未来編①
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・太猿
ミルフィオーレ
ブラックスペル
第3アフェランドラ隊
C++級(ランク)
嵐系リング(精製度C)
黒鎌(ダークサイズ)
F(フレイム)シューズ 等
・野猿
ミルフィオーレ
ブラックスペル
第3アフェランドラ隊
D級(ランク)
嵐系リング(精製度D)
黒鎌(ダークサイズ)
F(フレイム)シューズ 等
再会
「ミルフィオーレのブラックスペル!」
上空にいる敵を見る山本は、混乱するツナ達に言う。
「行くぜ!ボンゴレリングからマモンチェーンを外せ!」
一方敵は、
「じゃぁオイラが貰う!手ぇ出すなよ、太猿兄貴。」
「しっかりやれよ、野猿。」
追い詰められるランボとイーピン。
そして、近くにいるであろう10年後の“彼女達”。
「うわあああん!!」
「うろたえないでランボ!!京子さんとハルさんをお願い!!」
「その体じゃ無茶だよ、イーピン!!」
野猿はリングを匣に差し込み、太猿が持っているのと同じ鎌を出す。
「ショアッ!」
鎌から出る炎は、真直ぐ地上に叩き付けられる。
ドゴオッ、
「弱ったところを狩ってくらあ!!」
Fシューズの推進力で、煙の中へと突っ込む野猿。
その視界に、人影が1つ。
「そこのカゲ、首いただき!!」
ガキッ、
野猿の黒鎌を受けたのは、山本の刀。
その光景に、太猿、ランボ、イーピンが目を見開く。
「兄貴、コイツ誰だ?」
「抹殺者リストに載ってたかもしんねーが、消えてく人間をいちいち覚えちゃいねーな。」
「だよな!!」
野猿は雨のように攻撃を浴びせるが、山本は難無く受け止めていき、かすり傷1つ付かない。
これには、野猿も驚いて。
「何だコイツ!?俺の黒鎌を!!」
その瞬間、山本は攻撃体勢に入る。
「行くぜ…!」
時雨蒼燕流・八の型………
光を帯びて行くリング。
炎を纏う刀。
「離れろ、野猿!!」
山本の雰囲気を感じ取り、太猿が叫ぶ。
野猿は咄嗟に身を引く。
-------篠突く雨!!
「ギャア!!」
刀は確かに野猿に当たり、彼は悲鳴をあげるが、
「浅いか……」
「いつつ…あっぶねーっ!」
致命傷にはならない。
その攻撃を見て、太猿は呟く。
「ボンゴレには2大剣豪がいると聞く……よもやあいつ…」
敵が距離を取った隙に、ツナと獄寺がランボ達に駆け寄る。
「みんな大丈夫?!」
「しっかりしろ!!」
「ボ……ボンゴレ!!獄寺氏も!」
安堵の表情を見せるランボとイーピン。
そして…
「だから言ったじゃないですか。」
煙がはれた、その場所にいたのは、
「絶対、ツナさん達が助けに来てくれるって。」
「「(10年後のハルーーー!?)」」
ポニーテールだった黒髪がショートカットになっていて、
しかし面影でハルだと分かる。
「(何か…女っぽくなってる!)」
ドキリとするツナだが、
「はひ?何だかハル…急に背が伸びたみたいです!」
「(中身変わってないー!!)」
一方、野猿はお揃いのスーツを破かれた事に怒りを感じ、
「ショアッ!!!」
再び炎を放って来る。
対峙する山本は、自分の匣をコイントスのように弾き、キャッチしてからリングをはめる。
すると、斜め上に大きな水のバリアが出来上がり、炎を消していった。
「んだとぉ!?」
更に頭に血が昇る野猿。
太猿も驚きを隠せない。
そんな中、山本はツナ達に言う。
「お前達…よく覚えとけ。リングには、この匣ってのを開ける力がある。」
すると獄寺が、
「そ、そーか!コイツに開いてる穴はそーやって使うんだな!」
と。
「お前…それ何処で…?」
「10年後の俺のカバンに入ってた。」
