未来編①
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嵐蛇のウロコが砕かれて、血が噴き出す。
分解の能力があるハズなのに、了平さんには何の影響も無いみたい。
「すげぇ!あの炎をモノともしてないぜ!」
「一体…どうなってんだ?」
『晴の活性が関係してんのかな…?』
武は我流ちゃんに話しかけて、隼人がそれを馬鹿にする。
すると了平さんが、余裕な表情で説明してくれた。
「“活性”の力をチャージする能力がある我流の腹から射出される武器は、特殊な植物で編み込まれている。」
『特殊…?』
「そうだ……この晴グローブは、高速自己治癒能力を備えている!!」
笹川了平VS.バイシャナ
これこそが、了平さんの拳が光っていた理由であり、
分解されなかった理由。
「では、嵐蛇の炎が効かなかったのは…!!」
「分解を上回るスピードで細胞を再生した為だ。」
『すごい…!』
「砕けぬ拳……」
「やるな!先輩もカンガルーも!」
でもバイシャナは少しの間の後、再び“晴の力”を下に見る。
「下等なボンゴレ風情にしては良くやった。だが既に汝の攻略法…見つけたり。」
『攻略法?この短時間で!?』
「所望!!」
バイシャナのリングに赤い炎が灯り、首にさげてあった8つの匣に次々と注入される。
そして、彼が持っていた笛を吹くと……
ボボボッ、
『あ、アレは…!』
「虫…?」
「クワガタだ!!顎に嵐の炎が灯ってやがる!!」
すばしっこい匣兵器が、8匹飛び出して来た。
「左様、この嵐クワガタ(チェルヴォ・ヴォランテ・テンペスタ)の顎にも分解能力がある。確かに嵐蛇より火力も破壊力も劣るが……」
バイシャナの口角が、緩く上がる。
「汝の泣き所をつくのには、こやつらがむしろ好都合なり。」
---
------
-----------
同じ頃、先ほど開匣をしてその後を歩いていた蜜柑。
ふと、誘導していた匣兵器・“マー”がある部屋の前で止まる。
「……ココね、」
「キイッ!」
「戻って良いわ、マー。」
蜜柑がそう言うと、マーと呼ばれたその小さな猿は自ら匣に戻って行った。
その匣が完全に閉じたのを確認し、蜜柑は部屋のドアの前に立つ。
そして、軽く握った拳で一度だけ扉を叩いた。
-「ん…?」
中から声が聞こえる。
それは、部屋の主であるスパナの声。
ドア越しであったにも関わらず、蜜柑の優れた聴覚はソレを聞き逃さなかった。
-「だ、誰か来たんですか…!?」
-「……みたいだ。」
「(あら…?)」
蜜柑は、気付いた。
スパナの部屋の中には、もう1人別の人物がいる。
そしてその声は、遠い昔に耳にした事のある……
「(ボンゴレ10代目……沢田綱吉…)」
-「じゃあ、その辺に隠れてて。」
-「そっ…そんなんで大丈夫なんですか!?見つかったら俺、殺されるんじゃ……」
-「その時はその時だ。とにかく早く出ないといけないから、今は隠れててよ。」
-「はぁ……」
筒抜けの会話の直後にごそっと音がして、ボンゴレ10代目が身を隠したのが分かった。
しかし、耳のいい蜜柑の前では無意味な事。
息づかいなどの音が漏れて、すぐに居場所が特定出来るだろう。
-「今開けるから、名乗ってくれるか?」
ノックをしてから1分20秒、ようやくスパナが応答する。
蜜柑は何の躊躇いも無く口を開いた。
「パフィオペディラム所属、雨宮蜜柑よ。」
-「えっ…?」
スパナの声が、驚いたように跳ね上がった。
-「ほ、ホントに…あの雨宮蜜柑…!?」
「えぇ。」
-「用件は?」
「貴方の技術を見に来た、それだけよ。」
淡々と答える蜜柑は、最後にこう付け足した。
「だから、貴方の部屋及びその周辺を血で染める気はないわ。」
-「……分かった、開けるよ。」
扉はすぐに開いた。
そして、蜜柑の目の前にはゴーグルをつけ飴をくわえたスパナが現れる。
「面と向かって話すのは、初めてだ。」
「そうね。」
「ウチがスパナだ、宜しく。」
「えぇ。」
笑顔を見せながら、スパナは蜜柑の手を握って上下に振った。
---
------
-----------
「自慢のフットワークは通用せぬ。食らうが良い!」
バイシャナの合図で、8匹のクワガタが一斉に了平さんに向かって来た。
