未来編①
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「ウサギが網にかかったらしい…」
「オイラ達も行くよ!」
連絡を受け、向かおうとするγに、野猿が言う。
が、
「いいや、俺一人で十分だ。別名あるまで現状維持。こういう時は、他のウサギもかかりやすい。それに…」
その靴が電気のような炎を帯びれば、γの体は宙に浮く。
「それに、ホワイトスペルの女がうろついてるらしいからな…大人数で動いてこちらの動向を読まれちゃマズい。」
待ち受ける者
道の真ん中で口を塞がれた京子。
追っ手に捕われたのかと焦る彼女の耳に入ったのは、
「静かに…騒ぐとあいつらに見つかるよ!」
何処か懐かしい声で。
「にしても、あんたいつ髪切ったの?」
不思議に思う京子の口元から、手が離れる。
振り向いて見れば、
「あっれー?京子……あんた縮んだ?」
髪の長さこそ違うものの、面影ですぐに識別出来た。
「間違いない…10年後の…」
安心感からか、目には涙が滲む。
そのまま勢い良く抱きついた。
「花~~~!!」
「何か顔も幼くなったような……」
感動の再会を味わっている時間はなく、花はすぐ真剣に話をし始める。
「黒い格好したヤバい連中があんたの事探し回ってんだから!」
「………うん。」
「とにかく!うちにおいで、あんたの兄貴からの言づてもあるし。」
「お兄ちゃんから………?」
この世界に来て、1番心配だった自分の兄の事。
その手がかりが掴めるのかと思うと、声が跳ね上がった。
そして2人は、花の家の方へと走り出した。
---
-----
同じ頃、物陰で敵の話し声を盗み聞きしていたラル。
必要な情報が手に入ると、ツナがいる公園の方へと戻って来た。
「やはり、笹川の妹はまだ捕まっていないようだ。」
「本当ですか!?良かったー!!」
「だがこれ程の監視の中見つかっていないとすると一体……」
と、その時。
「隠れろ!!」
何かを聞き取ったラルが、突然マントで自分とツナを隠した。
その上空を飛んで行く“何か”はスパーク音を放っている。
“それ”が通り過ぎてから、ラルは言った。
「γだ!!」
「あ…あれが?」
「何か見つけたのか?あの方向は…」
γが向かって行った方向に、何があるか考える。
そしてラルはハッと気がついた。
「(まさか……!!)」
---
-----
----------
辺りには、まるでざわつく心を反映するかのように突風が吹く。
大きく目を見開く檸檬の目の前にいるのは、
檸檬とほぼ同じ顔の人物。
『ど…して……!?』
単語を言うのが精一杯だった。
そんな檸檬の様子を見て、屋根の上の彼女は手元で銃をくるくる回す。
「外しちゃったわ。」
至極楽しそうな、
嬉しそうな、
しかし悪意に満ちた笑みを見せて。
見間違えるはずがない。
識別出来ないはずがない。
さっき、
“姉さん”と呼ばれたのは、
気のせいじゃない。
ただ、何故彼女がココにいるのかが分からないだけ。
『蜜柑……!!』
忘れもしない、10年後の世界に来る前の事。
アメリカから両親と共にやって来て、
あたしの命を狙った、
双子の妹。
『アメリカに…帰ったはずじゃ……』
「いつの時代の話してるのよ。」
『でも…!』
「私はずっと姉さんを憎み続けて、追いかけてた。」
あたしを睨みつける蜜柑のツインテールが、風になびいた。
---
-----
---------
その頃。
「ここに来ると思い出すよなー、夏祭り!!あん時ゃ雲雀と初めて一緒に戦ったっけな。」
木の影に隠れながら、進んで行く獄寺と山本。
しかし、山本の言葉に獄寺が応答しない為、独り言のように聞こえる。
勝手に走り出してしまう獄寺に、山本も続く。
そして、また話しかけた。
「もしラル・ミルチの言ってた戦闘回避不能状態になったらさ、コンビプレー決めよーぜ♪」
だが、獄寺は応じない。
「やっぱ武器からして俺が前衛かな?俺がまず突っ込むから、お前その隙に……」
と、ここで漸く獄寺が振り向いた。
後ろを走る山本のトコまで数歩戻り、胸ぐらを掴む。
「勘違いしてんじゃねーぞ。」
その顔は、嫌悪感に満ちていた。
