未来編①
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2人のリングに灯された炎は、
決意の表れ。
守りたいという、
たった一つの志。
リングの力
「この感じ…」
首から下げたリングがツナの炎を大きくし、美しいモノへと変える。
それを見た太猿はその純度の変化に驚き、
彼の経験は本能的な危険信号を放つ。
が、
「怖じ気づいたか。」
ツナの挑発に、その危険信号を無理矢理打ち消し武器を構える。
「ふざけるな!!てめーのようなうるせーハエには、殺虫剤をまくまでだ!!」
太猿が匣にリングを差し込むと、炎を纏った刃のある円盤が飛び出す。
それは真直ぐツナに向かって行き、切り裂こうとする。
「逃げ切れるものか!!黒手裏剣(ダークスライサー)はお前だけを貫くぞ!!」
グローブによる急旋回にも、難なく付いて来るのだ。
ふと、それを避ける際大きな炎を出したツナ。
すると、黒手裏剣は残った炎に食いついた。
「炎に反応するのか。」
「その通りだ!お前の発するようなでかい炎のみを追尾し、炎を吸収するたびに加速する!!そしてしまいには…」
再びツナを追い始める黒手裏剣。
その速さは、放たれた時よりもいささか速い。
「…目標物の1.5倍の速度に達する!!回避は不可能だ!!!」
太猿の言葉を聞き、ツナは再び急旋回。
その先にいるのは、他ならぬ太猿。
「なぬ!俺に向かって!?」
一瞬、驚きと焦りの声をあげるものの、
黒手裏剣が太猿の炎に反応する事は無く。
「使用者には絶対に当たらんようにできている。回避は不可能と言ったはず!!」
「…なら、逃げるのはやめだ。」
次の瞬間、ツナのグローブの炎は無くなり、
ピキィィィ…
「なにぃ!!?」
天井に足を付いたツナの手にあったのは、
凍り付き、動きを止めた黒手裏剣。
「ば……バカな!!黒手裏剣を凍らせただと!!?」
目を見開き驚く太猿。
反対に、ツナは自分の感覚の変化に驚いていた。
「不思議だ……体が軽い…」
---
------
一方、嵐のリングに炎を灯した獄寺。
「こ、これが……死ぬ気の…炎か!!」
「ん……?あの炎…オイラと同じ嵐の……」
「これでこの匣ってのを開けられるはず…」
左手には、先ほど開けられなかった匣。
10年後の自分が持っていた匣。
「(何が入ってんだ…?たいした武器なんだろーな……)」
ふと思い出すのは、先ほど入れ替わってしまった10年後の檸檬の言葉。
---『その匣、いいの入ってる。』
「信じるぜ…檸檬。」
はめ込んだ。
匣に、リングを。
まばゆい光が溢れ、炎に反応して何かが出て来る。
「ん?」
「な…!」
目を見開く獄寺の左手に、口を開けたドクロを象った武器が装着されていた。
「重っ!!んだこりゃ!?ど…ドクロー!!?」
しばらくその武器を見つめ、一言。
「い……イカスぜ。」
それを見た野猿が黙ってるはずもなく。
「あいつぅ~~、匣持ってやがったのか。妙な事されちゃまずい!!」
速攻を仕掛けて来る。
「来やがった!!どーやって使うんだよコレ!!こうか!?」
内側にあるボタンを押してみると、
まるで武器が喋るように炎の文字が浮き上がる。
“弾を食わせろ” ーーー
それは、拳銃を使わない獄寺には無理な相談。
野猿はしてやったり、と言うように口角を上げる。
「死ね!!」
焦りながら、ダイナマイトをドクロの口に突っ込んだ。
「こいつじゃダメか!?ええい!!」
半分ヤケになったように、そのまま攻撃した。
ブオッ、
「……出た………」
それは確かに野猿に当たった。
しかし、
「何だ今のは……?痛くもかゆくもねーぞ……」
同時に
『………う……ん……?』
ゆっくりと目を開けた檸檬。
戦闘音が、余程耳の奥に残ったのだろう。
『あたし…………!は、隼人!?』
目の前の光景に驚く。
自分を庇うように前に立っているのは、左腕に未知の武器を取り付けた隼人だった。
「檸檬!へ…平気なのか!?」
『うん………つっ…!』
「へっ!オイラの炎を食らって平気なもんか!さっきの技も、驚かしやがって……」
と、次の瞬間。
「あっ!!炎が!!」
敵の炎が消えて、真直ぐ地面に落下した。
「ぎゃ!!」
状況が何も掴めない。
そもそも、あたし10年後と入れ替わって…
何でここで気絶してたんだっけ…?
