未来編①
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アジトに鳴り響く音に、皆が駆けつける。
だけどその時はもう、
恭弥の手がかりはカメラに映ってなくて。
レーダーに切り替えて、場所を特定する。
でも…
「き…消えました!!」
二つの事件
『そ、そんな…』
「消滅した場所には何があるんだ?」
「待って下さい、今出します。」
カタカタとパソコンを操作するジャンニーニ。
どうしよう…
恭弥が危ない目にあってたら…!
「落ち着け、檸檬。」
『リボーン…』
あたしは一回深呼吸をした。
直後、ジャンニーニが言う。
「出ました!神社です!!」
「並盛神社?雲雀のヤツ、あんなトコで何してんだ?」
バッテリー切れ、
敵からの狙撃、
あるいは敵の罠、
信号の中絶には考えられる原因がいくつもある。
「ちょ、じゃあ一体どーすればいいの!?」
「どっちみち雲雀の唯一の手がかりだ。指をくわえてるワケにはいかねーだろーな。」
「ですが見て下さい。」
ジャンニーニが指すモニターには、たくさんのリングの存在を示す点。
「少なくとも地上にはこれだけの敵がいるワケです。」
「なに!」
「あんなに!?」
『ねぇ、あの二重丸みたいなのは…?』
「あれは強いリング…恐らく隊長クラスで精製度はA以上……」
ジャンニーニの言葉を聞き、ラルが言った。
「γだな。」
「『ガンマ…?』」
「お前達の戦った第3アフェランドラ隊の隊長…電光のγ。名のある殺し屋とマフィア幹部を何人も葬った男だ。」
「そんなにヤバい奴が…!?」
青ざめるツナとは反対に、隼人が得意げに口角を上げる。
「へっ、ガマだかサンマだか知らねーが、心配いりませんよ、10代目!」
その言葉にあたし達が首を傾げると、
「昨日あれから色々自主練して、パワーアップしまくりましたから。」
「だなっ♪」
と。
しかも隼人はジャンニーニから工具を借りて、匣のカスタマイズもしていたらしい。
ドクロの装飾が綺麗に施されていた。
しかも何だか誇らしげ。(笑)
と、その時…
『足音…?』
あたしの耳が廊下の向こうの足音をキャッチして、ドアの方を見る。
「ツナさん!!」
「ハル!」
「よっ。」
「今頃遅ぇっつの。」
駆け込んで来た時のハルの表情は、
ヒバードのSOS音を聞いただけではなさそうで。
『どうしたの?』
「檸檬ちゃん、大変なんです!!京子ちゃんがいないんです!!!」
「な!?何だって!!?」
あんなに近くにいたのに、
どうしてその不安の大きさに気がつけなかったんだろう。
とか考える。
ハルが持っている京子の書き置きには、
“一度家に行って来ます。ランボ君のおやつをもらってくるね”
と。
『でも、出口ってロック掛かってるんじゃないの?』
「はい、そのはずなんですが…」
調べてみれば、修理中の出口が一つあって。
「ど、どどどどーしよう!?」
「落ち着け沢田。」
錯乱しかけるツナに、ラルが言う。
「雲の守護者からの救難信号の件もある。今はどうするべきか総合的に判断すべきだ。」
「この場合、最優先事項は京子を連れ戻す事だな。」
『何かに巻き込まれたら、それこそ大変な事になる…。』
「次にヒバードの探索及び調査だ。」
ヒバード…
本当に恭弥が危ない目にあってるって事なのかな…
どうしよう、
どうしよう…
「出来ればまだ戦闘は避けたい。敵に見つからぬよう、少数で連れ戻すのがベターだな。」
「それはヒバード探索にも言える。少人数で動いたほうがいいっス。」
「んじゃ、いっその事二手に別れて、両方いっぺんにやるってのはどーだ?」
色々話し合うみんな。
どうしてこうも、不安要素が重なるんだろう。
あたしはまだ自分の戦い方を知らない。
怪我も完治してない。
この一晩で何とか杖は取れるようになったけど…
「どうしましょうか、10代目。」
「決めてくれよ、ツナ!」
「えぇ!?お…俺!?」
「当然だ。」
「ボスはお前だ。」
ツナはほんの少し考えて、すぐに顔を上げた。
「じゃあ…俺も行く!京子ちゃんとヒバード、両方一緒に進めよう!!」
ラルに作戦指導を頼むツナ。
その間に、リボーンは武に呼びかけた。
