未来編①
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「黒曜ランド……」
入り口ゲートの前に立つのは、
白い服に身を包んだツインテールの女。
「見せてもらおうかしら、グロ・キシニア………」
小さく呟いた後、戦闘音のする建物内へと足を運んだ。
ムクロウとクローム
ぼんやりとした表情で何かを見つめる髑髏に、グロはいささか疑念を抱く。
「(何を見ている…?そうか、我が匣に興味を持ったか。)」
そう解釈しつつ、自分もフクロウに目を向けた、その時。
シュワァァァ…
見慣れた青い色でない炎が目に映る。
「なに!?バカな!!炎の色が藍色(インディゴ)に!!」
自分のフクロウは確かに先程まで青い雨の炎を纏っていた。
が、今目の前にいるフクロウは、藍色の霧の炎に包まれている。
そしてそれは、そのまま所有者であるはずの自分に襲いかかって来て。
「ぬっ!」
同時に、髑髏の脳内に骸の声が響く。
「{クローム、今のうちに上へ。}」
「はい…」
一方、襲いかかるフクロウに戸惑うグロの目に、フクロウの眸が映る。
そこには、本来あるはずのない“六”の文字。
瞬時にしてある仮説を立てたグロは、フクロウを叩き落とす。
「きっ、貴様!!六道骸なのか!?」
「…………フ………クフフフ…」
起き上がったフクロウは、独特の笑い声を発して。
「君の状況把握の早さは、一目置くに値しますよ、グロ・キシニア。」
その光景に驚いたのは、グロだけではなかった。
「アレが……六道の憑依……」
髑髏達がいる部屋の外、廊下側からただ観戦していた蜜柑もまた、初めて見るものに興味を持っていた。
「どうでるのかしら、グロ・キシニア……」
「もしや、前回のあの戦闘で……」
思い出されるのは、フクロウに一瞬だけかすったトライデント。
「クフフフ、そうです。貴方の雨フクロウに少し細工をさせて頂きましたよ。」
「匣に憑依するなど、聞いたことがないぞ!」
「クフフフ…出来てしまっては仕方ありませんねぇ。それとも夢…ということにしましょうか?」
「おのれぇ……」
痙攣のように右目が動く。
それを一瞬にして鎮める彼は、やはり適応能力が高いのだと思う。
そして、状況分析能力も。
だから私の身元も暴かれた。
雨宮檸檬に妹がいる、という情報は何処を探しても出るはずが無い。
白蘭と私が全て削除したから。
けどあの男は…
“データが無い”という事象に捕われず、ただ目の前にあった“私”というデータを参考にして、結論を生み出した。
恐らく、この世の中で最も騙しにくい人種と言ってもいい。
「それ程あの娘が、大事か。」
「(一瞬にして冷静さを取り戻すとは……さすがミルフィオーレ6弔花の1人。)」
改めてグロの強さを認識した骸は、髑髏に呼びかける。
「{いいですか、クローム。}」
「骸様!」
「{僕は訳あって大きな力を使えません。お前をグロ・キシニアから逃がす事は出来そうにない。お前がこの男を…倒すのです。}」
先程まで、幻覚が全く利かなかった相手。
それを倒せと言う骸の指示に、戸惑う髑髏。
「{大丈夫です、お前には……ボンゴレリングがある。}」
「ボンゴレリング…?」
ふと見ると、右手中指にあるリングを固めていたモノが、消えていった。
「(…溶けてく……)」
「{その霧のリングが、お前に力を貸してくれる。}」
---
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------------
