未来編①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
溢れる涙は、
痛みによるモノじゃなくなってた。
それは、
再会という名の喜びの象徴。
雲雀恭弥VSγ
「んん……思い出したぜ。」
あたしと恭弥の間に立って、γが言う。
「お前はボンゴレの雲の守護者、雲雀恭弥だ。」
「だったら?」
少し、低くなった感じの声。
聞こえる度に、耳が震えてる気がする。
「お前にはうちの諜報部も手を焼いててね。ボンゴレの敵か味方か……行動の真意が掴めないとさ。」
すごく恭弥らしいなって思う。
だから雲の守護者になったんだなぁ、と。
「だが最も有力な噂によれば、この世の七不思議にご執心で……」
グイッ、
『つっ……!』
突然γに腕を引かれる。
左腕を首に回され、右手のキューがあたしの頬に当たる。
「……誰よりもDARQを大切にしてる、とか。」
『は…なして……っ…』
人質なんて嫌、
足手纏いは嫌、
なのに…
動けない。
「檸檬を放せ。」
恭弥の声のトーンが変わる。
ごめんなさい、ごめんなさい、
貴方に会いたいと願うばかりに、
こんなトコに空間移動して、
結局捕まっちゃうなんて。
「噂は正しかったかな?」
γの台詞が憎たらしい。
捕まってる自分も憎たらしい。
「聞こえなかった?檸檬を放せって言ったんだけど。」
『…恭……弥………』
恭弥の言葉を無視して、γは問う。
「匣の事を嗅ぎ回ってるらしいな。」
『(匣……?)』
すると恭弥も、γの質問を無視する。
「もう一度だけ言う。檸檬を、放せ。」
と、その時。
あたしには、恭弥が何かを目で訴えてるように感じられた。
それはγにじゃなくて、
あたしに………。
何…?
何だろう…?
小さく開く、恭弥の口。
声として発せられる事無く、伝えられるメッセージ。
---「(う、ご、け、る、か、い)」
あたしは必死に考える。
どのくらい自分が動けるか。
足手纏いにならない為に、どこまで動くべきか。
「得体の知れないモノに命を預けたくないってのは同感だぜ。で、匣は誰が何の為に創ったか分かったかい?」
「答えるつもりはないな。僕は機嫌が悪いんだ。」
「それは…仲間の守護者の無様な姿のせいか?それとも…」
γがあたしにキューを押し付ける。
『うっ……!』
「この女に身の危険が迫っているからか?」
「放せって言ったんだけど、伝わらなかったみたいだね。」
恭弥は雲の装飾がされた匣と、リングを取り出した。
「君は並盛の風紀を汚した。僕が大切にしてると知ってて、檸檬を人質にとった。だから怒ってるんだ。」
「風紀……?」
γが鼻で笑う。
あたしはその隙に、恭弥に口パクで伝えた。
---『(す、こ、し、な、ら)』
「まぁいいさ、敵の守護者の撃墜記録を更新するのは嬉しい限りだ。俺も、男の子なんでね。」
狐が出るより少し早く、恭弥の匣から何かが出て来た。
γも匣を開ける際に少しだけ腕を緩める。
『(今だっ!)』
あたしは力を振り絞って、γの腕を払いのけ、
半ば這うようにして距離を取る。
「まだ動けたとは…驚きだな。」
γは追って来なかった。
あたしが捕まってる状態でも恭弥が匣を使ったから、人質としての価値がないと判断したんだろう。
見れば、γの狐とぶつかっているのはハリネズミだと分かる。
『すごい…』
腕の力も無くなって、崩れ落ちるあたし。
と、その時。
ふわっ、
『え……?』
ぎゅ、と温かい感触。
止めていたハズなのに再び溢れる涙。
「檸檬……」
『恭弥……恭弥ぁ………』
ぎゅぅ、と服を掴む事も出来ないまま、恭弥に寄りかかって本物だって実感する。
すると恭弥は、あたしを近くの柱にもたれさせて、
「ここにいて、檸檬。」
と。
