未来編①
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デンドロを退け、ステルスリングの応用である偽景フィルターをつけたツナ達一行は、
薄暗いダクトばかりを通って地下8階にたどり着いた。
「施設破壊に入る前にこの奥にある警備システムサーバーを破壊させるんだったな。」
「そうだ。」
了平の言葉にラルが答える。
警備システムをダウンさせれば基地内の機能を麻痺させる事が出来る。
「その機に乗じて主要施設の破壊と、入江正一への奇襲をする。」
『監視が緩んだ方がやりやすいもんね。』
「ああ。」
「その前に沢田、肘の傷口を治してやる。」
「え…?あ、バレてました?」
ツナの腕を掴んでそう言う了平に、獄寺が待ったをかけた。
「おい待て、極限バカのお前に治せんのかよっ。」
「心配はいらん。俺はこの匣兵器で…傷口を焼いて血を止めるだけだ!!」
「ひいいっ!スプラッター!!」
後退りするツナの後ろから、檸檬が顔をのぞかせる。
『わー、それってコテですか?』
「その通りだ!さすがは檸檬!!」
「大丈夫ですっ!ほんのかすり傷ですから!!」
『これが晴の黄色い炎……綺麗ですね♪』
「言ってる場合じゃないよ檸檬ーっ!!!」
「ごちゃごちゃうるさい、沢田。」
ラルに押さえつけられ、了平はそのコテをツナの肘に近づけた。
「ぎゃああ………」
「10代目!!」
「…………あれ…?痛く…ない。」
『え、痛くないの!?』
不思議そうに目を丸くするツナと檸檬に、了平は説明する。
「ハハハ、これは晴属性の死ぬ気の炎だ。その匣の特徴は活性。この炎は細胞組織の自然治癒力を活発にし、普段の何百倍もの早さで傷を修復するのだ。」
『そうなんですかぁ!』
「かゆいっ、何かかゆいです!!」
「よし、終わったぞ。」
『すごーいっ!治ったね、ツナ!』
「うん、ホントだ!」
晴の力を誇らしげに説明した了平に、獄寺がつっかかるが、山本がいつものように抑える。
「まーまーっ、傷も治りゃあまさに無傷で勝利!絶好調じゃねーか!!ツナの新技も凄まじかったしなっ♪」
「あれは本当に凄かったっス!!」
「うむ、大した極限技だったな。」
『でもアレって…』
「半分くらいの力だろ、沢田。」
ラルに問われたツナは、考えたあげく「2割程度だ」と。
『そんなに低いの!?』
「なんと!」
「あれで2割スか!?」
「でもまだまだ不安定でフルパワーじゃ撃てないんだ。それに敵も全力じゃなかったし……」
「確かに、デンドロの炎は見た目は派手だったが、武器や匣の性能を充分に引き出してはいなかった……大切なのは炎のデカさではなく純度だからな。」
「そーいや、あいつの雷の炎はもっと何つーか…鋭かったよな。」
『そう、だね…』
「……あぁ、別物だ…」
3人が思い出すのは、もう何週間か前のバトル……
「「『電光のγ……』」」
因縁
同じ頃、アフェランドラ隊の部屋にて。
体中に包帯を巻かれたγはひらすら酒を口に流していた。
ガチャン、とまた一本ビンが床に落とされれば、部下が口を開く。
「た、隊長…いくら酒に強くてもそこまで飲んじゃあよぉ……」
「んん?いつから俺は部下に指図されるようになったんだ?」
「だけど、大怪我をされてまで日が浅ぇんだし。」
「ほぅ…」
納得したような相槌だが、違った。
次の瞬間その部下の胸ぐらを掴み、リングから放つ雷の炎で感電させる。
「ギャアア!!!」
「黙ってろ。」
「アニキ…!!」
