未来編①
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「こ、コロネロだって?」
「貴様!師匠に何をした!!返答次第ではただではおかんぞ!!」
「フフッ♪何か勘違いしてるようだね。」
了平の怒鳴り声にも関わらず、ジンジャーは笑みを絶やさず答える。
「最強と謳われた7人の呪われた赤ん坊・アルコバレーノのも、非73線の中じゃ死にかけた虫みたいなモンだろ?そんなのをわざわざ自分で殺すかよ。」
『じゃあ一体…』
「僕はただ残酷で笑える殺し方を提案して、眺めてただけ。」
「えっ…」
「貴様ぁ!!!」
リングに炎を灯す了平とジンジャーの間に、ラルが立った。
「下がっていろ笹川、こいつは俺が倒す。」
「待てラル・ミルチ!お前の体では無理だ!俺が行く!!」
「冷静さを失った奴は戦う前から負けていると、コロネロは教えなかったか?」
「くっ、」
『ラル……』
「あの女、大したもんだぜ…全く動じてねぇ……」
「それはどうかな?僕には怒りを抑えるのに精一杯って風にしか見えないけど。」
ジンジャーの言葉に、檸檬は微妙に共感出来た。
一瞬一瞬で変わる個人の纏う空気。
それを人一倍感じ取れる檸檬には、ラルの変化が少し分かってしまったのだ。
「でも、虐めがいは出て来たな。通報する前に少し遊んでこうか♪」
言いながらジンジャーは、ふわりと宙に浮き始める。
「ただしサシの1勝負だけね。君を片付けたら上に報告するよ、その頃には僕も飽きてるだろうしね。」
ラル・ミルチVS.ジンジャー・ブレッド
パチンと響き渡るジンジャーの指の音。
と同時に、ツナ達の前方の床から何かが飛び出して来て。
「何だ!?」
『ネットで隔たれてる…!』
「クモっ!!匣兵器なの!?」
「けど匣を出す仕草は無かったぜ!?奴は手にリングもつけてない。」
驚くツナ達に、ジンジャーは言う。
「どうだい?僕の魔術(ソーサリー)は。」
「ソーサリー!?」
「そのクモは君達がちょっかいを出そうとすると知らせてくれる僕のしもべでね。」
ヘタに動けば皆殺しだ、と。
ところがその時、既にラルが後ろに回っていた。
「大した自信だな。」
ガントレットから炎を放射する。
ジンジャーは咄嗟に間合いを取り、その追尾性質を見抜いた。
そして…
「甘い甘いバァ~~♪」
マントで軽々と防いでしまう。
「あっ…!」
「がっかりさせるなよ。それでも“選ばれし7人(イ・プレシェルティ・セッテ)”?」
マントの内から取り出した箒から、無数の刃が飛び出す。
ラルはそれをかわして行くが、壁に追いつめられた。
容赦なく迫る無数の刃。
『ラル…!』
檸檬が思わず声を上げた、その時。
煙の中から見えて来た、細長い“何か”。
ジンジャーの目が、見開かれる。
晴れていく煙の中心に立っていたラルは、無数の雲ムカデを纏わせていた。
「おおっ!ムカデがシールドになっている!!」
「まったくひけを取ってないぜ!」
『良かったぁ…』
ホッとする5人には目もくれず、ラルはジンジャーに言った。
「……ガキが。」
---
------
------------
γと幻騎士が奥の部屋へと移動し、蜜柑はただ一人アフェランドラ隊の真ん中に残された。
周りを1回見回し、口を開く。
「誰からかしら…」
「ライト…何のつもりでココに来たってんだ。」
「テストよ。」
「なにぃ?」
γの代わりに蜜柑の前に立った太猿を見て、蜜柑は言った。
「貴方、ちょうどいいわ。」
「てめぇ…」
「そこにいて。」
その圧倒的目力により動けなくなった太猿。
と、横から野猿が間に入る。
「待てよ!太猿アニキに何する気だよっ!!て、テストとか言いやがって…!」
「貴方には関係ない。」
「あるよ!!オイラの大事なアニキでっ……」
「黙っててくれない?」
鬱陶しい、とでも言うように野猿を見下ろす蜜柑。
そして、右手中指のリングに炎を灯した。
「なっ…!」
「大空の…波動……!」
驚きを隠せない野猿と太猿に構わず、腰にあった匣に炎を注入した。
「こ、ここで闘り合う気かよ!!?」