そこで、獄寺もリングを匣に差し込んでみる。
が、何も起きない。
すると山本はハハハと笑って、
「人間の体ってのは、血液だけでなく目に見えない生命エネルギーが波動となって駆け巡ってんだ。」
と。
波動は全部で7種類。
リングの素質とそれを使う人間の波動が合致すると、
その波動は高密度エネルギーに変換される。
そして、放出するのだ。
「死ぬ気の炎をな。」
山本は新たな匣にリングを差し込む。
出て来たのは、炎を纏っている燕。
「す…すごい!」
「んだありゃ……?」
その燕は、野猿の回りを回って炎を消していく。
同時に、太猿は推論の答えを導きだした。
「やはりアイツは…ボンゴレの雨の守護者だ。」
そして地上でも、イーピンが大変な事に気が付いた。
「京子さんがいない!!」
「え!!」
「もしかしたら………さっきの爆風で……!」
「そ……そんな…!!」
すると山本が叫んだ。
「まだ決まってねーぜ。探しに行け、ツナ!敵はこっちで引き受けた!!」
「え……う、うん!分かった!」
ツナは廃工場の方に走っていく。
そして、未だ燕に手こずる野猿に、太猿は言った。
「前言撤回だ。くだらん雑用任務に転がり込んだ久々の大物、見逃す手はねぇ。手を貸すぞ。」
太猿の黒鎌から放たれた炎は、ツナを吹っ飛ばした。
「ぐあっ!」
そのまま窓を突き破り、ツナは工場の中へ放り込まれた。
---
------
--------------
『つっ…!』
その頃、戦闘が行なわれてる場所から70メートル程離れた地点で、檸檬はうずくまった。
本格的に骨が痛みだしたのだ。
『早く…行かなくちゃいけないのにっ!』
立ち上がって、再び走り出す。
と、その時。
ドクンッ、
『えっ…?』
突然沸き起こった、体の奥底からの痛み。
近くの壁に手をついて、檸檬は深呼吸をする。
が、収まらない。
『こんな…時に……!』
『{こんな時だからよ。}』
自分の独り言に反応したのは、
何処からともなく聞こえて来た女の声。
後ろを振り返ってみるが、誰もいない。
『空耳…?』
『{じゃないわよ。}』
『また…!?』
辺りを見回してみるが、やはり誰もいない。
ほんの少しだけ恐怖を覚えた、その時。
『{ここに、波長のひずみがあって良かった。}』
『えぇ!?』
ぐにゃり、
そんな感じで歪んだのは、目の前の“空間”。
『ど、どーなって……!』
言い終わらないうちに、歪んだ空間から人の手首が現れる。
それは、檸檬の腕を掴んで。
『いっ…いやっ……!』
『{お願い…時間がないの……}』
すごい力で引っ張られる。
檸檬は必死に抵抗する。
が、
『{---剛腕---}』
『(えっ……!?)』
檸檬が自分で取得した能力。
歪んだ空間の向こうにいる人物は、確かにその能力の名を口にした。
目を見開き、一瞬力を抜いてしまった檸檬は、そのまま引き込まれる。
同時に、誰かとすれ違う感じがした。
『貴女…まさか……』
一瞬だけ見えたのは、黒いスーツに白いブーツ。
そして、不敵な笑みを見せた口元。
『{白蘭の包囲を抜けてくれてありがとう。ご苦労様、“昔のあたし”。}』
『うそっ……!』
次の瞬間檸檬は、物凄い眠気に襲われた。
『(ヤバ………ツボ突かれた…)』
しかし、抵抗する余裕もなく檸檬は眠りに落ちていった。
---
右足を気にしていた檸檬の代わりに、そこには少し檸檬より背の高い女が立っていた。
彼女は呟く。
『“10年前バズーカ”ってのが欲しいわねぇ。』
.---
------
-------------
「いつつ…みんな……」
飛ばされた先で何とか起き上がったツナ。
「山本がいるもん。大丈夫だよな………」
そして、ハッと気がつく。
