未来編①
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「白蘭サン!!」
やっと映し出された本部の様子。
偽者の部下が潜入していたのを知り焦ってた入江。
しかし部屋にいる白蘭はマシュマロを手に取りのんびりと座って別のモニターを見ていた。
「んじゃーねー♪……………あれ?正チャン。」
「あれ、じゃないですよっ!!無事だったんですね!?」
「うん、元気♪」
「ってゆーか今、一体誰と……」
「あー、正チャンよりちょっと早く復旧させたみたいでさ。」
「まさか…ライトさんですか…?」
頷く白蘭に、入江はため息をつく。
「またあの人は……どうしてあんなに不協力なんだ……」
「そりゃー檸檬ちゃん以外には興味が無いからだよ。回線を独自で復旧させたのも、匣の完成を知らせるだけだったし。」
「…それに関してですが、彼女は本当にあのダークに匹敵する戦力なんですか?」
「もちろん♪だってライトは、雨宮檸檬の双子の妹・雨宮蜜柑ちゃんだからね。」
サラリと口に出された言葉に、入江はしばし固まった。
脅威
「ライトさんが、雨宮檸檬の…妹……!?」
「ワケあってずっと黙ってたんだけど………あ、“ダークの妹”って言うとキレるから気をつけてね。」
普通の話題であるかのように明るく言う白蘭に対し、入江は脱力したように「分かりました」と答えた。
と、ここで本来の疑問を思い出す。
「そうだ!あの伝達係は今何処に!?」
「あぁ、レオ君?明日の新聞に載るんじゃないかな、変死事件か何かで。名前はちょっと変わるけどね。」
「え…じゃあ……」
「彼の中身ね、六道骸君だったよ。」
笑顔で言う白蘭に、入江もチェルベッロも言葉を失う。
「それじゃあ白蘭サン、ボンゴレの霧の守護者を葬った…と?」
「まぁね♪」
「まぁねって……」
「それより面白くなって来たよ、正チャン。」
白蘭は、ボンゴレが近々全世界規模な攻撃を仕掛けて来るとの推測を口にする。
勿論、日本も例外ではないと。
「しかし…ここには過去から来た10代目ファミリーしか…………まさか!彼らもこの基地に攻撃して来ると…?」
「そーゆーこと♪」
肯定され、入江は数秒考え込む。
「確かにそうなれば僕らにとって願っても無い事ですが……イタリアのボンゴレ本部が彼らを組み込むでしょうか?それに彼らが命をかけてココまで来る理由も………」
「彼らは曲がりなりにもγとグロを倒したんだ、当然戦力に数えられるよ。それに理由だってあるよ、正チャンには謝んなきゃだけどね…」
白蘭の話では、骸はレオナルドに成り済まし、ミルフィオーレの情報が少しずつネットワークに漏れるように細工されていたそうだ。
「で、ではココの情報も……!」
「アレの存在を10代目ファミリーが知ったら、何が何でも行くだろうね…そこ。」
言われた瞬間、入江の中で何かのスイッチが入る。
情報漏れはもう止めたから心配無用。
イタリアからボンゴレの増援が来る可能性はゼロ。
つまり、ボンゴレリングを一網打尽にするチャンスだ。
そんな白蘭の言葉を無言で聞き続ける入江。
「って事で、忙しい正チャンの為にスペシャルボーナスを用意したんだ。今回は蜜柑のお墨付きだし、僕が思うに正チャンと肩を並べられる数少ない…」
「増援でしょ?要りませんよ。」
遮られた事により、入江の雰囲気が変わったのを察知した白蘭。
入江は、ずっと持っていた何かのケースのフタを開けながら言う。
「足手纏いなんです、そういうの。」
「正チャン?もしかして……」
「研究したかったけど、後回しにします。人のやり方見てるとハラハラして、お腹痛くなって仕事が手につかない…………」
