未来編①
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・ラル ミルチ
門外顧問組織 CEDEF
(Consulenza Esterna Della Famiglia)
雲系蜈蚣のリング
(精製度E)
霧系リング
(精製度C)
霧のステルスリング
(精製度D)
蜈蚣
バルーン
迷彩柄の匣 等
赤と青の炎
「匣を開ける?………って、あの何かすごいのを出す…?」
疑問符を浮かべるツナ。
「それって修業と何の関係が…?」
「つべこべ言うな。やるのか、やらないのか?」
「や…やります!!」
その返事を聞いて、ラルはリボーンに修業出来る部屋はないか尋ねる。
それに答えたのはジャンニーニだった。
「それでしたら、下の階にトレーニングルームがございますよ。」
ってゆーか…
『ジャンニーニ!久しぶりっ!!』
「ま、まさか…檸檬様ですか!?」
『うんっ!』
ギューッと抱きつくと、後ろから襟首を引っ張られる。
『ほへ?』
「はしゃぐな檸檬。ジャンニーニ、案内を頼めるか?」
ラルだった。
やっぱり、結構真剣になった感じ。
それ程、さっき思い出してた事がつらかったのかなぁ…。
「勿論です、こちらへどうぞ。」
「山本、檸檬をエレベーターまで背負って来い。」
リボーンが言う。
『え?だ、大丈夫…』
「ほら。」
う~~~…
また背中を向けられる。
みんなはスタスタ行っちゃうし…
『あ…ありがと。』
「おう!」
ホント、ヒビなんて作らなきゃ良かった。
早く治さなくちゃ…。
ランボちゃん、イーピンちゃんもついて行ってて、
キッチンには京子とハルが残った。
「挨拶しそびれちゃったね…」
「意味不明発言満載のあのビターな美人レディは誰なんでしょう…?」
どうやら、2人はラルが劇団員か何かだと解釈したらしかった。
あとで適当に説明してあげようっと。
そんな事を考えながら、武の背中に乗ってエレベーターへ向かった。
地下へ向かう途中、ジャンニーニが色々説明してくれた。
このアジトは公共施設を避けていて、すごくいびつな形をしてるとか。
総面積はサンシーロ・スタジアムの約1.5倍で、
電力はエコっぽく地熱発電。
チン、
「おや、着きましたよ。」
『地下8階…』
開いたドアの向こうには…
「わぁ…」
広くて、天井も高い部屋。
これが地下にあるなんて信じられないくらい。
水場の修理に戻るジャンニーニを見送ると、ラルが尋ねた。
「雷の守護者は何処だ?見つかったと聞いたが…」
『へ?ずっとそこにいるよ。』
「お前が視界に入れないようにしてる、あの毛の塊だぞ。」
ラルは、広い部屋に興奮してはしゃぐランボちゃんに目を移す。
だけど、
「俺には見えん。」
「(存在を消したー!!)」
『あはは…』
とりあえず、ランボちゃんの存在を確認したところで。
「今一度問う。生半可では付いて来れないぞ。本当にやる気があるのか?」
「ああ!」
「やります!!」
「ったりめーだ!吠え面かくなよ!」
『この時代の事、ちゃんと理解したい!』
「…分かった。絶対に出来ないと言うなよ。弱音を吐く奴は容赦なく修正する。」
その言葉にツナは身震いしたけど、
それでも決意したようだった。
あたし達の気持ちを再確認したラルは、説明を始める。
「この時代は、お前達の生きていた10年前と違い…リングに炎を灯し、匣を開ける事が出来なければ戦いにならない。」
ゴーグルを装着したラルは、一瞬あたしの方を見る。