その光景を見た野猿が、耐えかねたように訴える。
「何やってんだよ!!部下に当たるなんてらしくないぜ!!1回負けたぐらいでイジケちまって…こんなのγアニキじゃねーよ!!」
「ナマ言うようになったなチビ……そーか、おしおきして欲しいんだな?」
兄弟だと言い、特別仲が良かった野猿の言葉も、γにはきちんと届かない。
ユラリとその前に立ち、言った。
「歯ー、食いしばれ。」
「アニ…キ……?」
ところが、震える野猿に降り掛かった拳を受けたのは、太猿だった。
吹っ飛ばされた太猿の体はビリヤード台を大きく歪ませる。
「太猿アニキ!!」
「…ケガの方は随分いいみてーだな、γアニキ。」
「何のマネだ、お前ら。」
気に食わないとでも言うように自分を睨むγに、太猿は言う。
「そりゃー俺たちは惨めだ、惨めだよなぁ……」
「俺と野猿は10年前のボンゴレのガキ共にのされ、アニキは雲雀恭弥に串刺しだ。ホワイトスペルを出し抜くどころか謹慎の身……情けねぇったらねーもんなぁ。」
「太猿、てめぇ…」
「入江にはこの基地を好きなようにされ、酒と玉突きと弟イビリしかするこたねぇんだ。」
「もういいよ!やめてくれよ太猿アニキ!!」
これ以上の口論を避けたがる野猿だが、太猿は聞かない。
「加えてあの幻騎士にはビビって手を出せねぇしな!!」
「太猿アニキ!!」
「それは違うぜ、ビビってんじゃねぇ…」
「ユニ様の命令だからだってのか!?それがビビってるっつーんだぞ!!」
「もう一度言ってみろ…兄弟の縁を切り、てめぇを殺す。」
「もうやめてくれよ~~~!!γアニキ!!太猿アニキ!!」
γのマーレリングが光り始め、野猿の目から涙がこぼれた、その時。
「兄弟喧嘩か。」
「……みたいね。」
その部屋の入り口付近に立った、男と女が1人ずつ。
「あ、あいつは……!!」
「幻騎士!!それに…雨宮蜜柑!!」
野猿と太猿以外の隊員も、その登場に驚きを隠せずにいた。
「な、何でLIGHTがこんなトコに……」
小さく呟く周りを一瞥し、蜜柑はγに目を向けた。
γも、ホワイトスペルが部屋にいる事が気に入らないらしく、蜜柑を睨む。
「てめぇ…」
「酷い荒れ様ね。」
表情1つ変えない蜜柑。
しかし、その瞳に蔑みが込められているようにγは感じ取った。
「ホワイトスペルが何の用だ。」
「幻騎士に呼ばれて来た。だけど、ここまでとは思わなかったわ。」
「なに…?」
「よせ、蜜柑。」
抑制しようとする幻騎士に耳も貸さず、蜜柑は床に倒れた隊員を見る。
「これ、貴方が?」
「だったら何だ!!」
「………敗北を恥じて酒に溺れるのは勝手だけど、ミルフィオーレのマイナスに繋がる行為は認められない。」
「あぁ?」
「蜜柑、」
鋭く恐ろしくなるγの目線も、幻騎士の呼びかけも、一切蜜柑に影響しなかった。
「ミルフィオーレの戦力となる貴方以外の者……それを八つ当たりにより使い物にならなくさせるというなら、」
マーレリングに再び帯電させるγに、蜜柑はすかさず銃口を向けて。
「貴方を白蘭の害とみなし、私が排除する。」
「言わせておけば……!!」
「γ、蜜柑、そこまでだ。」
γの手首と蜜柑の銃を掴み、仲裁に入る幻騎士。
蜜柑を睨んでいたγは、今度は幻騎士に問う。
「………何でライトを連れて来やがった。」
「この惨状を見越してだ。」
「見越して、だと?」
未だ腑に落ちない様子のγから目線を外し、幻騎士は蜜柑に言う。
「…コレを降ろしてくれないか。」
数秒の沈黙の後、スッと銃を降ろす蜜柑。
呆れたように溜め息を一つつき、幻騎士に問う。
