未来編①
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恭弥のアジトのサーバーに送られて来たメローネ基地の図面。
そのうちの1つ、白くて丸い装置をツナが見た事あるって言うから吃驚。
「これの前に……入江正一がいた………」
「なっ……入江正一だと!?」
『ホントにっ!?』
ツナが口にしたのは、紛れもなく今回の潜入作戦のターゲットとなる人物。
あたし達が過去に戻る為の鍵を持っているかもしれない人物。
「ツナ兄、何処で見たの!?」
「資料室か何かスか!?」
身を乗り出して尋ねるフゥ太君と隼人に、ツナは少し躊躇いがちに答えた。
「それが……ゆ、夢でなんだけど……」
『え……?』
あたしは思わずキョトンとした。
と、反対にラルはツナに怒鳴る。
「ふざけているのか沢田!!」
「ひいっ!すいません、そんなつもりは!!」
「で?」
ラルに謝るツナを見て、リボーンは冷静に問いかけた。
他には何を見たのか、と。
ツナは、誰かと一緒にこの装置を見てたそうだ。
その“誰か”には装置の中身が見えていたようで、どうやら大事な物らしい。
「案外この白くて丸い装置が、全ての謎を解く鍵を握ってるのかもな。」
『え!?』
「正気かリボーン!たかが夢だぞ!!」
「いーじゃねーか、重要な装置である以上、ターゲットにして損は無ぇはずだ。それに…神経が研ぎすまされてるとこういう不思議な事があるもんだ。」
『(あ……)』
そう言われてみれば、そうなのかも知れない。
夢で見た内容を、夢だからと蔑ろにするべきじゃない。
---『{同じ過ちを…繰り返さないで……}』
あたしも、あの言葉を信じて今歩んでる。
聞けばリボーンも、おしゃぶりを手に入れた時に同じような事を経験したらしいんだけど……
「よし山本、俺達は修業を再開すんぞ。今んトコお前が1番遅れてるみてーだからな。」
「ん?あぁ、オッケ!」
話が一区切りした所で、リボーンは武と行ってしまった。
おしゃぶりを手に入れた時の事……
ツナも気になったみたいでラルに尋ねたけど、ラルは何も話そうとしなかった。
ってゆーか……
『あたしも!修業戻らなくっちゃ!!』
「え?檸檬……」
『もうちょっとで、追いつけそうなんだ。』
立ち上がってそう言うと、ツナは首を傾げ、隼人は疑問をふっかける。
「追いつくって…誰にだよ。」
『未来のあたしっ♪』
勿論、視界まで失う気は無いけど。
でもやっぱり、あたしの最終目標は……
第六感を完成させた未来のあたし自身だから。
『行って来るねー♪』
「あ、気をつけて!無茶しないでね!」
『了解っ!』
ツナはホントに優しいなぁと思いながら、作戦室を飛び出した。
---
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-------------
地下10階、山本の修業場。
一羽のツバメが、大きな波のような雨の炎を伴いながらリボーンに向かって突っ込んでいく。
素早い移動を繰り返しながら、何の躊躇いも無くツバメに向かっていくリボーン。
その波の中には、剣を構えて彼を待つ山本が。
キラリと鋭い眼光を一瞬見せ、右サイドに現れたリボーンに刀を振るう。
が、難なくその太刀は防がれる。
そして…
ズガガガ!
