未来編①
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「ガハハ!檸檬、遊んでーっ!!」
「%$#*!!」
『きゃっ!分かった分かった!追いかけっこしよっか♪』
「んなっ!檸檬っ!こんなトコで追いかけっこなんて……」
「元気だね、檸檬ちゃんとランボ君達。」
「そうですね♪」
「いやいやいや!まずいって!料理とかこぼしたらヤバいし…!」
『捕まえた♪』
「早っ!!」
夜襲
「じゃあ、おやすみ檸檬ちゃん。」
「おやすみなさい。」
『うん、おやすみ京子、ハル。』
さんざん檸檬と遊んで眠ってしまったランボとイーピンを抱え、京子とハルは部屋に戻っていく。
それを見送った後、檸檬は今度はツナ達に向かって挨拶した。
『じゃ、あたしも寝るね。明日は…大事な日だから。』
「うん…そうだね。」
「頑張ろーなっ!」
「この能天気が……」
山本を睨む獄寺にクスリと笑ってから、檸檬は雲雀のアジトの方へ足を進めた。
『おやすみ。』
「おやすみ檸檬。」
「おぅ…」
「おやすみ!」
そして、ボンゴレ地下アジトは、真夜中の静寂に包まれた。
一方でミルフィオーレの部隊が、闇の中を移動し始めた事も知らずに。
---
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------------
ガリガリ…という妙な音が聞こえて、ツナは目を覚ました。
不思議に思って廊下に出てみると、山本とリボーンに遭遇する。
「ツナも聞こえたか?」
「うん。」
「どーやらアレみたいだな。」
リボーンが指差すその方向には……
「雲雀さんと、獄寺君の猫ーー!?」
「酔っぱらって僕のトコまで来たよ。」
黒い着流しに裸足のまま廊下をやって来た雲雀。
その手には、獄寺にちっとも懐いていなかった匣兵器の猫がいた。
ガリガリという音は、猫が壁を引っ掻いている音だったのだ。
「ああっ!てっきり匣に戻ってっかと……」
慌てて後から廊下に出て来た獄寺は、猫を叱りつける。
「何してやがったんだ、瓜!!」
「(変な名前つけてるーー!!)」
しかし雲雀が手を放したその瞬間、
「んげぇ!!」
瓜は獄寺の顔に飛びつき、顔を引っ掻き始めた。
未だ懐いてないその光景に、ツナは少し苦笑する。
すると雲雀は仕込みトンファーをスッと構えて。
「君達…風紀を乱すとどうなるか、知ってる?」
「おっ、おい!」
「てめっ…」
「ごめんなさい!!」
しかし何もしないままトンファーをしまい、欠伸を一つ。
「……眠い…今度ね。」
自分のアジトの方へ戻ろうとする雲雀だったが、獄寺が引き止める。
「ま、待て雲雀!!あ、あんがとな……いずれこの借りは返す…ぜ。」
「期待せずに待つよ、獄寺隼人。」
「なっ、期待せずだと!?」
すると今度はツナが。
「あ、雲雀さん!明日…一緒に頑張りましょうね。」
「……嫌だ。」
その返答に驚く3人に、雲雀は言う。
「僕は死んでも君達と群れたり、一緒に戦ったりしない………強いからね。」
そして最後に「おやすみ」と言って戻って行く。
10年前と変わらないその言動に山本は笑い、獄寺はツナに頭を下げた。
---
--------
キィ…
「ん…?」
戻る途中、通りかかった部屋のドアが音を立て、雲雀は振り向いた。
開いたドアの中から顔を出したのは、眠っていたハズの檸檬。
「どしたの?隣の部屋には哲が…」
『違うの、恭弥……』
タタッと駆け寄り雲雀の前に立った檸檬は、小さく尋ねた。
『恭弥………行っちゃうの…?』
「檸檬……」
『分かってるよ、恭弥は群れるの嫌いだから、ツナ達と一緒には来ない……だけど1人でなんて…!』
「平気だよ。」
あやすように檸檬を抱き寄せ、髪を撫でる。
そして、ふと思いついたように言った。
「そうだ、これ……今、渡しておくよ。」
『へ?』