その間、狐とぶつかるハリネズミを見て、γが言う。
「ハリネズミとは可愛いが、何てパワーだ……これだけの匣ムーブメントをよくそんな三流リングで動かせる。」
「僕は君たちとは生き物としての性能が違うのさ。」
次の瞬間、恭弥の指にあったリングが砕け散った。
これにはγも驚きを隠せず眉を動かす。
『恭弥…』
「心配ないよ、檸檬。すぐ終わる。」
あたしの頭を一撫でして、恭弥はγと向き合う。
「さぁ僕らも、始めよう。」
新しいリングに炎を灯し、匣に差し込んだ。
と、中から出て来たのは彼特有の武器。
『トンファー……』
紫色の炎が灯るそれを、恭弥は両手に持って構える。
そして、始まった。
ガキキキッ、
γのキューと、恭弥のトンファーがぶつかり合う。
その音は辺りに響いて、あたしも息を飲む。
同時に、まだ実感が沸かないと思ってる自分もいた。
『(恭弥だ……ホントに10年後の恭弥だ……)』
何だかまだ夢の中みたいで、
ふわふわして、ポーッとする。
---
「(こいつぁハンパねぇ。)」
次第に追いつめられるγは、雲雀の攻撃を予測してマーレリングに炎を灯した。
が、
バキッ、
防御の為の炎はほとんど意味をなさず、トンファーでの一撃をもろに喰らう。
「(硬度で勝る雷の炎を、雲の炎で破っただと……!?)」
ふっ飛ばされ、地面に叩き付けられるγ。
雲雀は少しだけ歩み寄る。
「立ちなよ、上手くダメージを逃がしたね。」
白い煙の中から、ゆっくり起き上がるγ。
その周りには、獄寺と山本、そして檸檬を追いつめたビリヤードの球が浮く。
「ふ~~~、さすがだ。もし守護者だったら最強だって噂も本当らしいな。」
それを見た檸檬は叫ぶ。
『恭弥!その球、気をつけてっ…!!』
「あぁ、まだ口が利けたんだな。ならさっさと終わらせて連れ帰らなくちゃなぁ。」
ニヤリと笑うγに、檸檬は少し身震いする。
「君、僕を倒せると思ってるのかい?」
「そう聞こえなかったか?」
「無理だよ。」
「ハハッ、こりゃぁ楽しくなって来やがったぜ。」
γがキューで球を突いた。
檸檬はグッと拳を握る。
本当に力を使い切ってしまった檸檬は、もう片腕も動かせない状態だった。
『(恭弥っ……)』
---
-----
-----------
同じ頃、神社へと向かっていたツナは、ラルに問いかけた。
「あの、さっき檸檬の双子の妹って…」
「あぁ。」
ラルの声が、少し小さくなる。
ツナは走りながらその表情を窺おうとするも、ゴーグルがそれをさせない。
すると、ラルの方から口を開いた。
「檸檬の双子の妹は、知ってるな?」
「はい…確か一度だけ会った事が……」
ツナは、檸檬を捨てた家族と対面した時の事を思い出す。
「檸檬の妹、雨宮蜜柑は……現在ミルフィオーレのボス補佐をやっている。」
「ミルフィオーレの…!!?」
「部隊長ではないがそれと同等の権限を持つ。精製度Aのリングは所持していないが、それと同等の戦闘力を持つ。」
ラルの言葉に、ツナは黙り込む。
「通り名は、LIGHT(ライト)。」
“どうして”という言葉は、すぐに飲み込まれた。
少し考えを巡らせれば、分かる事。
「檸檬を殺す為に…?」
「そうだ。」
「そんな……」
それから、2人の間には沈黙が流れ続けた。
---
-----
----------
カッ、
カカッ、
突かれた球が他の球を弾いて、恭弥の周りを囲んでいく。
雷の炎で出来た線が、恭弥の動きを制限する。
『恭弥っ…!』
「あいにくこのショットの軌道には、人が生きられるだけの隙間が無いんだ。」
口角を上げてそう言うγに、恭弥は球を避けながら返す。
「それはどうかな。」
その左手のトンファーには、紫色の炎が集まっていく。
読んでる…
恭弥はγのショットの軌道を読んでるんだ…!
