未来編①
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「未だ信じられん…。」
ミルフィオーレ、イタリア本部パフィオペディラム、ダチュラが飾られた会議室にて。
集まった幹部の中に困惑が渦巻く。
「だがアフェランドラ隊からの報告書によれば信憑性は高い…」
「第一、ジョークで全17部隊長ミーディングなどやらんでしょう。」
納得しようとする者もいれば、
「しかし…いささかぁ…突飛過ぎやしませんかね……」
首を傾げる者も。
「過去のボンゴレファミリーが……この時代にタイムトラベルなど……」
73
「正チャンが頑張ってくれたから出来たんだけどね。そりゃあもう、10年バズーカを膨大な時間を掛けて研究してくれてさ。」
白蘭のその言葉に、正一は無表情を貫き通す。
他の部隊長が10年バズーカという単語に驚いても、それは変わらず。
「バカな!!アレはあくまで言い伝えレベルの架空の兵器のはず!!」
「それなら、ボンゴレの死ぬ気弾も言い伝えだと思われてたし、匣だってつい最近までは夢物語・おとぎ話だったんだよ?」
空想だと思われていたモノが実際に存在した……言葉にしてみれば同じ事。
白蘭の説得に幹部は皆黙った。
が、ブラックスペルの1人が発言する。
「ですが、理解に苦しむ点はまだあります。」
何故、白蘭がホワイトスペルの人間の一部とだけその情報を共有していたか、という事。
まるで、ブラックスペルを除け者にしていたかのように。
「そんなの、この様子を見れば分かるだろ?タイムトラベルの話をしたところで、君たち信じないから。」
笑いながらそう答える白蘭に、再び沈黙が流れた。
そして、白蘭は付け足すように目の前の席に座る少女に言う。
「既成事実を示したらすぐに教えようと思ってたんだ。本当だよ、ユニ。」
幼さが残る黒髪の彼女こそ、ブラックスペルの頂点。
その表情は冷たく固まり、感情を一切読み取らせない。
「まだ分からない事があります。その技術をもってして、何故ボンゴレなんです?」
「わざわざ狩っているのに…一度では物足りないのですか?ボス。」
次々と口にされるブラックスペルの質問に答えたのは、白蘭ではないホワイトスペルの者だった。
「まるで分かってないねぇ。」
「なに!?」
「この計画の狙いは幼いボンゴレファミリーなどというカモではなく、奴らの背負って来るネギの方でしょう。」
「“ネギ”………!?」
髪を肩まで伸ばしたメガネの男が言う。
「リング リング ボンゴレリーング。」
3回繰り返すのは彼のクセのようで、何にせよ、出された単語に部隊長は再び驚く。
「ぼ、ボンゴレリング!?」
逆に、白蘭は笑みを絶やさず肯定する。
「さすがグロ君、鋭いなぁ。」
「確かに、最高峰のリングとしての魅力は分かるが…」
「すでに我々には同等の力を持つマーレリングがあるのですし…」
「ま…まさか!!」
「分かってくれたみたいだね。」
白蘭が右手の近くにあるボタンを押し、“それ”は姿を現した。
「僕が欲しいのは究極権力の鍵、73だよ。」
細かい装飾が施された板状の物。
そこには3つの輪に分けられた21個の穴があり、
それぞれアルコバレーノのおしゃぶり、
マーレリング、
そしてボンゴレリングをはめ込む為のモノだと分かる。
そして、既に5つのおしゃぶりがコレクションのようにはめ込まれていた……。
---
-----
------------
並盛、風紀財団アジトの檸檬の部屋。
『(視えた…!)』
“波長のひずみ”というのは、案外簡単に見つかるモノで、
電磁波などが物体にぶつかっている所なんかには、溢れるようにある。
『(えーっと、視えたらどーすんだっけ?)』
第二段階 物体をひずみに通す
・小さな物から試す事
・そのひずみが何処に繋がるか把握する事
『(う~~~ん…)』
とりあえず、近くにあった消しゴムの欠片をひずみに近づけてみる。
スルッ…
『あ。』
次の瞬間、あたしの集中力が切れて普通の光景に戻った。
だけど、消しゴムの欠片は消えていて。
『(やばっ……)』
何処に繋がってるのか、把握してなかった…!!
