未来編①
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地下5階トレーニングルームにて、ツナは雲雀と午後の修業を開始していた。
降り掛かるトンファーにグローブで応戦するも、速い攻撃についていけない。
殴られたツナはそのまま炎を噴射し雲雀に突っ込んで行く。
が、雲雀はその足をトンファーで受け止め再度攻撃。
雲雀の優勢は目に見えているが、以前よりツナの殴られる回数は減少した。
そのバトルの様子を見て、草壁が言う。
「驚いたな…沢田さんの動きが格段に良くなってる。ピーキーなあの炎をモノにし始めてるようですね。」
「それは違うな。ヤツは2種類の炎を使い分けているんだ。」
「2種類…?」
聞き返す草壁に、不調のせいか座ったままのラルが説明する。
従来のノーマルグローブの炎はエネルギーが常に分散するため感覚を掴みやすく、
微妙な出力が出来るため姿勢制御やホバリングなどに適している。
コレが“柔の炎”。
対するver.V.Rで得た純粋な炎は扱いにくいが爆発的にエネルギーが上昇して行き、
直線の加速やココ1番でパワーが必要な時に使える。
コレが“剛の炎”。
「なるほど、可変式というワケか……考えましたね、ラル・ミルチ。」
「俺ではない、沢田だ。」
「ボンゴレの……超直感ですか。」
「確かにヤツの上達ぶりに理由を付けたくなるのは分かるが、そんな迷信を俺は信じない。」
それに、動きが良くなっても匣を持っていないツナの戦闘力はまるで話にならない。
雲雀は強いがまだ匣を使っていない。
匣未使用の相手に手こずっていてはミルフィオーレには太刀打ち出来ない。
そう、ラルは続けた。
「それは、沢田が1番良く分かってると思うがな。」
武器
同じ頃。
『(ココの廊下を真直ぐ行くと…アレ?今どの辺??)』
自室のドアに手を当て、波長を辿っていた檸檬。
途中で道に迷い、慌てて第六感を停止する。
『やっぱ難しいなぁー、実際の景色が見えてないと。』
波長のセカイでは音や立体感が無い。
増してや色なんて存在しない。
予め見ておいた景色を第六感で視直せば、把握は簡単。
しかし、いきなり波長のみの景色で把握するとなると………
『ふぅ……この修業、割と精神力使うしー…』
もう一度、未来のあたしが残したノートを見る。
“第四段階 視覚外の波長の認識
・波長の景色から元の景色を把握する
・ドアや壁の前に立ち、そこから波長を辿り、なるべく遠くまで視る
・初めは目を閉じたまま、慣れて来たら目を開けたまま背後の波長を読む”
『こんな簡単に書いてあるけどさー…』
ココって地下だし、入り組んでるからすぐ迷っちゃう。
何とか恭弥のアジトからボンゴレアジトまで辿り着く事は出来たけど。
『んー……………ん?』
ふと、ファイルブックの方に目が行って、パラパラ捲ってみた。
と、小さなメモを発見。
そこに書いてある文字に驚いた。
『“波長の…見分け方”!!?』
まさにあたしが行き詰まっていたトコ。
さすが未来の自分だなぁ、と思いながらメモを読む。
・波長の世界で色を見分ける為には“光”を読み取る
・光は大まかに分けて赤、青、緑の3種の波長から構成される
・物体の色を波長から推測したい時は、どの波長が反射されているかを視る
『反射されている波長……ってか、まずは光を視なくちゃいけないんだ!』
天井を見上げて、第六感を発動させた。
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「(ダメだ…!!このまま機動力を上げていったとしても勝てる気がしない…)」
上がる息を抑えながら考えるツナに、雲雀は歩み寄りながら言った。
「いつまで草食動物の戦い方をするつもりだい?君はまだ武器を使っていないよ、沢田綱吉。」
「(武器!?)」
ハッとすると同時に、死ぬ気モードが終わる。
それを見た雲雀は踵を返して。
「眠くなって来た、そろそろ帰る。」
「なっ!!ちょっと待って下さい、雲雀さん!!」
引き止めようとするツナだったが、ラルに休めと言われてトレーニングルームを出た。
「(どーゆー事だろう………?武器っていっても俺、匣持ってないし、Xグローブしか無いんだけど…)」
廊下を歩きながら、ツナは雲雀に言われた事を思い返していた。
しかし、グローブの使い方は零地点突破と炎を出す以外に思いつかない。
