未来編①
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追いつめられる少女には、
少しずつ変化が訪れ……
それが、
幸か不幸かは誰も知らない。
コンビネーション
「京子ちゃん!!」
「ツナ君!!」
黒川花の家でかくまってもらっている京子に会いに来たツナ。
入って来たツナを見て、花は違和感を覚え、
京子は謝罪する。
「あ、気にしないでっ。いいニュースがあるんだ!ヒバードが現れたんだよ!!」
「ヒバード…?」
「それって…」
花が何か言いかけたと同時に、ラルがツナを急かす。
「急ぐぞ沢田!」
「あ!」
京子の無事は確認された。
次に行かなくてはいけないのは、γと戦っている獄寺と山本の所。
「ごめん黒川…さん、もう少しの間京子ちゃんをかくまってくれないかな?」
「そりゃいいけど…」
「ありがと!ヒバードの事で行かなくちゃいけないんだ!!」
ドアを開けて外に出ようとするツナ。
ところが、ふと京子が呼び止める。
「ツナ君!」
「え?」
「あの…私……さっき檸檬ちゃんにそっくりな人に会ったの…!」
その言葉に、ツナだけでなくラルも驚いた。
「ど、どういう事…?檸檬は今アジトに残って…」
「まさか、出て来たのか?」
「私が“檸檬ちゃん?”って聞いたら、その人…違うって言って…どっかに走って行っちゃったの。」
それを聞いて、ラルはほんの少し目を見開いた。
「おい、その女は…まさか白い服で2つ分けの…」
「あ、はい。確かそうだったと思います。」
「え?ラル・ミルチ…どうして分かったんですか…?」
不安そうに聞くツナに、ラルは何も答えなかった。
くるりと京子達に背を向け、ドアのぶを握る。
「行くぞ、沢田。」
「え、あ、はい!!じゃあ、ありがと京子ちゃん、黒川さん。また後でっ!」
閉じられたドアを、京子と花はしばらく見つめていた。
---
-----
----------
「で、どーする?」
林の中。
2人でγに挑むと決めた獄寺に、山本が問う。
「俺がぶっ放してヤツの頭を抑える。降りて来たところをぶった斬れ。」
「オッケー、お前にしちゃ意外とアバウトだな。」
「まずは……だ。」
獄寺の事を信じて、山本は答える。
「わーった、そんじゃ少しでもお前がぶっ放し易くしねーとな。」
そこで、γが口を開いた。
「さすがに俺ももう待てそうにない。次の休みはあの世でとってくれ。」
「あぁ、待たせたな。」
言いながら、匣にリングを差し込む山本。
「行くぜ!!」
同時に、γに向かってツバメが飛び出した。
真直ぐ向かって来るツバメに、γはビリヤードの球を一つ当てる。
その間に地面を走っていた獄寺は、γの左サイドから“赤炎の矢”を放つ。
「おい、何度言えば分かる。」
いとも簡単に、電磁バリアで防ぐγ。
が、同時に…
シュッ、
シュシュッ、
「今だ、上がれ!!」
予め獄寺が仕掛けておいたロケットボムが、四方八方からγに向かって飛んできた。
「(追尾型…?いや、曲がるのか。)」
ドガガガガ…
上空で、物凄い爆発が起きる。
やむを得ず地面に降り立ったγ。
そこに突っ込んできたのは、
「もらい!!」
山本だった。
「なるほど、アイデアはいい。………惜しいな。」
γは顔色一つ変えずにもう一つの匣にリングを差し込んだ。
出て来たのは…
電狐(エレットロ・ヴォールビ)
「キツネ(ヴォールビ)!?」
---
-----
-----------
チュインッ、
『くっ…!』
蜜柑の銃弾が、どんどん早くなってる…
違う、
あたしが遅くなってるんだ。
破壊の死ぬ気弾は思ったよりも厄介。
向かっていくモノを全て破壊しちゃうんだもの。
「もう諦めたら?その右足、限界なんじゃない?」
蜜柑が嘲笑うかのように言う。
あたしはそれでも避け続けて。
『冗談っ…!』
限界だよ。
右足の痛みが嫌って程伝わって来るよ。
だけどね、
それだけの理由で逃げるなんて、
『あたしはそんなにっ…ヤワじゃないのよっ!!』
「…強がっちゃって。」
あぁでも…
そろそろ俊足をやめないとリバウンドが来る。
こうなったら…
『(逃げるのはやめて、立ち向かうしかない…か!)』
あたしはギュッと足を止めた。
「何のつもり?覚悟が出来たのかしら。」