「今までなーなーでやってたのは10代目の為だからだ。他の目的でてめーと手を組む気はねぇ!!」
「………想像以上に嫌われてんのな。」
「ったりめーだ。」
「おめーみてーな悩みのねぇ能天気な野球バカは一生口をきくハズのねぇ種類の人間だ。同じ空間にいるのも嫌だね!」
「…………お前なぁ……」
山本が反論しようとした、その時。
2人の耳が、何かを聞き取る。
「んじゃお互いやりてーよーにやってみっか。」
ボンゴレリングからマモンチェーンを外す。
木の間から現れたのは、2人のブラックスペルメンバー。
黒鎌を振り回す敵だが、獄寺と山本は別々の方向へ回避する。
直後、武器を振るった敵の頬を、何かがかすめる。
「ぐっ……ツバメ!?」
と、次の瞬間。
「いまいちソイツの使い方分からねーけど……ま、いっか。」
近くの木を踏み台にして、山本が一人に斬り掛かった。
「ぐはぁ!!」
「おっ…おい!!」
慌てて呼びかけるもう一人のメンバー。
だが、ふと背後に何かの気配を感じる。
振り向いてみれば…
「そうだ、こっちだ。」
匣から取り出した武器を構える獄寺が。
「がっ…!」
炎を直に喰らった敵は、真っ逆さまに落ちた。
「今のはちょっとしたコンビプレイだな!」
「余計な事すんじゃねぇ!俺一人で充分だ!!」
そんな会話をしていると、
バチッ…
それまでとは違う、ただモノではない音。
「ボンゴレの守護者ってのは、腰を抜かして方々へ逃げたって聞いたが……」
ふと見上げると、靴に雷を帯びた金髪の男が。
「…こりゃまた、可愛いのが来たな。」
その男・γは獄寺と山本を見て呟く。
「雨と嵐の守護者に間違いないようだが…随分と写真より若い……若すぎるな………。」
そして、メローネ基地で入江に情報提供を懇願された事を思い出す。
スタッと地面に降り立つγ。
すると、すかさず獄寺が前に出た。
「こいつは俺が倒す。お前は手ー出すなよ。」
「へいへい。」
「さっきの連中への貯金もある。」
「……貯金?」
獄寺が言った“貯金”とは、近くの木や岩に設置した導火線の事。
そこからダイナマイトに着火し、一斉に爆発する。
「ほう。」
後方に避けたγ。
「行き止まりだぜ。」
それを読んでいたのか、獄寺は武器を構えて立っていた。
「果てろ。」
ドクロの口から、炎が発射された。
---
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-----------
『どうして…?その服……』
あたしは、蜜柑の着ている服を見た事があった。
10年後のこの世界に来て、1番最初に見た敵の人が着ていたモノ。
真っ白い服で、肩の所に花が彫られた装飾。
「そうよ。私、ミルフィオーレに所属してるの。」
銃を回すのは蜜柑のクセなのかな、
とか思う自分は、相当危機感が足りてない気がする。
「どうしてかは、分かるわよね?」
『あたしを、殺す為ね……』
「正解。」
にこりと笑う蜜柑は、やはり昔と変わらない。
けど、一つだけ気になる事が。
「…何か言いたそうね。」
『どうやって……どうやってあの両親から解放されたの?』
あたしに秘められた波長を読む力を恐れ、捨てた奴ら。
自分たちの利益以外は考えない奴ら。
そこからどうやって解放されたのか、やっぱり少し疑問を持った。
蜜柑は、あたしと違って捨てられていないから。
檸檬の言葉に、蜜柑はほんの少し表情を歪ませた。
「…契約破棄よ。」
『契約?』
聞き返す檸檬に、蜜柑は面倒臭そうに話し始める。
「そもそも私が2人の元に置かれていたのは、契約をしていたからよ。絶対忠誠と引き換えに、養ってもらうっていうね。」
『それを…破棄したの?』
「えぇ、7年程前に。そのくらいになれば、一人で生きていけるし。」
やはり、檸檬の思っていた通り、両親は最悪なままだった。
いつ、どんなトコでもメリットを求め続ける生き方。
ところがここで、蜜柑が突然檸檬を強く睨んだ。
「けどそれからも、私の生活が穏やかになる事は無かった。姉さんを狙う者が、私のトコに来たのよ!!」
『えっ…!?』
その声に憎悪が含まれている事は、嫌でも分かる。
「何度暗殺されそうになった事か。まぁ、かの有名なDARQを仕留めれば、物凄い報酬が貰えるでしょうし。」
