未来編①
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・雲雀恭弥
風紀財団
ボンゴレファミリー(?)
風紀財団委員長
雲の守護者(?)
雲系リング(精製度C) ×4
雲系リング(精製度D) ×8
霧系カモフラージュリング(精製度E)
ハリネズミの匣
トンファー 等
試練
ツナの炎と、恭弥のハリネズミがぶつかる。
たった今からツナの家庭教師は恭弥。
あたしも早く書類を見つけて修業をしたいけど、
13日間恭弥と過ごして、持ち主は恭弥じゃない気がして来た。
だって…
恭弥はあたしが無理をするのを嫌ってる。
第六感を使えばリバウンドが来るってラルから聞いた。
第六感使用を反対する恭弥に、10年後のあたしが書類を預けるとは考えにくい。
『(だったら…一体誰に……?)』
考え込んでいると、後ろから2つの声が聞こえて来た。
「うわっ…やってる!」
「花火だもんね!!」
入り口の所に立ってるのは、すごく背が高くなった10年後のフゥ太君と、その肩に乗るランボちゃん。
「すごい!!」
とはしゃぐランボちゃんに、フゥ太君は何かを説明しようとしてるみたい。
一方…
ハリネズミに必死に応戦するツナを見て、恭弥が言う。
「赤ん坊から聞いた通りだ。僕の知るこの時代の君には程遠いね。」
「くっ…!」
ハリネズミと押し合ってても埒が空かないと考えたのか、ツナはグローブに冷気を纏わせる。
『あれは…!』
“死ぬ気の零地点突破・初代エディション”
「すげっ!」
「さすが10代目!!」
「いいや、まだだ!!」
ラルの言う通り、ハリネズミ自体は凍ったけど、ツナの周りには…
「紫色の雲……増殖しているのか!?」
「くうっ、」
ツナは自分を囲む雲にも手を向ける。
だけど、
「速い!!追いつかない!!」
紫色の雲はどんどんツナを囲んで行き、
その姿を隠し、
『ツナ…!??』
炎ごと、閉じ込めてしまった。
γとの戦いで見たのと違う、今度は完全な球体。
ツナを閉じ込めた針だらけのボールは、そのまま壁を伝って落ちて来た。
同時に、恭弥のリングは簡単に砕ける。
「つ…ツナ!!」
「10代目!!」
「何あれ…?」
隼人と武、フゥ太まで口をあんぐり開ける。
「球針態…絶対的遮断力を持ち雲の炎を混合した、密閉球体。これを破壊する事は、彼の腕力でも炎でも不可能だ。」
『絶対的遮断…!?じゃあツナは…!』
球針態に歩み寄りながら、恭弥は言う。
「密閉され、内部の酸素量は限られている。早く脱出しないと…死ぬよ。」
『そ、そんな!!』
「ふざけんな!!てめーら10日ぶりに現れたと思えば、10代目を殺す気か!!出しやがれ!!」
抗議する隼人に、
「弱者が土に帰るのは当然の事さ。第一、沢田綱吉を殺す理由があっても生かしておく理由が僕には無い。」
恭弥は10年経っても恭弥のままで、
ツナ達に厳しいのは変わらない。
『でもっ…殺すなんて…!』
「これはテストだよ。こんな物で死ぬなら、檸檬が命を張って護る価値なんて無い。」
『そ、そんな事…!!』
「檸檬が自ら直属となって仕えてたんだ、このくらい乗り越えて当然さ。」
『直属…?』
あたし、ちゃんと10代目直属になってたんだ…。
「んじゃ、俺達も修業始めるか。」
リボーンが言うと、隼人と武がビクッとする。
「ま、待って下さい!リボーンさん!!このままじゃ10代目が!!」
「雲雀はやるっつったらやるぜ…」
「分かってるぞ、だからこそ雲雀なんだ。」
リボーン曰く、歴代ボスが超えて来たボンゴレの試練には、
混じりけの無い“本当の殺意”が必要らしい。
『じゃあ恭弥は…その試練を受けさせる為に…?』
「ま、そんな感じだ。」
ここに来て、群れるのが嫌いな恭弥の性格が役に立つなんて、ちょっと吃驚した。
「さぁ、私たちも入江正一を倒す為にレッスンを始めましょ。」