「お前は別だがな、檸檬。」
『え…?』
そうだよあたし…
リング使えないって言われたんだった…。
「だから匣を開けるプロセスを学ぶ事が、この時代の戦闘を理解するのに一番てっとり早いんだな。」
「そんなところだ。運良く開匣出来たとしても、仕組みを知らねば意味はない。」
ラルの言葉に、隼人がギクッとしてた。
「まずはリングを理解しろ。」
リングに出来る事は二つある。
そのものの力を使う事と、
匣を開ける事。
「前者で言えばこの武器は、リングから発生した炎を、そのまま射出している。」
ラルの左手についている武器の6つの穴から、炎の筋が飛び出す。
それが壁に当たると、もの凄い音がして少し崩れた。
そんな風に、リングそのものの力は攻撃の基本になる事が多いそうだ。
次にラルが見せてくれたのは匣。
「炎を電気に例えるなら、匣は電化製品といったところだ。」
『なるほどー…』
「種類は実に……多種多様。」
言いながらラルが出したのは、蜈蚣っぽいのと気球っぽいの。
基本的に、どの匣も最初に炎をチャージした分しか働かない。
炎が切れると活動停止。
だけど、最近は開匣した後に更にリングの炎を纏わせるタイプや、
敵の炎を吸収してパワーアップするタイプもあるらしい。
「ここまでで分からない事はあるか?」
ゴーグルを取って、ラルが尋ねる。
と、
「あ…あのー………一つもわかんねーんスけど。」
『えぇー!?』
「(言い放ったー!!)」
すると、ラルはコツコツ歩み寄り…
ドゴッ、
「分かれ。」
…殴った。
「山本ォ!!」
『武っ!!』
ツナが、武が来たばかりで何も知らないのだと言うと、
「後で説明してやれ。」
とだけ言った。
「では実践だ。沢田と獄寺はリングに炎を灯したと聞いたが…本当だろうな。」
『隼人の方は確かに見たけど…』
「えと…」
「ったりめーよ!!」
隼人の表情はやる気に満ち溢れてる。
「見せてみろ。」
「それが俺…何が起こったか覚えてなくて…」
「覚悟を炎にするイメージ!!!」
戸惑うツナの隣で、隼人は念じ始める。
覚悟を炎にするイメージ……らしい。
でも、
「ど、どーした!?確かにあん時は!!」
「やはりな…」
隼人のリングは全く変化を見せない。
ラルはため息をつきながら言う。
「非常時に偶然炎が出るというのはありうる話だ。だがそんな火事場のクソ力に頼っていてはとても実戦では……」
ボウッ、
『あ!』
「っしゃあ!!」
「すごいよ獄寺君!!真っ赤な死ぬ気の炎だ!!」
「いやー、まだまだっス!!」
嬉しそうにそう言う隼人の嵐のリングには、赤く燃える死ぬ気の炎。
それを見た武も、
「これ、そんなの出んのかよ。」
と、リングを右手中指に付ける。
「覚悟を炎にってーと、こんな感じか?」
それまでいつもの笑顔だった武は、
一瞬真剣な表情を見せる。
と、次の瞬間。
ボウッ、
『わ!』
「ハハハ!出た出たっ♪」
「山本は青い炎!!バジル君と同じだ!!」
「て…てめー、こうも簡単に!!」
その光景を見て、ラルは驚愕を隠せないでいた。
「(ここまで30時間はかかるとふんでいた…これがボンゴレリングの力…いや、奴らの覚悟か……)」
『(ラル…?)』
何かを真剣に考えてるっぽいラル。
と、そこでリボーンが話しかける。
「久しぶりに教官の血が騒ぎだしたか?お前今、エロい顔してたぞ。」
「なっ…昔からお前は!人の事を見透かしたように……!!」
「お前、不器用だけど分かり易いからな。」
昔から…?
