未来編①
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白く塗られた丸い機械の下、入江はパソコンの画面を見ていた。
出て来た解析結果を見て、少しだけ目を見張る。
「間違いない………また過去から誰か来てる。」
その事実だけが提示され、居場所特定も接触も出来ない現状。
ストレスによる腹痛に耐えながら、入江は考える。
「(そろそろボンゴレの連中を見つけないと、白蘭サンだって……)」
と、その時。
「やはりココでしたか、入江様。」
チェルベッロが2人、入江の上着を持って入ってくる。
連絡用無線が使えなくなるから、と上着の常備を忠告する。
「君たちノックくらい…」
「しました。」
「…………何の用だい?ボンゴレ捜索会議は午後からだろ?」
「問題が起きました。第8グリチネ隊長、グロ・キシニアが戦闘により重傷です。」
「なんだって!?」
突然の情報に思わず立ち上がる入江。
更に、グロが到着直後単独で黒曜ランドに向かった事を聞き、また驚く。
「こ……黒曜ランドだって!!?」
記録装置により、リングを使用しての戦闘があった事が分かっている。
また、サブ匣は行方不明でメイン匣は大破しているという。
唯一の幸運は、雨のマーレリングが近くの叢から発見された事。
混乱しながら入江が上着を羽織ろうとした、その時。
-「聞いた正チャン?」
「わあっ!」
パソコンに映し出されたのは間違いなく上司の顔で。
入江は思わず上着を落とした。
10年後の笹川了平
-「グロがやられたって聞いたら正チャンどんな顔するかと思って、抜き打ちコール♪」
「白蘭サン!!ノーマル回線じゃ傍受されますよ!!」
いつものように冗談混じりに話す白蘭に、入江は尋ねる。
「どうして黒曜ランドの事、僕には教えてくれなかったんですか!?」
しかし、予想外の返答が。
-「だって僕も知らなかったんだもん。あ、でも………」
「でも、何ですか?」
-「………んーん、何でもないよ。やっぱり下種だよね、グロ君は。どーやって抜け駆けしたんだか。」
白蘭が言いかけた事が少し気になったが、とりあえず傍受の可能性が高い回線を閉じる事を優先に考えた入江。
「保護回線でちゃんと連絡させて下さい!」
-「うん。じゃーねー♪」
回線を切った入江は、グロの情報入手法を不信に思い、立ち上がった。
「とにかく、グロ・キシニアに面会する!」
「グロ殿は医務室に運ばれましたが重傷で意識がまだ……」
「構うもんか!!」
---
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「さーてと、」
正チャンへの抜き打ちコールを切って、僕はもう1つの回線を繋ぐ。
コール音が一回鳴って、すぐに画面が切り替わった。
-「はい。」
「聞いた?蜜柑。」
少し長めのツインテールを揺らしながら、蜜柑は首を傾げる。
-「何の事です?」
「グロ君の事だよ。重傷で運ばれたってさ。」
蜜柑の眉がピクリと動いたのを、僕は見逃さなかった。
やっぱり、さっき正チャンとの通信途中で思った通り。
「蜜柑…知ってたんだね。」
-「…はい。」
過去から来たボンゴレの誰かにミルフィオーレの者が遭遇すれば、必ず上に報告するだろう。
少なくとも、蜜柑以外は。
-「仕留めるべきでしたか?クローム髑髏を。」
「あー、やっぱりクローム髑髏だったんだ。ま、グロが食いつくのはソレくらいだよねー。」
笑いながらそう言えば、蜜柑は
「おっしゃる通りです」と返す。
「別に仕留めなくてもいーよ。そんなに焦る事ないし。それに……」
初めて蜜柑と出会って、かわした約束。
僕と蜜柑の契約。
「蜜柑には、ダークの捕獲ってゆー超重要危険任務があるからね♪」
-「…ありがとうございます。」
画面越しに僕に一礼する蜜柑に、付け足した。
「あのさ、報告しなかった代償ってワケじゃないけど……グロ君トコ、行ってあげなよ。」