「なっ!!わわっ!」
次の瞬間にはペイント弾の嵐。
至近距離からの弾に、山本は尻餅をついた。
「そりゃーねーよ……いい手だと思ったんだけどな。」
「ああ、今のは良かったぞ。ちっと俺も本気になっちまった。」
「よく言うぜ、まだまだ余裕って感じだったぞー。にしても、ホント強ぇよな小僧!いつだったか、檸檬も“あの銃弾は避けられない”っつってたし。」
「あたりめーだろ?俺は世界最強のヒットマンだからな。」
自信たっぷりに言うリボーンに、山本は笑いながら“いつ鍛えたのか”と尋ねる。
するとリボーンはハットの下の瞳を光らせ、
「赤ん坊になる前だ」と。
その言葉に疑問符を浮かべる山本。
しかし、この話の続きは修業が終わった後だと約束してある。
ちなみに、今の手合わせで匣と炎と時雨金時の基本的な扱いは合格。
次の段階は、山本の剣士としての力をより高める為の修業……
「こいつを解禁するぞ。」
2代目剣帝より
「剣帝への道…?」
リボーンが取り出した箱には、デカデカとそう書かれていた。
剣帝とは、かつてのヴァリアーのボスであり、スクアーロが倒した男・テュールの事。
そしてこの箱は……
「リング争奪戦後に誕生した2代目剣帝がその座を不動のものとするまでの記録ビデオだ。」
「2代目?」
「映るぞ。」
ジャジャーン、という効果音と共にディスプレイに映ったのは、
“恐怖・剣帝への道 1人目 vs劉雲”という文字と、
ルッスーリアのイラスト。
そして画面が切り替わり、荒野に立つ2人の剣士が。
--「う"お"ぉい!!こねーなら行くぞぉ!!!」
「す…スクアーロ!!」
リボーンによると、このビデオはスクアーロが2代目剣帝を名乗る為に自分に課した100番勝負を記録したものだそうだ。
そして、自慢の為に…と大リーグを目指す10年後山本に送られていたと。
「勿論本心は違うだろーがな。スクアーロは誰よりお前の剣の才を見抜き、買っていた。だから自分の秘剣を映像に残してまでお前を剣の道に引きずり込もうと………」
--「とばすぜぇ!!!」
リボーンの言葉は途切れた。
山本は既に、そのビデオに見入っていたのだ。
その様子を見て、3日後に抜き打ちテストをやると言う。
一太刀でも決められたら合格だ、と。
「お前は世界一のヒットマンに鍛えられたんだ。自信を持って剣を極めろよ。」
「そっか、そーだな!よーし、合格したら小僧の秘密、教えてくれよ!」
「あぁ、約束だからな。」
そして山本は、リボーンが去った後もビデオを見続けた。
---
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同じ頃、雲雀のアジトにて。
『さて、と。』
ノートの内容に一通り目を通して、恭弥から渡された一本のナイフを見つめる。
やっぱり同じ型で、同じ重さ。
だけど……
『(第六感、発動…!)』
波長として視れば、その本質が分かる。
電子レベルで視てみれば、普通のナイフとの違いが分かる。
未来の檸檬が、何でわざわざ同じ型のナイフを大切にしまって、一本だけ恭弥に預けていたのか。
その理由が、きっと分かる。
『あ……!』
このナイフ…構成分子が違う!!
第六感を解除して、考える。
普通の金属じゃないって事は……もしかして。
『(やっぱり、試してみなくちゃ始まらないか。)』
立ち上がって、あたしは部屋を出た。
---
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『あの…恭弥、いる?』
「檸檬?」
返事を聞いて、和室の襖をそうっと開ける。
恭弥はヒバードにエサをあげてた。
「どうかした?」
『実はね、試してみたい事があって……第六感の、事なんだけど………』
恐る恐る顔色を窺ってみる。
だって恭弥はまだ、あたしが第六感使うの嫌ってるし。
実際さっき、修業の延長で頭痛引き起こしたワケだし。
「………そのナイフ、」
『あ、うん。もしかしたらコレ、炎を灯しやすい素材で出来てるんじゃないかって。』
「やっぱり、普通と違う物なんだね。」
『うんっ。だからね恭弥、1つだけ…頼んでいい?』
「何?」
