未来編①
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「雷のリングはいらないな。」
着地した雲雀はγのリングを見て言う。
そこにやって来たツナとラル。
「あ……あれって…!!」
その声を聞いた雲雀はくるりと振り向き、
「何してたんだい?沢田綱吉。」
「雲雀さん!!」
帰還
「山本武と獄寺隼人はその林の中だ。」
「え!?」
頼もしい仲間との合流に喜ぶツナだったが、獄寺と山本が倒れているのを見て青ざめる。
しかし、
「大丈夫、命に別状はありません。」
「あっ、あなたは…」
「草壁哲矢、雲雀の部下です。」
一方、その強さに唖然とし、雲雀を見ていたラル。
不意に雲雀が近くの柱へと歩み、そちらに目を向けた。
そこに倒れていたのは、アジトで大人しくしていたはずの檸檬で。
「檸檬!?」
すぐにラルも駆け寄る。
気を失っている檸檬の手足には、いくつもの傷があり、
右足についていたギプスはほぼ全壊していた。
「アジトにいたんじゃ……」
「こんな状態で…」
雲雀が口を開き、ラルはそれに耳を傾けた。
「無理して来るなんて、本当に今と変わらない……」
直後、雲雀は檸檬を抱え上げ、社の方へと歩き出す。
「待て、負傷者もいる。今彼らを抱えてあの距離を引き返し戻るのは危険だ。」
それに答えたのは草壁。
「その心配は要りません。我々の出入り口を使えば。」
「(我々の…?)」
すると、
ゴゴゴ…という音が響いて来て、雲雀と檸檬の姿が消えてしまった。
「きっ、消えた!?」
ツナは驚き、ラルは霧系リングのカモフラージュだと察する。
「じゃあ、ここから戻れるんだ…」
ツナと草壁は同じ出入り口で獄寺と山本を運ぶ事にし、
敵のレーダーに映っていると見られる雨と嵐のボンゴレリングの反応を別の場所で消す役割をラルが担った。
---
-----
----------
同じ頃、ミルフィオーレ日本支部。
リングレーダーを見ながらチェルベッロの一人が言った。
「精製度Aのリング1つが神社から3キロの地点で消滅しました!!2つ目のリングは赤河町に移動しています!」
その直後、
「あっ!……こちらも消滅!!」
それを聞いた入江は焦り出す。
「まだうちの部隊は到着しないのか!!」
「やはり第3部隊の凍結をといて協力させた方が…」
「ダメだ!!彼らは上司の命令に背いたんだぞ!早く撤退させろ!!命令だ!」
と、その時。
「不機嫌そうだね。」
別のモニターからテレビ電話が繋がって来る。
「久しぶり、正チャン♪」
そこに映ったのは、イタリア本部にいる白蘭。
本当に現状に不機嫌になっている入江はムスッとしながら答える。
「……………とうとう…始まりました。」
「うん、でもあんまり幸先よくないみたいだね。」
貼り付いたような笑顔でそう言う白蘭に、入江は報告する。
「ブラックスペルが彼らと交戦したようです。彼らに協力者のいる可能性も……」
「それって計画と違うじゃん。言ったはずだよ、彼らがやって来たら迅速に……」
「やってますよ!!僕はやってるんだ!!」
怒鳴る入江に、
「出たよ、正チャンの逆ギレ。」
と笑う白蘭。
そして、
「もめるだろーけど、バレたんならブラックスペル側にも話す用意しとかなきゃね。」
「どう…説明するんですか?」
「簡単だよ、正直に話せば良い。」
その彼らの計画が、
どんなものかはまだ言わずに、
「予定通りに過去からの贈り物が届いたってね。」
「だけど…」
反論しようとする入江を遮って、白蘭は言う。