「そっちがその気なら俺たちだって……」
「黙ってて、って言ったわよね。」
殺気などは一切込めず、ただ目の前の2人を見る蜜柑。
そして、
「………ピグ、」
「キィーッ!」
スタッと蜜柑の肩に乗ったのは、尾にオレンジ色の炎を灯した、小さな小さな猿だった。
「あ、あれが雨宮蜜柑の匣兵器…!」
「マーモセット、か…?」
手の平の大きさにも満たないその猿は、マーモセットという種。
それを手の甲に乗せ、そのまま蜜柑は太猿に向かって腕を伸ばした。
「あ、アニキに何を…」
「3度言わなきゃ分からないの?」
「黙ってられっか!危ねぇかもしんねーのに……!」
「害は加えない。」
「………えっ、」
「私がこう言えば、満足?」
挑戦的に野猿を見る蜜柑。
その言葉で戦闘は無いと察したのか、太猿も野猿の腕を引く。
「下がってろ、野猿。」
「太猿アニキ…」
野猿が渋々下がったのを確認し、蜜柑は言った。
「ピグ、C to “S”。」
「キイッ!」
蜜柑の声に反応したマーモセットは、その場でクルリと宙返りをする。
と、次の瞬間、
ゴアッ…
「な…!?」
マーモセットの口から放出されたのは、黄色い炎。
それはちょうど、太猿の鼻に接触する。
先ほどγに殴られた時に骨が折れ、自分で戻したものの、完全な治癒にはなっていなかった。
その部位が、みるみるうちに癒えて行く。
「太猿アニキの傷が……」
「治ってるのか…!?」
2秒後には、傷は跡形も無くなっていて、
マーモセットは蜜柑の肩の上に戻っていた。
「ご苦労様、ピグ。」
---
-----
-------------
ビュオッと2体のムカデがジンジャーに向かって行く。
ジンジャーはスルスルとかわしていく、が…
「逆!?」
もう2体のムカデが先回りしており、ジンジャーの腕を捕らえた。
そして、最初の2体も足を捕らえる。
「うまい!完全に先読みしてる!」
「あの女…動きを予知出来んのか!?」
「いいや、経験だ。幾千もの実戦を生き抜いてきた事こそが、ラル・ミルチの強さ。」
「(このしなやかさが、ラルなんだ…)」
『実戦から学んで来た事が、直感に繋がってる感じだね。』
身動きが取れなくなったジンジャーに、ラルは尋ねる。
「コロネロを殺った実行犯を吐け。」
「なんだ、やっぱり気になるんだ。フフ♪だーれが言うかよ。」
ニヤリと笑うジンジャー。
しかし、次の瞬間悲鳴をあげはじめる。
「ぎっ!!ぐわああぁ!!」
「そのムカデは万力のように手足を締め上げるぞ。まだその手で飯を食いたいのなら、吐け。」
「やめろぉ!!折れる~~~!!」
「ま、待ってラル!!」
ラルの拷問に、ツナがストップをかけようとした、その時。
「………なんてね♪」
『え…?』
ブシャッ、
突然、何の前触れも無く、ラルの左肩から血が噴き出した。
「ざっとこんなもんかな?楽しいのはこっからだけど♪」
『アレって…!』
「義手に義足!!」
折れると喚いていたのは演技で、ジンジャーは簡単にムカデから解放される。
「あ!ラル!!」
「うう…!!」
『付着してるの…クモ!??』
慌てて自分の腕を確認するラルは、無数のクモが体内から出ているのを発見する。
「(微かに晴の炎を帯びている……)どういう事だ……」
考えた末、理解出来た。
一番最初に腕を擦ったのは、活性する前の晴の匣兵器だったという事。
「ご名答!君の体内には超微粒の晴の匣兵器、晴クモ(ラーノ・チエル・セノーニョ)の卵が撃ち込まれた。これは僕の合図で“活性”して成虫となり、出て来るのさ。」
「何だって!?」
「そっちのクモも仕組みは同じ。そしてまだ君の体内には何千もの晴クモの卵が巡っている。」
「そ、そんな事が…!!」
「ほーら♪」
そう言ってまた指を鳴らすジンジャー。
すると今度は背中から血が噴き出し、ラルはその場に倒れる。
「ああっ!」
『ラル!』
「おのれ!!」
「おっと、ヘタに動いてみなよ。次は心臓を突き破るかもよ♪」
「くっそう!!」
『そんなっ…』
無意識に両手を組み、祈るようなポーズになる檸檬。
ふと、ツナ達の方に目を向けたジンジャーが、檸檬の存在に気がつく。
