!スパナは何処だ!?」
-「この基地内の何処かにボンゴレと共にいる可能性が高いです。ボンゴレを匿っている可能性もある。」
「なぁ!?スパナが裏切ったというのか!?」
驚く入江に、アイリスは尋ねる。
-「あたい達は今から奴とボンゴレを捜索するつもりだよ、許可してくれるね?」
-「もしスパナ氏が寝返っていた場合はどうします♪」
数秒の沈黙の後、入江は冷たい目で言った。
「……抵抗するようなら殺しても構わない、白蘭さんには僕から報告しておく。」
-「やっぱこの基地の大将は、あんたしかいないねvV」
アイリスはモニター越しに、投げキスをした。
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スパナとツナは、第4ドックに移動していた。
一番捜索が遅れる場所をチョイスしたのだ。
「ふぅ…ようやくコンタクトを入れられたな。」
「う…うん……」
「よし、始めて。」
今まで生きて来てコンタクトを入れた事のないツナにとって、第一関門クリアであった。
そしていよいよ、超死ぬ気モードでの微調整に進む。
「あの…手錠は?」
「壊して良いよ。」
「はい。」
死ぬ気丸を飲み、手錠を壊すツナ。
しかし、コンタクトを付けたその視界はかすんでいた。
「やはり調整に時間が必要だな。」
「どれくらい掛かる?」
「20分もあれば。」
「掛かり過ぎだ。……リボーン、その後の連絡は?」
「電波が悪いらしく誰からもねーぞ。今は無事を祈るしかねーな……」
---
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-------------
『(一番強い波長……こっち!)』
ドサッ、
トレーニングルームで基地全体の波長を読み取った檸檬は、その中で最も強い波動を持つ者の近くに出口を繋いだ。
そして、倒れるように着地した目の前にいたのは…
『ラル…!』
気を失ったまま座らされているラルに、檸檬は咄嗟に駆け寄る。
と、その真横のゲートが開いていた。
「んっ?」
「あれは…」
『たっ、武!?え、じゃあ……貴方が…!』
そこに立っていたのは、2人の剣士。
そのうち1人は山本で、もう1人は檸檬が探していた人物。
腰に差してある4本の剣。
そして、右手中指には藍色のマーレリング。
『幻騎士……』
「檸檬、どーやってココに……獄寺とセンパイは…」
『隼人と了平さんは電光のγと戦って……あたしは、』
「空間移動を使って来たか、ダーク。」
檸檬の言葉を遮ってそう言った幻騎士に、山本は少し強い視線を送った。
「気に入らねーぜ幻騎士、俺らはその呼び方を認めたワケじゃねーんだ。」
『武、いいの……大丈夫だよ。』
「それに、随分甘く見られてんだな、俺は。」
『え…?』
疑問符を浮かべる檸檬。
実は、檸檬が移動して来る少し前に、山本は幻騎士より戦いにおける2つのハンデを明かされていた。
一つは、人工の雨が降っているという地の利。
もう一つは、幻騎士の武器未使用という状況。
伝統と格式のあるボンゴレ雨の守護者。
そのまま戦って圧勝してしまっては、その名を傷つけてしまうから……と。
「つーワケで檸檬、ラル・ミルチは頼むぜ。」
『えっ!?』
「俺は、ぜってーコイツを倒す。」
「……来い。」
直後に放たれる凄まじい殺気に、山本も檸檬も一瞬怯んだ。
「(小僧よりも…痛ぇ……コイツ、本物だ……)」
『(こんな凄いの…随分久しぶり……)』
「……やっべぇ…」
「竦んだか。」
「…いんや、ゾクゾクして来ちまった。」
山本の精神構造にも、檸檬は少し驚かされる。
「だからこそあんたとは、剣士として戦いてぇ。嫌でも剣を抜かせてやるぜ、って方向で。」
『あれは…!』
開匣された山本の匣から出て来たのは、雨の炎を纏ったツバメ。
そしてその竹刀も、雨の炎を纏った刀に。
「この俺の、時雨蒼燕流でな!!」
『ま、待って!』
戦いが始まる直前に、檸檬は声を上げた。
どうしても、聞いておかなくてはならない事がある。
『幻騎士……貴方は蜜柑と良く話しているって聞いた。蜜柑の匣についても知ってるって。だから…』
「情報を、漏らせと?」
確かに、普通に考えて敵である檸檬にそんな話をするハズがない。
