未来編①
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ボンゴレ地下アジトのとある一室。
身支度をし、
匣を備え、
他と少し違う“おしゃぶり”を手にしたラル。
その格好は、初めてツナと手合わせした時と同じ。
ふと、机の上の写真立てに目が行く。
それを手に取るラルの表情は、少し哀しげになった。
それは、思い出の写真。
遠い昔、教官をしていた頃の自分と、
生徒であったコロネロの写真。
ラル・ミルチ
写真を懐にしまい、自動ドアの前に立つ。
と、
「お…お願いです!!この時代の戦い方の指導をして下さい!!」
目の前に、土下座したツナと獄寺がいた。
少し見つめてから、問いかける。
「何のマネだ。」
「お…俺達もっと強くならなくちゃいけなくて……でも…リングの使い方とか分からなくて………えと…」
どもりながら説明するツナを見て、ラルはため息をつき一言。
「リボーンの差し金だな。」
すると、
「ピンポーン!守護者を集める為には戦力アップは必須だからな。お前以外適任者はいねーんだ。」
ツナの頭を踏みつぶしながらリボーンが登場。
つんのめるツナに、心配する獄寺。
「断る。山本に頼むんだな。」
「それがな…山本は見ての通りただの野球バカに戻っちまったんだ。」
リボーンはツナの頭からジャンプして、隣に現れた山本の肩に乗った。
「ども。」
山本はラルに軽く挨拶し、獄寺が土下座しろと叱る。
しかし…
「お前達と遊んでる暇はない。俺は発つ。ここでジッとしていろ。少しは長生き出来るぜ。」
ラルはツナ達の前を素通りしてしまう。
「ちょっと待って下さい!!真剣なんです!!リボーンに言われたからってワケじゃ…」
「もうやめましょう、10代目っ!」
ツナを止めて、ラルの指導者としての資質を疑い始める獄寺。
しかし、リボーンは言う。
ラル・ミルチはイタリア特殊部隊コムスビンの元教官で、アルコバレーノになる以前のコロネロを育て上げた……と。
「ええー!?あのコロネロの教官ー!?」
「あ…アルコバレーノを育てたんスか!!」
ラルの若さや、
“アルコバレーノになる以前”という単語に疑問を持つツナと獄寺だったが、
「とにかく、リングでの戦い方を知るのはあの人しかいないんだ!止めなくちゃ!!」
「10代目…」
と、そこに。
『ツナー!ランボちゃん達そっち行っちゃったー!!』
「へ?」
「ガハハハ!!」
檸檬の声がしたかと思うと、ランボの笑い声が聞こえて来た。
「ツナ、見て見て!鉄砲いっぱい!!」
「んな!?ランボ!一体そんな物何処から!!?」
「ずーっとずーっと向こうの部屋!迷路みたいで面白いんだよ!!」
満面の笑みで言うランボの頭を抑えながらツナは言う。
「頼むからジッとしててくれよ!今大事なお願いしてんだから!!」
と、今度は…
「キャアアァ!!!」
女子の甲高い悲鳴。
「何だ?」
「キッチンから!京子ちゃん達だ!!」
走り出すツナに、続く獄寺と山本。
その後ろ姿を見て、ラルは呆れたようにため息をついた。
---
------
「どーしたの!?」
「流しの下に何かいるんです!」
キッチンに辿り着いた3人。
流しの下には、確かに変な黒い物体が詰まっている。
「んだこりゃ…?」
と、その時。
ズボッ、
ぐしゃっ、
「ぐわっ!」
獄寺がその“何か”に押しつぶされた。
「いやー、抜けました~♪」
黒い物体は、実は人間で。
「私、ボンゴレファミリー御用達武器チューナーにして、発明家の、ジャンニーニでございます。」
スーツを着た丸っこい彼は、出て来るなり自己紹介。
