未来編①
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「リボーン!!」
病室に駆け込んで来たビアンキと、後に続くフゥ太。
その姿は、やはり10年の月日を感じさせる。
「もう放さない!!愛しい人!!!」
リボーンに飛びつくビアンキを見て、10年間で激しくなったかとツナは思う。
すると、その考えを読むかのようにフゥ太が言った。
「無理ないよ、この時代ではリボーンもツナ兄も死んじゃったんだ。」
「も、もしかしてフゥ太ぁ!?」
「へへっ、やった!!ツナ兄より高い!」
「お前伸び過ぎっ!」
逆転された身長差にツナが驚く一方、姉のビアンキを見た獄寺はベッドから転げ落ちる。
「期待出来そうだぞ、ツナ。こいつらも新しい情報を持ち帰ったらしい。」
「そ、そうか!雲雀さんも、何か知ってそうだし……」
リボーンの言葉にハッとして、雲雀の方を振り向いたツナ。
が、雲雀からは独特の不機嫌オーラが漂っていた。
「これ以上群れれば、咬み殺すよ。」
「ひいいっ!!」
合流
雲雀の施設内、とある一室。
未だ眠りにつけない檸檬の側で、草壁がジッと正座していた。
『…疲れませんか?』
「いえ、大丈夫です。」
『あのっ…恭弥はツナ達に何を話しに行ったんですか?』
「我々はある程度情報交換をする必要があります。ですから…我々がこの時代で何をして来たか、その一部を話そうと。」
『あたしにも、教えてくれませんか?』
だってγが、“もし守護者だったら”とか言ってたんだもん。
守護者じゃないのかな、とか思って…。
と、その時。
突然この部屋の襖が開いた。
「哲、変わって。」
「はい…?」
「相変わらず群れててイライラした。僕の代わりに行って。」
「わ、分かりました。」
草壁さんは出て行った。
あたしがそれを目だけで見送っていると、恭弥が不意に頭を撫でる。
『へ…?』
「檸檬…聞きたい事があるんだけど、いい?」
『あ、うん。あたしが答えられるなら…』
あたしの髪を撫でる恭弥の手が、
何処か寂しい。
あたしを見つめる恭弥の瞳も、
何故か哀しい。
少し怖くなるけど、一生懸命頷く。
「檸檬が外に出た時、γだけと戦ったワケじゃないよね。」
『………どうして?』
「γの攻撃では、ギプスにそんな傷はつかないはずだよ。」
あーあ、やっぱり…
恭弥には適わない。
全部見透かしたように、聞くんだから。
『……妹に…蜜柑に会ったの。』
あたしがそれだけ言うと、恭弥は少しだけ吃驚した。
その証拠に、頭を撫でる手が止まった。
「…破壊の死ぬ気弾、だっけ。」
『うん。一発でギプスに相当なダメージが来て……』
「本当に、檸檬は無理ばかりだね。」
『え…?』
「LIGHTは、10年後の檸檬とほぼ同等の戦力を持ってる。」
『同等…!?』
「勿論、檸檬が“アレ”を使わなければの話だけど。」
“アレ”…??
『恭弥、“アレ”って何?』
あたしが尋ねると、恭弥は一瞬だけ凄く哀しい顔をした。
つらそうに、壊れ物を見るような目をした。
何?
あたしが、何を使うって言うの?
まさか…
『第六感…??』
あたしの発した単語に、恭弥は答えてくれなくて、そのまま沈黙が流れる。
不意に、恭弥はポケットから何かを取り出した。
「…コレで哲達の声が聞ける。檸檬もある程度知っておいた方がいい。」
『小型スピーカー??』
「哲に集音機を持たせたから、聞いてなよ。」
『恭弥は?何してるの?』
どっかに行っちゃうんじゃないかって、ちょっと不安になりながら聞くと、
恭弥は優しく微笑んで、頭を撫でる。
「ここにいるよ。」
綺麗で、カッコ良くて、また赤くなってしまった。
『…うん、ありがと……///』
話を逸らされた事が気にならなかったワケじゃない。
だけど、今のあたしは聞いちゃいけない気がした。
大人しく、恭弥がくれたスピーカーに耳を傾ける。
と、ツナ達の声が聞こえて来た。
---
----
草壁さんの話では、
京子の心配をした花が恭弥のトコに連絡をしたらしい。
そうする事で、その地点にヒバードが飛ばされ、ボンゴレに京子に危険が迫っている事が伝達されるそうだ。
ジャンニーニが信号消滅について尋ねると、接触不良だと答えていた。
--「で、お前等の組織は何なんだ?」
--「はい、平たく言えば、並盛中学風紀委員を母体とした、秘密地下財団です。」
………え"?
--「まだ風紀委員関係してんのー!!?」
『(すごっ…)』
--「ツナ兄に聞いた事があるよ。雲雀さんはその財団で匣の研究・調査をして、世界を飛び回ってるって。」
--「匣の…?」
ってゆーか、今の声…
誰??