「あれぇ?誰かと思ったら……自分から乗り込んで来るなんて、バカな女王様だね♪」
『え…?』
「女王、って…?」
ビクッと肩を震わせる檸檬と、疑問符を浮かべるツナ。
「踊りと旋律の女王…DARQってのは君の事だろ?雨宮檸檬。」
『そーいえば、そんな通り名あるみたいね…』
「へぇー…強気な所は似た者同士か。」
「似た者同士…??」
聞き返した獄寺に、ジンジャーは言う。
「君の妹、雨宮蜜柑のことさ。人の毛を逆立たせるのが得意みたいでね、僕らにも喧嘩を売る始末さ。」
『蜜柑が…?』
「あのムカつく女もさぞ喜ぶんだろうね。“DARQが遊びに来てる”って知ったら、さ♪」
『えぇ…そうね……』
「あ、もしかして姉妹喧嘩しに来たのかい?フフッ、そうだったら笑えるなぁー。闇に生まれたドロドロ姉妹の、ドロドロな醜い争い♪」
ジンジャーが話す程、辛そうになっていく檸檬。
『あ、あたしは……』
「仲直りしに来たとでも言うつもり?無駄だよ、無駄。アレはもう白蘭の言う事しか聞かないロボット同然だからね。」
『そんなの!分からないじゃない!!まだきっと…蜜柑の心は生きて…』
「まぁいいよ、どうせ君達はココで生け捕りだからね♪」
愉しそうに笑い、ジンジャーはラルの方に向き直る。
「ラル・ミルチ、楽しませてくれたお礼に教えてあげるよ。コロネロは最期、一緒に戦ってたアルコバレーノのバイパーを助けて死んでいったよ。」
『バイパーって……マーモン!?』
「彼は身代わりになるのが趣味みたいだね。聞いた話じゃ、アルコバレーノが生まれたあの日もそうだったんだろ?」
そこで、ラルは思い出す。
自分たちがアルコバレーノになった、運命の日の事を。
切り立った崖の道を7人で歩いていた。
だが、不意にリボーンが後ろに呼びかける。
“どこまでついて来る気だ?”と。
バレてたか、と姿を現したのは……
---「こ…コロネロ!!何しに来た!!」
---「あんたの代わりに俺が行くぜ、コラ!!」
ジンジャーは続ける。
「傑作だったのは助けられたバイパーも勝ち目が無いと見ると、自ら命を絶って死んでいったのさ。」
『そん、な…』
「笑っちゃうだろ?バイパーもアホだが、コロネロという男の性分をよく現している。おせっかいの役立たずさ。」
ラルは、何も返さなかった。
ただ、自分の手の近くに落ちた灰色のおしゃぶりを、見つめるだけ。
「君がその濁ったおしゃぶりを手放せないのも、奴が助け損ねたからだろ?裏目裏目の男、コロネロ♪」
「(それは…違う…)」
再びラルは、遠い昔に思いを馳せる。
---「泣いてんのか?コラ。」
---「バカを言え!こんな状況で涙が出るか!!」
---「ハハッ、ごめんな。もっとカッコ良く助けられると思ったんだがな。」
---「お前はいつも詰めが甘いんだ。」
もう2人とも、赤ん坊の体になった後の会話。
呪いに掛かってしまった後の、会話。
---「だが、お前の呪いに限っては、使いさえしなければ徐々に解けて行くらしいぜ。これを機に女らしく暮らすんだな、コラ!」
---「ふっ、ふざけるな!!お前はこれからどうするつもりだ!!」
---「そうだな…とりあえずは………生きるぜ。」
その力強い言葉に、ラルは驚かされる。
そして、スッと自分の頬にコロネロの手が伸ばされた。
---「一緒に来るか?」
---「だ、誰がお前なんかと!!」
---「ヘヘッ、冗談だぜ。もう二度と会う事はないだろうな、ラル。」
気がついた時には、もう背を向けられていた。
---「元気でな、おてんばせずに早く呪いを治すんだぜ、コラ。」
「(コロネロ…)」
「しかし悲惨な人生だったね、ラル・ミルチ。それもこれもアルコバレーノ1のおせっかいバカのせいってワケだ。裏目のコロネロのね♪」
「……………撤回…しろ。」
「ん?」
『ラル…!?』
起き上がったラルは、おしゃぶりを握りしめて。
その心の内でコロネロへの謝罪がなされた事は、誰にも分からない。
「(すまない……お前の言いつけ…守れそうにない!!)」
ラルの拳から青い光が四方に溢れ始めた。