「時計はもう止まらないよ。君は君の仕事を急ぎなよ、正チャン。」
白蘭の眼光が、鋭く光る。
「僕は次の73ポリシーを、紡ぎ出すまでさ。」
「白蘭さん…」
ふと、白蘭が入江の後ろを見て目を丸くする。
「お、帰って来たんだ。」
「白蘭、報告宜しいですか?」
「うん。」
コツコツと歩いて来たのは、檸檬を仕留め損ねた蜜柑。
その姿を見た入江は声を大きくする。
「ど、何処に行ってたんだ!?ライトさん!」
「外よ。」
「なっ…!」
「あははっ、確かにそうだよね。で、収穫は?」
驚き黙る入江。
白蘭は笑いながら聞き返す。
と、蜜柑は頭を下げながら言った。
「白蘭がお察しの通り、DARQは入れ替わっていました。ですが…すみません。仕留め損ねました。」
「…そっか。波長の傾向でも見られた?」
「はい、追いつめた瞬間に。」
「そっちはまだ泳がせてた方がいいね。ある程度使いこなしてくれないと、計画が達成出来ないし。」
「畏まりました。」
蜜柑は白蘭に一礼し、そのまま部屋を出て行く。
入江はそれを何も言わず見送り、白蘭に尋ねた。
「ライトさんはどうして…あそこまでDARQを憎むんですか?」
すると白蘭は楽しそうに笑って。
「そうだなぁ……檸檬チャンのせいで、あんな性格にならざるを得なかったから……かな。」
---
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----------
神社から離れ、赤河町を通りながらリングにチェーンを巻き付けたラルは、そのまま京子を迎えに行った。
花が京子に迎えが来たと伝達すると、京子はゆっくり立ち上がる。
「じゃあ私、行くね。」
「ちょっと待って、京子。」
引き止められて渡されたのは、大きな袋。
中に入っているのは、替えの下着やランボ達のおやつだと花は言う。
「こんな事まで…」
申し訳なさそうな表情をする京子に、花は笑顔を見せて。
「またいつでもおいで。」
と。
「100歳のおばあちゃんになっても、アリンコにされも来るんだよ。あんたの親友はちゃんとココにいるからね。」
「……………花、」
その時、京子は初めて実感した。
どんな境遇にいても、
どんな時代でも、
変わらずにいてくれる人がいる。
友達がいる。
「わああん!!」
瞳に滲んだ涙を隠そうと、
しばらく会えなくなる寂しさを紛らわそうと、
京子は花に抱きついた。
花は、それをしっかりと支えてくれた。
---
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「やはり、私が2人背負いましょうか?」
「だ…大丈夫です。それよりココって…」
「我々の日本における研究施設の一つです。」
そこは、和風の装飾が施されている廊下だった。
“研究”という単語にツナは首をかしげる。
「色々と兼ねてますがね、ほらあそこ。」
草壁に言われてツナが真正面を向くと、そこにはリボーンが立っていた。
「ちゃおっス。」
「リボーン!!どうしてココに?」
「我々の施設と貴方のアジトは繋がっているのです。」
もっとも不可侵規定がある為、開いたのは今日が初めてらしい。
群れるのが嫌いな雲雀が制定したシステムだそうだ。
そこから山本を第一、獄寺を第二医療室に運び、治療を施した。
---
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-----------
{目を開けて…}
え…?
{目を開けて…}
誰…?