すると蜜柑は一瞬だけキョトンとして、ゆっくり頷いた。
-「畏まりました。」
「んじゃ、グロ君の様子見に行った後、もう一回掛けて。」
-「はい。」
絶対だよ、と念を押して回線を切る。
そんな事しなくても蜜柑なら僕の命令聞くけどさ。
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同じ頃、ボンゴレ地下アジト。
「どうだ?」
「画像データのようですね。あと少しで解読出来ます。」
突如送られて来た暗殺部隊からの信号を解析するジャンニーニ。
その向かいで、ツナと獄寺は少し身構える。
「暗殺部隊っつったら……」
「あの人達しか思い当たらないけど…」
「しかし、世の中には多くのソレが存在しますよ。」
と、そこに。
バンッ、
「あ、檸檬!!」
『ツナ、暗殺部隊のコードって……!』
駆け込んで来た檸檬の表情には、それまでの暗さはほとんど無かった。
雲雀との仲直りの成功を察したリボーンは、檸檬に向かってニッと笑う。
「大丈夫そーだな。」
『あ……うんっ♪やっぱり恭弥は優しかった!』
満面の笑みでそう言う檸檬に、ツナ達は驚く。
「ひ、雲雀さんが………優しい!!?」
「んなワケねーだろ!!あの唯我独尊が……」
「ハハッ!やっぱ檸檬ってすげーのな♪」
と、ここでジャンニーニが解読を終えて呼びかける。
「おっ、皆さん、やはり暗号コードはボンゴレのものです。デジタル署名も一致。」
「つー事はやっぱ…」
「ボンゴレ特殊暗殺部隊………」
場にいる皆がごくりと唾を飲み、目の前の大画面に注目する。
「再生します。」
ジャンニーニがエンターキーを押した瞬間…
「う"お"ぉおい!!!」
とてつもなく大きい第一声に、部屋中……
ってかアジト中が震え上がった。
「首の皮は繋がってるかぁ!?クソミソカスどもぉ!!!」
「出やがった!」
「じゅ、10年後の…」
「スクアーロ!!」
『アロちゃん、元気そうっ♪』
元気そうなのはいいけど…
声の大きさにラルがイライラしてる……。
10年で声も大きくなるモンなのかな?
「いいかぁ?クソガキどもぉ!!今はそこを動くんじゃねぇ!!外に新しいリングの反応があったとしてもだぁ!!」
「…!黒曜ランドのことだな。」
得意気、ってか上から目線で話すアロちゃん。
不意に、その背後から綺麗な金髪が見える。
「ジッとしてりゃ分っかり易い指示があるから、それまでいい子にしてろってことな!お子様達♪」
「ナイフ野郎!」
『ベル、髪型変わってるーっ!』
可愛いなぁ、とか思ってたら、2人の喧嘩が始まった。
「う"お"ぉい!!てめー何しに来た!」
「王子ヒマだし、ちゃちゃ入れ♪」
「口出すとぶっ殺すぞぉ!!」
「ししっ、無理じゃね?未だ檸檬に勝てねークセに。」
『えっ…?あ、あたし!?』
まだアロちゃんに勝負を挑まれていたようで、ちょっと吃驚。
「何だとぉ!!?てめーだって勝てねーだろーがぁ!」
「王子はいーの。姫が大事だから♪それに俺、檸檬と戦わねーし。挑んでんのお前だけだし。」
「うるせぇ!!」
アロちゃんはクルッとこっちを向く。
「う"お"ぉい!檸檬!!てめぇ生きてんだってなぁ!?今度会った時は俺が勝ってやるぜぇ!!覚悟しとくんだなぁ!!」
「だーかーら、俺の姫に勝てるワケねぇっつの。」
「ベルてめぇ…それ以上言うと3枚におろすぞぉ!!」
「ししっ…やってみ?」
画面を通じてでも伝わってくるような殺気が2人から出てる。
そして…
「う"お"ぉい……」
「しししっ、いてっ……」
乱闘が始まって、あたし達は絶句。
ボカスカって音と、刃物がぶつかり合う音の中、アロちゃんの声が聞こえる。
「またこの世で会えるといいなぁ!!それまで生きてみろぉ!!」
「あ、切れた!」
「これだけ、か……?」
「みたい、だね…(つーか半分くらい檸檬の事だったしーっ!)」
『にしても分かり易い指示って……』