「貴様!師匠に何をした!!返答次第ではただではおかんぞ!!」
「フフッ♪何か勘違いしてるようだね。」
了平の怒鳴り声にも関わらず、ジンジャーは笑みを絶やさず答える。
「最強と謳われた7人の呪われた赤ん坊・アルコバレーノのも、非73線の中じゃ死にかけた虫みたいなモンだろ?そんなのをわざわざ自分で殺すかよ。」
『じゃあ一体…』
「僕はただ残酷で笑える殺し方を提案して、眺めてただけ。」
「えっ…」
「貴様ぁ!!!」
リングに炎を灯す了平とジンジャーの間に、ラルが立った。
「下がっていろ笹川、こいつは俺が倒す。」
「待てラル・ミルチ!お前の体では無理だ!俺が行く!!」
「冷静さを失った奴は戦う前から負けていると、コロネロは教えなかったか?」
「くっ、」
『ラル……』
「あの女、大したもんだぜ…全く動じてねぇ……」
「それはどうかな?僕には怒りを抑えるのに精一杯って風にしか見えないけど。」
ジンジャーの言葉に、檸檬は微妙に共感出来た。
一瞬一瞬で変わる個人の纏う空気。
それを人一倍感じ取れる檸檬には、ラルの変化が少し分かってしまったのだ。
「でも、虐めがいは出て来たな。通報する前に少し遊んでこうか♪」
言いながらジンジャーは、ふわりと宙に浮き始める。
「ただしサシの1勝負だけね。君を片付けたら上に報告するよ、その頃には僕も飽きてるだろうしね。」
ラル・ミルチVS.ジンジャー・ブレッド
パチンと響き渡るジンジャーの指の音。
と同時に、ツナ達の前方の床から何かが飛び出して来て。
「何だ!?」
『ネットで隔たれてる…!』
「クモっ!!匣兵器なの!?」
「けど匣を出す仕草は無かったぜ!?奴は手にリングもつけてない。」
驚くツナ達に、ジンジャーは言う。
「どうだい?僕の魔術(ソーサリー)は。」
「ソーサリー!?」
「そのクモは君達がちょっかいを出そうとすると知らせてくれる僕のしもべでね。」
ヘタに動けば皆殺しだ、と。
ところがその時、既にラルが後ろに回っていた。
「大した自信だな。」
ガントレットから炎を放射する。
ジンジャーは咄嗟に間合いを取り、その追尾性質を見抜いた。
そして…
「甘い甘いバァ~~♪」
マントで軽々と防いでしまう。
「あっ…!」
「がっかりさせるなよ。それでも“選ばれし7人(イ・プレシェルティ・セッテ)”?」
マントの内から取り出した箒から、無数の刃が飛び出す。
ラルはそれをかわして行くが、壁に追いつめられた。
容赦なく迫る無数の刃。
『ラル…!』
檸檬が思わず声を上げた、その時。
煙の中から見えて来た、細長い“何か”。
ジンジャーの目が、見開かれる。
晴れていく煙の中心に立っていたラルは、無数の雲ムカデを纏わせていた。
「おおっ!ムカデがシールドになっている!!」
「まったくひけを取ってないぜ!」
『良かったぁ…』
ホッとする5人には目もくれず、ラルはジンジャーに言った。
「……ガキが。」
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γと幻騎士が奥の部屋へと移動し、蜜柑はただ一人アフェランドラ隊の真ん中に残された。
周りを1回見回し、口を開く。
「誰からかしら…」
「ライト…何のつもりでココに来たってんだ。」
「テストよ。」
「なにぃ?」
γの代わりに蜜柑の前に立った太猿を見て、蜜柑は言った。
「貴方、ちょうどいいわ。」
「てめぇ…」
「そこにいて。」
その圧倒的目力により動けなくなった太猿。
と、横から野猿が間に入る。
「待てよ!太猿アニキに何する気だよっ!!て、テストとか言いやがって…!」
「貴方には関係ない。」
「あるよ!!オイラの大事なアニキでっ……」
「黙っててくれない?」
鬱陶しい、とでも言うように野猿を見下ろす蜜柑。
そして、右手中指のリングに炎を灯した。
「なっ…!」
「大空の…波動……!」
驚きを隠せない野猿と太猿に構わず、腰にあった匣に炎を注入した。
「こ、ここで闘り合う気かよ!!?」
「そっちがその気なら俺たちだって……」
「黙ってて、って言ったわよね。」