『恭弥、』
「何?」
『ツナ達のトコに、誰か来たの?』
「あぁ…そう言えば群れてたよ。マフラー巻いたのと、獄寺隼人の姉が。」
『えぇ!?』
それってやっぱり、
フゥ太君とビアンキ姉さん!?
『(いいなぁ、会いたいなぁ…)』
あたしがそう思ったところで、次はフゥ太君とビア姉さんが話し始める。
--「大変だったわね、ツナ。」
--「え……」
--「おとといツナ兄が10年バズーカで未来に来てみたら、そこは恐ろしい世界に変わっていた……しかも過去には帰れない。」
そうだ、あたしもこの世界に来て命を狙われた。
--「現状打破の為に守護者集めや檸檬姉を捜しに出るけど、出会ったみんなも10年前と入れ変わっちゃって……」
それでもやっと過去に戻る方法を見つけた。
早速ラルと修業を始めたけど、3つの事件が起きて蜜柑やγと戦ったんだ…。
--「未来に来て2日しか経ってないんだ…随分昔の事みたいだ……」
ツナの言う通り、本当に昔の事みたい。
今ココにいる恭弥に会うまで、すごくすごく長かった気がする。
--「だがこうして仲間と合流出来たんだ。過去に帰る為に本腰を入れられるぞ。」
--「その通り!僕らもツナ兄達が過去に帰れるように協力するよ。」
--「今の所、貴方達と我々の目的にはいくつか共通点がある。我々も力をお貸し出来ると思いますよ。」
--「ほ…本当?」
ツナの声が少し震えたのが分かった。
ずっとずっと不安だった世界の中で、
信頼出来る人達と再会出来たから。
--「過去に戻る為には、ミルフィオーレの入江正一を倒せばいいのよね。」
ビア姉さんが口を開く。
--「ミルフィオーレは私の敵でもある。倒すのには何の躊躇も無いわ。それに…」
少し小さくなるビア姉さんの声。
--「あなた達が10年前に戻って過去が変われば、私の愛する人やたくさんの仲間を失うこんな未来にはならないかも知れない……」
『(ビア姉さん…)』
みんな、
こんな未来は望んでないんだ。
その為にあたし達が出来る事は、
ミルフィオーレを倒して過去に帰って、
未来を変える事…。
『恭弥、』
「どしたの?檸檬。」
『恭弥も…手助けしてくれるの?ミルフィオーレを倒す為に。』
掛け布団をキュッと握って、恐る恐る尋ねる。
恭弥は相変わらず群れる嫌いみたいだから、少しだけ不安。
「…僕がミルフィオーレで1番気に食わないのは、白蘭でも入江でもない。」
『え…?』
「ライト……檸檬の妹だよ。」
蜜柑…?
「数年前から、ライトの動きは活発になった。ミルフィオーレにいつ入隊したかは知らないけど、ライトが檸檬を狙い続けてるのに変わりはない。」
『あたし、ずっと蜜柑と戦ってたの…?』
あたしの問いに、恭弥はゆっくり頷く。
「これまでに何度も交戦して、その度に傷ついて……だから僕は、ライトだけは絶対に咬み殺すって決めてる。」
『恭弥……』
グッと握られた恭弥の拳を見て、
心配かけちゃってたんだなって思う。
あたしは、10年経っても変わってないようだ。
---
------
--「ミルフィオーレは全部で17部隊あるんだけど、その中でAランク以上の隊長は6名だけ。そしてその内2人が日本を任されてるんだ。」
--「γと……入江正一か?」
入江正一が…日本にいる!?
更に、フゥ太君とビア姉さんは敵の日本支部アジトの入り口を突き止めたと言う。
--「並盛駅地下のショッピングモールだよ、その先に入江正一はいる。」
10年前に着工されて、3年前に出来たそうだ。
あたし達の記憶に無いのは当然の事。
これでこっちから攻め込めるとしても、簡単に倒せる相手じゃないし、
何より、交戦した事で10年前と入れ替わったっていう事が向こうに知られて、こっちを捜してるかも知れない。
--「全ては、お前達が短時間にどれだけ強くなれるかにかかっているんだぞ。」
リボーンの言う通りだ。
あたしだって、一刻も早く右足を治さなくちゃいけない。
そして…
---「第六感の研究結果が出されたのは数ヶ月前だ。それを元に檸檬は自分で完成させた。」
ラルの言葉を思い出して、グッと意気込む。
あたしは、第六感を…
波長を読む力をマスターしてみせる、と。
守護者の情報収集はフゥ太君やジャンニーニが、
京子達の事や家事関係はビア姉さんが担ってくれる。
だから、自分がやらなくちゃいけない事に専念出来る。
--「ありがとう、そうする。」
ツナの強い決意が、スピーカーを通じて伝わって来た。
『恭弥……あたし、頑張る。』
スピーカーを渡しながら宣言すると、恭弥は溜め息をつく。
「とりあえず、足治すまで修業とかさせないから。」
『分かってるーっ。』
「どーだか、すぐ飛び出すクセに。」