この2人の会話はいつも何処か引っかかる。
だけど、追求する事は出来ない気がする。
「あん時も俺はお前の気持ちの変化がお前以上に分かって…」
「だっ、黙れ!!」
「……んだ?」
「喧嘩?」
2人の言い合いにツナ達が反応する。
と、ラルは半ば八つ当たりのように怒鳴った。
「沢田!!お前の炎はどーした!?」
「え…いや…あの…それが……やってるんだけど………さっぱり出来なくて…」
苦笑いを浮かべるツナに、ラルは駆け寄る。
そして…
「甘えるな。」
パァンッ、
『ツナ!』
…殴った。
「どわっ!」
「何しやがる!!10代目は怪我してんだぞ!!」
「今のはツナが悪い。」
殴られて、起き上がるツナにラルは言う。
「1時間以内に全員がリングに炎を灯し、コレを開ける事が出来なければ、修業は中止だ。俺は発つ。」
「そんなぁ!!待って下さい!!」
『ツナ……』
頑張って、と…
祈る事しか出来なくて、
本当に悔しくてたまらなかった。
---
------
一方キッチンでは、調理を終えた京子とハルが退屈を持て余していた。
「ツナさん達、遅いですねー…。先にお風呂入りましょうか…。」
しかし、ハルの言葉に京子は答えない。
何やら不安そうに何かを考えている。
「京子ちゃん?」
「えっ…?」
「だ…大丈夫ですか?」
「う、うん…」
---
-----
『ねぇ、ラル…』
未だ炎を出せないツナを少し遠くから見つめながら、ラルに問いかけた。
『あたしは…どうしてリングが使えないの?』
その瞬間ラルは、目を見開いてすぐに逸らした。
何だか、余計に哀しくなる。
『あたし……そんなに無力だった?だから捕まったの?だからっ……足手まといなの…?』
「違う。」
自分で言いながらつらくなって来て、
だからラルが止めてくれて少し救われた。
それでも、不安は止まらない。
「檸檬は…決して無力ではなかった。むしろマフィア界で5本の指に入る程の強さを有していた。」
『え…?』
「DARQという呼び名は、知っているか?」
その問いに頷くと、ラルはあたしの頭に手を乗せた。
「アレは、闇という意味が全てではない。Dancing And Rhythm Queen……その略称だ。」
“踊りと旋律の女王”
数年前からその通り名は付いていたらしい。
あたしが究極のリズムを手に入れてから。
「強かったから、狙われた。白蘭にな…。」
『でも…リングが使えないのに?なのにどうして強くなれたの?』
分かる。
ラルは、返答に戸惑ってる。
「………波長が…」
『え?』
「波長が…読めたからだ。」
『波……長………??』
波長を読む…
それをあたしは、聞いた事があった。
お母さんの第六感。
世界の全てを、波長として見る事が出来るお母さん。
波長を辿って未来を視る、その能力。
そして、
自分に受け継がれているという事実。
その全てを知った時の出来事が今、走馬灯のように巡った。
「檸檬、お前にも戦闘能力を上げる余地はある。むしろ、10年後の檸檬のように第六感を完成させる事が出来れば、言う事なしだ。」
『じゃあっ…』
あたしはその修業をすればいい。
そう言おうとすると、ラルが遮った。
「リバウンドが無ければな。」
突き落とされるような、感覚がした。
聞きたくなかった言葉。
“リバウンド”
『どういう…事……?』
「今使っている6つの能力の比ではない。第六感を使って戦えば…5日間の安静が必要だ。」
『そんなっ…!』
何処までも、あたしは無力らしい。
戦えないの?
待ってるしかないの?
そんなの、嫌だ。
『絶対に嫌だっ!!』
「落ち着け、檸檬。」
『リボーン……』
涙腺を緩ませるあたしの肩に、リボーンがちょこんと乗る。
「ラル・ミルチ、」
「何だ。」
「檸檬の修業方法はどんなのだ。」
リボーンの言葉に、あたしもラルも目を見開いた。
「何を考えている!第六感を使えば檸檬の体は蝕まれると言ってるんだ!!」
「それでも、檸檬は使うつもりだ。そうだろ?」
無力は嫌だ。