それを聞いて、ツナはと山本は思い出す。
「武器をおかしくしちゃう!!」
「あの面白ぇオッサンだな。」
「おい!いつまで乗ってんだ!!」
「あっ、コレは失礼。」
立ち上がったジャンニーニは、更に自己紹介を続ける。
「お久しぶりです、皆様。私もすっかり立派になりまして、今や超一流のメカアーティストに成長致しました。」
彼は、2週間程前に父親の推薦によりボンゴレの日本支部システム全般を任されたらしい。
外にあったバリアもリボーンが着ている服も、彼の作だそうだ。
しかし…
「この水回りは先週組み立てたのですが…色々と部品が余ってしまって、何処のかな……と。」
「本当に腕、確かなのー!!?」
と、そこに。
『い…っしょっ……よい…しょっと…』
「ん?」
後から来てツナ達の様子を見つめているラル。
そのまた後から杖をついて歩いて来たのは、
檸檬だった。
『あ、ラル!』
門外顧問所属以来の再会に、顔を輝かせる檸檬。
「檸檬…」
「きょ、京子ちゃん大丈夫!?」
「火・事!!火・事!!」
「コラ!うるせーぞアホ牛!!」
ツナ達が騒ぐ声を聞き、足を早めようとする檸檬だったが、
コケッ、
『きゃ!』
やはり右足が思うように動かない。
『わわっ…!』
ガシッ、
「まったく…」
『ラル!』
転びそうになる檸檬の腕を掴み、支えてくれたのはラルだった。
檸檬は思わず笑顔になる。
『ありがとう♪』
「……気をつけろ。」
『はーい!』
と、そこにリボーンが。
「あんまり無理して歩くなよ、檸檬。」
『うん。でも立ってる分には平気。』
「歩くといてーんだろ?なるべく安静にしとけ。」
『…そだね。』
やけに素直な檸檬の返答に、疑問を抱くラル。
昔の檸檬は、大丈夫だと反発したはずだ。
それはリボーンも思ったらしく、檸檬に問う。
「どーしたんだ?素直だな。」
『うん。だって…早く回復しないと戦えないでしょ?』
檸檬の言葉に、ラルは目を見開いた。
「檸檬、お前…」
『え?』
「あのままごと集団と一緒に戦うつもりか?」
その問いかけに、檸檬は当然のように頷く。
『勿論♪』
「生き残る見込みは0だ。鍛える気も起こさせないような奴らだぞ。」
『それでも、大切な仲間だもん。』
言いながら、檸檬は大騒ぎするツナ達の方を見る。
リボーンが付け足す。
「奴ら、ボンゴレリングに炎を灯したそうだぞ。」
「何を言っている。昨日今日で習得出来る事ではない。」
「だが現に2人ともリングに炎を灯し、獄寺は匣を開けたぞ。あー見えてアイツらは真剣だ。」
「デタラメ言うな!」
『デタラメじゃないよっ!』
怒鳴るラルに反論したのは、隣にいる檸檬だった。
『あたし…見たよ?隼人が不思議な武器使ってたのも、その武器が小さな匣にしまわれたのも。』
「だが…出来るワケがない!」
「お前、昔も年下のアイツに同じ事言ってたな。」
『(アイツ…?)』
リボーンの声が、急に真剣味を増した。
「出来るワケがない、見込みは0だ、立ち去れ……ってな。」
その時、
ラルの脳裏に生徒であるコロネロとの思い出が蘇ってる事なんて、
あたしは知る由もなくて。
「でも、お前は見たはずだ。ラル・ミルチ…。」
リボーンが言葉を紡げば紡ぐ程、ラルは複雑そうな表情になってく。
「本当に大切なモノを守る時の、呪いすら恐れぬ人の力を。」
---
ラルの脳裏に浮かぶのは、
自分が守られた瞬間の事。
守られた事による、
“哀しみ”
---
『(呪い……!?)』
「アレを、繰り返しちゃいけねーんだ。」
リボーンに言われた事で、
ラルが何を考えたのかは分からない。
だけど、