『そんな事ないもん!今回はちゃんとリハビリとかするし!』
「……そう。」
それから、こっちに戻って来た草壁さんが車椅子を持って来て、あたしはそれで移動出来るようになった。
夕方、草壁さんはあたしをとある部屋に案内した。
パッと見て疑問に思ったのは、そこだけ洋室だった事。
『草壁さん、ココは何の部屋なんですか?』
「ココは、特別にお作りした檸檬さんの個室です。」
『あっ、あたしの!?』
「この時代の檸檬さんは、任務の都合上あらゆる場所を飛び回っていました。ココは滞在場所の一つです。」
『へぇ~…』
あたし、そんなに忙しかったのか。
草壁さんに鍵を渡され、中に入ってみる。
意外と広くて、整理整頓されていた。
「ココはボンゴレのアジトと繋がってる事もあり、檸檬さんは比較的頻繁にいらしてました。」
『そっか、便利だもんね。』
相槌を打ちながら、キョロキョロと部屋を見回す。
すると、伏せられた写真立てが目に止まった。
『(何だろ…?)』
起こしてみてビックリ。
だって、その写真には10年後のあたしと恭弥が写ってたから。
『コレ…』
「それは……!」
あたしの後ろからそれを覗き込み、草壁さんは一瞬驚く。
そして、
「そんな所にあったんですか…」
と、ため息混じりに言った。
背景をよく見ると、ピサの斜塔が見える。
イタリアで撮られたモノらしい。
あたしは恭弥の腕に手を回してピースしてるけど、
不意打ちの写真だったのか、恭弥はカメラじゃなくてあたしの方を見てる。
「恭さんがイタリアに滞在していた際、任務で来ていた檸檬さんと落ち合ったんですよ。」
『え?』
「私が撮ったモノです。」
『ホント!?うわーっ……』
この写真を見る限り、あたしは充分幸せな未来を送っていた。
なのに、いつから崩されたんだろう。
夢に出て来た10年後のあたしと、
“第六感”の単語を聞いた恭弥は、
どうしてあんなに哀しそうな顔をしたんだろう…?
「檸檬さん、」
『あっ、はい!』
「お怪我が治るまで、こちらの部屋でお過ごし下さい。」
『えっ、でも…』
「そう、恭さんが言ってましたので。」
『恭弥が?……そっか。』
「必要な物は全て揃っています。この部屋は、恭さんが設けて檸檬さんがコーディネートしましたので。」
だからこんなにあたし好みの内装なのか、と妙に納得。
『でもあたし…』
「ご心配には及びません。就寝時には恭さんか私のどちらかが隣の部屋にいますので。」
『そ、そんな事まで…!』
どうやら、一人になると動けなくなる体質(?)は変わってなかったらしい。
『何だかすみません…』
「いえ。」
その夜、恭弥と草壁さんと一緒に夕飯を食べた。
車椅子のままだと移動が不便だから、ちゃんと自力で歩けるようになるまでボンゴレのアジトには戻らないと決めた。
あたしはあの部屋でリハビリ生活を送る。
考えてみれば、隼人と武も病室で動けないんだから、恭弥の施設内を移動出来るあたしはマシなのかも知れない。
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それから1週間後、骨が完全に治った。
あとは、長い間歩かなかった足を動かすだけ。
前みたいに、ちゃんと“踊れる”ように。
『ん、しょっ……ん、しょっ…』
壁伝いに部屋を歩き回る。
最早日課となった、夕飯後のリハビリ。
だけど…
ガクッ、
『きゃあっ!!』
ドタンッ、
「檸檬っ!!?」
『いたたたたぁ…』
ぶつけた膝を摩りながら、開いたドアの方を見る。
『あ、恭弥…』
「何してるの。」
『ちょっとコケただけだよ、平気♪』
「まったく…ほら。」
差し出される手の平は、やっぱり優しい。
ギュッと握ると、簡単に立ち上がらせてくれる。
『ありがとっ♪』
「気をつけなよ、焦らなくてもいいんだから。」
『うん、ごめんね。』
「謝る事ないでしょ。」
そう言って、恭弥はまた頭を撫でてくれた。
向かい合って立って初めて、恭弥の背が凄く高くなったのを感じた。
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13日後、ボンゴレアジト・食堂内。
「「「ごちそうさまー!!」」」
「今日も美味かったぞ。」
「よかったです♪」
リボーンの言葉に笑顔を見せるハル。
病室にいる獄寺と山本の食器を片付ける為に立ち上がる京子。
「フゥ太~、遊んで。」
「いいけど、髪がモジャモジャに伸びたね。切ってあげようか?」
ランボの相手をするフゥ太。
そして、ツナは修業をする為に席を立つ。
「さーて、修業行くかなっ。」
「毎日ご苦労様です、ツーナさんvV 愛妻弁当作りましょうか?」
頬を染めて申し出るハルに、ツナは慌てて答える。