待機も嫌だ。
どっちにしろ嫌なら…
『うんっ…!』
戦う方を選びたい。
「檸檬の母・揚羽は、未来視をしても死んでねぇ。だから檸檬、お前も大丈夫だぞ。」
『うんっ…』
「しかし…」
『ラル、あのね、』
反論しようとするラルに、あたしは言った。
涙はぐっと引っ込める。
『あたし…戦いたいの、みんなと一緒に。』
「檸檬…」
『リバウンドなんて関係ないよ。だって…戦闘時は最強なんでしょ?その後の事はどーでもいい。』
死にたくないよ。
動けなくなるのも嫌だよ。
けどね、
それを恐れて動かないのは一番嫌だから。
「お前の覚悟は分かった……だが、俺は知らない。」
『え?』
「だろーな。恐らく10年後の檸檬が独自に編み出したんだろう。」
「あぁ…第六感の研究結果が出されたのは数ヶ月前だ。それを元に檸檬は自分で完成させた。」
『その…研究結果ってゆーのは…』
「誰かに保管して貰ったと聞いたが…名前は聞いていない。」
『そんな…』
「檸檬、わかんねーか?」
『え?』
「10年後の自分が、誰に重要書類を預けたか。」
『未来の、あたしが……』
考えて、考えて、
ハッと気がつく。
まさか…
『…恭弥………?』
と、その時。
「やっぱりダメツナなんだ…」
ツナの呟きが聞こえる。
ラルは眉間に皺を寄せて。
「何度言えば分かる。」
「んげ!!」
ツナの弱気を修正しようと殴った。
「大丈夫っスか!10代目!!」
「ツナ、いいか!覚悟をこう…ボウッとイメージだ!!」
「やってるんだけど…」
その光景を見て、リボーンとラルは…
「リングを首にかけねーと出ねーのかもな。」
「それではダメだぜ。奴がボンゴレの10代目であるならば……10年後のの奴のいたステージに進んで貰う必要がある。」
真剣な会話を交わした。
ひとまず、あたしの修業はお預けのようだ。
誰が書類を持ってるか分からないし、
何よりまだ足が治ってない。
『早く、治らないかなぁ…』
---
------
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その頃、イタリア。
「白蘭様、」
「お。」
伝達係の呼びかけに、白蘭はソファに座ったまま期待を込めた声をあげる。
「正チャンからの連絡だったりする?」
「いえ…違います。」
「あ、そう。となると退屈だよねー、レオ君。」
言いながら、手にあるマシュマロをもてあそぶ。
「飯でも食い行く?」
「え"!そんな恐れ多い!!」
背伸びをする白蘭。
その前にある机には、マシュマロで象られた“73”の文字。
「うーん、じらすよなー。早く会いたいのに。……並盛中学2年A組、沢田綱吉クン♪」
手の中で転がしていたマシュマロを、ぱくりと口に含む。
「あ、あの…」
「ん?」
「メローネ基地のライト様よりお電話が…」
「ライト!??繋いで繋いで。」
「はっ!」
レオナルドは受話器を白蘭に渡す。
「もしもしー、」
-「到着報告、遅れて申し訳ございませんでした。」
「別にいーよ。単独行動許可したのこっちだし。で、どう?見つかりそう?」
-「これはただのカンですが…近々接触するかと。」
「……ふーん…そっか。頑張ってね♪」
-「はい、承知しております。」
ライトのカンが他の者よりも優れている事を、白蘭は知っていた。
それは、ボンゴレの超直感に値する程だと言う。
しかし、彼女のカンはそんな人間的直感ではなく、
動物的直感---
それだけではない。
彼女の五感も、普通の人間ではあり得ない、野生動物レベルなのだ。
「そーだ。今度かけて来るときはさ、モニター通信にしてよ。あるだろ?そっちにも。」
-「ありますが…理由をお聞きしても?」
「顔が見たいなって思って。」
-「………了解しました。」
返事の前にため息があったのを、白蘭は聞き逃さない。
「今のため息は?」
-「データ量が重いので。」
「あぁ、そんなのどーでもいいから。」
-「はい。」
---
------
