未来編①
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「よく来たな、お前達。」
「小僧、」
「リボーンちゃん!」
『無事で良かった…』
アジトの中に入ると、リボーンが待っていた。
隼人はツナを医療室へ運び、
京子はイーピンちゃんを、
ハルはランボちゃんを抱え、
武はあたしをそうっと背から下ろした。
「色々驚いただろう。」
その深刻そうな顔つきが、全てを物語っているようだった。
「今からここで起こってる事を教える。心して聞いてくれ。」
入江正一 その2
医療室。
ベッドの上でうなされるツナ。
その心配をしつつ、太猿の行為を恨む獄寺。
「あぶない!」
突然ガバッと飛び起きたツナは、左肩を押さえる。
「10代目!お怪我をしてるんです!無理しちゃダメっス!!」
「獄寺君…ここは……?」
「アジトっス!全員無事で帰ってきました。それに、檸檬も見つかって合流しましたよ!」
「檸檬も…よ、良かった……」
と、ここでツナはハッと思い出す。
「き、来たんだ………京子ちゃんが過去から来ちゃったんだ!!」
すると獄寺も、少し眉を寄せて。
「その事なんですが…笹川だけじゃないんス……」
「え!?」
獄寺は話した。
10年後の山本が決めようとした時、急に全員入れ替わってしまったという事。
その後何故か10年後の檸檬が現れて助太刀をしたが、やはり途中で入れ替わってしまった事。
そして、何とか自分でリングの力により敵を退けたという事。
突然入れ替わった山本達は、みんな背後から10年バズーカを食らったらしい。
檸檬は別だが。
「そ、そんな…ダメだよ!!」
ツナは錯乱し始める。
「こんなトコにいたら…みんな殺されちゃうよ!!」
「じゅ…10代目!落ち着いて下さい!!」
「いつっ!!」
「大丈夫スか!?」
と、そこに…
「うえぇ~~ん…」
第3者の声。
「いやです、こんなの~~~」
ツナと獄寺が部屋の入り口にに視線を向けると…
涙を拭うハルが立っていた。
「10年後の世界が…こんなデストロイだなんて……」
「ハル…」
ハルを宥めるようにして、京子が背中をさする。
しかしその表情も、真っ青だった。
「ツナく…」
「ツナさーん!!ハルは平和な並盛に、帰りたいです!!」
自分に飛びつくハルを、ツナは困惑した目で見つめる。
京子も堪えきれない涙を浮かべ、
獄寺は悔しそうな辛そうな表情になった。
そこに、後からハーブティーを持ったリボーンと、檸檬に肩を貸しつつ歩く山本が入って来た。
「ハル・京子、こいつを飲め。特製ハーブティーだ、落ち着くぞ。」
「ありがとう、リボーン君。」
「それと、これを読んでおいてくれ。」
そう言って京子に巻物を一つ渡すリボーン。
と、その時。
「リボーン!!!」
ツナが大きな声を出し、全員が震える。
その目が訴える何かを感じ取ったリボーンは、一言。
「分かったぞ。」
そして、京子とハルに席を外すよう言った。
「檸檬、お前はどーする?」
『……聞く。』
2人が退席すると、リボーンは口を開いた。
「京子とハルには、今ヤバい状況下にいる事だけ伝えたぞ。マフィア関係については話してない。」
しかし、ツナは体を震わせたまま、噛み合ない答えを返す。
「帰さなきゃ…みんなをこんな所にいさせられない!何としても過去に帰さなきゃ!!」
『どしたの?ツナ!』
「お…おいツナ!」
「落ち着いて下さい10代目!」
「だいぶ錯乱してるな…」
「違うよ!守護者集めとか…そんなのんびりしてる場合じゃないって言ってんだ!!」
それでも、やっぱり守護者集めは避けられないというリボーンに、
ツナは根拠が無いって怒った。
でもその時、隼人が根拠になるモノを取り出した。
それは、10年後の隼人の鞄に入っていたらしい。
“守護者は集合……ボンゴレリングにて白蘭及びライトを退け、写真の眼鏡の男消すべし。全ては元に戻る”
「…以上です。」
「でも、今の話って…」
「はい。最初に10代目が10年後の俺から聞いた話と同じです。だから俺も気にとめてませんでした。」
けど、そこには希望が見えた。
なぜなら…
「この時代にあるはずが無いモノが書かれてるんです。」
「………あ!ボンゴレリング!!」
どうやら、ボンゴレリングはツナが処分するよう言ったらしく、この時代にはないみたい。
そこで、リボーンが言った。
「つまりこの手紙はこの時代のリング保持者、お前達に向けて書かれてたんだ。そして守護者を集めて任務を遂行すれば全ては元に戻る……過去に帰れるととれる。」
「か…過去に帰れる!?」
「幸いな事に、この眼鏡の男の目星はついてるぞ。ラル・ミルチが知っていてな、入江正一っていうらしい。」
入江……正一…?