首を傾げるあたし達に、ジャンニーニが言う。
「どうやらあの方のことのようですよ、イタリア帰りの。」
『えっ…?』
キュッと、革靴が止まる音。
振り向いた先には……
「笹川了平、推参!!!」
「お兄さん!」
少し大人びた晴の守護者と、
「それに…クローム髑髏!」
見慣れた姿の霧の守護者。
戦闘したのか傷だらけの髑髏を、了平さんが抱えて来たのだった。
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「グロ・キシニアの容体はどうですか?」
「ちょうど今、意識を取り戻しました。」
ミルフィオーレ日本支部・メディカルルーム。
2人の部下を連れた入江は目を覚ましたグロとの面会を試みる。
何故か引き止めようとする役員を無視して、病室に入った。
が、
「あ………」
「グロ様は顎の骨を折っていて、話せる状態ではないのです。」
「なんだって?」
「他の外傷も酷く、指も動かせない重体です……」
そんな彼が必死に入江を引き止めようとしている事に、
本人は全く気がつかず。
「話せるまでに、どれくらい?」
「見ての通り、当分は無理です!」
ピシャリと言い放たれた入江は、仕方無さそうに背を向ける。
が、ふと振り向いて。
「あなたが何処で黒曜の情報を得たのかはいずれ分かります。我々に背いた反逆罪の覚悟はしていて下さい。」
と、そこに。
「あ、貴女は!」
コツコツとヒールの音が響き、グロの病室に入って来た。
「(ココで、あってるかしら………)あ、入江君…」
「ライトさん!何でわざわざココに…」
「白蘭が“様子を見て来い”と。」
「白蘭サンが?」
疑問符を浮かべる入江だったが、白蘭の名が出て連絡し直さなければならない事を思い出す。
「それじゃ、僕は先に。」
「えぇ。」
入江が立ち去った後、蜜柑は寝たきり状態になっているグロを見下ろした。
その瞳が何らかの情報を伝えようと必死になっているのは、充分に分かっていた。
だが、蜜柑にソレを汲み取る義務などない。
むしろ、様子を見に行けとしか言われてない。
彼女にとっては、それが絶対なのだ。
過不足なく、
ただ忠実であり、
余計な事は考えない。
「(ライト!お前には分かっているハズだ!組織内に裏切り者がいるんだ!!俺は嵌められたんだ!!)」
「……そんなに必死になる事ないわ。」
無表情のまま、蜜柑は言う。
そして、
伝えてくれるのかと期待したグロに、
蔑みの視線を送り。
「たっぷり味わうことね、意思表明出来ない悔しさと、苦しさを。」
「(この、女……!)」
「そうすれば、独断で動いた懲罰くらいにはなるんじゃない?」
言い放ってすぐ、蜜柑は踵を返して歩き出す。
グロの、とっておきの土産話にも誰も気付かない。
「(あの、伝達係………)」
戻る途中ふと、彼が挨拶していた時の事が頭をよぎる。
グロに日本へ行くよう伝えたのは、あの伝達係のハズ。
だとしたら………
「……そういう事なの…。」
緩く口角を上げた蜜柑は、白蘭に報告するため足を速めた。
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「お兄ちゃん!!」
「おお、京子、10年前はこんなに小さかったか。」
髑髏を医務室に運び終え、了平は京子と再会した。
無事で良かったと抱きつく京子に少したじろく了平を見て、ツナはホッと胸を撫で下ろす。
すると獄寺が、
「つか何でお前がここに来るってヴァリアーが知ってたんだよ!」
「勿論俺もそこにいたからだ!そして伝言を持ち帰った!」
了平がヴァリアーにいた事に3人は驚き、リボーンはその内容を尋ねる。
「ベルフェゴールの言ってた指示の事だな。」
「一体何スか?」
「それが極限に忘れた!!!」
「んなーっ!(むしろこの人全然成長してねー!!)」
だが、10年の月日は大きい。
了平はきちんと自分だけ理解出来るメモの取り方を覚えていた。