「い、いいよ!エレベーター降りるだけだし!!」
同じ頃…
『ごちそうさまっ!あたし、洗い物するね!』
「あ、いえ、私が…」
『いーんです!座ってて下さい。』
すっかり回復した檸檬が雲雀のアジト内を小走りで行く。
それを未だ気遣う草壁。
雲雀は檸檬の様子を見て、完治を悟ったらしく口を閉ざしていた。
「哲、」
「はい。」
「先に檸檬と向こうに行ってて。」
「わ、分かりました。」
雲雀は席を立ち、自室に一端戻った。
洗い物を終えた檸檬と草壁は、そのままボンゴレアジトの方へ向かう。
『どうして急に…一昨日まで“まだダメだよ”って超ガードしてたのに。』
「恭さんは向こうで仕事をするんです。私も付き添いとして行こうかと…」
しかし、檸檬を置いて行くワケにはいかない。
『そっかぁ……何だか楽しみです!久しぶりにみんなに会えるので♪』
「そうですね。」
笑顔を見せる檸檬に、草壁も微笑み返した。
エレベーターが地下6階に着く。
と、ドアの向こうには…
『あっ……!』
「おっ!」
「檸檬!!」
『武!隼人!』
駆け寄ってみると、微妙に絆創膏が残ってて、完治に時間がかかったのが分かった。
「お前…平気なのかよ?」
『だいじょーぶっ♪この通りジャンプも出来るし!』
ぴょいと飛び跳ねると、隼人は
「ならいーんだけどよぉ…」
とかブツブツ言っていた。
「にしても、久しぶりだなー、檸檬。」
『だねー。』
武と笑い合うと、ほのぼの空間が生まれる。
その感じが本当に懐かしくて、あたしはちょっと泣きそうになった。
そこに…
チーン、
「よっ、ツナ!」
「おはよーございます、10代目!!」
『ツナ!久しぶりー!』
「山本!獄寺君!檸檬!」
到着したツナに、今日から修業復帰すると武が言う。
「怪我はもういいの!?」
「完璧っス!!体がなまって困る程です!」
「そっか…良かった。檸檬はその…右足……」
『大丈夫、心配しないで。ちゃんとリハビリして来たから。』
「ずっと?」
『うん、まぁね♪』
イヒヒッと笑ってみせると、ツナも安心したように笑い返してくれた。
みんな揃った所で、ラルが言う。
「予告通り、本日より新しい修業・“強襲用個別強化プログラム”を開始する。」
「個別…強化…?」
「この10日間ツナがラル・ミルチに1対1で教えられたように、1人に1人ずつ家庭教師をつける。リング戦の時みてーにな。」
『1人に1人の家庭教師…』
リボーンは銃を取り出して、こう続ける。
「例えば俺が鍛えるのは、山本だぞ。」
『(わお。)』
キョトンとする武とは反対に、ツナは不安そうにする。
「隼人の担当は私よ。」
『ん?』
そこに現れたのは、
『ビア姉さん!!』
「あら、檸檬!」
「び……ビアンキ!?」
「ふげぇ!!」
ビア姉さんを見た途端、隼人はいつものように倒れる。
「じょ…冗談ス……よね…」
「やはり姉弟、私も嵐属性の波動が1番強いわ。そして…」
ビア姉さんの付けているリングには、赤い炎が灯る。
「修業が無事に終わったら貴方にある物を授けるわ。…お父様からよ。」
「(親父!?)」
隼人は一瞬反応するけど、すぐに倒れてしまう。
「ふごっ!!」
「絶対無理だよ!!中止した方がいいって!!」
組み合わせに反対するツナに、リボーンは銃口を向ける。
「お前は自分の修業に専念しやがれ。」
ズガンと撃たれて、ドサッと倒れるツナ。
心配した武が歩み寄ろうとした、その時。
ブオッ、
コォォォ…
ボウッ、
『わぁっ…!』
「すげぇ10代目!!また迫力が増してる!!」
「前とはまるで別人だな、また随分差ーつけられたぜ。」
驚くあたし達をふわっと飛び越えて、ツナはラルの前に立つ。
「始めよう、ラル・ミルチ。」
でも、
「俺はお前の指導を降りる。」
『え…?』
「お前は俺の思い描くレベルにまるで達していない。短期間ではこれ以上のレベルアップも望めないと判断した。」
「だが実際にここまで…」
「お前の力はこんなモノではない!」
と、その時。
ギュオッ、
何かがあたし達の横を通り過ぎ、まっすぐツナに向かって行く。
それは見た事があるモノで。
「檸檬さん、下がった方が宜しいかと。」
『草壁さん…』
あたしは草壁さんと一緒に数歩下がる。
向かって来る何かをツナは飛び上がって避けるけど、
ソレも急旋回して追いかける。
『ツナ!』
避けられないと判断したらしく、ツナはグローブに炎を纏わせソレ、
……恭弥のハリネズミを押さえつけた。
コツン、コツン、
『あ…』
不意に聞こえて来る靴音。
そちらを向けば、その匣の所有者が。
「気を抜けば死ぬよ。」
「…お前は!!」
「君の才能を、こじ開ける。」
『恭弥……』
みんなの修業が始まる。
置いてけぼりは嫌なのに、
