未来編①
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・沢田綱吉
並盛中学2年A組
ボンゴレファミリー(仮)
10代目ボス(仮)
大空のボンゴレリング
(精製度A以上)
ランチアのリング
(精製度?)
・リボーン
アルコバレーノ
ボンゴレファミリー(仮)
黄色のおしゃぶり
(精製度A以上)
レオン
(形状記憶カメレオン)
覚悟
「ツナ君だ!良かった。」
突如入れ替わってしまった京子は、ツナを探していたのだろう、安堵の言葉を発する。
しかしツナの方は困惑するばかり。
「何で10年前の京子ちゃんが!!一体どーなってんのー!?」
「みんなで探してたの。リボーン君と獄寺君も………あれ?ここ何処だろう?」
それぞれの意味で疑問符を浮かべる2人に、襲い掛かって来る太猿の炎。
いち早く気がついたツナは、咄嗟に京子を押し退けた。
「危ない!!」
「きゃっ!」
ドゴッ、
ガラガラ…
辺りには砂煙が立ちこめて、壁が崩れる音がする。
その衝撃に巻き込まれなかった京子は、ふと自分の腕を見て驚く。
「血…!?」
それは明らかに飛び散った血だった。
そして目の前には……
「あっ!!ツ………ツナ君!!」
自分を庇ったせいで攻撃を受け、倒れたツナが。
駆け寄ろうとする京子に、第3者が話し掛ける。
「お嬢さん、次はあんただ。」
そちらを見れば、見た事もない武器を備え付けている男が1人。
彼は京子に言う。
「女子供を殺すのは、草を刈るようなモンだと思わんか?何の手応えもなく気付けば……ちょん切れてる。」
何が言いたいのか分からない。
分かりたくない。
言葉を発する事も出来ず、
ただ、
自分の命が危ないという最悪の勘が体を駆け巡る。
「なぁに、怖がる事はない。一瞬であの世だ。」
太猿の武器に炎が宿る。
それは掛け声と共に京子に放たれて。
「きゃああ!!」
動く事も出来ないまま、ただ目を瞑り、頭を庇った。
ドゴオッ、
物凄い破壊力である事は、崩れゆく壁を見れば一目瞭然だ。
しかし、そこには誰の血も飛ばなかった。
代わりに、
タッ、
「何!?」
太猿の後方に、何かが着地したような音。
ぎゅっと目を瞑っていた京子は、
痛みが感じられない事に疑問を抱き、目を開ける。
目の前には、さっきまで倒れていたはずのツナ。
自分が抱えられている事に気がつく。
しかし、ツナの雰囲気はいつもと違って。
「ツナ…君?」
その呼びかけには応じず、超死ぬ気モードになったツナは、敵の方を向く。
「その炎の色は大空の属性……なかなかのレアだぞ小僧………。」
言いながら、更に口角を上げる太猿。
「だがタラタラと相手をするつもりはない。向こうに雨の守護者っていう…でけー獲物を待たせてるんでなぁ。」
---
------
------------
「お、獄寺!!何してんだ?こんなトコで!!」
「獄寺さん!探してたんですよ!!」
一方、こちらも急に全員10年前の姿になってしまい、困惑状態にあった。
「………どーなってやがる……。」
ケリをつけると言った10年後の山本は、もうそこにはいない。
獄寺は焦り始める。
「うそ…だろ…?よりによってこんなやべぇ時に……」
その様子を上から見ていた野猿は、彼らの変化に気がつく。
「ん…?刀の奴のナリが変わった…?」
同時に、先程檸檬と入れ替わった女が、獄寺達を見つけた。
『やっと…会えた…。』
一言呟いてから、彼女は立っていた屋根を蹴る。
危険を感じ取った獄寺は、咄嗟に叫ぶ。
「いいかお前ら、よく聞け!!とにかく逃げるんだ!!」
しかし、突然の言葉に全員が首をかしげるばかり。
「ん?」
「はひ?」
「はひじゃねーんだよアホ女!!これしか道はねーんだ!!」
「アホって何ですか!!」
「いーから走れ!!じゃねーと………」