電話をしながら、ライトは早速モニター通信を繋ぎ始めた。
その部屋の通信機器は長らく使われていなかったようで、回線が切られていたのだ。
しかし、パソコンを操作して回線復旧する事は、ライトにとって容易い事。
-「ねぇ、」
「何でしょう。」
-「“ダークの力”を手に入れたら、どうするつもり?」
電話越しの問いに、ライトはしばし口を閉ざす。
-「ライト?」
「ダークの力は未だ計り知れません。手に入れてから考慮致します。」
-「………そっか。」
一息入れてから、白蘭は問う。
-「ミルフィオーレからは、離れる?」
「未定です。」
-「ふーん…」
「ですが…」
-「ん?」
付け足される逆説語に、耳を傾ける白蘭。
「白蘭が解雇なさらない限りは、留まります。」
その言葉に白蘭が少し目を見開いたのを、
ライトは知らず。
「………白蘭…?」
-「やっぱいい子だね、君は。」
「…どうも。」
-「それじゃ、そろそろ切るよ。」
「はい。」
カチャリ、という音が聞こえた後、ライトも受話器を置いた。
ふと目を移した先には、伏せられた写真立て。
それを手に取り眺め、一言呟いた…。
「必ず……殺すから。」
門外顧問組織 CEDEF
(Consulenza Esterna Della Famiglia)
雲系蜈蚣のリング
(精製度E)
霧系リング
(精製度C)
霧のステルスリング
(精製度D)
蜈蚣
バルーン
迷彩柄の匣 等
赤と青の炎
「匣を開ける?………って、あの何かすごいのを出す…?」
疑問符を浮かべるツナ。
「それって修業と何の関係が…?」
「つべこべ言うな。やるのか、やらないのか?」
「や…やります!!」
その返事を聞いて、ラルはリボーンに修業出来る部屋はないか尋ねる。
それに答えたのはジャンニーニだった。
「それでしたら、下の階にトレーニングルームがございますよ。」
ってゆーか…
『ジャンニーニ!久しぶりっ!!』
「ま、まさか…檸檬様ですか!?」
『うんっ!』
ギューッと抱きつくと、後ろから襟首を引っ張られる。
『ほへ?』
「はしゃぐな檸檬。ジャンニーニ、案内を頼めるか?」
ラルだった。
やっぱり、結構真剣になった感じ。
それ程、さっき思い出してた事がつらかったのかなぁ…。
「勿論です、こちらへどうぞ。」
「山本、檸檬をエレベーターまで背負って来い。」
リボーンが言う。
『え?だ、大丈夫…』
「ほら。」
う~~~…
また背中を向けられる。
みんなはスタスタ行っちゃうし…
『あ…ありがと。』
「おう!」
ホント、ヒビなんて作らなきゃ良かった。
早く治さなくちゃ…。
ランボちゃん、イーピンちゃんもついて行ってて、
キッチンには京子とハルが残った。
「挨拶しそびれちゃったね…」
「意味不明発言満載のあのビターな美人レディは誰なんでしょう…?」
どうやら、2人はラルが劇団員か何かだと解釈したらしかった。
あとで適当に説明してあげようっと。
そんな事を考えながら、武の背中に乗ってエレベーターへ向かった。
地下へ向かう途中、ジャンニーニが色々説明してくれた。
このアジトは公共施設を避けていて、すごくいびつな形をしてるとか。
総面積はサンシーロ・スタジアムの約1.5倍で、
電力はエコっぽく地熱発電。
チン、
「おや、着きましたよ。」
『地下8階…』
開いたドアの向こうには…
「わぁ…」
広くて、天井も高い部屋。
これが地下にあるなんて信じられないくらい。
水場の修理に戻るジャンニーニを見送ると、ラルが尋ねた。
「雷の守護者は何処だ?見つかったと聞いたが…」
『へ?ずっとそこにいるよ。』
「お前が視界に入れないようにしてる、あの毛の塊だぞ。」
ラルは、広い部屋に興奮してはしゃぐランボちゃんに目を移す。
だけど、
「俺には見えん。」
「(存在を消したー!!)」
『あはは…』
とりあえず、ランボちゃんの存在を確認したところで。
「今一度問う。生半可では付いて来れないぞ。本当にやる気があるのか?」
「ああ!」
「やります!!」
