未来編①
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ボンゴレ地下アジト内にて、リボーンのおしゃぶりが突如大きな光を放った。
「ヨヨヨ!リボーンさん、おしゃぶりが!!」
驚くジャンニーニに、リボーンは冷静に返す。
「アルコバレーノ同士が近づくと共鳴して輝くんだが…この時代にそんな事はあり得ねぇ。」
「では…」
「あるとすれば、ラルの奴が力を使ったか…………ん?」
ふと何かに気がつき、リボーンは何かを取り出す。
リボーンのおしゃぶりと同じく目映い光を放っていたのは…
ツナが初めに開けた匣に入っていた、コロネロのおしゃぶりだった。
後悔
「どうなっている!?」
「何だ!?あの青い光は!!」
『ブルーって……まさか、』
フゥ太が言っていた属性ごとに違う炎の色を思い出す檸檬。
騒ぐ周りは気にも留めずに、ラルは言う。
「コロネロへの侮辱を撤回するか死かを選べ、ジンジャー・ブレッド。」
その両頬には、元々あったアザと同じモノが広がっていく。
「大丈夫かよ、あいつ……」
「顔のアザが…ラル!!」
「醜いなぁ♪それはなり損ないになった時の中途半端な呪いの名残だろ?」
『(呪いって……?)』
「まぁ、君も曲がりなりにもアルコバレーノってワケだ。その濁ったおしゃぶりはもう使い物にならないと思ってたよ。」
ジンジャーは余裕な口調のまま、喋り続ける。
「ただ残念な事にラストスパートが遅過ぎたね。この指を鳴らせばクモが飛び出し、君の体は弾けとんでおしまい♪」
『そ、そんな…!』
「いかん!!」
「まっ…待って!!!」
「いいね~~♪悲痛の叫びを聞くと、鳴らすのが余計楽しくなるよ♪」
非情な台詞を吐きながら、鳴らす準備をするジンジャー。
『ダメっ…!!』
「やめろーーーっ!!!」
パチンッ……
嫌な音が、響いた。
「……確かに俺はなり損ないだ。」
「おおっ!!」
「ラル!」
『よ、良かった…!』
安堵する5人と、驚くジンジャー。
ラルは言った。
不完全な呪いで歪な体質変異を起こした自分の体は、
流れる波動すら霧と雲の属性に変わってしまったと。
「だが、このおしゃぶりは変わらない……」
『(もしかして……)』
檸檬は先ほどのジンジャーの話を思い出し、うっすら気がついた。
アルコバレーノが生まれた日に、
コロネロがラルの代わりに行った。
つまりラルのおしゃぶりは……
『……コロネロと、同じモノ。』
「え?」
呟く檸檬の方を向くツナ。
『あの青は、コロネロじゃなくてラルが受け取るハズだった………』
「ああ。その通りだ、檸檬…。これは、俺の命と引き換えに炎を放つ。属性は……」
青、ブルー、
つまり……
「『……雨。』」
言うと同時に、ラルの全身が青い炎で包まれた。
その異様な光景に、一同は目を見開く。
「……そうか!何故クモが体を突き破って来ないのか分かったぞ!!」
『ラルのおしゃぶりが雨属性、だからですか?』
「ああ、クモを急成長させる晴の“活性”を…雨の“鎮静”で相殺したのだ!!」
多分、ラルにとっては最後の手段だったんだと思う。
ただでさえ放射線のせいで体が弱ってるって言うのに…
命と引き換えに“鎮静”を引き出すなんて……。
『ラル……』
「なるほどね~♪そういう事か♪」
「でも…匣兵器じゃなくてラル自身が炎を纏うなんて……」
「俺も初めて見るぞ、肉体から炎など……」
ツナと了平さんに答えるように、ラルは言った。
「アルコバレーノの肉体構造はお前達とは異なる。」
『(肉体、構造…!?)』
「その肉体に背負わされた宿命……苦しみと絶望は誰にも分かりはしない。俺があのままアルコバレーノになっていたら、魂を病み、バイパーの最期と同じ道を選んでいただろう……」
『(それって…自殺……)』