みんなどんどん強くなってく。
何だか少し寂しくなって、
早く書類を見つけなくちゃと改めて思った。
病室に駆け込んで来たビアンキと、後に続くフゥ太。
その姿は、やはり10年の月日を感じさせる。
「もう放さない!!愛しい人!!!」
リボーンに飛びつくビアンキを見て、10年間で激しくなったかとツナは思う。
すると、その考えを読むかのようにフゥ太が言った。
「無理ないよ、この時代ではリボーンもツナ兄も死んじゃったんだ。」
「も、もしかしてフゥ太ぁ!?」
「へへっ、やった!!ツナ兄より高い!」
「お前伸び過ぎっ!」
逆転された身長差にツナが驚く一方、姉のビアンキを見た獄寺はベッドから転げ落ちる。
「期待出来そうだぞ、ツナ。こいつらも新しい情報を持ち帰ったらしい。」
「そ、そうか!雲雀さんも、何か知ってそうだし……」
リボーンの言葉にハッとして、雲雀の方を振り向いたツナ。
が、雲雀からは独特の不機嫌オーラが漂っていた。
「これ以上群れれば、咬み殺すよ。」
「ひいいっ!!」
合流
雲雀の施設内、とある一室。
未だ眠りにつけない檸檬の側で、草壁がジッと正座していた。
『…疲れませんか?』
「いえ、大丈夫です。」
『あのっ…恭弥はツナ達に何を話しに行ったんですか?』
「我々はある程度情報交換をする必要があります。ですから…我々がこの時代で何をして来たか、その一部を話そうと。」
『あたしにも、教えてくれませんか?』
だってγが、“もし守護者だったら”とか言ってたんだもん。
守護者じゃないのかな、とか思って…。
と、その時。
突然この部屋の襖が開いた。
「哲、変わって。」
「はい…?」
「相変わらず群れててイライラした。僕の代わりに行って。」
「わ、分かりました。」
草壁さんは出て行った。
あたしがそれを目だけで見送っていると、恭弥が不意に頭を撫でる。
『へ…?』
「檸檬…聞きたい事があるんだけど、いい?」
『あ、うん。あたしが答えられるなら…』
あたしの髪を撫でる恭弥の手が、
何処か寂しい。
あたしを見つめる恭弥の瞳も、
何故か哀しい。
少し怖くなるけど、一生懸命頷く。
「檸檬が外に出た時、γだけと戦ったワケじゃないよね。」
『………どうして?』
「γの攻撃では、ギプスにそんな傷はつかないはずだよ。」
あーあ、やっぱり…
恭弥には適わない。
全部見透かしたように、聞くんだから。
『……妹に…蜜柑に会ったの。』
あたしがそれだけ言うと、恭弥は少しだけ吃驚した。
その証拠に、頭を撫でる手が止まった。
「…破壊の死ぬ気弾、だっけ。」
『うん。一発でギプスに相当なダメージが来て……』
「本当に、檸檬は無理ばかりだね。」
『え…?』
「LIGHTは、10年後の檸檬とほぼ同等の戦力を持ってる。」
『同等…!?』
「勿論、檸檬が“アレ”を使わなければの話だけど。」
“アレ”…??
『恭弥、“アレ”って何?』
あたしが尋ねると、恭弥は一瞬だけ凄く哀しい顔をした。
つらそうに、壊れ物を見るような目をした。
何?
あたしが、何を使うって言うの?
まさか…
『第六感…??』
あたしの発した単語に、恭弥は答えてくれなくて、そのまま沈黙が流れる。
不意に、恭弥はポケットから何かを取り出した。
「…コレで哲達の声が聞ける。檸檬もある程度知っておいた方がいい。」
『小型スピーカー??』
「哲に集音機を持たせたから、聞いてなよ。」
『恭弥は?何してるの?』
どっかに行っちゃうんじゃないかって、ちょっと不安になりながら聞くと、
恭弥は優しく微笑んで、頭を撫でる。
「ここにいるよ。」
綺麗で、カッコ良くて、また赤くなってしまった。
『…うん、ありがと……///』
話を逸らされた事が気にならなかったワケじゃない。
だけど、今のあたしは聞いちゃいけない気がした。
大人しく、恭弥がくれたスピーカーに耳を傾ける。
と、ツナ達の声が聞こえて来た。
---
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草壁さんの話では、
京子の心配をした花が恭弥のトコに連絡をしたらしい。
そうする事で、その地点にヒバードが飛ばされ、ボンゴレに京子に危険が迫っている事が伝達されるそうだ。
ジャンニーニが信号消滅について尋ねると、接触不良だと答えていた。
--「で、お前等の組織は何なんだ?」
--「はい、平たく言えば、並盛中学風紀委員を母体とした、秘密地下財団です。」
………え"?
--「まだ風紀委員関係してんのー!!?」
『(すごっ…)』
--「ツナ兄に聞いた事があるよ。雲雀さんはその財団で匣の研究・調査をして、世界を飛び回ってるって。」
--「匣の…?」
ってゆーか、今の声…
誰??