あたしが進むべき第五段階。
それは……“波長による炎の奪取”。
試すには、修業するには、炎が必要不可欠。
だけどあたしはリングが使えないから、自分1人でやるなんて不可能で……
だから…………
『お願い!あたしに、雲ハリネズミを放って!!』
「檸檬、それって……」
『リング割れるくらいの炎は出さなくていいから……えっと…炎を奪取できるか試してみたいの。それで…』
出来るか分からない。
許してもらえるかも分からない。
だけど。
『最終的にはあたし………炎を奪って、動きを止める。』
きっとそれが、未来の檸檬が使っていた戦法。
相手の炎を奪っていたってゆーのは、すなわち、
匣兵器の動きを封じるという事。
あたしがその炎を使うという事。
“近づいてる”
そう、思った。
檸檬は確実に、未来の檸檬に近づきつつある。
炎を奪う戦法……それは、匣同士の戦いにおける第六感の最も有効な使用法。
僕も何回か見た事がある。
炎を奪うだけじゃない、檸檬はそれを使って………
「……分かった。」
『ほ、ホントっ!?』
「ただし、一日3回までだよ。」
『えーっ、少ない!せめて5回!!』
「ダメ。」
『ケチーっ。』
今の檸檬の様子からして、この檸檬はまだ“あの存在”を知らない。
檸檬、本当に君は……ずる賢いよ。
大体の見当はつくけど、“何が何処に預けてあるのか”、“何処にヒントを散りばめたのか”、僕ですらきちんと把握できてないんだ。
でも君は、確実に“この檸檬”を導いてる。
訪れて欲しくない“あの日”に。
---『いやあああああ!!!』
---「檸檬……檸檬っ…!?」
---『だい…じょ、ぶ………ちゃんと、視えるよ…』
『……や、……恭弥…?』
「あぁ、今から?」
『大丈夫?ボーッとして……あ、具合悪いなら別に…』
「平気だよ。」
君の痛みに比べたら、僕のなんて。
ただ、そこに居る事しか出来なかった、
その無力さを感じていただけだから。
それでも、やっぱり---
『恭弥っ…!?///』
目の前の檸檬を、咄嗟に抱き寄せた。
まだ、温かい。
まだ、手が届く。
まだ、ココにいる。
「家庭教師代、もらうよ。」
『え!?い、いくら…?』
「今、もらってる。」
『なっ、何言ってんのよ~っ!!///』
君をまた、失うのは怖いから。
同じように、立ってるだけは嫌だから。
あの未来は、避けたいから。
「………痛いんだ…」
『え…?』
君を失った“あの日”に思いを馳せると、
痛くて仕方無いんだよ、檸檬。
『恭弥、あのね…』
僕の背を摩りながら、檸檬は小さく言った。
『あたし……ココにいるよ。ずっとずーっと、恭弥の隣に。』
「檸檬…」
『いるよ、ってゆーか……いたいなー、って願ってるだけなんだけど、さ!』
背を摩っていた手は、いつの間にか僕を抱きしめ返していて。
『だから、無理しない。視界も第六感も、ちゃんとキープするもんっ♪』
“目がダメになったら、皆から離れなくちゃいけないからさー”と、震える声で明るく言う檸檬。
「……心配いらないよ。」
『え?』
君には、いつも驚かされるね。
ココにいる檸檬は、僕の見て来た未来の檸檬じゃない。
同じ道を歩んでいても、違う意志を持って違う決意をしてる。
「そうならない為に、僕は側にいるんだから。」
『恭弥……///』
だから、少しだけ信じていいかな…?
僕が辿り着いた結末とは違う場所へ、
この檸檬が導いてくれる……って。
未来の檸檬は、
この檸檬を違う方向へ進ませる為に、書類を残したんだって。
「さぁ、始めようか。」
『うんっ!ありがと恭弥っ♪』
---
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「えーっと、次のディスクは……コレか!」
1人、剣帝への道ビデオを見てひたすら剣技を学ぶ山本。
と言っても、スクアーロはやはり強い為、短時間で勝負がつく試合が多かった。
そして今、10番目のディスクを読み込ませる。
ジャジャーン、という効果音に対戦相手の名前、そしてお決まりとなったルッスーリアのイラストが映る。
そして…
