日常編
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『寒ーいっ!!!』
「大丈夫か?檸檬」
ディーノが振り返る。
『どうしてこんな所で話し合いするのよ-。ツナん家でいいじゃん』
「まぁいいじゃねーか、檸檬!こんな自然、滅多にお目にかかれないぜ」
『武はいいなぁ。鍛えてるからへっちゃらでしょ?』
「鍛えてるから、かどうかは分かんねぇけどな」
檸檬は首を横に振る。
『だって、隼人は寒がってるもん。ね?』
「う、うるせー!!」
今日はディーノの企画で、ファミリー同士熱く語り合う為、地図にも載ってない秘境に案内された。
「ってか、10代目はどこだ!本当にいるんだろうな!」
「心配すんな、リボーンと先に来てる。」
そう言いつつ固まるディーノ、隼人、武。
檸檬は後ろから覗き込んだ。
『あ~っ!!』
「助けてーーー!!!」
「10代目ーーー!!!」
ツナがロープで縛られて滝の餌食になってました。
『リボーン!なんて事してんの!!』
「今日はトレーニングじゃねーぞ!」
あたしとディーノが叫ぶと、リボーンは「俺は遊ぶ事にしたんだ」と一言。
「人を使って遊ぶなーっ!」
震えながら滝から出て来るツナ。
すると、
「それもそーだな」
と言って、リボーンはエンツィオを川の中に投げた。
『あああーーーー!!!!!!』
かなりの大きさになったエンツィオ。もはや誰も止められない。
みんながパニックになっている中で、隼人だけが「山の主の怒りだ!静まりたまえ!」なんて変テコな事をやっていた。
「橋の向こうに逃げるぞ!」
『うんっ!』
あたし達は必死に走った。
けどエンツィオが動く度に地面が揺れ、橋が揺れる。
「ひーっ!揺れるーっ!」
「落ち着けツナ!」
騒ぎを引き起こした張本人のリボーンはちゃっかり武に抱えられている。
そうこうしている間に、エンツィオは橋の所までやって来た。
『追い付かれちゃったよ~っ!!』
「ちっ。ココは俺が時間稼ぎをする。お前達は先に行け!」
ディーノはカッコ良くエンツィオの前に立ちはだかった。
隼人が叫ぶ。
「待て!お前のへナチョコムチじゃ無理だ!!」
『隼人、大丈夫かもしれない!』
「あァ?」
『頑張ってディーノ!!』
あたしは必死に祈った。
だが、
ブチッ
「しまった!」
「「「『橋のロープ切断してるーーー!!!』」」」
その祈りは虚しく砕け散る。
「わぁっ!」
「アホ-ー!!」
『きゃぁぁぁぁ!!!!』
ディーノってば!
どうしてこんな時に限ってダメなのよ-っ!!!
ってか、あれ??
あたし……皆と別方向に落ちてる-ー-!!!??
『うっ…嘘ぉぉぉぉぉ!!!!』
「檸檬っ!?」
誰かに引き寄せられたのを最後に、あたしは意識を失った。
---
-----
『う………んー…』
「あぁ、起きたか」
目を開けると、そこには隼人がいた。
辺りを見回してみるものの、他の人は誰1人見当たらない。
『皆は……?』
「はぐれちまったみてーだ」
『えぇ~っ!!?どっ、どうしよう!!帰れないの!?あたし達、帰れないの!?』
「何言ってんだよ!檸檬だけなら無理でも、俺がいるから大丈夫だ!」
その時、あたしより喧嘩が弱い隼人が、
いつもよりほんのちょっとカッコ良く見えて、ビックリした。
『そ、そだね』
「だから歩くぞ」
『何処に?』
「10代目のいるトコまでだ!!」
『……………分かるの?』
あたしの問い掛けに隼人は少し詰まった。
それでも、意地っ張りと言うものは恐ろしい。
「オラ!」と言ってあたしの手を握ると、隼人はずんずん歩き始めた。
そんな隼人を、今度はちょっと可愛いな、と思い始めたり。
『隼人ー、』
「あ?」
『隼人って…可愛いねっ♪』
「なっ!!」
リンゴみたいになって、こちらを見る隼人。
やっぱり可愛いな♪
そんな事ばかり考えながら、ふと繋いだ手に目をやる。
『(あったかいなぁ…)』
ふふっと笑う檸檬を見て、獄寺は再び赤面する。
別によぉ、このままでもいいんだ。