その瞳は確実に決意を宿したモノに変わっていって。
『ラル…?』
何処からか取り出したバンダナは、
見覚えのある柄だった。
それをギュッと握りしめ、ラルは叫んだ。
「聞け!!!」
---
------
-----------
同じ頃、ミルフィオーレ日本支部。
第3部隊の隊長と話をしに来た入江、チェルベッロ、そしてライト。
「この部屋におられるはずです。」
「うん。」
ガシャン、
入ろうとした途端、何かが足にぶつかる。
そして、奥から低い男の声。
「誰だ?」
「ホワイトスペル第2ローザ隊隊長A級・入江正一です。」
名乗った後、入江は隣のライトにも名乗るよう視線を送るが、ライトは首を横に振る。
「おおっと、こいつは失礼!こちらから挨拶に伺おうと思ってたんだが…」
一番奥の椅子から立ち上がり、酒瓶を置いて、こちらに顔を向ける。
「俺がブラックスペル第3アフェランドラ隊隊長…γ(ガンマ)だ。ようこそメローネ基地へ。」
部屋の中から現れた金髪のオールバックの男。
入江君が少し褒めると、惜しみなく協力すると言った。
でも、太猿と野猿がトラブルを起こした件についての説明はまるでダメ。
監督不行届きの一言だけ。
「ですが……問題は匣を4つ失った事でして…」
入江君が追求しようとするけど、
γは頼み込む視線を送って上手くかわした。
「(入江君も…お人好しだわ。)」
「次は庇いきれないと伝えて下さい。」
「いやぁ助かる。アイツらは俺がもう一度とっちめとくよ。」
「それともう一つ、情報伝達の事なんですが…」
真剣な表情になる入江君。
「ボンゴレに関する事はいかなる小さな事でも、噂であってもいい。もし何かあった時には必ず僕に伝達して下さい。」
「そいつは…あんたの特別な任務と関係あんのかい?」
生意気な事に、カマをかけて来た。
惜しみなく協力するんじゃなかったのかしら。
入江君も、動揺し過ぎ。
別に私には関係ないけど。
「いいえ…ただ…お願いを………」
「そうかい、了解した。」
「では僕はこれで。」
方向転換する入江君に、γは尋ねる。
「茶でもどーだ?後ろの方々も一緒に。」
「結構です。」
「…そちらの美人は?」
この男、雰囲気は掴めるみたい。
私と入江君達が“別だ”って…見抜いた。
「じゃあ、一杯だけ頂いて行くわ。」
「え?」
「入江君、先に帰ってて。」
「わ、分かった…。」
私が残る事に少し驚いたのか、入江君は躊躇いながら退室した。
「どうぞ、こっちに座ってくれ。」
「どうも。」
軽い会釈をして、彼が紅茶を入れるのを待つ。
ビリヤード台を机にするように置いてある椅子達。
その一つに座って見回してみると、大きなカーテンが掛かっていた。
「(奥に誰かいるのね…)」
ますます信用ならない男。
もともと、私は誰も信用なんてしないけど。
カタン、
カップがビリヤード台に置かれて、私は軽く会釈をした。
一口含み、それが“普通の紅茶”である事を確認する。
「お名前を聞いてもいいかな?」
「ライト、と周りは呼んでるわ。」
「ライト…?」
これは、白蘭の指示。
たとえミルフィオーレの人間でも、初対面で決して本名は名乗るな、と。
「んじゃ、ライトさん。これはただのカンなんだが…本当に紅茶一杯の為に残ったワケじゃないだろう?」
「察しがいいのね。それじゃ、質問を一つしてもいいかしら。」
私の返答にγは軽く頷く。
「入江君に隠したボンゴレの情報…教えてくれない?」
さっきのγと同じ。
心理戦を仕掛けてみる。
もし本当に隠している事がないのなら、
信頼を得ようと真剣に返答するはずだもの。
さぁ…
貴方はどう答える…?