それを知らないγは、
「3番ボール。」
と。
すると、彼の言う通りに3番ボールが恭弥に真直ぐぶつかった。
「ぐっ、」
「ビンゴ。」
『恭弥ぁっ!!』
ガードをした左手から、血が噴き出す。
怖くなって、思わず叫ぶ。
でも恭弥は、何事も無かったかのようにγの方へ走って行く。
「確かに全ては避け切れそうにない。だから当たるのは、この一球だけって決めたのさ。」
その言葉を聞いて、あたしもγも目を見開いた。
「(一瞬にして最低限のダメージで済むルートを見切ったのか………)」
『(だから最初に炎を左側に……)』
「もう逃がさないよ。」
「ふっ…それとこれとは話が別だ。」
突っ込んで来た恭弥が振るうトンファーを、γはブーツの炎の推進力によってかわす。
『空中!?』
「残念だな。」
そんなの卑怯だと思ったけど、恭弥は何も言わない。
見上げようともしなかった。
『(え…?)』
不思議に思ったあたしが見上げると同時に、
γは口から深紅の液体を吐く。
「な………なんだぁ…?こりゃあ……」
そこでやっと、始めに繰り出された狐とハリネズミの戦いの結末が分かった。
大きな針付きの球体となったハリネズミは二匹の狐を刺し、更にγも刺していた。
『な、に…?』
凄過ぎて、何だか分からない。
とりあえずγと狐は身動きが取れない状態になったみたい。
「言ったはずだよ、逃がさないって。」
『恭弥…』
恭弥は全部計算してたのかな。
自分の攻撃を避けきれなくなったγが、飛び上がる事、
そしてその時にはもう、ハリネズミがこうして針を用意してるって事。
「君の狐の炎を元に、彼がこれだけの針を発生させたんだ。まるで雲が大気中の塵を元に発生して拡がるようにね。」
それを聞いたγは、途切れ途切れに言う。
「そーか…雲属性の匣の特徴は……増殖………だったな…」
どうやら匣には属性毎に特徴があるらしい。
タタタタ…
『ん…?』
ふと、遠くから近づいて来る足音を、あたしの耳がキャッチする。
2種類に聞き分けられるソレは、きっと味方。
「こんな有機物を増殖させられるなんて、うちの雲の奴からは聞いてない……」
脱力したような声で、γが言う。
「ナンセンスな匣だぜ……」
「素晴らしい力さ、故に興味深い。」
匣を見つめながら、恭弥は言った。
そして、2つの足音もすぐそこに。
「さぁ、終わるよ。」
口元に緩い笑みを浮かべて、恭弥はトンファーを構える。
同時に、近くの茂みがガサガサと揺れて、
「あれは!!」
思った通りの2人・ツナとラルが顔を見せる。
『(元気そうだ…良かった……)』
ふっと笑みをこぼすあたし。
対して恭弥は、
「遅過ぎるよ君達。」
と、嘲笑とも取れるような表情を見せる。
そしてγも、
「あのガキは……」
散々あたしや隼人に拷問しただけあって、
やっぱり気がついた。
「………まさかな。」
若さに驚いたのか、
それとも、
生きている事に驚いたのか。
恭弥は、増殖した針の生えてる板状のモノに乗る。
それを何段かジャンプして登っていき、γが刺さっている高さまで到達する。
『(決まる…)』
あれだけ隼人や武、あたしも苦戦した相手を、
こんなに簡単に。
ガッ、
恭弥のトンファーが叩き込まれて、
γは夥しい量の血を吐いた。
同時に、
ぐらっ…
『(あ…れ……?)』
物凄い目眩に襲われて、
あたしはその場で気を失った。
痛みによるモノじゃなくなってた。
それは、
再会という名の喜びの象徴。
雲雀恭弥VSγ
「んん……思い出したぜ。」
あたしと恭弥の間に立って、γが言う。
「お前はボンゴレの雲の守護者、雲雀恭弥だ。」