『えぇ…出来たわ。』
蜜柑は構わず撃ち続ける。
あたしは神経を手に集中させて、ナイフを投げた。
『(届けっ…!)』
真直ぐあたしに向かってくる銃弾。
その側面に、ナイフが掠る。
チッ、
小さく擦れる音がして、銃弾のルートが変わった。
「防ぎきれてないじゃない。」
バカにする蜜柑。
だけど、ルートが少し変われば、あたしは簡単に避けられる。
俊足を使わなくても。
『油断してると、痛い目見るんじゃない?』
「何を………………!!?」
蜜柑は油断してた。
それは確実。
だから、分からなかったんだ。
あたしの投げたナイフの本数が、
蜜柑が撃った銃弾の個数より、
一本多かったなんて。
「(多い…!!)」
一本だけ、真直ぐ蜜柑に向かうナイフ。
反応した蜜柑は、ナイフに向かって銃を撃つ。
『…無駄よ。』
チュインッ、
キィンッ、
ザシュッ…
「つっ…!」
ナイフは、銃弾を弾いて蜜柑の左腕に刺さった。
『やっぱりね♪』
他のナイフを手早く回収し、蜜柑を見上げた。
腕を押さえて、こっちを睨む蜜柑。
「何を…」
『破壊の死ぬ気弾だって、所詮は銃弾って事よ。』
銃弾としての性質は、変わらない。
「確かに、ナイフは面じゃないわね。」
『そーゆー事よ。』
銃弾が突き抜けるのは、そこに“面”があるから。
真直ぐに向かって来るナイフは、平面じゃなくて…ただの点。
「わざわざ私が一気に何発も撃つのを狙ってたのね。」
『じゃないと、ナイフが一本多い事に気がついちゃうでしょ?』
注意を逸らして反応を遅れさせたからこそ、
蜜柑の射撃の腕があってもナイフの点を正確に狙い撃ち出来なかった。
「でも…その手が通じるのは一回きりだわ。」
『えぇ、分かってる。』
けど、
あたしにとって有利な点がある事も分かった。
---
------
姉さんの目が、生気を取り戻した。
どう考えても私の方が有利な状況なのに。
「気が変わったわ。」
あの目を見てると、憎たらしくて堪らなくなる。
そう、あの時も…
私がボンゴレ本部で姉さんを捕らえた時も、
あの目をしていた。
---「何よ、その目。」
---『……伝わって来るのよ。』
もう誰も生き残っていないボンゴレ本部で、
姉さんと私が対峙していた。
周りには、それまで姉さんを足止めし続けていたミルフィオーレの者達。
---『不思議ね…。これだけ敵がいるのに、どうしてか……』
目を閉じて、もう一度開いた時、
その瞳が様子を変えた。
---『……負ける気がしないのよ。』
姉さんの目が変わる時、
それは、
自分にとって有利な状況を見いだせた時。
「(させないわ…。)」
銃とナイフで戦う時、
ナイフで銃は弾けるけど、
銃でナイフを弾く事は出来ない。
『気が…変わった?』
「それ以上ダメージを負わせてしまったら、姉さん死んじゃうから。」
『何言って…』
「もう、終わりにするわ。」
蜜柑はポケットから匣を取り出した。
あの中に入ってるのが銃じゃないって事くらいは、雰囲気で察せる。
カチッ、
ボワンッ、
出て来たのは、小さな卵型の物体。
「さぁ、いつまで逃げられるかしらね?」
次の瞬間、
ビュンッ、
『わ……っと、』
それはあたしを追いかけ始めた。
---
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完全に空いたと思っていたのに、匣から出て来た電狐によって防御が固められる。
「近づけば感電死だ。」
「くっ…」
少し躊躇う俺に、獄寺が叫んだ。
「突っ込め山本!!」
この状況で、どうしてそんな風に言うのか。
それは俺にも分からなかった。
けど、
さっき獄寺の作戦に同意したんだ。
獄寺の事を信じると決めた。
だから…
「あぁ!」
歯を食いしばって足を進める。
γが言った。
「そいつは信頼とは言わねぇ、無謀ってモンだ。嵐の守護者、お前の弾も効かないぜ。」
「減らず口がいつまでも…」
獄寺は武器をカチカチと操作する。
「ボンゴレ舐めんじゃねぇ!!」
次の瞬間発射されたのは、対野猿の時に放った拡散ボムだった。
「(炎が飛んだ!?)」
「(行け山本!!)」
ダメージは一切与えないが、防御の炎をなくす事が出来たのは確実。
「(時雨蒼燕流 攻式八の型------)」
篠突く雨!!