「(そう言えばXANXUSの武器は炎を攻撃とジェットの両方に使ってたんだよな…)」
リング争奪戦時、その炎の攻撃に苦戦を強いられた事を思い出す。
「(そーだ!!強力な炎をそのまま前に持って来て、敵のいる方に発射すれば凄い技に……!!)」
しかしそれは、自分の体を後ろに吹っ飛ばしてしまう事に気がつく。
以前、雲雀との対戦で地面に突っ込んでしまったのだ。
「ダメだぁ~~。パワーあり過ぎんだよな~……」
ため息をつきながら歩くツナの目に、不意に黒いモジャモジャ頭が映った。
「(ランボ……)」
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カタカタ…
その部屋には、相変わらずタイピングの音のみが響いていた。
十数分に渡る操作の後、彼女・蜜柑はエンターキーを押す。
と、正面上部のモニターに白く広い部屋が映し出された。
-「あれ?」
その部屋の中心にあるソファに座っていた人物が、カメラの方を向く。
-「やぁ、早かったね。蜜柑♪」
言いながら白蘭はいつものように笑顔を見せた。
-「どーやったの?こっちから遮断されてたハズなのに。」
先程まで交戦していたとは思えない陽気さを纏い、白蘭は蜜柑に尋ねる。
蜜柑の方も、何ら変わらない口調で応答した。
「不自然な回線遮断でしたので、こちらから強制的に開きました。不都合でしたか?」
-「んーん、僕も蜜柑トコに繋ぎたいなーって思ってたから♪正チャンの方はまだ復旧してないみたいだね。」
「メローネ基地のメインコンピューターから本部への回線は他の部下が。私はこのパソコンだけ………」
-「そう、まーいいや。僕は何とも無いよって、とりあえず蜜柑に伝えられたから。」
「それが、繋ぎたかった理由ですか?」
-「うん♪」
満面の笑みで答える白蘭に、蜜柑は小さくため息をついてから言う。
「そうですか……ご無事で何よりです。」
-「何?心配してくれてたの?」
「そう解釈なさるなら、構いません。」
-「んじゃ、そーする。でももう1つ、蜜柑に言っとこうと思って。」
少し真剣になった声色に、蜜柑も瞳を光らせる。
「お聞きします。」
-「DARQ…じゃなくて今はまだ檸檬チャンか……とにかく、徐々に力をつけて来てるみたいだよ。」
「……と、言いますと?」
-「骸君…あ、レオ君の正体ね…やっつける時にさ、一瞬、まるで再会を喜ぶような穏やかな目になって。だから直接檸檬チャンの存在を認識出来たワケじゃないけど、骸君の思念に会いに来たんじゃないかなって思ったんだ。」
言われた蜜柑は少し考えて、こう返す。
「確かに、姉の元にはクローム髑髏がいます。彼女の脳波・思念を辿れば不可能ではないかと。」
-「うん、そうなんだよね。それに、ボンゴレはどうやら僕たちへの大規模な攻撃作戦を立ててるみたいなんだ。だから檸檬チャンはDARQの力を更に高めて来ると思う。」
「問題ありません。DARQの力の完成は、私の目的と白蘭の願望の第一歩です。」
瞳には憎悪の光を宿すも淡々と話す蜜柑に、白蘭は楽しそうに笑った。
-「頼もしいなぁ♪でもまぁ、正チャンはちょっと大変になるかもしれない。それで、増援に“彼”を送ろうと思うんだけどー……」
「“彼”…?」
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怒鳴って泣かせてしまった事を思い出したツナ。
ランボが自分を警戒して隠れている好きに、廊下に1つのぶどう飴を置いた。
そっと物陰から顔を出したランボは、飴玉を見つけて吃驚した。
好物を目の前に、物陰から出て拾おうとしたランボ。
すると…
「わっ!」
「ぐぴゃっ!!!」
ツナが飛び出して来て、ランボは一目散に逃げようとする。
が、すぐに捕まえられた。
「逃がさないぞこいつっ!」
「放せっ!!」
「こちょこちょこちょ~~~」
先程怒鳴られたときとは違う、ツナの様子。
いつもみたいに遊んでくれていると思うと、一気に緊張の糸がほぐれていき……
「ギャハハハハハ!!」
「どーだランボ!」
「くすぐったい~~~~~!!ツナやめろ~~♪」
「わ、ランボ!唾垂らすなよ~っ!」
「死む~!!」
2人の笑い声は、廊下に明るく響き渡っていた。
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『(あ、視えて来た…!)』
光を構成する、3種類の波長。