ただ、やっぱり10代目が心配だ。
なんせ、ヘナチョコと野球バカしかいない。
(リボーンさんを除けば)
だから一刻も早く合流したいのに……
このままでいてくれ、このまま歩き続けたい、そう願う自分もいる。
それはきっと、いや絶対、檸檬がいるからなんだ。
俺の後ろで笑う檸檬を放したくない、そう…感じる。
確かに、喧嘩は俺より強ぇし俺を笑ったりするが、
それでも俺は多分……
今この瞬間、檸檬といられるのが嬉しい。
そんな事を考えてたら、突然檸檬の声が聞こえた。
『痛っ…』
「あ?どした?」
いつもと同じ調子で振り返る。
気がつけば、繋がれていた手はほどかれていて、檸檬は自分の右足首を押さえていた。
「どしたんだよ」
『うーん…ひねっちゃったみたい……』
油断したー、と苦笑いをする檸檬。
溜め息をついてから、檸檬はグッと立ち上がる。
「お、おい…」
『いーの、平気だから行こ?』
「檸檬、歩けんのか?」
『大丈夫、何とかなる。捻挫くらい、ストリートファイト時代じゃしょっちゅうだったし』
その時見せられた笑顔は、まるで俺を突き放してるようだった。
自分に構うな、と。
『行こうよ、隼人』
「…待てよ」
『え?』
首を傾げる檸檬の前で、俺は後ろ向きにしゃがんだ。
『何?』
「…乗れ」
『でも…』
「いいから早く乗れ!遅くなったら10代目が心配するだろーが!!」
『平気だって、言ったじゃない』
「顔でバレバレなんだよ、もっとマシな嘘つくんだな」
きっと檸檬は、俺と同じだ。
誰にも頼らず生きて来た。
だから、自分が傷つくと周りを突き放す。
けどよ檸檬、俺は……
俺はお前の味方でいたい、お前に信頼されたい、
そんな柄にもねーことを思ってんだ。
こんな時くらい、頼ってくれたっていーだろ。
『……重いよ?』
「いつも軽々しく飛び回ってる奴が重いワケねーだろーが!早くしろ!」
俺が怒鳴ると檸檬は吃驚して固まったようだった。
『わ、分かった…』
そうっと俺の肩につかまる。
「行くぞ」
俺は檸檬の両足を支える。
んだよ、軽いじゃねーか。
『隼人、』
「あ?」
『あのね…ありがとう。』
檸檬は、後ろから首を伸ばして俺の左頬にキスをした。
「なっ!お前なぁ!!」
『えへへっ♪』
横目に見える檸檬の笑顔が綺麗だった。
それからしばらく、無言のまま進み続けた俺達。
向こうの方から(少し大き過ぎるような)炎が見えた。
「(あっちか)」
俺が歩く足を速めると、檸檬が言った。
『どうしよう隼人、眠くなって来た』
「あ!?これから合流すんだぞ!」
『だって、隼人の背中、あったかいんだもん。すっごく落ち着く……』
後ろから抱きしめられてるような感覚に、思わず顔の熱が上がった。
「檸檬」
『んー…?』
檸檬の声はもうすぐ眠りにつきそうなモノだった。
構わず俺は続ける。
「あのなぁ、」
『ん………』
「俺は、な…本気で檸檬のこと………」
『ほ…んき……??』
自分が何を言おうとしてるかは分かるが、
何故今言おうとしているのかは分からない。
「本気で………その……」
『ん……………』
「…………好きなんだぜ」
何も聞こえて来ない。
さっきまでの相槌は?
何考えてんだよ、さっさと何か答えろ。
そう思って見ると、
『スースー…………』
規則正しい寝息を立てて、檸檬は目を閉じていた。
「(何でこう、ありがちな展開になっちまうんだろーな…)」
だが、聞いてくれなくて良かった、と思う自分もいて、
少し経つと、さっき言った事が照れくさくなって来た。
と、その時。
「あ、雨??」
スコールのような激しい雨が、俺と檸檬に叩き付けるように降って来た。
『んー…??』
その冷たさに、檸檬も目を覚ます。
『随分進んだ…?』
「あ、あぁ」
さっきの事は、まるで覚えていないようだった。
『この雨…すぐ止むね。ってか、雨じゃない』
「あ?どういう事だ?」
『そーねー……分かりやすく言うと…噴水みたいな感じ!』
檸檬は人さし指をピンと立てた。
もしかして、さっきの炎を消す為に10代目が!!