獄寺の警告は伝わらず、
野猿の黒鎌に炎が宿る。
「逃がさないね!!……ショア!!」
迫り来る炎に、
全員が目を丸くして止まってしまう。
その危険性を知っているのは、獄寺だけ。
「しまっ……!!」
もうどうしようもないのか、
絶望が渦巻く中、聞こえて来た声。
『掴まって。』
「なっ…!!?」
ドゴアッ、
大きな破壊音と煙の中から現れる、
山本のバット、
ハルの鞄、
イーピンの餃子饅。
それを見て野猿は、満足そうに笑った。
「へへん♪」
---
------
------------
「下がってろ。」
「はい…」
廃屋の中では、ツナが太猿と対峙していた。
京子再び自分の後ろに座らせ、グローブに炎を灯す。
推進力で宙に上がれば、京子も目を見開いた。
「来るかよ!!」
太猿が放つ炎は、真直ぐツナに向かっていく。
が、
ツナの動きが止まる事はない。
むしろ…
「加速したのか!?どーなっている!!?」
いとも簡単に太猿の後ろを取る。
零地点突破を使ったツナは、太猿の炎を吸収したのだ。
「っだらぁ!!!」
飛び回るツナに、太猿は黒鎌を振り回す。
が、当たる事はない。
「ハエか、コイツは!!ええい、鬱陶しい!!」
右手のリングを匣に填める太猿。
直後に、その背中から炎がゆらりと立ち上る。
怪しく思うツナに、一言。
「屁でも喰らいな。」
次の瞬間、たくさんの針が太猿の背中から生えて来て、背後に居たツナの肩を刺した。
突然の攻撃に驚いたのは、ツナだけではない。
「ツ……ツナ君!!」
地上で見守る京子もまた、顔を青くした。
---
------
------------
だんだんと薄れていく煙。
しかし、その全てが消えても怪我人は1人も倒れていなかった。
「んー?」
それどころか、人っ子1人いない。
その妙な状況に、野猿は首をかしげる。
「獲物がみんな…消えちまった……?」
---
-----
野猿の視界に入らないよう、崩れた瓦礫の後ろで息を潜める。
目を見開く獄寺達の目の前で、黒スーツの女が人差し指を唇に当てていた。
“静かに”と。
女は全員をまじまじと見て、にこりと笑う。
『怪我はないみたいね、良かった。』
「お、お前……!」
イーピンを抱えた獄寺は、思わず口をぽかんと開ける。
それもそのはず。
目の前に立つ彼女は、確かに自分と一緒に入れ替わったはずなのだから。
しかし、その面影が彼女であると示している。
檸檬である、と。
『武、ハル、』
「ん?」
「はひ?」
『ランボとイーピンをお願い。』
真剣な顔つきで言う檸檬に、2人も頷く。
すると檸檬はまた微笑む。
『ココを動かないでね。詳しくはまた後で、隼人にでも聞くといいわ。』
「あぁ…」
「分かりました…」
状況が飲み込めないせいか、山本もハルも素直に返事をした。
『んじゃ、行くよ隼人!』
「おっ、おい!!」
未だその女が10年後の檸檬だと信じきれない獄寺は、咄嗟に引き止める。
すると、檸檬はふっと振り向いて。
『名乗らなきゃ、分かってくれないの?』
その挑発的な言葉で、確信する。
彼女は檸檬の10年後なのだと。
『時間がないの、行くよ!あ、炎の出し方は習ったよね?』
「覚悟を…ってヤツか?」
『そう、それ!あたしが時間稼ぎするから、早く出してね。あと、昔のあたしに伝言をお願い。』
言いながら檸檬は、野猿に姿を見せる。
獄寺も続いた。
「あれ?人数減ってらぁ。」
『こんにちは、あたしが相手になるわ。』
「女じゃん。」
『えぇ、そうよ。』
檸檬はちっとも動こうとしないし、構えない。
そればかりか、獄寺に話し掛ける。
『隼人、リングに集中してて。その匣、いいの入ってる。』
「檸檬…中身知ってんのか!?」
『言ったらつまんないでしょ?あと、伝言その1・特技は空間移動。』