言葉と同時に、スッと檸檬の前髪に付けられたのは、銀色に光るヘアピンだった。
小さい花の飾りが、僅かに揺れる。
『これ…“あたし”が受け取っていいの?』
「いいよ。この時代の檸檬には、もう別のがあるから。」
『あ、ありがとっ…!嬉しい…///』
照れくさそうに笑う檸檬だが、ふっと表情を元に戻して。
『えと……あたしが言える事じゃないけど…その……無理しないでね…』
「何度でも言う、僕は大丈夫だよ。」
『でもっ…』
「君が死なない限り、僕は死なない。」
力強いその言葉に、檸檬は思わず雲雀を見上げた。
”根拠もないのに、絶対信頼出来る”
そんな気がして来るような恭弥の言葉に、目を見開くあたし。
すると恭弥はゆっくりと続きを口にし始めた。
「この時代の檸檬がミルフィオーレに捕まったって聞いた時、僕は本当に……後悔したよ。」
直後にあたしが入れ替わったから、結果として捕まってたのは数日間だけだったけど、
周りを心配させるには十分だったんだ…。
「けど、生きてるって分かったから……再会の希望が生まれたから………だから僕も進み続けた。」
『恭弥…』
強く、強く、抱きしめられて。
速く、速く、心臓が鼓動する。
「だから、死なないよ。この世界に檸檬がいる限り。」
『恭弥……恭弥ぁっ……』
また、泣いてしまった。
だって離れたくないから。
あたしだって、恭弥が大好きだから。
『あたしもっ…死なないっ……恭弥がいる限り…絶対負けないっ…!!』
「檸檬…」
『お互いがいる限り、2人で不死身!』
「…うん、そうだね。」
信じてる。
だから、信じて。
解かれる腕に名残惜しさを感じて、
向けられる背に心苦しさを覚えて、
だけど、それでも、
再会の希望で全部隠して。
『いってらっしゃい……気をつけてっ…!』
「うん……檸檬も。」
それから数時間後の日の出頃、事件は起きた。
ミルフィオーレの急襲が、確認されたのだった。
---
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-------------
「他にもカメラがあれば、破壊しろ。」
「了解!」
「始めるぞ。」
3隊に分かれてのボンゴレ地下アジト掘削作業が開始される。
入江の指示で、周辺道路は封鎖されていた。
「突入準備が整い次第、僕に繋いでくれ。」
「はっ。」
チェルベッロの返事を聞き、入江は一端研究室に戻る。
「蜜柑さんは、休まなくていいの?」
「さっき、眠ったから。」
「そっか…」
モニターから視線を外さないまま、蜜柑は静かに返事をする。
しかし入江が足を進めようとしたその時、引き止めるように呼びかけた。
「ねぇ入江君、」
「へ?」
「この突入…上手く行くといいわね。」
「え、あぁ、そうだね。」
蜜柑の口元が緩く上がっていたのを、入江は見逃さなかった。
が、大して気にも止めず、そのまま研究室へ戻った。
「(本当に…何を考えてるか分からない人だ……蜜柑さんは。)」
---
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雲間から日差しが差し始めた翌朝未明、それぞれの部隊はボンゴレアジトの天井部と思われる防壁を発見した。
その報告を受けた入江は、迷いも無く指示をする。
「これよりボンゴレアジトに攻撃を仕掛ける。カウント3で防壁を爆破し、一斉に突入せよ!!」
「了解!」
爆弾をセットする隊員。
そしてついに、カウントが始まる。
「3……2……1………爆破!!」
凄まじい爆発音と共に、空き地からは赤黒い煙が立ち上る。
そして各隊員の通信機には、入江の指示が。
「全隊突入!!!」
ロープを使ったり、そのまま穴に飛び込んだりと、大勢の隊員が一斉に煙の中へ突入して行く。
「ボンゴレリングの回収を優先せよ。守護者及びDARQは……生け捕りだ。」
-「抵抗する場合はいかがなさいますか。」
「………殺せ。」
-「了解!!」