山本の刀が、γを吹っ飛ばす。
ドサッと地面に落ちたγは、ピクリとも動かなかった。
「ふー、やったな!ちいっとヒヤッとしたけどな。」
「バーカ、右腕の俺といてヒヤッとする事なんてねーんだ。」
相変わらず自信満々な獄寺の口調に、
「ぷ、アハハハハハハ!!」
「何がおかしいんだよ!!」
「別に!!」
安心して、笑い出す山本だった。
「敵の大将倒したっつったら、ツナ達驚くだろーな。」
「これくらいで逆上せんじゃねぇ!まぁ俺には10代目に報告する義務があるけどよぉ…」
2人がそんな会話をしていると…
カッ、
不意に、聞き覚えのある音がする。
それは、γがキューで球を突く音で。
ガッ、
ゴッ、
ドキャッ、
木にぶつかるビリヤードの球。
その球の軌道には、電気の線が現れて。
バチバチッ、
その電撃は、山本を囲みあらゆる場所を痛めつける。
「山本っ!!!」
なす術もなく倒れる山本。
駆け寄ろうとする獄寺に、γの声が聞こえる。
「そいつの刀が死ぬ気の炎を纏っていたら、少し喰らっていたな。」
起き上がる彼は、
ほとんど無傷。
「さて、気になる事がいくつか出て来た。」
飛ばしたはずの電狐の炎は、
回復していて。
「ボンゴレの10代目はいつ生き返ったのかな?そこんとこ口を裂いてでも教えてもらわなきゃな。」
予想外の状況に、獄寺は目を見開いた。
---
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----------
その頃、花の家からずっと裏道を走って神社へと向かうツナとラル。
「大丈夫かな、獄寺君と山本…。もっと広い通りから神社に行ければ……」
これまで、結構迂回して来た。
更なるタイムロスは望ましくないのだ。
「どうです?」
少し広い通りを覗き込むラルに、ツナは尋ねる。
「この道も敵で塞がれている。やはり神社へは大きく迂回するしかないな。」
「そんな……」
焦るツナは、ふと思い出す。
「あの…そう言えばさっき京子ちゃんの話を聞いた時…」
「檸檬に似てる女の事か?」
「あ、はい…」
「沢田も会った事があるはずだ。」
走りながらラルは言う。
付いていくツナは疑問符を浮かべた。
「俺も…?」
「もっとも、10年前の姿でだろうがな。」
「俺が会った事のある、檸檬のそっくりさんって………」
よく分からない不安が、ツナを襲う。
「“ライト”だ。」
「ライト……?」
拳を握りしめるラル。
「お前も知っているはずだ、檸檬の…双子の妹の存在を。」
---
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-----------
『何よっ…コレ!』
混乱しながらも走る檸檬。
蜜柑は、それをただ見ていた。
「逃げてもダメ、攻撃もダメ。どうする?姉さん。」
『この卵……!』
どうやらそれは、追跡専門らしい。
先程から攻撃こそしないが、檸檬を追いかけ続けている。
そして、檸檬が苦し紛れに投げるナイフも……
キィンッ、
いとも簡単に弾き、傷一つ付かない。
『プラスチック…』
「正確には、私の炎の熱で表面をコーティングした球体よ。エネルギー源も、私の炎。」
普通、与えられた炎の分しか匣は仕事をしない。
なのに、それは檸檬を追いかけ続ける。
「そろそろかしら…」
チュインッ、
ギュウウン……
『(また…!)』
先程からそれが動きを止めないのは、