「ふむふむ!そーかそーか!イタリアには出張相撲大会があって行ったのだった!楽しかったぞ、京子!!ハル!!」
「(ごまかし方相変わらずめちゃくちゃー!!)」
と、そこに。
『ツナ、』
「沢田さん、」
檸檬と草壁がやって来る。
『このフクロウ……あ、ムクロウだっけ?とにかく、匣の兵器なんだって。』
「本当にこれ以上の調査はいいのですか?」
「うん、だってそれもクロームの持ち物だもん。勝手にいじられたくないと思うし……」
『そっか、そうだね♪』
「(この男はあくまで骸とクロームを仲間として扱うのだな……)」
『じゃああたし、ちょっと髑髏のトコ行ってくる。ビア姉さんの手伝いしなくちゃ。』
「あ、うん。ありがと檸檬。」
お礼を言うツナにニコッと笑ってから、檸檬は医務室へと向かった。
『ビア姉さん、髑髏の容体は…』
「あら檸檬。それが…外傷よりも栄養失調が酷いのよ……何日も食べてなかったみたい。」
『髑髏………』
眠る髑髏の額に手を当て、檸檬は目を閉じる。
『静かで…少し弱いけど……リズムは安定してる…』
「檸檬…波長を読む修業、してるの?」
『あ、はいっ。まだまだ10年後のあたしには及びませんけど。』
苦笑いをする檸檬に、ビアンキは言う。
「確かに、凄かったからね……未来の檸檬は。」
『そ、それ程でも…///』
照れる檸檬を見て、ふっと笑みをこぼすビアンキ。
「檸檬…頑張って。」
『はいっ♪』
第六感を習得した後の代償を知らないビア姉さん。
知らないが故の純粋な応援が、嬉しかった。
『さて!髑髏が起きたら何か食べさせてあげなくちゃ♪』
「そうね。早く良くなるのを祈りましょう。」
『はいっ!』
---
------
「京子ちゃん達、ご飯作りに行ってくれましたよ。」
「では話そう…」
応接室にて、改めて集まったあたし達は了平さんの話を聞く事に。
ある案件について10代目使者としてヴァリアーに出向いていた了平さん。
その最中、ミルフィオーレによるボンゴレ狩りが始まった。
10年前からあたし達が来た事は、ある情報筋よりヴァリアーに伝えられ、了平さんも知った。
更に、ボンゴレの生存者と同盟ファミリーのトップのみにも知らされたという。
「同盟ファミリーって、ディーノさんのキャバッローネも!?」
「あぁ、あそこも健在だ。」
「良かった!」
「それに、」
了平さんはくるりとあたしの方を向く。
「檸檬、お前はミルフィオーレに捕まったと聞いていたからな……入れ替わり脱出したと知り、皆安堵したぞ。」
『あ……そうだった。』
思えば、空間移動を初めて使ったのはあの時だった…。
ただ必死に、“並盛に帰りたい”って念じて………
ま、今はそれは置いといて、
重要なのは、むしろココから。
「お前達がいると仮定し、ファミリー首脳により大規模作戦が計画された。」
『大規模作戦…?』
いつになく真剣な顔で、了平さんは口を開く。
「ココに居る俺達・10代目ファミリーへの指示は、5日後にミルフィオーレ日本支部の主要施設を破壊する事だ。」
武、ラル、草壁さん、隼人、ビア姉さん、
場にいる全員の表情が動く。
あたしの肩も、ビクッと震えた。
『(主要施設の…破壊………)』
「(それって…殴り込み…)」
「……急だな。」
ミルフィオーレ日本支部…
そこにはきっと、
『(蜜柑がいるんだ…)』
あたしの命を狙って、
今も憎悪と殺意を燃やしているのかも知れない-----
---
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髑髏が眠る医務室、
その小さな荷物の中に、キラリと光るグリチネを象った小物。
それが、グロ・キシニアの最大の土産……
ボンゴレのアジトを知らせる為の発信器であるとは、
敵も味方も気付かない。
「(気付かんか!!入江!!奴らのアジトは突き止めたも同然なのだ!!)」
それを見つけるはボンゴレが先か、
それともミルフィオーレか。