--「はいは~い♪100番勝負も早くも10試合目!どう?私ちゃんと映ってるかしら~?」
--「う"お"ぉい!!てめーは映ってなくてもいんだよ!!」
--「あら酷ーい!ホントに人使いが荒いのね、スクってば。」
--「黙れぇ!!」
「……何か、随分と前置き長くね?」
山本が試合開始まで早送りしようとした、その時。
ルッスーリアが得意気に言った。
--「スクー、今回は記念すべき10試合目でしょ?」
--「あ"ぁ?それがどぉしたぁ。」
--「スペシャルゲストがいるのよん♪」
--「な"っ……!」
「ゲスト?」
ガラリと変わったスクアーロの表情に、首を傾げる山本。
と、今まで無かった声が聞こえて来た。
--『やっほー!アロちゃんっ♪』
--「う"お"っ…!」
スクアーロが驚いた理由が、山本にも分かった。
カメラの前に現れたのは……
--「な、何でいんだよ檸檬!!」
--「私が呼んだのvV」
--『アロちゃん、試合頑張ってるって聞いたからー♪』
未来に来てすぐ、少しだけ会話した未来の檸檬。
少し高くなった背、
ひゅるっと伸びて束ねてある後ろ髪、
そして大人びた声。
黒いスーツと白いブーツもそのままだ。
「10年後の檸檬…!!」
--「というワケで、頑張ってねスク~♪」
--『こっから応援してるよっ!』
--「うるせぇ!言われなくても叩っ斬る!!」
有言実行、スクアーロはそのまま10人目の相手を難なく倒した。
その剣技に「やっぱすげぇな」と山本が感心していると…
--『アロちゃーんっ!』
--「う"お"ぉ!!」
いきなり檸檬がナイフを持ってスクアーロに斬り掛かる。
--「な、なな何しやがんだぁ!!」
--『えー、だってー…あたしも100人斬りの相手になれないかなーって。』
--「ばっ…檸檬が入っちまったら……///」
--『ん?』
目をパチクリする檸檬に、ルッスーリアが付け足す。
--「その時点でスクの負け決定だものvV」
--「だっ、黙れぇ!!///」
--『あ、そっか。』
--「納得すんじゃねぇーー!!!」
「………ぷっ、」
まるで、何かのホームビデオでも見ているような感覚。
剣帝への道なんていう緊迫した空気はそこに無く。
「ホント、すげーよな……檸檬は。」
あらゆる状況において、その笑顔で明るい雰囲気を作り出す彼女の姿に、山本は笑みをこぼした。
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ドシュゥゥゥ…
迫り来るハリネズミを、檸檬はナイフ一本のみ構え見据える。
『(発動っ!)』
父譲りのリズム感のおかげか、タイミングは完璧に掴める。
そして母譲りの第六感を使い、ナイフを振るった。
シュッ、
「……キュウゥッ…!」
檸檬とハリネズミがすれ違った、次の瞬間。
ハリネズミは途端に最小サイズへと収縮し、
ナイフには綺麗な紫の炎が灯った。
『どうっ!?』
ナイフに炎が灯ったのを確認した檸檬は、ハリネズミの方を向く。
と、ちょうど雲雀がハリネズミを匣にしまっていた。
『ハリネズミちゃん、どうなった!?』
「うん、収縮したよ。」
『って事は……』
「炎、ちゃんと奪えたみたいだね。」
そう言って雲雀が微笑すると、檸檬は顔をパアッと輝かせる。
『やったーっ!!』
ピョイピョイ飛び跳ねる檸檬に、雲雀は問う。
「で、ナイフの違いは分かったの。」
『え?あ、うんっ!やっぱり、未来のあたしが使ってたナイフの方が、炎が長持ちするみたい。』
「…ほんの数秒でしょ?」
『数秒でも、あたしには大きな差なのっ。』
あたしの第六感は、ノンストップで発動出来る時間が限られてる。
この制限を超えてしまえば、リバウンドまでの持続時間が短くなってしまう。
炎を数秒でも長くキープしていられれば、その時間は発動しなくてもいいって事になるから……
『つまりは、休み時間が増えるって事♪』
「ふぅん…」
『んじゃ、一端区切るよ。付き合ってくれてありがと、恭弥♪』
「別に。」
恭弥にもう1度お礼を言って、あたしは部屋に戻った。
今の修業で分かった事、ちゃんとメモっておかなくちゃ。
それに、未来のあたしが残した書類の内容と照らし合わせるのも重要なコト。