時折行われるエネルギー補充、
つまり、炎が乗せられた蜜柑の弾を受けているからだった。
『(これじゃ…埒があかないっ……)』
そんな事は分かっていても、今の檸檬には蜜柑に攻め寄る程の体力がない。
追いつめられる度に、俊足を使う。
少しずつだが、やはり負担になっているようだ。
「もうすぐ…終わりかしら?」
『何言ってんのよ…こんな…攻撃もしない卵なんかで…何が出来るワケ?』
息を切らしながら反論する檸檬に、蜜柑は言った。
「その卵に触れたらお終いなのよ。対象物の大きさを瞬時に判断し、覆い尽くすカプセルに変化するわ。」
『…そーゆー事なの。』
「捕まらないように、頑張るのね。じゃないと、二度と出られなくなっちゃうわよ?」
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「10年前からこの時代にねぇ……本当に、夢としか思えない話ね。」
花に出来る限りの事情説明をした京子。
「まぁでも、ここにいる京子とあんな沢田を見ちゃったら、信じるしかないわね。」
「花……ありがとう!」
自分でも、狙われている理由は分からない。
この時代の混乱を避ける為に、警察に相談するワケにもいかない。
「本当、沢田って何者なんだろうね……?」
京子の話を聞いた花は、ふとそんな事を呟いた。
「え?」
「ん、何でもないっ。そーだ、アニキの言づてね!」
花は近くの棚から何かの紙を取り出し、京子に言う。
「笹川了平は、仕事で海外出張中よ。」
「お兄ちゃん、外国にいるの?」
「そう、オカマに会いに。」
「オカマ?」
「あ…えーっとオカマもいる相手先だったかな…。」
急な上司の命令で外国に行く事になった了平は、
ゼミの合宿中だった京子にその事を伝えようと、花に伝言を頼んだそうだ。
花が持っていた紙は、了平の滞在先のホテルがメモしてある。
何度か連絡したのだが、戻っていないそうだ。
「京子に何かあったら、沢田に伝えてくれって頼まれたの。」
「ツナ君に?」
「そうよ。何があるのかと思ったら黒ずくめの連中があんたを狙ってて…沢田に連絡したけど繋がらなかったわ。」
ところが、了平はその事態も予測していたのか、花にもう一つの連絡先を教えておいたらしい。
「もう一つの連絡先……?」
「さっき沢田、ヒバードがどーとか言ってたでしょ?あれ多分、私が“そこ”に連絡したのが関係してると思うよ。」
「そこ………?」
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力を振り絞って。
あたしはまだやれる。
大丈夫。
避けなきゃ、
逃げなきゃ、
---「無理して勝とうと思わねーで、危機を感じたら逃げろ。」
分かってるよ。
まだ……大丈夫。
---「檸檬が無理する事で傷つく仲間がいる事を、忘れんなよ。」
リボーン…
あたし…
今はまだ、蜜柑に勝てないのかも知れない。
それどころか、逃げ切れるかも分からないよ。
「どしたの?隙だらけだわ。」
ズキュンッ、
『あっ……!!』
撃たれた…。
右足のギプスが…
壊れた……。
終わりなの?
嫌だよ。
---「お前、何故動けるんだ!?」
折角あの場所から逃げて、
---「悪ぃ…守れなくて………」
やっと合流して、
---「どーする?リング使えなくても戦うのか?」
---『勿論っ♪』
護るって、決めたのに………!!