『そんな…』
「だから私、思ったの。姉さんがいる限り、私に平穏は訪れない。私の命は危険に晒される。逆に…」
『あたしが消えれば、蜜柑に被害は及ばない…。』
「そう。」
.軽く頷いた蜜柑は、右手中指にあるリングからチェーンを外す。
「だから…」
ブオッ、
『なっ……!』
驚愕するのは必然。
そのリングに灯った炎は…
「……姉さんには捕虜になって貰うわ。」
ツナと同じ色。
『その…色……!!』
「珍しいんですってね、私も少し前に知ったわ。」
自分の炎を眺めながら蜜柑は言う。
そして、今まで持っていた銃を左腿に付けているケースに戻し、
代わりにベルトに付いている匣を取り出す。
『(相手が誰であれ、リング保持者ってのはマズいかもね……)』
ほんの少し後退りする檸檬。
カチッ、
匣にリングを填めた蜜柑の手には、二丁拳銃。
檸檬は一瞬にして型を見極める。
『(FMブローニング・ハイパワーと……デザートイーグルか……)』
どちらも精密射撃に有利な型。
『(圧倒的不利って事ね…)』
ついつい忘れそうになるが、自分は今右足を負傷しているのだ。
俊足がフル活用出来ない上、右足に掛かる負担を考慮しながら戦わなくてはならない。
それに、10年のハンデがあるのだ。
勿論、その事実に甘えるつもりなどサラサラ無いのだが。
「話はここまでにして、始めましょうか。」
『(やるっきゃない、か…!)』
いつものように、
頭の中でテンポを刻む。
『(CRAZY DANCER & six abilities…)』
---
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一方、γを目撃したラルとツナ。
「えぇ!?γって人が獄寺君と山本の所に!?」
「あの方向には神社以外主要な施設はない…」
「じゃあ敵に見つかったの!?ヤバいよ、どーしよう!!」
焦るツナに、
「こうも敵が多くては、すぐに助けに行くのは不可能だ。それにたとえ俺達が駆けつけて4対1になっても、γに勝てるかどうか……」
「そ、そんなに強いの!?獄寺君……!!山本!!」
.---
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神社近くの林の中に、立ちこめる煙。
その威力を見た山本は、軽く口笛を吹く。
「(手応えあり!)」
獄寺は、自信に満ちた表情で煙が晴れるのを待っていた。
が、しかし…
バチバチ、という音が聞こえた後、煙の中から現れたγは、全くと言っていい程無傷。
その手には、先ほどまで明らかに無かったビリヤードのキューが。
「なに!?」
「効いてねぇ!!」
驚く2人に、γは言う。
「そーいや自己紹介まだだったよな…。俺はγってんだ、宜しくな。」
その単語に反応する2人。
「(こいつが!)」
「(ラル・ミルチの言ってた激強っていう…)」
それまで何もしなかった山本が、前に出た。
「獄寺、ここは手ぇ組んだ方が良さそうだな。」
しかし、
「っるせぇ。」
その案への返答は、
決して良いモノではなくて。
獄寺の匣の武器が、山本に向けられた。
「獄寺…お前……!」
「組む気はねぇって言ってんだろ。すっこんでろ。」
その表情、言葉に、普段はにこやかに流す山本も…
「そーかよ!!」
眉間に皺を寄せ、きつく言い放った。
---
------
-----------
チュインッ、
チュインチュインッ、
屋根の上から振って来るような蜜柑の銃撃を、檸檬は避けるので精一杯だった。
「避けるだけ?それじゃ私には勝てないわよ。」
『分かってるわ!』
かわしながら、考えていた。
先ほどから蜜柑の弾が当たった地面は、半径10センチが抉られている。
『(どーなってんのよ………まさか!!)』
ハッと気がついた檸檬は、蜜柑に向かって俊足で詰め寄る。
「接近戦するつもり?」
蜜柑は自分に近づけまいと連射して来る。
けど、そのうち何発かをナイフで弾いた。
『(あの銃……)』
少し近づいて見れば、簡単に分かった。
『死ぬ気の炎、ね。』
「えぇ、圧縮エネルギーである死ぬ気の炎を弾に乗せてるの。これはそういう銃よ。」