ゆっくりと、
すこしずつ、
歯車は 廻る。
出て来た解析結果を見て、少しだけ目を見張る。
「間違いない………また過去から誰か来てる。」
その事実だけが提示され、居場所特定も接触も出来ない現状。
ストレスによる腹痛に耐えながら、入江は考える。
「(そろそろボンゴレの連中を見つけないと、白蘭サンだって……)」
と、その時。
「やはりココでしたか、入江様。」
チェルベッロが2人、入江の上着を持って入ってくる。
連絡用無線が使えなくなるから、と上着の常備を忠告する。
「君たちノックくらい…」
「しました。」
「…………何の用だい?ボンゴレ捜索会議は午後からだろ?」
「問題が起きました。第8グリチネ隊長、グロ・キシニアが戦闘により重傷です。」
「なんだって!?」
突然の情報に思わず立ち上がる入江。
更に、グロが到着直後単独で黒曜ランドに向かった事を聞き、また驚く。
「こ……黒曜ランドだって!!?」
記録装置により、リングを使用しての戦闘があった事が分かっている。
また、サブ匣は行方不明でメイン匣は大破しているという。
唯一の幸運は、雨のマーレリングが近くの叢から発見された事。
混乱しながら入江が上着を羽織ろうとした、その時。
-「聞いた正チャン?」
「わあっ!」
パソコンに映し出されたのは間違いなく上司の顔で。
入江は思わず上着を落とした。
10年後の笹川了平
-「グロがやられたって聞いたら正チャンどんな顔するかと思って、抜き打ちコール♪」
「白蘭サン!!ノーマル回線じゃ傍受されますよ!!」
いつものように冗談混じりに話す白蘭に、入江は尋ねる。
「どうして黒曜ランドの事、僕には教えてくれなかったんですか!?」
しかし、予想外の返答が。
-「だって僕も知らなかったんだもん。あ、でも………」
「でも、何ですか?」
-「………んーん、何でもないよ。やっぱり下種だよね、グロ君は。どーやって抜け駆けしたんだか。」
白蘭が言いかけた事が少し気になったが、とりあえず傍受の可能性が高い回線を閉じる事を優先に考えた入江。
「保護回線でちゃんと連絡させて下さい!」
-「うん。じゃーねー♪」
回線を切った入江は、グロの情報入手法を不信に思い、立ち上がった。
「とにかく、グロ・キシニアに面会する!」
「グロ殿は医務室に運ばれましたが重傷で意識がまだ……」
「構うもんか!!」
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「さーてと、」
正チャンへの抜き打ちコールを切って、僕はもう1つの回線を繋ぐ。
コール音が一回鳴って、すぐに画面が切り替わった。
-「はい。」
「聞いた?蜜柑。」
少し長めのツインテールを揺らしながら、蜜柑は首を傾げる。
-「何の事です?」
「グロ君の事だよ。重傷で運ばれたってさ。」
蜜柑の眉がピクリと動いたのを、僕は見逃さなかった。
やっぱり、さっき正チャンとの通信途中で思った通り。
「蜜柑…知ってたんだね。」
-「…はい。」
過去から来たボンゴレの誰かにミルフィオーレの者が遭遇すれば、必ず上に報告するだろう。
少なくとも、蜜柑以外は。
-「仕留めるべきでしたか?クローム髑髏を。」
「あー、やっぱりクローム髑髏だったんだ。ま、グロが食いつくのはソレくらいだよねー。」
笑いながらそう言えば、蜜柑は
「おっしゃる通りです」と返す。
「別に仕留めなくてもいーよ。そんなに焦る事ないし。それに……」
初めて蜜柑と出会って、かわした約束。
僕と蜜柑の契約。
「蜜柑には、ダークの捕獲ってゆー超重要危険任務があるからね♪」
-「…ありがとうございます。」
画面越しに僕に一礼する蜜柑に、付け足した。
「あのさ、報告しなかった代償ってワケじゃないけど……グロ君トコ、行ってあげなよ。」
すると蜜柑は一瞬だけキョトンとして、ゆっくり頷いた。
-「畏まりました。」
「んじゃ、グロ君の様子見に行った後、もう一回掛けて。」