殺気などは一切込めず、ただ目の前の2人を見る蜜柑。
そして、
「………ピグ、」
「キィーッ!」
スタッと蜜柑の肩に乗ったのは、尾にオレンジ色の炎を灯した、小さな小さな猿だった。
「あ、あれが雨宮蜜柑の匣兵器…!」
「マーモセット、か…?」
手の平の大きさにも満たないその猿は、マーモセットという種。
それを手の甲に乗せ、そのまま蜜柑は太猿に向かって腕を伸ばした。
「あ、アニキに何を…」
「3度言わなきゃ分からないの?」
「黙ってられっか!危ねぇかもしんねーのに……!」
「害は加えない。」
「………えっ、」
「私がこう言えば、満足?」
挑戦的に野猿を見る蜜柑。
その言葉で戦闘は無いと察したのか、太猿も野猿の腕を引く。
「下がってろ、野猿。」
「太猿アニキ…」
野猿が渋々下がったのを確認し、蜜柑は言った。
「ピグ、C to “S”。」
「キイッ!」
蜜柑の声に反応したマーモセットは、その場でクルリと宙返りをする。
と、次の瞬間、
ゴアッ…
「な…!?」
マーモセットの口から放出されたのは、黄色い炎。
それはちょうど、太猿の鼻に接触する。
先ほどγに殴られた時に骨が折れ、自分で戻したものの、完全な治癒にはなっていなかった。
その部位が、みるみるうちに癒えて行く。
「太猿アニキの傷が……」
「治ってるのか…!?」
2秒後には、傷は跡形も無くなっていて、
マーモセットは蜜柑の肩の上に戻っていた。
「ご苦労様、ピグ。」
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ビュオッと2体のムカデがジンジャーに向かって行く。
ジンジャーはスルスルとかわしていく、が…
「逆!?」
もう2体のムカデが先回りしており、ジンジャーの腕を捕らえた。
そして、最初の2体も足を捕らえる。
「うまい!完全に先読みしてる!」
「あの女…動きを予知出来んのか!?」
「いいや、経験だ。幾千もの実戦を生き抜いてきた事こそが、ラル・ミルチの強さ。」
「(このしなやかさが、ラルなんだ…)」
『実戦から学んで来た事が、直感に繋がってる感じだね。』
身動きが取れなくなったジンジャーに、ラルは尋ねる。
「コロネロを殺った実行犯を吐け。」
「なんだ、やっぱり気になるんだ。フフ♪だーれが言うかよ。」
ニヤリと笑うジンジャー。
しかし、次の瞬間悲鳴をあげはじめる。
「ぎっ!!ぐわああぁ!!」
「そのムカデは万力のように手足を締め上げるぞ。まだその手で飯を食いたいのなら、吐け。」
「やめろぉ!!折れる~~~!!」
「ま、待ってラル!!」
ラルの拷問に、ツナがストップをかけようとした、その時。
「………なんてね♪」
『え…?』
ブシャッ、
突然、何の前触れも無く、ラルの左肩から血が噴き出した。
「ざっとこんなもんかな?楽しいのはこっからだけど♪」
『アレって…!』
「義手に義足!!」
折れると喚いていたのは演技で、ジンジャーは簡単にムカデから解放される。
「あ!ラル!!」
「うう…!!」
『付着してるの…クモ!??』
慌てて自分の腕を確認するラルは、無数のクモが体内から出ているのを発見する。
「(微かに晴の炎を帯びている……)どういう事だ……」
考えた末、理解出来た。
一番最初に腕を擦ったのは、活性する前の晴の匣兵器だったという事。
「ご名答!君の体内には超微粒の晴の匣兵器、晴クモ(ラーノ・チエル・セノーニョ)の卵が撃ち込まれた。これは僕の合図で“活性”して成虫となり、出て来るのさ。」
「何だって!?」
「そっちのクモも仕組みは同じ。そしてまだ君の体内には何千もの晴クモの卵が巡っている。」
「そ、そんな事が…!!」
「ほーら♪」
そう言ってまた指を鳴らすジンジャー。
すると今度は背中から血が噴き出し、ラルはその場に倒れる。
「ああっ!」
『ラル!』
「おのれ!!」
「おっと、ヘタに動いてみなよ。次は心臓を突き破るかもよ♪」
「くっそう!!」
『そんなっ…』
無意識に両手を組み、祈るようなポーズになる檸檬。
ふと、ツナ達の方に目を向けたジンジャーが、檸檬の存在に気がつく。