---
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ボンゴレアジト、地下5階。
山本の雨のリングに青い炎が灯る。
そこから時雨金時に伝わって行き、刀身全体が炎に包まれる。
「よし、いいぞ。さすが飲み込みが早いな、山本。」
「ふーー…」
「そんじゃあ…コイツはどーだ?」
突然リボーンに銃を向けられ、山本は素早く反応する。
ズガガガ、
スパッ、
弾を刀で斬ったかと思った、が……
ペチャチャッ、
「あ……あり……」
衣服や腕に絵の具が付き、全く防げていない事が分かる。
「わたっ!竹刀に戻っちまった……」
「炎を灯しての時雨蒼燕流は話になんねーな。ペイント弾じゃなけりゃ即死だったぞ。」
「たはは…まったくだ。」
笑いながら頭を掻く山本に、リボーンはふと問いかける。
「なぁ山本…お前、野球好きか?」
「え?あぁ、勿論好きだぜ♪」
「じゃあマフィアは好きか?」
「ん?それってマフィアごっこの事か?」
天然発言をする山本に小さく溜め息をつき、リボーンは続ける。
「まぁそーだな。ツナや獄寺のいる、ボンゴレなんかだぞ。」
「あはは!それなら楽しーぜ!雲雀や骸も同じチームってのが、またあり得なくてな。」
「…その笑顔を忘れんなよ。」
リボーンの言葉に、首を傾げる山本。
「修業が完了した時にまだそーやってお前が笑ってられたら、前にも言った通り、俺の秘密を教えてやる。」
「面白ぇー!!よーし、絶対だぜ!!」
改めて約束を交わし、二人は修業を再開した。
---
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「(やっぱユニ、怒ってたなー…)」
マシュマロを手で弄びながら、自分の部屋のソファでくつろぐ白蘭。
と、そこに。
「失礼します。」
「おっ、レオ君。」
ノック音と共に入って来たのは、緊急連絡をしに来たレオナルド。
「第11ヴィオラ隊より、たった今入った緊急連絡によりますと、B級以上の部下を4名何者かに暗殺された、との事です。」
あり得ない状況での殺害との事で、現場での調査が急いで行われている、と付け足す。
すると白蘭はいつものように緩く口角を上げながら呟いた。
「そろそろモグラが動き出す頃合いか。」
「モグラ?」
「聞いたこと無い?ボンゴレの特殊暗殺部隊・ヴァリアー。」
その名にレオナルドが驚くと、白蘭は間違い無いと言う。
そして、丁度迷っていたからこの奇襲は都合が良かった、と。
「レオ君ならどっちにする?第8グリチネ隊と、第11ヴィオラ隊。」
「い"っ!じ……自分でありますか…?ヴァリアーが相手では、さしもの11部隊もすぐには動けないかと……」
「って事で、第8グリチネ隊に日本へ向かうよう伝えてくれる?」
目的はボンゴレリング回収の増援。
だがしかし、既に日本にいる正一には伝えない方がいい、と白蘭は言う。
「正チャンさ、第8部隊の隊長みたいなタイプ、嫌いだから。」
「隊長、ですか…?」
「うん。下種なのに強い、グロ・キシニアみたいな男は…さ。」
グロ・キシニア……彼は先程のミーティングで、ボンゴレリングが狙いだと見抜いた男。
常識に捕われないという、独特の強さを持った男。
「あの、ではライト様には…」
「あー…そうだなー……」
マシュマロを1つ口にいれ、白蘭は唸って考える。
そして、再びレオナルドの方を向いて一言。
「僕が伝えておくよ。」
「は!」
レオナルドが立ち去った後、白蘭はモニター通信の前に移動する。
掛ける先は、日本にいる蜜柑。
-「はい。」
「蜜柑、僕だよ。」
-「白蘭…ご用件は。」
「グロ君がそっちに向かうから、一応連絡。」
その途端、キーボードを打つ蜜柑の手が僅かに固まる。
白蘭はそれを見逃さず、溜め息をついた。
「やっぱり嫌だよねー。」
-「いえ、それほど嫌悪を抱いているワケではありません。」
「そう?」
白蘭は知っていた。
イタリアの本部で蜜柑がグロと会って以来、遠ざかろうとしていた事を。
「ねぇ蜜柑、」
-「はい。」
「詮索でもされた?」
ピクリ、と反応する蜜柑の指先。
当たらずとも遠からず、という答えを示していた。