重たい瞼をゆっくりと持ち上げる。
と、目の前には、知っている顔。
『あ、あたし…!?』
{入れ替わった時、以来ね。}
やんわりと見せられた笑みは、
何故か、何処か、哀しくて。
『どうして…』
{第六感の完成は、あたし自身にたくさんの影響をもたらした。時間を超えて夢に出るのも、その1つ。}
『だったら教えて!どうやったら上手く行くの?未来は助かるの?どうして蜜柑はっ…』
あたしが聞くと、10年後のあたしは目を閉じて首を振った。
{夢の中であっても、多くの干渉は許されないの、ごめんなさい…。あたしは貴女に一つだけ伝えに来た。}
『何を…?』
{同じ過ちを、繰り返さないで……}
縋るようなその言葉に、あたしは何も言えなかった。
その瞬間、急に瞼が重くなって、目を閉じる。
{信じてるわ、昔のあたしを……}
最後にそう聞こえて、あたしはすごく哀しくなった。
何でか分からなかったけど、涙が溢れそうになった。
だから、もう一度目を開けた。
でもそこには…
「檸檬…気がついた?」
『あ……』
別の光景が広がっていて。
『きょ…や………』
別の涙が溢れ出す。
畳の匂いが嗅覚を刺激する。
ずっと握られていたのか、右手が温かい。
『ココは…?』
「僕の組織の施設。沢田のアジトとも繋がってる。」
あたし…
戻って来れたんだ……
『良かったぁ……』
普通に笑みがこぼれたのは、いつ以来だろう。
ずっとずっと、不安を打ち消そうとしてた気がする。
だけど、
『恭弥……ホントに恭弥だよね…?』
「違う風に見える?」
『んーん…見えない……』
10年前とはちょっと違うけど、
確かにそこにいるのは恭弥。
会いたかった恭弥。
と、そこに。
「恭さん、檸檬さんの具合は…」
『草壁さんっ!』
何だか変わってないなぁ、と思う。
頑張って起き上がろうとすると、恭弥に止められた。
「檸檬、まだ安静にしてなよ。右足は完治に時間かかるから。」
『右足…』
そうだった、ギプス壊れちゃったんだっけ…。
ジャンニーニに謝っておかなくちゃ。
『でも!足以外は元気だよ!もう大丈夫♪』
「何言ってるの。今起きたばっかりでしょ。」
『だいじょーぶーっ。』
「ダメ。」
『恭弥のケチ。』
「檸檬は無理し過ぎなんだよ。」
「抑えて下さい、お2人ともっ!」
草壁さんに止められて、あたしは口を尖らせる。
恭弥はそっぽ向いて溜め息をついた。
「檸檬さん、恭さんの言う通り今は安静にお願いします。」
『…はい。』
「恭さん、沢田側に多少説明を…」
「面倒だな……まぁいいや、行くよ。」
「お願いします。」
『えっ…?恭弥どっか行くの?あたしも行く!』
立ち上がった恭弥につられるように、あたしは起き上がった。
右足からじんわり痛みが伝わるけど、ちょっと我慢。
そしたら、恭弥はくるっとこっちを向いて。
ぎゅ、
『……恭弥?』
「心配、した。」
膝立ちしながらあたしを抱きしめて、恭弥は小さ声で言う。
何だか弱々しく聞こえて、苦しくなった。
「ミルフィオーレに捕まったって聞いた。」
『うん…捕まってた、みたい。』
良く分からないけど、初めて未来に来た時、あたしは敵アジトにいたみたいだし。
「もう…会えないかと……」
『恭弥…』
---「誰よりもDARQを大切にしてる、とか。」
γの言葉を思い出す。
『……ごめんなさい。』
スーツをキュッと握って、恭弥の胸に頭を預ける。
『もう…無理しない。出来るだけ。』
「当たり前でしょ。もう……無理させない。」
優しく頭を撫でてから、恭弥は立ち上がった。
すぐ戻るよ、と。
どうしよう。
10年前よりもカッコ良くなってる。
心臓の音、すごく五月蝿い。
「檸檬さん、横になっていて下さい。」