『あたしはただ…貴方のいる場所にくれば、蜜柑に会えるかもって……』
「蜜柑は、雨の守護者が来る前までココにいた。」
『えっ!?』
「今はお前を捜している……接触は時間の問題だろうな。」
幻騎士の言葉に、檸檬はごくりと息を飲んだ。
近くに蜜柑がいるという、緊張感が押し寄せる。
「安心しろ、俺はお前に剣を向けるつもりは無い。蜜柑に仕留めさせろと白蘭様より通達されているからな。」
『白蘭が…!?』
そこで詰まった檸檬から目線を逸らした幻騎士は、山本に向かって言う。
「ともかく…お前の全ての御託は無駄となる。」
「そいつは、闘ってみてからだ!!」
走り出す山本が繰り出したのは……
「(時雨蒼燕流、攻式一の型……車軸の雨!)」
『(速いっ……!)』
「大した突きだ……だが、」
目の前にあったハズの幻騎士の姿は、いつの間にか左右の2体に分かれていて。
「スクアーロの剣技同様、子供騙しだ。」
「がっ!」
『た、武っ!!』
山本の喉に、2本の手刀が入れられた。
「基地の音を全て聞き取って。」
「キイッ!」
マーが一声鳴いた次の瞬間、蜜柑の耳には膨大な量の音声情報が流れて来た。
目を閉じ、その中から檸檬の声を探す。
そして……
「…いた。」
「キィ?」
「もういいわ、分かったから。」
マーをそのまま肩に乗せ、蜜柑は歩き始めた。
「トレーニングルーム、ね……」
幻騎士
『その幻騎士って……ヴァリアーの剣士と戦った人…?』
「…さすがDARQと言ったところか。知るハズのないこの時代の情報を、簡単に入手しやがって。」
『じゃあ…本当なのね……』
先ほど未来の自分が見せた記憶は、確かなモノだったのだと理解する檸檬。
「アイツは…心底気に喰わねぇ。今だってそうだ、ホワイトスペルの女……てめぇの妹と短い会話ばかりしてやがる。」
「なっ……!」
『蜜柑と!?』
眉間の皺を濃くするγの言葉に、獄寺と檸檬は目を見開く。
γは続けた。
「どうやってあの女に取り入ったかは知らねぇが……奴はLIGHTの匣兵器を良く知ってるみてぇだしな…」
『蜜柑の、匣…!!』
「挙げ句、俺達第3部隊をライトの匣の実験台にしやがった。」
檸檬の拳が握られていくのを、獄寺は見落とさなかった。
幻騎士と接触をすれば、蜜柑の情報を得られるかも知れない……
そんな檸檬の思いは、獄寺にもきちんと分かっていたのだ。
「おい檸檬……」
『な、何?』
真直ぐγの方を見ながら、獄寺は言った。
「もう使えるか、空間移動は……」
『えっ…?』
「その、幻騎士って奴に会いに行け。」
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「待っていたぞ。」
匣兵器実験場では、幻騎士が山本に向かって一言。
その姿を見て、山本も返す。
「あんた、霧のマーレリングの…幻術を使う剣士・幻騎士だろ?」
僅かに表情を動かす幻騎士に、「やっぱり」と呟き刀を竹刀に戻す山本。
後ろに下ろしたラルに「ちょっと行って来るぜ」と呼びかけて、ゲートを越えた。
と、ピシャッと跳ねる水の音。
どうやら辺りの床は、浸水しているようだ。
「何故俺を知る。」
「スクアーロのDVDで見たんだ。あんた……“剣帝への道”100番勝負、100番目の相手だったな。」
「貴様…この時代の2代目剣帝と接点があるのか。」
「へへっ、まーね。」
ニコリと笑う山本に、幻騎士は言った。
「……その通りだ。奴にはわざと負けてみせた。ミルフィオーレ結成の為にな。」
“わざと”という単語に、山本はピクリと反応した。
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思いも寄らない獄寺の言葉に、檸檬は戸惑う。
『な、何言ってるの!?こんな状態の隼人や了平さんを置いて…』
「こいつは!俺が必ずぶっ倒す。檸檬、自分の目的忘れたワケじゃねーよな…」
『隼人っ……』
確かに、獄寺の言う通り、檸檬が突入した目的は蜜柑に会って話をつけるコトだった。
しかし、それとこれとは話が違う。
『だったら!2人も一緒に…』
「バカ言ってんじゃねーよ!もし、傷だらけの俺達を連れた状態で蜜柑に遭遇したらどーすんだ!!」