-「グロ・キシニアが私の生い立ちに疑問を抱いているのは明白です。そして…恐らくDARQとの繋がりを疑っている…。」
「教えてないんだよね。グロ君には、まだ。」
-「はい。」
「だったら、やっぱり早くしなくちゃね…」
-「どのようにして言うおつもりで?私が入江君に直接…」
「いいよ、僕が言う。蜜柑は、“マーちゃん”に全力を注いでていいから。」
-「……畏まりました。」
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ボンゴレアジト、男子トイレ内。
首に掛かった大空のリングを見ながら、ツナは1人考え事をしていた。
「……あんな事って………あるのかな…?」
歴代ボンゴレや初代ボンゴレが現れた、継承の場面を思い出す。
「だって考えてみたら、皆もう死んじゃってるんだし…………あ!」
そこで、ふと気がつく。
あそこに立っていたのが死んでしまった人達なら、
9代目も既に………
「まさか…」
少し青ざめながらトイレを出るツナ。
と、不意に声を掛けられる。
「退いてくれ!!ツナ!!」
「へ?」
次の瞬間、ツナの頭に何かがドカッとぶつかる。
「も"っ…!いでででで~~~」
「わりぃ!!まだノーコンでな!!」
そう言いながら走り去って行くのは、山本だった。
「ホントにスマン!!後でちゃんと詫びるから!!」
「……ってか、廊下で何やってんの?」
「軽いランニングよ♪」
ツナの質問に答えたのは、ポニーテールにジャージを着て、ホイッスルをくわえたリボーン。
その際、キックボードでツナの頭を踏んづける。
「匣のツバメを飛ばしながら、5キロのウェイトを付けて42キロ走ってんだ。」
マラソンと同じ距離である事に驚き、
更に、リボーンが落として行った“女子マネ的・軽~い準備運動”の内容にも驚くツナ。
すると、その後ろから…
「負けてられないな…」
聞こえて来たのは、ラルの声。
同時に、凄まじいオーラ。
「俺達は雲雀の修業時間以外はVer.V.Rの強化だ。」
「え……俺達って…」
「“え”ではない!!それでは入江正一を倒せんぞ!!Ver.V.Rの新しい必殺技なり戦略を手に入れるんだ!!」
「だから何でーー!?ラルさんが燃えてんのー!?指導降りるって言ったのに~!!」
結局は、騒ぎ立てる教官の血に逆らえなかったラル。
強くなる為なら、とツナも修業を再開する為にトレーニングルームへ向かう。
「あの、1つ聞きたいんですけど…」
「何だ?」
歩きながら、ツナはラルに問いかけた。
「ヒバードと京子ちゃんを探しに行った時、檸檬の妹……蜜柑さんがミルフィオーレにいるって言ってましたよね?」
「………あぁ。」
「もしかして、あの時檸檬は…」
「遭遇した、と言っていた。ライトにな。」
「ライト……それって、檸檬がダークだからですか?」
「何かの略称らしいが……詳しくは知らない。」
スタスタと歩き続ける2人。
だが、ラルは拳を握りしめていた。
「……10年前と、何も変わらないそうだ。」
「え?」
「檸檬が戦った10年後の蜜柑は…昔と同じく銃を使っていた、と。」
ツナはふと、色んな銃弾を使って戦っていた10年前の蜜柑の姿を思い出す。
「俺の知っている限りでは、ライトの波動は大空。」
「大空!?…って、俺と同じ……」
「全ての匣を開匣出来る、貴重な人材……だからこそ白蘭に買われたと推測している。」
「でも、姉妹ってか双子なのに波動が違うなんて…」
獄寺君とビアンキは同じ嵐の炎だったのに、と思うツナ。
するとラルは、少しだけ目を細めてこう言った。
「檸檬と蜜柑には……特殊な血が流れているからな…」
「あ…」
戦闘におけるリズム感の優れた父、
未来視という第六感を有する母、
その2人から生まれた双子が檸檬と蜜柑なのだ。
あらゆる可能性が秘められていても不思議はない。
「いずれにせよ、相当腕の立つ女だ。今の檸檬では手も足も出ないだろうな……」
「そんな…檸檬……」
「だが俺達が応戦しようとすると、ライトはすぐに立ち去る。アイツの目的は、檸檬の捕獲のみ、だからな。」
ライトについては、檸檬に任せるより他ない…
そう、ラルさんは付け足した。
檸檬…
そうやって何処までも、
1人で進んで行くつもりなの…?