「………ハハハ!隠している事前提か!」
笑った。
コイツは黒。決まりね。
「教えるも何も、そんな情報はないさ。」
「私が求めてる答えは、YESかNOよ。」
「そんなのNOに決まってるじゃないか。無いんだからなぁ。」
「…………そう、分かったわ。」
貴方が何かを隠してるって事が。
紅茶を飲み干し、ハンカチでカップの縁を軽く拭く。
「ごちそうさま。」
「ん?もう少しゆっくりして行かないのか?」
立ち上がる私を、引き止めようとするγ。
「最初に言ったはずよ。一杯だけ頂くって。」
そう言い残し、私は退室した。
γの部下…太猿と野猿がボンゴレの人物と接触した可能性は9割9分。
そして、ダークがこの街に来ている可能性も9割9分。
だったら…
私は足を速めて、専用に設けられた個室に戻った。
---
-----
シャーッ、
ビリヤード台の奥に掛かっていたカーテンが開く。
「あれがミルフィオーレに5人しかいないA級の一人かよ。モヤシみてーだな、γアニキ。」
中にいるのは、負傷している野猿と太猿。
彼らは全ての会話を聞いていたのだ。
「おつむは切れるんじゃねーのか?白蘭が最も信頼してるらしいからな。」
やはり、γが入江に言った“特別な任務”というのは、動揺を見る為の言葉だったらしい。
「ま、俺達は独自の判断で任務遂行しようじゃねーか。」
「あぁ、次こそは雨の守護者を殺し、あのガキどもの正体を暴く。」
「だよな!あれは俺達の獲物!誰にもやるもんか!!」
口角を上げる野猿に、前回の失態を指摘するγ。
「油断したんだ!次こそは…」
「心配してねーよ。」
言いながらビリヤードの球を打つγ。
バチッ、
「次は俺も出るからな。」
次の瞬間、ビリヤード台は完全に破壊されていた…。
---
------
----------
突然怒鳴ったラルに、ツナ達も驚いたみたい。
ランボちゃん達さえ動きを止めて、
京子とハルは誰だろう、と呟いた。
「最低限の戦闘知識と技術は、俺が叩き込んでやる。」
『ラル…!』
「え……じゃ、じゃあ…」
真剣な目線と共に放たれたその言葉は、
希望のしるし。
「日本に送られているのはミルフィオーレの中でもトップクラスの部隊だ。」
ラルは説明し始める。
ミルフィオーレは、二つのファミリーが合併して出来たファミリーである事。
白蘭擁する新進気鋭のジェッソファミリーと、
ユニ擁するボンゴレと同等の歴史を持つジッリョネロファミリー。
ジェッソ出身はホワイトスペル、
ジッリョネロ出身はブラックスペルとして
それぞれの色の制服を身に着けているそうだ。
「ちなみにホワイトスペルは緻密で狡猾な戦いを得意とし、ブラックスペルは実践でならした猛者が多いと言われる。」
『へぇ…』
リボーンが一目置くだけあって、ラルの説明はすごく分かり易い。
と、ここで、隼人が口を開く。
「う"お"ぉい!!てめーどーゆー風の吹き回しだ?急にベラベラと!!」
「ご、獄寺君…」
「お…おい!何でスクアーロ…?」
『アロちゃんのマネ、可愛いねっ♪』
するとラルはぴしゃりと言う。
「心配はいらん!一度でもついて来れなくなった時点で見捨ててやる。」
うわお。
かなりの鬼教官ぽい。
「早速、最初の修業を始めるぞ。」
言いながら、ラルは懐から一つの匣を取り出す。
「3人のうち、誰でもいい。」
それには、やはり見覚えのある迷彩柄が描かれていて。
「一度も開いた事のない、この匣を開匣しろ。」
匣…
確か、炎が出せなければ開けない。
炎ってゆーのはリングを使って出すモノだから…
『(あたし…出来ないのかぁ……)』
無力で、
もどかしくて、
つらくて、
少し強く拳を握った。
身支度をし、