「お前、武器持ってねーだろ。」
「まーな。今あんのは10年後の俺が使ってた匣が2つ、一つはまだ開かねーけど、あとは練習用の刀が一振りだ。」
「コイツを見つけたぞ。」
パッと投げ渡したのは、他でもない…
「時雨金時!!」
「10年後の山本が使っていた雨系リングとは相性が悪かったらしくてな。だが…ボンゴレリングとそいつの相性は未知数だ。」
使うかどうかは、武次第。
「そっか…」
キュッと竹刀を握りしめ、武は言う。
「連れてくわ。俺は親父の…時雨蒼燕流の後継者だからな。」
『武……』
と、ここで作戦が発表される。
「俺とラル・ミルチで京子ちゃんを追う。獄寺君と山本でヒバードを探して欲しいんだ。」
「山本とスか…?」
隼人は少しだけ不満そうだったけど、
まぁ置いといて。
「獄寺と山本はB出入口より神社へ、俺と沢田はD出入口より笹川宅へ向かう。」
『ねぇ…』
あたしは何か出来ないのかと思って、
ツナの袖を引っ張った。
「檸檬…」
『ツナ、怪我してるのに…』
「それでも、行かなくちゃいけない…そんな気がするんだ。」
『でもっ…』
「檸檬はまだ安静にしてて。俺達で何とかするよ。」
ツナはあたしに座るように促す。
まだ右足の事を心配してるみたいだった。
通信機は、あたし達が入れ替わったせいで無くなってしまった。
よって今回連絡を取り合うのは不可能。
「原則として戦闘は回避しろ。それでももし回避不能な事態が起きた場合は……それぞれの判断で対処しろ。」
それぞれの出口へ向かう4人の背中を見送る。
そんな事しか出来ない。
『どうか…気をつけて……』
「檸檬ちゃん…」
あたしに歩み寄るハルに、無理矢理笑ってみせる。
『あたしも、早く治さなくちゃね!』
すると、リボーンが言った。
「ハル、アホ牛達の事を頼む。そろそろ起きるだろーからな。」
「は、はいっ。」
ハルがパタパタ走って行き、あたしはモニターの前に戻る。
すると…
ガガガーッ…
ブチッ、
『え!?』
「こ、これは一体…!」
モニターの一つが、突然砂嵐を映し出した。
「誰かに…壊されたか?」
『そ、そんな!』
「固定カメラは全て見つけにくい場所に設置してあります!姿を映さずに壊すなんて…」
「まじーな。カメラを全部壊されちまったら地上の様子が分からなくなっちまう。」
『壊してるのは…ブラックスペル?』
「分かりません、ただ…」
ジャンニーニはリング反応モニターを見る。
「カメラを壊された地点の周辺に、リングの反応はありません。」
って事は…
リング保持者じゃないかもしれない。
だったら…!
『あたし、行く。』
「檸檬様!?」
上に羽織っていたフリースを脱いで、靴ひもを結び直す。
「無茶だぞ檸檬。右足、完治してねーだろ。」
『でも相手はリング保持者じゃないかもしれない。それくらいなら、何とか相手出来るし、止められるかも…』
それに、今あたし達には通信手段が無い。
ツナ達にカメラの事を伝えて向かってもらう事は不可能。
『それに…あたし、ジッとしてるのは趣味じゃないんだよね♪』
「檸檬様…」
走り出そうとすると、まだ少し痛むけど。
それでもグッと力を込める。
「お…お待ち下さい!!」
『え…?』
部屋を出ようとしたその時、
ジャンニーニがあたしを止めた。
---
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-----------
町中を走るツナとラル。
ふと、ツナが口を開く。
「あの、一つ聞いていいですか?」
「…何だ。」
「もし………もし京子ちゃんが捕まってたら、俺!どーすれば!?」
少し間を置いてから、ラルはその問いに答える。
「修業の足りぬ現段階で敵と戦うべきではない…。だがお前が戦おうとするのなら、恐らく俺は止められない……。」
その言葉にいささか疑問を持つツナに、ラルは付け加える。
「これだけは守れ。必ず指にリングを付けてハイパー化するんだ。」
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同じ頃、笹川宅前。
黒い服の男2人が、一般女性に尋ねる。
「この家の娘を知りませんかねぇ?」