---
------
-----------
その頃、日本某所。
高いヒールの音が二つ、廊下に響く。
白い服を着た2人の女は、巨大な円盤の方へと向かう。
近くには、一つの机と椅子。
何かの研究資料。
「クスクス…」
その光景を見た女達は、笑みを漏らす。
「失礼します。」
眠っている彼がつけていたヘッドフォンを取る。
「研究お疲れさまです。」
「ごめん……眠っちゃってたよ。」
その顔は、10年後の獄寺が持っていた写真の男と同じモノだった。
そして、彼・入江正一を起こした女達もまた、リング争奪戦で審判を務めていたチェルベッロの者達に酷似していた。
と、そこに。
「入江君…いる?」
もう一人、白い服の女が入って来る。
途端に、2人の女は姿勢を正して。
「ライト様!」
その名を呼ぶ。
すると、入江もビクッと肩を震わせ立ち上がる。
「あぁ…来てたんだ…ライトさん。」
「今来たの。」
“ライト”というのが彼女の本名でない事くらい、彼らも分かっている。
しかし、彼らが彼女をライトと呼ぶのは、ある意味仕方の無い事。
彼らは、その本名を知らないのだ。
「入江様、ブラックスペルが…」
「何か動いたの?」
「いえただ…負傷して帰還した上、匣を喪失したらしく…」
「ふーん…」
落ちていた上着を拾い、部屋を出る入江。
そのまま歩き出す。
「報告では、兄弟喧嘩をしたそうです。」
「なくもないだろう。野蛮な連中だよ、ブラックスペルは……」
そこまで言って、ふと振り返る。
その視線の先には、無言で付いて来るライトが。
「ところで…何かあったの?」
「…どうして?」
逆に質問を投げかけられ、入江は少したじろぐ。
「いや…白蘭サンが許可出すなんて意外で…」
「…ダークが逃走したの。行き先は恐らくこの街。」
「逃走…!?あんな状態でどうやって…!」
「入れ替わった、と白蘭はおっしゃってたわ。」
目線を逸らして考えるライトに、入江も納得する。
「確かに入れ替われば体力は回復する…だけどまさか、あの雨宮檸檬がバズーカに当たるなんて…」
その言葉に、ライトは少しだけ表情を歪ませた。
「…して、太猿と野猿の処分はいかがなされますか?」
「…僕が直接第3部隊の隊長と話をつけるよ。」
そう言ってため息をつき、再びライトに視線を移す。
「一緒に来る?ライトさん。」
「えぇ。入江君がいいのなら。」
「ところで君、白蘭サンから送られて来たモノ見た?」
チェルベッロと似た女の一人に尋ねる入江。
「えぇ…格納庫いっぱいに…確か花言葉は……」
「調べたさ。」
そう言ってまたため息をつく。
「期待…だろ?プレッシャーで僕を殺す気なのさ、あの人は……」
「花言葉…」
ライトはふと、アネモネを送れと言っていた白蘭を思い出した。
---
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-----------
一方、ツナ達のアジト。
「どーだ?だいぶ過去に戻れるような気がして来ただろ?」
「でも…その手紙を信じていいのかどうか…」
未だ迷うツナに、
「信じて下さい!」
隼人が訴える。
「俺は10年…いや100年経っても10代目を惑わせるような手紙を所持するつもりはありません!」
「ご…獄寺君…」
となると、今度は別の問題が。
「人を…消すのは…」
ツナにとって、最もやりたくない“殺し”が任務に組み込まれている。
しかしリボーンは言う。
「なら、こらしめる程度にしておけ。」
「そーゆー問題なのか!?」