「ったりめーだ!吠え面かくなよ!」
『この時代の事、ちゃんと理解したい!』
「…分かった。絶対に出来ないと言うなよ。弱音を吐く奴は容赦なく修正する。」
その言葉にツナは身震いしたけど、
それでも決意したようだった。
あたし達の気持ちを再確認したラルは、説明を始める。
「この時代は、お前達の生きていた10年前と違い…リングに炎を灯し、匣を開ける事が出来なければ戦いにならない。」
ゴーグルを装着したラルは、一瞬あたしの方を見る。
「お前は別だがな、檸檬。」
『え…?』
そうだよあたし…
リング使えないって言われたんだった…。
「だから匣を開けるプロセスを学ぶ事が、この時代の戦闘を理解するのに一番てっとり早いんだな。」
「そんなところだ。運良く開匣出来たとしても、仕組みを知らねば意味はない。」
ラルの言葉に、隼人がギクッとしてた。
「まずはリングを理解しろ。」
リングに出来る事は二つある。
そのものの力を使う事と、
匣を開ける事。
「前者で言えばこの武器は、リングから発生した炎を、そのまま射出している。」
ラルの左手についている武器の6つの穴から、炎の筋が飛び出す。
それが壁に当たると、もの凄い音がして少し崩れた。
そんな風に、リングそのものの力は攻撃の基本になる事が多いそうだ。
次にラルが見せてくれたのは匣。
「炎を電気に例えるなら、匣は電化製品といったところだ。」
『なるほどー…』
「種類は実に……多種多様。」
言いながらラルが出したのは、蜈蚣っぽいのと気球っぽいの。
基本的に、どの匣も最初に炎をチャージした分しか働かない。
炎が切れると活動停止。
だけど、最近は開匣した後に更にリングの炎を纏わせるタイプや、
敵の炎を吸収してパワーアップするタイプもあるらしい。
「ここまでで分からない事はあるか?」
ゴーグルを取って、ラルが尋ねる。
と、
「あ…あのー………一つもわかんねーんスけど。」
『えぇー!?』
「(言い放ったー!!)」
すると、ラルはコツコツ歩み寄り…
ドゴッ、
「分かれ。」
…殴った。
「山本ォ!!」
『武っ!!』
ツナが、武が来たばかりで何も知らないのだと言うと、
「後で説明してやれ。」
とだけ言った。
「では実践だ。沢田と獄寺はリングに炎を灯したと聞いたが…本当だろうな。」
『隼人の方は確かに見たけど…』
「えと…」
「ったりめーよ!!」
隼人の表情はやる気に満ち溢れてる。
「見せてみろ。」
「それが俺…何が起こったか覚えてなくて…」
「覚悟を炎にするイメージ!!!」
戸惑うツナの隣で、隼人は念じ始める。
覚悟を炎にするイメージ……らしい。
でも、
「ど、どーした!?確かにあん時は!!」
「やはりな…」
隼人のリングは全く変化を見せない。
ラルはため息をつきながら言う。
「非常時に偶然炎が出るというのはありうる話だ。だがそんな火事場のクソ力に頼っていてはとても実戦では……」
ボウッ、
『あ!』
「っしゃあ!!」
「すごいよ獄寺君!!真っ赤な死ぬ気の炎だ!!」
「いやー、まだまだっス!!」
嬉しそうにそう言う隼人の嵐のリングには、赤く燃える死ぬ気の炎。
それを見た武も、
「これ、そんなの出んのかよ。」
と、リングを右手中指に付ける。
「覚悟を炎にってーと、こんな感じか?」
それまでいつもの笑顔だった武は、
一瞬真剣な表情を見せる。
と、次の瞬間。
ボウッ、
『わ!』
「ハハハ!出た出たっ♪」
「山本は青い炎!!バジル君と同じだ!!」
「て…てめー、こうも簡単に!!」
その光景を見て、ラルは驚愕を隠せないでいた。
「(ここまで30時間はかかるとふんでいた…これがボンゴレリングの力…いや、奴らの覚悟か……)」
『(ラル…?)』
何かを真剣に考えてるっぽいラル。
と、そこでリボーンが話しかける。
「久しぶりに教官の血が騒ぎだしたか?お前今、エロい顔してたぞ。」
「なっ…昔からお前は!人の事を見透かしたように……!!」
「お前、不器用だけど分かり易いからな。」
昔から…?