「笹川京子って言うんですが。」
その近くの角に隠れているのは、
他でもない、京子だった。
「ハァ…ハァ……」
その息は荒く、額には少し汗がにじんでいる。
男達が自分を捜していると理解した京子は、すぐにその場から逃げ出した。
「(これじゃ家に入れない…)」
随分と遠くまで走った為、膝に手をつく。
見つかったらいけない事くらい、嫌でも分かった。
「(どうしよう…お兄ちゃん……ツナく……)」
コツン、
「え…?」
不意に小さなヒール音がして、京子は頭を上げた。
自分の目の前に、真っ白い服に身を包んだ女が一人。
「あ、あれ…?」
見覚えのある顔。
しかし髪型が違うし、雰囲気も何となく違う。
試しに、思った名を口にしてみる。
「檸檬…ちゃん……?」
すると彼女はほんの少しだけ眉を動かし、呟いた。
「笹川京子、か…。」
そしてそのまま背を向け歩き出す。
慌てて引き止めようとする京子。
「檸檬ちゃん、待っ……」
「私は檸檬じゃない。」
「え…?」
強い眼力と共に、そう言い放つ女。
ふと、彼女のツインテールが風に揺れる。
「ん…?」
何かを感じ取ったのか、女は京子の後方を見つめる。
そして、京子に向かって言うのだった。
「もう二度と私に会わない事を、祈りなさい。次は、ないから。」
「えっ…!?」
次の瞬間、彼女は高く飛び上がって屋根の上を走って行った。
「あ、あのっ…」
「やっと見つけた。」
白い服の女を追いかけようとする京子の背後に、何者かの影。
その手は、後ろから京子の口を塞いだ。
---
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その数分後、γの元に部下が一人やって来る。
彼の話を聞いたγは、緩く口角を上げて。
「ほう、そいつは朗報だ。…すぐに向かうと伝えてくれ。」
彼の右手中指には、卵に羽が生えたような形のリングがあった。
「それともう一つ…」
「んん?」
「ホワイトスペルの女が一人、町中にいるようです。」
「ホワイトスペル…?」
部下の報告に、顎に手を当て考えるγ。
そして、一つの推測をする。
「まさかあの…ライトっていう美人かな…?」
そして、彼女について引っかかる事を口にした。
「あの顔…前に何処かで見たと思ったんだがな……」
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-------------
『何…?』
引き止められたあたしは、ジャンニーニの方を向く。
「少々お待ち下さい。」
『う、うん。』
席を外したジャンニーニは、少しして戻って来た。
何かを抱えて。
「これを。」
『コレって…』
「右足のギプスです。私が檸檬様専用にお造りしました。」
『あたし…専用に…!?』
「はい。」
差し出されたそれを、受け取って眺める。
持った瞬間感じるのは、その軽量さ。
「檸檬様の戦闘スタイルを考慮し、出来るだけ軽量にしました。しかしその分、強度が落ちています。」
『すごい…こんなに軽いなんて…!』
「リングの炎にも、少々耐えられる程度です。」
「長時間は無理って事か。」
「はい。」
早速、右足に取り付けてみる。
固定されるから痛みを感じにくい。
少し動きは鈍るかもしれないけど、これなら俊足を使っても大丈夫そうだ。
『ジャンニーニ、』
「はい。」
『ありがとっ♪』
感謝を込めて、頬にキスをした。
「檸檬様っ…!///」
『ホントにホントに嬉しい!あたし、頑張るねっ!』
「私の方も、お役に立てて光栄です。」
改めて出発しようと、方向転換する。
と、
「檸檬、」
『ん?』
リボーンに呼びかけられた。
「いいか、お前は怪我してんだ。無理して勝とうと思わねーで、危機を感じたら逃げろ。」
『リボーン…』
そんな事、あたしの性には合わないよ。
いつだって護る為に戦って来た。
どんな敵を前にしたって、逃げるワケにはいかないの。
あたしのその意志を汲み取ったように、リボーンは続ける。
「仲間を傷つけたくないって気持ちは分かる。けどな、檸檬が無理する事で傷つく仲間がいる事を、忘れんなよ。」
あたしが傷つくと…
皆が傷つく…?