ねぇ、檸檬………
---
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コンコン、
檸檬の部屋のドアがノックされる。
『あ、はい!ちょっと待っ………』
ガチャ、
第六感を発動させてる最中だったあたしは、焦った。
入って来たのが、恭弥だったから。
『(解除っ!)』
「檸檬、実は……」
『な、何?』
実は、まで言いかけて、恭弥は固まった。
あれ?あたし、何か変な事したっけ?
『恭、弥……?』
「檸檬……何、ソレ。」
『へっ?』
恭弥の視線を辿った先には、書類まみれになったあたしの机。
この距離でもよく見える。
それが、第六感に関する資料だ、って。
「何でそんなモノっ……!」
『恭弥っ…!?』
机上の書類に手を伸ばし、恭弥はそれに目を通す。
その異常な雰囲気を感じ取ったあたしは、慌てて取り返そうとした。
「…………檸檬、」
『な、何…?』
ノートを持つ恭弥の手が、少し震えてた。
これから恭弥が何を言うのか、少し予想出来た。
「これ、捨てるよ。」
『なっ…何言ってんのよ!!ダメ!!』
必死に恭弥の持ってるノートに手を伸ばす。
お互いに引っぱる状態になった。
『放して!返してよ!コレはあたしのだもんっ!』
「ヤダよ。こんなの一体どこから…」
『恭弥の意地悪っ!!』
咄嗟に発動させた第六感。
今までやった事を活かして、ノートを波長のひずみに押し込んだ。
『はぁっ……はぁっ……』
ズン、と頭が重くなる。
今日だけで、結構発動させたからだ…。
だけど、ノートはあたしと恭弥の手元から消えて、あたしの後ろに落っこちた。
それを見て、恭弥は目を見開く。
「檸檬……そんな事まで…」
『恭弥が何て言ったって、あたしは修業をやめない。コレは…未来のあたしが残してくれた、大切な書類よ。』
「ダメだって言ってるでしょ。」
『どうして!?あたし、無理しないもん!今日だってもう、修業時間終わらせるつもりだし……』
「そんな次元の問題じゃない。」
静かに言ってるけど、恭弥はすごく本気だった。
そのオーラが、怖かった。
「檸檬、そんな力使えるようにならなくていい。」
『いやっ…!だってあたし…』
リングを使えないって、フゥ太君から説明された。
それは、この第六感があるせいだって。
相手の炎を奪って戦うって、ラルから聞いた。
それは、この第六感を使えるからだって。
だから…
『あたしはっ…コレが使えなくちゃこの時代で戦っていけないの!!』
「ソレを使うくらいなら、戦わなくていい。」
何でそんな事言うの?
「檸檬は、分かってないんだ。」
『分かってるもん……』
第六感が、物凄い精神力を使う力だって事くらい。
「分かってないよ。」
『分かってる…!』
それでも、
どんな危険が待っていても、
戦うって決めた。
大切なモノを護る為に。
ねぇ恭弥、
それを1番分かってくれてるのは、恭弥じゃないの…?
向かい合わせで立ったまま、あたしと恭弥は黙っていた。
お互いを、真直ぐ見つめていた。
不意に、恭弥が口を開く。
「……戦う為なら、何も厭わないの?」
『え……?』
「自分はどうなってもいいんだ。」
『そんな事言ってな…』
「波長のせいで、その視界が閉ざされても………!」
今まで見た事ないような、哀しい目をした恭弥。
その言葉に、あたしの思考回路は停止する。
え?なに?
視界が、閉ざされる…?
次の瞬間、恭弥はあたしの部屋を飛び出して。
『ま、待って!今の一体どういうっ……』
廊下に出たあたしの足は、何故かそこから一歩も動いてくれなくて、
早歩きで去る恭弥の苦しそうな背中を、見つめるしか出来なくて。
ただ、小さな震えが体の底から沸き起こって来る。
あぁだから、みんな哀しい顔をしたの?
だから、草壁さんは恭弥に内緒にしてって言ったの?
ねぇ、未来のあたしは……ちゃんと皆と笑っていた?