中に入っているソレを右手中指に付け、鋭い眼光を発する。
「僕が直接やりますよ、彼らの迎撃とボンゴレリングの奪取は。」
その姿を見て、白蘭は楽しそうに口角を上げた。
「……………ついに来たね。最も信頼する部下がそう言うなら、止める理由は何も無いや。任せたよ、正チャン♪」
「…じゃあ、しばらく放っておいて下さいね、白蘭サン。」
「あっ、ちょっ、まだ……」
引き止めようとする白蘭に背を向け、モニターの回線を切る。
そして入江はチェルベッロに命令した。
「非常招集だ、ハンガーを全部上げてくれ!黒いのも白いのもだ!!」
「はっ!」
立ち去っていくチェルベッロを横目に、入江は考える。
「(ライト…いや、蜜柑さんにも来てもらわなくちゃな………)」
グッと拳を握って、歩き出した。
向かう先は、蜜柑の部屋。
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『恭弥ぁ、恭弥ってばーっ。』
「ん…」
『15分経ったよー、起きる時間だよーっ。』
頑張って揺さぶってみると、恭弥は渋々(?)起き上がった。
あたしも続いて起き上がる。
『おはよー♪』
「うん…」
ちゅ、
『へっ…!?///』
「何、いつも檸檬がやってるでしょ。」
『いやあのっ…恭弥からってのがちょっと意外ってゆーか……』
何だかもう、振り回されっ放しな気がする……
そう思いながら、ちょっと聞いてみる。
『あの、さ…』
「何?」
『あたし…10年後も挨拶のキスしてたの?』
すると恭弥は、少し吃驚してからフッと笑って。
「してたよ……僕だけに。」
『えぇ!?ほ、ホントに恭弥だけ!?ホントのホントっ!!?』
「…さぁね。」
『なっ…どっちよー!!』
「言わないよ。」
クスクス笑いながら言う恭弥に、見とれちゃうあたしは軽く病気状態なのかも。
頬が熱くなるのを感じて俯いてると、恭弥が言った。
「そうだ、笹川了平が向こうで侵入作戦の話し合いをしに行ったから、行くと良いよ。」
『え…』
「もし、檸檬が敵のアジトに行きたいなら…の話だけど。」
意外だった。
恭弥が、
あたしの修業にあんなに反対した恭弥が、
作戦会議への参加を、許してくれてる…?
『い、いいの……?』
恐る恐る聞いてみると、恭弥はあたしの頭を引き寄せた。
「僕に……無理に止める権利は無いからね…」
『え…?』
「何でもないよ。」
口ではそう言ってたけど、
ほんの少しだけ、感じ取れてしまった。
一瞬だけ、表情を隠された。
頭を引き寄せたのは、その為なんでしょう?
権利って、どう言う事?
『じゃあ…行くね。』
「いってらっしゃい。」
『うん…』
聞き返しちゃいけない気がして、あたしはそのまま恭弥の部屋を出た。
『(そーだ!第五段階の内容、ちょっと見ておこうっと♪)』
途中、自分の部屋に寄る。
第四段階のトコで開きっ放しになっているノートをめくる。
“第五段階 波長による炎の奪取
・炎の波長を瞬時に読み取る
・構えたナイフの周りの波長を歪ませる
・炎とナイフの周りの波長を融和させる”
『これって…!』
ついに、来たんだ。
リング無しで、炎を使う為の修業。
その前に、第四段階の復習でもしようかな。
ドアに手を当てて、精神を集中させる。
『(第六感…発動…!)』
途端に広がる、波長のセカイ。
辿って辿ってボンゴレアジトを視る。
そこから下に向かって波長を読み取っていく。
そうすれば、視える。
開けっ放しのドアがある。
あ、了平さんがツナ達探してる。
もうちょっと下まで……
『(ん!?)』
何だろう…ココの壁、半壊してんじゃん!
ドアの上を視ると、「資料室」とあった。
誰だろ、ランボちゃんの手榴弾とかかなぁ…??