「ちけっ!!」
不意に、ビア姉さんが隼人を引き寄せ目を合わせる。
すると隼人はやっぱり…
「ふげがご!!」
…倒れてしまった。
『隼人!』
「ご…獄寺!!」
「しょうがない子ね。」
そしてリボーンも、
「山本、俺は着替えて来る。地下10階に来いよ。」
「な……おい小僧!!」
止めようとする武をスルーして、リボーンは去り際にラルに言う。
「ラル・ミルチ、」
「何だ。」
「檸檬を見ててくれ。すぐツナを助けようとするからな。」
『え、あ…あたしそんな事…!』
「ツナが限りなく死に近い状態に追いつめられた時…見てるだけでいられる自信はあるか?」
『そ、それは…』
リボーンに返す言葉が無くて、あたしは俯く。
「んじゃ、頼んだぞ。」
「ああ。」
ラルの返事を聞いて、リボーンは立ち去った。
あたしは、ツナを閉じ込めた球針態を横目で見てから武に言った。
『行って来て、武。』
「檸檬…けどツナが、」
『ツナは大丈夫だよ、だって…あたし達のボスだもん。』
にこりと笑うと、躊躇っていた武も大きく頷いた。
「そーだな!んじゃ、俺も修業して来るわ。」
『いってらっしゃい♪』
---
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エレベーターで地下10階にやってきた山本。
ドアが開くと、和風の内装が広がっていた。
「何だよ、真っ暗だ。電気のスイッチ何処だ?」
キョロキョロしながら歩く山本は、ふと寒気のようなモノを感じる。
それは、自分の命を狙っているという…
殺気。
バッと振り向き、竹刀を構える。
と、そこには長身の男の影が一つ。
「この殺気に気づくとは、また腕を上げたな、山本武。」
「誰だ!!」
問うてみるものの、その影は答えず。
「だがまだ時雨金時を使いこなせてねーな。リングでそいつの力を引き出せたらこの時代の剣帝にも負けねーってのは…10年後のお前が言ってたんだぞ。」
「あっ…!」
徐々に目線を下ろして行った山本は、影の持ち主を捉えて目を見開く。
「こっ、小僧!!」
非73から身を守る為のスーツではなく、いつものスーツを着たリボーンが、銃を構えて立っていた。
「時雨金時にボンゴレリングの力が合わさった時、お前はボンゴレ唯一の存在となる。」
それは、入江を倒す為にも必要だとリボーンは言う。
そして、
その為なら本当の自分を見せてもいい…
そう思っている、と。
---
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一方、倒れたまま修業場に運ばれた獄寺。
ふとその耳に、聞き覚えのある音が舞い込んで来る。
「(この音色…あのピアノだ……)」
音と共に蘇るのは、かつて自分が住んでいた城の風景、
近くにあった森や小川…
「(へっ…高いソの音が外れたままでやんの……)」
幼い頃、弾いていたピアノ。
前衛的だと評価されて、姉へのトラウマのキッカケになったピアノ。
「(くそ……何て夢だ…)」
少しばかり不快になりながらも目を開ける。
が、ピアノの音は止まない。
不思議に思い、音が聞こえる方に目をやる。
と、ぼんやり見えるのは……
幼くして亡くした、実の母の姿。
ピアノを弾いている、後ろ姿。
慌てて起き上がる獄寺。
しかし、母の姿があった所には、腹違いの姉が。
「起きたのね、隼人。顔の一部を隠せば、私を見ても倒れないわね。」
「な……」
振り向いたビアンキは、ゴーグルをつけている。
「何してんだよアネキ!!つか何でこのピアノが…!?」
「少し前に城から運んでもらったのよ。貴方、とても小さかったのによく覚えていたわね。」
「ふっ…ふざけんな!!」
獄寺はビアンキを睨みながら言う。
「あの城も親父も俺にはもう関係ねぇ!!アネキもだ!あんたから教わる事なんて何もねぇ!!」
「隼人…ダメよ。」