---「もう…無理させない。」
『…恭弥………』
何の涙か分からないけど、とにかくあたしの視界はぼやける。
溢れ出すソレを拭わないまま、ツナ達のアジトに走って戻った。
応接室のソファに腰掛けて初めて、
恭弥と喧嘩したんだ、と気付いた。
ミルフィオーレ、イタリア本部パフィオペディラム、ダチュラが飾られた会議室にて。
集まった幹部の中に困惑が渦巻く。
「だがアフェランドラ隊からの報告書によれば信憑性は高い…」
「第一、ジョークで全17部隊長ミーディングなどやらんでしょう。」
納得しようとする者もいれば、
「しかし…いささかぁ…突飛過ぎやしませんかね……」
首を傾げる者も。
「過去のボンゴレファミリーが……この時代にタイムトラベルなど……」
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「正チャンが頑張ってくれたから出来たんだけどね。そりゃあもう、10年バズーカを膨大な時間を掛けて研究してくれてさ。」
白蘭のその言葉に、正一は無表情を貫き通す。
他の部隊長が10年バズーカという単語に驚いても、それは変わらず。
「バカな!!アレはあくまで言い伝えレベルの架空の兵器のはず!!」
「それなら、ボンゴレの死ぬ気弾も言い伝えだと思われてたし、匣だってつい最近までは夢物語・おとぎ話だったんだよ?」
空想だと思われていたモノが実際に存在した……言葉にしてみれば同じ事。
白蘭の説得に幹部は皆黙った。
が、ブラックスペルの1人が発言する。
「ですが、理解に苦しむ点はまだあります。」
何故、白蘭がホワイトスペルの人間の一部とだけその情報を共有していたか、という事。
まるで、ブラックスペルを除け者にしていたかのように。
「そんなの、この様子を見れば分かるだろ?タイムトラベルの話をしたところで、君たち信じないから。」
笑いながらそう答える白蘭に、再び沈黙が流れた。
そして、白蘭は付け足すように目の前の席に座る少女に言う。
「既成事実を示したらすぐに教えようと思ってたんだ。本当だよ、ユニ。」
幼さが残る黒髪の彼女こそ、ブラックスペルの頂点。
その表情は冷たく固まり、感情を一切読み取らせない。
「まだ分からない事があります。その技術をもってして、何故ボンゴレなんです?」
「わざわざ狩っているのに…一度では物足りないのですか?ボス。」
次々と口にされるブラックスペルの質問に答えたのは、白蘭ではないホワイトスペルの者だった。
「まるで分かってないねぇ。」
「なに!?」
「この計画の狙いは幼いボンゴレファミリーなどというカモではなく、奴らの背負って来るネギの方でしょう。」
「“ネギ”………!?」
髪を肩まで伸ばしたメガネの男が言う。
「リング リング ボンゴレリーング。」
3回繰り返すのは彼のクセのようで、何にせよ、出された単語に部隊長は再び驚く。
「ぼ、ボンゴレリング!?」
逆に、白蘭は笑みを絶やさず肯定する。
「さすがグロ君、鋭いなぁ。」
「確かに、最高峰のリングとしての魅力は分かるが…」
「すでに我々には同等の力を持つマーレリングがあるのですし…」
「ま…まさか!!」
「分かってくれたみたいだね。」
白蘭が右手の近くにあるボタンを押し、“それ”は姿を現した。
「僕が欲しいのは究極権力の鍵、73だよ。」
細かい装飾が施された板状の物。
そこには3つの輪に分けられた21個の穴があり、
それぞれアルコバレーノのおしゃぶり、
マーレリング、
そしてボンゴレリングをはめ込む為のモノだと分かる。
そして、既に5つのおしゃぶりがコレクションのようにはめ込まれていた……。
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並盛、風紀財団アジトの檸檬の部屋。
『(視えた…!)』
“波長のひずみ”というのは、案外簡単に見つかるモノで、
電磁波などが物体にぶつかっている所なんかには、溢れるようにある。
『(えーっと、視えたらどーすんだっけ?)』
第二段階 物体をひずみに通す
・小さな物から試す事
・そのひずみが何処に繋がるか把握する事
『(う~~~ん…)』
とりあえず、近くにあった消しゴムの欠片をひずみに近づけてみる。
スルッ…
『あ。』
次の瞬間、あたしの集中力が切れて普通の光景に戻った。
だけど、消しゴムの欠片は消えていて。
『(やばっ……)』
何処に繋がってるのか、把握してなかった…!!