ヴーッ、
突如会議室に響いた、大きな警告音。
「何だ、ジャンニーニ。」
「一瞬ですが、データに無い強いリングの反応が……黒曜ランド周辺です。」
「黒曜ランド!?」
その場所は、骸達が潜伏していた場所。
ツナは思わず声を上げる。
「ただし、この辺りは電波障害が酷く、誤表示の可能性も高いです。」
眉を下げるジャンニーニに、もう一度周辺のデータを分析するようリボーンが言う。
「新たな敵かもな。」
「違う……きっと仲間だ…」
ラルの言葉を否定するツナ。
「ボンゴレリングを持った……クロームかも………」
---
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『髑髏かも、だって……』
例により、草壁が身につけている集音機から会議室の会話を聞いていた檸檬。
草壁がツナ達に話した内容と、ほぼ同じ事を雲雀から聞き、檸檬はそのまま部屋に留まっていた。
『もし髑髏だったら、黒曜ランドに行かなくちゃ……』
「少なくとも、檸檬が行く必要は無いよ。」
『何で?だってもしミルフィオーレに出会っちゃったら……』
「出会ったら、檸檬も危ない。」
雲雀の言葉に、檸檬は少し詰まる。
自分もミルフィオーレに狙われている事は、蜜柑との戦闘時に充分理解した。
---「捕虜になってもらうわ。」
思い出すだけで、ほんの少し身震いする。
それを必死に抑えようと、深呼吸を1つ。
『蜜柑……あたしの命を狙ってるワケじゃなさそうだった…。』
「第六感だよ、その力が敵か味方かで、随分戦局が左右されるからね。」
『そっか………』
小さく呟く檸檬に、雲雀は続ける。
「ミルフィオーレであろうと、結局群れてるヤツの考えは同じだ。自分が強くなる事じゃなくて、強い者を手に入れる事に執着する。」
『恭弥…』
「だから檸檬が第六感を使わなければ、狙われない。」
『うん、でも……』
拳を握りしめて、檸檬はハッキリ口にする。
『蜜柑は他の人と戦おうとしないんでしょ?だったら……あたしが自分で蜜柑を止めたい。』
その答えに、雲雀は溜め息をついて。
「危なくなったら何がなんでもやめさせるからね。」
『うんっ。』
---
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------------
「ギィッ!!」
「骸様!!」
地下倉庫から吹っ飛ばされ、髑髏の後ろの壁に激突するムクロウ。
髑髏は咄嗟に駆け寄って、抱え上げる。
「やはりお前は喋るだけのぬいぐるみか。」
ゆっくりと階段を上って来るグロ。
と、部屋の外の壁を見つめてこう言った。
「盗み見か?雨宮蜜柑。」
しかし、廊下側からは何の返事も返って来ず、
「蜜柑……!?」
その名に反応したのはムクロウだった。
それを膝に乗せながら、髑髏は呼びかける。
「骸様っ!」
「これほどの力を持っていたとは…やりますね、グロ・キシニア……」
ズゥン、という地響きのような音と、
ドリュ、という水っぽい音が聞こえて来る。
「(何の音?)」
「教えてやろう。トップオブトップであるAランク以上の6弔花…その中でもホワイトスペル3名には、白蘭殿よりメイン匣とサブ匣を授けられている。」
雨フクロウは、グロのサブ匣。
つまりメインはもっと強大な力を持つ……
「雨宮蜜柑、お前も目に焼き付けておくと良い!」
メイン匣……雨巨大イカ!!