ともあれ、了平さんの居場所も皆の居場所も分かったから、
第六感を解除して部屋から飛び出した。
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同じ頃キッチンでは、ツナ達3人を始め、京子やハル、フゥ太が机を囲んでいた。
中心にいるのは、魚をバリバリと食べる一匹の猫。
「わー、猫ちゃん!」
「キュートですねー♪」
京子とハルが笑顔でその姿を見守る隣で、獄寺はツナに頭を下げる。
「すいません10代目!!修業で資料室の壁をぶっ壊してしまって……」
「いや……ってゆーか、何で資料室で修業してたの?それにこの猫…本当に嵐の匣兵器なの?」
ヒソヒソ尋ねるツナに、獄寺も同じような小声で応答する。
「俺の場合、修業は紙と鉛筆から入るんです……。コイツは誤って出しちまって…戻そうとしても反抗して来るんスよ……。」
「そういう時は、炎を与えなければいいんだよ、隼人兄。炎が切れれば匣は活動停止するからさ。」
「んな事分かってるけどよぉ………」
頭を掻きながら、獄寺は続ける。
「炎が切れかかってきた時のコイツの辛そーな顔を見るとつい………」
「(それって情が移ってんじゃん!!)」
話しているうちに食べ終わってしまった猫の頭を撫で、京子は言う。
「この子、手足が大きいからきっと大きくなるよ。」
「いっぱい食べていーですからね♪」
しかしフゥ太は、
「匣が人間の食料食べるなんて、聞いたことないけど……」
と。
「マジかよっ!何でもかじるから空腹だとばかり………やっぱ匣にしまうか…兵器としてもイマイチだしな…」
満腹なのか眠っている猫に、獄寺はツンと触れる。
と、途端に猫は起き上がり、獄寺に爪を立てた。
「シャアッ!」
「ゲッ、だあぁ!!」
「(全然懐いてないし…)」
と、そこに。
「おめでたいわね隼人、修業をサボってペットの世話なんて。」
キッチンの入り口に立ち、腕組みをしながら獄寺に冷たい視線を向けるビアンキが。
2人の険悪ムードを知るツナは、少しだけビクッとするが、獄寺はキッとビアンキを睨んで。
「余計な世話だぜ。SISTEMA C.A.I.はもう理解した!」
その言葉に、ビアンキは驚きを隠せず目を見開く。
更に獄寺は挑戦的に、「何なら試してみるか?」と。
2人のやりとりにツナを始め京子・ハルも疑問符を浮かべる。
と、そこに。
「おお!ココにおったか!!やはり凄いな檸檬!!」
『いえ♪』
了平と、途中で合流した檸檬がやって来た。
「やはり…?」
「うむ、広いアジトでお前達を捜すのに少々手間取ってな。檸檬が視てくれたのだ。」
『へへっ、修業の成果って感じかな♪』
「で、どしたんスカ?先輩。」
「おおそうだった!じ…次期相撲大会について話し合うぞ!!作戦室に来てくれ!!」
京子とハルがいる手前、マフィアの戦いだと言えない了平は、咄嗟に嘘をつく。
「またお相撲…?」
「(む、無理があるんじゃ……)」
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コンコン、
ノックされたのは、蜜柑の部屋の扉。
「……入江君?」
「白蘭サンに聞いたよ、“雨宮蜜柑さん”。」
突如自分の本名を口にされ、蜜柑はふと思い出す。
---「いいよ、僕が言う。蜜柑は、“マーちゃん”に全力を注いでていいから。」
「そう……で、用件は?」
「近いうちボンゴレが動く。それについての非常招集で、蜜柑さんの事も伝えようと思う。」
「…私も直接出席すべき?」
「出来れば…僕らと一緒に来て欲しい。」
それまでの入江と雰囲気が違う事を察した蜜柑は、少し間を置き答えた。
「分かったわ。」
隊服のチャックを首元まで閉め、パソコンをスリープさせ、蜜柑はドアを開けた。
部屋の前には、入江と2人のチェルベッロが立つ。
蜜柑と目を合わせてから、入江は隣のチェルベッロに言った。
「蜜柑さんと先に行っててくれ。僕は、研究室に寄ってから向かう。」
「畏まりました。」
「蜜柑様、こちらへ。」
「えぇ。」
廊下には、3種のヒール音が響いた。