「それは目に見える傷じゃねーが、目に見えるモノよりずっと大きく深くなる時もあんだ。」
そう言われて、やっと気がつく。
それは、心の傷なんだって。
『うん、分かった…。』
「約束しろ。何があっても帰って来るってな。」
『らじゃ♪』
大人な赤ん坊に敬礼して、今度こそ飛び出した。
外の空気を吸うのが、何だか久しぶりのような気がする。
とにかく今は、カメラ破壊者を探さなくちゃ。
『(…超五感……)』
周囲の状況に神経を集中させつつ、さっきカメラが壊された場所へと向かう。
京子の事は、ツナとラルがいるから大丈夫。
ヒバードの事は、隼人と武がいるから大丈夫。
自分もそれに協力したい気持ちをグッと抑えて、
ただ、あたしは1台でも多くカメラを保守しなくちゃ。
まだ戦い方も分からないけど、
足手纏いかもしれないけど、
何かしたいと、
護りたいと思う気持ちは誰にも負けない。
---
------
屋根の上。
ツインテールを風になびかせながら、白い服の女は走っていた。
「(ダークかと思ったのに…)」
京子に遭遇した際の事を思い出す。
イタリアから逃げたダークを再び捕らえる為には、
安全なアジトから引っ張りださなくてはならない。
その為には、何か“事件”が必要だった。
カメラを壊せば、モニターに異常が起きる。
それは承知の上。
「早く、見つからないかしら……………ん?」
ふと見た先には、
もの凄い速さで走る小柄な少女。
100メートル程離れているはずなのに、ライトはその姿をしっかり捉えた。
同時に、彼女の口元は綺麗な弧を描く。
「見つけた…。」
左腿に装備してある愛用の銃を手にして、そちらに走り出す。
標的である少女・檸檬がスピードを落とし始めた為、2人の距離はぐんぐん縮まる。
そして、射程圏内に入ったその瞬間、
彼女は引き金を引いた。
---
-----
何かが近づいて来る気配がした。
誰かがもの凄い勢いで。
気がつかないフリをしながら、だんだんスピードを落として行く。
もしかしたら、カメラを破壊した人かもしれない、と。
でも、次の瞬間。
チュインッ、
『………っと!』
足下に出来た弾痕。
避けていなかったら、確実に左足を貫かれてた。
『誰っ!?』
撃ち込まれた方向、屋根の上を見る。
途端に、あたしは何の言葉も喋れなくなった。
だって、そこには…
「久しぶりね、“姉さん”。」
知っている顔がいたから。
だけどその時はもう、
恭弥の手がかりはカメラに映ってなくて。
レーダーに切り替えて、場所を特定する。
でも…
「き…消えました!!」
二つの事件
『そ、そんな…』
「消滅した場所には何があるんだ?」
「待って下さい、今出します。」
カタカタとパソコンを操作するジャンニーニ。
どうしよう…
恭弥が危ない目にあってたら…!
「落ち着け、檸檬。」
『リボーン…』
あたしは一回深呼吸をした。
直後、ジャンニーニが言う。
「出ました!神社です!!」
「並盛神社?雲雀のヤツ、あんなトコで何してんだ?」
バッテリー切れ、
敵からの狙撃、
あるいは敵の罠、
信号の中絶には考えられる原因がいくつもある。
「ちょ、じゃあ一体どーすればいいの!?」
「どっちみち雲雀の唯一の手がかりだ。指をくわえてるワケにはいかねーだろーな。」
「ですが見て下さい。」
ジャンニーニが指すモニターには、たくさんのリングの存在を示す点。
「少なくとも地上にはこれだけの敵がいるワケです。」
「なに!」
「あんなに!?」
『ねぇ、あの二重丸みたいなのは…?』
「あれは強いリング…恐らく隊長クラスで精製度はA以上……」
ジャンニーニの言葉を聞き、ラルが言った。
「γだな。」
「『ガンマ…?』」
「お前達の戦った第3アフェランドラ隊の隊長…電光のγ。名のある殺し屋とマフィア幹部を何人も葬った男だ。」
「そんなにヤバい奴が…!?」
青ざめるツナとは反対に、隼人が得意げに口角を上げる。
「へっ、ガマだかサンマだか知らねーが、心配いりませんよ、10代目!」
その言葉にあたし達が首を傾げると、
「昨日あれから色々自主練して、パワーアップしまくりましたから。」
「だなっ♪」
と。
しかも隼人はジャンニーニから工具を借りて、匣のカスタマイズもしていたらしい。
ドクロの装飾が綺麗に施されていた。
しかも何だか誇らしげ。(笑)
と、その時…
『足音…?』
あたしの耳が廊下の向こうの足音をキャッチして、ドアの方を見る。
「ツナさん!!」
「ハル!」
「よっ。」
「今頃遅ぇっつの。」