そのやり取りを司令室の隅で聞いていた蜜柑は、怪しい笑みを浮かべる。
傍に立つ幻騎士がそれに気づき首を傾げると、蜜柑は入江に聞こえるように言った。
「ダークが無抵抗なんてあり得ないわ。見つかり次第、私に連絡して頂戴。」
「え、蜜柑さん……向かうつもりで?」
「勿論、見つかるまで行かないわ。私の任務はダークの捕獲のみ。」
「分かった、連絡が行くように手配する。」
そのやり取りを見たアフロの女は、蜜柑に向かって言う。
「随分と高いご身分だねぇ、LIGHT。6弔花でもないのにアタイらの大将に注文かい?」
「白蘭の命に従ってるだけ。」
「違うね、あんたはボスの命令を盾に身勝手に振る舞ってるだけさ。」
「私は固より、ダーク以外の輩に興味は無いわ。」
すると、第8部隊副隊長が口を出す。
「目的が何であれ、君はミルフィオーレの人間だ。今はココのボスに従うべきだろ?」
「そんな契約はしてないもの。」
「もう少し謙虚に振る舞った方がいいんじゃないかなぁ?内部で敵を増やすなんて、バカがやる事だよ。」
「そうだよライト、アタイ達はいつでもあんたを殺れる。」
「それは逆に…私がいつでも好きな時に、貴方達に銃口を向けていい……って事かしら?」
「2人とも、その辺にしておけ。蜜柑もだ。」
ついに幻騎士が仲裁に入り、3人は口を閉ざす。
しかし蜜柑は言い合っている間すら、片時もモニターから目を離さなかった。
---
------
一方、煙が晴れた地下室内。
侵入に成功し着地した隊員達は、器具も何も無いその空間に疑問を抱く。
「何だ、ココは…?」
「大広間か…?」
と、その時。
つい先ほど自分たちが爆破した穴が、鉄の格子で塞がれる。
「なっ、何だ?!」
戸惑う彼らの耳に響くは、格子の上を歩く1つの足音と……
「弱いばかりに群れをなし……」
見上げた先から落ちて来る、グロ・キシニアの発信器。
クロームの鞄に入れられていたハズのソレは、いつの間にか回収されていて。
「……咬み殺される、袋の鼠。」
紫色の炎を纏ったトンファーに、匣兵器の雲ハリネズミ。
「わ、罠だ!!」
戦闘準備を整えた雲雀が、鉄格子の上からミルフィオーレの部隊を見下ろしていた。
---
-----
「何なんだ!?」
突如起こされたツナ達5人は、着替えて集まり廊下を駆け抜けていた。
「出撃って……予定より早くない!?」
ツナの疑問に、モニタールームにいるジャンニーニとリボーンが答える。
-「敵の急襲です!!2キロ離れた倉庫予定地に大部隊が集合している模様。」
-「既に雲雀が向かってるぞ。」
「雲雀さんが!!?」
と、そこに。
『ごめんっ、遅くなって。』
「檸檬!!」
『着替えに手間取っちゃっただけ、大丈夫♪』
「檸檬がいるって事は…雲雀さん1人で!?敵は大勢いるんでしょ?俺たちも……」
「ならん!!」
前を走る了平さんが、ツナの言葉を遮る。
「それでは雲雀が体をはる意味がなくなる!!」
「え!?」
-「集中した敵の兵力を雲雀が一手に引き受ける事で、地上と敵アジトの戦力は手薄になるんだ。」
そう、だから……
引き止められなかった。
---「これ……今、渡しておくよ。」
ピンを渡されたあの時に、
恭弥が何をしようとしているか、何となく分かってしまったから。
どれくらいの時間か分からないけど、離ればなれになるんだって事を、察せてしまったから。
だからあたしも、あたしが行くべきトコへ行って、やるべき事をやる。
恭弥に負けないように、頑張る。
そう決めて、合流した。
-「雲雀の行動に報いたければ、殴り込みを成功させろ。」
恭弥はきっと、知っていた。
一番いい役を、持って行った。
それは、遠回しだけど最高の協力。
-「地上監視ポイントよりコースクリアの信号を確認!10代目!!今ならそのままFハッチよりルート312で敵アジトへ突っ切れます!!」
「ぐっ…」
仲間思いのツナだもん、苦渋の決断なんだよね?