「京子ちゃん!!こんな風に飛ばされたのかも!!何処だ!」
走りながら祈る。
どうか彼女が、傷付いていないようにと。
怪我をしてないようにと。
考えるうちに、目には涙が溜まる。
そのまま角を曲がろうとする、と……
「(うわっ…!!)」
面影で分かった。
そこに座っていた髪の長い女の人は、
京子ちゃんだ、って。
泣いてるの見られたかな…。
だとしたら何てかっこわるいんだろう。
慌てて顔を隠す俺に、京子ちゃんは言った。
「ありがとう。来てくれたんだね、ツっ君。」
間。
「(ツっ君って何ーー!!?)」
思いも寄らない呼び名に、俺は急に恥ずかしくなる。
顔は腕で隠したまんま。
「ごめん……私、足くじいちゃって……」
「え!?」
思わずそっちを向いた俺。
すると、京子ちゃんは俺を見て言った。
「………あれ?何だろう、なんか幼くて懐かしい感じがする……」
優しい感じは変わってないな、とか思ってたその時。
「取りこぼしは無しだぜ。」
聞こえて来たのは、
敵の声。
振り向きたくないけど振り向いた。
あぁ、兄貴って呼ばれてた方じゃないか。
「なぁにすぐ済む。雨の守護者を待たせらんねーからな。」
不安そうな顔の京子ちゃんを、咄嗟に後ろに隠す。
「さがって!!」
「ツっ君…」
京子ちゃんが俺の腕を掴む。
多分、きっと、絶対、怖いんだろうな……。
なんて、
俺も人の事言えないくらいに怖いんだ。
全身が震え出す。
それでも、
それでも京子ちゃんだけは………!
「さ…させないぞ……させるもんか……」
---
------
------------
一方、工場の外では、
「なんで何も起きねーんだ!!壊れてんじゃねーのか?」
獄寺が何度もリングを差し込んでみるが、一向に匣はピクリとも動かない。
すると山本が言った。
「炎をイメージしろ、獄寺。死ぬ気を炎にするイメージ……覚悟を炎にするイメージだ。」
「覚悟を炎にだ?」
「お前なら出来るさ。いや、出来てたんだぜ!ま…でも今回は俺に任せとけ。ツナも心配だしな………。さがってろ。」
「てめ!」
刀と匣を構える山本。
それを後ろから見て、獄寺は仕方なさそうに言った。
「カッコつけやがって。10年のハンデがあるからってよ。へっ、今回だけはてめーにくれてやる。とりあえず見せてみろ。」
「おー。」
ニカッと笑った後、
「こいつで決めるぜ。」
匣を2つ弾く。
だが、それをキャッチする前に山本は煙に包まれた。
ボフン、
変に思った獄寺がよくよく見てみると…
「ん?」
「なっ…」
そこには、“牛乳INゼリー”をくわえながらバットを構える10年前の山本。
「なにーーーー!!?」
叫んだ直後、
ボフボフフン、
「はひ。」
「はぁ!!?」
背後にいたランボ、イーピン、ハルまで10年前の見慣れた姿に。
そして…
「ツっ君…」
不安そうにツナの腕を掴んでいた京子も、
ボフン、
「ツナ君……?」
「えぇーーー!!?」
10年前の姿になってしまった。
何が起こったか分からない。
が、どうやら状況が悪くなった事は分かった。
それが、白蘭の手の内である事は、
未だ誰も気付かない。
---
------
-------------
『そろそろ…みんな入れ替わっちゃったかもね……』
焦りの色を浮かべる彼女。
細く束ねてある後ろ髪が、風になびく。
上はスーツ、下は軽そうなスカートで、
白いブーツにはアルミで出来た器具が付いている。
彼女はちらりと腕時計で目をやり、言った。
『150秒ってトコかな………タイムリミットは。』
それから1つ深呼吸をし、
風のような速さで走り出す。
『---俊足---』
口にしたのは、やはり檸檬と同じ能力の名。
『(急がなきゃ…)』