「なっ……!」
『その2・リバウンドにはご用心。』
そこでようやく、野猿が上空から攻撃をくり出して来た。
「さっきから…何コソコソ話してんだよっ……!!」
「来るぜ!」
『隼人は炎を。あたしが食い止めるから。』
にこりと笑う檸檬に、野猿は鎌を振った。
「ショアッ!」
『それと、伝言その3………』
迫り来る炎。
獄寺は息を飲み、檸檬はゆっくりとナイフを構える。
そして…
シュンッ、
シュンッ、
「「なっ…!」」
野猿と獄寺が、同時に驚く。
放たれたはずの炎は目の前から消え、
檸檬のナイフが炎を纏っていた。
「ど、どーなって…」
『その3・あたしはリングは使えない。』
「は…はぁ!!?」
ちらりと腕時計を見る檸檬。
そして呟く。
『あと…55秒……』
一方、野猿は困惑して声をあげる。
「な、何だ!?オイラの炎が…!!」
その真下に、素早く回り込む檸檬。
そのナイフには、確かに赤い炎が。
『今度はこっちよ♪』
ビュッ、ビュッ、
自分のナイフを、自分のブーツの金具に触れさせる。
すると、ナイフにあった炎がブーツの金具に半分程移った。
「なに!?」
次の瞬間、檸檬は上空へ飛躍する。
「お、お前まさか…!」
『これはFブーツ。あたし専用の特殊飛躍装置よ♪』
「燃えるナイフとブーツ………DARQ!!」
『うーん…まぁ、その呼び名はあんまり好きじゃないけどね。』
ほんの少し苦笑し、檸檬は攻め寄った。
「わっ…!」
キンッ、
キキンッ、
檸檬と野猿の武器がぶつかり、高い金属音が響く。
しかし、互角ではない。
野猿は檸檬の攻撃を受けるだけで精一杯のようだ。
「す、すげ……」
リングは使えないと言っていた檸檬。
だがどう考えても野猿と檸檬の実力の差は歴然としている。
これなら、俺が炎を出さなくても勝てるんじゃないか。
そう思った、次の瞬間。
『隼人!急いでっ……!』
焦ったような檸檬の声。
見ると、先程より表情が歪んでいた。
どうしてだ?
このままいけば、俺が手を出さなくても勝てる。
むしろ出さない方が良さそうなのに。
ところが………
ぐにゃり。
「なっ…!?」
突然檸檬の近くの空が歪んだかと思うと、
『タイム…オーバーか……』
檸檬は空間の中に引き込まれ始めた。
その光景に、敵も驚いてるみてーだったが、
もっと驚いたのは……
スーツを着た10年後の檸檬が引き込まれるその空間の中から、
『きゃあっ!』
「んなっ……!!?」
同じトコから、10年前の檸檬が飛び出して来た事だった。
どうやらこの入れ代わりは檸檬にとっても突然の事だったらしく、
『えっ!?えぇっ!!?』
急に空中に現れた10年前の檸檬は困惑し、そのまま落下する。
「あ……危ねぇっ!!」
『隼人っ!?』
俺が落下する檸檬の下に回ろうと駆け出した、その時。
ブアッ、
敵の靴が炎を増して、加速する。
「よくわかんねーけど、もーらいっ!」
「ちっ…!檸檬っ、避けろ!!」
『えっ……?』
この時俺は、知らなかった。
檸檬が、
右足にヒビ作ってた事なんて。
だから普通にいつもみてーに避けると思ってた。
「ショアッ!」
檸檬が敵の方を向いた時には、
もう遅かった。
真っ赤な炎が放たれて、真直ぐ檸檬に向かってく。
『う…そ……』
いつもの実力を発揮出来ない檸檬に、それを避ける事は出来ず。
「檸檬っ…!!」
『きゃあああっ!!』
「檸檬ーっ!!!」
まともに、喰らった。
---
------
今日は本当に、厄日なのかも。
急に10年後の自分と入れ替わるし、
足にヒビだし、
やっと隼人に会えたと思ったら、
攻撃喰らうし………
『は…やと……』
「檸檬ーーーっ!!!」
来なきゃ良かったな…
足手纏いはイヤなのに。
ごめん、ごめんね。
でも、
合流できて良かったなぁ…
あ、お腹痛い…
腕も痛いや。
火傷かな?