グチャッ、
ビアンキは突然獄寺の左目辺りにポイズンクッキングを押し付ける。
そこからは、独特の痛みが走って来て。
「何すんだてめー!!!」
悲鳴をあげる獄寺。
一方ビアンキは、落ち着いた口調で続ける。
「感情に流され過ぎてはダメ。またγとの戦いのような失敗を犯すつもり?」
「んだと!」
「いいわ、ココから始めましょう。目標は10年後の隼人が考案したSISTEMA(スィステーマ) C.A.I.の完成よ。」
「(俺が…考案した?)」
疑問符を浮かべる獄寺に、ビアンキは言う。
「嫌なら城から出て行った時のように逃げなさい。」
「なに!」
「ただし…」
言いながら、取り出した匣にリングをはめて。
「逃げられるなら。」
次の瞬間ビアンキの匣から何かが飛び出し、
獄寺は咄嗟に見をかがめた。
---
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------------
5階、トレーニングルーム。
ツナが球針態に閉じ込められてから数分が経過した。
『ツナ…』
早く出て来て…
じゃないと…中の酸素が…
隼人も武も修業を始めてる。
ツナだって、今までたくさんのピンチを乗り越えて来たんだもん。
きっと、大丈夫だよ。
ふと、後ろを向いてみる。
ランボちゃんの声が聞こえなくなって、ちょっと心配になったから。
でも…
『あ、寝ちゃってたんだ…』
「檸檬姉!」
『えっと…初めまして、10年後のフゥ太君♪』
「うん。僕は何だか懐かしく感じるよ。」
ランボを抱えたまま、フゥ太君はニコリと笑う。
可愛い笑顔の中に、やっぱり10年前の面影がある。
「ねぇ、檸檬姉…」
『ん?』
ツナがいる球針態を見ながら、フゥ太君はあたしに問う。
「檸檬姉も、修業するの?」
『うん、するつもり。でもまだ…第六感に関する資料が見つからなくて…』
仕方無さそうに笑みをこぼし、檸檬は続ける。
『それに、あたしは第六感のせいでリングが使えないみたいなの。その理論は…まだよく分からないけど。』
「分かるよ。」
『えっ…?』
その返答に驚きフゥ太を見る檸檬。
フゥ太は球針態の方を真直ぐ見つめながら言った。
「僕、分かるよ。どうして檸檬姉の力がリングと相性悪いか。」
『ほ…本当?』
聞き返す檸檬に、フゥ太は小さく頷く。
「知りたい?檸檬姉。」
『う、うんっ!』
「第六感っていうのは、波長を読む力だって知ってるよね。」
『うん。』
「その力を持つ者は、周りの波長を知らないうちに感じ取る性質があるんだ。檸檬姉も、檸檬姉のお母さんもそうだよ。」
『知らないうちに…?』
「そう、知らないうちに。」
フゥ太の表情は、何処か寂しげになって行き、
檸檬は少しだけ首を傾げる。
「檸檬姉にとって、人の波動とそこから精製される炎は、“同じ波長”なんだ。」
『うん…』
「だけどリングは、波長を炎に変換する。檸檬姉からするとコレは…波長をねじ曲げている事になる。」
そこで、全てが崩れていく。
「最初のうちは、檸檬姉もリングが使えたんだよ、雲系のね。だけど…第六感の兆しが見え始めてから、だんだん……」
『第六感の兆し…?』
聞き返す檸檬に、フゥ太は哀しそうに頷く。
「人を思う事で発動する檸檬姉の第六感、それはゆっくりと開化していったんだ。仲間が増える度に。」
『それでも、最初のうちは付けてたんでしょ?リング…』
「うん。あの時はまだ、発作が起こらなかったからね。」
『発作!!?』
吃驚して声を上げたら、草壁さんがこっちを向いた。
あたしは慌てて自分の口を押さえて、小声でフゥ太君に尋ねる。
『あたし…リング付けるとどうなるの?』
少し前、ラルが言ってた。
---「……頼む…それだけは………それだけはやめろ…」
どうしてか不思議だったけど、その理由がやっと、今聞ける。
「檸檬姉にとってリングを付けるって事は、自分の波長をねじ曲げて炎に変換されるって事。」