思わずふっと笑みがこぼれた。
こんな状況下でも、
リボーンは変わらない。
変わろうとしない。
だからあたし達は歩いて行ける。
いつも、
いつも助けられてる。
その冷静さに、
そのユーモアに、
その真剣さに。
「みんなで解決してきゃいーじゃねーか!」
励まそうとする武に、ツナは不安そうにお父さんの事を尋ねる。
そう…武のお父さんは……
でも、武がそれだけでめげるワケがない。
むしろ、戦う理由がある方が進んで行ける。
多少…つらくても。
「自分たちの手でケリつけて、俺達の未来を変えようぜ。」
「山本…」
ほら、やっぱり強い人。
心が強い人。
「てめーカッコつけんな!!俺の言おうとしていた事を!!」
「右腕だからな♪」
「んだと!!てめーはごっこだろ!!」
「2人とも…」
『クスッ♪』
いつものような会話に安心すると、ツナがあたしに視線を移した。
「そうだ、檸檬!今まで一体何処に…」
『イタリア…の、はずなんだけどね…。』
「え?」
リボーンから聞いた。
あたしはイタリアで捕えられていたという事。
だから、当然あたしが入れ替わった所はイタリアのミルフィオーレの基地。
なのに…
『よくわかんないけど…並盛に来れたからいいや♪』
「えぇー!?そんなアバウトな!!ってゆーか…その足!!」
ツナは、あたしの右足を見て一気に青ざめる。
無理もないか。
だいぶ変色してるし。
『大丈夫、すぐ治るから。』
「そーじゃなくて!どうしたの!?」
『ちょっと…逃げてる途中にヒビ入っちゃって…』
「「「ヒビ!!?」」」
3人が同時に驚いた。
あたしは思わず苦笑する。
『だ、大丈夫だって!ね?』
「た、大変だ!固定しなくちゃ!」
「牛乳飲むか!?」
「この野球バカ!檸檬、痛み止めか何か…」
あたふたし始めるみんなを見て、リボーンがぴしゃりと一喝。
「うるせぇぞ、お前達。」
反対に、あたしの目からは生温い雫がこぼれ落ちて。
『ぐすっ…』
「檸檬…?」
「どうした?痛いのか?」
「てめっ、我慢してんじゃねーよ!」
『違…う……』
涙を止めて、精一杯の笑顔を見せた。
『ありがとう、みんな。』
「そ、そーだ!」
『どしたの?隼人。』
「10年後の檸檬から今の檸檬に伝言があった!」
『未来の…あたしが?』
リボーンが興味深そうにあたしの隣に座る。
「言ってみろ。」
『聞きたい!』
隼人は、3つの事を教えてくれた。
得意技は空間移動だって事。
リバウンドには注意しろって事。
そして…
「檸檬は…リングが使えない…って……。」
『え…?』
何で?
リングを匣に差し込んで武器を出す…
10年後の武がそう言ってたってリボーンから聞いた。
なのに…
それが出来ない?
『じゃぁあたし…炎が使えないの?』
「いや…」
呟きに反論する隼人。
あたしは首を傾げる。
「10年後の檸檬は…ちゃんと炎を使ってたぜ。」
『ど…どーやって!?』
「それが…一瞬でよくわかんなかったんだけどよぉ…」
リングが使えないのに…
炎は使える…?
『どうしてだろ…』
「まーまー、今はまだあんま深く考え込むなよ。檸檬は怪我治すのが先だろ?」
『武………うんっ、分かった。』
それでも、まだツナの表情は浮かない。
『ツナ…?』
「あ、えと…京子ちゃんとハルが…」
『あの2人なら、きっと大丈……』
「ガハハハハ!!」
突然聞こえて来たランボちゃんの笑い声に、あたし達は振り向く。
走って来るランボちゃんを追いかけるのは…
「待ちなさい!ランボちゃ…」
ズテーン!
