未来編①
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太陽が顔を出して少し経った。
あたし達は予定通り並盛駅へと向かう。
ラルを先頭に、ツナ、隼人、武、あたし、そして了平さん。
まだ街は目を覚ましてなくて、小さな鳥の声と足音のみが響く。
不思議な事に、緊張しているハズのあたしの心は、何処か驚く程落ち着き払っていた。
侵入
前日のミーティングにて、交わされた会話を思い出す。
「敵のアジトは並盛の地下ショッピングモールにあると言ったわよね。」
地図を指しながらビア姉さんが説明してくれた。
「そのショッピングモールに何カ所か不自然なダクトを見つけたの。」
ダクト…建築物内で主に換気目的で設置されるもの。
地下だったら空気がこもらないようにする為にあるべきものだけど……
「その位置が、雲雀のアジトに流れ込んだ図面のミルフィオーレアジトのダクトの位置と一致。」
二つを重ね合わせる事で、より正確な敵アジトの位置を掴めた、と。
「それを元に検討した結果…地下駐車場の発電室にあるダクトから入るのがベストよ。」
次にジャンニーニから装備の説明を受けた。
オートマモンチェーンリングカバーという、自動的にリングにフタをして感知されないようにする道具。
これはとりあえずリングを持ってないあたしには関係ない。
そしてもう1つ、全ての無線機は一斉に周波数が変わって盗聴不可能な作りになっている。
ツナのは少し大きめだけど、あとはみんな黒くて細長い作り。
あとはレオンから死ぬ気の炎に強い服のプレゼント。
5人分やってやつれちゃってたから、あたしはいいよ、と言って断った。
---
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「本当に大丈夫なのか?檸檬。」
『うん、平気だよ。』
「いつもの強がりなら、やめとけよ。」
『違うよ、本当に大丈夫。』
探るような瞳で見つめるリボーンに、あたしは笑顔を見せた。
『あのね、レオンが大変ってのもあるけど……あたし、これでも一応“避けるプロ”を名乗ってたワケよ。だから…』
ちょっとだけ、悔しい気持ちになるかも知れない。
攻撃を受けた時の装備を予め用意されたら、“避けるプロ”としてのプライドにヒビを作るかも知れない。
『強がりって程のモンじゃないんだけどさ……ちっぽけなプライドがあって。』
「全部避けるつもりか?」
『うん。』
やれる限り、なんて甘い言葉は使わない。
あたしは“CRAZY DANCER”なんだから。
肉を斬らせて、とかいう戦法は絶対に使わない。
舞い踊り、避ける事こそあたしの戦法なんだから。
『信じて、リボーン。』
避けるプロを名乗っているからこそ、甘えを生み出すかも知れない防具を受け入れるワケにはいかない。
「しょーがねぇな……気を付けろよ。」
『うんっ♪ありがと!』
すると今度はジャンニーニが、あたし個人に説明する。
「檸檬様、Fブーツについてですが…」
『うん、何?』
「アルミ盤に灯された炎の持続時間はおよそ1分です。」
『1分も保つの!?』
あたしはてっきり、数秒しか飛べないんだと思ってた。
「はい。内蔵されている炎保存板は少しずつ且つ効率よく与えられた炎を放出します。それにより飛行も可能となるのです。」
『すごーい!!』
「必ずしも飛行だけじゃねーと思うぞ。」
『え?』
横で聞いていたリボーンが言う。
「ツナのXグローブみてーに、瞬発力を上げる事も可能なんじゃねーか?」
『あ、そっか!』
---
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あとは、地図をインプットした携帯情報端末を持てば、準備万端。
これも、ジャンニーニが配慮してくれて、あたしのだけ一回り小さく作られている。
ナイフと一緒にそれを腰に取り付けて、あたしは今走ってる。
数台の車のみが止まっている、地下駐車場の中を。
「こっちよ。」
「ビアンキ!」