『(これで何とか、殴り込みの時までに完成すればいーんだけど……)』
第五段階が終了すれば、一段落つく。
というか、ちゃんと分かりやすく纏めてあるのはココまで。
あとはあたし自身が独学で習得しなくちゃいけない。
奪った炎をどうするのか、
あたしは匣無しで戦えるのか、
色んな事が、まだぐちゃぐちゃしてる。
『んー………ちょっと休もうっと。』
大きな背伸びを一つして、あたしはベッドに寝転がった。
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3日後。
予告無く現れ、そうっと扉を開いたリボーンに、雨ツバメによる波が押し寄せる。
そして……
「(時雨蒼燕流 特式十の型……)」
それは、リング争奪戦でスクアーロが見せたような、剣撃。
抉られていく水の道の中心を、山本が駆けて来る。
「(……燕特攻!!!)」
(スコントロ・ディ・ローンディネ)
山本に向かっていき、交差して着地したリボーン。
そのハットが、大きく裂けた。
「合格だぞ。」
そのうちの1つ、白くて丸い装置をツナが見た事あるって言うから吃驚。
「これの前に……入江正一がいた………」
「なっ……入江正一だと!?」
『ホントにっ!?』
ツナが口にしたのは、紛れもなく今回の潜入作戦のターゲットとなる人物。
あたし達が過去に戻る為の鍵を持っているかもしれない人物。
「ツナ兄、何処で見たの!?」
「資料室か何かスか!?」
身を乗り出して尋ねるフゥ太君と隼人に、ツナは少し躊躇いがちに答えた。
「それが……ゆ、夢でなんだけど……」
『え……?』
あたしは思わずキョトンとした。
と、反対にラルはツナに怒鳴る。
「ふざけているのか沢田!!」
「ひいっ!すいません、そんなつもりは!!」
「で?」
ラルに謝るツナを見て、リボーンは冷静に問いかけた。
他には何を見たのか、と。
ツナは、誰かと一緒にこの装置を見てたそうだ。
その“誰か”には装置の中身が見えていたようで、どうやら大事な物らしい。
「案外この白くて丸い装置が、全ての謎を解く鍵を握ってるのかもな。」
『え!?』
「正気かリボーン!たかが夢だぞ!!」
「いーじゃねーか、重要な装置である以上、ターゲットにして損は無ぇはずだ。それに…神経が研ぎすまされてるとこういう不思議な事があるもんだ。」
『(あ……)』
そう言われてみれば、そうなのかも知れない。
夢で見た内容を、夢だからと蔑ろにするべきじゃない。
---『{同じ過ちを…繰り返さないで……}』
あたしも、あの言葉を信じて今歩んでる。
聞けばリボーンも、おしゃぶりを手に入れた時に同じような事を経験したらしいんだけど……
「よし山本、俺達は修業を再開すんぞ。今んトコお前が1番遅れてるみてーだからな。」
「ん?あぁ、オッケ!」
話が一区切りした所で、リボーンは武と行ってしまった。
おしゃぶりを手に入れた時の事……
ツナも気になったみたいでラルに尋ねたけど、ラルは何も話そうとしなかった。
ってゆーか……
『あたしも!修業戻らなくっちゃ!!』
「え?檸檬……」
『もうちょっとで、追いつけそうなんだ。』
立ち上がってそう言うと、ツナは首を傾げ、隼人は疑問をふっかける。
「追いつくって…誰にだよ。」
『未来のあたしっ♪』
勿論、視界まで失う気は無いけど。
でもやっぱり、あたしの最終目標は……
第六感を完成させた未来のあたし自身だから。
『行って来るねー♪』
「あ、気をつけて!無茶しないでね!」
『了解っ!』
ツナはホントに優しいなぁと思いながら、作戦室を飛び出した。
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地下10階、山本の修業場。
一羽のツバメが、大きな波のような雨の炎を伴いながらリボーンに向かって突っ込んでいく。
素早い移動を繰り返しながら、何の躊躇いも無くツバメに向かっていくリボーン。
その波の中には、剣を構えて彼を待つ山本が。
キラリと鋭い眼光を一瞬見せ、右サイドに現れたリボーンに刀を振るう。
が、難なくその太刀は防がれる。
そして…
ズガガガ!