『あ、はい…』
布団を鼻までかぶって、顔の熱が下がるように念じた。
『(10年後のあたしも、これくらい恭弥のこと大好きだったのかな……?)』
そう思うとすごく恥ずかしくて、
顔の熱は下がるどころか上がってしまった。
---
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第二医療室。
ほぼ全身に包帯を巻かれ眠っている獄寺に、リボーンがついていた。
そこにツナが入室する。
「獄寺君はどう?」
「まだ……起きねーぞ。だがまぁ、つくづく良かったな。」
「なっ、何が何処が良かったんだよ!!」
「良かったじゃねーか。ミルフィオーレを相手に俺達が生き残るため残された道は成長しかねーんだ。」
リボーンの言葉に、ツナは何も言い返せずに黙る。
「それに、ピンチの次には良いこともあるはずだ。」
「…お前な!みんな怪我したんだぞ!!」
と、その時。
「10代目……すいません………」
獄寺が目を覚まし、ツナに話しかけた。
ツナは咄嗟に近くに歩み寄る。
「獄寺君!」
「全て俺の責任です…」
突然始まる懺悔に、ツナは黙った。
「俺…本当は…こっちの世界に来て…びびってたみたいっス……テンパって山本に当たってあんな事に…」
「獄寺君…」
「山本もそう言ってたぞ。」
リボーンが山本の言葉を獄寺に伝える。
“いっぱいいっぱいで獄寺に言わなくていーことまで言っちまった”
と。
「な!じゃぁ山本は!!」
「生きてるよ!結構元気に!!」
それを聞き、獄寺は少しボーッとする。
そして、
「………ちぇ、まだ生きてやがったか…」
いつものように、気に食わないという態度を取った。
喜ぶと思っていたツナはそれに唖然とするも、自分の事ばかり考えていた事を反省する。
「あの、10代目…」
「えっ、何?」
「檸檬は……」
「あっ!そうだ、雲雀さんが運んでって……何処行ったんだろう??」
檸檬が雲雀のアジトの一室で治療されている事を、獄寺だけでなくツナも知らされていなかった。
するとリボーンが言う。
「心配すんな。檸檬は雲雀と草壁に任せとけ。」
「つーかどーして檸檬が外に出てたんだよ!あれ程…説得したのに……」
肩を落とすツナに、答えるリボーン。
「外の隠しカメラが壊されたんだ。原因を突き止めるって聞かなくてな…」
「それで…γに出会って適わなかったって事?」
「違います……」
リボーンとツナの会話に、獄寺が口を挟んだ。
「檸檬は…俺たちのトコに来る前に…交戦してたみたいです…。俺が見た時はもう…ボロボロでしたから……」
「じゃあ…一体誰と戦って…?檸檬がブラックスペルの雑魚に押されるワケないし…」
「その辺は後で本人に聞けばいーだろ。何にせよ、京子も獄寺も山本も檸檬も、まだまだ乳くさいガキンチョって事だな。」
「なぁ!?」
「お前らは経験不足で不安定で、すぐに血迷ってイタイ間違いをおかしやがる。」
「そ……そこまで言うか!?」
ズバズバ言うリボーンに、ツナは呆れる。
「だが、今は死ななきゃそれでいいんだ。」
「……え?」
「間違いにぶつかる度にぐんぐん伸びるのが、お前達の最大の武器だからな。」
「リボーン…つーか赤ん坊のお前に言われたくないよ!!」
ツナが少し怒鳴ると同時に、ドアが開く。
「いいかな、話。」
「ひいっ!」
そちらを向いたツナは、軽く怯えた。
「雲雀さん!!」
一方リボーンは嬉しそうに挨拶する。
「会いたかったぞ雲雀。」
「僕もだ、赤ん坊。」
「檸檬の容態はどうだ?」
「もう起き上がったよ。右足の完治まではまだ掛かるけど、元気に話してる。」
「そーか。良かったな、ツナ。」
「う、うん!」
ホッとして頷いたツナは、雲雀に一礼した。