『恭弥、』
「何?」
『ツナ達のトコに、誰か来たの?』
「あぁ…そう言えば群れてたよ。マフラー巻いたのと、獄寺隼人の姉が。」
『えぇ!?』
それってやっぱり、
フゥ太君とビアンキ姉さん!?
『(いいなぁ、会いたいなぁ…)』
あたしがそう思ったところで、次はフゥ太君とビア姉さんが話し始める。
--「大変だったわね、ツナ。」
--「え……」
--「おとといツナ兄が10年バズーカで未来に来てみたら、そこは恐ろしい世界に変わっていた……しかも過去には帰れない。」
そうだ、あたしもこの世界に来て命を狙われた。
--「現状打破の為に守護者集めや檸檬姉を捜しに出るけど、出会ったみんなも10年前と入れ変わっちゃって……」
それでもやっと過去に戻る方法を見つけた。
早速ラルと修業を始めたけど、3つの事件が起きて蜜柑やγと戦ったんだ…。
--「未来に来て2日しか経ってないんだ…随分昔の事みたいだ……」
ツナの言う通り、本当に昔の事みたい。
今ココにいる恭弥に会うまで、すごくすごく長かった気がする。
--「だがこうして仲間と合流出来たんだ。過去に帰る為に本腰を入れられるぞ。」
--「その通り!僕らもツナ兄達が過去に帰れるように協力するよ。」
--「今の所、貴方達と我々の目的にはいくつか共通点がある。我々も力をお貸し出来ると思いますよ。」
--「ほ…本当?」
ツナの声が少し震えたのが分かった。
ずっとずっと不安だった世界の中で、
信頼出来る人達と再会出来たから。
--「過去に戻る為には、ミルフィオーレの入江正一を倒せばいいのよね。」
ビア姉さんが口を開く。
--「ミルフィオーレは私の敵でもある。倒すのには何の躊躇も無いわ。それに…」
少し小さくなるビア姉さんの声。
--「あなた達が10年前に戻って過去が変われば、私の愛する人やたくさんの仲間を失うこんな未来にはならないかも知れない……」
『(ビア姉さん…)』
みんな、
こんな未来は望んでないんだ。
その為にあたし達が出来る事は、
ミルフィオーレを倒して過去に帰って、
未来を変える事…。
『恭弥、』
「どしたの?檸檬。」
『恭弥も…手助けしてくれるの?ミルフィオーレを倒す為に。』
掛け布団をキュッと握って、恐る恐る尋ねる。
恭弥は相変わらず群れる嫌いみたいだから、少しだけ不安。
「…僕がミルフィオーレで1番気に食わないのは、白蘭でも入江でもない。」
『え…?』
「ライト……檸檬の妹だよ。」
蜜柑…?
「数年前から、ライトの動きは活発になった。ミルフィオーレにいつ入隊したかは知らないけど、ライトが檸檬を狙い続けてるのに変わりはない。」
『あたし、ずっと蜜柑と戦ってたの…?』
あたしの問いに、恭弥はゆっくり頷く。
「これまでに何度も交戦して、その度に傷ついて……だから僕は、ライトだけは絶対に咬み殺すって決めてる。」
『恭弥……』
グッと握られた恭弥の拳を見て、
心配かけちゃってたんだなって思う。
あたしは、10年経っても変わってないようだ。
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--「ミルフィオーレは全部で17部隊あるんだけど、その中でAランク以上の隊長は6名だけ。そしてその内2人が日本を任されてるんだ。」
--「γと……入江正一か?」
入江正一が…日本にいる!?
更に、フゥ太君とビア姉さんは敵の日本支部アジトの入り口を突き止めたと言う。
--「並盛駅地下のショッピングモールだよ、その先に入江正一はいる。」
10年前に着工されて、3年前に出来たそうだ。
あたし達の記憶に無いのは当然の事。
これでこっちから攻め込めるとしても、簡単に倒せる相手じゃないし、
何より、交戦した事で10年前と入れ替わったっていう事が向こうに知られて、こっちを捜してるかも知れない。
--「全ては、お前達が短時間にどれだけ強くなれるかにかかっているんだぞ。」
リボーンの言う通りだ。
あたしだって、一刻も早く右足を治さなくちゃいけない。
そして…
---「第六感の研究結果が出されたのは数ヶ月前だ。それを元に檸檬は自分で完成させた。」
ラルの言葉を思い出して、グッと意気込む。
あたしは、第六感を…
波長を読む力をマスターしてみせる、と。
守護者の情報収集はフゥ太君やジャンニーニが、
京子達の事や家事関係はビア姉さんが担ってくれる。
だから、自分がやらなくちゃいけない事に専念出来る。
--「ありがとう、そうする。」
ツナの強い決意が、スピーカーを通じて伝わって来た。
『恭弥……あたし、頑張る。』
スピーカーを渡しながら宣言すると、恭弥は溜め息をつく。
「とりあえず、足治すまで修業とかさせないから。」
『分かってるーっ。』
「どーだか、すぐ飛び出すクセに。」