『ビア姉さん!』
不意に、駐車場の奥の柱から現れたビア姉さんに、あたしとツナは思わず声を上げた。
「見送りに来たわ、この中のダクトから行ける。」
「こんな危険な所まで………」
『ありがとうございます、ビア姉さん。』
「いいのよ檸檬、気にしないで。」
発電室の中に入るツナに、ビア姉さんは言う。
「京子やハルやチビ達の事は任せなさい。安心して暴れて来るのよ。」
「うん……行って来ます!」
ラル、ツナに続いて、武と了平さんも入って行く。
「しっかり頼むぜ。」
『(ん…?)』
隼人がふと立ち止まって、ビア姉さんに背を向けながら言う。
「いつまでも過去に縛られてたまっかよ。敵の主要施設を破壊し、入江を倒した後で話がある……」
「隼人…」
『(何だろ…)』
過去ってきっと、リボーンが話してくれたあの事……
隼人は正妻の子供じゃない、って事……
「待って下さい!」
『あ…』
ビア姉さんが答えないうちに、隼人はツナ達の方へ走って行く。
あたしも後を追う為に足を速めようとした。
「待って檸檬!」
『えっ?』
「本当に、いいのね?」
真剣な瞳で尋ねるビア姉さんに、あたしも同じ眼差しを返す。
『行きます。行って、妹と……蜜柑と姉妹喧嘩して来ます!』
「本当は…京子やハルみたいに護られ支える存在なのよ、檸檬は。」
同じ女子中学生だもの、とビア姉さんは言う。
だけどあたしは首を振って。
『あたしは、普通じゃありませんから♪異常な力も、この手に持ってます。だから……頑張って来ます!』
「……そう…気をつけて。」
『はいっ♪』
みんなに追いついて、ダクトのハシゴに足をかける。
武が最後に、「じゃ!」と挨拶した。
細くて暗いダクトの中を、匍匐前進で進んでく。
ゴーグルに地図のデータを搭載してるラルが、先頭を行く。
次にツナ、武、隼人、あたし、了平さんと続く。
「まさかこんな映画みてーな事するとはな。」
『そうだねっ、ちょっとワクワクする♪』
「おめーらバカか!静かに進めってんだ!」
『怒鳴った隼人が一番うるさいかもよ?』
「だな!」
「なっ…!」
悔しそうに口を閉じる隼人に笑みをこぼしながら、順調に前進。
「本当にこうなってるんだね。」
ツナは、マフィアの基地に殴り込みに来ていると実感出来てないみたいだった。
「地下3階のC5ポイント……よし、図面通りだ。このまま中央の施設を目指すぞ。」
『うんっ…………ん?』
「どうしたのだ?檸檬。」
『あ、何でも無いです。』
気のせいだよね…
今、ダクトの下に何かの気配を感じたような…
と、ここでツナがラルに体の具合を尋ねる。
だけどその質問を無視して、ラルは突然止まった。
「でっ!」
進み続けてたツナがラルの足に額をぶつけたみたい。
「赤外線レーザーが張られている。」
「え!?」
『(やっぱりあったか…)』
「コレに感知されると、奥に設置されてるレーザーの餌食になるな。」
訓練通りに“くぐり抜け”が実行される。
ジャンニーニ特製の擬光フィルターで5秒間赤外線を止められるから、その間に全員が突破しなくてはいけない。
「わかった。」
『大丈夫。』
「OKだ。」
あたし達の返事を聞いて、ラルはそれを投げた。
すると、光の輪っかがいくつも現れて、赤外線を止めた。
「今だ!!」
一斉に動き出すあたし達。
5秒間はあまりに短くて、だけど焦る気持ちをぐっと抑える。
長い長い5メートルを通り抜け、ラルは後ろに尋ねる。
「どうだ!?」
「間一髪セーフだが、寿命が縮むな……ハハ…」
「よし。」
こっちに顔を向けて確認するラル。
だけどあたしは、そのラルの向こう……設置されてるレーザーに違和感を覚えて。
『……ラル!前!!』
「な…何!?」
レーザーのサイドに取り付けてあるライトがチカッと光ったのだ。
それが発射の前兆だって事は、手に取るように分かった。
「バカな!レーザーが来る!!」
「え!!?」
「回避だ!!」
ここは密閉されたダクトだし、通常の回避はまず不可能。
だったら……
『(レーザーをねじ曲げる…!)』