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ボンゴレアジト、地下5階。
山本の雨のリングに青い炎が灯る。
そこから時雨金時に伝わって行き、刀身全体が炎に包まれる。
「よし、いいぞ。さすが飲み込みが早いな、山本。」
「ふーー…」
「そんじゃあ…コイツはどーだ?」
突然リボーンに銃を向けられ、山本は素早く反応する。
ズガガガ、
スパッ、
弾を刀で斬ったかと思った、が……
ペチャチャッ、
「あ……あり……」
衣服や腕に絵の具が付き、全く防げていない事が分かる。
「わたっ!竹刀に戻っちまった……」
「炎を灯しての時雨蒼燕流は話になんねーな。ペイント弾じゃなけりゃ即死だったぞ。」
「たはは…まったくだ。」
笑いながら頭を掻く山本に、リボーンはふと問いかける。
「なぁ山本…お前、野球好きか?」
「え?あぁ、勿論好きだぜ♪」
「じゃあマフィアは好きか?」
「ん?それってマフィアごっこの事か?」
天然発言をする山本に小さく溜め息をつき、リボーンは続ける。
「まぁそーだな。ツナや獄寺のいる、ボンゴレなんかだぞ。」
「あはは!それなら楽しーぜ!雲雀や骸も同じチームってのが、またあり得なくてな。」
「…その笑顔を忘れんなよ。」
リボーンの言葉に、首を傾げる山本。
「修業が完了した時にまだそーやってお前が笑ってられたら、前にも言った通り、俺の秘密を教えてやる。」
「面白ぇー!!よーし、絶対だぜ!!」
改めて約束を交わし、二人は修業を再開した。
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「(やっぱユニ、怒ってたなー…)」
マシュマロを手で弄びながら、自分の部屋のソファでくつろぐ白蘭。
と、そこに。
「失礼します。」
「おっ、レオ君。」
ノック音と共に入って来たのは、緊急連絡をしに来たレオナルド。
「第11ヴィオラ隊より、たった今入った緊急連絡によりますと、B級以上の部下を4名何者かに暗殺された、との事です。」
あり得ない状況での殺害との事で、現場での調査が急いで行われている、と付け足す。
すると白蘭はいつものように緩く口角を上げながら呟いた。
「そろそろモグラが動き出す頃合いか。」
「モグラ?」
「聞いたこと無い?ボンゴレの特殊暗殺部隊・ヴァリアー。」
その名にレオナルドが驚くと、白蘭は間違い無いと言う。
そして、丁度迷っていたからこの奇襲は都合が良かった、と。
「レオ君ならどっちにする?第8グリチネ隊と、第11ヴィオラ隊。」
「い"っ!じ……自分でありますか…?ヴァリアーが相手では、さしもの11部隊もすぐには動けないかと……」
「って事で、第8グリチネ隊に日本へ向かうよう伝えてくれる?」
目的はボンゴレリング回収の増援。
だがしかし、既に日本にいる正一には伝えない方がいい、と白蘭は言う。
「正チャンさ、第8部隊の隊長みたいなタイプ、嫌いだから。」
「隊長、ですか…?」
「うん。下種なのに強い、グロ・キシニアみたいな男は…さ。」
グロ・キシニア……彼は先程のミーティングで、ボンゴレリングが狙いだと見抜いた男。
常識に捕われないという、独特の強さを持った男。
「あの、ではライト様には…」
「あー…そうだなー……」
マシュマロを1つ口にいれ、白蘭は唸って考える。
そして、再びレオナルドの方を向いて一言。
「僕が伝えておくよ。」
「は!」
レオナルドが立ち去った後、白蘭はモニター通信の前に移動する。
掛ける先は、日本にいる蜜柑。
-「はい。」
「蜜柑、僕だよ。」
-「白蘭…ご用件は。」
「グロ君がそっちに向かうから、一応連絡。」
その途端、キーボードを打つ蜜柑の手が僅かに固まる。
白蘭はそれを見逃さず、溜め息をついた。
「やっぱり嫌だよねー。」
-「いえ、それほど嫌悪を抱いているワケではありません。」
「そう?」
白蘭は知っていた。
イタリアの本部で蜜柑がグロと会って以来、遠ざかろうとしていた事を。
「ねぇ蜜柑、」
-「はい。」
「詮索でもされた?」
ピクリ、と反応する蜜柑の指先。
当たらずとも遠からず、という答えを示していた。