『そんな事ないもん!今回はちゃんとリハビリとかするし!』
「……そう。」
それから、こっちに戻って来た草壁さんが車椅子を持って来て、あたしはそれで移動出来るようになった。
夕方、草壁さんはあたしをとある部屋に案内した。
パッと見て疑問に思ったのは、そこだけ洋室だった事。
『草壁さん、ココは何の部屋なんですか?』
「ココは、特別にお作りした檸檬さんの個室です。」
『あっ、あたしの!?』
「この時代の檸檬さんは、任務の都合上あらゆる場所を飛び回っていました。ココは滞在場所の一つです。」
『へぇ~…』
あたし、そんなに忙しかったのか。
草壁さんに鍵を渡され、中に入ってみる。
意外と広くて、整理整頓されていた。
「ココはボンゴレのアジトと繋がってる事もあり、檸檬さんは比較的頻繁にいらしてました。」
『そっか、便利だもんね。』
相槌を打ちながら、キョロキョロと部屋を見回す。
すると、伏せられた写真立てが目に止まった。
『(何だろ…?)』
起こしてみてビックリ。
だって、その写真には10年後のあたしと恭弥が写ってたから。
『コレ…』
「それは……!」
あたしの後ろからそれを覗き込み、草壁さんは一瞬驚く。
そして、
「そんな所にあったんですか…」
と、ため息混じりに言った。
背景をよく見ると、ピサの斜塔が見える。
イタリアで撮られたモノらしい。
あたしは恭弥の腕に手を回してピースしてるけど、
不意打ちの写真だったのか、恭弥はカメラじゃなくてあたしの方を見てる。
「恭さんがイタリアに滞在していた際、任務で来ていた檸檬さんと落ち合ったんですよ。」
『え?』
「私が撮ったモノです。」
『ホント!?うわーっ……』
この写真を見る限り、あたしは充分幸せな未来を送っていた。
なのに、いつから崩されたんだろう。
夢に出て来た10年後のあたしと、
“第六感”の単語を聞いた恭弥は、
どうしてあんなに哀しそうな顔をしたんだろう…?
「檸檬さん、」
『あっ、はい!』
「お怪我が治るまで、こちらの部屋でお過ごし下さい。」
『えっ、でも…』
「そう、恭さんが言ってましたので。」
『恭弥が?……そっか。』
「必要な物は全て揃っています。この部屋は、恭さんが設けて檸檬さんがコーディネートしましたので。」
だからこんなにあたし好みの内装なのか、と妙に納得。
『でもあたし…』
「ご心配には及びません。就寝時には恭さんか私のどちらかが隣の部屋にいますので。」
『そ、そんな事まで…!』
どうやら、一人になると動けなくなる体質(?)は変わってなかったらしい。
『何だかすみません…』
「いえ。」
その夜、恭弥と草壁さんと一緒に夕飯を食べた。
車椅子のままだと移動が不便だから、ちゃんと自力で歩けるようになるまでボンゴレのアジトには戻らないと決めた。
あたしはあの部屋でリハビリ生活を送る。
考えてみれば、隼人と武も病室で動けないんだから、恭弥の施設内を移動出来るあたしはマシなのかも知れない。
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それから1週間後、骨が完全に治った。
あとは、長い間歩かなかった足を動かすだけ。
前みたいに、ちゃんと“踊れる”ように。
『ん、しょっ……ん、しょっ…』
壁伝いに部屋を歩き回る。
最早日課となった、夕飯後のリハビリ。
だけど…
ガクッ、
『きゃあっ!!』
ドタンッ、
「檸檬っ!!?」
『いたたたたぁ…』
ぶつけた膝を摩りながら、開いたドアの方を見る。
『あ、恭弥…』
「何してるの。」
『ちょっとコケただけだよ、平気♪』
「まったく…ほら。」
差し出される手の平は、やっぱり優しい。
ギュッと握ると、簡単に立ち上がらせてくれる。
『ありがとっ♪』
「気をつけなよ、焦らなくてもいいんだから。」
『うん、ごめんね。』
「謝る事ないでしょ。」
そう言って、恭弥はまた頭を撫でてくれた。
向かい合って立って初めて、恭弥の背が凄く高くなったのを感じた。
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13日後、ボンゴレアジト・食堂内。
「「「ごちそうさまー!!」」」
「今日も美味かったぞ。」
「よかったです♪」
リボーンの言葉に笑顔を見せるハル。
病室にいる獄寺と山本の食器を片付ける為に立ち上がる京子。
「フゥ太~、遊んで。」
「いいけど、髪がモジャモジャに伸びたね。切ってあげようか?」
ランボの相手をするフゥ太。
そして、ツナは修業をする為に席を立つ。
「さーて、修業行くかなっ。」
「毎日ご苦労様です、ツーナさんvV 愛妻弁当作りましょうか?」
頬を染めて申し出るハルに、ツナは慌てて答える。
「い、いいよ!エレベーター降りるだけだし!!」