「だったら?」
少し、低くなった感じの声。
聞こえる度に、耳が震えてる気がする。
「お前にはうちの諜報部も手を焼いててね。ボンゴレの敵か味方か……行動の真意が掴めないとさ。」
すごく恭弥らしいなって思う。
だから雲の守護者になったんだなぁ、と。
「だが最も有力な噂によれば、この世の七不思議にご執心で……」
グイッ、
『つっ……!』
突然γに腕を引かれる。
左腕を首に回され、右手のキューがあたしの頬に当たる。
「……誰よりもDARQを大切にしてる、とか。」
『は…なして……っ…』
人質なんて嫌、
足手纏いは嫌、
なのに…
動けない。
「檸檬を放せ。」
恭弥の声のトーンが変わる。
ごめんなさい、ごめんなさい、
貴方に会いたいと願うばかりに、
こんなトコに空間移動して、
結局捕まっちゃうなんて。
「噂は正しかったかな?」
γの台詞が憎たらしい。
捕まってる自分も憎たらしい。
「聞こえなかった?檸檬を放せって言ったんだけど。」
『…恭……弥………』
恭弥の言葉を無視して、γは問う。
「匣の事を嗅ぎ回ってるらしいな。」
『(匣……?)』
すると恭弥も、γの質問を無視する。
「もう一度だけ言う。檸檬を、放せ。」
と、その時。
あたしには、恭弥が何かを目で訴えてるように感じられた。
それはγにじゃなくて、
あたしに………。
何…?
何だろう…?
小さく開く、恭弥の口。
声として発せられる事無く、伝えられるメッセージ。
---「(う、ご、け、る、か、い)」
あたしは必死に考える。
どのくらい自分が動けるか。
足手纏いにならない為に、どこまで動くべきか。
「得体の知れないモノに命を預けたくないってのは同感だぜ。で、匣は誰が何の為に創ったか分かったかい?」
「答えるつもりはないな。僕は機嫌が悪いんだ。」
「それは…仲間の守護者の無様な姿のせいか?それとも…」
γがあたしにキューを押し付ける。
『うっ……!』
「この女に身の危険が迫っているからか?」
「放せって言ったんだけど、伝わらなかったみたいだね。」
恭弥は雲の装飾がされた匣と、リングを取り出した。
「君は並盛の風紀を汚した。僕が大切にしてると知ってて、檸檬を人質にとった。だから怒ってるんだ。」
「風紀……?」
γが鼻で笑う。
あたしはその隙に、恭弥に口パクで伝えた。
---『(す、こ、し、な、ら)』
「まぁいいさ、敵の守護者の撃墜記録を更新するのは嬉しい限りだ。俺も、男の子なんでね。」
狐が出るより少し早く、恭弥の匣から何かが出て来た。
γも匣を開ける際に少しだけ腕を緩める。
『(今だっ!)』
あたしは力を振り絞って、γの腕を払いのけ、
半ば這うようにして距離を取る。
「まだ動けたとは…驚きだな。」
γは追って来なかった。
あたしが捕まってる状態でも恭弥が匣を使ったから、人質としての価値がないと判断したんだろう。
見れば、γの狐とぶつかっているのはハリネズミだと分かる。
『すごい…』
腕の力も無くなって、崩れ落ちるあたし。
と、その時。
ふわっ、
『え……?』
ぎゅ、と温かい感触。
止めていたハズなのに再び溢れる涙。
「檸檬……」
『恭弥……恭弥ぁ………』
ぎゅぅ、と服を掴む事も出来ないまま、恭弥に寄りかかって本物だって実感する。
すると恭弥は、あたしを近くの柱にもたれさせて、
「ここにいて、檸檬。」
と。
その間、狐とぶつかるハリネズミを見て、γが言う。
「ハリネズミとは可愛いが、何てパワーだ……これだけの匣ムーブメントをよくそんな三流リングで動かせる。」