だけど…
-「お前は雲雀の強さを知ってるだろ?ツナ。」
『恭弥、大丈夫だって言ってた。』
「………分かった、」
頼み込むように、祈るように歯を食いしばって、ツナは言った。
「開けてくれ、ジャンニーニ!!」
-「了解!!Fハッチ開口!!」
ジャンニーニの声に反応するかのように、1つの出口から光が差し込む。
それが希望の光か否かは、誰も分からない。
ツナ、獄寺、山本、了平、ラル、そして檸檬は、それぞれの覚悟を胸に今、そのゲートをくぐり抜けた。
「「「(いくぜ!!!)」」」
「%$#*!!」
『きゃっ!分かった分かった!追いかけっこしよっか♪』
「んなっ!檸檬っ!こんなトコで追いかけっこなんて……」
「元気だね、檸檬ちゃんとランボ君達。」
「そうですね♪」
「いやいやいや!まずいって!料理とかこぼしたらヤバいし…!」
『捕まえた♪』
「早っ!!」
夜襲
「じゃあ、おやすみ檸檬ちゃん。」
「おやすみなさい。」
『うん、おやすみ京子、ハル。』
さんざん檸檬と遊んで眠ってしまったランボとイーピンを抱え、京子とハルは部屋に戻っていく。
それを見送った後、檸檬は今度はツナ達に向かって挨拶した。
『じゃ、あたしも寝るね。明日は…大事な日だから。』
「うん…そうだね。」
「頑張ろーなっ!」
「この能天気が……」
山本を睨む獄寺にクスリと笑ってから、檸檬は雲雀のアジトの方へ足を進めた。
『おやすみ。』
「おやすみ檸檬。」
「おぅ…」
「おやすみ!」
そして、ボンゴレ地下アジトは、真夜中の静寂に包まれた。
一方でミルフィオーレの部隊が、闇の中を移動し始めた事も知らずに。
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ガリガリ…という妙な音が聞こえて、ツナは目を覚ました。
不思議に思って廊下に出てみると、山本とリボーンに遭遇する。
「ツナも聞こえたか?」
「うん。」
「どーやらアレみたいだな。」
リボーンが指差すその方向には……
「雲雀さんと、獄寺君の猫ーー!?」
「酔っぱらって僕のトコまで来たよ。」
黒い着流しに裸足のまま廊下をやって来た雲雀。
その手には、獄寺にちっとも懐いていなかった匣兵器の猫がいた。
ガリガリという音は、猫が壁を引っ掻いている音だったのだ。
「ああっ!てっきり匣に戻ってっかと……」
慌てて後から廊下に出て来た獄寺は、猫を叱りつける。
「何してやがったんだ、瓜!!」
「(変な名前つけてるーー!!)」
しかし雲雀が手を放したその瞬間、
「んげぇ!!」
瓜は獄寺の顔に飛びつき、顔を引っ掻き始めた。
未だ懐いてないその光景に、ツナは少し苦笑する。
すると雲雀は仕込みトンファーをスッと構えて。
「君達…風紀を乱すとどうなるか、知ってる?」
「おっ、おい!」
「てめっ…」
「ごめんなさい!!」
しかし何もしないままトンファーをしまい、欠伸を一つ。
「……眠い…今度ね。」
自分のアジトの方へ戻ろうとする雲雀だったが、獄寺が引き止める。
「ま、待て雲雀!!あ、あんがとな……いずれこの借りは返す…ぜ。」
「期待せずに待つよ、獄寺隼人。」
「なっ、期待せずだと!?」
すると今度はツナが。
「あ、雲雀さん!明日…一緒に頑張りましょうね。」
「……嫌だ。」
その返答に驚く3人に、雲雀は言う。
「僕は死んでも君達と群れたり、一緒に戦ったりしない………強いからね。」
そして最後に「おやすみ」と言って戻って行く。
10年前と変わらないその言動に山本は笑い、獄寺はツナに頭を下げた。
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キィ…
「ん…?」
戻る途中、通りかかった部屋のドアが音を立て、雲雀は振り向いた。
開いたドアの中から顔を出したのは、眠っていたハズの檸檬。
「どしたの?隣の部屋には哲が…」
『違うの、恭弥……』
タタッと駆け寄り雲雀の前に立った檸檬は、小さく尋ねた。
『恭弥………行っちゃうの…?』
「檸檬……」
『分かってるよ、恭弥は群れるの嫌いだから、ツナ達と一緒には来ない……だけど1人でなんて…!』
「平気だよ。」
あやすように檸檬を抱き寄せ、髪を撫でる。
そして、ふと思いついたように言った。
「そうだ、これ……今、渡しておくよ。」