『隼人…』
「後で説明すっから、待ってろ。」
『あ、うん。』
何だかその時、
隼人がいつもよりしっかり者に見えた。
「しゃらくせぇ!!てめー炎だけを吹き飛ばすとは、ふざけたマネを!!許さねーぞ!!」
相手の鎌が、炎を帯びる。
「な!!一瞬しか役立たねーのかよ!」
「死にな!!」
『隼人っ!』
相手の靴にも、隼人のと同じ赤い炎が灯る。
「おい!ハデなナリしてこれだけかよ!何とか言え!!」
武器に向かって叫ぶ隼人。
すると、ドクロの頭の上に文字が浮かぶ。
「拡散ボム!?」
その言葉を見た途端、“エネルギーの集束”がどうこう呟いて、隼人は構えた。
同時に、相手の鎌が目の前に迫る。
「ショアア!!」
「果てろ!!」
ドウッ、
『うわ……!』
まるで、
いつも四方に爆発するボムの威力が、
一つの方向に集められたかのように、
『すごい…』
「ギャアアア!!!」
相手に向かって炎が飛んだ。
---
-----
同じ頃、太猿が建物内で膝を付いた。
「バカな!!ほ…炎を……凍らせるなど!!」
その足を固定しているのは、ツナの零地点突破による氷。
「こ……これではまるで噂に聞いたボンゴレ10代目…!貴様、何者だ!!!」
なおも黒鎌を振り上げる太猿。
しかしツナは、いとも簡単にそれを受け止めて。
ビキビキ……ビキイン!
「のわっ!!」
それすらも凍らせる。
そして次の瞬間、グローブには再び炎が灯り、
「行くぜ。」
太猿を、殴り飛ばした。
天井を突き抜けて、彼は外の地面に落とされた。
それを目にした獄寺と檸檬。
「あれは…」
『誰…?』
「敵だ。10代目が倒したんだ。」
『ツナもいるの!?よ…良かったぁ……』
安堵の笑みを漏らす檸檬。
と、そこに…
「獄寺…終わったのか?」
「だ、大丈夫ですか!?檸檬ちゃん!!」
『武、ハル!ランボちゃんにイーピンちゃんも!』
10年後の檸檬の言葉により、物陰に隠れていた山本達が顔を出した。
と、ハルが檸檬の右足を見て叫ぶ。
「ひ…酷い怪我です檸檬ちゃん!!」
『平気平気。このくらい、何て事な………つっ…!』
立ち上がろうとする檸檬は、やはりバランスを崩して。
「おっと!」
『ご、ごめん武…』
「座ってろ、檸檬。」
『あ…うん……』
大人しく座る檸檬。
すると獄寺がその近くにしゃがみ込む。
『隼人…?』
「檸檬……悪ぃ…」
『え…?』
「ま、守れ…なくて……」
申し訳なさそうに俯く獄寺に、檸檬はふっと微笑む。
『あたしは平気。みんなが無事ならそれでいいって、いつも言ってるじゃん。』
「檸檬だけが傷つく必要ねぇっていつも言ってんだろーが!!///」
『え?初めて聞いたけど…?』
「なっ…うるせぇ!!」
真っ赤になって立ち上がる獄寺に、檸檬は再度笑顔を見せた。
『ありがと、隼人。』
「……けっ。」
ふいっとそっぽを向く獄寺は、ふと山本の方を見る。
「ボンゴレリング…持って来やがったか。」
『リング?』
「これがどーかしたのか?」
「あぁ、実はこの時代には…………!!」
何かを言いかけた獄寺は、急にポケットを漁って手紙を取り出し読み直す。
その表情は、みるみるうちに驚きに染まり。
「そういう…ことかよ!」
何かに気がついた獄寺。
と、その時。
---「ツナ君!ツナ君!!」
檸檬の耳が、京子の声をキャッチした。
『隼人!建物の中で京子がツナに呼びかけてる!』
「なっ…まさか10代目!!」
『戦った後…倒れたんじゃ……』
檸檬の推測を聞いた獄寺は、すぐに建物の中に向かった。
「ここにいろよ、お前ら。」
「あぁ…」
