未来編①
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5日後………
それがボンゴレと同盟ファミリー首脳が立てた作戦の決行日。
この基地にいる10代目ファミリーも戦力に加えての計画。
委ねられた決断
「5日後って、すぐだ……」
「だがこの機を逃すと、次にいつミルフィオーレに対し有効な手だてを打てるか分からんのだ。」
ツナを説得する了平に、ラルも付け足す。
「俺達のアジトだって敵にいつ見つかるか分からんのだ。早くて悪い事はない。」
「でもなんか……こんなマフィアの戦争みたいなのに参加するって…俺達の目的と違うっていうか……」
「目的は入江を倒す事だろう。合致している!」
「…でも…」
『ツナ…』
今ひとつ納得がいかないような顔をするツナに、リボーンが言った。
「了平がクロームを連れて来たことで、俺が出した最初の条件はクリアしたな。」
「え?条件…?」
すると今度は獄寺が、満面の笑みで言う。
「守護者集めっスよ、10代目!」
「あっ、そう言えば!!」
ツナと獄寺が入れ替わり、
山本とランボも入れ替わり、
γとの戦いの最中雲雀が合流し、
そして今、了平とクロームがやってきた。
「な、何気に全員揃ってるーー!!!」
『そんな条件出してたんだー、知らなかった。』
「そっか、檸檬はその時にはまだいなかったんだよな…。」
獄寺はふと、野猿を相手に苦戦していた時に現れた10年後の檸檬の姿を思い出した。
「余程みんなの日頃の行いがいいんだな♪」
その能天気発言に我に返った獄寺は、ツナに向かってキリリと言う。
「ボンゴレの守護者としての宿命が、俺達7名を引き合わせたんスよ!」
「(この人…照れずに言ったーーー!!)」
と、ここで了平が話を戻す。
「確かに、この作戦はボンゴレの存亡を賭けた重要な戦いだ。だが、決行するかどうかはお前が決めろ。」
「なぁ!?俺がーーー!?」
今、混乱しているボンゴレ上層部は10年前のツナ達を完全に信頼してるワケじゃない。
ヴァリアーもあくまで9代目の部隊として動く。
よって、ツナの決断で作戦全てが中止になる事はないという。
「だが、このアジトの事はココの主である10代目が決めるべきだと極限に俺が言っておいた!!」
『了平さん……』
「でかくなったな、了平。」
「期限は本日中だ。中止の場合は俺が首脳に伝えにいく。しっかり頼んだぞ、沢田。」
「えっ、ちょっと!」
ニカッと笑いながらツナの肩をガシッと掴んだ了平さんは、話を終えてドアに向かう。
去り際、ラルに「師匠の話はまた…」って言っていた。
「さーて、俺は極限メシ食って寝るっ!!!」
「そんな!困ります!待って下さい!!」
ツナが引き止めようとしたけど、了平さんは行ってしまった。
「どうしよー!!責任重過ぎるよ!!」
『落ち着いて、ツナ。』
「ボスが情けねー声だすな。まずは5日後にお前の納得出来る戦力が得られるか考えるんだ。」
「5日後に予想されるクローム髑髏の状態と、お前達の修業の仕上がりだな。」
『(修業……)』
まだ、完全に空間移動を使いこなすには程遠い。
5日で出来るようになるかなぁ…?