意識も…
もう…
あたしは、いとも簡単に意識を手放した。
ズザァァッ…
「つっ…」
獄寺が何とか追い付いて、
檸檬の地面激突は避けられた。
.
「おいっ、檸檬!檸檬!!」
必死に呼び掛けてみるが、檸檬は完全に気を失っていた。
「くそっ!」
「あ、その娘さぁー、貴重な娘だしーオイラが持って帰ろっかな♪」
「なっ!んな事……」
今頃後悔する。
早く炎を出せば良かった。
「……させっかよ!!」
檸檬を近くに寝かせ、立ち上がった俺を見て奴は言う。
「何だコイツ、オイラと戦う気かよ!!お前がオイラに勝てるか!!」
確かに、俺がいつもみてーにボムを使ってちゃ話にならねぇ。
だが……
---「炎をイメージしろ、獄寺………覚悟を炎にするイメージだ。」
脳裏にちらつく10年後の山本の言葉。
「へっ、お前に言われたかねーんだよ……俺ぁいつだって……ギンギンに覚悟は出来てんだ!!」
あとは炎だ!!
「さぁ死にな!!」
覚悟を……炎に!!!
炎に!!!!
次の瞬間、握りしめた拳の中指にあるリングに、
真っ赤な炎が灯された。
---
------
-----------
「ぐあっ!」
太い針に肩を貫かれたツナは、そのまま地面に落下する。
それを見て笑う太猿。
「そういやぁボンゴレの10代目もグローブに炎を灯したそうだな。まぁ、殺す今となってはどーでもいい事だがな!!」
不安で、心配で、駆け寄ろうとする京子。
「ツナ君!!」
しかし、
「来るなっ!!」
それを抑制してから、ゆっくりと起き上がるツナ。
「………大丈夫…」
息が少し荒く、傷口からは血も滴る。
だが、発せられる言葉は力強い。
「君は…守ってみせる。俺の…命にかえても。」
その瞬間、
炎が弾け、首から下げられたリングにも、同じ色の炎が灯った。
紛れもない、2人の覚悟に反応し、
リングは炎を帯びる。
“守るべきモノを守る為に”
並盛中学2年A組
ボンゴレファミリー(仮)
10代目ボス(仮)
大空のボンゴレリング
(精製度A以上)
ランチアのリング
(精製度?)
・リボーン
アルコバレーノ
ボンゴレファミリー(仮)
黄色のおしゃぶり
(精製度A以上)
レオン
(形状記憶カメレオン)
覚悟
「ツナ君だ!良かった。」
突如入れ替わってしまった京子は、ツナを探していたのだろう、安堵の言葉を発する。
しかしツナの方は困惑するばかり。
「何で10年前の京子ちゃんが!!一体どーなってんのー!?」
「みんなで探してたの。リボーン君と獄寺君も………あれ?ここ何処だろう?」
それぞれの意味で疑問符を浮かべる2人に、襲い掛かって来る太猿の炎。
いち早く気がついたツナは、咄嗟に京子を押し退けた。
「危ない!!」
「きゃっ!」
ドゴッ、
ガラガラ…
辺りには砂煙が立ちこめて、壁が崩れる音がする。
その衝撃に巻き込まれなかった京子は、ふと自分の腕を見て驚く。
「血…!?」
それは明らかに飛び散った血だった。
そして目の前には……
「あっ!!ツ………ツナ君!!」
自分を庇ったせいで攻撃を受け、倒れたツナが。
駆け寄ろうとする京子に、第3者が話し掛ける。
「お嬢さん、次はあんただ。」
そちらを見れば、見た事もない武器を備え付けている男が1人。
彼は京子に言う。
「女子供を殺すのは、草を刈るようなモンだと思わんか?何の手応えもなく気付けば……ちょん切れてる。」
何が言いたいのか分からない。
分かりたくない。
言葉を発する事も出来ず、
ただ、
自分の命が危ないという最悪の勘が体を駆け巡る。
「なぁに、怖がる事はない。一瞬であの世だ。」
太猿の武器に炎が宿る。
それは掛け声と共に京子に放たれて。
「きゃああ!!」
動く事も出来ないまま、ただ目を瞑り、頭を庇った。
ドゴオッ、
物凄い破壊力である事は、崩れゆく壁を見れば一目瞭然だ。
しかし、そこには誰の血も飛ばなかった。
代わりに、
タッ、