駆け込んで来た時のハルの表情は、
ヒバードのSOS音を聞いただけではなさそうで。
『どうしたの?』
「檸檬ちゃん、大変なんです!!京子ちゃんがいないんです!!!」
「な!?何だって!!?」
あんなに近くにいたのに、
どうしてその不安の大きさに気がつけなかったんだろう。
とか考える。
ハルが持っている京子の書き置きには、
“一度家に行って来ます。ランボ君のおやつをもらってくるね”
と。
『でも、出口ってロック掛かってるんじゃないの?』
「はい、そのはずなんですが…」
調べてみれば、修理中の出口が一つあって。
「ど、どどどどーしよう!?」
「落ち着け沢田。」
錯乱しかけるツナに、ラルが言う。
「雲の守護者からの救難信号の件もある。今はどうするべきか総合的に判断すべきだ。」
「この場合、最優先事項は京子を連れ戻す事だな。」
『何かに巻き込まれたら、それこそ大変な事になる…。』
「次にヒバードの探索及び調査だ。」
ヒバード…
本当に恭弥が危ない目にあってるって事なのかな…
どうしよう、
どうしよう…
「出来ればまだ戦闘は避けたい。敵に見つからぬよう、少数で連れ戻すのがベターだな。」
「それはヒバード探索にも言える。少人数で動いたほうがいいっス。」
「んじゃ、いっその事二手に別れて、両方いっぺんにやるってのはどーだ?」
色々話し合うみんな。
どうしてこうも、不安要素が重なるんだろう。
あたしはまだ自分の戦い方を知らない。
怪我も完治してない。
この一晩で何とか杖は取れるようになったけど…
「どうしましょうか、10代目。」
「決めてくれよ、ツナ!」
「えぇ!?お…俺!?」
「当然だ。」
「ボスはお前だ。」
ツナはほんの少し考えて、すぐに顔を上げた。
「じゃあ…俺も行く!京子ちゃんとヒバード、両方一緒に進めよう!!」
ラルに作戦指導を頼むツナ。
その間に、リボーンは武に呼びかけた。
「お前、武器持ってねーだろ。」
「まーな。今あんのは10年後の俺が使ってた匣が2つ、一つはまだ開かねーけど、あとは練習用の刀が一振りだ。」
「コイツを見つけたぞ。」
パッと投げ渡したのは、他でもない…
「時雨金時!!」
「10年後の山本が使っていた雨系リングとは相性が悪かったらしくてな。だが…ボンゴレリングとそいつの相性は未知数だ。」
使うかどうかは、武次第。
「そっか…」
キュッと竹刀を握りしめ、武は言う。
「連れてくわ。俺は親父の…時雨蒼燕流の後継者だからな。」
『武……』
と、ここで作戦が発表される。
「俺とラル・ミルチで京子ちゃんを追う。獄寺君と山本でヒバードを探して欲しいんだ。」
「山本とスか…?」
隼人は少しだけ不満そうだったけど、
まぁ置いといて。
「獄寺と山本はB出入口より神社へ、俺と沢田はD出入口より笹川宅へ向かう。」
『ねぇ…』
あたしは何か出来ないのかと思って、
ツナの袖を引っ張った。
「檸檬…」
『ツナ、怪我してるのに…』
「それでも、行かなくちゃいけない…そんな気がするんだ。」
『でもっ…』
「檸檬はまだ安静にしてて。俺達で何とかするよ。」
ツナはあたしに座るように促す。
まだ右足の事を心配してるみたいだった。
通信機は、あたし達が入れ替わったせいで無くなってしまった。
よって今回連絡を取り合うのは不可能。
「原則として戦闘は回避しろ。それでももし回避不能な事態が起きた場合は……それぞれの判断で対処しろ。」
それぞれの出口へ向かう4人の背中を見送る。
そんな事しか出来ない。
『どうか…気をつけて……』
「檸檬ちゃん…」
あたしに歩み寄るハルに、無理矢理笑ってみせる。
『あたしも、早く治さなくちゃね!』
すると、リボーンが言った。
「ハル、アホ牛達の事を頼む。そろそろ起きるだろーからな。」
「は、はいっ。」
ハルがパタパタ走って行き、あたしはモニターの前に戻る。
すると…
ガガガーッ…
ブチッ、
『え!?』
「こ、これは一体…!」
モニターの一つが、突然砂嵐を映し出した。
「誰かに…壊されたか?」
『そ、そんな!』
「固定カメラは全て見つけにくい場所に設置してあります!姿を映さずに壊すなんて…」
「まじーな。カメラを全部壊されちまったら地上の様子が分からなくなっちまう。」
『壊してるのは…ブラックスペル?』
「分かりません、ただ…」
ジャンニーニはリング反応モニターを見る。
「カメラを壊された地点の周辺に、リングの反応はありません。」
って事は…
リング保持者じゃないかもしれない。
だったら…!