同じ頃…
『ごちそうさまっ!あたし、洗い物するね!』
「あ、いえ、私が…」
『いーんです!座ってて下さい。』
すっかり回復した檸檬が雲雀のアジト内を小走りで行く。
それを未だ気遣う草壁。
雲雀は檸檬の様子を見て、完治を悟ったらしく口を閉ざしていた。
「哲、」
「はい。」
「先に檸檬と向こうに行ってて。」
「わ、分かりました。」
雲雀は席を立ち、自室に一端戻った。
洗い物を終えた檸檬と草壁は、そのままボンゴレアジトの方へ向かう。
『どうして急に…一昨日まで“まだダメだよ”って超ガードしてたのに。』
「恭さんは向こうで仕事をするんです。私も付き添いとして行こうかと…」
しかし、檸檬を置いて行くワケにはいかない。
『そっかぁ……何だか楽しみです!久しぶりにみんなに会えるので♪』
「そうですね。」
笑顔を見せる檸檬に、草壁も微笑み返した。
エレベーターが地下6階に着く。
と、ドアの向こうには…
『あっ……!』
「おっ!」
「檸檬!!」
『武!隼人!』
駆け寄ってみると、微妙に絆創膏が残ってて、完治に時間がかかったのが分かった。
「お前…平気なのかよ?」
『だいじょーぶっ♪この通りジャンプも出来るし!』
ぴょいと飛び跳ねると、隼人は
「ならいーんだけどよぉ…」
とかブツブツ言っていた。
「にしても、久しぶりだなー、檸檬。」
『だねー。』
武と笑い合うと、ほのぼの空間が生まれる。
その感じが本当に懐かしくて、あたしはちょっと泣きそうになった。
そこに…
チーン、
「よっ、ツナ!」
「おはよーございます、10代目!!」
『ツナ!久しぶりー!』
「山本!獄寺君!檸檬!」
到着したツナに、今日から修業復帰すると武が言う。
「怪我はもういいの!?」
「完璧っス!!体がなまって困る程です!」
「そっか…良かった。檸檬はその…右足……」
『大丈夫、心配しないで。ちゃんとリハビリして来たから。』
「ずっと?」
『うん、まぁね♪』
イヒヒッと笑ってみせると、ツナも安心したように笑い返してくれた。
みんな揃った所で、ラルが言う。
「予告通り、本日より新しい修業・“強襲用個別強化プログラム”を開始する。」
「個別…強化…?」
「この10日間ツナがラル・ミルチに1対1で教えられたように、1人に1人ずつ家庭教師をつける。リング戦の時みてーにな。」
『1人に1人の家庭教師…』
リボーンは銃を取り出して、こう続ける。
「例えば俺が鍛えるのは、山本だぞ。」
『(わお。)』
キョトンとする武とは反対に、ツナは不安そうにする。
「隼人の担当は私よ。」
『ん?』
そこに現れたのは、
『ビア姉さん!!』
「あら、檸檬!」
「び……ビアンキ!?」
「ふげぇ!!」
ビア姉さんを見た途端、隼人はいつものように倒れる。
「じょ…冗談ス……よね…」
「やはり姉弟、私も嵐属性の波動が1番強いわ。そして…」
ビア姉さんの付けているリングには、赤い炎が灯る。
「修業が無事に終わったら貴方にある物を授けるわ。…お父様からよ。」
「(親父!?)」
隼人は一瞬反応するけど、すぐに倒れてしまう。
「ふごっ!!」
「絶対無理だよ!!中止した方がいいって!!」
組み合わせに反対するツナに、リボーンは銃口を向ける。
「お前は自分の修業に専念しやがれ。」
ズガンと撃たれて、ドサッと倒れるツナ。
心配した武が歩み寄ろうとした、その時。
ブオッ、
コォォォ…
ボウッ、
『わぁっ…!』
「すげぇ10代目!!また迫力が増してる!!」
「前とはまるで別人だな、また随分差ーつけられたぜ。」
驚くあたし達をふわっと飛び越えて、ツナはラルの前に立つ。
「始めよう、ラル・ミルチ。」
でも、
「俺はお前の指導を降りる。」
『え…?』
「お前は俺の思い描くレベルにまるで達していない。短期間ではこれ以上のレベルアップも望めないと判断した。」
「だが実際にここまで…」
「お前の力はこんなモノではない!」
と、その時。
ギュオッ、
何かがあたし達の横を通り過ぎ、まっすぐツナに向かって行く。
それは見た事があるモノで。
「檸檬さん、下がった方が宜しいかと。」
『草壁さん…』
あたしは草壁さんと一緒に数歩下がる。
向かって来る何かをツナは飛び上がって避けるけど、
ソレも急旋回して追いかける。
『ツナ!』
避けられないと判断したらしく、ツナはグローブに炎を纏わせソレ、
……恭弥のハリネズミを押さえつけた。
コツン、コツン、
『あ…』
不意に聞こえて来る靴音。
そちらを向けば、その匣の所有者が。
「気を抜けば死ぬよ。」
「…お前は!!」
「君の才能を、こじ開ける。」
『恭弥……』
みんなの修業が始まる。
置いてけぼりは嫌なのに、
みんなどんどん強くなってく。
何だか少し寂しくなって、
早く書類を見つけなくちゃと改めて思った。