それが分かってくれば、物体の色を識別出来る。
例えば、青い光の波長を跳ね返している物体は普通に見ると青、というように。
『そっかそっかぁー。』
あとは立体の物が何処にあるか、その位置関係を正確に掴むことが大事かな……
そう思って、もっかい発動させようとした、その時。
「檸檬、ちゃんと休憩入れてる?」
『ひょえ!』
突然ドアが開いたから、発動状態のまま振り向いてしまった。
目の前に視えるのは、人影。
あー、なるほど。
人の姿は波長で視るとこーなるんだー…。
なんて思ってると、両頬にペチッという衝撃が。
『うっ、』
「何ボーッとしてるの。」
『あはは…ごめん。』
仕方無く発動をやめて、恭弥に謝る。
てか、突然入って来るのは心臓に悪いんだけど……ま、いっか。
『ちゃんとさっき休憩入れたよ。言われた通り、25分で区切ってるし。』
「………なら、いいけど。」
一息ついた恭弥はあたしの頬から手を放し、そのままギュウと抱きしめた。
何だか、あったか過ぎて眠っちゃいそう。
そんな眠気を紛らわそうと、恭弥に問いかける。
『心配してくれたのー?』
「…………うん。」
『えっ…?///』
まさか素直に「うん」なんて言われると思わなかったから、本気で照れた。
お互いの顔は見えないまんま、ただギュッと抱きしめ合ってる。
「何、悪い?」
『そ、そーじゃなくて……うーん…ありがとっ♪』
とりあえず真っ先にお礼を言っておく。
「………眠い。」
『えぇ!?ちょっ…この体勢でソレ!?恭弥の部屋は廊下の向こうでしょ!』
「檸檬とがいい。」
もしかして、10年経っても我が儘王子体質は変わってないのだろうか。
そんな疑問を抱きながら慌てふためくあたしの頬に、恭弥はキスを落とす。
『ま、待って待って!何してるの!?///』
「挨拶代わり、でしょ?」
『なっ…!///』
微笑む恭弥が色っぽ過ぎて、これでもかってくらいにあたしは赤くなった。
『く、草壁さーん!!』
「…何で哲呼ぶの。」
『だってほら、眠いんでしょ?とりあえず部屋戻らなくちゃいけないし、あたし1人で恭弥運ぶの出来なくもないけど大変だし、ね?』
それにこれ以上2人きりでいたら、あたしの心臓もたない!!!
ってゆーのは隠しておいて。
「お呼びですか?檸檬さ…………!?」
『草壁さーん!恭弥が眠いモードなんです!!部屋まで運ぶの手伝って下さ~い!』
「は、はい!」
何とか2人で恭弥を自室まで誘導して、座らせた。
どうやらあたしが修業を終わらせるまで眠らないらしい。
「まだやるの?檸檬。」
『あと25分だけ!もうちょっとで第四段階習得出来そうなの。』
「体調は?」
『全然平気!!絶対無理しないから!!』
「……そう。」
意外とすぐ折れてくれて、ホッとした。
にしても一緒に寝るって……抱き枕状態って事、かなぁ?
『(う~~~ん……)』
ちょっと気になったけど、とりあえず自分の部屋に戻った。
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ランボからハルの居場所を聞いたツナは、食料庫までやって来た。
すると、階段下にうずくまってるハルを発見。
しかし……
「う……ぐすっ、ひく……」
「(まっ、まだ泣いてるー!!)」
どーしようかとあたふたしていると、その気配を感じたのか、ハルの方が上を見上げた。
目線が合うが、突き放すように言う。
「放っといて下さい、日課ですから。」
「(日課って……)」
その言葉に胸が痛んで、ツナは改めて謝罪の決心をし、階段を降りる。
「聞いてくれよハル、今日のは全部俺が悪かったんd…………わああぁっ!!」
話を切り出したのは良いものの、階段の途中で足を滑らせ転げ落ちるツナ。
これにはハルも思わず這い寄る。
「ツナさん、大丈夫ですか!?」
「いつつつ………そ、それより……本当ごめんな、ハル。」
隠したまんまで、ごめん
何も言えなくて、ごめん
なのに勝手に怒って…ごめん
涙なんて流させて…本当にごめん
この言葉達すら、ちゃんと言えないけど。
ただ、謝らなくちゃいけないのは確かだから。
そしたらハルは、急に両手で顔を覆って叫び出した。
「だっ、だったら○××~~!!☆◎@○■$~~!!」
「は!?」
「だったら過去に戻ってから、一緒に遊園地行って下さい!!」
「んなーーー!?」
いつもみたいに、意味分かんない事を言う。
「何でそーなるんだよ!!」