この2人の会話はいつも何処か引っかかる。
だけど、追求する事は出来ない気がする。
「あん時も俺はお前の気持ちの変化がお前以上に分かって…」
「だっ、黙れ!!」
「……んだ?」
「喧嘩?」
2人の言い合いにツナ達が反応する。
と、ラルは半ば八つ当たりのように怒鳴った。
「沢田!!お前の炎はどーした!?」
「え…いや…あの…それが……やってるんだけど………さっぱり出来なくて…」
苦笑いを浮かべるツナに、ラルは駆け寄る。
そして…
「甘えるな。」
パァンッ、
『ツナ!』
…殴った。
「どわっ!」
「何しやがる!!10代目は怪我してんだぞ!!」
「今のはツナが悪い。」
殴られて、起き上がるツナにラルは言う。
「1時間以内に全員がリングに炎を灯し、コレを開ける事が出来なければ、修業は中止だ。俺は発つ。」
「そんなぁ!!待って下さい!!」
『ツナ……』
頑張って、と…
祈る事しか出来なくて、
本当に悔しくてたまらなかった。
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一方キッチンでは、調理を終えた京子とハルが退屈を持て余していた。
「ツナさん達、遅いですねー…。先にお風呂入りましょうか…。」
しかし、ハルの言葉に京子は答えない。
何やら不安そうに何かを考えている。
「京子ちゃん?」
「えっ…?」
「だ…大丈夫ですか?」
「う、うん…」
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『ねぇ、ラル…』
未だ炎を出せないツナを少し遠くから見つめながら、ラルに問いかけた。
『あたしは…どうしてリングが使えないの?』
その瞬間ラルは、目を見開いてすぐに逸らした。
何だか、余計に哀しくなる。
『あたし……そんなに無力だった?だから捕まったの?だからっ……足手まといなの…?』
「違う。」
自分で言いながらつらくなって来て、
だからラルが止めてくれて少し救われた。
それでも、不安は止まらない。
「檸檬は…決して無力ではなかった。むしろマフィア界で5本の指に入る程の強さを有していた。」
『え…?』
「DARQという呼び名は、知っているか?」
その問いに頷くと、ラルはあたしの頭に手を乗せた。
「アレは、闇という意味が全てではない。Dancing And Rhythm Queen……その略称だ。」
“踊りと旋律の女王”
数年前からその通り名は付いていたらしい。
あたしが究極のリズムを手に入れてから。
「強かったから、狙われた。白蘭にな…。」
『でも…リングが使えないのに?なのにどうして強くなれたの?』
分かる。
ラルは、返答に戸惑ってる。
「………波長が…」
『え?』
「波長が…読めたからだ。」
『波……長………??』
波長を読む…
それをあたしは、聞いた事があった。
お母さんの第六感。
世界の全てを、波長として見る事が出来るお母さん。
波長を辿って未来を視る、その能力。
そして、
自分に受け継がれているという事実。
その全てを知った時の出来事が今、走馬灯のように巡った。
「檸檬、お前にも戦闘能力を上げる余地はある。むしろ、10年後の檸檬のように第六感を完成させる事が出来れば、言う事なしだ。」
『じゃあっ…』
あたしはその修業をすればいい。
そう言おうとすると、ラルが遮った。
「リバウンドが無ければな。」
突き落とされるような、感覚がした。
聞きたくなかった言葉。
“リバウンド”
『どういう…事……?』
「今使っている6つの能力の比ではない。第六感を使って戦えば…5日間の安静が必要だ。」
『そんなっ…!』
何処までも、あたしは無力らしい。
戦えないの?
待ってるしかないの?
そんなの、嫌だ。
『絶対に嫌だっ!!』
「落ち着け、檸檬。」
『リボーン……』
涙腺を緩ませるあたしの肩に、リボーンがちょこんと乗る。
「ラル・ミルチ、」
「何だ。」
「檸檬の修業方法はどんなのだ。」
リボーンの言葉に、あたしもラルも目を見開いた。
「何を考えている!第六感を使えば檸檬の体は蝕まれると言ってるんだ!!」
「それでも、檸檬は使うつもりだ。そうだろ?」
無力は嫌だ。
待機も嫌だ。
どっちにしろ嫌なら…
『うんっ…!』
戦う方を選びたい。
「檸檬の母・揚羽は、未来視をしても死んでねぇ。だから檸檬、お前も大丈夫だぞ。」
『うんっ…』
「しかし…」
『ラル、あのね、』
反論しようとするラルに、あたしは言った。
涙はぐっと引っ込める。
『あたし…戦いたいの、みんなと一緒に。』
「檸檬…」
『リバウンドなんて関係ないよ。だって…戦闘時は最強なんでしょ?その後の事はどーでもいい。』
死にたくないよ。