前に4人もいるから、正確に位置を捉えるのがちょい難しいかも知れないけど……
まさかこんなに早く使う事になるなんて、と思ったあたしの視界に、背から竹刀を取り出す武の姿が。
そして次の瞬間、ダクトは内側からまっ二つに斬られ、
ドササッ、
あたし達は真下に着地した。
(ツナはうつ伏せに落ちちゃったけど…)
「っぶねー…」
「ギリだぜ。」
『すごいすごい!さっすが武!』
「ハハッ、サンキュー檸檬!」
感謝するあたしの横で、ラルが上を見上げる。
「何故だ?赤外線には触れなかったはず…」
「ハハァ~~、俺がスイッチを押したからだ~。」
『え!?』
聞き覚えの無い声での返答に、吃驚してそちらを見る。
と、そこには……
「ハァ~~~、モグラでなく人間のガキだ~~~。」
『なっ!』
「でけっ!」
「うわあぁ!!」
何とも踊りにくそうな体をした、1人の男。
重そうな武器も背負ってるし……腕も、すんごい筋肉ついてる。
『(やっぱり、あの時の気配は間違ってなかったか…)』
この人は、ダクトの外側から見ていたんだ。
そしてその中を“何か”が進んでると思ってスイッチを押したんだ…。
「んん~?ガキ…?確かボンゴレ10代目達もガキだと言っていたな~~。でも奴らは今、攻められてボコボコにされてるんだもん、違うよな~。」
どうやら、まだ気づかれてないみたい。
てか、最初に出会ったのがこの人で良かったのかも。
ダクトからの侵入者を一般人と間違えてるし。
どう考えてもあり得ないっての。
「ま~いいや、お前達のおかげで格納庫に届いた武器の試し打ちが出来るな~~。」
「え?」
『今、試し打ちって…』
「兵器の威力を見るのは、生身の標的が一番だからな~~。」
こいつ…あの武器を打つ気なの!?
腹部に付けてある匣に注入された炎は、物凄い威力であたし達の方に発射されて……
「バァ~ハハ~~~イ!!!」
ドウッ!!
「ハハァ~~なかなかの威力だな、これは。」
使えそうだ、骨も残らないな、とか、確認もしないままその男は色々言っていた。
だから驚いたんだろうな、
「今の誰だ?」
っていう、武の声を聞いた時には。
「ぬ!!?」
「俺ではない。」
「同じく。」
ラルと了平さんが答える。
『あたしも違うよ?』
「俺も何も…」
「俺っス。」
全員の声が確認出来て、煙もはれていく。
土ぼこりを払う武やラル。
隼人にお礼を言うツナ。
一言で言えば…全員無傷。
「なっ…なにィ!!!」
「道を開けろムダマッチョ。遊んでるヒマはねぇ。」
「む、ムダ!!?」
『ぷっ…あはは!隼人ってば何そのネーミング~っ!』
あたしが思わず吹き出したのも加わって、彼は激怒したみたい。
「チキショー!!こんのガキぃ~~!!俺の事何も知らずに~~っ!!」
『匣兵器!?』
「殺してやる!!デンドロ様の、電槍(ランチャ・エレットリカ)でな~~!!!」
雷の炎を纏った大きな槍を構えるその姿を見て、了平さんとラルが言う。
「こいつは…“一番槍(アラッタッコ)”の異名を持つ切り込み重装兵のデンドロ・キラムだ。後方に配置すると味方ごと串刺しにするキレた男だと聞く。」
「ああ……槍を持ったヤツの突破力はミルフィオーレ随一。雷の匣の特徴である硬化によりコーティングされた電槍に貫けぬものは無いとも聞く。」
「厄介だな、一旦間合いを取るぞ!」
「ハァ~?間合い!?そんなものやるもんか!!ぶっ散れ!!!」
了平さんの声に反応したデンドロが、槍をこっちに向ける。
「電撃突き(コルポ・エレットロ・ショック)!!!」
『(来る!)』
空間移動を使って全員回避をやってみようかと思ったけど、
ツナがスッと前に出た。
『ツナ…?』
「下がってていい。」
『あ、うん…』
「ハハァ~飛び散った!!」
デンドロは槍を引こうとするけど、それは出来ない状態だった。
煙がはれた瞬間、ツナの背中越しに見た、デンドロの驚いた顔。
「な、なにィ!!!」
「聞こえなかったのか?」
いつの間にか、死ぬ気丸を飲んでたみたい。
電槍は、ツナの左手にがっしりと掴まれて、且つ熱せられたせいで先端が原型をとどめていなかった。