「何!?」
太猿の後方に、何かが着地したような音。
ぎゅっと目を瞑っていた京子は、
痛みが感じられない事に疑問を抱き、目を開ける。
目の前には、さっきまで倒れていたはずのツナ。
自分が抱えられている事に気がつく。
しかし、ツナの雰囲気はいつもと違って。
「ツナ…君?」
その呼びかけには応じず、超死ぬ気モードになったツナは、敵の方を向く。
「その炎の色は大空の属性……なかなかのレアだぞ小僧………。」
言いながら、更に口角を上げる太猿。
「だがタラタラと相手をするつもりはない。向こうに雨の守護者っていう…でけー獲物を待たせてるんでなぁ。」
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「お、獄寺!!何してんだ?こんなトコで!!」
「獄寺さん!探してたんですよ!!」
一方、こちらも急に全員10年前の姿になってしまい、困惑状態にあった。
「………どーなってやがる……。」
ケリをつけると言った10年後の山本は、もうそこにはいない。
獄寺は焦り始める。
「うそ…だろ…?よりによってこんなやべぇ時に……」
その様子を上から見ていた野猿は、彼らの変化に気がつく。
「ん…?刀の奴のナリが変わった…?」
同時に、先程檸檬と入れ替わった女が、獄寺達を見つけた。
『やっと…会えた…。』
一言呟いてから、彼女は立っていた屋根を蹴る。
危険を感じ取った獄寺は、咄嗟に叫ぶ。
「いいかお前ら、よく聞け!!とにかく逃げるんだ!!」
しかし、突然の言葉に全員が首をかしげるばかり。
「ん?」
「はひ?」
「はひじゃねーんだよアホ女!!これしか道はねーんだ!!」
「アホって何ですか!!」
「いーから走れ!!じゃねーと………」
獄寺の警告は伝わらず、
野猿の黒鎌に炎が宿る。
「逃がさないね!!……ショア!!」
迫り来る炎に、
全員が目を丸くして止まってしまう。
その危険性を知っているのは、獄寺だけ。
「しまっ……!!」
もうどうしようもないのか、
絶望が渦巻く中、聞こえて来た声。
『掴まって。』
「なっ…!!?」
ドゴアッ、
大きな破壊音と煙の中から現れる、
山本のバット、
ハルの鞄、
イーピンの餃子饅。
それを見て野猿は、満足そうに笑った。
「へへん♪」
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「下がってろ。」
「はい…」
廃屋の中では、ツナが太猿と対峙していた。
京子再び自分の後ろに座らせ、グローブに炎を灯す。
推進力で宙に上がれば、京子も目を見開いた。
「来るかよ!!」
太猿が放つ炎は、真直ぐツナに向かっていく。
が、
ツナの動きが止まる事はない。
むしろ…
「加速したのか!?どーなっている!!?」
いとも簡単に太猿の後ろを取る。
零地点突破を使ったツナは、太猿の炎を吸収したのだ。
「っだらぁ!!!」
飛び回るツナに、太猿は黒鎌を振り回す。
が、当たる事はない。
「ハエか、コイツは!!ええい、鬱陶しい!!」
右手のリングを匣に填める太猿。
直後に、その背中から炎がゆらりと立ち上る。
怪しく思うツナに、一言。
「屁でも喰らいな。」
次の瞬間、たくさんの針が太猿の背中から生えて来て、背後に居たツナの肩を刺した。
突然の攻撃に驚いたのは、ツナだけではない。
「ツ……ツナ君!!」
地上で見守る京子もまた、顔を青くした。
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だんだんと薄れていく煙。
しかし、その全てが消えても怪我人は1人も倒れていなかった。
「んー?」
それどころか、人っ子1人いない。
その妙な状況に、野猿は首をかしげる。
「獲物がみんな…消えちまった……?」