『へ?』
言葉と同時に、スッと檸檬の前髪に付けられたのは、銀色に光るヘアピンだった。
小さい花の飾りが、僅かに揺れる。
『これ…“あたし”が受け取っていいの?』
「いいよ。この時代の檸檬には、もう別のがあるから。」
『あ、ありがとっ…!嬉しい…///』
照れくさそうに笑う檸檬だが、ふっと表情を元に戻して。
『えと……あたしが言える事じゃないけど…その……無理しないでね…』
「何度でも言う、僕は大丈夫だよ。」
『でもっ…』
「君が死なない限り、僕は死なない。」
力強いその言葉に、檸檬は思わず雲雀を見上げた。
”根拠もないのに、絶対信頼出来る”
そんな気がして来るような恭弥の言葉に、目を見開くあたし。
すると恭弥はゆっくりと続きを口にし始めた。
「この時代の檸檬がミルフィオーレに捕まったって聞いた時、僕は本当に……後悔したよ。」
直後にあたしが入れ替わったから、結果として捕まってたのは数日間だけだったけど、
周りを心配させるには十分だったんだ…。
「けど、生きてるって分かったから……再会の希望が生まれたから………だから僕も進み続けた。」
『恭弥…』
強く、強く、抱きしめられて。
速く、速く、心臓が鼓動する。
「だから、死なないよ。この世界に檸檬がいる限り。」
『恭弥……恭弥ぁっ……』
また、泣いてしまった。
だって離れたくないから。
あたしだって、恭弥が大好きだから。
『あたしもっ…死なないっ……恭弥がいる限り…絶対負けないっ…!!』
「檸檬…」
『お互いがいる限り、2人で不死身!』
「…うん、そうだね。」
信じてる。
だから、信じて。
解かれる腕に名残惜しさを感じて、
向けられる背に心苦しさを覚えて、
だけど、それでも、
再会の希望で全部隠して。
『いってらっしゃい……気をつけてっ…!』
「うん……檸檬も。」
それから数時間後の日の出頃、事件は起きた。
ミルフィオーレの急襲が、確認されたのだった。
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「他にもカメラがあれば、破壊しろ。」
「了解!」
「始めるぞ。」
3隊に分かれてのボンゴレ地下アジト掘削作業が開始される。
入江の指示で、周辺道路は封鎖されていた。
「突入準備が整い次第、僕に繋いでくれ。」
「はっ。」
チェルベッロの返事を聞き、入江は一端研究室に戻る。
「蜜柑さんは、休まなくていいの?」
「さっき、眠ったから。」
「そっか…」
モニターから視線を外さないまま、蜜柑は静かに返事をする。
しかし入江が足を進めようとしたその時、引き止めるように呼びかけた。
「ねぇ入江君、」
「へ?」
「この突入…上手く行くといいわね。」
「え、あぁ、そうだね。」
蜜柑の口元が緩く上がっていたのを、入江は見逃さなかった。
が、大して気にも止めず、そのまま研究室へ戻った。
「(本当に…何を考えてるか分からない人だ……蜜柑さんは。)」
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雲間から日差しが差し始めた翌朝未明、それぞれの部隊はボンゴレアジトの天井部と思われる防壁を発見した。
その報告を受けた入江は、迷いも無く指示をする。
「これよりボンゴレアジトに攻撃を仕掛ける。カウント3で防壁を爆破し、一斉に突入せよ!!」
「了解!」
爆弾をセットする隊員。
そしてついに、カウントが始まる。
「3……2……1………爆破!!」
凄まじい爆発音と共に、空き地からは赤黒い煙が立ち上る。
そして各隊員の通信機には、入江の指示が。
「全隊突入!!!」
ロープを使ったり、そのまま穴に飛び込んだりと、大勢の隊員が一斉に煙の中へ突入して行く。
「ボンゴレリングの回収を優先せよ。守護者及びDARQは……生け捕りだ。」
-「抵抗する場合はいかがなさいますか。」
「………殺せ。」
-「了解!!」
そのやり取りを司令室の隅で聞いていた蜜柑は、怪しい笑みを浮かべる。
傍に立つ幻騎士がそれに気づき首を傾げると、蜜柑は入江に聞こえるように言った。
「ダークが無抵抗なんてあり得ないわ。見つかり次第、私に連絡して頂戴。」
「え、蜜柑さん……向かうつもりで?」
「勿論、見つかるまで行かないわ。私の任務はダークの捕獲のみ。」