『せめて、相手の炎奪えればなぁ……』
「あ、相手の炎!!?」
『………え?あ、声出してた?』
やば、まだ皆には第六感の事、ちゃんと話してなかったんだっけ。
「おい、どーゆー事だよ檸檬。」
「奪うって…そんなすげーことやっちまうのか?」
『あ、うん、まぁ……それが目標なんだけど…』
ポリポリと頬を掻くあたしに、リボーンが言う。
「この際だ。話しとけ、檸檬。」
『わ、分かった…』
あたしは話した。
お母さんから受け継がれた第六感を使って、10年後のあたしが戦っていた事。
けれどその力は波動から炎を生み出すリングと相性が悪く、自分でリングから炎を精製出来なかった事。
だから波長を読む事で相手の炎を自分のナイフに乗せて、匣を開けていた事。
説明を聞き終わった隼人は、何だか妙に納得していた。
そして武はいつものような明るい笑みで言う。
「やっぱすげーな!檸檬はさ。獄寺、負けねーように頑張ろーぜっ!そーすりゃ5日後の戦力になるし。なっ!」
「あ…あぁ、任せて下さい!10代目!!」
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雲雀のアジトに戻った草壁と檸檬。
「私見ですが、クロームが黒曜ランドにいるという情報は、骸からヴァリアーへもたらされたものかと。」
『そっか、だからヴァリアーは了平さんを日本に送ったんだね。』
「はい。それと、笹川了平は沢田の決断後にココへ来ます。その前にクロームに会っておきますか?」
『(恭弥が直接……?)』
表情を窺ってみるけど恭弥はサラッと答えた。
「いいよ、骸はもうそこにはいないんだろ?」
「へい、おそらく…」
『(あ、骸に会っておきたかったのね。)』
ちょっと納得。
すると今度は草壁さんが、他の話題を持ち出す。
「それと恭さん、クロームとイタリアで接触していた例の男の身元が割れました。」
髑髏と接触…?
あぁ、さっき見せてもらった空港の写真の人ね。
「名は、グイド・グレコ。17歳のイタリア人。15人を殺した凶悪犯で、1年前に脱獄したそうです。」
「ふぅん、それってまるで…」
「へい……かつての骸そのものです。」
かつての骸みたいな人が、髑髏と接触してた…?
じゃあ、そのグレコさんって人は骸の仲間って事、かなぁ?
『………って、あ!』
「どうしました、檸檬さん。」
『あたし、修業しなくちゃ!行って来ます!!』
立ち上がって部屋に戻ろうとすると…
「待って、檸檬。」
『へ?』
「何分やる予定なの。」
『えーっとー……とりあえず20分。体調が良かったら続行するつもり。』
「…そう。」
心配、してくれたのかな…
…そうだよね。
もし無理したら、あたしの目は…
「行きなよ、檸檬。」
『うんっ!』
「お気をつけて。」
『はい!』
グッと意気込んで、あたしは部屋を飛び出した。
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メディカルルームから戻る途中、蜜柑の携帯が鳴った。
「はい。」
-「もしもし蜜柑?僕だよ。」
「白蘭……連絡は戻った後に…」
-「うん、でも待ちきれなくて。今ね、外食しに行くんだー♪」
「そうですか、お気をつけて。」
話しながらも、コツコツと自室へ向かう蜜柑。
と、白蘭は突如声色を変えて話し始める。
-「蜜柑、僕ね…さっき正チャンに面白いことしちゃった。僕の部屋の様子、映してみたんだー♪」
「部屋の様子……」
-「蜜柑は、気付いてた?」
数秒考えた蜜柑は、少し声を小さくして答える。
「伝達係は偽者、ですね。お気をつけ下さい。」
-「お、また心配してくれた?」
「部下として、当然言うべき台詞です。」
電話口での蜜柑の返答にも関わらず、白蘭は口元を緩ませる。
口先だけだと分かっていても、緩んでしまう。
それは恐らく、
好奇心で捕まえた優秀な部下に対する、
好奇心以外の純粋な…………
-「僕って、変だよなぁ。」
「何がです?」
-「んーん、何でもない。切るね、蜜柑。」
「はい。」
切られた事を確認し、蜜柑は携帯をポケットにしまった。
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------
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「まだ白蘭サンと連絡とれないのかい?」
同じ頃、メローネ基地の別の廊下で、入江がチェルベッロに尋ねていた。
「はい、先程お食事に出られたとの事です。」