「あの、ありがとうございます!雲雀さん!」
「別に。」
と、そこに。
「あのー、ちょっと宜しいでしょうか?」
ひょこりと顔を覗かせたのは、ジャンニーニ。
「何だ?」
「グッドニュースですよ!情報収集に出ていたビアンキさんとフゥ太さんが、帰って来ました!」
「フゥ太!?」
「アネキが!?」
驚くツナと獄寺。
反対にリボーンはニッと笑って。
「言っただろ?ピンチの次には良い事があるってな。」
着地した雲雀はγのリングを見て言う。
そこにやって来たツナとラル。
「あ……あれって…!!」
その声を聞いた雲雀はくるりと振り向き、
「何してたんだい?沢田綱吉。」
「雲雀さん!!」
帰還
「山本武と獄寺隼人はその林の中だ。」
「え!?」
頼もしい仲間との合流に喜ぶツナだったが、獄寺と山本が倒れているのを見て青ざめる。
しかし、
「大丈夫、命に別状はありません。」
「あっ、あなたは…」
「草壁哲矢、雲雀の部下です。」
一方、その強さに唖然とし、雲雀を見ていたラル。
不意に雲雀が近くの柱へと歩み、そちらに目を向けた。
そこに倒れていたのは、アジトで大人しくしていたはずの檸檬で。
「檸檬!?」
すぐにラルも駆け寄る。
気を失っている檸檬の手足には、いくつもの傷があり、
右足についていたギプスはほぼ全壊していた。
「アジトにいたんじゃ……」
「こんな状態で…」
雲雀が口を開き、ラルはそれに耳を傾けた。
「無理して来るなんて、本当に今と変わらない……」
直後、雲雀は檸檬を抱え上げ、社の方へと歩き出す。
「待て、負傷者もいる。今彼らを抱えてあの距離を引き返し戻るのは危険だ。」
それに答えたのは草壁。
「その心配は要りません。我々の出入り口を使えば。」
「(我々の…?)」
すると、
ゴゴゴ…という音が響いて来て、雲雀と檸檬の姿が消えてしまった。
「きっ、消えた!?」
ツナは驚き、ラルは霧系リングのカモフラージュだと察する。
「じゃあ、ここから戻れるんだ…」
ツナと草壁は同じ出入り口で獄寺と山本を運ぶ事にし、
敵のレーダーに映っていると見られる雨と嵐のボンゴレリングの反応を別の場所で消す役割をラルが担った。
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同じ頃、ミルフィオーレ日本支部。
リングレーダーを見ながらチェルベッロの一人が言った。
「精製度Aのリング1つが神社から3キロの地点で消滅しました!!2つ目のリングは赤河町に移動しています!」
その直後、
「あっ!……こちらも消滅!!」
それを聞いた入江は焦り出す。
「まだうちの部隊は到着しないのか!!」
「やはり第3部隊の凍結をといて協力させた方が…」
「ダメだ!!彼らは上司の命令に背いたんだぞ!早く撤退させろ!!命令だ!」
と、その時。
「不機嫌そうだね。」
別のモニターからテレビ電話が繋がって来る。
「久しぶり、正チャン♪」
そこに映ったのは、イタリア本部にいる白蘭。
本当に現状に不機嫌になっている入江はムスッとしながら答える。
「……………とうとう…始まりました。」
「うん、でもあんまり幸先よくないみたいだね。」
貼り付いたような笑顔でそう言う白蘭に、入江は報告する。
「ブラックスペルが彼らと交戦したようです。彼らに協力者のいる可能性も……」
「それって計画と違うじゃん。言ったはずだよ、彼らがやって来たら迅速に……」
「やってますよ!!僕はやってるんだ!!」
怒鳴る入江に、
「出たよ、正チャンの逆ギレ。」
と笑う白蘭。
そして、
「もめるだろーけど、バレたんならブラックスペル側にも話す用意しとかなきゃね。」
「どう…説明するんですか?」