『あたし、行く。』
「檸檬様!?」
上に羽織っていたフリースを脱いで、靴ひもを結び直す。
「無茶だぞ檸檬。右足、完治してねーだろ。」
『でも相手はリング保持者じゃないかもしれない。それくらいなら、何とか相手出来るし、止められるかも…』
それに、今あたし達には通信手段が無い。
ツナ達にカメラの事を伝えて向かってもらう事は不可能。
『それに…あたし、ジッとしてるのは趣味じゃないんだよね♪』
「檸檬様…」
走り出そうとすると、まだ少し痛むけど。
それでもグッと力を込める。
「お…お待ち下さい!!」
『え…?』
部屋を出ようとしたその時、
ジャンニーニがあたしを止めた。
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町中を走るツナとラル。
ふと、ツナが口を開く。
「あの、一つ聞いていいですか?」
「…何だ。」
「もし………もし京子ちゃんが捕まってたら、俺!どーすれば!?」
少し間を置いてから、ラルはその問いに答える。
「修業の足りぬ現段階で敵と戦うべきではない…。だがお前が戦おうとするのなら、恐らく俺は止められない……。」
その言葉にいささか疑問を持つツナに、ラルは付け加える。
「これだけは守れ。必ず指にリングを付けてハイパー化するんだ。」
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同じ頃、笹川宅前。
黒い服の男2人が、一般女性に尋ねる。
「この家の娘を知りませんかねぇ?」
「笹川京子って言うんですが。」
その近くの角に隠れているのは、
他でもない、京子だった。
「ハァ…ハァ……」
その息は荒く、額には少し汗がにじんでいる。
男達が自分を捜していると理解した京子は、すぐにその場から逃げ出した。
「(これじゃ家に入れない…)」
随分と遠くまで走った為、膝に手をつく。
見つかったらいけない事くらい、嫌でも分かった。
「(どうしよう…お兄ちゃん……ツナく……)」
コツン、
「え…?」
不意に小さなヒール音がして、京子は頭を上げた。
自分の目の前に、真っ白い服に身を包んだ女が一人。
「あ、あれ…?」
見覚えのある顔。
しかし髪型が違うし、雰囲気も何となく違う。
試しに、思った名を口にしてみる。
「檸檬…ちゃん……?」
すると彼女はほんの少しだけ眉を動かし、呟いた。
「笹川京子、か…。」
そしてそのまま背を向け歩き出す。
慌てて引き止めようとする京子。
「檸檬ちゃん、待っ……」
「私は檸檬じゃない。」
「え…?」
強い眼力と共に、そう言い放つ女。
ふと、彼女のツインテールが風に揺れる。
「ん…?」
何かを感じ取ったのか、女は京子の後方を見つめる。
そして、京子に向かって言うのだった。
「もう二度と私に会わない事を、祈りなさい。次は、ないから。」
「えっ…!?」
次の瞬間、彼女は高く飛び上がって屋根の上を走って行った。
「あ、あのっ…」
「やっと見つけた。」
白い服の女を追いかけようとする京子の背後に、何者かの影。
その手は、後ろから京子の口を塞いだ。
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その数分後、γの元に部下が一人やって来る。
彼の話を聞いたγは、緩く口角を上げて。
「ほう、そいつは朗報だ。…すぐに向かうと伝えてくれ。」
彼の右手中指には、卵に羽が生えたような形のリングがあった。
「それともう一つ…」
「んん?」
「ホワイトスペルの女が一人、町中にいるようです。」
「ホワイトスペル…?」
部下の報告に、顎に手を当て考えるγ。
そして、一つの推測をする。
「まさかあの…ライトっていう美人かな…?」
そして、彼女について引っかかる事を口にした。
「あの顔…前に何処かで見たと思ったんだがな……」
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『何…?』
引き止められたあたしは、ジャンニーニの方を向く。
「少々お待ち下さい。」
『う、うん。』
席を外したジャンニーニは、少しして戻って来た。