(クラーケン・ディ・ピオッジャ)
「(アレが…)」
地下室から飛び出して来た何本もの足に、髑髏は思わず身を引こうとする。
「{狼狽えてはいけません、クローム。ボンゴレリングそのものの力を引き出し、戦うのです。}」
「リングの…力……?」
「いい加減出てきたらどうだ?雨宮蜜柑、素晴らしいクライマックスが見れるぞ。」
「さっきから…五月蝿いわ。」
何度も名を呼ばれたせいか、蜜柑はようやく姿を現す。
「え……?」
「LIGHT(ライト)…」
背後に現れた女に、髑髏は疑問符を浮かべ、骸は通り名を口にする。
「檸檬、さん……………じゃない……!?」
見覚えのある顔かたち。
だけど雰囲気で別人だと察する髑髏。
蜜柑はそんな髑髏に目もくれず、グロに言う。
「見に来ただけよ。」
「分かっている。」
「助けを請われても手は出さない。」
「望むところだ。」
と、その時。
ボウッ、
「ほう…霧の守護者の部分でしかない女が、ボンゴレリングに炎を灯せるとはな。」
「負けない。」
トライデントを回し始めた髑髏を見て、蜜柑は一歩下がった。
彼女の優れた五感は、リアリティが強い幻覚との相性が悪いのだ。
カッ、
ドドドド…
たくさんの火柱、それも霧の炎を纏った火柱が現れる。
そしてそれらはグロと雨巨大イカの方へ。
「………すごい。」
これならきっと、ダメージを負わせられる。
髑髏がそう思ったにも関わらず…
「確かに、死ぬ気の炎の混合された火柱は、リアリティが増したな。」
「あ……!」
「だが所詮はまやかし、笑わせる。」
「きか…ない……」
火柱に囲まれているにも関わらず、グロは真直ぐ髑髏に向かって歩いて来る。
蜜柑の方は、強い幻覚に飲み込まれないように呼吸を整えていた。
「{お前の1番信じるものは何ですか?}」
不安に駆られた髑髏に、骸の声が聞こえて来る。
「{幻術の持つリアリティとは、術士の持つリアリティ。真に信服している事象現象こそが、最も強い幻覚となる。}」
「1番信じるもの……?」
そんなもの、考える前から決まっている。
いつだって、何よりも信じているから。
「…………………でも、」
「{僕の僅かな力を、お前の幻覚の触媒にするのです。成否は2人のイメージの同調にかかっている。}」
“それ”を出す事が出来たら、どんなに心強いことか。
でも、目の前の敵に幻術は1つとして通用してくれなかった。
だからこそ、不安になる。
「別れ話は済んだか?」
突然グロに聞かれ、髑髏は肩を震わせる。
「心配するな、クローム髑髏。お前はそのフクロウの前で可愛がってやる…………そう、骸の前でな!!」
一斉に襲いかかって来る、雨巨大イカの足。
もう自分には、出来る事が何もない。
何もないのなら……
「{今です!}」
出て来て、と願う。
助けて、と呼ぶ。
私はいつでも信じてる。
骸様を、そして……2人を。
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------------
キィィィィン……
『つっ……!』
突然頭を抱え込み、檸檬はうずくまった。
「檸檬!?」
『流れて…来る……』
脳に直接響いて伝わって来る、強い強い波長。
それが何処から来るのかは、分からないけれど。
「檸檬、波長かい?」
『うん……この感じ、どっかで……』
何だか知っているような感じがした。
ぼんやりと見え隠れしてるのに、
芯はとってもしっかりしてるような。
『まさか…』
だんだんと収まって来る頭痛。
『恭弥、もしかしたら本当に髑髏が………』
「霧のボンゴレリングによる炎の波長……だったら強くても不思議じゃない。」
『どうしよう…』
「だったら余計に行く必要ないね。」
『え!?』
意外過ぎる恭弥の台詞に、あたしはかなり驚く。
『な、何でよ!髑髏が危ないんじゃ…』
すごくぶすっとしながら、恭弥は言った。
「そう簡単に死なないな、“アイツ”は。」
---
-----
----------
握りしめたトライデント。
骸様の力に、私の幻術を乗せる。
すると…
ギュィィィ…
ドブチッ!
「ん!?」
敵の驚いたような声が聞こえて、瞑っていた目を開いた。
ブシャッ!