「近くに皆いるかもしれねぇ!!もうひと踏ん張りだ!」
『うんっ!』
だが、10代目を見つけるのにそんなに時間はかからなかった。
「逃げろーっ!!」
という声がしたかと思うと、さっきの山の主と10代目達と、アホ女とアホ牛とイーピン、そして姉貴がやって来た。
「ふげっ…!」
『隼人っ!?』
最後に、遠くで檸檬の声が聞こえた。
---
------
----------
『………と…隼人!』
「う……檸檬!!?」
『良かった…』
目がさめると、檸檬の顔があった。
姉貴を見た俺はそのままぶっ倒れて、野球バカに運ばれて、(檸檬は跳ね馬が運んで、)10代目の家に帰って来たらしい。
『ツナ、呼んで来るね』
「お、おぅ」
檸檬が出てった後のドアを見つめる。
ふと気がつくと、俺の額には冷たいタオルが置かれていた。
「獄寺君、もう平気?」
「じゅっ……10代目!!ベッドお借りして、本当にすいませんでした!!」
飛び起きれるなら大丈夫だよね、と言った10代目。
だがその後に、思いも寄らない付け足しをした。
「そのベッド、俺のじゃなくて檸檬のなんだ…」
「え?」
よく見ればそこは、10代目のお部屋ではなかった。
シンプル過ぎて分からなかった。
「檸檬、すっごく心配してたよ。自分が運ばせたからなかなか起きないんじゃないかって。あとで何か言っといてあげなよ」
「は、はい……」
10代目はじゃぁ、と言って出ていった。
俺は飛び起きて檸檬を探す。
『あれ?隼人。もう帰るの?』
「檸檬!!」
いざ面と向かうとやっぱり何にも言えなくなる。
自分の情けなさに呆れる。
喉を絞るように、言葉を紡いだ。
「檸檬のせいじゃ、無いからな」
檸檬は一瞬ぽかんとしたが、すぐに意味を理解したようで、次の瞬間にはにっこり笑っていた。
『ありがとう、隼人。あたしも、足はもう大丈夫だから』
「そ、そっか。じゃな」
『うん。また明日♪』
10代目に挨拶をした後、俺は家路についた。
今日は、どーでもいい事に気がついちまった。
俺は、檸檬が好きなんだ、と。
「大丈夫か?檸檬」
ディーノが振り返る。
『どうしてこんな所で話し合いするのよ-。ツナん家でいいじゃん』
「まぁいいじゃねーか、檸檬!こんな自然、滅多にお目にかかれないぜ」
『武はいいなぁ。鍛えてるからへっちゃらでしょ?』
「鍛えてるから、かどうかは分かんねぇけどな」
檸檬は首を横に振る。
『だって、隼人は寒がってるもん。ね?』
「う、うるせー!!」
今日はディーノの企画で、ファミリー同士熱く語り合う為、地図にも載ってない秘境に案内された。
「ってか、10代目はどこだ!本当にいるんだろうな!」
「心配すんな、リボーンと先に来てる。」
そう言いつつ固まるディーノ、隼人、武。
檸檬は後ろから覗き込んだ。
『あ~っ!!』
「助けてーーー!!!」
「10代目ーーー!!!」
ツナがロープで縛られて滝の餌食になってました。
『リボーン!なんて事してんの!!』
「今日はトレーニングじゃねーぞ!」
あたしとディーノが叫ぶと、リボーンは「俺は遊ぶ事にしたんだ」と一言。
「人を使って遊ぶなーっ!」
震えながら滝から出て来るツナ。
すると、
「それもそーだな」
と言って、リボーンはエンツィオを川の中に投げた。
『あああーーーー!!!!!!』
かなりの大きさになったエンツィオ。もはや誰も止められない。
みんながパニックになっている中で、隼人だけが「山の主の怒りだ!静まりたまえ!」なんて変テコな事をやっていた。
「橋の向こうに逃げるぞ!」
『うんっ!』
あたし達は必死に走った。
けどエンツィオが動く度に地面が揺れ、橋が揺れる。
「ひーっ!揺れるーっ!」
「落ち着けツナ!」
騒ぎを引き起こした張本人のリボーンはちゃっかり武に抱えられている。
そうこうしている間に、エンツィオは橋の所までやって来た。
『追い付かれちゃったよ~っ!!』
「ちっ。ココは俺が時間稼ぎをする。お前達は先に行け!」
ディーノはカッコ良くエンツィオの前に立ちはだかった。
隼人が叫ぶ。
「待て!お前のへナチョコムチじゃ無理だ!!」
『隼人、大丈夫かもしれない!』
「あァ?」
『頑張ってディーノ!!』
あたしは必死に祈った。
だが、
ブチッ
「しまった!」
「「「『橋のロープ切断してるーーー!!!』」」」
その祈りは虚しく砕け散る。
「わぁっ!」
「アホ-ー!!」
『きゃぁぁぁぁ!!!!』
ディーノってば!