8連クワガタ(チェルヴォ・ヴォランテ・ベル・オット)……8匹ならではの連携技みたい。
抜群の動体視力で標的を捉え、拳を伸ばす了平さん。
だけど、擦るので精一杯のようだ。
「捉えきれてない!!」
「あのクワガタ共…調教されてやがんだ!!」
絶妙な時間差での攻撃に、一匹相手の大振りは禁物。
8匹全てに擦りはしたものの、まだ1匹も落とせてない。
「フォホホホどうした?汝の退路は徐々に絶たれておるぞ。DARQを我が生け捕りにするも遠からず!」
「んの野郎…まだふざけた事ぬかしてやがる…!」
『別に、隼人が怒る事じゃないと思うよ?』
「檸檬の方がケロっとしてんのな。」
『あはは、まぁね。』
だって……
もう慣れたよ、多分。
ミルフィオーレにとって、蜜柑にとって、
あたしは生け捕りの対象なんだって、分かったから。
「檸檬!何でおめーは…!!」
『え?』
あたしの顔を見た隼人は、途中で言葉を止めた。
その理由が分からず、あたしは首を傾げる。
『どうか、した?』
「………何でもねぇよ…」
ふいっと目をそらし、了平さんの方に視線を戻す隼人。
不思議に思うあたしの頭に、ふわりと手の平が乗る。
『へ……?』
武だった。
手の平を乗せ、そのままゆっくりと撫でる。
『何?どしたの…?』
「んーと、何てゆーか……無理すんなよな。」
『え…?』
「俺達も、だいぶ分かるよーになって来たっつー事で、なっ。」
ますます意味が分からず聞き返そうとした、その時。
追いつめられていた了平さんが、我流ちゃんの名前を呼び、空中に飛び上がった。
『すごい!Fシューズみたい!!』
「ほう、飛べたか。だが汝、我が術中にあること何ら変わらず。」
次の瞬間、空中にいる了平さんを胴体で囲むように蛇が起き上がった。
どうやらさっきの一撃だけじゃ、KOにはならなかったみたい。
「フォホホ、いよいよ準備は整った。この時を待っておったぞ!汝のたった2つの拳では、嵐蛇の炎の壁と嵐クワガタの8点同時攻撃を、同時に防ぐ術無し!!!」
『あっ…クワガタが!』
「全部一斉に!!」
「アレじゃかわしきれねぇ!!」
「死せよ晴の守護者!!」
バイシャナは勝利を確信したようにそう言った。
けど、了平さんは何故か落ち着いた雰囲気のままで。
ボウッ、
『あ、れ…?』
8匹のクワガタが順番に落ちて行くのを見て初めて、
あたし達は了平さんの余裕のワケを理解した。
「ば…バカな!!嵐クワガタが全機落とされるなど…!そんなバカな!!」
「触れてもねーのに…」
「あのクワガタ…自らの嵐の炎で自爆したように見えたぜ。」
「その通りだ、タコ頭。ヤツらの顎の炎は暴走したのだ。晴の“活性”の力によってな。」
『そっか…!』
最初に8匹同時攻撃を仕掛けられた時、了平さんの拳はそれぞれに擦ってた……
了平さんの拳は“活性力”の塊の様なモノ…
「バイシャナ、貴様言っていたな……檸檬を生け捕りにすると。」
『了平、さん…?』
「入れ替わった山本や獄寺はともかく、俺の前でその台詞を発したのが間違いだったのだ。」
「なにぃ……?」
背中を見せている了平さんの表情は、全く確認出来なかったけど、
これだけは分かった。
『(オーラが…変わった……)』
見え隠れする怒りのオーラが、波長になって伝わって来た。
「ボンゴレ本部陥落と同時に檸檬が捕らえられたと知った時、俺達がどれほどの衝撃を受けたかは、貴様には分かるまい。」
「芝生……」
「そして、入れ替わりミルフィオーレから逃れたと聞いた時、各々が心の内で誓ったのだ。同じ事は繰り返さぬとな。」
ダメだ、耐えられない。
「お、おいっ!檸檬っ…!」
『どうしてですかっ…?』
あたしは思わず、武と隼人の間をすり抜けて、前に出た。
空中にいる了平さんに向かって、声を振り絞るように問いかける。
『あたしの力は…正常な人間のモノじゃない……勿論、敵の手に渡れば危ないけど、でもっ……』
どうして、“闇”と呼ばれる存在を、守ろうとしてくれるんだろう…
『未来のあたしには、捕まったままでも力を譲り渡さずにいる覚悟があったハズ……それはあたしが良く分かります!たとえ、監禁のせいで命を落としてでも。』
“闇”は、1人で消えてく事を受け入れられたと思うのに……
どうして?