「僕は君たちとは生き物としての性能が違うのさ。」
次の瞬間、恭弥の指にあったリングが砕け散った。
これにはγも驚きを隠せず眉を動かす。
『恭弥…』
「心配ないよ、檸檬。すぐ終わる。」
あたしの頭を一撫でして、恭弥はγと向き合う。
「さぁ僕らも、始めよう。」
新しいリングに炎を灯し、匣に差し込んだ。
と、中から出て来たのは彼特有の武器。
『トンファー……』
紫色の炎が灯るそれを、恭弥は両手に持って構える。
そして、始まった。
ガキキキッ、
γのキューと、恭弥のトンファーがぶつかり合う。
その音は辺りに響いて、あたしも息を飲む。
同時に、まだ実感が沸かないと思ってる自分もいた。
『(恭弥だ……ホントに10年後の恭弥だ……)』
何だかまだ夢の中みたいで、
ふわふわして、ポーッとする。
---
「(こいつぁハンパねぇ。)」
次第に追いつめられるγは、雲雀の攻撃を予測してマーレリングに炎を灯した。
が、
バキッ、
防御の為の炎はほとんど意味をなさず、トンファーでの一撃をもろに喰らう。
「(硬度で勝る雷の炎を、雲の炎で破っただと……!?)」
ふっ飛ばされ、地面に叩き付けられるγ。
雲雀は少しだけ歩み寄る。
「立ちなよ、上手くダメージを逃がしたね。」
白い煙の中から、ゆっくり起き上がるγ。
その周りには、獄寺と山本、そして檸檬を追いつめたビリヤードの球が浮く。
「ふ~~~、さすがだ。もし守護者だったら最強だって噂も本当らしいな。」
それを見た檸檬は叫ぶ。
『恭弥!その球、気をつけてっ…!!』
「あぁ、まだ口が利けたんだな。ならさっさと終わらせて連れ帰らなくちゃなぁ。」
ニヤリと笑うγに、檸檬は少し身震いする。
「君、僕を倒せると思ってるのかい?」
「そう聞こえなかったか?」
「無理だよ。」
「ハハッ、こりゃぁ楽しくなって来やがったぜ。」
γがキューで球を突いた。
檸檬はグッと拳を握る。
本当に力を使い切ってしまった檸檬は、もう片腕も動かせない状態だった。
『(恭弥っ……)』
---
-----
-----------
同じ頃、神社へと向かっていたツナは、ラルに問いかけた。
「あの、さっき檸檬の双子の妹って…」
「あぁ。」
ラルの声が、少し小さくなる。
ツナは走りながらその表情を窺おうとするも、ゴーグルがそれをさせない。
すると、ラルの方から口を開いた。
「檸檬の双子の妹は、知ってるな?」
「はい…確か一度だけ会った事が……」
ツナは、檸檬を捨てた家族と対面した時の事を思い出す。
「檸檬の妹、雨宮蜜柑は……現在ミルフィオーレのボス補佐をやっている。」
「ミルフィオーレの…!!?」
「部隊長ではないがそれと同等の権限を持つ。精製度Aのリングは所持していないが、それと同等の戦闘力を持つ。」
ラルの言葉に、ツナは黙り込む。
「通り名は、LIGHT(ライト)。」
“どうして”という言葉は、すぐに飲み込まれた。
少し考えを巡らせれば、分かる事。
「檸檬を殺す為に…?」
「そうだ。」
「そんな……」
それから、2人の間には沈黙が流れ続けた。
---
-----
----------
カッ、
カカッ、
突かれた球が他の球を弾いて、恭弥の周りを囲んでいく。
雷の炎で出来た線が、恭弥の動きを制限する。
『恭弥っ…!』
「あいにくこのショットの軌道には、人が生きられるだけの隙間が無いんだ。」
口角を上げてそう言うγに、恭弥は球を避けながら返す。
「それはどうかな。」
その左手のトンファーには、紫色の炎が集まっていく。
読んでる…
恭弥はγのショットの軌道を読んでるんだ…!