「はひーー!」
「『ハル!!』」
自分が落としたイモにつまずいて転んでしまったハル。
「す、すいません!!悪戯したランボちゃんを追いかけてまして…!」
「ハルちゃん、大丈夫?」
そこに現れたのは、イーピンを肩に乗せてタマネギを持った京子。
疑問符を浮かべるツナ達に、リボーンが言う。
「非戦闘員の2人には、食事やチビ達の世話を頼んだんだ。」
「えぇ!?」
ハルが落としたイモを拾う2人。
「今日はカレーを作るんだよ。」
「楽しみにしてて下さい!」
嬉しそうに
「やり!」と笑う武。
「あれ…?何か2人とも元気になってる……?」
「当然です!こんな時だからこそ、いつまでもクヨクヨしてられません!」
「ツナ君達に負けないように、私たちも頑張ろうって決めたの!!」
『京子…ハル…』
その笑顔は、
過去へと帰る為の第一歩。
「さー、キッチンに行きましょう!」
「うん!」
戻って行く2人を見て、
「立ち直り早っ!」
「女ってすげーのな…」
それぞれの感想を口にする。
ふとツナの表情を伺えば、
「(俺だけじゃないんだ…友達がいる……)」
しっかりとした決意の目に変わり始めて。
「(今、この時代でやれる事を、ちゃんとやっていくんだ!!)」
きっと、
ううん、絶対、
大丈夫だよ。
そう、信じる事が大切なんだって思う。
「檸檬、」
『何?リボーン。』
「どーする?リング使えなくても戦うのか?」
その問いかけに、一瞬躊躇う。
足手纏いなのかもしれない。
戦力になれないかもしれない。
だけど…
そこに、希望があるなら。
『勿論っ♪』
あたしはまた、
何度でも、
どんな場所でも、
大切な仲間を護る為に戦うよ。
「小僧、」
「リボーンちゃん!」
『無事で良かった…』
アジトの中に入ると、リボーンが待っていた。
隼人はツナを医療室へ運び、
京子はイーピンちゃんを、
ハルはランボちゃんを抱え、
武はあたしをそうっと背から下ろした。
「色々驚いただろう。」
その深刻そうな顔つきが、全てを物語っているようだった。
「今からここで起こってる事を教える。心して聞いてくれ。」
入江正一 その2
医療室。
ベッドの上でうなされるツナ。
その心配をしつつ、太猿の行為を恨む獄寺。
「あぶない!」
突然ガバッと飛び起きたツナは、左肩を押さえる。
「10代目!お怪我をしてるんです!無理しちゃダメっス!!」
「獄寺君…ここは……?」
「アジトっス!全員無事で帰ってきました。それに、檸檬も見つかって合流しましたよ!」
「檸檬も…よ、良かった……」
と、ここでツナはハッと思い出す。
「き、来たんだ………京子ちゃんが過去から来ちゃったんだ!!」
すると獄寺も、少し眉を寄せて。
「その事なんですが…笹川だけじゃないんス……」
「え!?」
獄寺は話した。
10年後の山本が決めようとした時、急に全員入れ替わってしまったという事。
その後何故か10年後の檸檬が現れて助太刀をしたが、やはり途中で入れ替わってしまった事。
そして、何とか自分でリングの力により敵を退けたという事。
突然入れ替わった山本達は、みんな背後から10年バズーカを食らったらしい。