匣を備え、
他と少し違う“おしゃぶり”を手にしたラル。
その格好は、初めてツナと手合わせした時と同じ。
ふと、机の上の写真立てに目が行く。
それを手に取るラルの表情は、少し哀しげになった。
それは、思い出の写真。
遠い昔、教官をしていた頃の自分と、
生徒であったコロネロの写真。
ラル・ミルチ
写真を懐にしまい、自動ドアの前に立つ。
と、
「お…お願いです!!この時代の戦い方の指導をして下さい!!」
目の前に、土下座したツナと獄寺がいた。
少し見つめてから、問いかける。
「何のマネだ。」
「お…俺達もっと強くならなくちゃいけなくて……でも…リングの使い方とか分からなくて………えと…」
どもりながら説明するツナを見て、ラルはため息をつき一言。
「リボーンの差し金だな。」
すると、
「ピンポーン!守護者を集める為には戦力アップは必須だからな。お前以外適任者はいねーんだ。」
ツナの頭を踏みつぶしながらリボーンが登場。
つんのめるツナに、心配する獄寺。
「断る。山本に頼むんだな。」
「それがな…山本は見ての通りただの野球バカに戻っちまったんだ。」
リボーンはツナの頭からジャンプして、隣に現れた山本の肩に乗った。
「ども。」
山本はラルに軽く挨拶し、獄寺が土下座しろと叱る。
しかし…
「お前達と遊んでる暇はない。俺は発つ。ここでジッとしていろ。少しは長生き出来るぜ。」
ラルはツナ達の前を素通りしてしまう。
「ちょっと待って下さい!!真剣なんです!!リボーンに言われたからってワケじゃ…」
「もうやめましょう、10代目っ!」
ツナを止めて、ラルの指導者としての資質を疑い始める獄寺。
しかし、リボーンは言う。
ラル・ミルチはイタリア特殊部隊コムスビンの元教官で、アルコバレーノになる以前のコロネロを育て上げた……と。
「ええー!?あのコロネロの教官ー!?」
「あ…アルコバレーノを育てたんスか!!」
ラルの若さや、
“アルコバレーノになる以前”という単語に疑問を持つツナと獄寺だったが、
「とにかく、リングでの戦い方を知るのはあの人しかいないんだ!止めなくちゃ!!」
「10代目…」
と、そこに。
『ツナー!ランボちゃん達そっち行っちゃったー!!』
「へ?」
「ガハハハ!!」
檸檬の声がしたかと思うと、ランボの笑い声が聞こえて来た。
「ツナ、見て見て!鉄砲いっぱい!!」
「んな!?ランボ!一体そんな物何処から!!?」
「ずーっとずーっと向こうの部屋!迷路みたいで面白いんだよ!!」
満面の笑みで言うランボの頭を抑えながらツナは言う。
「頼むからジッとしててくれよ!今大事なお願いしてんだから!!」
と、今度は…
「キャアアァ!!!」
女子の甲高い悲鳴。
「何だ?」
「キッチンから!京子ちゃん達だ!!」
走り出すツナに、続く獄寺と山本。
その後ろ姿を見て、ラルは呆れたようにため息をついた。
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「どーしたの!?」
「流しの下に何かいるんです!」
キッチンに辿り着いた3人。
流しの下には、確かに変な黒い物体が詰まっている。
「んだこりゃ…?」
と、その時。
ズボッ、
ぐしゃっ、
「ぐわっ!」
獄寺がその“何か”に押しつぶされた。
「いやー、抜けました~♪」
黒い物体は、実は人間で。
「私、ボンゴレファミリー御用達武器チューナーにして、発明家の、ジャンニーニでございます。」
スーツを着た丸っこい彼は、出て来るなり自己紹介。
それを聞いて、ツナはと山本は思い出す。
「武器をおかしくしちゃう!!」
「あの面白ぇオッサンだな。」
「おい!いつまで乗ってんだ!!」