「お疲れさま、姉さん。」
助けて、
痛いよ、
怖いよ、
誰か………。
右足が、動かない。
何も出来ずに、その場に倒れる。
誰か…
誰か…………
ボールが迫るのが分かる。
蜜柑の笑みが見える。
助けて、
助けて、
怖いよっ………
『恭弥ぁーーっ!!!』
---
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神社付近の林の中、
黄色いトリが、一人の男の肩に止まった。
「久しぶりだな………並盛。」
少しずつ変化が訪れ……
それが、
幸か不幸かは誰も知らない。
コンビネーション
「京子ちゃん!!」
「ツナ君!!」
黒川花の家でかくまってもらっている京子に会いに来たツナ。
入って来たツナを見て、花は違和感を覚え、
京子は謝罪する。
「あ、気にしないでっ。いいニュースがあるんだ!ヒバードが現れたんだよ!!」
「ヒバード…?」
「それって…」
花が何か言いかけたと同時に、ラルがツナを急かす。
「急ぐぞ沢田!」
「あ!」
京子の無事は確認された。
次に行かなくてはいけないのは、γと戦っている獄寺と山本の所。
「ごめん黒川…さん、もう少しの間京子ちゃんをかくまってくれないかな?」
「そりゃいいけど…」
「ありがと!ヒバードの事で行かなくちゃいけないんだ!!」
ドアを開けて外に出ようとするツナ。
ところが、ふと京子が呼び止める。
「ツナ君!」
「え?」
「あの…私……さっき檸檬ちゃんにそっくりな人に会ったの…!」
その言葉に、ツナだけでなくラルも驚いた。
「ど、どういう事…?檸檬は今アジトに残って…」
「まさか、出て来たのか?」
「私が“檸檬ちゃん?”って聞いたら、その人…違うって言って…どっかに走って行っちゃったの。」
それを聞いて、ラルはほんの少し目を見開いた。
「おい、その女は…まさか白い服で2つ分けの…」
「あ、はい。確かそうだったと思います。」
「え?ラル・ミルチ…どうして分かったんですか…?」
不安そうに聞くツナに、ラルは何も答えなかった。
くるりと京子達に背を向け、ドアのぶを握る。
「行くぞ、沢田。」
「え、あ、はい!!じゃあ、ありがと京子ちゃん、黒川さん。また後でっ!」
閉じられたドアを、京子と花はしばらく見つめていた。
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「で、どーする?」
林の中。
2人でγに挑むと決めた獄寺に、山本が問う。
「俺がぶっ放してヤツの頭を抑える。降りて来たところをぶった斬れ。」
「オッケー、お前にしちゃ意外とアバウトだな。」
「まずは……だ。」
獄寺の事を信じて、山本は答える。
「わーった、そんじゃ少しでもお前がぶっ放し易くしねーとな。」
そこで、γが口を開いた。
「さすがに俺ももう待てそうにない。次の休みはあの世でとってくれ。」
「あぁ、待たせたな。」
言いながら、匣にリングを差し込む山本。
「行くぜ!!」
同時に、γに向かってツバメが飛び出した。
真直ぐ向かって来るツバメに、γはビリヤードの球を一つ当てる。
その間に地面を走っていた獄寺は、γの左サイドから“赤炎の矢”を放つ。
「おい、何度言えば分かる。」
いとも簡単に、電磁バリアで防ぐγ。
が、同時に…
シュッ、
シュシュッ、
「今だ、上がれ!!」
予め獄寺が仕掛けておいたロケットボムが、四方八方からγに向かって飛んできた。
「(追尾型…?いや、曲がるのか。)」
ドガガガガ…
上空で、物凄い爆発が起きる。
やむを得ず地面に降り立ったγ。
そこに突っ込んできたのは、
「もらい!!」
山本だった。
「なるほど、アイデアはいい。………惜しいな。」
γは顔色一つ変えずにもう一つの匣にリングを差し込んだ。
出て来たのは…
電狐(エレットロ・ヴォールビ)
「キツネ(ヴォールビ)!?」
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チュインッ、
『くっ…!』
蜜柑の銃弾が、どんどん早くなってる…
違う、
あたしが遅くなってるんだ。
破壊の死ぬ気弾は思ったよりも厄介。
向かっていくモノを全て破壊しちゃうんだもの。
「もう諦めたら?その右足、限界なんじゃない?」
蜜柑が嘲笑うかのように言う。
あたしはそれでも避け続けて。
『冗談っ…!』
限界だよ。
右足の痛みが嫌って程伝わって来るよ。
だけどね、
それだけの理由で逃げるなんて、
『あたしはそんなにっ…ヤワじゃないのよっ!!』
「…強がっちゃって。」
あぁでも…