「分かった、連絡が行くように手配する。」
そのやり取りを見たアフロの女は、蜜柑に向かって言う。
「随分と高いご身分だねぇ、LIGHT。6弔花でもないのにアタイらの大将に注文かい?」
「白蘭の命に従ってるだけ。」
「違うね、あんたはボスの命令を盾に身勝手に振る舞ってるだけさ。」
「私は固より、ダーク以外の輩に興味は無いわ。」
すると、第8部隊副隊長が口を出す。
「目的が何であれ、君はミルフィオーレの人間だ。今はココのボスに従うべきだろ?」
「そんな契約はしてないもの。」
「もう少し謙虚に振る舞った方がいいんじゃないかなぁ?内部で敵を増やすなんて、バカがやる事だよ。」
「そうだよライト、アタイ達はいつでもあんたを殺れる。」
「それは逆に…私がいつでも好きな時に、貴方達に銃口を向けていい……って事かしら?」
「2人とも、その辺にしておけ。蜜柑もだ。」
ついに幻騎士が仲裁に入り、3人は口を閉ざす。
しかし蜜柑は言い合っている間すら、片時もモニターから目を離さなかった。
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一方、煙が晴れた地下室内。
侵入に成功し着地した隊員達は、器具も何も無いその空間に疑問を抱く。
「何だ、ココは…?」
「大広間か…?」
と、その時。
つい先ほど自分たちが爆破した穴が、鉄の格子で塞がれる。
「なっ、何だ?!」
戸惑う彼らの耳に響くは、格子の上を歩く1つの足音と……
「弱いばかりに群れをなし……」
見上げた先から落ちて来る、グロ・キシニアの発信器。
クロームの鞄に入れられていたハズのソレは、いつの間にか回収されていて。
「……咬み殺される、袋の鼠。」
紫色の炎を纏ったトンファーに、匣兵器の雲ハリネズミ。
「わ、罠だ!!」
戦闘準備を整えた雲雀が、鉄格子の上からミルフィオーレの部隊を見下ろしていた。
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「何なんだ!?」
突如起こされたツナ達5人は、着替えて集まり廊下を駆け抜けていた。
「出撃って……予定より早くない!?」
ツナの疑問に、モニタールームにいるジャンニーニとリボーンが答える。
-「敵の急襲です!!2キロ離れた倉庫予定地に大部隊が集合している模様。」
-「既に雲雀が向かってるぞ。」
「雲雀さんが!!?」
と、そこに。
『ごめんっ、遅くなって。』
「檸檬!!」
『着替えに手間取っちゃっただけ、大丈夫♪』
「檸檬がいるって事は…雲雀さん1人で!?敵は大勢いるんでしょ?俺たちも……」
「ならん!!」
前を走る了平さんが、ツナの言葉を遮る。
「それでは雲雀が体をはる意味がなくなる!!」
「え!?」
-「集中した敵の兵力を雲雀が一手に引き受ける事で、地上と敵アジトの戦力は手薄になるんだ。」
そう、だから……
引き止められなかった。
---「これ……今、渡しておくよ。」
ピンを渡されたあの時に、
恭弥が何をしようとしているか、何となく分かってしまったから。
どれくらいの時間か分からないけど、離ればなれになるんだって事を、察せてしまったから。
だからあたしも、あたしが行くべきトコへ行って、やるべき事をやる。
恭弥に負けないように、頑張る。
そう決めて、合流した。
-「雲雀の行動に報いたければ、殴り込みを成功させろ。」
恭弥はきっと、知っていた。
一番いい役を、持って行った。
それは、遠回しだけど最高の協力。
-「地上監視ポイントよりコースクリアの信号を確認!10代目!!今ならそのままFハッチよりルート312で敵アジトへ突っ切れます!!」
「ぐっ…」
仲間思いのツナだもん、苦渋の決断なんだよね?
だけど…
-「お前は雲雀の強さを知ってるだろ?ツナ。」
『恭弥、大丈夫だって言ってた。』
「………分かった、」
頼み込むように、祈るように歯を食いしばって、ツナは言った。
「開けてくれ、ジャンニーニ!!」
-「了解!!Fハッチ開口!!」
ジャンニーニの声に反応するかのように、1つの出口から光が差し込む。
それが希望の光か否かは、誰も分からない。
ツナ、獄寺、山本、了平、ラル、そして檸檬は、それぞれの覚悟を胸に今、そのゲートをくぐり抜けた。
「「「(いくぜ!!!)」」」