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「ミルフィオーレのアジトの図面ですか!!?」
ボンゴレ地下アジト作戦室。
集められたメンパー全員が、了平の話に驚いた。
「ああ…敵の情報ファイルのいくつかが、雲雀のアジトのサーバーに流れ込んでいたのだ。」
『恭弥の…?』
「敵アジトの図面と内部施設についてのものらしい。……見てくれ。」
ディスプレイに映し出されたのは、正方形の集まりのような図面。
「この図面が本物なら大したモンだな。だが一体誰がこんな事したんだ?」
「もしかしてだけど…骸ってことは考えられませんか?」
「確かにこういうやり方は、マフィアに直接手を貸さぬあの男らしいとも思える……だがファイルの送信は2時頃途絶えたそうだ…。」
「そんな…………」
2時頃って言ったら…
ちょうど髑髏に異変が起きたぐらいの時刻……
ツナや了平さんの推測は、間違っていないのかも知れない。
---『骸!!待って、骸!!!』
---「来てはいけませんよ、檸檬……」
骸の事を考える度、脳裏を過るあの出来事。
「檸檬様、大丈夫ですか?」
『えっ?あ、うん…平気だよ。』
「顔色が宜しくないようですが…」
『大丈夫大丈夫♪』
隣に座るジャンニーニに、慌てて笑顔を見せる。
そう…今は落ち込んでる場合じゃない。
折角恭弥に修業も殴り込みの参加も許してもらったんだもん、
何がなんでも…
蜜柑を止めに行かなくちゃ。
「ん…?この黒い部屋は何だ?」
ラルが了平さんに質問する。
「詳細は不明だが…ファイルには他にも今作戦のターゲットになりうる特殊な敵施設のデータがあった。」
言葉と同時に、全員のディスプレイに別のウインドウが現れる。
そこに表示されていた装置を見て、ツナは目を丸くした。
「(こ、これって夢で見た……!!)」
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一方メローネ基地。
研究室の扉が開き、黒いマントを羽織った入江が姿を現す。
白くて丸い装置を隠すように、厚い扉が音を立てて閉じられた。
「入江様、全ハンガー滞りなく向かいました。蜜柑様も、既に待機していらっしゃいます。」
「…僕も行こう。」
メローネ基地にいる全ての隊員が、ドーム状の司令室に集まる。
その最下階にある、円形に区切られた床に立つ入江とチェルベッロ、そして蜜柑。
ウィィィィン…
区切られた円形の床は、そのまま円柱になって上へ上へと伸びて行く。
そして、360度を集まった隊員達に囲まれる形になった。
「(結構な人数いたのね……)」
それまで自分の部屋に閉じこもりきりだった蜜柑は、初めて隊員の総数を目の当たりにした。
円柱が伸びきる所まで行って止まり、入江が口を開く。
「諸君に集まってもらったのは他でもない。白蘭様より、この基地が標的とされる可能性が示唆された。」
だからこそ、今までとは違った指揮系統が必要になる。
それは、入江を頂点とする完全なトップダウン系統。
「これより、どの部隊の所属であっても僕の命令には直接的及び絶対的に従ってもらう。」
その言葉に、四方八方からどよめきが。
「何だって!?」
「あのメガネがボス?」
更に他方では、
「大体、後ろにいるあの女は何だ!」
「一体何の権限があってそこに…」
チェルベッロの後方に大人しく立っていた蜜柑の存在に、疑問を持つ者が。
その声を聞き、入江は言う。
「彼女はボンゴレの襲撃に伴い、イタリア本部より来てくれた。………蜜柑さん、」
「……分かったわ。」
入江の視線が名乗り出を促していると察した蜜柑は、
小さなため息を1つこぼしチェルベッロの前に出た。
「本部パフィオペディラム所属…ボス補佐・雨宮蜜柑。」
「なっ…!」
「雨宮!??」
聞き覚えのある“その名字”に、場にいる隊員のほとんどが肩を震わせる。
そして、ある隊員が口走る。
「まさかあの…ダークの妹…」
チュインッ、
「ぎゃあっ!」
言い終わるか否かというところで、その隊員の頬を銃弾が掠った。
そして、中央にいる蜜柑の手には、生温い煙を吐く銃が一丁。
「蜜柑様……!」
慌てて名を呼ぶチェルベッロ。
「きっ…貴様…!!」
狙撃され、蜜柑を睨む隊員。