-「はい。」
絶対だよ、と念を押して回線を切る。
そんな事しなくても蜜柑なら僕の命令聞くけどさ。
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同じ頃、ボンゴレ地下アジト。
「どうだ?」
「画像データのようですね。あと少しで解読出来ます。」
突如送られて来た暗殺部隊からの信号を解析するジャンニーニ。
その向かいで、ツナと獄寺は少し身構える。
「暗殺部隊っつったら……」
「あの人達しか思い当たらないけど…」
「しかし、世の中には多くのソレが存在しますよ。」
と、そこに。
バンッ、
「あ、檸檬!!」
『ツナ、暗殺部隊のコードって……!』
駆け込んで来た檸檬の表情には、それまでの暗さはほとんど無かった。
雲雀との仲直りの成功を察したリボーンは、檸檬に向かってニッと笑う。
「大丈夫そーだな。」
『あ……うんっ♪やっぱり恭弥は優しかった!』
満面の笑みでそう言う檸檬に、ツナ達は驚く。
「ひ、雲雀さんが………優しい!!?」
「んなワケねーだろ!!あの唯我独尊が……」
「ハハッ!やっぱ檸檬ってすげーのな♪」
と、ここでジャンニーニが解読を終えて呼びかける。
「おっ、皆さん、やはり暗号コードはボンゴレのものです。デジタル署名も一致。」
「つー事はやっぱ…」
「ボンゴレ特殊暗殺部隊………」
場にいる皆がごくりと唾を飲み、目の前の大画面に注目する。
「再生します。」
ジャンニーニがエンターキーを押した瞬間…
「う"お"ぉおい!!!」
とてつもなく大きい第一声に、部屋中……
ってかアジト中が震え上がった。
「首の皮は繋がってるかぁ!?クソミソカスどもぉ!!!」
「出やがった!」
「じゅ、10年後の…」
「スクアーロ!!」
『アロちゃん、元気そうっ♪』
元気そうなのはいいけど…
声の大きさにラルがイライラしてる……。
10年で声も大きくなるモンなのかな?
「いいかぁ?クソガキどもぉ!!今はそこを動くんじゃねぇ!!外に新しいリングの反応があったとしてもだぁ!!」
「…!黒曜ランドのことだな。」
得意気、ってか上から目線で話すアロちゃん。
不意に、その背後から綺麗な金髪が見える。
「ジッとしてりゃ分っかり易い指示があるから、それまでいい子にしてろってことな!お子様達♪」
「ナイフ野郎!」
『ベル、髪型変わってるーっ!』
可愛いなぁ、とか思ってたら、2人の喧嘩が始まった。
「う"お"ぉい!!てめー何しに来た!」
「王子ヒマだし、ちゃちゃ入れ♪」
「口出すとぶっ殺すぞぉ!!」
「ししっ、無理じゃね?未だ檸檬に勝てねークセに。」
『えっ…?あ、あたし!?』
まだアロちゃんに勝負を挑まれていたようで、ちょっと吃驚。
「何だとぉ!!?てめーだって勝てねーだろーがぁ!」
「王子はいーの。姫が大事だから♪それに俺、檸檬と戦わねーし。挑んでんのお前だけだし。」
「うるせぇ!!」
アロちゃんはクルッとこっちを向く。
「う"お"ぉい!檸檬!!てめぇ生きてんだってなぁ!?今度会った時は俺が勝ってやるぜぇ!!覚悟しとくんだなぁ!!」
「だーかーら、俺の姫に勝てるワケねぇっつの。」
「ベルてめぇ…それ以上言うと3枚におろすぞぉ!!」
「ししっ…やってみ?」
画面を通じてでも伝わってくるような殺気が2人から出てる。
そして…
「う"お"ぉい……」
「しししっ、いてっ……」
乱闘が始まって、あたし達は絶句。
ボカスカって音と、刃物がぶつかり合う音の中、アロちゃんの声が聞こえる。
「またこの世で会えるといいなぁ!!それまで生きてみろぉ!!」
「あ、切れた!」
「これだけ、か……?」
「みたい、だね…(つーか半分くらい檸檬の事だったしーっ!)」
『にしても分かり易い指示って……』
首を傾げるあたし達に、ジャンニーニが言う。
「どうやらあの方のことのようですよ、イタリア帰りの。」
『えっ…?』
キュッと、革靴が止まる音。