檸檬は別だが。
「そ、そんな…ダメだよ!!」
ツナは錯乱し始める。
「こんなトコにいたら…みんな殺されちゃうよ!!」
「じゅ…10代目!落ち着いて下さい!!」
「いつっ!!」
「大丈夫スか!?」
と、そこに…
「うえぇ~~ん…」
第3者の声。
「いやです、こんなの~~~」
ツナと獄寺が部屋の入り口にに視線を向けると…
涙を拭うハルが立っていた。
「10年後の世界が…こんなデストロイだなんて……」
「ハル…」
ハルを宥めるようにして、京子が背中をさする。
しかしその表情も、真っ青だった。
「ツナく…」
「ツナさーん!!ハルは平和な並盛に、帰りたいです!!」
自分に飛びつくハルを、ツナは困惑した目で見つめる。
京子も堪えきれない涙を浮かべ、
獄寺は悔しそうな辛そうな表情になった。
そこに、後からハーブティーを持ったリボーンと、檸檬に肩を貸しつつ歩く山本が入って来た。
「ハル・京子、こいつを飲め。特製ハーブティーだ、落ち着くぞ。」
「ありがとう、リボーン君。」
「それと、これを読んでおいてくれ。」
そう言って京子に巻物を一つ渡すリボーン。
と、その時。
「リボーン!!!」
ツナが大きな声を出し、全員が震える。
その目が訴える何かを感じ取ったリボーンは、一言。
「分かったぞ。」
そして、京子とハルに席を外すよう言った。
「檸檬、お前はどーする?」
『……聞く。』
2人が退席すると、リボーンは口を開いた。
「京子とハルには、今ヤバい状況下にいる事だけ伝えたぞ。マフィア関係については話してない。」
しかし、ツナは体を震わせたまま、噛み合ない答えを返す。
「帰さなきゃ…みんなをこんな所にいさせられない!何としても過去に帰さなきゃ!!」
『どしたの?ツナ!』
「お…おいツナ!」
「落ち着いて下さい10代目!」
「だいぶ錯乱してるな…」
「違うよ!守護者集めとか…そんなのんびりしてる場合じゃないって言ってんだ!!」
それでも、やっぱり守護者集めは避けられないというリボーンに、
ツナは根拠が無いって怒った。
でもその時、隼人が根拠になるモノを取り出した。
それは、10年後の隼人の鞄に入っていたらしい。
“守護者は集合……ボンゴレリングにて白蘭及びライトを退け、写真の眼鏡の男消すべし。全ては元に戻る”
「…以上です。」
「でも、今の話って…」
「はい。最初に10代目が10年後の俺から聞いた話と同じです。だから俺も気にとめてませんでした。」
けど、そこには希望が見えた。
なぜなら…
「この時代にあるはずが無いモノが書かれてるんです。」
「………あ!ボンゴレリング!!」
どうやら、ボンゴレリングはツナが処分するよう言ったらしく、この時代にはないみたい。
そこで、リボーンが言った。
「つまりこの手紙はこの時代のリング保持者、お前達に向けて書かれてたんだ。そして守護者を集めて任務を遂行すれば全ては元に戻る……過去に帰れるととれる。」
「か…過去に帰れる!?」
「幸いな事に、この眼鏡の男の目星はついてるぞ。ラル・ミルチが知っていてな、入江正一っていうらしい。」
入江……正一…?