「なっ、何ぃ!?」
襲って来たイカの足が、ヨーヨーと鋭い爪によって裂かれる。
目の前には、“信じるもの”が。
獣のような唸り声も、
ヨーヨーが手に収まる音も、
私から武器を受け取るその手も、
全部全部、大切な………
「ああ…」
「{やはり、お前の最も信じるものも、これなんですね。}」
たとえ幻術でも再会出来た事に、
頭に響く骸様の声に、
目が熱くなる。
声が出せずに頷くと、骸様は褒めてくれた。
「強力ないい術です。これなら僕も遊べそうだ………」
煙が晴れて、グロや蜜柑にも全体像が見えて来た。
「あれは……10年前の…」
髑髏の前にいるのは、彼女が最も信じるもの達。
骸と千種と犬の姿だった。
「少々懐かしいですがね。」
入り口ゲートの前に立つのは、
白い服に身を包んだツインテールの女。
「見せてもらおうかしら、グロ・キシニア………」
小さく呟いた後、戦闘音のする建物内へと足を運んだ。
ムクロウとクローム
ぼんやりとした表情で何かを見つめる髑髏に、グロはいささか疑念を抱く。
「(何を見ている…?そうか、我が匣に興味を持ったか。)」
そう解釈しつつ、自分もフクロウに目を向けた、その時。
シュワァァァ…
見慣れた青い色でない炎が目に映る。
「なに!?バカな!!炎の色が藍色(インディゴ)に!!」
自分のフクロウは確かに先程まで青い雨の炎を纏っていた。
が、今目の前にいるフクロウは、藍色の霧の炎に包まれている。
そしてそれは、そのまま所有者であるはずの自分に襲いかかって来て。
「ぬっ!」
同時に、髑髏の脳内に骸の声が響く。
「{クローム、今のうちに上へ。}」
「はい…」
一方、襲いかかるフクロウに戸惑うグロの目に、フクロウの眸が映る。
そこには、本来あるはずのない“六”の文字。
瞬時にしてある仮説を立てたグロは、フクロウを叩き落とす。
「きっ、貴様!!六道骸なのか!?」
「…………フ………クフフフ…」
起き上がったフクロウは、独特の笑い声を発して。
「君の状況把握の早さは、一目置くに値しますよ、グロ・キシニア。」
その光景に驚いたのは、グロだけではなかった。
「アレが……六道の憑依……」
髑髏達がいる部屋の外、廊下側からただ観戦していた蜜柑もまた、初めて見るものに興味を持っていた。
「どうでるのかしら、グロ・キシニア……」
「もしや、前回のあの戦闘で……」
思い出されるのは、フクロウに一瞬だけかすったトライデント。
「クフフフ、そうです。貴方の雨フクロウに少し細工をさせて頂きましたよ。」
「匣に憑依するなど、聞いたことがないぞ!」
「クフフフ…出来てしまっては仕方ありませんねぇ。それとも夢…ということにしましょうか?」
「おのれぇ……」
痙攣のように右目が動く。
それを一瞬にして鎮める彼は、やはり適応能力が高いのだと思う。
そして、状況分析能力も。
だから私の身元も暴かれた。
雨宮檸檬に妹がいる、という情報は何処を探しても出るはずが無い。
白蘭と私が全て削除したから。
けどあの男は…
“データが無い”という事象に捕われず、ただ目の前にあった“私”というデータを参考にして、結論を生み出した。
恐らく、この世の中で最も騙しにくい人種と言ってもいい。
「それ程あの娘が、大事か。」
「(一瞬にして冷静さを取り戻すとは……さすがミルフィオーレ6弔花の1人。)」
改めてグロの強さを認識した骸は、髑髏に呼びかける。
「{いいですか、クローム。}」
「骸様!」
「{僕は訳あって大きな力を使えません。お前をグロ・キシニアから逃がす事は出来そうにない。お前がこの男を…倒すのです。}」
先程まで、幻覚が全く利かなかった相手。
それを倒せと言う骸の指示に、戸惑う髑髏。