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野猿の視界に入らないよう、崩れた瓦礫の後ろで息を潜める。
目を見開く獄寺達の目の前で、黒スーツの女が人差し指を唇に当てていた。
“静かに”と。
女は全員をまじまじと見て、にこりと笑う。
『怪我はないみたいね、良かった。』
「お、お前……!」
イーピンを抱えた獄寺は、思わず口をぽかんと開ける。
それもそのはず。
目の前に立つ彼女は、確かに自分と一緒に入れ替わったはずなのだから。
しかし、その面影が彼女であると示している。
檸檬である、と。
『武、ハル、』
「ん?」
「はひ?」
『ランボとイーピンをお願い。』
真剣な顔つきで言う檸檬に、2人も頷く。
すると檸檬はまた微笑む。
『ココを動かないでね。詳しくはまた後で、隼人にでも聞くといいわ。』
「あぁ…」
「分かりました…」
状況が飲み込めないせいか、山本もハルも素直に返事をした。
『んじゃ、行くよ隼人!』
「おっ、おい!!」
未だその女が10年後の檸檬だと信じきれない獄寺は、咄嗟に引き止める。
すると、檸檬はふっと振り向いて。
『名乗らなきゃ、分かってくれないの?』
その挑発的な言葉で、確信する。
彼女は檸檬の10年後なのだと。
『時間がないの、行くよ!あ、炎の出し方は習ったよね?』
「覚悟を…ってヤツか?」
『そう、それ!あたしが時間稼ぎするから、早く出してね。あと、昔のあたしに伝言をお願い。』
言いながら檸檬は、野猿に姿を見せる。
獄寺も続いた。
「あれ?人数減ってらぁ。」
『こんにちは、あたしが相手になるわ。』
「女じゃん。」
『えぇ、そうよ。』
檸檬はちっとも動こうとしないし、構えない。
そればかりか、獄寺に話し掛ける。
『隼人、リングに集中してて。その匣、いいの入ってる。』
「檸檬…中身知ってんのか!?」
『言ったらつまんないでしょ?あと、伝言その1・特技は空間移動。』
「なっ……!」
『その2・リバウンドにはご用心。』
そこでようやく、野猿が上空から攻撃をくり出して来た。
「さっきから…何コソコソ話してんだよっ……!!」
「来るぜ!」
『隼人は炎を。あたしが食い止めるから。』
にこりと笑う檸檬に、野猿は鎌を振った。
「ショアッ!」
『それと、伝言その3………』
迫り来る炎。
獄寺は息を飲み、檸檬はゆっくりとナイフを構える。
そして…
シュンッ、
シュンッ、
「「なっ…!」」
野猿と獄寺が、同時に驚く。
放たれたはずの炎は目の前から消え、
檸檬のナイフが炎を纏っていた。
「ど、どーなって…」
『その3・あたしはリングは使えない。』
「は…はぁ!!?」
ちらりと腕時計を見る檸檬。
そして呟く。
『あと…55秒……』
一方、野猿は困惑して声をあげる。
「な、何だ!?オイラの炎が…!!」
その真下に、素早く回り込む檸檬。
そのナイフには、確かに赤い炎が。
『今度はこっちよ♪』
ビュッ、ビュッ、
自分のナイフを、自分のブーツの金具に触れさせる。
すると、ナイフにあった炎がブーツの金具に半分程移った。
「なに!?」
次の瞬間、檸檬は上空へ飛躍する。
「お、お前まさか…!」
『これはFブーツ。あたし専用の特殊飛躍装置よ♪』
「燃えるナイフとブーツ………DARQ!!」
『うーん…まぁ、その呼び名はあんまり好きじゃないけどね。』
ほんの少し苦笑し、檸檬は攻め寄った。
「わっ…!」
キンッ、
キキンッ、
檸檬と野猿の武器がぶつかり、高い金属音が響く。
しかし、互角ではない。
野猿は檸檬の攻撃を受けるだけで精一杯のようだ。
「す、すげ……」
リングは使えないと言っていた檸檬。
だがどう考えても野猿と檸檬の実力の差は歴然としている。
これなら、俺が炎を出さなくても勝てるんじゃないか。
そう思った、次の瞬間。
『隼人!急いでっ……!』
焦ったような檸檬の声。
見ると、先程より表情が歪んでいた。
どうしてだ?