それを知らないγは、
「3番ボール。」
と。
すると、彼の言う通りに3番ボールが恭弥に真直ぐぶつかった。
「ぐっ、」
「ビンゴ。」
『恭弥ぁっ!!』
ガードをした左手から、血が噴き出す。
怖くなって、思わず叫ぶ。
でも恭弥は、何事も無かったかのようにγの方へ走って行く。
「確かに全ては避け切れそうにない。だから当たるのは、この一球だけって決めたのさ。」
その言葉を聞いて、あたしもγも目を見開いた。
「(一瞬にして最低限のダメージで済むルートを見切ったのか………)」
『(だから最初に炎を左側に……)』
「もう逃がさないよ。」
「ふっ…それとこれとは話が別だ。」
突っ込んで来た恭弥が振るうトンファーを、γはブーツの炎の推進力によってかわす。
『空中!?』
「残念だな。」
そんなの卑怯だと思ったけど、恭弥は何も言わない。
見上げようともしなかった。
『(え…?)』
不思議に思ったあたしが見上げると同時に、
γは口から深紅の液体を吐く。
「な………なんだぁ…?こりゃあ……」
そこでやっと、始めに繰り出された狐とハリネズミの戦いの結末が分かった。
大きな針付きの球体となったハリネズミは二匹の狐を刺し、更にγも刺していた。
『な、に…?』
凄過ぎて、何だか分からない。
とりあえずγと狐は身動きが取れない状態になったみたい。
「言ったはずだよ、逃がさないって。」
『恭弥…』
恭弥は全部計算してたのかな。
自分の攻撃を避けきれなくなったγが、飛び上がる事、
そしてその時にはもう、ハリネズミがこうして針を用意してるって事。
「君の狐の炎を元に、彼がこれだけの針を発生させたんだ。まるで雲が大気中の塵を元に発生して拡がるようにね。」
それを聞いたγは、途切れ途切れに言う。
「そーか…雲属性の匣の特徴は……増殖………だったな…」
どうやら匣には属性毎に特徴があるらしい。
タタタタ…
『ん…?』
ふと、遠くから近づいて来る足音を、あたしの耳がキャッチする。
2種類に聞き分けられるソレは、きっと味方。
「こんな有機物を増殖させられるなんて、うちの雲の奴からは聞いてない……」
脱力したような声で、γが言う。
「ナンセンスな匣だぜ……」
「素晴らしい力さ、故に興味深い。」
匣を見つめながら、恭弥は言った。
そして、2つの足音もすぐそこに。
「さぁ、終わるよ。」
口元に緩い笑みを浮かべて、恭弥はトンファーを構える。
同時に、近くの茂みがガサガサと揺れて、
「あれは!!」
思った通りの2人・ツナとラルが顔を見せる。
『(元気そうだ…良かった……)』
ふっと笑みをこぼすあたし。
対して恭弥は、
「遅過ぎるよ君達。」
と、嘲笑とも取れるような表情を見せる。
そしてγも、
「あのガキは……」
散々あたしや隼人に拷問しただけあって、
やっぱり気がついた。
「………まさかな。」
若さに驚いたのか、
それとも、
生きている事に驚いたのか。
恭弥は、増殖した針の生えてる板状のモノに乗る。
それを何段かジャンプして登っていき、γが刺さっている高さまで到達する。
『(決まる…)』
あれだけ隼人や武、あたしも苦戦した相手を、
こんなに簡単に。
ガッ、
恭弥のトンファーが叩き込まれて、
γは夥しい量の血を吐いた。
同時に、
ぐらっ…
『(あ…れ……?)』
物凄い目眩に襲われて、
あたしはその場で気を失った。