『ねじ曲げられる…?』
体の底から沸き起こって来るような、そんな恐怖があたしを貫く。
「初めに言った通り、第六感保有者は知らないうちに波長を感じ取ってしまう。だから、自分の波長をねじ曲げられているその感覚が……苦痛となって襲いかかった。」
『それで…心身共に負担がかかった……』
「うん…」
それであたしは、リングを付けないようにしたんだ。
付けないままでも匣が開けられるように、相手の炎を奪う戦法をマスターして。
『そっか…ありがと!フゥ太君♪』
「檸檬姉、怖くないの?」
『うん!だってあたしは、リングが使えなくても戦ってた。足手纏いじゃなかった。それだけ分かれば充分。』
「…檸檬姉……」
『にしても、ツナ…大丈夫なのかな、もう危ないんじゃ……』
それでも、手出しはするなってリボーンに言われたから、見ている事しか出来ないけど…。
恭弥は暇なのか欠伸をしてて、
草壁さんも焦ったような表情をする。
ラルは腕組みしたまま立ってるだけだし…
「ハァ…ハァ…ハァ……」
ツナの、苦しそうな呼吸が聞こえる。
球針態の中で、必死にもがいてる。
と、次の瞬間。
「はあぁ!!」
中から、ツナの声が聞こえて来た。
『(炎を…ぶつける気なんだ…!)』
と、同時に。
ズルル…
『フゥ太君?どしたの、大丈夫!?』
「うん…今きっと…雨が………雨が降ってる…」
その言葉で、フゥ太君の体質を思い出す。
「ツナ兄頑張れ……」
『出て来てツナ…』
---
------
------------
とても小雨とは言えない雨の中、
少女は一人、走っていた。
自分の、唯一の居場所へと。
誰もいない道を通り、
撤去作業中を知らせるフェンスをくぐり抜け、
その場所…
黒曜ヘルシーランドへと駆け込んだ。
「ハァ……ハァ……」
静かなそこには、彼女の息づかい以外何も響かない。
「犬……?千種……?」
廃墟と化したその建物の中で、
彼女の声は哀しくこだました。
風紀財団
ボンゴレファミリー(?)
風紀財団委員長
雲の守護者(?)
雲系リング(精製度C) ×4
雲系リング(精製度D) ×8
霧系カモフラージュリング(精製度E)
ハリネズミの匣
トンファー 等
試練
ツナの炎と、恭弥のハリネズミがぶつかる。
たった今からツナの家庭教師は恭弥。
あたしも早く書類を見つけて修業をしたいけど、
13日間恭弥と過ごして、持ち主は恭弥じゃない気がして来た。
だって…
恭弥はあたしが無理をするのを嫌ってる。
第六感を使えばリバウンドが来るってラルから聞いた。
第六感使用を反対する恭弥に、10年後のあたしが書類を預けるとは考えにくい。
『(だったら…一体誰に……?)』
考え込んでいると、後ろから2つの声が聞こえて来た。
「うわっ…やってる!」
「花火だもんね!!」
入り口の所に立ってるのは、すごく背が高くなった10年後のフゥ太君と、その肩に乗るランボちゃん。
「すごい!!」
とはしゃぐランボちゃんに、フゥ太君は何かを説明しようとしてるみたい。
一方…
ハリネズミに必死に応戦するツナを見て、恭弥が言う。
「赤ん坊から聞いた通りだ。僕の知るこの時代の君には程遠いね。」
「くっ…!」
ハリネズミと押し合ってても埒が空かないと考えたのか、ツナはグローブに冷気を纏わせる。
『あれは…!』
“死ぬ気の零地点突破・初代エディション”
「すげっ!」
「さすが10代目!!」
「いいや、まだだ!!」
ラルの言う通り、ハリネズミ自体は凍ったけど、ツナの周りには…
「紫色の雲……増殖しているのか!?」
「くうっ、」
ツナは自分を囲む雲にも手を向ける。
だけど、
「速い!!追いつかない!!」
紫色の雲はどんどんツナを囲んで行き、
その姿を隠し、
『ツナ…!??』
炎ごと、閉じ込めてしまった。
γとの戦いで見たのと違う、今度は完全な球体。