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その頃、日本某所。
高いヒールの音が二つ、廊下に響く。
白い服を着た2人の女は、巨大な円盤の方へと向かう。
近くには、一つの机と椅子。
何かの研究資料。
「クスクス…」
その光景を見た女達は、笑みを漏らす。
「失礼します。」
眠っている彼がつけていたヘッドフォンを取る。
「研究お疲れさまです。」
「ごめん……眠っちゃってたよ。」
その顔は、10年後の獄寺が持っていた写真の男と同じモノだった。
そして、彼・入江正一を起こした女達もまた、リング争奪戦で審判を務めていたチェルベッロの者達に酷似していた。
と、そこに。
「入江君…いる?」
もう一人、白い服の女が入って来る。
途端に、2人の女は姿勢を正して。
「ライト様!」
その名を呼ぶ。
すると、入江もビクッと肩を震わせ立ち上がる。
「あぁ…来てたんだ…ライトさん。」
「今来たの。」
“ライト”というのが彼女の本名でない事くらい、彼らも分かっている。
しかし、彼らが彼女をライトと呼ぶのは、ある意味仕方の無い事。
彼らは、その本名を知らないのだ。
「入江様、ブラックスペルが…」
「何か動いたの?」
「いえただ…負傷して帰還した上、匣を喪失したらしく…」
「ふーん…」
落ちていた上着を拾い、部屋を出る入江。
そのまま歩き出す。
「報告では、兄弟喧嘩をしたそうです。」
「なくもないだろう。野蛮な連中だよ、ブラックスペルは……」
そこまで言って、ふと振り返る。
その視線の先には、無言で付いて来るライトが。
「ところで…何かあったの?」
「…どうして?」
逆に質問を投げかけられ、入江は少したじろぐ。
「いや…白蘭サンが許可出すなんて意外で…」
「…ダークが逃走したの。行き先は恐らくこの街。」
「逃走…!?あんな状態でどうやって…!」
「入れ替わった、と白蘭はおっしゃってたわ。」
目線を逸らして考えるライトに、入江も納得する。
「確かに入れ替われば体力は回復する…だけどまさか、あの雨宮檸檬がバズーカに当たるなんて…」
その言葉に、ライトは少しだけ表情を歪ませた。
「…して、太猿と野猿の処分はいかがなされますか?」
「…僕が直接第3部隊の隊長と話をつけるよ。」
そう言ってため息をつき、再びライトに視線を移す。
「一緒に来る?ライトさん。」
「えぇ。入江君がいいのなら。」
「ところで君、白蘭サンから送られて来たモノ見た?」
チェルベッロと似た女の一人に尋ねる入江。
「えぇ…格納庫いっぱいに…確か花言葉は……」
「調べたさ。」
そう言ってまたため息をつく。
「期待…だろ?プレッシャーで僕を殺す気なのさ、あの人は……」
「花言葉…」
ライトはふと、アネモネを送れと言っていた白蘭を思い出した。
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一方、ツナ達のアジト。
「どーだ?だいぶ過去に戻れるような気がして来ただろ?」
「でも…その手紙を信じていいのかどうか…」
未だ迷うツナに、
「信じて下さい!」
隼人が訴える。
「俺は10年…いや100年経っても10代目を惑わせるような手紙を所持するつもりはありません!」
「ご…獄寺君…」
となると、今度は別の問題が。
「人を…消すのは…」
ツナにとって、最もやりたくない“殺し”が任務に組み込まれている。
しかしリボーンは言う。
「なら、こらしめる程度にしておけ。」
「そーゆー問題なのか!?」
思わずふっと笑みがこぼれた。
こんな状況下でも、
リボーンは変わらない。
変わろうとしない。
だからあたし達は歩いて行ける。
いつも、
いつも助けられてる。
その冷静さに、
そのユーモアに、
その真剣さに。
「みんなで解決してきゃいーじゃねーか!」
励まそうとする武に、ツナは不安そうにお父さんの事を尋ねる。
そう…武のお父さんは……
でも、武がそれだけでめげるワケがない。
むしろ、戦う理由がある方が進んで行ける。
多少…つらくても。
「自分たちの手でケリつけて、俺達の未来を変えようぜ。」
「山本…」
ほら、やっぱり強い人。
心が強い人。
「てめーカッコつけんな!!俺の言おうとしていた事を!!」
「右腕だからな♪」
「んだと!!てめーはごっこだろ!!」
「2人とも…」
『クスッ♪』
いつものような会話に安心すると、ツナがあたしに視線を移した。
「そうだ、檸檬!今まで一体何処に…」
『イタリア…の、はずなんだけどね…。』
「え?」
リボーンから聞いた。
あたしはイタリアで捕えられていたという事。
だから、当然あたしが入れ替わった所はイタリアのミルフィオーレの基地。
なのに…
『よくわかんないけど…並盛に来れたからいいや♪』
「えぇー!?そんなアバウトな!!ってゆーか…その足!!」
ツナは、あたしの右足を見て一気に青ざめる。
無理もないか。
だいぶ変色してるし。
『大丈夫、すぐ治るから。』
「そーじゃなくて!どうしたの!?」
『ちょっと…逃げてる途中にヒビ入っちゃって…』
「「「ヒビ!!?」」」
3人が同時に驚いた。
あたしは思わず苦笑する。
『だ、大丈夫だって!ね?』
「た、大変だ!固定しなくちゃ!」
「牛乳飲むか!?」
「この野球バカ!檸檬、痛み止めか何か…」
あたふたし始めるみんなを見て、リボーンがぴしゃりと一喝。
「うるせぇぞ、お前達。」
反対に、あたしの目からは生温い雫がこぼれ落ちて。
『ぐすっ…』
「檸檬…?」
「どうした?痛いのか?」
「てめっ、我慢してんじゃねーよ!」
『違…う……』
涙を止めて、精一杯の笑顔を見せた。
『ありがとう、みんな。』
「そ、そーだ!」
『どしたの?隼人。』
「10年後の檸檬から今の檸檬に伝言があった!」
『未来の…あたしが?』
リボーンが興味深そうにあたしの隣に座る。
「言ってみろ。」
『聞きたい!』
隼人は、3つの事を教えてくれた。
得意技は空間移動だって事。
リバウンドには注意しろって事。
そして…
「檸檬は…リングが使えない…って……。」
『え…?』
何で?