動けなくなるのも嫌だよ。
けどね、
それを恐れて動かないのは一番嫌だから。
「お前の覚悟は分かった……だが、俺は知らない。」
『え?』
「だろーな。恐らく10年後の檸檬が独自に編み出したんだろう。」
「あぁ…第六感の研究結果が出されたのは数ヶ月前だ。それを元に檸檬は自分で完成させた。」
『その…研究結果ってゆーのは…』
「誰かに保管して貰ったと聞いたが…名前は聞いていない。」
『そんな…』
「檸檬、わかんねーか?」
『え?』
「10年後の自分が、誰に重要書類を預けたか。」
『未来の、あたしが……』
考えて、考えて、
ハッと気がつく。
まさか…
『…恭弥………?』
と、その時。
「やっぱりダメツナなんだ…」
ツナの呟きが聞こえる。
ラルは眉間に皺を寄せて。
「何度言えば分かる。」
「んげ!!」
ツナの弱気を修正しようと殴った。
「大丈夫っスか!10代目!!」
「ツナ、いいか!覚悟をこう…ボウッとイメージだ!!」
「やってるんだけど…」
その光景を見て、リボーンとラルは…
「リングを首にかけねーと出ねーのかもな。」
「それではダメだぜ。奴がボンゴレの10代目であるならば……10年後のの奴のいたステージに進んで貰う必要がある。」
真剣な会話を交わした。
ひとまず、あたしの修業はお預けのようだ。
誰が書類を持ってるか分からないし、
何よりまだ足が治ってない。
『早く、治らないかなぁ…』
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その頃、イタリア。
「白蘭様、」
「お。」
伝達係の呼びかけに、白蘭はソファに座ったまま期待を込めた声をあげる。
「正チャンからの連絡だったりする?」
「いえ…違います。」
「あ、そう。となると退屈だよねー、レオ君。」
言いながら、手にあるマシュマロをもてあそぶ。
「飯でも食い行く?」
「え"!そんな恐れ多い!!」
背伸びをする白蘭。
その前にある机には、マシュマロで象られた“73”の文字。
「うーん、じらすよなー。早く会いたいのに。……並盛中学2年A組、沢田綱吉クン♪」
手の中で転がしていたマシュマロを、ぱくりと口に含む。
「あ、あの…」
「ん?」
「メローネ基地のライト様よりお電話が…」
「ライト!??繋いで繋いで。」
「はっ!」
レオナルドは受話器を白蘭に渡す。
「もしもしー、」
-「到着報告、遅れて申し訳ございませんでした。」
「別にいーよ。単独行動許可したのこっちだし。で、どう?見つかりそう?」
-「これはただのカンですが…近々接触するかと。」
「……ふーん…そっか。頑張ってね♪」
-「はい、承知しております。」
ライトのカンが他の者よりも優れている事を、白蘭は知っていた。
それは、ボンゴレの超直感に値する程だと言う。
しかし、彼女のカンはそんな人間的直感ではなく、
動物的直感---
それだけではない。
彼女の五感も、普通の人間ではあり得ない、野生動物レベルなのだ。
「そーだ。今度かけて来るときはさ、モニター通信にしてよ。あるだろ?そっちにも。」
-「ありますが…理由をお聞きしても?」
「顔が見たいなって思って。」
-「………了解しました。」
返事の前にため息があったのを、白蘭は聞き逃さない。
「今のため息は?」
-「データ量が重いので。」
「あぁ、そんなのどーでもいいから。」
-「はい。」
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電話をしながら、ライトは早速モニター通信を繋ぎ始めた。
その部屋の通信機器は長らく使われていなかったようで、回線が切られていたのだ。
しかし、パソコンを操作して回線復旧する事は、ライトにとって容易い事。
-「ねぇ、」
「何でしょう。」
-「“ダークの力”を手に入れたら、どうするつもり?」
電話越しの問いに、ライトはしばし口を閉ざす。
-「ライト?」
「ダークの力は未だ計り知れません。手に入れてから考慮致します。」
-「………そっか。」
一息入れてから、白蘭は問う。
-「ミルフィオーレからは、離れる?」
「未定です。」
-「ふーん…」
「ですが…」
-「ん?」
付け足される逆説語に、耳を傾ける白蘭。
「白蘭が解雇なさらない限りは、留まります。」
その言葉に白蘭が少し目を見開いたのを、
ライトは知らず。
「………白蘭…?」
-「やっぱいい子だね、君は。」
「…どうも。」
-「それじゃ、そろそろ切るよ。」
「はい。」
カチャリ、という音が聞こえた後、ライトも受話器を置いた。
ふと目を移した先には、伏せられた写真立て。
それを手に取り眺め、一言呟いた…。
「必ず……殺すから。」