「食事?何であの人はこう……あーなんだ…」
何とも言えない呆れた感じを、言葉にすることが出来ない入江。
とりあえずグロを見張っておくよう指示し、研究室で休む事にした。
「入江様、上着は……」
「肌身離さず、だろ?」
「(クスクス)……失礼しました。」
「はーーーっ…」
机に突っ伏した拍子に、パソコンの何かのキーを押してしまった。
--「聞いた?正チャン。」
「えっ!?」
--「グロがやられたって聞いたら……」
突然聞こえた白蘭の声に驚き飛び上がるも、それは先程の通信が誤って録画された物だと気付く。
流れる映像をボーッと見つめながら、入江は呟く。
「いつも元気だなー、白蘭サン。」
ところが、ふと目に映ったモノに、思わず立ち上がった。
「(な…何だ!?これは……!!?)」
---
------
-------------
ボンゴレ地下アジト、トレーニングルーム。
超死ぬ気モードのツナが、赤いコーンの間をジグザグに進んでいく。
全て回りきった後、ズズッと止まって呼吸を整えた。
「ふ~、体がきしむ…」
「スラロームのタイムはだいぶ縮まって来ている。だがそれでもノーマルグローブの方が早い。まだまだ動きに無駄がある、という事だ!」
ストップウォッチを手にしたラルが、コツコツとツナに歩み寄る。
「こんな事では午後の修業で、また雲雀に半殺しにされて終わるぞ!!」
「ひいい!!」
しばらく習っていただけあって、殴られるタイミングだと察し怯えるツナ。
しかし…
足を止めたラルは、何かを考え背を向ける。
「他の連中を見て来い。5日後、戦力になるのかをな……」
「は…はい……」
その様子を疑問に思いつつ、ツナは獄寺や山本、そして檸檬の修業を見に行く事にした。
---
「つっても、檸檬の部屋って雲雀さんのアジトにあるんだっけ……見に行くの無理だよなー。」
雲雀のアジトとの境界である扉の前で、唸って考え込むツナ。
不意に、扉が開いた。
「誰かと思えば……沢田さん。」
「あ、草壁さん!」
「こんな所で一体何を…?」
「じ、実は…」
なるべく謙虚に申し出てみた。
「なるほど、檸檬さんの修業ですか………」
「あの、第六感ってどれくらい危険なんですか?俺……檸檬がまた無理しちゃうような気がして…」
「無理、ですか…」
草壁は少し目を細めた。
檸檬の修業がどれだけ危険で、どれだけ体に負荷がかかるかは、草壁も承知している。
知った上で聞いた、今のツナの言葉。
それはまさしくボンゴレの超直感であり、ツナのボンゴレたる所以……
「分かりました。ご案内します。」
「ほ、ホントですか!?」
「貴方は仮にもボンゴレ10代目、檸檬さんの上司になる人だ。力を見ておいて、無駄はないでしょう。」
「あ、ありがとうございます!!」
---
--------
「ここです。」
草壁に案内されて、ツナはドアの前でごくりとつばを飲む。
そして、そうっとドアのぶを捻った。
「あの、檸檬……いる…?」
『ツナ!?』
少し焦ったような声。
ツナはドアをギイッと引いた。
「檸檬っ…!?」
『は、入っちゃダメっ!!』
「へ?」
次の瞬間、部屋の中からの突風で全開になるドア。
ツナと草壁に直撃した風は、ものすごく冷たい。
「んなっ!!?」
『ツナ!草壁さん!』
ビュオオ…という寒風は、数秒後収まった。
恐る恐る目を開けるツナに、檸檬は駆け寄る。
『ごめんね!寒かったでしょ!?』
「な……檸檬、一体何してんの?」
見ると、檸檬の部屋の中は風が吹いていたとは思えない程整っていて。
驚きながら尋ねるツナに、檸檬は言った。
『第六感での空間移動の練習。頑張って第3段階までいったの♪物じゃなくて、あたし自身の移動を練習してて……』
「そ、それで繋いだ先が雪山ー!?」
『ごめんね、まさか誰か入ってくるなんて思わなかったから…』
苦笑いをする檸檬を見て、元気そうだとホッとするツナ。
草壁は、くれぐれも無理しないよう再度念を押していた。
『そっかぁ、修業見て回ってるんだ。』
「うん…」
『ツナのは?』
「え、あぁ……もうちょっと使いこなせないかなぁ、なんて…」
『そっか、グローブ新しくなったもんね!頑張って!!』
明るい檸檬の笑顔を見て、ツナも返した。
「ありがとう、檸檬。」
次に向かったのは、地下10階。
山本の修業場である。
「この階…ホントに日本風になってる。10年後の俺、何考えてこんな建物作ったんだ?」
長い廊下を歩いていると、障子の向こうから暴れているような音が。
「山本、ここかな?」
そーっと覗き込んだ、その時。
ベチャチャチャ!
「んぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」
何かが顔に当たり、ツナは思わず悲鳴をあげる。
何とか開いた視界に入ったのは、銃を乱射するリボーンと、
刀で弾く和服の山本だった。
「あっ!」
「ツナっ!?」
ツナの存在に気がついた山本は、そのまま後ろに倒れ戸が外れる。
2人で下敷きになってしまった。
「修行中に入ってくる奴が悪いんだぞ。」
「いや…ほら、修業の調子はどうかな……なんて!」
「ああ…」
「なるほどな。」
山本は、蛍光塗料が入ったペイント弾で修業しているという。
だから光っている加減でその成果は分かる、とリボーン。
ところが、いざ部屋を暗くしてみると……
「光まくりーーー!?」
---
-------
続いてやって来たのは、地下16階のストームルーム。
獄寺の修業場である。
「あ……ビアンキ…獄寺君の修業、どお?」
「バックレたわ。」
「………え?」
すぐ飲み込めないその内容に聞き返したツナ。
ビアンキはすくっと立ち上がって叫んだ。
「修業から逃げたって言ってるの!!」
「んなー!!?」
とりあえず、これだけは分かった。
「(こんな調子じゃ5日後に殴り込みなんて……無理だよ…!!)」
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同じ頃、ミルフィオーレアジトにて。
入江に呼ばれたチェルベッロは、先程の白蘭の通信映像を見せられていた。
「この男は誰だ!?」
入江が1人で見た時に、驚いた理由。
それは、見知らぬ黒髪の若い男が白蘭の部屋にいたからだった。
「この部屋に普段入室出来るのは、許可された伝達係と世話係、そしてライト様のみかと。」
「確か先日、伝達係のルイジが亡くなられ、代わりにFランクのレオナルド・リッピという男が配属されたと聞いております。」
「あぁ……その名は知っている…。レオナルドは僕が推薦したんだからね…」
だが、ココに映っている人物は入江が推薦した男と明らかに違っていた。
「レオナルドは……60歳の小男だ!!!」
一体、この伝達係は何者なのか。
激しい焦燥感が入江の中を駆け巡っていた。
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『んー…だいぶ行けるようになったかも♪』
自分自身を空間移動させる修業も、結構身に付いて来た。
『よし、ボールキャッチしてみよう!』
今まではボールの周りの波長をねじ曲げてたけど、
今度はあたしの手首周辺の波長をねじ曲げて、ボールに近づける。
『いけっ!』
正面に向かってボールを投げて、
向こうでキャッチ…………
「檸檬。」
『ぎょわっ!!』
ボトッ、
『あー……』
普通に落としてしまったボールを見て、思わず溜め息。
『もー、恭弥ってば突然入ってくるなんてー…』
「時間だよ、檸檬。」
『あ、もう20分経ったの!?早いよ~っ。もうちょっとやっちゃダメ?』
「ダメ、休憩入れないと咬み殺す。」
『……はーい。』
咬み殺すって……脅しじゃんっ。
今の恭弥の強さの上限がイマイチちゃんと分かってないから、攻撃避けられる自信も無いし。
大人しく従って修業を止める。