-「グロ・キシニアが私の生い立ちに疑問を抱いているのは明白です。そして…恐らくDARQとの繋がりを疑っている…。」
「教えてないんだよね。グロ君には、まだ。」
-「はい。」
「だったら、やっぱり早くしなくちゃね…」
-「どのようにして言うおつもりで?私が入江君に直接…」
「いいよ、僕が言う。蜜柑は、“マーちゃん”に全力を注いでていいから。」
-「……畏まりました。」
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ボンゴレアジト、男子トイレ内。
首に掛かった大空のリングを見ながら、ツナは1人考え事をしていた。
「……あんな事って………あるのかな…?」
歴代ボンゴレや初代ボンゴレが現れた、継承の場面を思い出す。
「だって考えてみたら、皆もう死んじゃってるんだし…………あ!」
そこで、ふと気がつく。
あそこに立っていたのが死んでしまった人達なら、
9代目も既に………
「まさか…」
少し青ざめながらトイレを出るツナ。
と、不意に声を掛けられる。
「退いてくれ!!ツナ!!」
「へ?」
次の瞬間、ツナの頭に何かがドカッとぶつかる。
「も"っ…!いでででで~~~」
「わりぃ!!まだノーコンでな!!」
そう言いながら走り去って行くのは、山本だった。
「ホントにスマン!!後でちゃんと詫びるから!!」
「……ってか、廊下で何やってんの?」
「軽いランニングよ♪」
ツナの質問に答えたのは、ポニーテールにジャージを着て、ホイッスルをくわえたリボーン。
その際、キックボードでツナの頭を踏んづける。
「匣のツバメを飛ばしながら、5キロのウェイトを付けて42キロ走ってんだ。」
マラソンと同じ距離である事に驚き、
更に、リボーンが落として行った“女子マネ的・軽~い準備運動”の内容にも驚くツナ。
すると、その後ろから…
「負けてられないな…」
聞こえて来たのは、ラルの声。
同時に、凄まじいオーラ。
「俺達は雲雀の修業時間以外はVer.V.Rの強化だ。」
「え……俺達って…」
「“え”ではない!!それでは入江正一を倒せんぞ!!Ver.V.Rの新しい必殺技なり戦略を手に入れるんだ!!」
「だから何でーー!?ラルさんが燃えてんのー!?指導降りるって言ったのに~!!」
結局は、騒ぎ立てる教官の血に逆らえなかったラル。
強くなる為なら、とツナも修業を再開する為にトレーニングルームへ向かう。
「あの、1つ聞きたいんですけど…」
「何だ?」
歩きながら、ツナはラルに問いかけた。
「ヒバードと京子ちゃんを探しに行った時、檸檬の妹……蜜柑さんがミルフィオーレにいるって言ってましたよね?」
「………あぁ。」
「もしかして、あの時檸檬は…」
「遭遇した、と言っていた。ライトにな。」
「ライト……それって、檸檬がダークだからですか?」
「何かの略称らしいが……詳しくは知らない。」
スタスタと歩き続ける2人。
だが、ラルは拳を握りしめていた。
「……10年前と、何も変わらないそうだ。」
「え?」
「檸檬が戦った10年後の蜜柑は…昔と同じく銃を使っていた、と。」
ツナはふと、色んな銃弾を使って戦っていた10年前の蜜柑の姿を思い出す。
「俺の知っている限りでは、ライトの波動は大空。」
「大空!?…って、俺と同じ……」
「全ての匣を開匣出来る、貴重な人材……だからこそ白蘭に買われたと推測している。」
「でも、姉妹ってか双子なのに波動が違うなんて…」
獄寺君とビアンキは同じ嵐の炎だったのに、と思うツナ。
するとラルは、少しだけ目を細めてこう言った。
「檸檬と蜜柑には……特殊な血が流れているからな…」
「あ…」
戦闘におけるリズム感の優れた父、
未来視という第六感を有する母、
その2人から生まれた双子が檸檬と蜜柑なのだ。
あらゆる可能性が秘められていても不思議はない。
「いずれにせよ、相当腕の立つ女だ。今の檸檬では手も足も出ないだろうな……」
「そんな…檸檬……」
「だが俺達が応戦しようとすると、ライトはすぐに立ち去る。アイツの目的は、檸檬の捕獲のみ、だからな。」
ライトについては、檸檬に任せるより他ない…
そう、ラルさんは付け足した。
檸檬…
そうやって何処までも、
1人で進んで行くつもりなの…?