山本が頷き、ハルはランボとイーピンを抱えた。
「ツナ君!」
必死にツナに呼びかける京子の元に、獄寺がやって来た。
「10代目!!」
「あ!獄寺君!!」
「無事か、笹川…」
「うん、でもツナ君が…!」
ツナを背負った獄寺は、京子を連れて建物から出た。
「京子ちゃん!」
「あ…ハルちゃん!山本君に、ランボ君達も…」
「お前ら、こっちだ。山本、檸檬背負って来い。」
『何言ってんのよ、大丈………』
「ほら、檸檬。」
獄寺に抗議しようとする檸檬に、山本は背中を向けた。
檸檬は少し躊躇いながらも、仕方なくその身を山本の背中に預けた。
そして、一番近い入り口から、地下のアジトへと向かった。
---
-----
-----------
同刻、イタリア。
ミルフィオーレファミリー本拠地。
白蘭の部屋の奥に、もう一つのドア。
「ん…?」
ソファに座り退屈を持て余していた白蘭は、ふと奥の部屋からの物音に気づく。
「何してんのー?ライト。」
ガチャ、
扉を開けると、同じように白い服を着た女が一人。
先日、ダークこと檸檬の逃走を聞いて取り乱した女である。
“ライト”と呼ばれた彼女は今、ベッドの上のスーツケースに色々な物を詰めていた。
「どしたの?荷造りなんかして。」
「白蘭…」
首を傾げる白蘭と視線を合わせ、ライトは一枚の紙を提示する。
「ん?何コレ。」
「許可を頂きたく、執筆致しました。」
「何の?」
白蘭が聞き返すと、ライトは窓の外に視線を移して言った。
「ダークの事、お耳に入れましたか?」
「うん。」
「場にいた者の証言から、ダークが空間移動を使ったと推定すると、考えられる行き先はただ一つ…」
ライトの言葉に、白蘭はにこりと笑った。
「並盛……だね。」
「はい。」
「仕事早いねー、君は。」
「私の役目はダークの捕獲です。」
「いーよ、許可してあげる。寂しくなるけどねー。」
書類に適当にサインをして、返す。
ライトは深々とお辞儀をした。
「ありがとうございます。」
それは、日本へ渡り、単独行動をする事への許可。
ノートパソコンを専用ケースに入れ、荷造りが完了する。
コツコツとヒールを鳴らして歩き出すライト。
「あ、待って。」
ライトを引き止めた白蘭は、後ろから軽く抱きついた。
しかし、彼女は表情一つ変えずに問いかける。
「どうかなさいましたか?」
「寂しくなるから…エネルギー補充。」
その言葉に疑問の表情を浮かべ、更に聞く。
「それは…どういう事ですか?私の細胞内で生成されたATPが奪われて…」
「いーからいーから、あんま深く考えないで。」
「……承知しました。」
口を閉ざすライト。
白蘭は呟くように言う。
「今はまだ…分からなくていいから……」
数秒後、腕を解いた白蘭を背に、彼女は部屋を出た。
その瞳に宿るのは、
強い決意のみ。
ただ、
それは正常な決意ではなく、
「必ず……」
憎悪という名の決意。
決意の表れ。
守りたいという、
たった一つの志。
リングの力
「この感じ…」
首から下げたリングがツナの炎を大きくし、美しいモノへと変える。
それを見た太猿はその純度の変化に驚き、
彼の経験は本能的な危険信号を放つ。
が、
「怖じ気づいたか。」
ツナの挑発に、その危険信号を無理矢理打ち消し武器を構える。
「ふざけるな!!てめーのようなうるせーハエには、殺虫剤をまくまでだ!!」
太猿が匣にリングを差し込むと、炎を纏った刃のある円盤が飛び出す。
それは真直ぐツナに向かって行き、切り裂こうとする。
「逃げ切れるものか!!黒手裏剣(ダークスライサー)はお前だけを貫くぞ!!」