そろそろ俊足をやめないとリバウンドが来る。
こうなったら…
『(逃げるのはやめて、立ち向かうしかない…か!)』
あたしはギュッと足を止めた。
「何のつもり?覚悟が出来たのかしら。」
『えぇ…出来たわ。』
蜜柑は構わず撃ち続ける。
あたしは神経を手に集中させて、ナイフを投げた。
『(届けっ…!)』
真直ぐあたしに向かってくる銃弾。
その側面に、ナイフが掠る。
チッ、
小さく擦れる音がして、銃弾のルートが変わった。
「防ぎきれてないじゃない。」
バカにする蜜柑。
だけど、ルートが少し変われば、あたしは簡単に避けられる。
俊足を使わなくても。
『油断してると、痛い目見るんじゃない?』
「何を………………!!?」
蜜柑は油断してた。
それは確実。
だから、分からなかったんだ。
あたしの投げたナイフの本数が、
蜜柑が撃った銃弾の個数より、
一本多かったなんて。
「(多い…!!)」
一本だけ、真直ぐ蜜柑に向かうナイフ。
反応した蜜柑は、ナイフに向かって銃を撃つ。
『…無駄よ。』
チュインッ、
キィンッ、
ザシュッ…
「つっ…!」
ナイフは、銃弾を弾いて蜜柑の左腕に刺さった。
『やっぱりね♪』
他のナイフを手早く回収し、蜜柑を見上げた。
腕を押さえて、こっちを睨む蜜柑。
「何を…」
『破壊の死ぬ気弾だって、所詮は銃弾って事よ。』
銃弾としての性質は、変わらない。
「確かに、ナイフは面じゃないわね。」
『そーゆー事よ。』
銃弾が突き抜けるのは、そこに“面”があるから。
真直ぐに向かって来るナイフは、平面じゃなくて…ただの点。
「わざわざ私が一気に何発も撃つのを狙ってたのね。」
『じゃないと、ナイフが一本多い事に気がついちゃうでしょ?』
注意を逸らして反応を遅れさせたからこそ、
蜜柑の射撃の腕があってもナイフの点を正確に狙い撃ち出来なかった。
「でも…その手が通じるのは一回きりだわ。」
『えぇ、分かってる。』
けど、
あたしにとって有利な点がある事も分かった。
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姉さんの目が、生気を取り戻した。
どう考えても私の方が有利な状況なのに。
「気が変わったわ。」
あの目を見てると、憎たらしくて堪らなくなる。
そう、あの時も…
私がボンゴレ本部で姉さんを捕らえた時も、
あの目をしていた。
---「何よ、その目。」
---『……伝わって来るのよ。』
もう誰も生き残っていないボンゴレ本部で、
姉さんと私が対峙していた。
周りには、それまで姉さんを足止めし続けていたミルフィオーレの者達。
---『不思議ね…。これだけ敵がいるのに、どうしてか……』
目を閉じて、もう一度開いた時、
その瞳が様子を変えた。
---『……負ける気がしないのよ。』
姉さんの目が変わる時、
それは、
自分にとって有利な状況を見いだせた時。
「(させないわ…。)」
銃とナイフで戦う時、
ナイフで銃は弾けるけど、
銃でナイフを弾く事は出来ない。
『気が…変わった?』
「それ以上ダメージを負わせてしまったら、姉さん死んじゃうから。」
『何言って…』
「もう、終わりにするわ。」
蜜柑はポケットから匣を取り出した。
あの中に入ってるのが銃じゃないって事くらいは、雰囲気で察せる。
カチッ、
ボワンッ、
出て来たのは、小さな卵型の物体。
「さぁ、いつまで逃げられるかしらね?」
次の瞬間、
ビュンッ、
『わ……っと、』
それはあたしを追いかけ始めた。
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完全に空いたと思っていたのに、匣から出て来た電狐によって防御が固められる。
「近づけば感電死だ。」
「くっ…」
少し躊躇う俺に、獄寺が叫んだ。
「突っ込め山本!!」
この状況で、どうしてそんな風に言うのか。
それは俺にも分からなかった。
けど、
さっき獄寺の作戦に同意したんだ。
獄寺の事を信じると決めた。
だから…
「あぁ!」
歯を食いしばって足を進める。
γが言った。
「そいつは信頼とは言わねぇ、無謀ってモンだ。嵐の守護者、お前の弾も効かないぜ。」
「減らず口がいつまでも…」
獄寺は武器をカチカチと操作する。
「ボンゴレ舐めんじゃねぇ!!」
次の瞬間発射されたのは、対野猿の時に放った拡散ボムだった。
「(炎が飛んだ!?)」
「(行け山本!!)」
ダメージは一切与えないが、防御の炎をなくす事が出来たのは確実。
「(時雨蒼燕流 攻式八の型------)」
篠突く雨!!