このままいけば、俺が手を出さなくても勝てる。
むしろ出さない方が良さそうなのに。
ところが………
ぐにゃり。
「なっ…!?」
突然檸檬の近くの空が歪んだかと思うと、
『タイム…オーバーか……』
檸檬は空間の中に引き込まれ始めた。
その光景に、敵も驚いてるみてーだったが、
もっと驚いたのは……
スーツを着た10年後の檸檬が引き込まれるその空間の中から、
『きゃあっ!』
「んなっ……!!?」
同じトコから、10年前の檸檬が飛び出して来た事だった。
どうやらこの入れ代わりは檸檬にとっても突然の事だったらしく、
『えっ!?えぇっ!!?』
急に空中に現れた10年前の檸檬は困惑し、そのまま落下する。
「あ……危ねぇっ!!」
『隼人っ!?』
俺が落下する檸檬の下に回ろうと駆け出した、その時。
ブアッ、
敵の靴が炎を増して、加速する。
「よくわかんねーけど、もーらいっ!」
「ちっ…!檸檬っ、避けろ!!」
『えっ……?』
この時俺は、知らなかった。
檸檬が、
右足にヒビ作ってた事なんて。
だから普通にいつもみてーに避けると思ってた。
「ショアッ!」
檸檬が敵の方を向いた時には、
もう遅かった。
真っ赤な炎が放たれて、真直ぐ檸檬に向かってく。
『う…そ……』
いつもの実力を発揮出来ない檸檬に、それを避ける事は出来ず。
「檸檬っ…!!」
『きゃあああっ!!』
「檸檬ーっ!!!」
まともに、喰らった。
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今日は本当に、厄日なのかも。
急に10年後の自分と入れ替わるし、
足にヒビだし、
やっと隼人に会えたと思ったら、
攻撃喰らうし………
『は…やと……』
「檸檬ーーーっ!!!」
来なきゃ良かったな…
足手纏いはイヤなのに。
ごめん、ごめんね。
でも、
合流できて良かったなぁ…
あ、お腹痛い…
腕も痛いや。
火傷かな?
意識も…
もう…
あたしは、いとも簡単に意識を手放した。
ズザァァッ…
「つっ…」
獄寺が何とか追い付いて、
檸檬の地面激突は避けられた。
.
「おいっ、檸檬!檸檬!!」
必死に呼び掛けてみるが、檸檬は完全に気を失っていた。
「くそっ!」
「あ、その娘さぁー、貴重な娘だしーオイラが持って帰ろっかな♪」
「なっ!んな事……」
今頃後悔する。
早く炎を出せば良かった。
「……させっかよ!!」
檸檬を近くに寝かせ、立ち上がった俺を見て奴は言う。
「何だコイツ、オイラと戦う気かよ!!お前がオイラに勝てるか!!」
確かに、俺がいつもみてーにボムを使ってちゃ話にならねぇ。
だが……
---「炎をイメージしろ、獄寺………覚悟を炎にするイメージだ。」
脳裏にちらつく10年後の山本の言葉。
「へっ、お前に言われたかねーんだよ……俺ぁいつだって……ギンギンに覚悟は出来てんだ!!」
あとは炎だ!!
「さぁ死にな!!」
覚悟を……炎に!!!
炎に!!!!
次の瞬間、握りしめた拳の中指にあるリングに、
真っ赤な炎が灯された。
---
------
-----------
「ぐあっ!」
太い針に肩を貫かれたツナは、そのまま地面に落下する。
それを見て笑う太猿。
「そういやぁボンゴレの10代目もグローブに炎を灯したそうだな。まぁ、殺す今となってはどーでもいい事だがな!!」
不安で、心配で、駆け寄ろうとする京子。
「ツナ君!!」
しかし、
「来るなっ!!」
それを抑制してから、ゆっくりと起き上がるツナ。
「………大丈夫…」
息が少し荒く、傷口からは血も滴る。
だが、発せられる言葉は力強い。
「君は…守ってみせる。俺の…命にかえても。」
その瞬間、
炎が弾け、首から下げられたリングにも、同じ色の炎が灯った。
紛れもない、2人の覚悟に反応し、
リングは炎を帯びる。
“守るべきモノを守る為に”