怒鳴る獄寺に、檸檬は口を閉じる。
「いーか!俺はお前に逃げろっつってんじゃねぇ……ケリをつけるべき相手と、ケリつけろっつってんだ!!」
『ケリを、つけるべき……相手…』
すると、それまで2人の会話を聞いていたγが言った。
「おいおい、随分ナメたこと言ってくれてるが……俺はダークをこっから逃がす気も無いぜ。」
「あ"…?」
「ダークの捕獲は最高ランクの任務だ。ホワイトに手柄取らせるつもりはねぇよ。」
「ざけんじゃねーぞ……」
『は、隼人…!』
傷だらけの体で立ち上がる獄寺に、駆け寄ろうとする檸檬。
しかし、
「来んな!!早く行け!!」
檸檬に目を向ける事無く言い放ち、γを睨む獄寺。
「てめーの相手は俺で充分なんだよ。そんなボロボロ状態のてめーが檸檬と戦えば、こっちの圧勝は確実だしな。」
「ほぅ…言ってくれるじゃねーか、中学生が。」
「早くしやがれ檸檬!!芝生のことは、任せろ。」
その時、獄寺はやっと檸檬に視線を移した。
彼の口元は、ほんの少しだけ緩く弧を描いているように見えた。
溢れそうになる涙をこらえ、檸檬は声を絞る。
『……あ、りがと…。生きて、アジトでまた会おう、ね……隼人っ…』
「ああ。」
『了平さんと、絶対帰って来て……』
「……ったりめーだろ。」
直後、その場に座り込んだ檸檬は床に両手をつく。
目を閉じて集中力を高めるその姿に、γは黒狐へ指示を出した。
「ダークを殺れ!」
「食い止めろ、瓜!」
獄寺の指示で瓜が黒狐の行く手を阻んだその一瞬に、檸檬は姿を消した。
---『絶対帰って来て……』
最後に聞いた檸檬の言葉を、脳内で反芻する獄寺。
そして、一言呟いた。
「お前もな、檸檬…」
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同じ頃、コントロールルーム。
山本と幻騎士を接触させることに成功した入江は、トレーニングルームの状況に目を移し、チェルベッロに問いかけた。
「ここに…ダークがいなかったか!?」
「それが入江様、先ほど空間移動を使った模様で。」
「なっ…一体何処へ…!?」
「計りかねます。」
大きな溜め息を一つ漏らした入江だが、γの働きには満足したようだ。
「γも、やれば出来るじゃないか。残りの鼠など、幻騎士さえいればどうとでもなる。ダークについては…」
「蜜柑様が匣兵器を使って捜索しております。」
「そうか……蜜柑さんはこの時代のダークを捕らえた実力を持ってるんだ、問題無いな。」
そこに、司令室から2つの報告が入って来た。
一つは、帰還した偵察部隊から、囮となった雲雀を追いつめつつあるという報告。
雲雀に無線を破壊されたため今まで報告が出来なかったとの事。
もう一つは、スパナの証言とモスカの戦闘記録が食い違っていたという報告。
しかも、スパナと連絡がつかないという。
「どういうことだ!?スパナを叩き起こしてでも事情を聞け!!」
-「もうやってるよ、大将。」
不意に、別のモニターからの音声が。
第12部隊のアイリスと第8部隊のジンジャーが、スパナの部屋に入っていた。
しかし、彼の部屋はもぬけの殻。
-「しっかし驚いたよ、この基地がビックリパズル構造になってたなんてさ。」
「嫌味なら後にしてくれ!!スパナは何処だ!?」
-「この基地内の何処かにボンゴレと共にいる可能性が高いです。ボンゴレを匿っている可能性もある。」
「なぁ!?スパナが裏切ったというのか!?」
驚く入江に、アイリスは尋ねる。
-「あたい達は今から奴とボンゴレを捜索するつもりだよ、許可してくれるね?」
-「もしスパナ氏が寝返っていた場合はどうします♪」
数秒の沈黙の後、入江は冷たい目で言った。
「……抵抗するようなら殺しても構わない、白蘭さんには僕から報告しておく。」
-「やっぱこの基地の大将は、あんたしかいないねvV」
アイリスはモニター越しに、投げキスをした。
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スパナとツナは、第4ドックに移動していた。
一番捜索が遅れる場所をチョイスしたのだ。
「ふぅ…ようやくコンタクトを入れられたな。」
「う…うん……」
「よし、始めて。」