あんなに可愛くて強い赤ん坊達…
あたしも大好きなアルコバレーノが、心の内に大きな痛みを抱えていたなんて……
「コロネロがいたから……俺は生きたんだ。アイツのおかげで生きて来れた。」
『(ラル……?)』
こんな時に、視力がいいのを恨んだりする。
だってラルは、きっと今の表情を見られたくないに決まってる。
ゴーグルの下の涙を見てしまった事に、あたしは罪悪感を感じて俯く。
「檸檬、」
『えっ…?』
「お前にも、感謝しなくてはならない。」
『ど、どーして?あたしは…』
ラルはこっちを向いて、少しだけ穏やかな表情をした。
「忌々しかったあの姿を、畏れも隔てもなく受け入れてくれた。」
『そ、そんな事っ…!』
あたしはただ、可愛くて強いみんなが大好きなだけで、
その裏に苦しみや悲しみがあった事なんて何一つ知らなくて、
---『ラールっ♪』
---「お、おい!檸檬っ…!」
知らないまま、分からないまま、
頭や肩に乗せたり抱きついたり………
『ほっぺも…つねったりしたし……』
「あぁ…確かに痛かった。だが、だから忘れられた。檸檬が笑いかけてくれるその瞬間、俺は呪われたという記憶から救われてたんだ…」
『ラルっ……』
何も分かってなくて、ごめんね。
無知なまま隣にいたあたしを受け入れてくれて、ありがとう。
そう思ったら、胸の奥がキュッと苦しくなって、堪えるように拳を握った。
「ほーう♪君にとってはコロネロもDARQも救世主だったみたいだね。でも結局君はここで死ぬんだし、無意味さ。」
「ジンジャー………死ぬのはお前だ!!」
おしゃぶりを首から下げたラルは、真直ぐジンジャーに向かって飛び上がる。
拳は全て箒で防がれ、最後はひょいっとかわされた。
「勢いは認めるけど、真直ぐにしか進めなくちゃ意味ないよ。」
そう言ったジンジャーの背後で、ラルは急旋回をした。
壁の柱にしっかりと固定された雲ムカデに捕まって、勢いを逆向きに変えたのだ。
「え!?」
気づいた時にはもう、ジンジャーの体はラルの手足により拘束されていた。
---
------
------------
「す、すげぇ…!」
「開匣した時は確かに大空の炎を纏っていたハズ…」
驚嘆の声をあげる野猿の隣で、治された部分に触れる太猿。
一方、治した蜜柑はそちらには見向きもせずに床に倒れている隊員を見た。
先ほどγにより感電させられた男である。
「次は……結構掛かりそうね。」
「な、治してくれんのか!?」
倒れた隊員の傍にしゃがんだ蜜柑に、野猿は駆け寄る。
しかし、期待と歓喜が混じる声色に、蜜柑は冷たく返した。
「……4度目。」
「え…、あっ…!」
「…学習しない人。」
「うっ…」
初めに言われた「黙れ」という指示を思い出し、野猿は口を閉じる。
蜜柑は、肩に乗ったマーモセットに顎で合図する。
「キッ!」
大人しく、倒れた男の上に乗ったマーモセット。
そして再び、蜜柑はあの言葉を発した。
「C to “S”…」
「キイッ!」
くるっと宙返りをしたマーモセットは、同じようにしっぽの炎を黄色く変化させた。
息を飲むアフェランドラ隊の者達の前で、黄色い炎が治癒を行っていく。
しかし……
「……あら、」
「キッ!」
4秒経たないうちに、マーモセットは炎の放射をやめ、蜜柑の方に向き直った。
蜜柑は躊躇いもなく、こう言う。
「Again.」
「キイッ!」
蜜柑の言葉に反応するかのように、マーモセットは黄色い炎を放射する。
隊員の全身火傷は、少しずつ治って来ていた。
が、また4秒程経つと“指示待ち状態”に戻る。
「……なるほどね…」
一言呟いてから、蜜柑は繰り返し「Again」と言った。
約4秒ごとに言い続け、その度に腕時計を見ていた。
---
------
「…終わったわ。」