どうしてこんな時に限ってダメなのよ-っ!!!
ってか、あれ??
あたし……皆と別方向に落ちてる-ー-!!!??
『うっ…嘘ぉぉぉぉぉ!!!!』
「檸檬っ!?」
誰かに引き寄せられたのを最後に、あたしは意識を失った。
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『う………んー…』
「あぁ、起きたか」
目を開けると、そこには隼人がいた。
辺りを見回してみるものの、他の人は誰1人見当たらない。
『皆は……?』
「はぐれちまったみてーだ」
『えぇ~っ!!?どっ、どうしよう!!帰れないの!?あたし達、帰れないの!?』
「何言ってんだよ!檸檬だけなら無理でも、俺がいるから大丈夫だ!」
その時、あたしより喧嘩が弱い隼人が、
いつもよりほんのちょっとカッコ良く見えて、ビックリした。
『そ、そだね』
「だから歩くぞ」
『何処に?』
「10代目のいるトコまでだ!!」
『……………分かるの?』
あたしの問い掛けに隼人は少し詰まった。
それでも、意地っ張りと言うものは恐ろしい。
「オラ!」と言ってあたしの手を握ると、隼人はずんずん歩き始めた。
そんな隼人を、今度はちょっと可愛いな、と思い始めたり。
『隼人ー、』
「あ?」
『隼人って…可愛いねっ♪』
「なっ!!」
リンゴみたいになって、こちらを見る隼人。
やっぱり可愛いな♪
そんな事ばかり考えながら、ふと繋いだ手に目をやる。
『(あったかいなぁ…)』
ふふっと笑う檸檬を見て、獄寺は再び赤面する。
別によぉ、このままでもいいんだ。
ただ、やっぱり10代目が心配だ。
なんせ、ヘナチョコと野球バカしかいない。
(リボーンさんを除けば)
だから一刻も早く合流したいのに……
このままでいてくれ、このまま歩き続けたい、そう願う自分もいる。
それはきっと、いや絶対、檸檬がいるからなんだ。
俺の後ろで笑う檸檬を放したくない、そう…感じる。
確かに、喧嘩は俺より強ぇし俺を笑ったりするが、
それでも俺は多分……
今この瞬間、檸檬といられるのが嬉しい。
そんな事を考えてたら、突然檸檬の声が聞こえた。
『痛っ…』
「あ?どした?」
いつもと同じ調子で振り返る。
気がつけば、繋がれていた手はほどかれていて、檸檬は自分の右足首を押さえていた。
「どしたんだよ」
『うーん…ひねっちゃったみたい……』
油断したー、と苦笑いをする檸檬。
溜め息をついてから、檸檬はグッと立ち上がる。
「お、おい…」
『いーの、平気だから行こ?』
「檸檬、歩けんのか?」
『大丈夫、何とかなる。捻挫くらい、ストリートファイト時代じゃしょっちゅうだったし』
その時見せられた笑顔は、まるで俺を突き放してるようだった。
自分に構うな、と。
『行こうよ、隼人』
「…待てよ」
『え?』
首を傾げる檸檬の前で、俺は後ろ向きにしゃがんだ。
『何?』
「…乗れ」
『でも…』
「いいから早く乗れ!遅くなったら10代目が心配するだろーが!!」
『平気だって、言ったじゃない』
「顔でバレバレなんだよ、もっとマシな嘘つくんだな」
きっと檸檬は、俺と同じだ。
誰にも頼らず生きて来た。
だから、自分が傷つくと周りを突き放す。
けどよ檸檬、俺は……
俺はお前の味方でいたい、お前に信頼されたい、
そんな柄にもねーことを思ってんだ。
こんな時くらい、頼ってくれたっていーだろ。
『……重いよ?』
「いつも軽々しく飛び回ってる奴が重いワケねーだろーが!早くしろ!」
俺が怒鳴ると檸檬は吃驚して固まったようだった。
『わ、分かった…』
そうっと俺の肩につかまる。
「行くぞ」
俺は檸檬の両足を支える。
んだよ、軽いじゃねーか。
『隼人、』
「あ?」
『あのね…ありがとう。』
檸檬は、後ろから首を伸ばして俺の左頬にキスをした。
「なっ!お前なぁ!!」
『えへへっ♪』
横目に見える檸檬の笑顔が綺麗だった。
それからしばらく、無言のまま進み続けた俺達。
向こうの方から(少し大き過ぎるような)炎が見えた。
「(あっちか)」
俺が歩く足を速めると、檸檬が言った。
『どうしよう隼人、眠くなって来た』
「あ!?これから合流すんだぞ!」
『だって、隼人の背中、あったかいんだもん。すっごく落ち着く……』
後ろから抱きしめられてるような感覚に、思わず顔の熱が上がった。
「檸檬」
『んー…?』
檸檬の声はもうすぐ眠りにつきそうなモノだった。
構わず俺は続ける。
「あのなぁ、」
『ん………』
「俺は、な…本気で檸檬のこと………」
『ほ…んき……??』
自分が何を言おうとしてるかは分かるが、
何故今言おうとしているのかは分からない。
「本気で………その……」
『ん……………』
「…………好きなんだぜ」
何も聞こえて来ない。
さっきまでの相槌は?