「遊んでいるヒマはない。」
メローネ基地での初バトルが、始まった。
あたし達は予定通り並盛駅へと向かう。
ラルを先頭に、ツナ、隼人、武、あたし、そして了平さん。
まだ街は目を覚ましてなくて、小さな鳥の声と足音のみが響く。
不思議な事に、緊張しているハズのあたしの心は、何処か驚く程落ち着き払っていた。
侵入
前日のミーティングにて、交わされた会話を思い出す。
「敵のアジトは並盛の地下ショッピングモールにあると言ったわよね。」
地図を指しながらビア姉さんが説明してくれた。
「そのショッピングモールに何カ所か不自然なダクトを見つけたの。」
ダクト…建築物内で主に換気目的で設置されるもの。
地下だったら空気がこもらないようにする為にあるべきものだけど……
「その位置が、雲雀のアジトに流れ込んだ図面のミルフィオーレアジトのダクトの位置と一致。」
二つを重ね合わせる事で、より正確な敵アジトの位置を掴めた、と。
「それを元に検討した結果…地下駐車場の発電室にあるダクトから入るのがベストよ。」
次にジャンニーニから装備の説明を受けた。
オートマモンチェーンリングカバーという、自動的にリングにフタをして感知されないようにする道具。
これはとりあえずリングを持ってないあたしには関係ない。
そしてもう1つ、全ての無線機は一斉に周波数が変わって盗聴不可能な作りになっている。
ツナのは少し大きめだけど、あとはみんな黒くて細長い作り。
あとはレオンから死ぬ気の炎に強い服のプレゼント。
5人分やってやつれちゃってたから、あたしはいいよ、と言って断った。
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「本当に大丈夫なのか?檸檬。」
『うん、平気だよ。』
「いつもの強がりなら、やめとけよ。」
『違うよ、本当に大丈夫。』
探るような瞳で見つめるリボーンに、あたしは笑顔を見せた。
『あのね、レオンが大変ってのもあるけど……あたし、これでも一応“避けるプロ”を名乗ってたワケよ。だから…』
ちょっとだけ、悔しい気持ちになるかも知れない。
攻撃を受けた時の装備を予め用意されたら、“避けるプロ”としてのプライドにヒビを作るかも知れない。
『強がりって程のモンじゃないんだけどさ……ちっぽけなプライドがあって。』
「全部避けるつもりか?」
『うん。』
やれる限り、なんて甘い言葉は使わない。
あたしは“CRAZY DANCER”なんだから。
肉を斬らせて、とかいう戦法は絶対に使わない。
舞い踊り、避ける事こそあたしの戦法なんだから。
『信じて、リボーン。』
避けるプロを名乗っているからこそ、甘えを生み出すかも知れない防具を受け入れるワケにはいかない。
「しょーがねぇな……気を付けろよ。」
『うんっ♪ありがと!』
すると今度はジャンニーニが、あたし個人に説明する。
「檸檬様、Fブーツについてですが…」
『うん、何?』
「アルミ盤に灯された炎の持続時間はおよそ1分です。」
『1分も保つの!?』
あたしはてっきり、数秒しか飛べないんだと思ってた。
「はい。内蔵されている炎保存板は少しずつ且つ効率よく与えられた炎を放出します。それにより飛行も可能となるのです。」
『すごーい!!』
「必ずしも飛行だけじゃねーと思うぞ。」
『え?』
横で聞いていたリボーンが言う。
「ツナのXグローブみてーに、瞬発力を上げる事も可能なんじゃねーか?」
『あ、そっか!』
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あとは、地図をインプットした携帯情報端末を持てば、準備万端。
これも、ジャンニーニが配慮してくれて、あたしのだけ一回り小さく作られている。
ナイフと一緒にそれを腰に取り付けて、あたしは今走ってる。
数台の車のみが止まっている、地下駐車場の中を。
「こっちよ。」
「ビアンキ!」
『ビア姉さん!』
不意に、駐車場の奥の柱から現れたビア姉さんに、あたしとツナは思わず声を上げた。