「ま、まさか…こんなに治るなんて……!」
「マジで晴の活性…!??」
マーモセットを肩の上に呼び戻す蜜柑。
その周りでは、今までの過程を目撃していた全ての人間が驚きを隠せないでいた。
しかしそんな目は気にせず、蜜柑は一つの解析結果を頭に刻み込む。
「(3秒が限界、ってトコね……)」
と、その時。
「終わったか、蜜柑。」
奥の部屋から幻騎士が現れ、問いかけた。
「そっちは?」
「済んだ。」
「ならもういいわね。」
ツインテールをなびかせ、方向転換する蜜柑。
幻騎士も同じくドアの向こうへ出る。
「試せたか。」
「えぇ。」
「そうか。」
短い単語での会話をしながら元来た道を歩いていた、その時。
「おい、野猿!!」
「あ、あの!!」
呼び止められ、立ち止まる2人。
最小限に振り向くと、駆け足で近づく野猿。
その後ろからは太猿も来ていた。
「あの、蜜柑さんっ…」
「……何か?」
深呼吸を一つしてから、野猿は少し大きな声で言った。
「ありがとうっ…!」
ピクリ、と蜜柑の眉が動く。
「太猿アニキや皆を…治してくれt……」
「必要ない。」
「…………え?」
遮られて呆然とする野猿に、蜜柑は追い打ちをかける。
「あの状況で私の行為がお互いのメリットに繋がった、それだけの事。」
「で、でも…!」
「言霊信者でもない限り、礼なんて必要ない。」
蜜柑は、完全に背を向けていた。
それでも口を開こうとした野猿だが、その気配すら察知される。
「そんな下らない事、わざわざ立ち止まって聞くこともないわ。」
突き放すように言って歩き出す蜜柑に、野猿は今度は叫んだ。
「何回でも言ってやるよ!!“ありがとう”っ!!」
「……返さないのか。」
「誰が。」
「蜜柑がいいなら、構わんが。」
隣を歩く幻騎士にも聞こえない程、蜜柑は小さく小さくこぼした。
「………バカみたい。」
---
-----
-----------
最初は、ジンジャーも甘く見ていた。
体調の悪いラルがいくら喰らいついても、鎮静があったとしても、その拘束は簡単に解けると。
けど、全く動けないままムカデに串刺しにされる。
「俺の鎮静力を甘く見すぎたな。」
「くっ…そー……でも、いいのかい?これでコロネロを殺した実行犯は聞けなくなるんだよ…?」
「お前を生かした所でどうせ話さないだろう、自分で探す。」
「憎たらしいメスだなぁ……」
ジンジャーは、力を振り絞ってツナ達の方へ顔を向ける。
「ココで……ダークを生け捕りにしたかったのになぁ……」
「何を…!」
「まぁいいや……楽しませてもらうよ……双子の姉妹の、醜さ極まりない争いを…さ………」
そこでラルは異変を察知し、叫ぶ。
「伏せろ!!!」
次の瞬間、ジンジャーの体は爆発してしまった。
ラルが飛ばされた方に駆け寄るツナ達。
「とっさにムカデのシールドを展開したんだな。」
『良かった…ラルっ……』
「おい檸檬っ……すぐ抱きつくな!」
『心配したんだよ~~っ…』
飛びつく檸檬を宥めたラルは、粉砕したジンジャーが人形だった事を告げた。
それが、魔導師の人形と呼ばれる所以らしい。
「おいラル・ミルチ、そろそろ教えてくれてもいーんじゃねーか?」
『隼人…?』
「アルコバレーノの謎、ってのをよ。」
「………断る。」
「てめっ、いつまでも1人で背負い込んでんじゃねーよ!!何で話せねーんだよ!!」
「何を言おうと俺から話すつもりはない。」
俯きながらそう返したラル。
そして…
「どうしても知りたければ、山本に訊けばいい。」
「なっ…野球バカが!?」
「え!?山本、知ってんの!?」
「ん…?まぁな。」
『ほ、ホントに……?』
驚きの事実に固まるあたし達。
だけど、時間は止まってはくれなかった。
ヴー…ヴー……
メローネ基地の警報が、鳴り響き始めた。