今まで生きて来てコンタクトを入れた事のないツナにとって、第一関門クリアであった。
そしていよいよ、超死ぬ気モードでの微調整に進む。
「あの…手錠は?」
「壊して良いよ。」
「はい。」
死ぬ気丸を飲み、手錠を壊すツナ。
しかし、コンタクトを付けたその視界はかすんでいた。
「やはり調整に時間が必要だな。」
「どれくらい掛かる?」
「20分もあれば。」
「掛かり過ぎだ。……リボーン、その後の連絡は?」
「電波が悪いらしく誰からもねーぞ。今は無事を祈るしかねーな……」
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『(一番強い波長……こっち!)』
ドサッ、
トレーニングルームで基地全体の波長を読み取った檸檬は、その中で最も強い波動を持つ者の近くに出口を繋いだ。
そして、倒れるように着地した目の前にいたのは…
『ラル…!』
気を失ったまま座らされているラルに、檸檬は咄嗟に駆け寄る。
と、その真横のゲートが開いていた。
「んっ?」
「あれは…」
『たっ、武!?え、じゃあ……貴方が…!』
そこに立っていたのは、2人の剣士。
そのうち1人は山本で、もう1人は檸檬が探していた人物。
腰に差してある4本の剣。
そして、右手中指には藍色のマーレリング。
『幻騎士……』
「檸檬、どーやってココに……獄寺とセンパイは…」
『隼人と了平さんは電光のγと戦って……あたしは、』
「空間移動を使って来たか、ダーク。」
檸檬の言葉を遮ってそう言った幻騎士に、山本は少し強い視線を送った。
「気に入らねーぜ幻騎士、俺らはその呼び方を認めたワケじゃねーんだ。」
『武、いいの……大丈夫だよ。』
「それに、随分甘く見られてんだな、俺は。」
『え…?』
疑問符を浮かべる檸檬。
実は、檸檬が移動して来る少し前に、山本は幻騎士より戦いにおける2つのハンデを明かされていた。
一つは、人工の雨が降っているという地の利。
もう一つは、幻騎士の武器未使用という状況。
伝統と格式のあるボンゴレ雨の守護者。
そのまま戦って圧勝してしまっては、その名を傷つけてしまうから……と。
「つーワケで檸檬、ラル・ミルチは頼むぜ。」
『えっ!?』
「俺は、ぜってーコイツを倒す。」
「……来い。」
直後に放たれる凄まじい殺気に、山本も檸檬も一瞬怯んだ。
「(小僧よりも…痛ぇ……コイツ、本物だ……)」
『(こんな凄いの…随分久しぶり……)』
「……やっべぇ…」
「竦んだか。」
「…いんや、ゾクゾクして来ちまった。」
山本の精神構造にも、檸檬は少し驚かされる。
「だからこそあんたとは、剣士として戦いてぇ。嫌でも剣を抜かせてやるぜ、って方向で。」
『あれは…!』
開匣された山本の匣から出て来たのは、雨の炎を纏ったツバメ。
そしてその竹刀も、雨の炎を纏った刀に。
「この俺の、時雨蒼燕流でな!!」
『ま、待って!』
戦いが始まる直前に、檸檬は声を上げた。
どうしても、聞いておかなくてはならない事がある。
『幻騎士……貴方は蜜柑と良く話しているって聞いた。蜜柑の匣についても知ってるって。だから…』
「情報を、漏らせと?」
確かに、普通に考えて敵である檸檬にそんな話をするハズがない。
『あたしはただ…貴方のいる場所にくれば、蜜柑に会えるかもって……』
「蜜柑は、雨の守護者が来る前までココにいた。」
『えっ!?』
「今はお前を捜している……接触は時間の問題だろうな。」
幻騎士の言葉に、檸檬はごくりと息を飲んだ。
近くに蜜柑がいるという、緊張感が押し寄せる。
「安心しろ、俺はお前に剣を向けるつもりは無い。蜜柑に仕留めさせろと白蘭様より通達されているからな。」
『白蘭が…!?』
そこで詰まった檸檬から目線を逸らした幻騎士は、山本に向かって言う。
「ともかく…お前の全ての御託は無駄となる。」
「そいつは、闘ってみてからだ!!」
走り出す山本が繰り出したのは……
「(時雨蒼燕流、攻式一の型……車軸の雨!)」
『(速いっ……!)』
「大した突きだ……だが、」
目の前にあったハズの幻騎士の姿は、いつの間にか左右の2体に分かれていて。
「スクアーロの剣技同様、子供騙しだ。」
「がっ!」
『た、武っ!!』
山本の喉に、2本の手刀が入れられた。