「ツナさん、ムカつくんですもん!!惚れた弱みにつけこんで!!」
「はぁ!?」
更に俺には意味不明。
「つーか、ランボとも過去に戻ったら遊園地行く約束したトコだぞ?」
「はひ?」
俺の台詞に、ハルは目を丸くした。
「ツナさん、ランボちゃんと仲直りしたんですか?」
「そ……そりゃあ、怒鳴ったりして俺も悪かったし……」
あの時は、思い詰めてた。
だから必要以上に怒ってしまった。
それは確かだったから。
「……ハル?」
ボーッとしてるハルに呼び掛けると、次の瞬間笑顔を見せられた。
「やっぱりツナさんは、ハルの知ってるツナさんです♪」
「ん?」
「ハルはもう元気です!!困った時にはいくらでも寄り掛かって下さい!!」
「え?」
「京子ちゃんとよく話すんです。ツナさん達が気兼ねなく大暴れ出来るように、しっかり支えるのが私たちの役目だって。」
よく分かんないけど、ハルが元気になったみたいだから一安心。
でも、よく考えてみたらその通りだ。
寄り掛かれる…
支えてもらってる…
俺達が、ハル達に……
未来では、俺達だけじゃなくて全員で敵に立ち向かってるんだ。
敵だけじゃない、この未来にも。
「(みんなの支えがあって初めて、思いっきり力を出せるんだ……)」
そう思った、その時。
ふっと、俺の頭に武器の事が浮かんだ。
「(支え……そうか!!)」
分かったんだ。
大きな力…炎を出す為に、必要なモノ。
「ハル、サンキュ!」
「はひ?」
「京子ちゃんにも“ありがとう”って言っといて!!絶対だぞ!!」
「ツナさん?もー行っちゃうんですか?」
とにかく今すぐ試したくて、もう一度トレーニングルームへと戻った。
両方のグローブに炎を灯し、足でしっかりと地を踏みしめる。
「(強力な炎を前方に打ち出すには……それを受け止める、支えが必要だったんだ。)」
後方に向けた左手から、柔の炎を出す。
コレが、支え。
そして……
「(剛の炎を………放つ!!!!)」
支えがあるから、吹っ飛ばされる事無く出せる、強力な炎。
これが、俺の武器---!
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-「どう思う?蜜柑。」
「私は契約により白蘭の部下になった身。ご決断に異論を唱えるつもりは一切ありません。」
その返答に満足げに笑ってから、白蘭は思い出したように言った。
-「ところでさー、」
「はい。」
-「蜜柑も、僕に用があるんだよね?」
頬杖をつきながらの質問に、蜜柑は小さく頷く。
「完成を、お知らせしようと思いまして。」
-「お。」
スリープさせていたノートパソコンを開き、
同時に1つの匣をモニターに映す。
-「それが…新しい“マーちゃん”?」
「はい。」
パソコンの画面には、新兵器の能力の詳細が表示されていた。
それを見た白蘭は、表情を好奇心一色に染めて蜜柑に言う。
-「その匣、展開してみせてよ。」
「…分かりました。」
蜜柑の右手中指にあるリングに、オレンジ色の炎が灯る。
それが匣に差し込まれると、中から小さくすばしっこい“何か”が飛び出して来た。
-「へぇ、可愛いね♪」
「外見にはこだわっておりません。」
-「それでも可愛い。」
「……ありがとうございます。」
軽く会釈をする蜜柑。
その肩の上に、先程飛び出して来たモノが乗り、一声鳴いた。
「キィーイッ!!」
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もう一度、ドアに手を当てて目を瞑る。
『(第六感、発動!)』
廊下を出て、真直ぐ行くとボンゴレアジトの地下5階に繋がってる。
作戦室のモニター、
応接室のソファ、
医務室のベッド…
『(よし、次は下に辿っていこう……)』
5階の床を突き抜けて、地下6階へ。
『(これ……シャワー室…?)』
もうちょっとやってみようとしたけど、突然体が悲鳴をあげる。
ドクンッ、
『うぐっ……!』
慌てて発動解除して、深呼吸を3回。
でも何だか少し、偏頭痛がする。
そう言えば、髑髏の思念を辿って骸に会いに行った時、あたしは軽い発作を起こした。
なのに、気がついたら体調は回復してて………
『何でだろう…?』
起きた時、側には恭弥がいた。
何か特別な処置法…あるのかな……?
だとしたら、10年後の恭弥がソレを知っててもおかしくない。
『うーん……聞いてみようかなー…』
それに、草壁さんなら頭痛薬とか持ってるかもしれないし!