グローブによる急旋回にも、難なく付いて来るのだ。
ふと、それを避ける際大きな炎を出したツナ。
すると、黒手裏剣は残った炎に食いついた。
「炎に反応するのか。」
「その通りだ!お前の発するようなでかい炎のみを追尾し、炎を吸収するたびに加速する!!そしてしまいには…」
再びツナを追い始める黒手裏剣。
その速さは、放たれた時よりもいささか速い。
「…目標物の1.5倍の速度に達する!!回避は不可能だ!!!」
太猿の言葉を聞き、ツナは再び急旋回。
その先にいるのは、他ならぬ太猿。
「なぬ!俺に向かって!?」
一瞬、驚きと焦りの声をあげるものの、
黒手裏剣が太猿の炎に反応する事は無く。
「使用者には絶対に当たらんようにできている。回避は不可能と言ったはず!!」
「…なら、逃げるのはやめだ。」
次の瞬間、ツナのグローブの炎は無くなり、
ピキィィィ…
「なにぃ!!?」
天井に足を付いたツナの手にあったのは、
凍り付き、動きを止めた黒手裏剣。
「ば……バカな!!黒手裏剣を凍らせただと!!?」
目を見開き驚く太猿。
反対に、ツナは自分の感覚の変化に驚いていた。
「不思議だ……体が軽い…」
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一方、嵐のリングに炎を灯した獄寺。
「こ、これが……死ぬ気の…炎か!!」
「ん……?あの炎…オイラと同じ嵐の……」
「これでこの匣ってのを開けられるはず…」
左手には、先ほど開けられなかった匣。
10年後の自分が持っていた匣。
「(何が入ってんだ…?たいした武器なんだろーな……)」
ふと思い出すのは、先ほど入れ替わってしまった10年後の檸檬の言葉。
---『その匣、いいの入ってる。』
「信じるぜ…檸檬。」
はめ込んだ。
匣に、リングを。
まばゆい光が溢れ、炎に反応して何かが出て来る。
「ん?」
「な…!」
目を見開く獄寺の左手に、口を開けたドクロを象った武器が装着されていた。
「重っ!!んだこりゃ!?ど…ドクロー!!?」
しばらくその武器を見つめ、一言。
「い……イカスぜ。」
それを見た野猿が黙ってるはずもなく。
「あいつぅ~~、匣持ってやがったのか。妙な事されちゃまずい!!」
速攻を仕掛けて来る。
「来やがった!!どーやって使うんだよコレ!!こうか!?」
内側にあるボタンを押してみると、
まるで武器が喋るように炎の文字が浮き上がる。
“弾を食わせろ” ーーー
それは、拳銃を使わない獄寺には無理な相談。
野猿はしてやったり、と言うように口角を上げる。
「死ね!!」
焦りながら、ダイナマイトをドクロの口に突っ込んだ。
「こいつじゃダメか!?ええい!!」
半分ヤケになったように、そのまま攻撃した。
ブオッ、
「……出た………」
それは確かに野猿に当たった。
しかし、
「何だ今のは……?痛くもかゆくもねーぞ……」
同時に
『………う……ん……?』
ゆっくりと目を開けた檸檬。
戦闘音が、余程耳の奥に残ったのだろう。
『あたし…………!は、隼人!?』
目の前の光景に驚く。
自分を庇うように前に立っているのは、左腕に未知の武器を取り付けた隼人だった。
「檸檬!へ…平気なのか!?」
『うん………つっ…!』
「へっ!オイラの炎を食らって平気なもんか!さっきの技も、驚かしやがって……」
と、次の瞬間。
「あっ!!炎が!!」
敵の炎が消えて、真直ぐ地面に落下した。
「ぎゃ!!」
状況が何も掴めない。
そもそも、あたし10年後と入れ替わって…
何でここで気絶してたんだっけ…?