「まさか…晴への変更を試せ、って?」
「ああ…頼めるか、蜜柑。」
「……まぁいいわ。」
了承の意思表示として軽く目を閉じる蜜柑。
幻騎士は今度はγに向かって。
「傷は癒えたか、γ。」
「……てめぇ……てめぇは何しに来やがった。」
「…話だ。」
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同じ頃ツナ達は、ラルを先頭に警備システムサーバーの元へ向かっていた。
「基地内の敵の数が想定していたより遥かに少ないな。」
物陰から廊下を覗いたラルが言う。
「雲雀が囮になっている効果は絶大なようだ。」
「そんなに多くの敵が……雲雀さん、大丈夫かな……」
『平気平気、戦闘マニアだもん。』
「檸檬…」
にこりと笑いながら答える檸檬を見て、何処か違和感を覚えるツナ。
まるで、その言葉をツナにではなく自分に言い聞かせているような雰囲気。
「大丈夫?檸檬…」
『えっ?』
「“え”じゃねーよ、おめーが一番不安そうな顔してんだろーが。」
「心配、だよね……」
『隼人…ツナ…』
言い当てられた檸檬は、ばつが悪そうに眉を下げる。
『そりゃさ…心配だよ。こっちの敵が少なければ少ない程、心配になる。』
「檸檬…」
『でも、さ!』
覚悟を決めたように斜め上を見る檸檬に、皆は首を傾げる。
『また会えるって、信じてるから………だから大丈夫♪』
「檸檬…」
「そうだな、檸檬の言う通りだ!心配は要らん!!未だかつて奴が死んでいる所なぞ極限に見たことがない!!」
「え"っ…」
「どんな理屈だ!!」
「ハハハ!」
「お前ら!どこでも遊ぶんじゃない!!図面を確認しろ!」
ラルが叱って、了平とツナは謝る。
図面を確認すると、約半分が黒く表示されていた。
「この階はやたらと例の黒い部屋が多いのだったな。」
「まさにこの壁の奥がそうっスね。」
壁を叩いてみる山本。
その隣で、獄寺は通気口にカビが繁殖しているのに気がついた。
「何かヤバい植物でも栽培してんのか?」
「もしくはゴミためか、だな。」
「詮索は後だ。今は警備システムの破壊に行くぞ。」
『そーだね。今は廊下の熱反応も無いし、進もっか。』
透視で廊下の警備配置を確認する檸檬。
一行は軽微システムサーバーの手前にある、広い部屋に着いた。
「どうする?」
「俺が先行する。合図をしたら来い。」
『気をつけてね。』
檸檬の言葉に軽くうなずき、暗い中に走って行くラル。
部屋の中心部まで行った所で問題無しだと言いかけた。
が、しかし…
「待て!!」
そのゴーグルが熱反応を察知し、その増殖を表示する。
ラルは咄嗟に左手の霧ガントレットから霧の炎を放ち、接近する何かにぶつけた。
「ラル!?」
「大丈夫か!?」
「………かすっただけだ。」
駆け寄ろうとするツナ達だったが、新たな敵の出現により、その足は途中で止まった。
「ランダムに増える敵の規則性を見破り間一髪カウンターをあわせるとは、さすがアルコバレーノのなり損ない。」
指を鳴らす音がして、部屋の証明が点く。
先ほどモニタールームにて何かを察知した人物が、マントをなびかせ空中に浮いていた。
「ま、魔法使い!?」
「そのいでたちは魔導師の人形(マジシャンズ・ドール)、ジンジャー・ブレッドか。」
「今はミルフィオーレ第8部隊副隊長さ。しかし驚いたなー、こんなトコまで敵の侵入を許すとはね。」
スッと降り立ち、ジンジャーは続ける。
「僕には君達が来てるって、上に知らせる義務がある。まぁ、先に殺してしまうのも悪くないけどね、君のコロネロみたいにさ♪」