『(今度は30分って言おう。)』
小さく決意して、あたしは恭弥の部屋へ向かう。
あのナイフの使い方は、未だ分からないまま。
『(待っててね、蜜柑……)』
次は絶対、止めてみせるんだから。
それがボンゴレと同盟ファミリー首脳が立てた作戦の決行日。
この基地にいる10代目ファミリーも戦力に加えての計画。
委ねられた決断
「5日後って、すぐだ……」
「だがこの機を逃すと、次にいつミルフィオーレに対し有効な手だてを打てるか分からんのだ。」
ツナを説得する了平に、ラルも付け足す。
「俺達のアジトだって敵にいつ見つかるか分からんのだ。早くて悪い事はない。」
「でもなんか……こんなマフィアの戦争みたいなのに参加するって…俺達の目的と違うっていうか……」
「目的は入江を倒す事だろう。合致している!」
「…でも…」
『ツナ…』
今ひとつ納得がいかないような顔をするツナに、リボーンが言った。
「了平がクロームを連れて来たことで、俺が出した最初の条件はクリアしたな。」
「え?条件…?」
すると今度は獄寺が、満面の笑みで言う。
「守護者集めっスよ、10代目!」
「あっ、そう言えば!!」
ツナと獄寺が入れ替わり、
山本とランボも入れ替わり、
γとの戦いの最中雲雀が合流し、
そして今、了平とクロームがやってきた。
「な、何気に全員揃ってるーー!!!」
『そんな条件出してたんだー、知らなかった。』
「そっか、檸檬はその時にはまだいなかったんだよな…。」
獄寺はふと、野猿を相手に苦戦していた時に現れた10年後の檸檬の姿を思い出した。
「余程みんなの日頃の行いがいいんだな♪」
その能天気発言に我に返った獄寺は、ツナに向かってキリリと言う。
「ボンゴレの守護者としての宿命が、俺達7名を引き合わせたんスよ!」
「(この人…照れずに言ったーーー!!)」
と、ここで了平が話を戻す。
「確かに、この作戦はボンゴレの存亡を賭けた重要な戦いだ。だが、決行するかどうかはお前が決めろ。」
「なぁ!?俺がーーー!?」
今、混乱しているボンゴレ上層部は10年前のツナ達を完全に信頼してるワケじゃない。
ヴァリアーもあくまで9代目の部隊として動く。
よって、ツナの決断で作戦全てが中止になる事はないという。
「だが、このアジトの事はココの主である10代目が決めるべきだと極限に俺が言っておいた!!」
『了平さん……』
「でかくなったな、了平。」
「期限は本日中だ。中止の場合は俺が首脳に伝えにいく。しっかり頼んだぞ、沢田。」
「えっ、ちょっと!」
ニカッと笑いながらツナの肩をガシッと掴んだ了平さんは、話を終えてドアに向かう。
去り際、ラルに「師匠の話はまた…」って言っていた。
「さーて、俺は極限メシ食って寝るっ!!!」
「そんな!困ります!待って下さい!!」
ツナが引き止めようとしたけど、了平さんは行ってしまった。
「どうしよー!!責任重過ぎるよ!!」
『落ち着いて、ツナ。』
「ボスが情けねー声だすな。まずは5日後にお前の納得出来る戦力が得られるか考えるんだ。」
「5日後に予想されるクローム髑髏の状態と、お前達の修業の仕上がりだな。」
『(修業……)』
まだ、完全に空間移動を使いこなすには程遠い。
5日で出来るようになるかなぁ…?