「見送りに来たわ、この中のダクトから行ける。」
「こんな危険な所まで………」
『ありがとうございます、ビア姉さん。』
「いいのよ檸檬、気にしないで。」
発電室の中に入るツナに、ビア姉さんは言う。
「京子やハルやチビ達の事は任せなさい。安心して暴れて来るのよ。」
「うん……行って来ます!」
ラル、ツナに続いて、武と了平さんも入って行く。
「しっかり頼むぜ。」
『(ん…?)』
隼人がふと立ち止まって、ビア姉さんに背を向けながら言う。
「いつまでも過去に縛られてたまっかよ。敵の主要施設を破壊し、入江を倒した後で話がある……」
「隼人…」
『(何だろ…)』
過去ってきっと、リボーンが話してくれたあの事……
隼人は正妻の子供じゃない、って事……
「待って下さい!」
『あ…』
ビア姉さんが答えないうちに、隼人はツナ達の方へ走って行く。
あたしも後を追う為に足を速めようとした。
「待って檸檬!」
『えっ?』
「本当に、いいのね?」
真剣な瞳で尋ねるビア姉さんに、あたしも同じ眼差しを返す。
『行きます。行って、妹と……蜜柑と姉妹喧嘩して来ます!』
「本当は…京子やハルみたいに護られ支える存在なのよ、檸檬は。」
同じ女子中学生だもの、とビア姉さんは言う。
だけどあたしは首を振って。
『あたしは、普通じゃありませんから♪異常な力も、この手に持ってます。だから……頑張って来ます!』
「……そう…気をつけて。」
『はいっ♪』
みんなに追いついて、ダクトのハシゴに足をかける。
武が最後に、「じゃ!」と挨拶した。
細くて暗いダクトの中を、匍匐前進で進んでく。
ゴーグルに地図のデータを搭載してるラルが、先頭を行く。
次にツナ、武、隼人、あたし、了平さんと続く。
「まさかこんな映画みてーな事するとはな。」
『そうだねっ、ちょっとワクワクする♪』
「おめーらバカか!静かに進めってんだ!」
『怒鳴った隼人が一番うるさいかもよ?』
「だな!」
「なっ…!」
悔しそうに口を閉じる隼人に笑みをこぼしながら、順調に前進。
「本当にこうなってるんだね。」
ツナは、マフィアの基地に殴り込みに来ていると実感出来てないみたいだった。
「地下3階のC5ポイント……よし、図面通りだ。このまま中央の施設を目指すぞ。」
『うんっ…………ん?』
「どうしたのだ?檸檬。」
『あ、何でも無いです。』
気のせいだよね…
今、ダクトの下に何かの気配を感じたような…
と、ここでツナがラルに体の具合を尋ねる。
だけどその質問を無視して、ラルは突然止まった。
「でっ!」
進み続けてたツナがラルの足に額をぶつけたみたい。
「赤外線レーザーが張られている。」
「え!?」
『(やっぱりあったか…)』
「コレに感知されると、奥に設置されてるレーザーの餌食になるな。」
訓練通りに“くぐり抜け”が実行される。
ジャンニーニ特製の擬光フィルターで5秒間赤外線を止められるから、その間に全員が突破しなくてはいけない。
「わかった。」
『大丈夫。』
「OKだ。」
あたし達の返事を聞いて、ラルはそれを投げた。
すると、光の輪っかがいくつも現れて、赤外線を止めた。
「今だ!!」
一斉に動き出すあたし達。
5秒間はあまりに短くて、だけど焦る気持ちをぐっと抑える。
長い長い5メートルを通り抜け、ラルは後ろに尋ねる。
「どうだ!?」
「間一髪セーフだが、寿命が縮むな……ハハ…」
「よし。」
こっちに顔を向けて確認するラル。
だけどあたしは、そのラルの向こう……設置されてるレーザーに違和感を覚えて。
『……ラル!前!!』
「な…何!?」
レーザーのサイドに取り付けてあるライトがチカッと光ったのだ。
それが発射の前兆だって事は、手に取るように分かった。
「バカな!レーザーが来る!!」
「え!!?」
「回避だ!!」
ここは密閉されたダクトだし、通常の回避はまず不可能。
だったら……
『(レーザーをねじ曲げる…!)』
前に4人もいるから、正確に位置を捉えるのがちょい難しいかも知れないけど……