「なっ!!わわっ!」
次の瞬間にはペイント弾の嵐。
至近距離からの弾に、山本は尻餅をついた。
「そりゃーねーよ……いい手だと思ったんだけどな。」
「ああ、今のは良かったぞ。ちっと俺も本気になっちまった。」
「よく言うぜ、まだまだ余裕って感じだったぞー。にしても、ホント強ぇよな小僧!いつだったか、檸檬も“あの銃弾は避けられない”っつってたし。」
「あたりめーだろ?俺は世界最強のヒットマンだからな。」
自信たっぷりに言うリボーンに、山本は笑いながら“いつ鍛えたのか”と尋ねる。
するとリボーンはハットの下の瞳を光らせ、
「赤ん坊になる前だ」と。
その言葉に疑問符を浮かべる山本。
しかし、この話の続きは修業が終わった後だと約束してある。
ちなみに、今の手合わせで匣と炎と時雨金時の基本的な扱いは合格。
次の段階は、山本の剣士としての力をより高める為の修業……
「こいつを解禁するぞ。」
2代目剣帝より
「剣帝への道…?」
リボーンが取り出した箱には、デカデカとそう書かれていた。
剣帝とは、かつてのヴァリアーのボスであり、スクアーロが倒した男・テュールの事。
そしてこの箱は……
「リング争奪戦後に誕生した2代目剣帝がその座を不動のものとするまでの記録ビデオだ。」
「2代目?」
「映るぞ。」
ジャジャーン、という効果音と共にディスプレイに映ったのは、
“恐怖・剣帝への道 1人目 vs劉雲”という文字と、
ルッスーリアのイラスト。
そして画面が切り替わり、荒野に立つ2人の剣士が。
--「う"お"ぉい!!こねーなら行くぞぉ!!!」
「す…スクアーロ!!」
リボーンによると、このビデオはスクアーロが2代目剣帝を名乗る為に自分に課した100番勝負を記録したものだそうだ。
そして、自慢の為に…と大リーグを目指す10年後山本に送られていたと。
「勿論本心は違うだろーがな。スクアーロは誰よりお前の剣の才を見抜き、買っていた。だから自分の秘剣を映像に残してまでお前を剣の道に引きずり込もうと………」
--「とばすぜぇ!!!」
リボーンの言葉は途切れた。
山本は既に、そのビデオに見入っていたのだ。
その様子を見て、3日後に抜き打ちテストをやると言う。
一太刀でも決められたら合格だ、と。
「お前は世界一のヒットマンに鍛えられたんだ。自信を持って剣を極めろよ。」
「そっか、そーだな!よーし、合格したら小僧の秘密、教えてくれよ!」
「あぁ、約束だからな。」
そして山本は、リボーンが去った後もビデオを見続けた。
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同じ頃、雲雀のアジトにて。
『さて、と。』
ノートの内容に一通り目を通して、恭弥から渡された一本のナイフを見つめる。
やっぱり同じ型で、同じ重さ。
だけど……
『(第六感、発動…!)』
波長として視れば、その本質が分かる。
電子レベルで視てみれば、普通のナイフとの違いが分かる。
未来の檸檬が、何でわざわざ同じ型のナイフを大切にしまって、一本だけ恭弥に預けていたのか。
その理由が、きっと分かる。
『あ……!』
このナイフ…構成分子が違う!!
第六感を解除して、考える。
普通の金属じゃないって事は……もしかして。
『(やっぱり、試してみなくちゃ始まらないか。)』
立ち上がって、あたしは部屋を出た。
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『あの…恭弥、いる?』
「檸檬?」
返事を聞いて、和室の襖をそうっと開ける。
恭弥はヒバードにエサをあげてた。
「どうかした?」
『実はね、試してみたい事があって……第六感の、事なんだけど………』
恐る恐る顔色を窺ってみる。
だって恭弥はまだ、あたしが第六感使うの嫌ってるし。
実際さっき、修業の延長で頭痛引き起こしたワケだし。
「………そのナイフ、」
『あ、うん。もしかしたらコレ、炎を灯しやすい素材で出来てるんじゃないかって。』
「やっぱり、普通と違う物なんだね。」
『うんっ。だからね恭弥、1つだけ…頼んでいい?』
「何?」
あたしが進むべき第五段階。
それは……“波長による炎の奪取”。
試すには、修業するには、炎が必要不可欠。
だけどあたしはリングが使えないから、自分1人でやるなんて不可能で……
だから…………
『お願い!あたしに、雲ハリネズミを放って!!』
「檸檬、それって……」