「ヨヨヨ!リボーンさん、おしゃぶりが!!」
驚くジャンニーニに、リボーンは冷静に返す。
「アルコバレーノ同士が近づくと共鳴して輝くんだが…この時代にそんな事はあり得ねぇ。」
「では…」
「あるとすれば、ラルの奴が力を使ったか…………ん?」
ふと何かに気がつき、リボーンは何かを取り出す。
リボーンのおしゃぶりと同じく目映い光を放っていたのは…
ツナが初めに開けた匣に入っていた、コロネロのおしゃぶりだった。
後悔
「どうなっている!?」
「何だ!?あの青い光は!!」
『ブルーって……まさか、』
フゥ太が言っていた属性ごとに違う炎の色を思い出す檸檬。
騒ぐ周りは気にも留めずに、ラルは言う。
「コロネロへの侮辱を撤回するか死かを選べ、ジンジャー・ブレッド。」
その両頬には、元々あったアザと同じモノが広がっていく。
「大丈夫かよ、あいつ……」
「顔のアザが…ラル!!」
「醜いなぁ♪それはなり損ないになった時の中途半端な呪いの名残だろ?」
『(呪いって……?)』
「まぁ、君も曲がりなりにもアルコバレーノってワケだ。その濁ったおしゃぶりはもう使い物にならないと思ってたよ。」
ジンジャーは余裕な口調のまま、喋り続ける。
「ただ残念な事にラストスパートが遅過ぎたね。この指を鳴らせばクモが飛び出し、君の体は弾けとんでおしまい♪」
『そ、そんな…!』
「いかん!!」
「まっ…待って!!!」
「いいね~~♪悲痛の叫びを聞くと、鳴らすのが余計楽しくなるよ♪」
非情な台詞を吐きながら、鳴らす準備をするジンジャー。
『ダメっ…!!』
「やめろーーーっ!!!」
パチンッ……
嫌な音が、響いた。
「……確かに俺はなり損ないだ。」
「おおっ!!」
「ラル!」
『よ、良かった…!』
安堵する5人と、驚くジンジャー。
ラルは言った。
不完全な呪いで歪な体質変異を起こした自分の体は、
流れる波動すら霧と雲の属性に変わってしまったと。
「だが、このおしゃぶりは変わらない……」
『(もしかして……)』
檸檬は先ほどのジンジャーの話を思い出し、うっすら気がついた。
アルコバレーノが生まれた日に、
コロネロがラルの代わりに行った。
つまりラルのおしゃぶりは……
『……コロネロと、同じモノ。』
「え?」
呟く檸檬の方を向くツナ。
『あの青は、コロネロじゃなくてラルが受け取るハズだった………』
「ああ。その通りだ、檸檬…。これは、俺の命と引き換えに炎を放つ。属性は……」
青、ブルー、
つまり……
「『……雨。』」
言うと同時に、ラルの全身が青い炎で包まれた。
その異様な光景に、一同は目を見開く。
「……そうか!何故クモが体を突き破って来ないのか分かったぞ!!」
『ラルのおしゃぶりが雨属性、だからですか?』
「ああ、クモを急成長させる晴の“活性”を…雨の“鎮静”で相殺したのだ!!」
多分、ラルにとっては最後の手段だったんだと思う。
ただでさえ放射線のせいで体が弱ってるって言うのに…
命と引き換えに“鎮静”を引き出すなんて……。
『ラル……』
「なるほどね~♪そういう事か♪」
「でも…匣兵器じゃなくてラル自身が炎を纏うなんて……」
「俺も初めて見るぞ、肉体から炎など……」
ツナと了平さんに答えるように、ラルは言った。
「アルコバレーノの肉体構造はお前達とは異なる。」
『(肉体、構造…!?)』
「その肉体に背負わされた宿命……苦しみと絶望は誰にも分かりはしない。俺があのままアルコバレーノになっていたら、魂を病み、バイパーの最期と同じ道を選んでいただろう……」
『(それって…自殺……)』
あんなに可愛くて強い赤ん坊達…
あたしも大好きなアルコバレーノが、心の内に大きな痛みを抱えていたなんて……
「コロネロがいたから……俺は生きたんだ。アイツのおかげで生きて来れた。」