ツナを閉じ込めた針だらけのボールは、そのまま壁を伝って落ちて来た。
同時に、恭弥のリングは簡単に砕ける。
「つ…ツナ!!」
「10代目!!」
「何あれ…?」
隼人と武、フゥ太まで口をあんぐり開ける。
「球針態…絶対的遮断力を持ち雲の炎を混合した、密閉球体。これを破壊する事は、彼の腕力でも炎でも不可能だ。」
『絶対的遮断…!?じゃあツナは…!』
球針態に歩み寄りながら、恭弥は言う。
「密閉され、内部の酸素量は限られている。早く脱出しないと…死ぬよ。」
『そ、そんな!!』
「ふざけんな!!てめーら10日ぶりに現れたと思えば、10代目を殺す気か!!出しやがれ!!」
抗議する隼人に、
「弱者が土に帰るのは当然の事さ。第一、沢田綱吉を殺す理由があっても生かしておく理由が僕には無い。」
恭弥は10年経っても恭弥のままで、
ツナ達に厳しいのは変わらない。
『でもっ…殺すなんて…!』
「これはテストだよ。こんな物で死ぬなら、檸檬が命を張って護る価値なんて無い。」
『そ、そんな事…!!』
「檸檬が自ら直属となって仕えてたんだ、このくらい乗り越えて当然さ。」
『直属…?』
あたし、ちゃんと10代目直属になってたんだ…。
「んじゃ、俺達も修業始めるか。」
リボーンが言うと、隼人と武がビクッとする。
「ま、待って下さい!リボーンさん!!このままじゃ10代目が!!」
「雲雀はやるっつったらやるぜ…」
「分かってるぞ、だからこそ雲雀なんだ。」
リボーン曰く、歴代ボスが超えて来たボンゴレの試練には、
混じりけの無い“本当の殺意”が必要らしい。
『じゃあ恭弥は…その試練を受けさせる為に…?』
「ま、そんな感じだ。」
ここに来て、群れるのが嫌いな恭弥の性格が役に立つなんて、ちょっと吃驚した。
「さぁ、私たちも入江正一を倒す為にレッスンを始めましょ。」
「ちけっ!!」
不意に、ビア姉さんが隼人を引き寄せ目を合わせる。
すると隼人はやっぱり…
「ふげがご!!」
…倒れてしまった。
『隼人!』
「ご…獄寺!!」
「しょうがない子ね。」
そしてリボーンも、
「山本、俺は着替えて来る。地下10階に来いよ。」
「な……おい小僧!!」
止めようとする武をスルーして、リボーンは去り際にラルに言う。
「ラル・ミルチ、」
「何だ。」
「檸檬を見ててくれ。すぐツナを助けようとするからな。」
『え、あ…あたしそんな事…!』
「ツナが限りなく死に近い状態に追いつめられた時…見てるだけでいられる自信はあるか?」
『そ、それは…』
リボーンに返す言葉が無くて、あたしは俯く。
「んじゃ、頼んだぞ。」
「ああ。」
ラルの返事を聞いて、リボーンは立ち去った。
あたしは、ツナを閉じ込めた球針態を横目で見てから武に言った。
『行って来て、武。』
「檸檬…けどツナが、」
『ツナは大丈夫だよ、だって…あたし達のボスだもん。』
にこりと笑うと、躊躇っていた武も大きく頷いた。
「そーだな!んじゃ、俺も修業して来るわ。」
『いってらっしゃい♪』
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エレベーターで地下10階にやってきた山本。
ドアが開くと、和風の内装が広がっていた。
「何だよ、真っ暗だ。電気のスイッチ何処だ?」
キョロキョロしながら歩く山本は、ふと寒気のようなモノを感じる。
それは、自分の命を狙っているという…
殺気。
バッと振り向き、竹刀を構える。
と、そこには長身の男の影が一つ。
「この殺気に気づくとは、また腕を上げたな、山本武。」
「誰だ!!」
問うてみるものの、その影は答えず。
「だがまだ時雨金時を使いこなせてねーな。リングでそいつの力を引き出せたらこの時代の剣帝にも負けねーってのは…10年後のお前が言ってたんだぞ。」
「あっ…!」
徐々に目線を下ろして行った山本は、影の持ち主を捉えて目を見開く。