その言葉に、ラルは僅かに表情を動かした。
薄暗いダクトばかりを通って地下8階にたどり着いた。
「施設破壊に入る前にこの奥にある警備システムサーバーを破壊させるんだったな。」
「そうだ。」
了平の言葉にラルが答える。
警備システムをダウンさせれば基地内の機能を麻痺させる事が出来る。
「その機に乗じて主要施設の破壊と、入江正一への奇襲をする。」
『監視が緩んだ方がやりやすいもんね。』
「ああ。」
「その前に沢田、肘の傷口を治してやる。」
「え…?あ、バレてました?」
ツナの腕を掴んでそう言う了平に、獄寺が待ったをかけた。
「おい待て、極限バカのお前に治せんのかよっ。」
「心配はいらん。俺はこの匣兵器で…傷口を焼いて血を止めるだけだ!!」
「ひいいっ!スプラッター!!」
後退りするツナの後ろから、檸檬が顔をのぞかせる。
『わー、それってコテですか?』
「その通りだ!さすがは檸檬!!」
「大丈夫ですっ!ほんのかすり傷ですから!!」
『これが晴の黄色い炎……綺麗ですね♪』
「言ってる場合じゃないよ檸檬ーっ!!!」
「ごちゃごちゃうるさい、沢田。」
ラルに押さえつけられ、了平はそのコテをツナの肘に近づけた。
「ぎゃああ………」
「10代目!!」
「…………あれ…?痛く…ない。」
『え、痛くないの!?』
不思議そうに目を丸くするツナと檸檬に、了平は説明する。
「ハハハ、これは晴属性の死ぬ気の炎だ。その匣の特徴は活性。この炎は細胞組織の自然治癒力を活発にし、普段の何百倍もの早さで傷を修復するのだ。」
『そうなんですかぁ!』
「かゆいっ、何かかゆいです!!」
「よし、終わったぞ。」
『すごーいっ!治ったね、ツナ!』
「うん、ホントだ!」
晴の力を誇らしげに説明した了平に、獄寺がつっかかるが、山本がいつものように抑える。
「まーまーっ、傷も治りゃあまさに無傷で勝利!絶好調じゃねーか!!ツナの新技も凄まじかったしなっ♪」
「あれは本当に凄かったっス!!」
「うむ、大した極限技だったな。」
『でもアレって…』
「半分くらいの力だろ、沢田。」
ラルに問われたツナは、考えたあげく「2割程度だ」と。
『そんなに低いの!?』
「なんと!」
「あれで2割スか!?」
「でもまだまだ不安定でフルパワーじゃ撃てないんだ。それに敵も全力じゃなかったし……」
「確かに、デンドロの炎は見た目は派手だったが、武器や匣の性能を充分に引き出してはいなかった……大切なのは炎のデカさではなく純度だからな。」
「そーいや、あいつの雷の炎はもっと何つーか…鋭かったよな。」
『そう、だね…』
「……あぁ、別物だ…」
3人が思い出すのは、もう何週間か前のバトル……
「「『電光のγ……』」」
因縁
同じ頃、アフェランドラ隊の部屋にて。
体中に包帯を巻かれたγはひらすら酒を口に流していた。
ガチャン、とまた一本ビンが床に落とされれば、部下が口を開く。
「た、隊長…いくら酒に強くてもそこまで飲んじゃあよぉ……」
「んん?いつから俺は部下に指図されるようになったんだ?」
「だけど、大怪我をされてまで日が浅ぇんだし。」
「ほぅ…」
納得したような相槌だが、違った。
次の瞬間その部下の胸ぐらを掴み、リングから放つ雷の炎で感電させる。
「ギャアア!!!」
「黙ってろ。」
「アニキ…!!」
その光景を見た野猿が、耐えかねたように訴える。
「何やってんだよ!!部下に当たるなんてらしくないぜ!!1回負けたぐらいでイジケちまって…こんなのγアニキじゃねーよ!!」