その両方を一瞥してから、蜜柑は妖しく口角を上げる。
「あら、ごめんなさい………“ダークの妹”って言われると、腕が勝手に。」
言いながらクルクルと銃を回して腰のケースに収める。
その雰囲気に圧倒され全員が黙り込む中、アフロヘアーの女が呟いた。
「牙をむいたのは入江だけじゃない、ってことだね。」
「指揮系統の移行に反論がある者は、前へ出るがいい。」
入江の言葉に皆黙ったが、1人だけ進み出た者が。
「あるなぁ……」
「アニキ!!」
野猿と太猿の後ろから、負傷中の身であるγが顔を出す。
と、次の瞬間。
バッと飛び出して来た黒い影。
“それ”は入江や蜜柑が立つ円柱の上に着地する。
咄嗟に入江を庇おうと前に出るチェルベッロと、全く動じず“その人物”を見つめる蜜柑。
「白蘭様の命令で、馳せ参じた……」
4本の刀を携えた彼は、忠誠を誓うかのように跪く。
「入江殿に歯向かう輩は…斬ってみせましょう。」
彼こそがまさしく、白蘭が送ったスペシャルボーナスである戦力。
事前に聞いていた蜜柑はただ、無表情で彼を見つめた。
「(来たのね、幻騎士……)」
やっと映し出された本部の様子。
偽者の部下が潜入していたのを知り焦ってた入江。
しかし部屋にいる白蘭はマシュマロを手に取りのんびりと座って別のモニターを見ていた。
「んじゃーねー♪……………あれ?正チャン。」
「あれ、じゃないですよっ!!無事だったんですね!?」
「うん、元気♪」
「ってゆーか今、一体誰と……」
「あー、正チャンよりちょっと早く復旧させたみたいでさ。」
「まさか…ライトさんですか…?」
頷く白蘭に、入江はため息をつく。
「またあの人は……どうしてあんなに不協力なんだ……」
「そりゃー檸檬ちゃん以外には興味が無いからだよ。回線を独自で復旧させたのも、匣の完成を知らせるだけだったし。」
「…それに関してですが、彼女は本当にあのダークに匹敵する戦力なんですか?」
「もちろん♪だってライトは、雨宮檸檬の双子の妹・雨宮蜜柑ちゃんだからね。」
サラリと口に出された言葉に、入江はしばし固まった。
脅威
「ライトさんが、雨宮檸檬の…妹……!?」
「ワケあってずっと黙ってたんだけど………あ、“ダークの妹”って言うとキレるから気をつけてね。」
普通の話題であるかのように明るく言う白蘭に対し、入江は脱力したように「分かりました」と答えた。
と、ここで本来の疑問を思い出す。
「そうだ!あの伝達係は今何処に!?」
「あぁ、レオ君?明日の新聞に載るんじゃないかな、変死事件か何かで。名前はちょっと変わるけどね。」
「え…じゃあ……」
「彼の中身ね、六道骸君だったよ。」
笑顔で言う白蘭に、入江もチェルベッロも言葉を失う。
「それじゃあ白蘭サン、ボンゴレの霧の守護者を葬った…と?」
「まぁね♪」
「まぁねって……」
「それより面白くなって来たよ、正チャン。」
白蘭は、ボンゴレが近々全世界規模な攻撃を仕掛けて来るとの推測を口にする。
勿論、日本も例外ではないと。
「しかし…ここには過去から来た10代目ファミリーしか…………まさか!彼らもこの基地に攻撃して来ると…?」
「そーゆーこと♪」
肯定され、入江は数秒考え込む。
「確かにそうなれば僕らにとって願っても無い事ですが……イタリアのボンゴレ本部が彼らを組み込むでしょうか?それに彼らが命をかけてココまで来る理由も………」
「彼らは曲がりなりにもγとグロを倒したんだ、当然戦力に数えられるよ。それに理由だってあるよ、正チャンには謝んなきゃだけどね…」
白蘭の話では、骸はレオナルドに成り済まし、ミルフィオーレの情報が少しずつネットワークに漏れるように細工されていたそうだ。
「で、ではココの情報も……!」
「アレの存在を10代目ファミリーが知ったら、何が何でも行くだろうね…そこ。」
言われた瞬間、入江の中で何かのスイッチが入る。
情報漏れはもう止めたから心配無用。
イタリアからボンゴレの増援が来る可能性はゼロ。
つまり、ボンゴレリングを一網打尽にするチャンスだ。
そんな白蘭の言葉を無言で聞き続ける入江。
「って事で、忙しい正チャンの為にスペシャルボーナスを用意したんだ。今回は蜜柑のお墨付きだし、僕が思うに正チャンと肩を並べられる数少ない…」