山本の刀が、γを吹っ飛ばす。
ドサッと地面に落ちたγは、ピクリとも動かなかった。
「ふー、やったな!ちいっとヒヤッとしたけどな。」
「バーカ、右腕の俺といてヒヤッとする事なんてねーんだ。」
相変わらず自信満々な獄寺の口調に、
「ぷ、アハハハハハハ!!」
「何がおかしいんだよ!!」
「別に!!」
安心して、笑い出す山本だった。
「敵の大将倒したっつったら、ツナ達驚くだろーな。」
「これくらいで逆上せんじゃねぇ!まぁ俺には10代目に報告する義務があるけどよぉ…」
2人がそんな会話をしていると…
カッ、
不意に、聞き覚えのある音がする。
それは、γがキューで球を突く音で。
ガッ、
ゴッ、
ドキャッ、
木にぶつかるビリヤードの球。
その球の軌道には、電気の線が現れて。
バチバチッ、
その電撃は、山本を囲みあらゆる場所を痛めつける。
「山本っ!!!」
なす術もなく倒れる山本。
駆け寄ろうとする獄寺に、γの声が聞こえる。
「そいつの刀が死ぬ気の炎を纏っていたら、少し喰らっていたな。」
起き上がる彼は、
ほとんど無傷。
「さて、気になる事がいくつか出て来た。」
飛ばしたはずの電狐の炎は、
回復していて。
「ボンゴレの10代目はいつ生き返ったのかな?そこんとこ口を裂いてでも教えてもらわなきゃな。」
予想外の状況に、獄寺は目を見開いた。
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その頃、花の家からずっと裏道を走って神社へと向かうツナとラル。
「大丈夫かな、獄寺君と山本…。もっと広い通りから神社に行ければ……」
これまで、結構迂回して来た。
更なるタイムロスは望ましくないのだ。
「どうです?」
少し広い通りを覗き込むラルに、ツナは尋ねる。
「この道も敵で塞がれている。やはり神社へは大きく迂回するしかないな。」
「そんな……」
焦るツナは、ふと思い出す。
「あの…そう言えばさっき京子ちゃんの話を聞いた時…」
「檸檬に似てる女の事か?」
「あ、はい…」
「沢田も会った事があるはずだ。」
走りながらラルは言う。
付いていくツナは疑問符を浮かべた。
「俺も…?」
「もっとも、10年前の姿でだろうがな。」
「俺が会った事のある、檸檬のそっくりさんって………」
よく分からない不安が、ツナを襲う。
「“ライト”だ。」
「ライト……?」
拳を握りしめるラル。
「お前も知っているはずだ、檸檬の…双子の妹の存在を。」
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『何よっ…コレ!』
混乱しながらも走る檸檬。
蜜柑は、それをただ見ていた。
「逃げてもダメ、攻撃もダメ。どうする?姉さん。」
『この卵……!』
どうやらそれは、追跡専門らしい。
先程から攻撃こそしないが、檸檬を追いかけ続けている。
そして、檸檬が苦し紛れに投げるナイフも……
キィンッ、
いとも簡単に弾き、傷一つ付かない。
『プラスチック…』
「正確には、私の炎の熱で表面をコーティングした球体よ。エネルギー源も、私の炎。」
普通、与えられた炎の分しか匣は仕事をしない。
なのに、それは檸檬を追いかけ続ける。
「そろそろかしら…」
チュインッ、
ギュウウン……
『(また…!)』
先程からそれが動きを止めないのは、
時折行われるエネルギー補充、
つまり、炎が乗せられた蜜柑の弾を受けているからだった。
『(これじゃ…埒があかないっ……)』
そんな事は分かっていても、今の檸檬には蜜柑に攻め寄る程の体力がない。
追いつめられる度に、俊足を使う。