振り向いた先には……
「笹川了平、推参!!!」
「お兄さん!」
少し大人びた晴の守護者と、
「それに…クローム髑髏!」
見慣れた姿の霧の守護者。
戦闘したのか傷だらけの髑髏を、了平さんが抱えて来たのだった。
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「グロ・キシニアの容体はどうですか?」
「ちょうど今、意識を取り戻しました。」
ミルフィオーレ日本支部・メディカルルーム。
2人の部下を連れた入江は目を覚ましたグロとの面会を試みる。
何故か引き止めようとする役員を無視して、病室に入った。
が、
「あ………」
「グロ様は顎の骨を折っていて、話せる状態ではないのです。」
「なんだって?」
「他の外傷も酷く、指も動かせない重体です……」
そんな彼が必死に入江を引き止めようとしている事に、
本人は全く気がつかず。
「話せるまでに、どれくらい?」
「見ての通り、当分は無理です!」
ピシャリと言い放たれた入江は、仕方無さそうに背を向ける。
が、ふと振り向いて。
「あなたが何処で黒曜の情報を得たのかはいずれ分かります。我々に背いた反逆罪の覚悟はしていて下さい。」
と、そこに。
「あ、貴女は!」
コツコツとヒールの音が響き、グロの病室に入って来た。
「(ココで、あってるかしら………)あ、入江君…」
「ライトさん!何でわざわざココに…」
「白蘭が“様子を見て来い”と。」
「白蘭サンが?」
疑問符を浮かべる入江だったが、白蘭の名が出て連絡し直さなければならない事を思い出す。
「それじゃ、僕は先に。」
「えぇ。」
入江が立ち去った後、蜜柑は寝たきり状態になっているグロを見下ろした。
その瞳が何らかの情報を伝えようと必死になっているのは、充分に分かっていた。
だが、蜜柑にソレを汲み取る義務などない。
むしろ、様子を見に行けとしか言われてない。
彼女にとっては、それが絶対なのだ。
過不足なく、
ただ忠実であり、
余計な事は考えない。
「(ライト!お前には分かっているハズだ!組織内に裏切り者がいるんだ!!俺は嵌められたんだ!!)」
「……そんなに必死になる事ないわ。」
無表情のまま、蜜柑は言う。
そして、
伝えてくれるのかと期待したグロに、
蔑みの視線を送り。
「たっぷり味わうことね、意思表明出来ない悔しさと、苦しさを。」
「(この、女……!)」
「そうすれば、独断で動いた懲罰くらいにはなるんじゃない?」
言い放ってすぐ、蜜柑は踵を返して歩き出す。
グロの、とっておきの土産話にも誰も気付かない。
「(あの、伝達係………)」
戻る途中ふと、彼が挨拶していた時の事が頭をよぎる。
グロに日本へ行くよう伝えたのは、あの伝達係のハズ。
だとしたら………
「……そういう事なの…。」
緩く口角を上げた蜜柑は、白蘭に報告するため足を速めた。
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「お兄ちゃん!!」
「おお、京子、10年前はこんなに小さかったか。」
髑髏を医務室に運び終え、了平は京子と再会した。
無事で良かったと抱きつく京子に少したじろく了平を見て、ツナはホッと胸を撫で下ろす。
すると獄寺が、
「つか何でお前がここに来るってヴァリアーが知ってたんだよ!」
「勿論俺もそこにいたからだ!そして伝言を持ち帰った!」
了平がヴァリアーにいた事に3人は驚き、リボーンはその内容を尋ねる。
「ベルフェゴールの言ってた指示の事だな。」
「一体何スか?」
「それが極限に忘れた!!!」
「んなーっ!(むしろこの人全然成長してねー!!)」
だが、10年の月日は大きい。
了平はきちんと自分だけ理解出来るメモの取り方を覚えていた。
「ふむふむ!そーかそーか!イタリアには出張相撲大会があって行ったのだった!楽しかったぞ、京子!!ハル!!」