「増援でしょ?要りませんよ。」
遮られた事により、入江の雰囲気が変わったのを察知した白蘭。
入江は、ずっと持っていた何かのケースのフタを開けながら言う。
「足手纏いなんです、そういうの。」
「正チャン?もしかして……」
「研究したかったけど、後回しにします。人のやり方見てるとハラハラして、お腹痛くなって仕事が手につかない…………」
中に入っているソレを右手中指に付け、鋭い眼光を発する。
「僕が直接やりますよ、彼らの迎撃とボンゴレリングの奪取は。」
その姿を見て、白蘭は楽しそうに口角を上げた。
「……………ついに来たね。最も信頼する部下がそう言うなら、止める理由は何も無いや。任せたよ、正チャン♪」
「…じゃあ、しばらく放っておいて下さいね、白蘭サン。」
「あっ、ちょっ、まだ……」
引き止めようとする白蘭に背を向け、モニターの回線を切る。
そして入江はチェルベッロに命令した。
「非常招集だ、ハンガーを全部上げてくれ!黒いのも白いのもだ!!」
「はっ!」
立ち去っていくチェルベッロを横目に、入江は考える。
「(ライト…いや、蜜柑さんにも来てもらわなくちゃな………)」
グッと拳を握って、歩き出した。
向かう先は、蜜柑の部屋。
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『恭弥ぁ、恭弥ってばーっ。』
「ん…」
『15分経ったよー、起きる時間だよーっ。』
頑張って揺さぶってみると、恭弥は渋々(?)起き上がった。
あたしも続いて起き上がる。
『おはよー♪』
「うん…」
ちゅ、
『へっ…!?///』
「何、いつも檸檬がやってるでしょ。」
『いやあのっ…恭弥からってのがちょっと意外ってゆーか……』
何だかもう、振り回されっ放しな気がする……
そう思いながら、ちょっと聞いてみる。
『あの、さ…』
「何?」
『あたし…10年後も挨拶のキスしてたの?』
すると恭弥は、少し吃驚してからフッと笑って。
「してたよ……僕だけに。」
『えぇ!?ほ、ホントに恭弥だけ!?ホントのホントっ!!?』
「…さぁね。」
『なっ…どっちよー!!』
「言わないよ。」
クスクス笑いながら言う恭弥に、見とれちゃうあたしは軽く病気状態なのかも。
頬が熱くなるのを感じて俯いてると、恭弥が言った。
「そうだ、笹川了平が向こうで侵入作戦の話し合いをしに行ったから、行くと良いよ。」
『え…』
「もし、檸檬が敵のアジトに行きたいなら…の話だけど。」
意外だった。
恭弥が、
あたしの修業にあんなに反対した恭弥が、
作戦会議への参加を、許してくれてる…?
『い、いいの……?』
恐る恐る聞いてみると、恭弥はあたしの頭を引き寄せた。
「僕に……無理に止める権利は無いからね…」
『え…?』
「何でもないよ。」
口ではそう言ってたけど、
ほんの少しだけ、感じ取れてしまった。
一瞬だけ、表情を隠された。
頭を引き寄せたのは、その為なんでしょう?
権利って、どう言う事?
『じゃあ…行くね。』
「いってらっしゃい。」
『うん…』
聞き返しちゃいけない気がして、あたしはそのまま恭弥の部屋を出た。
『(そーだ!第五段階の内容、ちょっと見ておこうっと♪)』
途中、自分の部屋に寄る。
第四段階のトコで開きっ放しになっているノートをめくる。
“第五段階 波長による炎の奪取
・炎の波長を瞬時に読み取る
・構えたナイフの周りの波長を歪ませる
・炎とナイフの周りの波長を融和させる”
『これって…!』
ついに、来たんだ。
リング無しで、炎を使う為の修業。
その前に、第四段階の復習でもしようかな。
ドアに手を当てて、精神を集中させる。
『(第六感…発動…!)』
途端に広がる、波長のセカイ。
辿って辿ってボンゴレアジトを視る。
そこから下に向かって波長を読み取っていく。
そうすれば、視える。
開けっ放しのドアがある。
あ、了平さんがツナ達探してる。
もうちょっと下まで……
『(ん!?)』
何だろう…ココの壁、半壊してんじゃん!
ドアの上を視ると、「資料室」とあった。
誰だろ、ランボちゃんの手榴弾とかかなぁ…??