『せめて、相手の炎奪えればなぁ……』
「あ、相手の炎!!?」
『………え?あ、声出してた?』
やば、まだ皆には第六感の事、ちゃんと話してなかったんだっけ。
「おい、どーゆー事だよ檸檬。」
「奪うって…そんなすげーことやっちまうのか?」
『あ、うん、まぁ……それが目標なんだけど…』
ポリポリと頬を掻くあたしに、リボーンが言う。
「この際だ。話しとけ、檸檬。」
『わ、分かった…』
あたしは話した。
お母さんから受け継がれた第六感を使って、10年後のあたしが戦っていた事。
けれどその力は波動から炎を生み出すリングと相性が悪く、自分でリングから炎を精製出来なかった事。
だから波長を読む事で相手の炎を自分のナイフに乗せて、匣を開けていた事。
説明を聞き終わった隼人は、何だか妙に納得していた。
そして武はいつものような明るい笑みで言う。
「やっぱすげーな!檸檬はさ。獄寺、負けねーように頑張ろーぜっ!そーすりゃ5日後の戦力になるし。なっ!」
「あ…あぁ、任せて下さい!10代目!!」
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雲雀のアジトに戻った草壁と檸檬。
「私見ですが、クロームが黒曜ランドにいるという情報は、骸からヴァリアーへもたらされたものかと。」
『そっか、だからヴァリアーは了平さんを日本に送ったんだね。』
「はい。それと、笹川了平は沢田の決断後にココへ来ます。その前にクロームに会っておきますか?」
『(恭弥が直接……?)』
表情を窺ってみるけど恭弥はサラッと答えた。
「いいよ、骸はもうそこにはいないんだろ?」
「へい、おそらく…」
『(あ、骸に会っておきたかったのね。)』
ちょっと納得。
すると今度は草壁さんが、他の話題を持ち出す。
「それと恭さん、クロームとイタリアで接触していた例の男の身元が割れました。」
髑髏と接触…?
あぁ、さっき見せてもらった空港の写真の人ね。
「名は、グイド・グレコ。17歳のイタリア人。15人を殺した凶悪犯で、1年前に脱獄したそうです。」
「ふぅん、それってまるで…」
「へい……かつての骸そのものです。」
かつての骸みたいな人が、髑髏と接触してた…?
じゃあ、そのグレコさんって人は骸の仲間って事、かなぁ?
『………って、あ!』
「どうしました、檸檬さん。」
『あたし、修業しなくちゃ!行って来ます!!』
立ち上がって部屋に戻ろうとすると…
「待って、檸檬。」
『へ?』
「何分やる予定なの。」
『えーっとー……とりあえず20分。体調が良かったら続行するつもり。』
「…そう。」
心配、してくれたのかな…
…そうだよね。
もし無理したら、あたしの目は…
「行きなよ、檸檬。」
『うんっ!』
「お気をつけて。」
『はい!』
グッと意気込んで、あたしは部屋を飛び出した。
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メディカルルームから戻る途中、蜜柑の携帯が鳴った。
「はい。」
-「もしもし蜜柑?僕だよ。」
「白蘭……連絡は戻った後に…」
-「うん、でも待ちきれなくて。今ね、外食しに行くんだー♪」
「そうですか、お気をつけて。」
話しながらも、コツコツと自室へ向かう蜜柑。
と、白蘭は突如声色を変えて話し始める。
-「蜜柑、僕ね…さっき正チャンに面白いことしちゃった。僕の部屋の様子、映してみたんだー♪」
「部屋の様子……」
-「蜜柑は、気付いてた?」
数秒考えた蜜柑は、少し声を小さくして答える。
「伝達係は偽者、ですね。お気をつけ下さい。」
-「お、また心配してくれた?」
「部下として、当然言うべき台詞です。」
電話口での蜜柑の返答にも関わらず、白蘭は口元を緩ませる。
口先だけだと分かっていても、緩んでしまう。
それは恐らく、
好奇心で捕まえた優秀な部下に対する、
好奇心以外の純粋な…………
-「僕って、変だよなぁ。」
「何がです?」
-「んーん、何でもない。切るね、蜜柑。」
「はい。」
切られた事を確認し、蜜柑は携帯をポケットにしまった。
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「まだ白蘭サンと連絡とれないのかい?」
同じ頃、メローネ基地の別の廊下で、入江がチェルベッロに尋ねていた。
「はい、先程お食事に出られたとの事です。」
「食事?何であの人はこう……あーなんだ…」
何とも言えない呆れた感じを、言葉にすることが出来ない入江。
とりあえずグロを見張っておくよう指示し、研究室で休む事にした。
「入江様、上着は……」