何かを抱えて。
「これを。」
『コレって…』
「右足のギプスです。私が檸檬様専用にお造りしました。」
『あたし…専用に…!?』
「はい。」
差し出されたそれを、受け取って眺める。
持った瞬間感じるのは、その軽量さ。
「檸檬様の戦闘スタイルを考慮し、出来るだけ軽量にしました。しかしその分、強度が落ちています。」
『すごい…こんなに軽いなんて…!』
「リングの炎にも、少々耐えられる程度です。」
「長時間は無理って事か。」
「はい。」
早速、右足に取り付けてみる。
固定されるから痛みを感じにくい。
少し動きは鈍るかもしれないけど、これなら俊足を使っても大丈夫そうだ。
『ジャンニーニ、』
「はい。」
『ありがとっ♪』
感謝を込めて、頬にキスをした。
「檸檬様っ…!///」
『ホントにホントに嬉しい!あたし、頑張るねっ!』
「私の方も、お役に立てて光栄です。」
改めて出発しようと、方向転換する。
と、
「檸檬、」
『ん?』
リボーンに呼びかけられた。
「いいか、お前は怪我してんだ。無理して勝とうと思わねーで、危機を感じたら逃げろ。」
『リボーン…』
そんな事、あたしの性には合わないよ。
いつだって護る為に戦って来た。
どんな敵を前にしたって、逃げるワケにはいかないの。
あたしのその意志を汲み取ったように、リボーンは続ける。
「仲間を傷つけたくないって気持ちは分かる。けどな、檸檬が無理する事で傷つく仲間がいる事を、忘れんなよ。」
あたしが傷つくと…
皆が傷つく…?
「それは目に見える傷じゃねーが、目に見えるモノよりずっと大きく深くなる時もあんだ。」
そう言われて、やっと気がつく。
それは、心の傷なんだって。
『うん、分かった…。』
「約束しろ。何があっても帰って来るってな。」
『らじゃ♪』
大人な赤ん坊に敬礼して、今度こそ飛び出した。
外の空気を吸うのが、何だか久しぶりのような気がする。
とにかく今は、カメラ破壊者を探さなくちゃ。
『(…超五感……)』
周囲の状況に神経を集中させつつ、さっきカメラが壊された場所へと向かう。
京子の事は、ツナとラルがいるから大丈夫。
ヒバードの事は、隼人と武がいるから大丈夫。
自分もそれに協力したい気持ちをグッと抑えて、
ただ、あたしは1台でも多くカメラを保守しなくちゃ。
まだ戦い方も分からないけど、
足手纏いかもしれないけど、
何かしたいと、
護りたいと思う気持ちは誰にも負けない。
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屋根の上。
ツインテールを風になびかせながら、白い服の女は走っていた。
「(ダークかと思ったのに…)」
京子に遭遇した際の事を思い出す。
イタリアから逃げたダークを再び捕らえる為には、
安全なアジトから引っ張りださなくてはならない。
その為には、何か“事件”が必要だった。
カメラを壊せば、モニターに異常が起きる。
それは承知の上。
「早く、見つからないかしら……………ん?」
ふと見た先には、
もの凄い速さで走る小柄な少女。
100メートル程離れているはずなのに、ライトはその姿をしっかり捉えた。
同時に、彼女の口元は綺麗な弧を描く。
「見つけた…。」
左腿に装備してある愛用の銃を手にして、そちらに走り出す。
標的である少女・檸檬がスピードを落とし始めた為、2人の距離はぐんぐん縮まる。
そして、射程圏内に入ったその瞬間、
彼女は引き金を引いた。
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何かが近づいて来る気配がした。
誰かがもの凄い勢いで。
気がつかないフリをしながら、だんだんスピードを落として行く。
もしかしたら、カメラを破壊した人かもしれない、と。
でも、次の瞬間。
チュインッ、
『………っと!』
足下に出来た弾痕。
避けていなかったら、確実に左足を貫かれてた。
『誰っ!?』
撃ち込まれた方向、屋根の上を見る。
途端に、あたしは何の言葉も喋れなくなった。
だって、そこには…
「久しぶりね、“姉さん”。」
知っている顔がいたから。