ふと檸檬の頭によぎるのは、大空のリング争奪戦でザンザスが使っていたボンゴレ7代目の銃だった。
しかし、その思考を見透かしたかのように蜜柑は言う。
「普通の死ぬ気弾とは造りが違うわ。当たっても死ぬ気になるワケでもないし。」
『ボスみたいなタイプ…って解釈していいの?』
「それも、違うかもね。」
チュインッ、
蜜柑は再び撃ち始める。
『くっ…!』
檸檬が避けきれずナイフで防ごうとした、その時。
ギュルルル…
『(お…重いっ…!?)』
物凄い回転がかけられているその弾は、ナイフを突き破る勢いで檸檬に迫っていた。
咄嗟にフルパワーの剛腕を発動させ、横に弾く檸檬。
しかし…
ピキピキ…
『なっ…!』
バキィィィン…
ナイフの中央に突然ヒビが入ったかと思うと、一瞬のうちに刃の部分が砕けてしまった。
『ま、まさか…あの弾一発で……!?』
「そうよ。」
蜜柑の応答が聞こえて、檸檬は屋根を見上げる。
「私が使う死ぬ気の炎を帯びた弾は、相手を死ぬ気にさせたり身体の一部を強化したりしない…。」
それは、ある意味最も蜜柑に相応しい弾。
「私の弾は、狙撃したモノに衝撃波を与え、内部から破壊していく、“破壊の死ぬ気弾”なのよ。」
『“破壊の…死ぬ気弾”……!』
パッと見た感じでは、蜜柑のリングから出る炎がそれ程強いモノだとは思えない。
「私ね、これでも一応白蘭の近くに配属されてるの。」
『白蘭…!?』
リボーンから聞いたミルフィオーレのボスの名前。
「このリングはマーレリングじゃない2流リングだけど……構わないわ。」
リングを見つめてそう言った蜜柑は、あたしに視線を戻し、怪しく笑った。
「DARQの対…LIGHT(ライト)って呼ばれてるの、私。」
『ライト……!』
---「白蘭及びライトを退け……」
隼人の手紙に描いてあった、あの名前…!
「でも、それがDARQの双子の妹だって知る者は……数える程しかいないのよ?」
切って落とされた火蓋。
2つのファミリーを巻き込んだ、
哀しき姉妹の対決は、
まだ始まったばかり------
「オイラ達も行くよ!」
連絡を受け、向かおうとするγに、野猿が言う。
が、
「いいや、俺一人で十分だ。別名あるまで現状維持。こういう時は、他のウサギもかかりやすい。それに…」
その靴が電気のような炎を帯びれば、γの体は宙に浮く。
「それに、ホワイトスペルの女がうろついてるらしいからな…大人数で動いてこちらの動向を読まれちゃマズい。」
待ち受ける者
道の真ん中で口を塞がれた京子。
追っ手に捕われたのかと焦る彼女の耳に入ったのは、
「静かに…騒ぐとあいつらに見つかるよ!」
何処か懐かしい声で。
「にしても、あんたいつ髪切ったの?」
不思議に思う京子の口元から、手が離れる。
振り向いて見れば、
「あっれー?京子……あんた縮んだ?」
髪の長さこそ違うものの、面影ですぐに識別出来た。
「間違いない…10年後の…」
安心感からか、目には涙が滲む。
そのまま勢い良く抱きついた。
「花~~~!!」
「何か顔も幼くなったような……」
感動の再会を味わっている時間はなく、花はすぐ真剣に話をし始める。
「黒い格好したヤバい連中があんたの事探し回ってんだから!」
「………うん。」
「とにかく!うちにおいで、あんたの兄貴からの言づてもあるし。」
「お兄ちゃんから………?」
この世界に来て、1番心配だった自分の兄の事。
その手がかりが掴めるのかと思うと、声が跳ね上がった。
そして2人は、花の家の方へと走り出した。
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同じ頃、物陰で敵の話し声を盗み聞きしていたラル。
必要な情報が手に入ると、ツナがいる公園の方へと戻って来た。
「やはり、笹川の妹はまだ捕まっていないようだ。」
「本当ですか!?良かったー!!」
「だがこれ程の監視の中見つかっていないとすると一体……」
と、その時。
「隠れろ!!」
何かを聞き取ったラルが、突然マントで自分とツナを隠した。
その上空を飛んで行く“何か”はスパーク音を放っている。
“それ”が通り過ぎてから、ラルは言った。
「γだ!!」
「あ…あれが?」