力と共にこの世界から消えてしまえば良かった、
修業をしながら、何度も思った。
だってこの力には……何一つ幸せが宿らない。
所有していれば狙われる。
大切な人達にも迷惑がかかる。
蜜柑にだって、憎まれたまま。
「俺達に守られるくらいなら、白蘭の元で死ねば良かった……という意味か?」
『あたしは、守られるべき綺麗な存在じゃありません……。だから、ダークの力ごと消えて無くなれば、迷惑かからないって…』
「檸檬、お前はいくつになっても分からんのだな。」
『え…?』
見上げた先には、困ったように苦笑する了平さん。
「覚えておけ、檸檬。俺達ボンゴレは命を懸けて“女王”を守る。お前が、命を捨ててでも俺達を護ろうとするようにな。」
「そーだぜっ、檸檬!」
「おめーはいつも一方通行なんだよ。」
『あたしが…護ろうとするから……?』
大きな力を持ってしまったからだろうか、
捨てて欲しいと願うようになったのは。
力が狙われていると知ってからだろうか、
消えてしまいたいと涙するようになったのは。
あたしのマイナス感情を、
いつも皆は、いとも簡単に消し去って………
「檸檬っ?」
『うっ……』
止められるハズの涙を、流させるんだ。
「さぁバイシャナ、決着をつけようか。貴様とツチノコのにトドメを刺してやる。」
「(この男……つ、強い!!)」
---
-----
-----------
「光栄だよ、まさか雨宮蜜柑が直接ウチのトコまで来てくれるなんて。」
「入江君が貴方に高い評価を与えてたから。」
「正一が?そっか。」
照れくさそうに笑い、スパナは蜜柑を部屋の真ん中に導く。
そこには、座布団が1つ置かれていた。
他にも、ドラム缶に書かれた“チャブダイ”の文字、緑茶を入れるセットなどを見て、蜜柑は尋ねた。
「日本文化に興味が?」
「うん、好きだから。」
「……そう。」
「蜜柑は日本人だろ?だから嬉しいってのもある。」
言いながらスパナは、コポコポと緑茶を入れる。
その手元を見ながら、蜜柑は言った。
「“2人”いるから?」
「………え。」
「日本人が“2人”いるでしょう?………ココに。」
目を丸くするスパナに、蜜柑は独特の湖面のような瞳を向けた。
---
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-----------
「入江様!やっとバイシャナ氏が見つかりました。展示室より通信です。」
「開いてくれ。」
「はっ。」
チェルベッロの操作で中央司令室の大きなモニターに映し出されたのは……
-「我、救援を所望す!!」
焦り一色に顔を染めたバイシャナだった。
「何!?敵か!?もう展示室にまで来ているのか!?バイシャナ……」
入江が質問している間に、通信機が壊れたのか画面は砂嵐になる。
「ニゲラはどうした!?」
「未だ連絡がありません…!幻騎士殿もまだ………あっ、まずいです!!この地点に現在味方がおりません!!」
「なんだって!!」
「入江様…!!」
予測していなかった状況に、入江は歯を食いしばった。
「このままでは奴らが研究所に!!」
彼は、ある決意をした。
分解の能力があるハズなのに、了平さんには何の影響も無いみたい。
「すげぇ!あの炎をモノともしてないぜ!」
「一体…どうなってんだ?」
『晴の活性が関係してんのかな…?』
武は我流ちゃんに話しかけて、隼人がそれを馬鹿にする。
すると了平さんが、余裕な表情で説明してくれた。
「“活性”の力をチャージする能力がある我流の腹から射出される武器は、特殊な植物で編み込まれている。」
『特殊…?』
「そうだ……この晴グローブは、高速自己治癒能力を備えている!!」
笹川了平VS.バイシャナ
これこそが、了平さんの拳が光っていた理由であり、
分解されなかった理由。
「では、嵐蛇の炎が効かなかったのは…!!」