「簡単だよ、正直に話せば良い。」
その彼らの計画が、
どんなものかはまだ言わずに、
「予定通りに過去からの贈り物が届いたってね。」
「だけど…」
反論しようとする入江を遮って、白蘭は言う。
「時計はもう止まらないよ。君は君の仕事を急ぎなよ、正チャン。」
白蘭の眼光が、鋭く光る。
「僕は次の73ポリシーを、紡ぎ出すまでさ。」
「白蘭さん…」
ふと、白蘭が入江の後ろを見て目を丸くする。
「お、帰って来たんだ。」
「白蘭、報告宜しいですか?」
「うん。」
コツコツと歩いて来たのは、檸檬を仕留め損ねた蜜柑。
その姿を見た入江は声を大きくする。
「ど、何処に行ってたんだ!?ライトさん!」
「外よ。」
「なっ…!」
「あははっ、確かにそうだよね。で、収穫は?」
驚き黙る入江。
白蘭は笑いながら聞き返す。
と、蜜柑は頭を下げながら言った。
「白蘭がお察しの通り、DARQは入れ替わっていました。ですが…すみません。仕留め損ねました。」
「…そっか。波長の傾向でも見られた?」
「はい、追いつめた瞬間に。」
「そっちはまだ泳がせてた方がいいね。ある程度使いこなしてくれないと、計画が達成出来ないし。」
「畏まりました。」
蜜柑は白蘭に一礼し、そのまま部屋を出て行く。
入江はそれを何も言わず見送り、白蘭に尋ねた。
「ライトさんはどうして…あそこまでDARQを憎むんですか?」
すると白蘭は楽しそうに笑って。
「そうだなぁ……檸檬チャンのせいで、あんな性格にならざるを得なかったから……かな。」
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神社から離れ、赤河町を通りながらリングにチェーンを巻き付けたラルは、そのまま京子を迎えに行った。
花が京子に迎えが来たと伝達すると、京子はゆっくり立ち上がる。
「じゃあ私、行くね。」
「ちょっと待って、京子。」
引き止められて渡されたのは、大きな袋。
中に入っているのは、替えの下着やランボ達のおやつだと花は言う。
「こんな事まで…」
申し訳なさそうな表情をする京子に、花は笑顔を見せて。
「またいつでもおいで。」
と。
「100歳のおばあちゃんになっても、アリンコにされも来るんだよ。あんたの親友はちゃんとココにいるからね。」
「……………花、」
その時、京子は初めて実感した。
どんな境遇にいても、
どんな時代でも、
変わらずにいてくれる人がいる。
友達がいる。
「わああん!!」
瞳に滲んだ涙を隠そうと、
しばらく会えなくなる寂しさを紛らわそうと、
京子は花に抱きついた。
花は、それをしっかりと支えてくれた。
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「やはり、私が2人背負いましょうか?」
「だ…大丈夫です。それよりココって…」
「我々の日本における研究施設の一つです。」
そこは、和風の装飾が施されている廊下だった。
“研究”という単語にツナは首をかしげる。
「色々と兼ねてますがね、ほらあそこ。」
草壁に言われてツナが真正面を向くと、そこにはリボーンが立っていた。
「ちゃおっス。」
「リボーン!!どうしてココに?」
「我々の施設と貴方のアジトは繋がっているのです。」
もっとも不可侵規定がある為、開いたのは今日が初めてらしい。
群れるのが嫌いな雲雀が制定したシステムだそうだ。
そこから山本を第一、獄寺を第二医療室に運び、治療を施した。
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{目を開けて…}
え…?
{目を開けて…}
誰…?