「何か見つけたのか?あの方向は…」
γが向かって行った方向に、何があるか考える。
そしてラルはハッと気がついた。
「(まさか……!!)」
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辺りには、まるでざわつく心を反映するかのように突風が吹く。
大きく目を見開く檸檬の目の前にいるのは、
檸檬とほぼ同じ顔の人物。
『ど…して……!?』
単語を言うのが精一杯だった。
そんな檸檬の様子を見て、屋根の上の彼女は手元で銃をくるくる回す。
「外しちゃったわ。」
至極楽しそうな、
嬉しそうな、
しかし悪意に満ちた笑みを見せて。
見間違えるはずがない。
識別出来ないはずがない。
さっき、
“姉さん”と呼ばれたのは、
気のせいじゃない。
ただ、何故彼女がココにいるのかが分からないだけ。
『蜜柑……!!』
忘れもしない、10年後の世界に来る前の事。
アメリカから両親と共にやって来て、
あたしの命を狙った、
双子の妹。
『アメリカに…帰ったはずじゃ……』
「いつの時代の話してるのよ。」
『でも…!』
「私はずっと姉さんを憎み続けて、追いかけてた。」
あたしを睨みつける蜜柑のツインテールが、風になびいた。
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その頃。
「ここに来ると思い出すよなー、夏祭り!!あん時ゃ雲雀と初めて一緒に戦ったっけな。」
木の影に隠れながら、進んで行く獄寺と山本。
しかし、山本の言葉に獄寺が応答しない為、独り言のように聞こえる。
勝手に走り出してしまう獄寺に、山本も続く。
そして、また話しかけた。
「もしラル・ミルチの言ってた戦闘回避不能状態になったらさ、コンビプレー決めよーぜ♪」
だが、獄寺は応じない。
「やっぱ武器からして俺が前衛かな?俺がまず突っ込むから、お前その隙に……」
と、ここで漸く獄寺が振り向いた。
後ろを走る山本のトコまで数歩戻り、胸ぐらを掴む。
「勘違いしてんじゃねーぞ。」
その顔は、嫌悪感に満ちていた。
「今までなーなーでやってたのは10代目の為だからだ。他の目的でてめーと手を組む気はねぇ!!」
「………想像以上に嫌われてんのな。」
「ったりめーだ。」
「おめーみてーな悩みのねぇ能天気な野球バカは一生口をきくハズのねぇ種類の人間だ。同じ空間にいるのも嫌だね!」
「…………お前なぁ……」
山本が反論しようとした、その時。
2人の耳が、何かを聞き取る。
「んじゃお互いやりてーよーにやってみっか。」
ボンゴレリングからマモンチェーンを外す。
木の間から現れたのは、2人のブラックスペルメンバー。
黒鎌を振り回す敵だが、獄寺と山本は別々の方向へ回避する。
直後、武器を振るった敵の頬を、何かがかすめる。
「ぐっ……ツバメ!?」
と、次の瞬間。
「いまいちソイツの使い方分からねーけど……ま、いっか。」
近くの木を踏み台にして、山本が一人に斬り掛かった。
「ぐはぁ!!」
「おっ…おい!!」
慌てて呼びかけるもう一人のメンバー。
だが、ふと背後に何かの気配を感じる。
振り向いてみれば…
「そうだ、こっちだ。」
匣から取り出した武器を構える獄寺が。
「がっ…!」
炎を直に喰らった敵は、真っ逆さまに落ちた。
「今のはちょっとしたコンビプレイだな!」
「余計な事すんじゃねぇ!俺一人で充分だ!!」
そんな会話をしていると、
バチッ…
それまでとは違う、ただモノではない音。
「ボンゴレの守護者ってのは、腰を抜かして方々へ逃げたって聞いたが……」
ふと見上げると、靴に雷を帯びた金髪の男が。
「…こりゃまた、可愛いのが来たな。」
その男・γは獄寺と山本を見て呟く。
「雨と嵐の守護者に間違いないようだが…随分と写真より若い……若すぎるな………。」
そして、メローネ基地で入江に情報提供を懇願された事を思い出す。
スタッと地面に降り立つγ。
すると、すかさず獄寺が前に出た。
「こいつは俺が倒す。お前は手ー出すなよ。」
「へいへい。」
「さっきの連中への貯金もある。」
「……貯金?」
獄寺が言った“貯金”とは、近くの木や岩に設置した導火線の事。