「ナマ言うようになったなチビ……そーか、おしおきして欲しいんだな?」
兄弟だと言い、特別仲が良かった野猿の言葉も、γにはきちんと届かない。
ユラリとその前に立ち、言った。
「歯ー、食いしばれ。」
「アニ…キ……?」
ところが、震える野猿に降り掛かった拳を受けたのは、太猿だった。
吹っ飛ばされた太猿の体はビリヤード台を大きく歪ませる。
「太猿アニキ!!」
「…ケガの方は随分いいみてーだな、γアニキ。」
「何のマネだ、お前ら。」
気に食わないとでも言うように自分を睨むγに、太猿は言う。
「そりゃー俺たちは惨めだ、惨めだよなぁ……」
「俺と野猿は10年前のボンゴレのガキ共にのされ、アニキは雲雀恭弥に串刺しだ。ホワイトスペルを出し抜くどころか謹慎の身……情けねぇったらねーもんなぁ。」
「太猿、てめぇ…」
「入江にはこの基地を好きなようにされ、酒と玉突きと弟イビリしかするこたねぇんだ。」
「もういいよ!やめてくれよ太猿アニキ!!」
これ以上の口論を避けたがる野猿だが、太猿は聞かない。
「加えてあの幻騎士にはビビって手を出せねぇしな!!」
「太猿アニキ!!」
「それは違うぜ、ビビってんじゃねぇ…」
「ユニ様の命令だからだってのか!?それがビビってるっつーんだぞ!!」
「もう一度言ってみろ…兄弟の縁を切り、てめぇを殺す。」
「もうやめてくれよ~~~!!γアニキ!!太猿アニキ!!」
γのマーレリングが光り始め、野猿の目から涙がこぼれた、その時。
「兄弟喧嘩か。」
「……みたいね。」
その部屋の入り口付近に立った、男と女が1人ずつ。
「あ、あいつは……!!」
「幻騎士!!それに…雨宮蜜柑!!」
野猿と太猿以外の隊員も、その登場に驚きを隠せずにいた。
「な、何でLIGHTがこんなトコに……」
小さく呟く周りを一瞥し、蜜柑はγに目を向けた。
γも、ホワイトスペルが部屋にいる事が気に入らないらしく、蜜柑を睨む。
「てめぇ…」
「酷い荒れ様ね。」
表情1つ変えない蜜柑。
しかし、その瞳に蔑みが込められているようにγは感じ取った。
「ホワイトスペルが何の用だ。」
「幻騎士に呼ばれて来た。だけど、ここまでとは思わなかったわ。」
「なに…?」
「よせ、蜜柑。」
抑制しようとする幻騎士に耳も貸さず、蜜柑は床に倒れた隊員を見る。
「これ、貴方が?」
「だったら何だ!!」
「………敗北を恥じて酒に溺れるのは勝手だけど、ミルフィオーレのマイナスに繋がる行為は認められない。」
「あぁ?」
「蜜柑、」
鋭く恐ろしくなるγの目線も、幻騎士の呼びかけも、一切蜜柑に影響しなかった。
「ミルフィオーレの戦力となる貴方以外の者……それを八つ当たりにより使い物にならなくさせるというなら、」
マーレリングに再び帯電させるγに、蜜柑はすかさず銃口を向けて。
「貴方を白蘭の害とみなし、私が排除する。」
「言わせておけば……!!」
「γ、蜜柑、そこまでだ。」
γの手首と蜜柑の銃を掴み、仲裁に入る幻騎士。
蜜柑を睨んでいたγは、今度は幻騎士に問う。
「………何でライトを連れて来やがった。」
「この惨状を見越してだ。」
「見越して、だと?」
未だ腑に落ちない様子のγから目線を外し、幻騎士は蜜柑に言う。
「…コレを降ろしてくれないか。」
数秒の沈黙の後、スッと銃を降ろす蜜柑。
呆れたように溜め息を一つつき、幻騎士に問う。
「まさか…晴への変更を試せ、って?」
「ああ…頼めるか、蜜柑。」
「……まぁいいわ。」