重たい瞼をゆっくりと持ち上げる。
と、目の前には、知っている顔。
『あ、あたし…!?』
{入れ替わった時、以来ね。}
やんわりと見せられた笑みは、
何故か、何処か、哀しくて。
『どうして…』
{第六感の完成は、あたし自身にたくさんの影響をもたらした。時間を超えて夢に出るのも、その1つ。}
『だったら教えて!どうやったら上手く行くの?未来は助かるの?どうして蜜柑はっ…』
あたしが聞くと、10年後のあたしは目を閉じて首を振った。
{夢の中であっても、多くの干渉は許されないの、ごめんなさい…。あたしは貴女に一つだけ伝えに来た。}
『何を…?』
{同じ過ちを、繰り返さないで……}
縋るようなその言葉に、あたしは何も言えなかった。
その瞬間、急に瞼が重くなって、目を閉じる。
{信じてるわ、昔のあたしを……}
最後にそう聞こえて、あたしはすごく哀しくなった。
何でか分からなかったけど、涙が溢れそうになった。
だから、もう一度目を開けた。
でもそこには…
「檸檬…気がついた?」
『あ……』
別の光景が広がっていて。
『きょ…や………』
別の涙が溢れ出す。
畳の匂いが嗅覚を刺激する。
ずっと握られていたのか、右手が温かい。
『ココは…?』
「僕の組織の施設。沢田のアジトとも繋がってる。」
あたし…
戻って来れたんだ……
『良かったぁ……』
普通に笑みがこぼれたのは、いつ以来だろう。
ずっとずっと、不安を打ち消そうとしてた気がする。
だけど、
『恭弥……ホントに恭弥だよね…?』
「違う風に見える?」
『んーん…見えない……』
10年前とはちょっと違うけど、
確かにそこにいるのは恭弥。
会いたかった恭弥。
と、そこに。
「恭さん、檸檬さんの具合は…」
『草壁さんっ!』
何だか変わってないなぁ、と思う。
頑張って起き上がろうとすると、恭弥に止められた。
「檸檬、まだ安静にしてなよ。右足は完治に時間かかるから。」
『右足…』
そうだった、ギプス壊れちゃったんだっけ…。
ジャンニーニに謝っておかなくちゃ。
『でも!足以外は元気だよ!もう大丈夫♪』
「何言ってるの。今起きたばっかりでしょ。」
『だいじょーぶーっ。』
「ダメ。」
『恭弥のケチ。』
「檸檬は無理し過ぎなんだよ。」
「抑えて下さい、お2人ともっ!」
草壁さんに止められて、あたしは口を尖らせる。
恭弥はそっぽ向いて溜め息をついた。
「檸檬さん、恭さんの言う通り今は安静にお願いします。」
『…はい。』
「恭さん、沢田側に多少説明を…」
「面倒だな……まぁいいや、行くよ。」
「お願いします。」
『えっ…?恭弥どっか行くの?あたしも行く!』
立ち上がった恭弥につられるように、あたしは起き上がった。
右足からじんわり痛みが伝わるけど、ちょっと我慢。
そしたら、恭弥はくるっとこっちを向いて。
ぎゅ、
『……恭弥?』
「心配、した。」
膝立ちしながらあたしを抱きしめて、恭弥は小さ声で言う。
何だか弱々しく聞こえて、苦しくなった。
「ミルフィオーレに捕まったって聞いた。」
『うん…捕まってた、みたい。』
良く分からないけど、初めて未来に来た時、あたしは敵アジトにいたみたいだし。
「もう…会えないかと……」
『恭弥…』
---「誰よりもDARQを大切にしてる、とか。」
γの言葉を思い出す。
『……ごめんなさい。』
スーツをキュッと握って、恭弥の胸に頭を預ける。
『もう…無理しない。出来るだけ。』
「当たり前でしょ。もう……無理させない。」
優しく頭を撫でてから、恭弥は立ち上がった。
すぐ戻るよ、と。
どうしよう。
10年前よりもカッコ良くなってる。
心臓の音、すごく五月蝿い。
「檸檬さん、横になっていて下さい。」
『あ、はい…』
布団を鼻までかぶって、顔の熱が下がるように念じた。
『(10年後のあたしも、これくらい恭弥のこと大好きだったのかな……?)』
そう思うとすごく恥ずかしくて、
顔の熱は下がるどころか上がってしまった。