ねぇ、檸檬………
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コンコン、
檸檬の部屋のドアがノックされる。
『あ、はい!ちょっと待っ………』
ガチャ、
第六感を発動させてる最中だったあたしは、焦った。
入って来たのが、恭弥だったから。
『(解除っ!)』
「檸檬、実は……」
『な、何?』
実は、まで言いかけて、恭弥は固まった。
あれ?あたし、何か変な事したっけ?
『恭、弥……?』
「檸檬……何、ソレ。」
『へっ?』
恭弥の視線を辿った先には、書類まみれになったあたしの机。
この距離でもよく見える。
それが、第六感に関する資料だ、って。
「何でそんなモノっ……!」
『恭弥っ…!?』
机上の書類に手を伸ばし、恭弥はそれに目を通す。
その異常な雰囲気を感じ取ったあたしは、慌てて取り返そうとした。
「…………檸檬、」
『な、何…?』
ノートを持つ恭弥の手が、少し震えてた。
これから恭弥が何を言うのか、少し予想出来た。
「これ、捨てるよ。」
『なっ…何言ってんのよ!!ダメ!!』
必死に恭弥の持ってるノートに手を伸ばす。
お互いに引っぱる状態になった。
『放して!返してよ!コレはあたしのだもんっ!』
「ヤダよ。こんなの一体どこから…」
『恭弥の意地悪っ!!』
咄嗟に発動させた第六感。
今までやった事を活かして、ノートを波長のひずみに押し込んだ。
『はぁっ……はぁっ……』
ズン、と頭が重くなる。
今日だけで、結構発動させたからだ…。
だけど、ノートはあたしと恭弥の手元から消えて、あたしの後ろに落っこちた。
それを見て、恭弥は目を見開く。
「檸檬……そんな事まで…」
『恭弥が何て言ったって、あたしは修業をやめない。コレは…未来のあたしが残してくれた、大切な書類よ。』
「ダメだって言ってるでしょ。」
『どうして!?あたし、無理しないもん!今日だってもう、修業時間終わらせるつもりだし……』
「そんな次元の問題じゃない。」
静かに言ってるけど、恭弥はすごく本気だった。
そのオーラが、怖かった。
「檸檬、そんな力使えるようにならなくていい。」
『いやっ…!だってあたし…』
リングを使えないって、フゥ太君から説明された。
それは、この第六感があるせいだって。
相手の炎を奪って戦うって、ラルから聞いた。
それは、この第六感を使えるからだって。
だから…
『あたしはっ…コレが使えなくちゃこの時代で戦っていけないの!!』
「ソレを使うくらいなら、戦わなくていい。」
何でそんな事言うの?
「檸檬は、分かってないんだ。」
『分かってるもん……』
第六感が、物凄い精神力を使う力だって事くらい。
「分かってないよ。」
『分かってる…!』
それでも、
どんな危険が待っていても、
戦うって決めた。
大切なモノを護る為に。
ねぇ恭弥、
それを1番分かってくれてるのは、恭弥じゃないの…?
向かい合わせで立ったまま、あたしと恭弥は黙っていた。
お互いを、真直ぐ見つめていた。
不意に、恭弥が口を開く。
「……戦う為なら、何も厭わないの?」
『え……?』
「自分はどうなってもいいんだ。」
『そんな事言ってな…』
「波長のせいで、その視界が閉ざされても………!」
今まで見た事ないような、哀しい目をした恭弥。
その言葉に、あたしの思考回路は停止する。
え?なに?
視界が、閉ざされる…?
次の瞬間、恭弥はあたしの部屋を飛び出して。
『ま、待って!今の一体どういうっ……』
廊下に出たあたしの足は、何故かそこから一歩も動いてくれなくて、
早歩きで去る恭弥の苦しそうな背中を、見つめるしか出来なくて。
ただ、小さな震えが体の底から沸き起こって来る。
あぁだから、みんな哀しい顔をしたの?
だから、草壁さんは恭弥に内緒にしてって言ったの?
ねぇ、未来のあたしは……ちゃんと皆と笑っていた?
---「もう…無理させない。」
『…恭弥………』
何の涙か分からないけど、とにかくあたしの視界はぼやける。
溢れ出すソレを拭わないまま、ツナ達のアジトに走って戻った。
応接室のソファに腰掛けて初めて、
恭弥と喧嘩したんだ、と気付いた。