「あっ、コレは失礼。」
立ち上がったジャンニーニは、更に自己紹介を続ける。
「お久しぶりです、皆様。私もすっかり立派になりまして、今や超一流のメカアーティストに成長致しました。」
彼は、2週間程前に父親の推薦によりボンゴレの日本支部システム全般を任されたらしい。
外にあったバリアもリボーンが着ている服も、彼の作だそうだ。
しかし…
「この水回りは先週組み立てたのですが…色々と部品が余ってしまって、何処のかな……と。」
「本当に腕、確かなのー!!?」
と、そこに。
『い…っしょっ……よい…しょっと…』
「ん?」
後から来てツナ達の様子を見つめているラル。
そのまた後から杖をついて歩いて来たのは、
檸檬だった。
『あ、ラル!』
門外顧問所属以来の再会に、顔を輝かせる檸檬。
「檸檬…」
「きょ、京子ちゃん大丈夫!?」
「火・事!!火・事!!」
「コラ!うるせーぞアホ牛!!」
ツナ達が騒ぐ声を聞き、足を早めようとする檸檬だったが、
コケッ、
『きゃ!』
やはり右足が思うように動かない。
『わわっ…!』
ガシッ、
「まったく…」
『ラル!』
転びそうになる檸檬の腕を掴み、支えてくれたのはラルだった。
檸檬は思わず笑顔になる。
『ありがとう♪』
「……気をつけろ。」
『はーい!』
と、そこにリボーンが。
「あんまり無理して歩くなよ、檸檬。」
『うん。でも立ってる分には平気。』
「歩くといてーんだろ?なるべく安静にしとけ。」
『…そだね。』
やけに素直な檸檬の返答に、疑問を抱くラル。
昔の檸檬は、大丈夫だと反発したはずだ。
それはリボーンも思ったらしく、檸檬に問う。
「どーしたんだ?素直だな。」
『うん。だって…早く回復しないと戦えないでしょ?』
檸檬の言葉に、ラルは目を見開いた。
「檸檬、お前…」
『え?』
「あのままごと集団と一緒に戦うつもりか?」
その問いかけに、檸檬は当然のように頷く。
『勿論♪』
「生き残る見込みは0だ。鍛える気も起こさせないような奴らだぞ。」
『それでも、大切な仲間だもん。』
言いながら、檸檬は大騒ぎするツナ達の方を見る。
リボーンが付け足す。
「奴ら、ボンゴレリングに炎を灯したそうだぞ。」
「何を言っている。昨日今日で習得出来る事ではない。」
「だが現に2人ともリングに炎を灯し、獄寺は匣を開けたぞ。あー見えてアイツらは真剣だ。」
「デタラメ言うな!」
『デタラメじゃないよっ!』
怒鳴るラルに反論したのは、隣にいる檸檬だった。
『あたし…見たよ?隼人が不思議な武器使ってたのも、その武器が小さな匣にしまわれたのも。』
「だが…出来るワケがない!」
「お前、昔も年下のアイツに同じ事言ってたな。」
『(アイツ…?)』
リボーンの声が、急に真剣味を増した。
「出来るワケがない、見込みは0だ、立ち去れ……ってな。」
その時、
ラルの脳裏に生徒であるコロネロとの思い出が蘇ってる事なんて、
あたしは知る由もなくて。
「でも、お前は見たはずだ。ラル・ミルチ…。」
リボーンが言葉を紡げば紡ぐ程、ラルは複雑そうな表情になってく。
「本当に大切なモノを守る時の、呪いすら恐れぬ人の力を。」
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ラルの脳裏に浮かぶのは、
自分が守られた瞬間の事。
守られた事による、
“哀しみ”
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『(呪い……!?)』
「アレを、繰り返しちゃいけねーんだ。」
リボーンに言われた事で、
ラルが何を考えたのかは分からない。
だけど、