「分解を上回るスピードで細胞を再生した為だ。」
『すごい…!』
「砕けぬ拳……」
「やるな!先輩もカンガルーも!」
でもバイシャナは少しの間の後、再び“晴の力”を下に見る。
「下等なボンゴレ風情にしては良くやった。だが既に汝の攻略法…見つけたり。」
『攻略法?この短時間で!?』
「所望!!」
バイシャナのリングに赤い炎が灯り、首にさげてあった8つの匣に次々と注入される。
そして、彼が持っていた笛を吹くと……
ボボボッ、
『あ、アレは…!』
「虫…?」
「クワガタだ!!顎に嵐の炎が灯ってやがる!!」
すばしっこい匣兵器が、8匹飛び出して来た。
「左様、この嵐クワガタ(チェルヴォ・ヴォランテ・テンペスタ)の顎にも分解能力がある。確かに嵐蛇より火力も破壊力も劣るが……」
バイシャナの口角が、緩く上がる。
「汝の泣き所をつくのには、こやつらがむしろ好都合なり。」
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同じ頃、先ほど開匣をしてその後を歩いていた蜜柑。
ふと、誘導していた匣兵器・“マー”がある部屋の前で止まる。
「……ココね、」
「キイッ!」
「戻って良いわ、マー。」
蜜柑がそう言うと、マーと呼ばれたその小さな猿は自ら匣に戻って行った。
その匣が完全に閉じたのを確認し、蜜柑は部屋のドアの前に立つ。
そして、軽く握った拳で一度だけ扉を叩いた。
-「ん…?」
中から声が聞こえる。
それは、部屋の主であるスパナの声。
ドア越しであったにも関わらず、蜜柑の優れた聴覚はソレを聞き逃さなかった。
-「だ、誰か来たんですか…!?」
-「……みたいだ。」
「(あら…?)」
蜜柑は、気付いた。
スパナの部屋の中には、もう1人別の人物がいる。
そしてその声は、遠い昔に耳にした事のある……
「(ボンゴレ10代目……沢田綱吉…)」
-「じゃあ、その辺に隠れてて。」
-「そっ…そんなんで大丈夫なんですか!?見つかったら俺、殺されるんじゃ……」
-「その時はその時だ。とにかく早く出ないといけないから、今は隠れててよ。」
-「はぁ……」
筒抜けの会話の直後にごそっと音がして、ボンゴレ10代目が身を隠したのが分かった。
しかし、耳のいい蜜柑の前では無意味な事。
息づかいなどの音が漏れて、すぐに居場所が特定出来るだろう。
-「今開けるから、名乗ってくれるか?」
ノックをしてから1分20秒、ようやくスパナが応答する。
蜜柑は何の躊躇いも無く口を開いた。
「パフィオペディラム所属、雨宮蜜柑よ。」
-「えっ…?」
スパナの声が、驚いたように跳ね上がった。
-「ほ、ホントに…あの雨宮蜜柑…!?」
「えぇ。」
-「用件は?」
「貴方の技術を見に来た、それだけよ。」
淡々と答える蜜柑は、最後にこう付け足した。
「だから、貴方の部屋及びその周辺を血で染める気はないわ。」
-「……分かった、開けるよ。」
扉はすぐに開いた。
そして、蜜柑の目の前にはゴーグルをつけ飴をくわえたスパナが現れる。
「面と向かって話すのは、初めてだ。」
「そうね。」
「ウチがスパナだ、宜しく。」
「えぇ。」
笑顔を見せながら、スパナは蜜柑の手を握って上下に振った。
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「自慢のフットワークは通用せぬ。食らうが良い!」
バイシャナの合図で、8匹のクワガタが一斉に了平さんに向かって来た。
8連クワガタ(チェルヴォ・ヴォランテ・ベル・オット)……8匹ならではの連携技みたい。
抜群の動体視力で標的を捉え、拳を伸ばす了平さん。
だけど、擦るので精一杯のようだ。
「捉えきれてない!!」
「あのクワガタ共…調教されてやがんだ!!」
絶妙な時間差での攻撃に、一匹相手の大振りは禁物。