そこからダイナマイトに着火し、一斉に爆発する。
「ほう。」
後方に避けたγ。
「行き止まりだぜ。」
それを読んでいたのか、獄寺は武器を構えて立っていた。
「果てろ。」
ドクロの口から、炎が発射された。
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『どうして…?その服……』
あたしは、蜜柑の着ている服を見た事があった。
10年後のこの世界に来て、1番最初に見た敵の人が着ていたモノ。
真っ白い服で、肩の所に花が彫られた装飾。
「そうよ。私、ミルフィオーレに所属してるの。」
銃を回すのは蜜柑のクセなのかな、
とか思う自分は、相当危機感が足りてない気がする。
「どうしてかは、分かるわよね?」
『あたしを、殺す為ね……』
「正解。」
にこりと笑う蜜柑は、やはり昔と変わらない。
けど、一つだけ気になる事が。
「…何か言いたそうね。」
『どうやって……どうやってあの両親から解放されたの?』
あたしに秘められた波長を読む力を恐れ、捨てた奴ら。
自分たちの利益以外は考えない奴ら。
そこからどうやって解放されたのか、やっぱり少し疑問を持った。
蜜柑は、あたしと違って捨てられていないから。
檸檬の言葉に、蜜柑はほんの少し表情を歪ませた。
「…契約破棄よ。」
『契約?』
聞き返す檸檬に、蜜柑は面倒臭そうに話し始める。
「そもそも私が2人の元に置かれていたのは、契約をしていたからよ。絶対忠誠と引き換えに、養ってもらうっていうね。」
『それを…破棄したの?』
「えぇ、7年程前に。そのくらいになれば、一人で生きていけるし。」
やはり、檸檬の思っていた通り、両親は最悪なままだった。
いつ、どんなトコでもメリットを求め続ける生き方。
ところがここで、蜜柑が突然檸檬を強く睨んだ。
「けどそれからも、私の生活が穏やかになる事は無かった。姉さんを狙う者が、私のトコに来たのよ!!」
『えっ…!?』
その声に憎悪が含まれている事は、嫌でも分かる。
「何度暗殺されそうになった事か。まぁ、かの有名なDARQを仕留めれば、物凄い報酬が貰えるでしょうし。」
『そんな…』
「だから私、思ったの。姉さんがいる限り、私に平穏は訪れない。私の命は危険に晒される。逆に…」
『あたしが消えれば、蜜柑に被害は及ばない…。』
「そう。」
.軽く頷いた蜜柑は、右手中指にあるリングからチェーンを外す。
「だから…」
ブオッ、
『なっ……!』
驚愕するのは必然。
そのリングに灯った炎は…
「……姉さんには捕虜になって貰うわ。」
ツナと同じ色。
『その…色……!!』
「珍しいんですってね、私も少し前に知ったわ。」
自分の炎を眺めながら蜜柑は言う。
そして、今まで持っていた銃を左腿に付けているケースに戻し、
代わりにベルトに付いている匣を取り出す。
『(相手が誰であれ、リング保持者ってのはマズいかもね……)』
ほんの少し後退りする檸檬。
カチッ、
匣にリングを填めた蜜柑の手には、二丁拳銃。
檸檬は一瞬にして型を見極める。
『(FMブローニング・ハイパワーと……デザートイーグルか……)』
どちらも精密射撃に有利な型。
『(圧倒的不利って事ね…)』
ついつい忘れそうになるが、自分は今右足を負傷しているのだ。
俊足がフル活用出来ない上、右足に掛かる負担を考慮しながら戦わなくてはならない。
それに、10年のハンデがあるのだ。
勿論、その事実に甘えるつもりなどサラサラ無いのだが。
「話はここまでにして、始めましょうか。」
『(やるっきゃない、か…!)』
いつものように、
頭の中でテンポを刻む。
『(CRAZY DANCER & six abilities…)』
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一方、γを目撃したラルとツナ。
「えぇ!?γって人が獄寺君と山本の所に!?」
「あの方向には神社以外主要な施設はない…」
「じゃあ敵に見つかったの!?ヤバいよ、どーしよう!!」
焦るツナに、
「こうも敵が多くては、すぐに助けに行くのは不可能だ。それにたとえ俺達が駆けつけて4対1になっても、γに勝てるかどうか……」