3秒かからないうちに、彼女は工場の煙突の上に辿り着いた。
『---透視---』
ある程度の位置を捉えて、再び時計を見る。
『あと140秒…』
そして、彼らの名を呟いた。
『ツナ……隼人…武…………無事でいて。』
ミルフィオーレ
ブラックスペル
第3アフェランドラ隊
C++級(ランク)
嵐系リング(精製度C)
黒鎌(ダークサイズ)
F(フレイム)シューズ 等
・野猿
ミルフィオーレ
ブラックスペル
第3アフェランドラ隊
D級(ランク)
嵐系リング(精製度D)
黒鎌(ダークサイズ)
F(フレイム)シューズ 等
再会
「ミルフィオーレのブラックスペル!」
上空にいる敵を見る山本は、混乱するツナ達に言う。
「行くぜ!ボンゴレリングからマモンチェーンを外せ!」
一方敵は、
「じゃぁオイラが貰う!手ぇ出すなよ、太猿兄貴。」
「しっかりやれよ、野猿。」
追い詰められるランボとイーピン。
そして、近くにいるであろう10年後の“彼女達”。
「うわあああん!!」
「うろたえないでランボ!!京子さんとハルさんをお願い!!」
「その体じゃ無茶だよ、イーピン!!」
野猿はリングを匣に差し込み、太猿が持っているのと同じ鎌を出す。
「ショアッ!」
鎌から出る炎は、真直ぐ地上に叩き付けられる。
ドゴオッ、
「弱ったところを狩ってくらあ!!」
Fシューズの推進力で、煙の中へと突っ込む野猿。
その視界に、人影が1つ。
「そこのカゲ、首いただき!!」
ガキッ、
野猿の黒鎌を受けたのは、山本の刀。
その光景に、太猿、ランボ、イーピンが目を見開く。
「兄貴、コイツ誰だ?」
「抹殺者リストに載ってたかもしんねーが、消えてく人間をいちいち覚えちゃいねーな。」
「だよな!!」
野猿は雨のように攻撃を浴びせるが、山本は難無く受け止めていき、かすり傷1つ付かない。
これには、野猿も驚いて。
「何だコイツ!?俺の黒鎌を!!」
その瞬間、山本は攻撃体勢に入る。
「行くぜ…!」
時雨蒼燕流・八の型………
光を帯びて行くリング。
炎を纏う刀。
「離れろ、野猿!!」
山本の雰囲気を感じ取り、太猿が叫ぶ。
野猿は咄嗟に身を引く。
-------篠突く雨!!
「ギャア!!」
刀は確かに野猿に当たり、彼は悲鳴をあげるが、
「浅いか……」
「いつつ…あっぶねーっ!」
致命傷にはならない。
その攻撃を見て、太猿は呟く。
「ボンゴレには2大剣豪がいると聞く……よもやあいつ…」
敵が距離を取った隙に、ツナと獄寺がランボ達に駆け寄る。
「みんな大丈夫?!」
「しっかりしろ!!」
「ボ……ボンゴレ!!獄寺氏も!」
安堵の表情を見せるランボとイーピン。
そして…
「だから言ったじゃないですか。」
煙がはれた、その場所にいたのは、
「絶対、ツナさん達が助けに来てくれるって。」
「「(10年後のハルーーー!?)」」
ポニーテールだった黒髪がショートカットになっていて、
しかし面影でハルだと分かる。
「(何か…女っぽくなってる!)」
ドキリとするツナだが、
「はひ?何だかハル…急に背が伸びたみたいです!」
「(中身変わってないー!!)」
一方、野猿はお揃いのスーツを破かれた事に怒りを感じ、
「ショアッ!!!」
再び炎を放って来る。
対峙する山本は、自分の匣をコイントスのように弾き、キャッチしてからリングをはめる。
すると、斜め上に大きな水のバリアが出来上がり、炎を消していった。
「んだとぉ!?」
更に頭に血が昇る野猿。
太猿も驚きを隠せない。
そんな中、山本はツナ達に言う。
「お前達…よく覚えとけ。リングには、この匣ってのを開ける力がある。」
すると獄寺が、
「そ、そーか!コイツに開いてる穴はそーやって使うんだな!」
と。