『(ラル……?)』
こんな時に、視力がいいのを恨んだりする。
だってラルは、きっと今の表情を見られたくないに決まってる。
ゴーグルの下の涙を見てしまった事に、あたしは罪悪感を感じて俯く。
「檸檬、」
『えっ…?』
「お前にも、感謝しなくてはならない。」
『ど、どーして?あたしは…』
ラルはこっちを向いて、少しだけ穏やかな表情をした。
「忌々しかったあの姿を、畏れも隔てもなく受け入れてくれた。」
『そ、そんな事っ…!』
あたしはただ、可愛くて強いみんなが大好きなだけで、
その裏に苦しみや悲しみがあった事なんて何一つ知らなくて、
---『ラールっ♪』
---「お、おい!檸檬っ…!」
知らないまま、分からないまま、
頭や肩に乗せたり抱きついたり………
『ほっぺも…つねったりしたし……』
「あぁ…確かに痛かった。だが、だから忘れられた。檸檬が笑いかけてくれるその瞬間、俺は呪われたという記憶から救われてたんだ…」
『ラルっ……』
何も分かってなくて、ごめんね。
無知なまま隣にいたあたしを受け入れてくれて、ありがとう。
そう思ったら、胸の奥がキュッと苦しくなって、堪えるように拳を握った。
「ほーう♪君にとってはコロネロもDARQも救世主だったみたいだね。でも結局君はここで死ぬんだし、無意味さ。」
「ジンジャー………死ぬのはお前だ!!」
おしゃぶりを首から下げたラルは、真直ぐジンジャーに向かって飛び上がる。
拳は全て箒で防がれ、最後はひょいっとかわされた。
「勢いは認めるけど、真直ぐにしか進めなくちゃ意味ないよ。」
そう言ったジンジャーの背後で、ラルは急旋回をした。
壁の柱にしっかりと固定された雲ムカデに捕まって、勢いを逆向きに変えたのだ。
「え!?」
気づいた時にはもう、ジンジャーの体はラルの手足により拘束されていた。
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「す、すげぇ…!」
「開匣した時は確かに大空の炎を纏っていたハズ…」
驚嘆の声をあげる野猿の隣で、治された部分に触れる太猿。
一方、治した蜜柑はそちらには見向きもせずに床に倒れている隊員を見た。
先ほどγにより感電させられた男である。
「次は……結構掛かりそうね。」
「な、治してくれんのか!?」
倒れた隊員の傍にしゃがんだ蜜柑に、野猿は駆け寄る。
しかし、期待と歓喜が混じる声色に、蜜柑は冷たく返した。
「……4度目。」
「え…、あっ…!」
「…学習しない人。」
「うっ…」
初めに言われた「黙れ」という指示を思い出し、野猿は口を閉じる。
蜜柑は、肩に乗ったマーモセットに顎で合図する。
「キッ!」
大人しく、倒れた男の上に乗ったマーモセット。
そして再び、蜜柑はあの言葉を発した。
「C to “S”…」
「キイッ!」
くるっと宙返りをしたマーモセットは、同じようにしっぽの炎を黄色く変化させた。
息を飲むアフェランドラ隊の者達の前で、黄色い炎が治癒を行っていく。
しかし……
「……あら、」
「キッ!」
4秒経たないうちに、マーモセットは炎の放射をやめ、蜜柑の方に向き直った。
蜜柑は躊躇いもなく、こう言う。
「Again.」
「キイッ!」
蜜柑の言葉に反応するかのように、マーモセットは黄色い炎を放射する。
隊員の全身火傷は、少しずつ治って来ていた。
が、また4秒程経つと“指示待ち状態”に戻る。
「……なるほどね…」
一言呟いてから、蜜柑は繰り返し「Again」と言った。
約4秒ごとに言い続け、その度に腕時計を見ていた。
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------
「…終わったわ。」
「ま、まさか…こんなに治るなんて……!」