ともあれ、了平さんの居場所も皆の居場所も分かったから、
第六感を解除して部屋から飛び出した。
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同じ頃キッチンでは、ツナ達3人を始め、京子やハル、フゥ太が机を囲んでいた。
中心にいるのは、魚をバリバリと食べる一匹の猫。
「わー、猫ちゃん!」
「キュートですねー♪」
京子とハルが笑顔でその姿を見守る隣で、獄寺はツナに頭を下げる。
「すいません10代目!!修業で資料室の壁をぶっ壊してしまって……」
「いや……ってゆーか、何で資料室で修業してたの?それにこの猫…本当に嵐の匣兵器なの?」
ヒソヒソ尋ねるツナに、獄寺も同じような小声で応答する。
「俺の場合、修業は紙と鉛筆から入るんです……。コイツは誤って出しちまって…戻そうとしても反抗して来るんスよ……。」
「そういう時は、炎を与えなければいいんだよ、隼人兄。炎が切れれば匣は活動停止するからさ。」
「んな事分かってるけどよぉ………」
頭を掻きながら、獄寺は続ける。
「炎が切れかかってきた時のコイツの辛そーな顔を見るとつい………」
「(それって情が移ってんじゃん!!)」
話しているうちに食べ終わってしまった猫の頭を撫で、京子は言う。
「この子、手足が大きいからきっと大きくなるよ。」
「いっぱい食べていーですからね♪」
しかしフゥ太は、
「匣が人間の食料食べるなんて、聞いたことないけど……」
と。
「マジかよっ!何でもかじるから空腹だとばかり………やっぱ匣にしまうか…兵器としてもイマイチだしな…」
満腹なのか眠っている猫に、獄寺はツンと触れる。
と、途端に猫は起き上がり、獄寺に爪を立てた。
「シャアッ!」
「ゲッ、だあぁ!!」
「(全然懐いてないし…)」
と、そこに。
「おめでたいわね隼人、修業をサボってペットの世話なんて。」
キッチンの入り口に立ち、腕組みをしながら獄寺に冷たい視線を向けるビアンキが。
2人の険悪ムードを知るツナは、少しだけビクッとするが、獄寺はキッとビアンキを睨んで。
「余計な世話だぜ。SISTEMA C.A.I.はもう理解した!」
その言葉に、ビアンキは驚きを隠せず目を見開く。
更に獄寺は挑戦的に、「何なら試してみるか?」と。
2人のやりとりにツナを始め京子・ハルも疑問符を浮かべる。
と、そこに。
「おお!ココにおったか!!やはり凄いな檸檬!!」
『いえ♪』
了平と、途中で合流した檸檬がやって来た。
「やはり…?」
「うむ、広いアジトでお前達を捜すのに少々手間取ってな。檸檬が視てくれたのだ。」
『へへっ、修業の成果って感じかな♪』
「で、どしたんスカ?先輩。」
「おおそうだった!じ…次期相撲大会について話し合うぞ!!作戦室に来てくれ!!」
京子とハルがいる手前、マフィアの戦いだと言えない了平は、咄嗟に嘘をつく。
「またお相撲…?」
「(む、無理があるんじゃ……)」
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コンコン、
ノックされたのは、蜜柑の部屋の扉。
「……入江君?」
「白蘭サンに聞いたよ、“雨宮蜜柑さん”。」
突如自分の本名を口にされ、蜜柑はふと思い出す。
---「いいよ、僕が言う。蜜柑は、“マーちゃん”に全力を注いでていいから。」
「そう……で、用件は?」
「近いうちボンゴレが動く。それについての非常招集で、蜜柑さんの事も伝えようと思う。」
「…私も直接出席すべき?」
「出来れば…僕らと一緒に来て欲しい。」
それまでの入江と雰囲気が違う事を察した蜜柑は、少し間を置き答えた。
「分かったわ。」
隊服のチャックを首元まで閉め、パソコンをスリープさせ、蜜柑はドアを開けた。
部屋の前には、入江と2人のチェルベッロが立つ。
蜜柑と目を合わせてから、入江は隣のチェルベッロに言った。
「蜜柑さんと先に行っててくれ。僕は、研究室に寄ってから向かう。」
「畏まりました。」
「蜜柑様、こちらへ。」
「えぇ。」
廊下には、3種のヒール音が響いた。
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「ミルフィオーレのアジトの図面ですか!!?」
ボンゴレ地下アジト作戦室。
集められたメンパー全員が、了平の話に驚いた。
「ああ…敵の情報ファイルのいくつかが、雲雀のアジトのサーバーに流れ込んでいたのだ。」
『恭弥の…?』
「敵アジトの図面と内部施設についてのものらしい。……見てくれ。」
ディスプレイに映し出されたのは、正方形の集まりのような図面。
「この図面が本物なら大したモンだな。だが一体誰がこんな事したんだ?」