「お前…それ何処で…?」
「10年後の俺のカバンに入ってた。」
そこで、獄寺もリングを匣に差し込んでみる。
が、何も起きない。
すると山本はハハハと笑って、
「人間の体ってのは、血液だけでなく目に見えない生命エネルギーが波動となって駆け巡ってんだ。」
と。
波動は全部で7種類。
リングの素質とそれを使う人間の波動が合致すると、
その波動は高密度エネルギーに変換される。
そして、放出するのだ。
「死ぬ気の炎をな。」
山本は新たな匣にリングを差し込む。
出て来たのは、炎を纏っている燕。
「す…すごい!」
「んだありゃ……?」
その燕は、野猿の回りを回って炎を消していく。
同時に、太猿は推論の答えを導きだした。
「やはりアイツは…ボンゴレの雨の守護者だ。」
そして地上でも、イーピンが大変な事に気が付いた。
「京子さんがいない!!」
「え!!」
「もしかしたら………さっきの爆風で……!」
「そ……そんな…!!」
すると山本が叫んだ。
「まだ決まってねーぜ。探しに行け、ツナ!敵はこっちで引き受けた!!」
「え……う、うん!分かった!」
ツナは廃工場の方に走っていく。
そして、未だ燕に手こずる野猿に、太猿は言った。
「前言撤回だ。くだらん雑用任務に転がり込んだ久々の大物、見逃す手はねぇ。手を貸すぞ。」
太猿の黒鎌から放たれた炎は、ツナを吹っ飛ばした。
「ぐあっ!」
そのまま窓を突き破り、ツナは工場の中へ放り込まれた。
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『つっ…!』
その頃、戦闘が行なわれてる場所から70メートル程離れた地点で、檸檬はうずくまった。
本格的に骨が痛みだしたのだ。
『早く…行かなくちゃいけないのにっ!』
立ち上がって、再び走り出す。
と、その時。
ドクンッ、
『えっ…?』
突然沸き起こった、体の奥底からの痛み。
近くの壁に手をついて、檸檬は深呼吸をする。
が、収まらない。
『こんな…時に……!』
『{こんな時だからよ。}』
自分の独り言に反応したのは、
何処からともなく聞こえて来た女の声。
後ろを振り返ってみるが、誰もいない。
『空耳…?』
『{じゃないわよ。}』
『また…!?』
辺りを見回してみるが、やはり誰もいない。
ほんの少しだけ恐怖を覚えた、その時。
『{ここに、波長のひずみがあって良かった。}』
『えぇ!?』
ぐにゃり、
そんな感じで歪んだのは、目の前の“空間”。
『ど、どーなって……!』
言い終わらないうちに、歪んだ空間から人の手首が現れる。
それは、檸檬の腕を掴んで。
『いっ…いやっ……!』
『{お願い…時間がないの……}』
すごい力で引っ張られる。
檸檬は必死に抵抗する。
が、
『{---剛腕---}』
『(えっ……!?)』
檸檬が自分で取得した能力。
歪んだ空間の向こうにいる人物は、確かにその能力の名を口にした。
目を見開き、一瞬力を抜いてしまった檸檬は、そのまま引き込まれる。
同時に、誰かとすれ違う感じがした。
『貴女…まさか……』
一瞬だけ見えたのは、黒いスーツに白いブーツ。
そして、不敵な笑みを見せた口元。
『{白蘭の包囲を抜けてくれてありがとう。ご苦労様、“昔のあたし”。}』
『うそっ……!』
次の瞬間檸檬は、物凄い眠気に襲われた。
『(ヤバ………ツボ突かれた…)』
しかし、抵抗する余裕もなく檸檬は眠りに落ちていった。
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右足を気にしていた檸檬の代わりに、そこには少し檸檬より背の高い女が立っていた。
彼女は呟く。
『“10年前バズーカ”ってのが欲しいわねぇ。』