『リング割れるくらいの炎は出さなくていいから……えっと…炎を奪取できるか試してみたいの。それで…』
出来るか分からない。
許してもらえるかも分からない。
だけど。
『最終的にはあたし………炎を奪って、動きを止める。』
きっとそれが、未来の檸檬が使っていた戦法。
相手の炎を奪っていたってゆーのは、すなわち、
匣兵器の動きを封じるという事。
あたしがその炎を使うという事。
“近づいてる”
そう、思った。
檸檬は確実に、未来の檸檬に近づきつつある。
炎を奪う戦法……それは、匣同士の戦いにおける第六感の最も有効な使用法。
僕も何回か見た事がある。
炎を奪うだけじゃない、檸檬はそれを使って………
「……分かった。」
『ほ、ホントっ!?』
「ただし、一日3回までだよ。」
『えーっ、少ない!せめて5回!!』
「ダメ。」
『ケチーっ。』
今の檸檬の様子からして、この檸檬はまだ“あの存在”を知らない。
檸檬、本当に君は……ずる賢いよ。
大体の見当はつくけど、“何が何処に預けてあるのか”、“何処にヒントを散りばめたのか”、僕ですらきちんと把握できてないんだ。
でも君は、確実に“この檸檬”を導いてる。
訪れて欲しくない“あの日”に。
---『いやあああああ!!!』
---「檸檬……檸檬っ…!?」
---『だい…じょ、ぶ………ちゃんと、視えるよ…』
『……や、……恭弥…?』
「あぁ、今から?」
『大丈夫?ボーッとして……あ、具合悪いなら別に…』
「平気だよ。」
君の痛みに比べたら、僕のなんて。
ただ、そこに居る事しか出来なかった、
その無力さを感じていただけだから。
それでも、やっぱり---
『恭弥っ…!?///』
目の前の檸檬を、咄嗟に抱き寄せた。
まだ、温かい。
まだ、手が届く。
まだ、ココにいる。
「家庭教師代、もらうよ。」
『え!?い、いくら…?』
「今、もらってる。」
『なっ、何言ってんのよ~っ!!///』
君をまた、失うのは怖いから。
同じように、立ってるだけは嫌だから。
あの未来は、避けたいから。
「………痛いんだ…」
『え…?』
君を失った“あの日”に思いを馳せると、
痛くて仕方無いんだよ、檸檬。
『恭弥、あのね…』
僕の背を摩りながら、檸檬は小さく言った。
『あたし……ココにいるよ。ずっとずーっと、恭弥の隣に。』
「檸檬…」
『いるよ、ってゆーか……いたいなー、って願ってるだけなんだけど、さ!』
背を摩っていた手は、いつの間にか僕を抱きしめ返していて。
『だから、無理しない。視界も第六感も、ちゃんとキープするもんっ♪』
“目がダメになったら、皆から離れなくちゃいけないからさー”と、震える声で明るく言う檸檬。
「……心配いらないよ。」
『え?』
君には、いつも驚かされるね。
ココにいる檸檬は、僕の見て来た未来の檸檬じゃない。
同じ道を歩んでいても、違う意志を持って違う決意をしてる。
「そうならない為に、僕は側にいるんだから。」
『恭弥……///』
だから、少しだけ信じていいかな…?
僕が辿り着いた結末とは違う場所へ、
この檸檬が導いてくれる……って。
未来の檸檬は、
この檸檬を違う方向へ進ませる為に、書類を残したんだって。
「さぁ、始めようか。」
『うんっ!ありがと恭弥っ♪』
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「えーっと、次のディスクは……コレか!」
1人、剣帝への道ビデオを見てひたすら剣技を学ぶ山本。
と言っても、スクアーロはやはり強い為、短時間で勝負がつく試合が多かった。
そして今、10番目のディスクを読み込ませる。
ジャジャーン、という効果音に対戦相手の名前、そしてお決まりとなったルッスーリアのイラストが映る。
そして…
--「はいは~い♪100番勝負も早くも10試合目!どう?私ちゃんと映ってるかしら~?」
--「う"お"ぉい!!てめーは映ってなくてもいんだよ!!」
--「あら酷ーい!ホントに人使いが荒いのね、スクってば。」
--「黙れぇ!!」
「……何か、随分と前置き長くね?」
山本が試合開始まで早送りしようとした、その時。
ルッスーリアが得意気に言った。
--「スクー、今回は記念すべき10試合目でしょ?」
--「あ"ぁ?それがどぉしたぁ。」
--「スペシャルゲストがいるのよん♪」
--「な"っ……!」
「ゲスト?」
ガラリと変わったスクアーロの表情に、首を傾げる山本。
と、今まで無かった声が聞こえて来た。
--『やっほー!アロちゃんっ♪』
--「う"お"っ…!」