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第二医療室。
ほぼ全身に包帯を巻かれ眠っている獄寺に、リボーンがついていた。
そこにツナが入室する。
「獄寺君はどう?」
「まだ……起きねーぞ。だがまぁ、つくづく良かったな。」
「なっ、何が何処が良かったんだよ!!」
「良かったじゃねーか。ミルフィオーレを相手に俺達が生き残るため残された道は成長しかねーんだ。」
リボーンの言葉に、ツナは何も言い返せずに黙る。
「それに、ピンチの次には良いこともあるはずだ。」
「…お前な!みんな怪我したんだぞ!!」
と、その時。
「10代目……すいません………」
獄寺が目を覚まし、ツナに話しかけた。
ツナは咄嗟に近くに歩み寄る。
「獄寺君!」
「全て俺の責任です…」
突然始まる懺悔に、ツナは黙った。
「俺…本当は…こっちの世界に来て…びびってたみたいっス……テンパって山本に当たってあんな事に…」
「獄寺君…」
「山本もそう言ってたぞ。」
リボーンが山本の言葉を獄寺に伝える。
“いっぱいいっぱいで獄寺に言わなくていーことまで言っちまった”
と。
「な!じゃぁ山本は!!」
「生きてるよ!結構元気に!!」
それを聞き、獄寺は少しボーッとする。
そして、
「………ちぇ、まだ生きてやがったか…」
いつものように、気に食わないという態度を取った。
喜ぶと思っていたツナはそれに唖然とするも、自分の事ばかり考えていた事を反省する。
「あの、10代目…」
「えっ、何?」
「檸檬は……」
「あっ!そうだ、雲雀さんが運んでって……何処行ったんだろう??」
檸檬が雲雀のアジトの一室で治療されている事を、獄寺だけでなくツナも知らされていなかった。
するとリボーンが言う。
「心配すんな。檸檬は雲雀と草壁に任せとけ。」
「つーかどーして檸檬が外に出てたんだよ!あれ程…説得したのに……」
肩を落とすツナに、答えるリボーン。
「外の隠しカメラが壊されたんだ。原因を突き止めるって聞かなくてな…」
「それで…γに出会って適わなかったって事?」
「違います……」
リボーンとツナの会話に、獄寺が口を挟んだ。
「檸檬は…俺たちのトコに来る前に…交戦してたみたいです…。俺が見た時はもう…ボロボロでしたから……」
「じゃあ…一体誰と戦って…?檸檬がブラックスペルの雑魚に押されるワケないし…」
「その辺は後で本人に聞けばいーだろ。何にせよ、京子も獄寺も山本も檸檬も、まだまだ乳くさいガキンチョって事だな。」
「なぁ!?」
「お前らは経験不足で不安定で、すぐに血迷ってイタイ間違いをおかしやがる。」
「そ……そこまで言うか!?」
ズバズバ言うリボーンに、ツナは呆れる。
「だが、今は死ななきゃそれでいいんだ。」
「……え?」
「間違いにぶつかる度にぐんぐん伸びるのが、お前達の最大の武器だからな。」
「リボーン…つーか赤ん坊のお前に言われたくないよ!!」
ツナが少し怒鳴ると同時に、ドアが開く。
「いいかな、話。」
「ひいっ!」
そちらを向いたツナは、軽く怯えた。
「雲雀さん!!」
一方リボーンは嬉しそうに挨拶する。
「会いたかったぞ雲雀。」
「僕もだ、赤ん坊。」
「檸檬の容態はどうだ?」
「もう起き上がったよ。右足の完治まではまだ掛かるけど、元気に話してる。」
「そーか。良かったな、ツナ。」
「う、うん!」
ホッとして頷いたツナは、雲雀に一礼した。
「あの、ありがとうございます!雲雀さん!」
「別に。」
と、そこに。
「あのー、ちょっと宜しいでしょうか?」
ひょこりと顔を覗かせたのは、ジャンニーニ。
「何だ?」
「グッドニュースですよ!情報収集に出ていたビアンキさんとフゥ太さんが、帰って来ました!」
「フゥ太!?」
「アネキが!?」
驚くツナと獄寺。
反対にリボーンはニッと笑って。
「言っただろ?ピンチの次には良い事があるってな。」