「こっ、小僧!!」
非73から身を守る為のスーツではなく、いつものスーツを着たリボーンが、銃を構えて立っていた。
「時雨金時にボンゴレリングの力が合わさった時、お前はボンゴレ唯一の存在となる。」
それは、入江を倒す為にも必要だとリボーンは言う。
そして、
その為なら本当の自分を見せてもいい…
そう思っている、と。
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一方、倒れたまま修業場に運ばれた獄寺。
ふとその耳に、聞き覚えのある音が舞い込んで来る。
「(この音色…あのピアノだ……)」
音と共に蘇るのは、かつて自分が住んでいた城の風景、
近くにあった森や小川…
「(へっ…高いソの音が外れたままでやんの……)」
幼い頃、弾いていたピアノ。
前衛的だと評価されて、姉へのトラウマのキッカケになったピアノ。
「(くそ……何て夢だ…)」
少しばかり不快になりながらも目を開ける。
が、ピアノの音は止まない。
不思議に思い、音が聞こえる方に目をやる。
と、ぼんやり見えるのは……
幼くして亡くした、実の母の姿。
ピアノを弾いている、後ろ姿。
慌てて起き上がる獄寺。
しかし、母の姿があった所には、腹違いの姉が。
「起きたのね、隼人。顔の一部を隠せば、私を見ても倒れないわね。」
「な……」
振り向いたビアンキは、ゴーグルをつけている。
「何してんだよアネキ!!つか何でこのピアノが…!?」
「少し前に城から運んでもらったのよ。貴方、とても小さかったのによく覚えていたわね。」
「ふっ…ふざけんな!!」
獄寺はビアンキを睨みながら言う。
「あの城も親父も俺にはもう関係ねぇ!!アネキもだ!あんたから教わる事なんて何もねぇ!!」
「隼人…ダメよ。」
グチャッ、
ビアンキは突然獄寺の左目辺りにポイズンクッキングを押し付ける。
そこからは、独特の痛みが走って来て。
「何すんだてめー!!!」
悲鳴をあげる獄寺。
一方ビアンキは、落ち着いた口調で続ける。
「感情に流され過ぎてはダメ。またγとの戦いのような失敗を犯すつもり?」
「んだと!」
「いいわ、ココから始めましょう。目標は10年後の隼人が考案したSISTEMA(スィステーマ) C.A.I.の完成よ。」
「(俺が…考案した?)」
疑問符を浮かべる獄寺に、ビアンキは言う。
「嫌なら城から出て行った時のように逃げなさい。」
「なに!」
「ただし…」
言いながら、取り出した匣にリングをはめて。
「逃げられるなら。」
次の瞬間ビアンキの匣から何かが飛び出し、
獄寺は咄嗟に見をかがめた。
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5階、トレーニングルーム。
ツナが球針態に閉じ込められてから数分が経過した。
『ツナ…』
早く出て来て…
じゃないと…中の酸素が…
隼人も武も修業を始めてる。
ツナだって、今までたくさんのピンチを乗り越えて来たんだもん。
きっと、大丈夫だよ。
ふと、後ろを向いてみる。
ランボちゃんの声が聞こえなくなって、ちょっと心配になったから。
でも…
『あ、寝ちゃってたんだ…』
「檸檬姉!」
『えっと…初めまして、10年後のフゥ太君♪』
「うん。僕は何だか懐かしく感じるよ。」
ランボを抱えたまま、フゥ太君はニコリと笑う。
可愛い笑顔の中に、やっぱり10年前の面影がある。
「ねぇ、檸檬姉…」
『ん?』
ツナがいる球針態を見ながら、フゥ太君はあたしに問う。
「檸檬姉も、修業するの?」
『うん、するつもり。でもまだ…第六感に関する資料が見つからなくて…』
仕方無さそうに笑みをこぼし、檸檬は続ける。
『それに、あたしは第六感のせいでリングが使えないみたいなの。その理論は…まだよく分からないけど。』
「分かるよ。」