そろそろ25分経つし。
後にあたしは、この時恭弥に聞きに行って良かったと心から思うようになる。
第六感だけでなく、元から備えてる6つの能力によるリバウンド………
それら全てを克服する方法が、そこにはあったから。
降り掛かるトンファーにグローブで応戦するも、速い攻撃についていけない。
殴られたツナはそのまま炎を噴射し雲雀に突っ込んで行く。
が、雲雀はその足をトンファーで受け止め再度攻撃。
雲雀の優勢は目に見えているが、以前よりツナの殴られる回数は減少した。
そのバトルの様子を見て、草壁が言う。
「驚いたな…沢田さんの動きが格段に良くなってる。ピーキーなあの炎をモノにし始めてるようですね。」
「それは違うな。ヤツは2種類の炎を使い分けているんだ。」
「2種類…?」
聞き返す草壁に、不調のせいか座ったままのラルが説明する。
従来のノーマルグローブの炎はエネルギーが常に分散するため感覚を掴みやすく、
微妙な出力が出来るため姿勢制御やホバリングなどに適している。
コレが“柔の炎”。
対するver.V.Rで得た純粋な炎は扱いにくいが爆発的にエネルギーが上昇して行き、
直線の加速やココ1番でパワーが必要な時に使える。
コレが“剛の炎”。
「なるほど、可変式というワケか……考えましたね、ラル・ミルチ。」
「俺ではない、沢田だ。」
「ボンゴレの……超直感ですか。」
「確かにヤツの上達ぶりに理由を付けたくなるのは分かるが、そんな迷信を俺は信じない。」
それに、動きが良くなっても匣を持っていないツナの戦闘力はまるで話にならない。
雲雀は強いがまだ匣を使っていない。
匣未使用の相手に手こずっていてはミルフィオーレには太刀打ち出来ない。
そう、ラルは続けた。
「それは、沢田が1番良く分かってると思うがな。」
武器
同じ頃。
『(ココの廊下を真直ぐ行くと…アレ?今どの辺??)』
自室のドアに手を当て、波長を辿っていた檸檬。
途中で道に迷い、慌てて第六感を停止する。
『やっぱ難しいなぁー、実際の景色が見えてないと。』
波長のセカイでは音や立体感が無い。
増してや色なんて存在しない。
予め見ておいた景色を第六感で視直せば、把握は簡単。
しかし、いきなり波長のみの景色で把握するとなると………
『ふぅ……この修業、割と精神力使うしー…』
もう一度、未来のあたしが残したノートを見る。
“第四段階 視覚外の波長の認識
・波長の景色から元の景色を把握する
・ドアや壁の前に立ち、そこから波長を辿り、なるべく遠くまで視る
・初めは目を閉じたまま、慣れて来たら目を開けたまま背後の波長を読む”
『こんな簡単に書いてあるけどさー…』
ココって地下だし、入り組んでるからすぐ迷っちゃう。
何とか恭弥のアジトからボンゴレアジトまで辿り着く事は出来たけど。
『んー……………ん?』
ふと、ファイルブックの方に目が行って、パラパラ捲ってみた。
と、小さなメモを発見。
そこに書いてある文字に驚いた。
『“波長の…見分け方”!!?』
まさにあたしが行き詰まっていたトコ。
さすが未来の自分だなぁ、と思いながらメモを読む。
・波長の世界で色を見分ける為には“光”を読み取る
・光は大まかに分けて赤、青、緑の3種の波長から構成される
・物体の色を波長から推測したい時は、どの波長が反射されているかを視る
『反射されている波長……ってか、まずは光を視なくちゃいけないんだ!』
天井を見上げて、第六感を発動させた。
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「(ダメだ…!!このまま機動力を上げていったとしても勝てる気がしない…)」
上がる息を抑えながら考えるツナに、雲雀は歩み寄りながら言った。
「いつまで草食動物の戦い方をするつもりだい?君はまだ武器を使っていないよ、沢田綱吉。」
「(武器!?)」
ハッとすると同時に、死ぬ気モードが終わる。
それを見た雲雀は踵を返して。
「眠くなって来た、そろそろ帰る。」
「なっ!!ちょっと待って下さい、雲雀さん!!」
引き止めようとするツナだったが、ラルに休めと言われてトレーニングルームを出た。
「(どーゆー事だろう………?武器っていっても俺、匣持ってないし、Xグローブしか無いんだけど…)」
廊下を歩きながら、ツナは雲雀に言われた事を思い返していた。
しかし、グローブの使い方は零地点突破と炎を出す以外に思いつかない。
「(そう言えばXANXUSの武器は炎を攻撃とジェットの両方に使ってたんだよな…)」