「そ、そんなに強いの!?獄寺君……!!山本!!」
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神社近くの林の中に、立ちこめる煙。
その威力を見た山本は、軽く口笛を吹く。
「(手応えあり!)」
獄寺は、自信に満ちた表情で煙が晴れるのを待っていた。
が、しかし…
バチバチ、という音が聞こえた後、煙の中から現れたγは、全くと言っていい程無傷。
その手には、先ほどまで明らかに無かったビリヤードのキューが。
「なに!?」
「効いてねぇ!!」
驚く2人に、γは言う。
「そーいや自己紹介まだだったよな…。俺はγってんだ、宜しくな。」
その単語に反応する2人。
「(こいつが!)」
「(ラル・ミルチの言ってた激強っていう…)」
それまで何もしなかった山本が、前に出た。
「獄寺、ここは手ぇ組んだ方が良さそうだな。」
しかし、
「っるせぇ。」
その案への返答は、
決して良いモノではなくて。
獄寺の匣の武器が、山本に向けられた。
「獄寺…お前……!」
「組む気はねぇって言ってんだろ。すっこんでろ。」
その表情、言葉に、普段はにこやかに流す山本も…
「そーかよ!!」
眉間に皺を寄せ、きつく言い放った。
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チュインッ、
チュインチュインッ、
屋根の上から振って来るような蜜柑の銃撃を、檸檬は避けるので精一杯だった。
「避けるだけ?それじゃ私には勝てないわよ。」
『分かってるわ!』
かわしながら、考えていた。
先ほどから蜜柑の弾が当たった地面は、半径10センチが抉られている。
『(どーなってんのよ………まさか!!)』
ハッと気がついた檸檬は、蜜柑に向かって俊足で詰め寄る。
「接近戦するつもり?」
蜜柑は自分に近づけまいと連射して来る。
けど、そのうち何発かをナイフで弾いた。
『(あの銃……)』
少し近づいて見れば、簡単に分かった。
『死ぬ気の炎、ね。』
「えぇ、圧縮エネルギーである死ぬ気の炎を弾に乗せてるの。これはそういう銃よ。」
ふと檸檬の頭によぎるのは、大空のリング争奪戦でザンザスが使っていたボンゴレ7代目の銃だった。
しかし、その思考を見透かしたかのように蜜柑は言う。
「普通の死ぬ気弾とは造りが違うわ。当たっても死ぬ気になるワケでもないし。」
『ボスみたいなタイプ…って解釈していいの?』
「それも、違うかもね。」
チュインッ、
蜜柑は再び撃ち始める。
『くっ…!』
檸檬が避けきれずナイフで防ごうとした、その時。
ギュルルル…
『(お…重いっ…!?)』
物凄い回転がかけられているその弾は、ナイフを突き破る勢いで檸檬に迫っていた。
咄嗟にフルパワーの剛腕を発動させ、横に弾く檸檬。
しかし…
ピキピキ…
『なっ…!』
バキィィィン…
ナイフの中央に突然ヒビが入ったかと思うと、一瞬のうちに刃の部分が砕けてしまった。
『ま、まさか…あの弾一発で……!?』
「そうよ。」
蜜柑の応答が聞こえて、檸檬は屋根を見上げる。
「私が使う死ぬ気の炎を帯びた弾は、相手を死ぬ気にさせたり身体の一部を強化したりしない…。」
それは、ある意味最も蜜柑に相応しい弾。
「私の弾は、狙撃したモノに衝撃波を与え、内部から破壊していく、“破壊の死ぬ気弾”なのよ。」
『“破壊の…死ぬ気弾”……!』
パッと見た感じでは、蜜柑のリングから出る炎がそれ程強いモノだとは思えない。
「私ね、これでも一応白蘭の近くに配属されてるの。」
『白蘭…!?』
リボーンから聞いたミルフィオーレのボスの名前。
「このリングはマーレリングじゃない2流リングだけど……構わないわ。」
リングを見つめてそう言った蜜柑は、あたしに視線を戻し、怪しく笑った。
「DARQの対…LIGHT(ライト)って呼ばれてるの、私。」
『ライト……!』
---「白蘭及びライトを退け……」
隼人の手紙に描いてあった、あの名前…!
「でも、それがDARQの双子の妹だって知る者は……数える程しかいないのよ?」
切って落とされた火蓋。
2つのファミリーを巻き込んだ、
哀しき姉妹の対決は、
まだ始まったばかり------