『隼人…』
「後で説明すっから、待ってろ。」
『あ、うん。』
何だかその時、
隼人がいつもよりしっかり者に見えた。
「しゃらくせぇ!!てめー炎だけを吹き飛ばすとは、ふざけたマネを!!許さねーぞ!!」
相手の鎌が、炎を帯びる。
「な!!一瞬しか役立たねーのかよ!」
「死にな!!」
『隼人っ!』
相手の靴にも、隼人のと同じ赤い炎が灯る。
「おい!ハデなナリしてこれだけかよ!何とか言え!!」
武器に向かって叫ぶ隼人。
すると、ドクロの頭の上に文字が浮かぶ。
「拡散ボム!?」
その言葉を見た途端、“エネルギーの集束”がどうこう呟いて、隼人は構えた。
同時に、相手の鎌が目の前に迫る。
「ショアア!!」
「果てろ!!」
ドウッ、
『うわ……!』
まるで、
いつも四方に爆発するボムの威力が、
一つの方向に集められたかのように、
『すごい…』
「ギャアアア!!!」
相手に向かって炎が飛んだ。
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同じ頃、太猿が建物内で膝を付いた。
「バカな!!ほ…炎を……凍らせるなど!!」
その足を固定しているのは、ツナの零地点突破による氷。
「こ……これではまるで噂に聞いたボンゴレ10代目…!貴様、何者だ!!!」
なおも黒鎌を振り上げる太猿。
しかしツナは、いとも簡単にそれを受け止めて。
ビキビキ……ビキイン!
「のわっ!!」
それすらも凍らせる。
そして次の瞬間、グローブには再び炎が灯り、
「行くぜ。」
太猿を、殴り飛ばした。
天井を突き抜けて、彼は外の地面に落とされた。
それを目にした獄寺と檸檬。
「あれは…」
『誰…?』
「敵だ。10代目が倒したんだ。」
『ツナもいるの!?よ…良かったぁ……』
安堵の笑みを漏らす檸檬。
と、そこに…
「獄寺…終わったのか?」
「だ、大丈夫ですか!?檸檬ちゃん!!」
『武、ハル!ランボちゃんにイーピンちゃんも!』
10年後の檸檬の言葉により、物陰に隠れていた山本達が顔を出した。
と、ハルが檸檬の右足を見て叫ぶ。
「ひ…酷い怪我です檸檬ちゃん!!」
『平気平気。このくらい、何て事な………つっ…!』
立ち上がろうとする檸檬は、やはりバランスを崩して。
「おっと!」
『ご、ごめん武…』
「座ってろ、檸檬。」
『あ…うん……』
大人しく座る檸檬。
すると獄寺がその近くにしゃがみ込む。
『隼人…?』
「檸檬……悪ぃ…」
『え…?』
「ま、守れ…なくて……」
申し訳なさそうに俯く獄寺に、檸檬はふっと微笑む。
『あたしは平気。みんなが無事ならそれでいいって、いつも言ってるじゃん。』
「檸檬だけが傷つく必要ねぇっていつも言ってんだろーが!!///」
『え?初めて聞いたけど…?』
「なっ…うるせぇ!!」
真っ赤になって立ち上がる獄寺に、檸檬は再度笑顔を見せた。
『ありがと、隼人。』
「……けっ。」
ふいっとそっぽを向く獄寺は、ふと山本の方を見る。
「ボンゴレリング…持って来やがったか。」
『リング?』
「これがどーかしたのか?」
「あぁ、実はこの時代には…………!!」
何かを言いかけた獄寺は、急にポケットを漁って手紙を取り出し読み直す。
その表情は、みるみるうちに驚きに染まり。
「そういう…ことかよ!」
何かに気がついた獄寺。