「もしかしてだけど…骸ってことは考えられませんか?」
「確かにこういうやり方は、マフィアに直接手を貸さぬあの男らしいとも思える……だがファイルの送信は2時頃途絶えたそうだ…。」
「そんな…………」
2時頃って言ったら…
ちょうど髑髏に異変が起きたぐらいの時刻……
ツナや了平さんの推測は、間違っていないのかも知れない。
---『骸!!待って、骸!!!』
---「来てはいけませんよ、檸檬……」
骸の事を考える度、脳裏を過るあの出来事。
「檸檬様、大丈夫ですか?」
『えっ?あ、うん…平気だよ。』
「顔色が宜しくないようですが…」
『大丈夫大丈夫♪』
隣に座るジャンニーニに、慌てて笑顔を見せる。
そう…今は落ち込んでる場合じゃない。
折角恭弥に修業も殴り込みの参加も許してもらったんだもん、
何がなんでも…
蜜柑を止めに行かなくちゃ。
「ん…?この黒い部屋は何だ?」
ラルが了平さんに質問する。
「詳細は不明だが…ファイルには他にも今作戦のターゲットになりうる特殊な敵施設のデータがあった。」
言葉と同時に、全員のディスプレイに別のウインドウが現れる。
そこに表示されていた装置を見て、ツナは目を丸くした。
「(こ、これって夢で見た……!!)」
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一方メローネ基地。
研究室の扉が開き、黒いマントを羽織った入江が姿を現す。
白くて丸い装置を隠すように、厚い扉が音を立てて閉じられた。
「入江様、全ハンガー滞りなく向かいました。蜜柑様も、既に待機していらっしゃいます。」
「…僕も行こう。」
メローネ基地にいる全ての隊員が、ドーム状の司令室に集まる。
その最下階にある、円形に区切られた床に立つ入江とチェルベッロ、そして蜜柑。
ウィィィィン…
区切られた円形の床は、そのまま円柱になって上へ上へと伸びて行く。
そして、360度を集まった隊員達に囲まれる形になった。
「(結構な人数いたのね……)」
それまで自分の部屋に閉じこもりきりだった蜜柑は、初めて隊員の総数を目の当たりにした。
円柱が伸びきる所まで行って止まり、入江が口を開く。
「諸君に集まってもらったのは他でもない。白蘭様より、この基地が標的とされる可能性が示唆された。」
だからこそ、今までとは違った指揮系統が必要になる。
それは、入江を頂点とする完全なトップダウン系統。
「これより、どの部隊の所属であっても僕の命令には直接的及び絶対的に従ってもらう。」
その言葉に、四方八方からどよめきが。
「何だって!?」
「あのメガネがボス?」
更に他方では、
「大体、後ろにいるあの女は何だ!」
「一体何の権限があってそこに…」
チェルベッロの後方に大人しく立っていた蜜柑の存在に、疑問を持つ者が。
その声を聞き、入江は言う。
「彼女はボンゴレの襲撃に伴い、イタリア本部より来てくれた。………蜜柑さん、」
「……分かったわ。」
入江の視線が名乗り出を促していると察した蜜柑は、
小さなため息を1つこぼしチェルベッロの前に出た。
「本部パフィオペディラム所属…ボス補佐・雨宮蜜柑。」
「なっ…!」
「雨宮!??」
聞き覚えのある“その名字”に、場にいる隊員のほとんどが肩を震わせる。
そして、ある隊員が口走る。
「まさかあの…ダークの妹…」
チュインッ、
「ぎゃあっ!」
言い終わるか否かというところで、その隊員の頬を銃弾が掠った。
そして、中央にいる蜜柑の手には、生温い煙を吐く銃が一丁。
「蜜柑様……!」
慌てて名を呼ぶチェルベッロ。
「きっ…貴様…!!」
狙撃され、蜜柑を睨む隊員。
その両方を一瞥してから、蜜柑は妖しく口角を上げる。
「あら、ごめんなさい………“ダークの妹”って言われると、腕が勝手に。」
言いながらクルクルと銃を回して腰のケースに収める。
その雰囲気に圧倒され全員が黙り込む中、アフロヘアーの女が呟いた。
「牙をむいたのは入江だけじゃない、ってことだね。」
「指揮系統の移行に反論がある者は、前へ出るがいい。」
入江の言葉に皆黙ったが、1人だけ進み出た者が。
「あるなぁ……」
「アニキ!!」
野猿と太猿の後ろから、負傷中の身であるγが顔を出す。
と、次の瞬間。
バッと飛び出して来た黒い影。
“それ”は入江や蜜柑が立つ円柱の上に着地する。
咄嗟に入江を庇おうと前に出るチェルベッロと、全く動じず“その人物”を見つめる蜜柑。
「白蘭様の命令で、馳せ参じた……」
4本の刀を携えた彼は、忠誠を誓うかのように跪く。
「入江殿に歯向かう輩は…斬ってみせましょう。」
彼こそがまさしく、白蘭が送ったスペシャルボーナスである戦力。
事前に聞いていた蜜柑はただ、無表情で彼を見つめた。
「(来たのね、幻騎士……)」