了承の意思表示として軽く目を閉じる蜜柑。
幻騎士は今度はγに向かって。
「傷は癒えたか、γ。」
「……てめぇ……てめぇは何しに来やがった。」
「…話だ。」
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同じ頃ツナ達は、ラルを先頭に警備システムサーバーの元へ向かっていた。
「基地内の敵の数が想定していたより遥かに少ないな。」
物陰から廊下を覗いたラルが言う。
「雲雀が囮になっている効果は絶大なようだ。」
「そんなに多くの敵が……雲雀さん、大丈夫かな……」
『平気平気、戦闘マニアだもん。』
「檸檬…」
にこりと笑いながら答える檸檬を見て、何処か違和感を覚えるツナ。
まるで、その言葉をツナにではなく自分に言い聞かせているような雰囲気。
「大丈夫?檸檬…」
『えっ?』
「“え”じゃねーよ、おめーが一番不安そうな顔してんだろーが。」
「心配、だよね……」
『隼人…ツナ…』
言い当てられた檸檬は、ばつが悪そうに眉を下げる。
『そりゃさ…心配だよ。こっちの敵が少なければ少ない程、心配になる。』
「檸檬…」
『でも、さ!』
覚悟を決めたように斜め上を見る檸檬に、皆は首を傾げる。
『また会えるって、信じてるから………だから大丈夫♪』
「檸檬…」
「そうだな、檸檬の言う通りだ!心配は要らん!!未だかつて奴が死んでいる所なぞ極限に見たことがない!!」
「え"っ…」
「どんな理屈だ!!」
「ハハハ!」
「お前ら!どこでも遊ぶんじゃない!!図面を確認しろ!」
ラルが叱って、了平とツナは謝る。
図面を確認すると、約半分が黒く表示されていた。
「この階はやたらと例の黒い部屋が多いのだったな。」
「まさにこの壁の奥がそうっスね。」
壁を叩いてみる山本。
その隣で、獄寺は通気口にカビが繁殖しているのに気がついた。
「何かヤバい植物でも栽培してんのか?」
「もしくはゴミためか、だな。」
「詮索は後だ。今は警備システムの破壊に行くぞ。」
『そーだね。今は廊下の熱反応も無いし、進もっか。』
透視で廊下の警備配置を確認する檸檬。
一行は軽微システムサーバーの手前にある、広い部屋に着いた。
「どうする?」
「俺が先行する。合図をしたら来い。」
『気をつけてね。』
檸檬の言葉に軽くうなずき、暗い中に走って行くラル。
部屋の中心部まで行った所で問題無しだと言いかけた。
が、しかし…
「待て!!」
そのゴーグルが熱反応を察知し、その増殖を表示する。
ラルは咄嗟に左手の霧ガントレットから霧の炎を放ち、接近する何かにぶつけた。
「ラル!?」
「大丈夫か!?」
「………かすっただけだ。」
駆け寄ろうとするツナ達だったが、新たな敵の出現により、その足は途中で止まった。
「ランダムに増える敵の規則性を見破り間一髪カウンターをあわせるとは、さすがアルコバレーノのなり損ない。」
指を鳴らす音がして、部屋の証明が点く。
先ほどモニタールームにて何かを察知した人物が、マントをなびかせ空中に浮いていた。
「ま、魔法使い!?」
「そのいでたちは魔導師の人形(マジシャンズ・ドール)、ジンジャー・ブレッドか。」
「今はミルフィオーレ第8部隊副隊長さ。しかし驚いたなー、こんなトコまで敵の侵入を許すとはね。」
スッと降り立ち、ジンジャーは続ける。
「僕には君達が来てるって、上に知らせる義務がある。まぁ、先に殺してしまうのも悪くないけどね、君のコロネロみたいにさ♪」
その言葉に、ラルは僅かに表情を動かした。