何考えてんだよ、さっさと何か答えろ。
そう思って見ると、
『スースー…………』
規則正しい寝息を立てて、檸檬は目を閉じていた。
「(何でこう、ありがちな展開になっちまうんだろーな…)」
だが、聞いてくれなくて良かった、と思う自分もいて、
少し経つと、さっき言った事が照れくさくなって来た。
と、その時。
「あ、雨??」
スコールのような激しい雨が、俺と檸檬に叩き付けるように降って来た。
『んー…??』
その冷たさに、檸檬も目を覚ます。
『随分進んだ…?』
「あ、あぁ」
さっきの事は、まるで覚えていないようだった。
『この雨…すぐ止むね。ってか、雨じゃない』
「あ?どういう事だ?」
『そーねー……分かりやすく言うと…噴水みたいな感じ!』
檸檬は人さし指をピンと立てた。
もしかして、さっきの炎を消す為に10代目が!!
「近くに皆いるかもしれねぇ!!もうひと踏ん張りだ!」
『うんっ!』
だが、10代目を見つけるのにそんなに時間はかからなかった。
「逃げろーっ!!」
という声がしたかと思うと、さっきの山の主と10代目達と、アホ女とアホ牛とイーピン、そして姉貴がやって来た。
「ふげっ…!」
『隼人っ!?』
最後に、遠くで檸檬の声が聞こえた。
---
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『………と…隼人!』
「う……檸檬!!?」
『良かった…』
目がさめると、檸檬の顔があった。
姉貴を見た俺はそのままぶっ倒れて、野球バカに運ばれて、(檸檬は跳ね馬が運んで、)10代目の家に帰って来たらしい。
『ツナ、呼んで来るね』
「お、おぅ」
檸檬が出てった後のドアを見つめる。
ふと気がつくと、俺の額には冷たいタオルが置かれていた。
「獄寺君、もう平気?」
「じゅっ……10代目!!ベッドお借りして、本当にすいませんでした!!」
飛び起きれるなら大丈夫だよね、と言った10代目。
だがその後に、思いも寄らない付け足しをした。
「そのベッド、俺のじゃなくて檸檬のなんだ…」
「え?」
よく見ればそこは、10代目のお部屋ではなかった。
シンプル過ぎて分からなかった。
「檸檬、すっごく心配してたよ。自分が運ばせたからなかなか起きないんじゃないかって。あとで何か言っといてあげなよ」
「は、はい……」
10代目はじゃぁ、と言って出ていった。
俺は飛び起きて檸檬を探す。
『あれ?隼人。もう帰るの?』
「檸檬!!」
いざ面と向かうとやっぱり何にも言えなくなる。
自分の情けなさに呆れる。
喉を絞るように、言葉を紡いだ。
「檸檬のせいじゃ、無いからな」
檸檬は一瞬ぽかんとしたが、すぐに意味を理解したようで、次の瞬間にはにっこり笑っていた。
『ありがとう、隼人。あたしも、足はもう大丈夫だから』
「そ、そっか。じゃな」
『うん。また明日♪』
10代目に挨拶をした後、俺は家路についた。
今日は、どーでもいい事に気がついちまった。
俺は、檸檬が好きなんだ、と。