リング争奪戦時、その炎の攻撃に苦戦を強いられた事を思い出す。
「(そーだ!!強力な炎をそのまま前に持って来て、敵のいる方に発射すれば凄い技に……!!)」
しかしそれは、自分の体を後ろに吹っ飛ばしてしまう事に気がつく。
以前、雲雀との対戦で地面に突っ込んでしまったのだ。
「ダメだぁ~~。パワーあり過ぎんだよな~……」
ため息をつきながら歩くツナの目に、不意に黒いモジャモジャ頭が映った。
「(ランボ……)」
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カタカタ…
その部屋には、相変わらずタイピングの音のみが響いていた。
十数分に渡る操作の後、彼女・蜜柑はエンターキーを押す。
と、正面上部のモニターに白く広い部屋が映し出された。
-「あれ?」
その部屋の中心にあるソファに座っていた人物が、カメラの方を向く。
-「やぁ、早かったね。蜜柑♪」
言いながら白蘭はいつものように笑顔を見せた。
-「どーやったの?こっちから遮断されてたハズなのに。」
先程まで交戦していたとは思えない陽気さを纏い、白蘭は蜜柑に尋ねる。
蜜柑の方も、何ら変わらない口調で応答した。
「不自然な回線遮断でしたので、こちらから強制的に開きました。不都合でしたか?」
-「んーん、僕も蜜柑トコに繋ぎたいなーって思ってたから♪正チャンの方はまだ復旧してないみたいだね。」
「メローネ基地のメインコンピューターから本部への回線は他の部下が。私はこのパソコンだけ………」
-「そう、まーいいや。僕は何とも無いよって、とりあえず蜜柑に伝えられたから。」
「それが、繋ぎたかった理由ですか?」
-「うん♪」
満面の笑みで答える白蘭に、蜜柑は小さくため息をついてから言う。
「そうですか……ご無事で何よりです。」
-「何?心配してくれてたの?」
「そう解釈なさるなら、構いません。」
-「んじゃ、そーする。でももう1つ、蜜柑に言っとこうと思って。」
少し真剣になった声色に、蜜柑も瞳を光らせる。
「お聞きします。」
-「DARQ…じゃなくて今はまだ檸檬チャンか……とにかく、徐々に力をつけて来てるみたいだよ。」
「……と、言いますと?」
-「骸君…あ、レオ君の正体ね…やっつける時にさ、一瞬、まるで再会を喜ぶような穏やかな目になって。だから直接檸檬チャンの存在を認識出来たワケじゃないけど、骸君の思念に会いに来たんじゃないかなって思ったんだ。」
言われた蜜柑は少し考えて、こう返す。
「確かに、姉の元にはクローム髑髏がいます。彼女の脳波・思念を辿れば不可能ではないかと。」
-「うん、そうなんだよね。それに、ボンゴレはどうやら僕たちへの大規模な攻撃作戦を立ててるみたいなんだ。だから檸檬チャンはDARQの力を更に高めて来ると思う。」
「問題ありません。DARQの力の完成は、私の目的と白蘭の願望の第一歩です。」
瞳には憎悪の光を宿すも淡々と話す蜜柑に、白蘭は楽しそうに笑った。
-「頼もしいなぁ♪でもまぁ、正チャンはちょっと大変になるかもしれない。それで、増援に“彼”を送ろうと思うんだけどー……」
「“彼”…?」
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怒鳴って泣かせてしまった事を思い出したツナ。
ランボが自分を警戒して隠れている好きに、廊下に1つのぶどう飴を置いた。
そっと物陰から顔を出したランボは、飴玉を見つけて吃驚した。
好物を目の前に、物陰から出て拾おうとしたランボ。
すると…
「わっ!」
「ぐぴゃっ!!!」
ツナが飛び出して来て、ランボは一目散に逃げようとする。
が、すぐに捕まえられた。
「逃がさないぞこいつっ!」
「放せっ!!」
「こちょこちょこちょ~~~」
先程怒鳴られたときとは違う、ツナの様子。
いつもみたいに遊んでくれていると思うと、一気に緊張の糸がほぐれていき……
「ギャハハハハハ!!」
「どーだランボ!」
「くすぐったい~~~~~!!ツナやめろ~~♪」
「わ、ランボ!唾垂らすなよ~っ!」
「死む~!!」
2人の笑い声は、廊下に明るく響き渡っていた。
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『(あ、視えて来た…!)』
光を構成する、3種類の波長。
それが分かってくれば、物体の色を識別出来る。
例えば、青い光の波長を跳ね返している物体は普通に見ると青、というように。