と、その時。
---「ツナ君!ツナ君!!」
檸檬の耳が、京子の声をキャッチした。
『隼人!建物の中で京子がツナに呼びかけてる!』
「なっ…まさか10代目!!」
『戦った後…倒れたんじゃ……』
檸檬の推測を聞いた獄寺は、すぐに建物の中に向かった。
「ここにいろよ、お前ら。」
「あぁ…」
山本が頷き、ハルはランボとイーピンを抱えた。
「ツナ君!」
必死にツナに呼びかける京子の元に、獄寺がやって来た。
「10代目!!」
「あ!獄寺君!!」
「無事か、笹川…」
「うん、でもツナ君が…!」
ツナを背負った獄寺は、京子を連れて建物から出た。
「京子ちゃん!」
「あ…ハルちゃん!山本君に、ランボ君達も…」
「お前ら、こっちだ。山本、檸檬背負って来い。」
『何言ってんのよ、大丈………』
「ほら、檸檬。」
獄寺に抗議しようとする檸檬に、山本は背中を向けた。
檸檬は少し躊躇いながらも、仕方なくその身を山本の背中に預けた。
そして、一番近い入り口から、地下のアジトへと向かった。
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同刻、イタリア。
ミルフィオーレファミリー本拠地。
白蘭の部屋の奥に、もう一つのドア。
「ん…?」
ソファに座り退屈を持て余していた白蘭は、ふと奥の部屋からの物音に気づく。
「何してんのー?ライト。」
ガチャ、
扉を開けると、同じように白い服を着た女が一人。
先日、ダークこと檸檬の逃走を聞いて取り乱した女である。
“ライト”と呼ばれた彼女は今、ベッドの上のスーツケースに色々な物を詰めていた。
「どしたの?荷造りなんかして。」
「白蘭…」
首を傾げる白蘭と視線を合わせ、ライトは一枚の紙を提示する。
「ん?何コレ。」
「許可を頂きたく、執筆致しました。」
「何の?」
白蘭が聞き返すと、ライトは窓の外に視線を移して言った。
「ダークの事、お耳に入れましたか?」
「うん。」
「場にいた者の証言から、ダークが空間移動を使ったと推定すると、考えられる行き先はただ一つ…」
ライトの言葉に、白蘭はにこりと笑った。
「並盛……だね。」
「はい。」
「仕事早いねー、君は。」
「私の役目はダークの捕獲です。」
「いーよ、許可してあげる。寂しくなるけどねー。」
書類に適当にサインをして、返す。
ライトは深々とお辞儀をした。
「ありがとうございます。」
それは、日本へ渡り、単独行動をする事への許可。
ノートパソコンを専用ケースに入れ、荷造りが完了する。
コツコツとヒールを鳴らして歩き出すライト。
「あ、待って。」
ライトを引き止めた白蘭は、後ろから軽く抱きついた。
しかし、彼女は表情一つ変えずに問いかける。
「どうかなさいましたか?」
「寂しくなるから…エネルギー補充。」
その言葉に疑問の表情を浮かべ、更に聞く。
「それは…どういう事ですか?私の細胞内で生成されたATPが奪われて…」
「いーからいーから、あんま深く考えないで。」
「……承知しました。」
口を閉ざすライト。
白蘭は呟くように言う。
「今はまだ…分からなくていいから……」
数秒後、腕を解いた白蘭を背に、彼女は部屋を出た。
その瞳に宿るのは、
強い決意のみ。
ただ、
それは正常な決意ではなく、
「必ず……」
憎悪という名の決意。