まさかこんなに早く使う事になるなんて、と思ったあたしの視界に、背から竹刀を取り出す武の姿が。
そして次の瞬間、ダクトは内側からまっ二つに斬られ、
ドササッ、
あたし達は真下に着地した。
(ツナはうつ伏せに落ちちゃったけど…)
「っぶねー…」
「ギリだぜ。」
『すごいすごい!さっすが武!』
「ハハッ、サンキュー檸檬!」
感謝するあたしの横で、ラルが上を見上げる。
「何故だ?赤外線には触れなかったはず…」
「ハハァ~~、俺がスイッチを押したからだ~。」
『え!?』
聞き覚えの無い声での返答に、吃驚してそちらを見る。
と、そこには……
「ハァ~~~、モグラでなく人間のガキだ~~~。」
『なっ!』
「でけっ!」
「うわあぁ!!」
何とも踊りにくそうな体をした、1人の男。
重そうな武器も背負ってるし……腕も、すんごい筋肉ついてる。
『(やっぱり、あの時の気配は間違ってなかったか…)』
この人は、ダクトの外側から見ていたんだ。
そしてその中を“何か”が進んでると思ってスイッチを押したんだ…。
「んん~?ガキ…?確かボンゴレ10代目達もガキだと言っていたな~~。でも奴らは今、攻められてボコボコにされてるんだもん、違うよな~。」
どうやら、まだ気づかれてないみたい。
てか、最初に出会ったのがこの人で良かったのかも。
ダクトからの侵入者を一般人と間違えてるし。
どう考えてもあり得ないっての。
「ま~いいや、お前達のおかげで格納庫に届いた武器の試し打ちが出来るな~~。」
「え?」
『今、試し打ちって…』
「兵器の威力を見るのは、生身の標的が一番だからな~~。」
こいつ…あの武器を打つ気なの!?
腹部に付けてある匣に注入された炎は、物凄い威力であたし達の方に発射されて……
「バァ~ハハ~~~イ!!!」
ドウッ!!
「ハハァ~~なかなかの威力だな、これは。」
使えそうだ、骨も残らないな、とか、確認もしないままその男は色々言っていた。
だから驚いたんだろうな、
「今の誰だ?」
っていう、武の声を聞いた時には。
「ぬ!!?」
「俺ではない。」
「同じく。」
ラルと了平さんが答える。
『あたしも違うよ?』
「俺も何も…」
「俺っス。」
全員の声が確認出来て、煙もはれていく。
土ぼこりを払う武やラル。
隼人にお礼を言うツナ。
一言で言えば…全員無傷。
「なっ…なにィ!!!」
「道を開けろムダマッチョ。遊んでるヒマはねぇ。」
「む、ムダ!!?」
『ぷっ…あはは!隼人ってば何そのネーミング~っ!』
あたしが思わず吹き出したのも加わって、彼は激怒したみたい。
「チキショー!!こんのガキぃ~~!!俺の事何も知らずに~~っ!!」
『匣兵器!?』
「殺してやる!!デンドロ様の、電槍(ランチャ・エレットリカ)でな~~!!!」
雷の炎を纏った大きな槍を構えるその姿を見て、了平さんとラルが言う。
「こいつは…“一番槍(アラッタッコ)”の異名を持つ切り込み重装兵のデンドロ・キラムだ。後方に配置すると味方ごと串刺しにするキレた男だと聞く。」
「ああ……槍を持ったヤツの突破力はミルフィオーレ随一。雷の匣の特徴である硬化によりコーティングされた電槍に貫けぬものは無いとも聞く。」
「厄介だな、一旦間合いを取るぞ!」
「ハァ~?間合い!?そんなものやるもんか!!ぶっ散れ!!!」
了平さんの声に反応したデンドロが、槍をこっちに向ける。
「電撃突き(コルポ・エレットロ・ショック)!!!」
『(来る!)』
空間移動を使って全員回避をやってみようかと思ったけど、
ツナがスッと前に出た。
『ツナ…?』
「下がってていい。」
『あ、うん…』
「ハハァ~飛び散った!!」
デンドロは槍を引こうとするけど、それは出来ない状態だった。
煙がはれた瞬間、ツナの背中越しに見た、デンドロの驚いた顔。
「な、なにィ!!!」
「聞こえなかったのか?」
いつの間にか、死ぬ気丸を飲んでたみたい。
電槍は、ツナの左手にがっしりと掴まれて、且つ熱せられたせいで先端が原型をとどめていなかった。
「遊んでいるヒマはない。」
メローネ基地での初バトルが、始まった。