「{大丈夫です、お前には……ボンゴレリングがある。}」
「ボンゴレリング…?」
ふと見ると、右手中指にあるリングを固めていたモノが、消えていった。
「(…溶けてく……)」
「{その霧のリングが、お前に力を貸してくれる。}」
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ヴーッ、
突如会議室に響いた、大きな警告音。
「何だ、ジャンニーニ。」
「一瞬ですが、データに無い強いリングの反応が……黒曜ランド周辺です。」
「黒曜ランド!?」
その場所は、骸達が潜伏していた場所。
ツナは思わず声を上げる。
「ただし、この辺りは電波障害が酷く、誤表示の可能性も高いです。」
眉を下げるジャンニーニに、もう一度周辺のデータを分析するようリボーンが言う。
「新たな敵かもな。」
「違う……きっと仲間だ…」
ラルの言葉を否定するツナ。
「ボンゴレリングを持った……クロームかも………」
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『髑髏かも、だって……』
例により、草壁が身につけている集音機から会議室の会話を聞いていた檸檬。
草壁がツナ達に話した内容と、ほぼ同じ事を雲雀から聞き、檸檬はそのまま部屋に留まっていた。
『もし髑髏だったら、黒曜ランドに行かなくちゃ……』
「少なくとも、檸檬が行く必要は無いよ。」
『何で?だってもしミルフィオーレに出会っちゃったら……』
「出会ったら、檸檬も危ない。」
雲雀の言葉に、檸檬は少し詰まる。
自分もミルフィオーレに狙われている事は、蜜柑との戦闘時に充分理解した。
---「捕虜になってもらうわ。」
思い出すだけで、ほんの少し身震いする。
それを必死に抑えようと、深呼吸を1つ。
『蜜柑……あたしの命を狙ってるワケじゃなさそうだった…。』
「第六感だよ、その力が敵か味方かで、随分戦局が左右されるからね。」
『そっか………』
小さく呟く檸檬に、雲雀は続ける。
「ミルフィオーレであろうと、結局群れてるヤツの考えは同じだ。自分が強くなる事じゃなくて、強い者を手に入れる事に執着する。」
『恭弥…』
「だから檸檬が第六感を使わなければ、狙われない。」
『うん、でも……』
拳を握りしめて、檸檬はハッキリ口にする。
『蜜柑は他の人と戦おうとしないんでしょ?だったら……あたしが自分で蜜柑を止めたい。』
その答えに、雲雀は溜め息をついて。
「危なくなったら何がなんでもやめさせるからね。」
『うんっ。』
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「ギィッ!!」
「骸様!!」
地下倉庫から吹っ飛ばされ、髑髏の後ろの壁に激突するムクロウ。
髑髏は咄嗟に駆け寄って、抱え上げる。
「やはりお前は喋るだけのぬいぐるみか。」
ゆっくりと階段を上って来るグロ。
と、部屋の外の壁を見つめてこう言った。
「盗み見か?雨宮蜜柑。」
しかし、廊下側からは何の返事も返って来ず、
「蜜柑……!?」
その名に反応したのはムクロウだった。
それを膝に乗せながら、髑髏は呼びかける。
「骸様っ!」
「これほどの力を持っていたとは…やりますね、グロ・キシニア……」
ズゥン、という地響きのような音と、
ドリュ、という水っぽい音が聞こえて来る。
「(何の音?)」
「教えてやろう。トップオブトップであるAランク以上の6弔花…その中でもホワイトスペル3名には、白蘭殿よりメイン匣とサブ匣を授けられている。」
雨フクロウは、グロのサブ匣。
つまりメインはもっと強大な力を持つ……
「雨宮蜜柑、お前も目に焼き付けておくと良い!」
メイン匣……雨巨大イカ!!