「マジで晴の活性…!??」
マーモセットを肩の上に呼び戻す蜜柑。
その周りでは、今までの過程を目撃していた全ての人間が驚きを隠せないでいた。
しかしそんな目は気にせず、蜜柑は一つの解析結果を頭に刻み込む。
「(3秒が限界、ってトコね……)」
と、その時。
「終わったか、蜜柑。」
奥の部屋から幻騎士が現れ、問いかけた。
「そっちは?」
「済んだ。」
「ならもういいわね。」
ツインテールをなびかせ、方向転換する蜜柑。
幻騎士も同じくドアの向こうへ出る。
「試せたか。」
「えぇ。」
「そうか。」
短い単語での会話をしながら元来た道を歩いていた、その時。
「おい、野猿!!」
「あ、あの!!」
呼び止められ、立ち止まる2人。
最小限に振り向くと、駆け足で近づく野猿。
その後ろからは太猿も来ていた。
「あの、蜜柑さんっ…」
「……何か?」
深呼吸を一つしてから、野猿は少し大きな声で言った。
「ありがとうっ…!」
ピクリ、と蜜柑の眉が動く。
「太猿アニキや皆を…治してくれt……」
「必要ない。」
「…………え?」
遮られて呆然とする野猿に、蜜柑は追い打ちをかける。
「あの状況で私の行為がお互いのメリットに繋がった、それだけの事。」
「で、でも…!」
「言霊信者でもない限り、礼なんて必要ない。」
蜜柑は、完全に背を向けていた。
それでも口を開こうとした野猿だが、その気配すら察知される。
「そんな下らない事、わざわざ立ち止まって聞くこともないわ。」
突き放すように言って歩き出す蜜柑に、野猿は今度は叫んだ。
「何回でも言ってやるよ!!“ありがとう”っ!!」
「……返さないのか。」
「誰が。」
「蜜柑がいいなら、構わんが。」
隣を歩く幻騎士にも聞こえない程、蜜柑は小さく小さくこぼした。
「………バカみたい。」
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最初は、ジンジャーも甘く見ていた。
体調の悪いラルがいくら喰らいついても、鎮静があったとしても、その拘束は簡単に解けると。
けど、全く動けないままムカデに串刺しにされる。
「俺の鎮静力を甘く見すぎたな。」
「くっ…そー……でも、いいのかい?これでコロネロを殺した実行犯は聞けなくなるんだよ…?」
「お前を生かした所でどうせ話さないだろう、自分で探す。」
「憎たらしいメスだなぁ……」
ジンジャーは、力を振り絞ってツナ達の方へ顔を向ける。
「ココで……ダークを生け捕りにしたかったのになぁ……」
「何を…!」
「まぁいいや……楽しませてもらうよ……双子の姉妹の、醜さ極まりない争いを…さ………」
そこでラルは異変を察知し、叫ぶ。
「伏せろ!!!」
次の瞬間、ジンジャーの体は爆発してしまった。
ラルが飛ばされた方に駆け寄るツナ達。
「とっさにムカデのシールドを展開したんだな。」
『良かった…ラルっ……』
「おい檸檬っ……すぐ抱きつくな!」
『心配したんだよ~~っ…』
飛びつく檸檬を宥めたラルは、粉砕したジンジャーが人形だった事を告げた。
それが、魔導師の人形と呼ばれる所以らしい。
「おいラル・ミルチ、そろそろ教えてくれてもいーんじゃねーか?」
『隼人…?』
「アルコバレーノの謎、ってのをよ。」
「………断る。」
「てめっ、いつまでも1人で背負い込んでんじゃねーよ!!何で話せねーんだよ!!」
「何を言おうと俺から話すつもりはない。」
俯きながらそう返したラル。
そして…
「どうしても知りたければ、山本に訊けばいい。」
「なっ…野球バカが!?」
「え!?山本、知ってんの!?」
「ん…?まぁな。」
『ほ、ホントに……?』
驚きの事実に固まるあたし達。
だけど、時間は止まってはくれなかった。
ヴー…ヴー……
メローネ基地の警報が、鳴り響き始めた。