『そっかそっかぁー。』
あとは立体の物が何処にあるか、その位置関係を正確に掴むことが大事かな……
そう思って、もっかい発動させようとした、その時。
「檸檬、ちゃんと休憩入れてる?」
『ひょえ!』
突然ドアが開いたから、発動状態のまま振り向いてしまった。
目の前に視えるのは、人影。
あー、なるほど。
人の姿は波長で視るとこーなるんだー…。
なんて思ってると、両頬にペチッという衝撃が。
『うっ、』
「何ボーッとしてるの。」
『あはは…ごめん。』
仕方無く発動をやめて、恭弥に謝る。
てか、突然入って来るのは心臓に悪いんだけど……ま、いっか。
『ちゃんとさっき休憩入れたよ。言われた通り、25分で区切ってるし。』
「………なら、いいけど。」
一息ついた恭弥はあたしの頬から手を放し、そのままギュウと抱きしめた。
何だか、あったか過ぎて眠っちゃいそう。
そんな眠気を紛らわそうと、恭弥に問いかける。
『心配してくれたのー?』
「…………うん。」
『えっ…?///』
まさか素直に「うん」なんて言われると思わなかったから、本気で照れた。
お互いの顔は見えないまんま、ただギュッと抱きしめ合ってる。
「何、悪い?」
『そ、そーじゃなくて……うーん…ありがとっ♪』
とりあえず真っ先にお礼を言っておく。
「………眠い。」
『えぇ!?ちょっ…この体勢でソレ!?恭弥の部屋は廊下の向こうでしょ!』
「檸檬とがいい。」
もしかして、10年経っても我が儘王子体質は変わってないのだろうか。
そんな疑問を抱きながら慌てふためくあたしの頬に、恭弥はキスを落とす。
『ま、待って待って!何してるの!?///』
「挨拶代わり、でしょ?」
『なっ…!///』
微笑む恭弥が色っぽ過ぎて、これでもかってくらいにあたしは赤くなった。
『く、草壁さーん!!』
「…何で哲呼ぶの。」
『だってほら、眠いんでしょ?とりあえず部屋戻らなくちゃいけないし、あたし1人で恭弥運ぶの出来なくもないけど大変だし、ね?』
それにこれ以上2人きりでいたら、あたしの心臓もたない!!!
ってゆーのは隠しておいて。
「お呼びですか?檸檬さ…………!?」
『草壁さーん!恭弥が眠いモードなんです!!部屋まで運ぶの手伝って下さ~い!』
「は、はい!」
何とか2人で恭弥を自室まで誘導して、座らせた。
どうやらあたしが修業を終わらせるまで眠らないらしい。
「まだやるの?檸檬。」
『あと25分だけ!もうちょっとで第四段階習得出来そうなの。』
「体調は?」
『全然平気!!絶対無理しないから!!』
「……そう。」
意外とすぐ折れてくれて、ホッとした。
にしても一緒に寝るって……抱き枕状態って事、かなぁ?
『(う~~~ん……)』
ちょっと気になったけど、とりあえず自分の部屋に戻った。
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ランボからハルの居場所を聞いたツナは、食料庫までやって来た。
すると、階段下にうずくまってるハルを発見。
しかし……
「う……ぐすっ、ひく……」
「(まっ、まだ泣いてるー!!)」
どーしようかとあたふたしていると、その気配を感じたのか、ハルの方が上を見上げた。
目線が合うが、突き放すように言う。
「放っといて下さい、日課ですから。」
「(日課って……)」
その言葉に胸が痛んで、ツナは改めて謝罪の決心をし、階段を降りる。
「聞いてくれよハル、今日のは全部俺が悪かったんd…………わああぁっ!!」
話を切り出したのは良いものの、階段の途中で足を滑らせ転げ落ちるツナ。
これにはハルも思わず這い寄る。
「ツナさん、大丈夫ですか!?」
「いつつつ………そ、それより……本当ごめんな、ハル。」
隠したまんまで、ごめん
何も言えなくて、ごめん
なのに勝手に怒って…ごめん
涙なんて流させて…本当にごめん
この言葉達すら、ちゃんと言えないけど。
ただ、謝らなくちゃいけないのは確かだから。
そしたらハルは、急に両手で顔を覆って叫び出した。
「だっ、だったら○××~~!!☆◎@○■$~~!!」
「は!?」
「だったら過去に戻ってから、一緒に遊園地行って下さい!!」
「んなーーー!?」
いつもみたいに、意味分かんない事を言う。
「何でそーなるんだよ!!」
「ツナさん、ムカつくんですもん!!惚れた弱みにつけこんで!!」
「はぁ!?」
更に俺には意味不明。
「つーか、ランボとも過去に戻ったら遊園地行く約束したトコだぞ?」
「はひ?」