少しずつだが、やはり負担になっているようだ。
「もうすぐ…終わりかしら?」
『何言ってんのよ…こんな…攻撃もしない卵なんかで…何が出来るワケ?』
息を切らしながら反論する檸檬に、蜜柑は言った。
「その卵に触れたらお終いなのよ。対象物の大きさを瞬時に判断し、覆い尽くすカプセルに変化するわ。」
『…そーゆー事なの。』
「捕まらないように、頑張るのね。じゃないと、二度と出られなくなっちゃうわよ?」
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「10年前からこの時代にねぇ……本当に、夢としか思えない話ね。」
花に出来る限りの事情説明をした京子。
「まぁでも、ここにいる京子とあんな沢田を見ちゃったら、信じるしかないわね。」
「花……ありがとう!」
自分でも、狙われている理由は分からない。
この時代の混乱を避ける為に、警察に相談するワケにもいかない。
「本当、沢田って何者なんだろうね……?」
京子の話を聞いた花は、ふとそんな事を呟いた。
「え?」
「ん、何でもないっ。そーだ、アニキの言づてね!」
花は近くの棚から何かの紙を取り出し、京子に言う。
「笹川了平は、仕事で海外出張中よ。」
「お兄ちゃん、外国にいるの?」
「そう、オカマに会いに。」
「オカマ?」
「あ…えーっとオカマもいる相手先だったかな…。」
急な上司の命令で外国に行く事になった了平は、
ゼミの合宿中だった京子にその事を伝えようと、花に伝言を頼んだそうだ。
花が持っていた紙は、了平の滞在先のホテルがメモしてある。
何度か連絡したのだが、戻っていないそうだ。
「京子に何かあったら、沢田に伝えてくれって頼まれたの。」
「ツナ君に?」
「そうよ。何があるのかと思ったら黒ずくめの連中があんたを狙ってて…沢田に連絡したけど繋がらなかったわ。」
ところが、了平はその事態も予測していたのか、花にもう一つの連絡先を教えておいたらしい。
「もう一つの連絡先……?」
「さっき沢田、ヒバードがどーとか言ってたでしょ?あれ多分、私が“そこ”に連絡したのが関係してると思うよ。」
「そこ………?」
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力を振り絞って。
あたしはまだやれる。
大丈夫。
避けなきゃ、
逃げなきゃ、
---「無理して勝とうと思わねーで、危機を感じたら逃げろ。」
分かってるよ。
まだ……大丈夫。
---「檸檬が無理する事で傷つく仲間がいる事を、忘れんなよ。」
リボーン…
あたし…
今はまだ、蜜柑に勝てないのかも知れない。
それどころか、逃げ切れるかも分からないよ。
「どしたの?隙だらけだわ。」
ズキュンッ、
『あっ……!!』
撃たれた…。
右足のギプスが…
壊れた……。
終わりなの?
嫌だよ。
---「お前、何故動けるんだ!?」
折角あの場所から逃げて、
---「悪ぃ…守れなくて………」
やっと合流して、
---「どーする?リング使えなくても戦うのか?」
---『勿論っ♪』
護るって、決めたのに………!!
「お疲れさま、姉さん。」
助けて、
痛いよ、
怖いよ、
誰か………。
右足が、動かない。
何も出来ずに、その場に倒れる。
誰か…
誰か…………
ボールが迫るのが分かる。
蜜柑の笑みが見える。
助けて、
助けて、
怖いよっ………
『恭弥ぁーーっ!!!』
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神社付近の林の中、
黄色いトリが、一人の男の肩に止まった。
「久しぶりだな………並盛。」