8匹全てに擦りはしたものの、まだ1匹も落とせてない。
「フォホホホどうした?汝の退路は徐々に絶たれておるぞ。DARQを我が生け捕りにするも遠からず!」
「んの野郎…まだふざけた事ぬかしてやがる…!」
『別に、隼人が怒る事じゃないと思うよ?』
「檸檬の方がケロっとしてんのな。」
『あはは、まぁね。』
だって……
もう慣れたよ、多分。
ミルフィオーレにとって、蜜柑にとって、
あたしは生け捕りの対象なんだって、分かったから。
「檸檬!何でおめーは…!!」
『え?』
あたしの顔を見た隼人は、途中で言葉を止めた。
その理由が分からず、あたしは首を傾げる。
『どうか、した?』
「………何でもねぇよ…」
ふいっと目をそらし、了平さんの方に視線を戻す隼人。
不思議に思うあたしの頭に、ふわりと手の平が乗る。
『へ……?』
武だった。
手の平を乗せ、そのままゆっくりと撫でる。
『何?どしたの…?』
「んーと、何てゆーか……無理すんなよな。」
『え…?』
「俺達も、だいぶ分かるよーになって来たっつー事で、なっ。」
ますます意味が分からず聞き返そうとした、その時。
追いつめられていた了平さんが、我流ちゃんの名前を呼び、空中に飛び上がった。
『すごい!Fシューズみたい!!』
「ほう、飛べたか。だが汝、我が術中にあること何ら変わらず。」
次の瞬間、空中にいる了平さんを胴体で囲むように蛇が起き上がった。
どうやらさっきの一撃だけじゃ、KOにはならなかったみたい。
「フォホホ、いよいよ準備は整った。この時を待っておったぞ!汝のたった2つの拳では、嵐蛇の炎の壁と嵐クワガタの8点同時攻撃を、同時に防ぐ術無し!!!」
『あっ…クワガタが!』
「全部一斉に!!」
「アレじゃかわしきれねぇ!!」
「死せよ晴の守護者!!」
バイシャナは勝利を確信したようにそう言った。
けど、了平さんは何故か落ち着いた雰囲気のままで。
ボウッ、
『あ、れ…?』
8匹のクワガタが順番に落ちて行くのを見て初めて、
あたし達は了平さんの余裕のワケを理解した。
「ば…バカな!!嵐クワガタが全機落とされるなど…!そんなバカな!!」
「触れてもねーのに…」
「あのクワガタ…自らの嵐の炎で自爆したように見えたぜ。」
「その通りだ、タコ頭。ヤツらの顎の炎は暴走したのだ。晴の“活性”の力によってな。」
『そっか…!』
最初に8匹同時攻撃を仕掛けられた時、了平さんの拳はそれぞれに擦ってた……
了平さんの拳は“活性力”の塊の様なモノ…
「バイシャナ、貴様言っていたな……檸檬を生け捕りにすると。」
『了平、さん…?』
「入れ替わった山本や獄寺はともかく、俺の前でその台詞を発したのが間違いだったのだ。」
「なにぃ……?」
背中を見せている了平さんの表情は、全く確認出来なかったけど、
これだけは分かった。
『(オーラが…変わった……)』
見え隠れする怒りのオーラが、波長になって伝わって来た。
「ボンゴレ本部陥落と同時に檸檬が捕らえられたと知った時、俺達がどれほどの衝撃を受けたかは、貴様には分かるまい。」
「芝生……」
「そして、入れ替わりミルフィオーレから逃れたと聞いた時、各々が心の内で誓ったのだ。同じ事は繰り返さぬとな。」
ダメだ、耐えられない。
「お、おいっ!檸檬っ…!」
『どうしてですかっ…?』
あたしは思わず、武と隼人の間をすり抜けて、前に出た。
空中にいる了平さんに向かって、声を振り絞るように問いかける。
『あたしの力は…正常な人間のモノじゃない……勿論、敵の手に渡れば危ないけど、でもっ……』
どうして、“闇”と呼ばれる存在を、守ろうとしてくれるんだろう…
『未来のあたしには、捕まったままでも力を譲り渡さずにいる覚悟があったハズ……それはあたしが良く分かります!たとえ、監禁のせいで命を落としてでも。』
“闇”は、1人で消えてく事を受け入れられたと思うのに……
どうして?