「(ごまかし方相変わらずめちゃくちゃー!!)」
と、そこに。
『ツナ、』
「沢田さん、」
檸檬と草壁がやって来る。
『このフクロウ……あ、ムクロウだっけ?とにかく、匣の兵器なんだって。』
「本当にこれ以上の調査はいいのですか?」
「うん、だってそれもクロームの持ち物だもん。勝手にいじられたくないと思うし……」
『そっか、そうだね♪』
「(この男はあくまで骸とクロームを仲間として扱うのだな……)」
『じゃああたし、ちょっと髑髏のトコ行ってくる。ビア姉さんの手伝いしなくちゃ。』
「あ、うん。ありがと檸檬。」
お礼を言うツナにニコッと笑ってから、檸檬は医務室へと向かった。
『ビア姉さん、髑髏の容体は…』
「あら檸檬。それが…外傷よりも栄養失調が酷いのよ……何日も食べてなかったみたい。」
『髑髏………』
眠る髑髏の額に手を当て、檸檬は目を閉じる。
『静かで…少し弱いけど……リズムは安定してる…』
「檸檬…波長を読む修業、してるの?」
『あ、はいっ。まだまだ10年後のあたしには及びませんけど。』
苦笑いをする檸檬に、ビアンキは言う。
「確かに、凄かったからね……未来の檸檬は。」
『そ、それ程でも…///』
照れる檸檬を見て、ふっと笑みをこぼすビアンキ。
「檸檬…頑張って。」
『はいっ♪』
第六感を習得した後の代償を知らないビア姉さん。
知らないが故の純粋な応援が、嬉しかった。
『さて!髑髏が起きたら何か食べさせてあげなくちゃ♪』
「そうね。早く良くなるのを祈りましょう。」
『はいっ!』
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「京子ちゃん達、ご飯作りに行ってくれましたよ。」
「では話そう…」
応接室にて、改めて集まったあたし達は了平さんの話を聞く事に。
ある案件について10代目使者としてヴァリアーに出向いていた了平さん。
その最中、ミルフィオーレによるボンゴレ狩りが始まった。
10年前からあたし達が来た事は、ある情報筋よりヴァリアーに伝えられ、了平さんも知った。
更に、ボンゴレの生存者と同盟ファミリーのトップのみにも知らされたという。
「同盟ファミリーって、ディーノさんのキャバッローネも!?」
「あぁ、あそこも健在だ。」
「良かった!」
「それに、」
了平さんはくるりとあたしの方を向く。
「檸檬、お前はミルフィオーレに捕まったと聞いていたからな……入れ替わり脱出したと知り、皆安堵したぞ。」
『あ……そうだった。』
思えば、空間移動を初めて使ったのはあの時だった…。
ただ必死に、“並盛に帰りたい”って念じて………
ま、今はそれは置いといて、
重要なのは、むしろココから。
「お前達がいると仮定し、ファミリー首脳により大規模作戦が計画された。」
『大規模作戦…?』
いつになく真剣な顔で、了平さんは口を開く。
「ココに居る俺達・10代目ファミリーへの指示は、5日後にミルフィオーレ日本支部の主要施設を破壊する事だ。」
武、ラル、草壁さん、隼人、ビア姉さん、
場にいる全員の表情が動く。
あたしの肩も、ビクッと震えた。
『(主要施設の…破壊………)』
「(それって…殴り込み…)」
「……急だな。」
ミルフィオーレ日本支部…
そこにはきっと、
『(蜜柑がいるんだ…)』
あたしの命を狙って、
今も憎悪と殺意を燃やしているのかも知れない-----
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髑髏が眠る医務室、
その小さな荷物の中に、キラリと光るグリチネを象った小物。
それが、グロ・キシニアの最大の土産……
ボンゴレのアジトを知らせる為の発信器であるとは、
敵も味方も気付かない。
「(気付かんか!!入江!!奴らのアジトは突き止めたも同然なのだ!!)」
それを見つけるはボンゴレが先か、
それともミルフィオーレか。
ゆっくりと、
すこしずつ、
歯車は 廻る。