リングを匣に差し込んで武器を出す…
10年後の武がそう言ってたってリボーンから聞いた。
なのに…
それが出来ない?
『じゃぁあたし…炎が使えないの?』
「いや…」
呟きに反論する隼人。
あたしは首を傾げる。
「10年後の檸檬は…ちゃんと炎を使ってたぜ。」
『ど…どーやって!?』
「それが…一瞬でよくわかんなかったんだけどよぉ…」
リングが使えないのに…
炎は使える…?
『どうしてだろ…』
「まーまー、今はまだあんま深く考え込むなよ。檸檬は怪我治すのが先だろ?」
『武………うんっ、分かった。』
それでも、まだツナの表情は浮かない。
『ツナ…?』
「あ、えと…京子ちゃんとハルが…」
『あの2人なら、きっと大丈……』
「ガハハハハ!!」
突然聞こえて来たランボちゃんの笑い声に、あたし達は振り向く。
走って来るランボちゃんを追いかけるのは…
「待ちなさい!ランボちゃ…」
ズテーン!
「はひーー!」
「『ハル!!』」
自分が落としたイモにつまずいて転んでしまったハル。
「す、すいません!!悪戯したランボちゃんを追いかけてまして…!」
「ハルちゃん、大丈夫?」
そこに現れたのは、イーピンを肩に乗せてタマネギを持った京子。
疑問符を浮かべるツナ達に、リボーンが言う。
「非戦闘員の2人には、食事やチビ達の世話を頼んだんだ。」
「えぇ!?」
ハルが落としたイモを拾う2人。
「今日はカレーを作るんだよ。」
「楽しみにしてて下さい!」
嬉しそうに
「やり!」と笑う武。
「あれ…?何か2人とも元気になってる……?」
「当然です!こんな時だからこそ、いつまでもクヨクヨしてられません!」
「ツナ君達に負けないように、私たちも頑張ろうって決めたの!!」
『京子…ハル…』
その笑顔は、
過去へと帰る為の第一歩。
「さー、キッチンに行きましょう!」
「うん!」
戻って行く2人を見て、
「立ち直り早っ!」
「女ってすげーのな…」
それぞれの感想を口にする。
ふとツナの表情を伺えば、
「(俺だけじゃないんだ…友達がいる……)」
しっかりとした決意の目に変わり始めて。
「(今、この時代でやれる事を、ちゃんとやっていくんだ!!)」
きっと、
ううん、絶対、
大丈夫だよ。
そう、信じる事が大切なんだって思う。
「檸檬、」
『何?リボーン。』
「どーする?リング使えなくても戦うのか?」
その問いかけに、一瞬躊躇う。
足手纏いなのかもしれない。
戦力になれないかもしれない。
だけど…
そこに、希望があるなら。
『勿論っ♪』
あたしはまた、
何度でも、
どんな場所でも、
大切な仲間を護る為に戦うよ。