(クラーケン・ディ・ピオッジャ)
「(アレが…)」
地下室から飛び出して来た何本もの足に、髑髏は思わず身を引こうとする。
「{狼狽えてはいけません、クローム。ボンゴレリングそのものの力を引き出し、戦うのです。}」
「リングの…力……?」
「いい加減出てきたらどうだ?雨宮蜜柑、素晴らしいクライマックスが見れるぞ。」
「さっきから…五月蝿いわ。」
何度も名を呼ばれたせいか、蜜柑はようやく姿を現す。
「え……?」
「LIGHT(ライト)…」
背後に現れた女に、髑髏は疑問符を浮かべ、骸は通り名を口にする。
「檸檬、さん……………じゃない……!?」
見覚えのある顔かたち。
だけど雰囲気で別人だと察する髑髏。
蜜柑はそんな髑髏に目もくれず、グロに言う。
「見に来ただけよ。」
「分かっている。」
「助けを請われても手は出さない。」
「望むところだ。」
と、その時。
ボウッ、
「ほう…霧の守護者の部分でしかない女が、ボンゴレリングに炎を灯せるとはな。」
「負けない。」
トライデントを回し始めた髑髏を見て、蜜柑は一歩下がった。
彼女の優れた五感は、リアリティが強い幻覚との相性が悪いのだ。
カッ、
ドドドド…
たくさんの火柱、それも霧の炎を纏った火柱が現れる。
そしてそれらはグロと雨巨大イカの方へ。
「………すごい。」
これならきっと、ダメージを負わせられる。
髑髏がそう思ったにも関わらず…
「確かに、死ぬ気の炎の混合された火柱は、リアリティが増したな。」
「あ……!」
「だが所詮はまやかし、笑わせる。」
「きか…ない……」
火柱に囲まれているにも関わらず、グロは真直ぐ髑髏に向かって歩いて来る。
蜜柑の方は、強い幻覚に飲み込まれないように呼吸を整えていた。
「{お前の1番信じるものは何ですか?}」
不安に駆られた髑髏に、骸の声が聞こえて来る。
「{幻術の持つリアリティとは、術士の持つリアリティ。真に信服している事象現象こそが、最も強い幻覚となる。}」
「1番信じるもの……?」
そんなもの、考える前から決まっている。
いつだって、何よりも信じているから。
「…………………でも、」
「{僕の僅かな力を、お前の幻覚の触媒にするのです。成否は2人のイメージの同調にかかっている。}」
“それ”を出す事が出来たら、どんなに心強いことか。
でも、目の前の敵に幻術は1つとして通用してくれなかった。
だからこそ、不安になる。
「別れ話は済んだか?」
突然グロに聞かれ、髑髏は肩を震わせる。
「心配するな、クローム髑髏。お前はそのフクロウの前で可愛がってやる…………そう、骸の前でな!!」
一斉に襲いかかって来る、雨巨大イカの足。
もう自分には、出来る事が何もない。
何もないのなら……
「{今です!}」
出て来て、と願う。
助けて、と呼ぶ。
私はいつでも信じてる。
骸様を、そして……2人を。
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キィィィィン……
『つっ……!』
突然頭を抱え込み、檸檬はうずくまった。
「檸檬!?」
『流れて…来る……』
脳に直接響いて伝わって来る、強い強い波長。
それが何処から来るのかは、分からないけれど。
「檸檬、波長かい?」
『うん……この感じ、どっかで……』
何だか知っているような感じがした。
ぼんやりと見え隠れしてるのに、
芯はとってもしっかりしてるような。
『まさか…』
だんだんと収まって来る頭痛。
『恭弥、もしかしたら本当に髑髏が………』
「霧のボンゴレリングによる炎の波長……だったら強くても不思議じゃない。」
『どうしよう…』
「だったら余計に行く必要ないね。」
『え!?』
意外過ぎる恭弥の台詞に、あたしはかなり驚く。
『な、何でよ!髑髏が危ないんじゃ…』
すごくぶすっとしながら、恭弥は言った。
「そう簡単に死なないな、“アイツ”は。」
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握りしめたトライデント。
骸様の力に、私の幻術を乗せる。
すると…
ギュィィィ…
ドブチッ!
「ん!?」
敵の驚いたような声が聞こえて、瞑っていた目を開いた。
ブシャッ!
「なっ、何ぃ!?」
襲って来たイカの足が、ヨーヨーと鋭い爪によって裂かれる。
目の前には、“信じるもの”が。
獣のような唸り声も、
ヨーヨーが手に収まる音も、
私から武器を受け取るその手も、
全部全部、大切な………
「ああ…」
「{やはり、お前の最も信じるものも、これなんですね。}」
たとえ幻術でも再会出来た事に、
頭に響く骸様の声に、
目が熱くなる。
声が出せずに頷くと、骸様は褒めてくれた。
「強力ないい術です。これなら僕も遊べそうだ………」
煙が晴れて、グロや蜜柑にも全体像が見えて来た。
「あれは……10年前の…」
髑髏の前にいるのは、彼女が最も信じるもの達。
骸と千種と犬の姿だった。
「少々懐かしいですがね。」