俺の台詞に、ハルは目を丸くした。
「ツナさん、ランボちゃんと仲直りしたんですか?」
「そ……そりゃあ、怒鳴ったりして俺も悪かったし……」
あの時は、思い詰めてた。
だから必要以上に怒ってしまった。
それは確かだったから。
「……ハル?」
ボーッとしてるハルに呼び掛けると、次の瞬間笑顔を見せられた。
「やっぱりツナさんは、ハルの知ってるツナさんです♪」
「ん?」
「ハルはもう元気です!!困った時にはいくらでも寄り掛かって下さい!!」
「え?」
「京子ちゃんとよく話すんです。ツナさん達が気兼ねなく大暴れ出来るように、しっかり支えるのが私たちの役目だって。」
よく分かんないけど、ハルが元気になったみたいだから一安心。
でも、よく考えてみたらその通りだ。
寄り掛かれる…
支えてもらってる…
俺達が、ハル達に……
未来では、俺達だけじゃなくて全員で敵に立ち向かってるんだ。
敵だけじゃない、この未来にも。
「(みんなの支えがあって初めて、思いっきり力を出せるんだ……)」
そう思った、その時。
ふっと、俺の頭に武器の事が浮かんだ。
「(支え……そうか!!)」
分かったんだ。
大きな力…炎を出す為に、必要なモノ。
「ハル、サンキュ!」
「はひ?」
「京子ちゃんにも“ありがとう”って言っといて!!絶対だぞ!!」
「ツナさん?もー行っちゃうんですか?」
とにかく今すぐ試したくて、もう一度トレーニングルームへと戻った。
両方のグローブに炎を灯し、足でしっかりと地を踏みしめる。
「(強力な炎を前方に打ち出すには……それを受け止める、支えが必要だったんだ。)」
後方に向けた左手から、柔の炎を出す。
コレが、支え。
そして……
「(剛の炎を………放つ!!!!)」
支えがあるから、吹っ飛ばされる事無く出せる、強力な炎。
これが、俺の武器---!
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-「どう思う?蜜柑。」
「私は契約により白蘭の部下になった身。ご決断に異論を唱えるつもりは一切ありません。」
その返答に満足げに笑ってから、白蘭は思い出したように言った。
-「ところでさー、」
「はい。」
-「蜜柑も、僕に用があるんだよね?」
頬杖をつきながらの質問に、蜜柑は小さく頷く。
「完成を、お知らせしようと思いまして。」
-「お。」
スリープさせていたノートパソコンを開き、
同時に1つの匣をモニターに映す。
-「それが…新しい“マーちゃん”?」
「はい。」
パソコンの画面には、新兵器の能力の詳細が表示されていた。
それを見た白蘭は、表情を好奇心一色に染めて蜜柑に言う。
-「その匣、展開してみせてよ。」
「…分かりました。」
蜜柑の右手中指にあるリングに、オレンジ色の炎が灯る。
それが匣に差し込まれると、中から小さくすばしっこい“何か”が飛び出して来た。
-「へぇ、可愛いね♪」
「外見にはこだわっておりません。」
-「それでも可愛い。」
「……ありがとうございます。」
軽く会釈をする蜜柑。
その肩の上に、先程飛び出して来たモノが乗り、一声鳴いた。
「キィーイッ!!」
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もう一度、ドアに手を当てて目を瞑る。
『(第六感、発動!)』
廊下を出て、真直ぐ行くとボンゴレアジトの地下5階に繋がってる。
作戦室のモニター、
応接室のソファ、
医務室のベッド…
『(よし、次は下に辿っていこう……)』
5階の床を突き抜けて、地下6階へ。
『(これ……シャワー室…?)』
もうちょっとやってみようとしたけど、突然体が悲鳴をあげる。
ドクンッ、
『うぐっ……!』
慌てて発動解除して、深呼吸を3回。
でも何だか少し、偏頭痛がする。
そう言えば、髑髏の思念を辿って骸に会いに行った時、あたしは軽い発作を起こした。
なのに、気がついたら体調は回復してて………
『何でだろう…?』
起きた時、側には恭弥がいた。
何か特別な処置法…あるのかな……?
だとしたら、10年後の恭弥がソレを知っててもおかしくない。
『うーん……聞いてみようかなー…』
それに、草壁さんなら頭痛薬とか持ってるかもしれないし!
そろそろ25分経つし。
後にあたしは、この時恭弥に聞きに行って良かったと心から思うようになる。
第六感だけでなく、元から備えてる6つの能力によるリバウンド………
それら全てを克服する方法が、そこにはあったから。