その瞳は確実に決意を宿したモノに変わっていって。
『ラル…?』
何処からか取り出したバンダナは、
見覚えのある柄だった。
それをギュッと握りしめ、ラルは叫んだ。
「聞け!!!」
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同じ頃、ミルフィオーレ日本支部。
第3部隊の隊長と話をしに来た入江、チェルベッロ、そしてライト。
「この部屋におられるはずです。」
「うん。」
ガシャン、
入ろうとした途端、何かが足にぶつかる。
そして、奥から低い男の声。
「誰だ?」
「ホワイトスペル第2ローザ隊隊長A級・入江正一です。」
名乗った後、入江は隣のライトにも名乗るよう視線を送るが、ライトは首を横に振る。
「おおっと、こいつは失礼!こちらから挨拶に伺おうと思ってたんだが…」
一番奥の椅子から立ち上がり、酒瓶を置いて、こちらに顔を向ける。
「俺がブラックスペル第3アフェランドラ隊隊長…γ(ガンマ)だ。ようこそメローネ基地へ。」
部屋の中から現れた金髪のオールバックの男。
入江君が少し褒めると、惜しみなく協力すると言った。
でも、太猿と野猿がトラブルを起こした件についての説明はまるでダメ。
監督不行届きの一言だけ。
「ですが……問題は匣を4つ失った事でして…」
入江君が追求しようとするけど、
γは頼み込む視線を送って上手くかわした。
「(入江君も…お人好しだわ。)」
「次は庇いきれないと伝えて下さい。」
「いやぁ助かる。アイツらは俺がもう一度とっちめとくよ。」
「それともう一つ、情報伝達の事なんですが…」
真剣な表情になる入江君。
「ボンゴレに関する事はいかなる小さな事でも、噂であってもいい。もし何かあった時には必ず僕に伝達して下さい。」
「そいつは…あんたの特別な任務と関係あんのかい?」
生意気な事に、カマをかけて来た。
惜しみなく協力するんじゃなかったのかしら。
入江君も、動揺し過ぎ。
別に私には関係ないけど。
「いいえ…ただ…お願いを………」
「そうかい、了解した。」
「では僕はこれで。」
方向転換する入江君に、γは尋ねる。
「茶でもどーだ?後ろの方々も一緒に。」
「結構です。」
「…そちらの美人は?」
この男、雰囲気は掴めるみたい。
私と入江君達が“別だ”って…見抜いた。
「じゃあ、一杯だけ頂いて行くわ。」
「え?」
「入江君、先に帰ってて。」
「わ、分かった…。」
私が残る事に少し驚いたのか、入江君は躊躇いながら退室した。
「どうぞ、こっちに座ってくれ。」
「どうも。」
軽い会釈をして、彼が紅茶を入れるのを待つ。
ビリヤード台を机にするように置いてある椅子達。
その一つに座って見回してみると、大きなカーテンが掛かっていた。
「(奥に誰かいるのね…)」
ますます信用ならない男。
もともと、私は誰も信用なんてしないけど。
カタン、
カップがビリヤード台に置かれて、私は軽く会釈をした。
一口含み、それが“普通の紅茶”である事を確認する。
「お名前を聞いてもいいかな?」
「ライト、と周りは呼んでるわ。」
「ライト…?」
これは、白蘭の指示。
たとえミルフィオーレの人間でも、初対面で決して本名は名乗るな、と。
「んじゃ、ライトさん。これはただのカンなんだが…本当に紅茶一杯の為に残ったワケじゃないだろう?」
「察しがいいのね。それじゃ、質問を一つしてもいいかしら。」
私の返答にγは軽く頷く。
「入江君に隠したボンゴレの情報…教えてくれない?」
さっきのγと同じ。
心理戦を仕掛けてみる。
もし本当に隠している事がないのなら、
信頼を得ようと真剣に返答するはずだもの。
さぁ…
貴方はどう答える…?