スクアーロが驚いた理由が、山本にも分かった。
カメラの前に現れたのは……
--「な、何でいんだよ檸檬!!」
--「私が呼んだのvV」
--『アロちゃん、試合頑張ってるって聞いたからー♪』
未来に来てすぐ、少しだけ会話した未来の檸檬。
少し高くなった背、
ひゅるっと伸びて束ねてある後ろ髪、
そして大人びた声。
黒いスーツと白いブーツもそのままだ。
「10年後の檸檬…!!」
--「というワケで、頑張ってねスク~♪」
--『こっから応援してるよっ!』
--「うるせぇ!言われなくても叩っ斬る!!」
有言実行、スクアーロはそのまま10人目の相手を難なく倒した。
その剣技に「やっぱすげぇな」と山本が感心していると…
--『アロちゃーんっ!』
--「う"お"ぉ!!」
いきなり檸檬がナイフを持ってスクアーロに斬り掛かる。
--「な、なな何しやがんだぁ!!」
--『えー、だってー…あたしも100人斬りの相手になれないかなーって。』
--「ばっ…檸檬が入っちまったら……///」
--『ん?』
目をパチクリする檸檬に、ルッスーリアが付け足す。
--「その時点でスクの負け決定だものvV」
--「だっ、黙れぇ!!///」
--『あ、そっか。』
--「納得すんじゃねぇーー!!!」
「………ぷっ、」
まるで、何かのホームビデオでも見ているような感覚。
剣帝への道なんていう緊迫した空気はそこに無く。
「ホント、すげーよな……檸檬は。」
あらゆる状況において、その笑顔で明るい雰囲気を作り出す彼女の姿に、山本は笑みをこぼした。
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ドシュゥゥゥ…
迫り来るハリネズミを、檸檬はナイフ一本のみ構え見据える。
『(発動っ!)』
父譲りのリズム感のおかげか、タイミングは完璧に掴める。
そして母譲りの第六感を使い、ナイフを振るった。
シュッ、
「……キュウゥッ…!」
檸檬とハリネズミがすれ違った、次の瞬間。
ハリネズミは途端に最小サイズへと収縮し、
ナイフには綺麗な紫の炎が灯った。
『どうっ!?』
ナイフに炎が灯ったのを確認した檸檬は、ハリネズミの方を向く。
と、ちょうど雲雀がハリネズミを匣にしまっていた。
『ハリネズミちゃん、どうなった!?』
「うん、収縮したよ。」
『って事は……』
「炎、ちゃんと奪えたみたいだね。」
そう言って雲雀が微笑すると、檸檬は顔をパアッと輝かせる。
『やったーっ!!』
ピョイピョイ飛び跳ねる檸檬に、雲雀は問う。
「で、ナイフの違いは分かったの。」
『え?あ、うんっ!やっぱり、未来のあたしが使ってたナイフの方が、炎が長持ちするみたい。』
「…ほんの数秒でしょ?」
『数秒でも、あたしには大きな差なのっ。』
あたしの第六感は、ノンストップで発動出来る時間が限られてる。
この制限を超えてしまえば、リバウンドまでの持続時間が短くなってしまう。
炎を数秒でも長くキープしていられれば、その時間は発動しなくてもいいって事になるから……
『つまりは、休み時間が増えるって事♪』
「ふぅん…」
『んじゃ、一端区切るよ。付き合ってくれてありがと、恭弥♪』
「別に。」
恭弥にもう1度お礼を言って、あたしは部屋に戻った。
今の修業で分かった事、ちゃんとメモっておかなくちゃ。
それに、未来のあたしが残した書類の内容と照らし合わせるのも重要なコト。
『(これで何とか、殴り込みの時までに完成すればいーんだけど……)』
第五段階が終了すれば、一段落つく。
というか、ちゃんと分かりやすく纏めてあるのはココまで。
あとはあたし自身が独学で習得しなくちゃいけない。
奪った炎をどうするのか、
あたしは匣無しで戦えるのか、
色んな事が、まだぐちゃぐちゃしてる。
『んー………ちょっと休もうっと。』
大きな背伸びを一つして、あたしはベッドに寝転がった。
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3日後。
予告無く現れ、そうっと扉を開いたリボーンに、雨ツバメによる波が押し寄せる。
そして……
「(時雨蒼燕流 特式十の型……)」
それは、リング争奪戦でスクアーロが見せたような、剣撃。
抉られていく水の道の中心を、山本が駆けて来る。
「(……燕特攻!!!)」
(スコントロ・ディ・ローンディネ)
山本に向かっていき、交差して着地したリボーン。
そのハットが、大きく裂けた。
「合格だぞ。」