「肌身離さず、だろ?」
「(クスクス)……失礼しました。」
「はーーーっ…」
机に突っ伏した拍子に、パソコンの何かのキーを押してしまった。
--「聞いた?正チャン。」
「えっ!?」
--「グロがやられたって聞いたら……」
突然聞こえた白蘭の声に驚き飛び上がるも、それは先程の通信が誤って録画された物だと気付く。
流れる映像をボーッと見つめながら、入江は呟く。
「いつも元気だなー、白蘭サン。」
ところが、ふと目に映ったモノに、思わず立ち上がった。
「(な…何だ!?これは……!!?)」
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ボンゴレ地下アジト、トレーニングルーム。
超死ぬ気モードのツナが、赤いコーンの間をジグザグに進んでいく。
全て回りきった後、ズズッと止まって呼吸を整えた。
「ふ~、体がきしむ…」
「スラロームのタイムはだいぶ縮まって来ている。だがそれでもノーマルグローブの方が早い。まだまだ動きに無駄がある、という事だ!」
ストップウォッチを手にしたラルが、コツコツとツナに歩み寄る。
「こんな事では午後の修業で、また雲雀に半殺しにされて終わるぞ!!」
「ひいい!!」
しばらく習っていただけあって、殴られるタイミングだと察し怯えるツナ。
しかし…
足を止めたラルは、何かを考え背を向ける。
「他の連中を見て来い。5日後、戦力になるのかをな……」
「は…はい……」
その様子を疑問に思いつつ、ツナは獄寺や山本、そして檸檬の修業を見に行く事にした。
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「つっても、檸檬の部屋って雲雀さんのアジトにあるんだっけ……見に行くの無理だよなー。」
雲雀のアジトとの境界である扉の前で、唸って考え込むツナ。
不意に、扉が開いた。
「誰かと思えば……沢田さん。」
「あ、草壁さん!」
「こんな所で一体何を…?」
「じ、実は…」
なるべく謙虚に申し出てみた。
「なるほど、檸檬さんの修業ですか………」
「あの、第六感ってどれくらい危険なんですか?俺……檸檬がまた無理しちゃうような気がして…」
「無理、ですか…」
草壁は少し目を細めた。
檸檬の修業がどれだけ危険で、どれだけ体に負荷がかかるかは、草壁も承知している。
知った上で聞いた、今のツナの言葉。
それはまさしくボンゴレの超直感であり、ツナのボンゴレたる所以……
「分かりました。ご案内します。」
「ほ、ホントですか!?」
「貴方は仮にもボンゴレ10代目、檸檬さんの上司になる人だ。力を見ておいて、無駄はないでしょう。」
「あ、ありがとうございます!!」
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「ここです。」
草壁に案内されて、ツナはドアの前でごくりとつばを飲む。
そして、そうっとドアのぶを捻った。
「あの、檸檬……いる…?」
『ツナ!?』
少し焦ったような声。
ツナはドアをギイッと引いた。
「檸檬っ…!?」
『は、入っちゃダメっ!!』
「へ?」
次の瞬間、部屋の中からの突風で全開になるドア。
ツナと草壁に直撃した風は、ものすごく冷たい。
「んなっ!!?」
『ツナ!草壁さん!』
ビュオオ…という寒風は、数秒後収まった。
恐る恐る目を開けるツナに、檸檬は駆け寄る。
『ごめんね!寒かったでしょ!?』
「な……檸檬、一体何してんの?」
見ると、檸檬の部屋の中は風が吹いていたとは思えない程整っていて。
驚きながら尋ねるツナに、檸檬は言った。
『第六感での空間移動の練習。頑張って第3段階までいったの♪物じゃなくて、あたし自身の移動を練習してて……』
「そ、それで繋いだ先が雪山ー!?」
『ごめんね、まさか誰か入ってくるなんて思わなかったから…』
苦笑いをする檸檬を見て、元気そうだとホッとするツナ。
草壁は、くれぐれも無理しないよう再度念を押していた。
『そっかぁ、修業見て回ってるんだ。』
「うん…」
『ツナのは?』
「え、あぁ……もうちょっと使いこなせないかなぁ、なんて…」
『そっか、グローブ新しくなったもんね!頑張って!!』
明るい檸檬の笑顔を見て、ツナも返した。
「ありがとう、檸檬。」
次に向かったのは、地下10階。
山本の修業場である。
「この階…ホントに日本風になってる。10年後の俺、何考えてこんな建物作ったんだ?」
長い廊下を歩いていると、障子の向こうから暴れているような音が。
「山本、ここかな?」
そーっと覗き込んだ、その時。
ベチャチャチャ!
「んぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」
何かが顔に当たり、ツナは思わず悲鳴をあげる。
何とか開いた視界に入ったのは、銃を乱射するリボーンと、
刀で弾く和服の山本だった。
「あっ!」
「ツナっ!?」
ツナの存在に気がついた山本は、そのまま後ろに倒れ戸が外れる。
2人で下敷きになってしまった。
「修行中に入ってくる奴が悪いんだぞ。」
「いや…ほら、修業の調子はどうかな……なんて!」
「ああ…」
「なるほどな。」
山本は、蛍光塗料が入ったペイント弾で修業しているという。
だから光っている加減でその成果は分かる、とリボーン。
ところが、いざ部屋を暗くしてみると……
「光まくりーーー!?」
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続いてやって来たのは、地下16階のストームルーム。
獄寺の修業場である。
「あ……ビアンキ…獄寺君の修業、どお?」
「バックレたわ。」
「………え?」
すぐ飲み込めないその内容に聞き返したツナ。
ビアンキはすくっと立ち上がって叫んだ。
「修業から逃げたって言ってるの!!」
「んなー!!?」
とりあえず、これだけは分かった。
「(こんな調子じゃ5日後に殴り込みなんて……無理だよ…!!)」
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同じ頃、ミルフィオーレアジトにて。
入江に呼ばれたチェルベッロは、先程の白蘭の通信映像を見せられていた。
「この男は誰だ!?」
入江が1人で見た時に、驚いた理由。
それは、見知らぬ黒髪の若い男が白蘭の部屋にいたからだった。
「この部屋に普段入室出来るのは、許可された伝達係と世話係、そしてライト様のみかと。」
「確か先日、伝達係のルイジが亡くなられ、代わりにFランクのレオナルド・リッピという男が配属されたと聞いております。」
「あぁ……その名は知っている…。レオナルドは僕が推薦したんだからね…」
だが、ココに映っている人物は入江が推薦した男と明らかに違っていた。
「レオナルドは……60歳の小男だ!!!」
一体、この伝達係は何者なのか。
激しい焦燥感が入江の中を駆け巡っていた。
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『んー…だいぶ行けるようになったかも♪』
自分自身を空間移動させる修業も、結構身に付いて来た。
『よし、ボールキャッチしてみよう!』
今まではボールの周りの波長をねじ曲げてたけど、
今度はあたしの手首周辺の波長をねじ曲げて、ボールに近づける。
『いけっ!』
正面に向かってボールを投げて、
向こうでキャッチ…………
「檸檬。」
『ぎょわっ!!』
ボトッ、
『あー……』
普通に落としてしまったボールを見て、思わず溜め息。
『もー、恭弥ってば突然入ってくるなんてー…』
「時間だよ、檸檬。」
『あ、もう20分経ったの!?早いよ~っ。もうちょっとやっちゃダメ?』
「ダメ、休憩入れないと咬み殺す。」
『……はーい。』
咬み殺すって……脅しじゃんっ。
今の恭弥の強さの上限がイマイチちゃんと分かってないから、攻撃避けられる自信も無いし。
大人しく従って修業を止める。
『(今度は30分って言おう。)』
小さく決意して、あたしは恭弥の部屋へ向かう。
あのナイフの使い方は、未だ分からないまま。
『(待っててね、蜜柑……)』
次は絶対、止めてみせるんだから。