「………ハハハ!隠している事前提か!」
笑った。
コイツは黒。決まりね。
「教えるも何も、そんな情報はないさ。」
「私が求めてる答えは、YESかNOよ。」
「そんなのNOに決まってるじゃないか。無いんだからなぁ。」
「…………そう、分かったわ。」
貴方が何かを隠してるって事が。
紅茶を飲み干し、ハンカチでカップの縁を軽く拭く。
「ごちそうさま。」
「ん?もう少しゆっくりして行かないのか?」
立ち上がる私を、引き止めようとするγ。
「最初に言ったはずよ。一杯だけ頂くって。」
そう言い残し、私は退室した。
γの部下…太猿と野猿がボンゴレの人物と接触した可能性は9割9分。
そして、ダークがこの街に来ている可能性も9割9分。
だったら…
私は足を速めて、専用に設けられた個室に戻った。
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シャーッ、
ビリヤード台の奥に掛かっていたカーテンが開く。
「あれがミルフィオーレに5人しかいないA級の一人かよ。モヤシみてーだな、γアニキ。」
中にいるのは、負傷している野猿と太猿。
彼らは全ての会話を聞いていたのだ。
「おつむは切れるんじゃねーのか?白蘭が最も信頼してるらしいからな。」
やはり、γが入江に言った“特別な任務”というのは、動揺を見る為の言葉だったらしい。
「ま、俺達は独自の判断で任務遂行しようじゃねーか。」
「あぁ、次こそは雨の守護者を殺し、あのガキどもの正体を暴く。」
「だよな!あれは俺達の獲物!誰にもやるもんか!!」
口角を上げる野猿に、前回の失態を指摘するγ。
「油断したんだ!次こそは…」
「心配してねーよ。」
言いながらビリヤードの球を打つγ。
バチッ、
「次は俺も出るからな。」
次の瞬間、ビリヤード台は完全に破壊されていた…。
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突然怒鳴ったラルに、ツナ達も驚いたみたい。
ランボちゃん達さえ動きを止めて、
京子とハルは誰だろう、と呟いた。
「最低限の戦闘知識と技術は、俺が叩き込んでやる。」
『ラル…!』
「え……じゃ、じゃあ…」
真剣な目線と共に放たれたその言葉は、
希望のしるし。
「日本に送られているのはミルフィオーレの中でもトップクラスの部隊だ。」
ラルは説明し始める。
ミルフィオーレは、二つのファミリーが合併して出来たファミリーである事。
白蘭擁する新進気鋭のジェッソファミリーと、
ユニ擁するボンゴレと同等の歴史を持つジッリョネロファミリー。
ジェッソ出身はホワイトスペル、
ジッリョネロ出身はブラックスペルとして
それぞれの色の制服を身に着けているそうだ。
「ちなみにホワイトスペルは緻密で狡猾な戦いを得意とし、ブラックスペルは実践でならした猛者が多いと言われる。」
『へぇ…』
リボーンが一目置くだけあって、ラルの説明はすごく分かり易い。
と、ここで、隼人が口を開く。
「う"お"ぉい!!てめーどーゆー風の吹き回しだ?急にベラベラと!!」
「ご、獄寺君…」
「お…おい!何でスクアーロ…?」
『アロちゃんのマネ、可愛いねっ♪』
するとラルはぴしゃりと言う。
「心配はいらん!一度でもついて来れなくなった時点で見捨ててやる。」
うわお。
かなりの鬼教官ぽい。
「早速、最初の修業を始めるぞ。」
言いながら、ラルは懐から一つの匣を取り出す。
「3人のうち、誰でもいい。」
それには、やはり見覚えのある迷彩柄が描かれていて。
「一度も開いた事のない、この匣を開匣しろ。」
匣…
確か、炎が出せなければ開けない。
炎ってゆーのはリングを使って出すモノだから…
『(あたし…出来ないのかぁ……)』
無力で、
もどかしくて、
つらくて、
少し強く拳を握った。