「あれぇ?誰かと思ったら……自分から乗り込んで来るなんて、バカな女王様だね♪」
『え…?』
「女王、って…?」
ビクッと肩を震わせる檸檬と、疑問符を浮かべるツナ。
「踊りと旋律の女王…DARQってのは君の事だろ?雨宮檸檬。」
『そーいえば、そんな通り名あるみたいね…』
「へぇー…強気な所は似た者同士か。」
「似た者同士…??」
聞き返した獄寺に、ジンジャーは言う。
「君の妹、雨宮蜜柑のことさ。人の毛を逆立たせるのが得意みたいでね、僕らにも喧嘩を売る始末さ。」
『蜜柑が…?』
「あのムカつく女もさぞ喜ぶんだろうね。“DARQが遊びに来てる”って知ったら、さ♪」
『えぇ…そうね……』
「あ、もしかして姉妹喧嘩しに来たのかい?フフッ、そうだったら笑えるなぁー。闇に生まれたドロドロ姉妹の、ドロドロな醜い争い♪」
ジンジャーが話す程、辛そうになっていく檸檬。
『あ、あたしは……』
「仲直りしに来たとでも言うつもり?無駄だよ、無駄。アレはもう白蘭の言う事しか聞かないロボット同然だからね。」
『そんなの!分からないじゃない!!まだきっと…蜜柑の心は生きて…』
「まぁいいよ、どうせ君達はココで生け捕りだからね♪」
愉しそうに笑い、ジンジャーはラルの方に向き直る。
「ラル・ミルチ、楽しませてくれたお礼に教えてあげるよ。コロネロは最期、一緒に戦ってたアルコバレーノのバイパーを助けて死んでいったよ。」
『バイパーって……マーモン!?』
「彼は身代わりになるのが趣味みたいだね。聞いた話じゃ、アルコバレーノが生まれたあの日もそうだったんだろ?」
そこで、ラルは思い出す。
自分たちがアルコバレーノになった、運命の日の事を。
切り立った崖の道を7人で歩いていた。
だが、不意にリボーンが後ろに呼びかける。
“どこまでついて来る気だ?”と。
バレてたか、と姿を現したのは……
---「こ…コロネロ!!何しに来た!!」
---「あんたの代わりに俺が行くぜ、コラ!!」
ジンジャーは続ける。
「傑作だったのは助けられたバイパーも勝ち目が無いと見ると、自ら命を絶って死んでいったのさ。」
『そん、な…』
「笑っちゃうだろ?バイパーもアホだが、コロネロという男の性分をよく現している。おせっかいの役立たずさ。」
ラルは、何も返さなかった。
ただ、自分の手の近くに落ちた灰色のおしゃぶりを、見つめるだけ。
「君がその濁ったおしゃぶりを手放せないのも、奴が助け損ねたからだろ?裏目裏目の男、コロネロ♪」
「(それは…違う…)」
再びラルは、遠い昔に思いを馳せる。
---「泣いてんのか?コラ。」
---「バカを言え!こんな状況で涙が出るか!!」
---「ハハッ、ごめんな。もっとカッコ良く助けられると思ったんだがな。」
---「お前はいつも詰めが甘いんだ。」
もう2人とも、赤ん坊の体になった後の会話。
呪いに掛かってしまった後の、会話。
---「だが、お前の呪いに限っては、使いさえしなければ徐々に解けて行くらしいぜ。これを機に女らしく暮らすんだな、コラ!」
---「ふっ、ふざけるな!!お前はこれからどうするつもりだ!!」
---「そうだな…とりあえずは………生きるぜ。」
その力強い言葉に、ラルは驚かされる。
そして、スッと自分の頬にコロネロの手が伸ばされた。
---「一緒に来るか?」
---「だ、誰がお前なんかと!!」
---「ヘヘッ、冗談だぜ。もう二度と会う事はないだろうな、ラル。」
気がついた時には、もう背を向けられていた。
---「元気でな、おてんばせずに早く呪いを治すんだぜ、コラ。」
「(コロネロ…)」
「しかし悲惨な人生だったね、ラル・ミルチ。それもこれもアルコバレーノ1のおせっかいバカのせいってワケだ。裏目のコロネロのね♪」
「……………撤回…しろ。」
「ん?」
『ラル…!?』
起き上がったラルは、おしゃぶりを握りしめて。
その心の内でコロネロへの謝罪がなされた事は、誰にも分からない。
「(すまない……お前の言いつけ…守れそうにない!!)」
ラルの拳から青い光が四方に溢れ始めた。