『えっ…?』
その返答に驚きフゥ太を見る檸檬。
フゥ太は球針態の方を真直ぐ見つめながら言った。
「僕、分かるよ。どうして檸檬姉の力がリングと相性悪いか。」
『ほ…本当?』
聞き返す檸檬に、フゥ太は小さく頷く。
「知りたい?檸檬姉。」
『う、うんっ!』
「第六感っていうのは、波長を読む力だって知ってるよね。」
『うん。』
「その力を持つ者は、周りの波長を知らないうちに感じ取る性質があるんだ。檸檬姉も、檸檬姉のお母さんもそうだよ。」
『知らないうちに…?』
「そう、知らないうちに。」
フゥ太の表情は、何処か寂しげになって行き、
檸檬は少しだけ首を傾げる。
「檸檬姉にとって、人の波動とそこから精製される炎は、“同じ波長”なんだ。」
『うん…』
「だけどリングは、波長を炎に変換する。檸檬姉からするとコレは…波長をねじ曲げている事になる。」
そこで、全てが崩れていく。
「最初のうちは、檸檬姉もリングが使えたんだよ、雲系のね。だけど…第六感の兆しが見え始めてから、だんだん……」
『第六感の兆し…?』
聞き返す檸檬に、フゥ太は哀しそうに頷く。
「人を思う事で発動する檸檬姉の第六感、それはゆっくりと開化していったんだ。仲間が増える度に。」
『それでも、最初のうちは付けてたんでしょ?リング…』
「うん。あの時はまだ、発作が起こらなかったからね。」
『発作!!?』
吃驚して声を上げたら、草壁さんがこっちを向いた。
あたしは慌てて自分の口を押さえて、小声でフゥ太君に尋ねる。
『あたし…リング付けるとどうなるの?』
少し前、ラルが言ってた。
---「……頼む…それだけは………それだけはやめろ…」
どうしてか不思議だったけど、その理由がやっと、今聞ける。
「檸檬姉にとってリングを付けるって事は、自分の波長をねじ曲げて炎に変換されるって事。」
『ねじ曲げられる…?』
体の底から沸き起こって来るような、そんな恐怖があたしを貫く。
「初めに言った通り、第六感保有者は知らないうちに波長を感じ取ってしまう。だから、自分の波長をねじ曲げられているその感覚が……苦痛となって襲いかかった。」
『それで…心身共に負担がかかった……』
「うん…」
それであたしは、リングを付けないようにしたんだ。
付けないままでも匣が開けられるように、相手の炎を奪う戦法をマスターして。
『そっか…ありがと!フゥ太君♪』
「檸檬姉、怖くないの?」
『うん!だってあたしは、リングが使えなくても戦ってた。足手纏いじゃなかった。それだけ分かれば充分。』
「…檸檬姉……」
『にしても、ツナ…大丈夫なのかな、もう危ないんじゃ……』
それでも、手出しはするなってリボーンに言われたから、見ている事しか出来ないけど…。
恭弥は暇なのか欠伸をしてて、
草壁さんも焦ったような表情をする。
ラルは腕組みしたまま立ってるだけだし…
「ハァ…ハァ…ハァ……」
ツナの、苦しそうな呼吸が聞こえる。
球針態の中で、必死にもがいてる。
と、次の瞬間。
「はあぁ!!」
中から、ツナの声が聞こえて来た。
『(炎を…ぶつける気なんだ…!)』
と、同時に。
ズルル…
『フゥ太君?どしたの、大丈夫!?』
「うん…今きっと…雨が………雨が降ってる…」
その言葉で、フゥ太君の体質を思い出す。
「ツナ兄頑張れ……」
『出て来てツナ…』
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とても小雨とは言えない雨の中、
少女は一人、走っていた。
自分の、唯一の居場所へと。
誰もいない道を通り、
撤去作業中を知らせるフェンスをくぐり抜け、
その場所…
黒曜ヘルシーランドへと駆け込んだ。
「ハァ……ハァ……」
静かなそこには、彼女の息づかい以外何も響かない。
「犬……?千種……?」
廃墟と化したその建物の中で、
彼女の声は哀しくこだました。