力と共にこの世界から消えてしまえば良かった、
修業をしながら、何度も思った。
だってこの力には……何一つ幸せが宿らない。
所有していれば狙われる。
大切な人達にも迷惑がかかる。
蜜柑にだって、憎まれたまま。
「俺達に守られるくらいなら、白蘭の元で死ねば良かった……という意味か?」
『あたしは、守られるべき綺麗な存在じゃありません……。だから、ダークの力ごと消えて無くなれば、迷惑かからないって…』
「檸檬、お前はいくつになっても分からんのだな。」
『え…?』
見上げた先には、困ったように苦笑する了平さん。
「覚えておけ、檸檬。俺達ボンゴレは命を懸けて“女王”を守る。お前が、命を捨ててでも俺達を護ろうとするようにな。」
「そーだぜっ、檸檬!」
「おめーはいつも一方通行なんだよ。」
『あたしが…護ろうとするから……?』
大きな力を持ってしまったからだろうか、
捨てて欲しいと願うようになったのは。
力が狙われていると知ってからだろうか、
消えてしまいたいと涙するようになったのは。
あたしのマイナス感情を、
いつも皆は、いとも簡単に消し去って………
「檸檬っ?」
『うっ……』
止められるハズの涙を、流させるんだ。
「さぁバイシャナ、決着をつけようか。貴様とツチノコのにトドメを刺してやる。」
「(この男……つ、強い!!)」
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「光栄だよ、まさか雨宮蜜柑が直接ウチのトコまで来てくれるなんて。」
「入江君が貴方に高い評価を与えてたから。」
「正一が?そっか。」
照れくさそうに笑い、スパナは蜜柑を部屋の真ん中に導く。
そこには、座布団が1つ置かれていた。
他にも、ドラム缶に書かれた“チャブダイ”の文字、緑茶を入れるセットなどを見て、蜜柑は尋ねた。
「日本文化に興味が?」
「うん、好きだから。」
「……そう。」
「蜜柑は日本人だろ?だから嬉しいってのもある。」
言いながらスパナは、コポコポと緑茶を入れる。
その手元を見ながら、蜜柑は言った。
「“2人”いるから?」
「………え。」
「日本人が“2人”いるでしょう?………ココに。」
目を丸くするスパナに、蜜柑は独特の湖面のような瞳を向けた。
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「入江様!やっとバイシャナ氏が見つかりました。展示室より通信です。」
「開いてくれ。」
「はっ。」
チェルベッロの操作で中央司令室の大きなモニターに映し出されたのは……
-「我、救援を所望す!!」
焦り一色に顔を染めたバイシャナだった。
「何!?敵か!?もう展示室にまで来ているのか!?バイシャナ……」
入江が質問している間に、通信機が壊れたのか画面は砂嵐になる。
「ニゲラはどうした!?」
「未だ連絡がありません…!幻騎士殿もまだ………あっ、まずいです!!この地点に現在味方がおりません!!」
「なんだって!!」
「入江様…!!」
予測していなかった状況に、入江は歯を食いしばった。
「このままでは奴らが研究所に!!」
彼は、ある決意をした。