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「いつつ…みんな……」
飛ばされた先で何とか起き上がったツナ。
「山本がいるもん。大丈夫だよな………」
そして、ハッと気がつく。
「京子ちゃん!!こんな風に飛ばされたのかも!!何処だ!」
走りながら祈る。
どうか彼女が、傷付いていないようにと。
怪我をしてないようにと。
考えるうちに、目には涙が溜まる。
そのまま角を曲がろうとする、と……
「(うわっ…!!)」
面影で分かった。
そこに座っていた髪の長い女の人は、
京子ちゃんだ、って。
泣いてるの見られたかな…。
だとしたら何てかっこわるいんだろう。
慌てて顔を隠す俺に、京子ちゃんは言った。
「ありがとう。来てくれたんだね、ツっ君。」
間。
「(ツっ君って何ーー!!?)」
思いも寄らない呼び名に、俺は急に恥ずかしくなる。
顔は腕で隠したまんま。
「ごめん……私、足くじいちゃって……」
「え!?」
思わずそっちを向いた俺。
すると、京子ちゃんは俺を見て言った。
「………あれ?何だろう、なんか幼くて懐かしい感じがする……」
優しい感じは変わってないな、とか思ってたその時。
「取りこぼしは無しだぜ。」
聞こえて来たのは、
敵の声。
振り向きたくないけど振り向いた。
あぁ、兄貴って呼ばれてた方じゃないか。
「なぁにすぐ済む。雨の守護者を待たせらんねーからな。」
不安そうな顔の京子ちゃんを、咄嗟に後ろに隠す。
「さがって!!」
「ツっ君…」
京子ちゃんが俺の腕を掴む。
多分、きっと、絶対、怖いんだろうな……。
なんて、
俺も人の事言えないくらいに怖いんだ。
全身が震え出す。
それでも、
それでも京子ちゃんだけは………!
「さ…させないぞ……させるもんか……」
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一方、工場の外では、
「なんで何も起きねーんだ!!壊れてんじゃねーのか?」
獄寺が何度もリングを差し込んでみるが、一向に匣はピクリとも動かない。
すると山本が言った。
「炎をイメージしろ、獄寺。死ぬ気を炎にするイメージ……覚悟を炎にするイメージだ。」
「覚悟を炎にだ?」
「お前なら出来るさ。いや、出来てたんだぜ!ま…でも今回は俺に任せとけ。ツナも心配だしな………。さがってろ。」
「てめ!」
刀と匣を構える山本。
それを後ろから見て、獄寺は仕方なさそうに言った。
「カッコつけやがって。10年のハンデがあるからってよ。へっ、今回だけはてめーにくれてやる。とりあえず見せてみろ。」
「おー。」
ニカッと笑った後、
「こいつで決めるぜ。」
匣を2つ弾く。
だが、それをキャッチする前に山本は煙に包まれた。
ボフン、
変に思った獄寺がよくよく見てみると…
「ん?」
「なっ…」
そこには、“牛乳INゼリー”をくわえながらバットを構える10年前の山本。
「なにーーーー!!?」
叫んだ直後、
ボフボフフン、
「はひ。」
「はぁ!!?」
背後にいたランボ、イーピン、ハルまで10年前の見慣れた姿に。
そして…
「ツっ君…」
不安そうにツナの腕を掴んでいた京子も、
ボフン、
「ツナ君……?」
「えぇーーー!!?」
10年前の姿になってしまった。
何が起こったか分からない。
が、どうやら状況が悪くなった事は分かった。
それが、白蘭の手の内である事は、
未だ誰も気付かない。
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『そろそろ…みんな入れ替わっちゃったかもね……』
焦りの色を浮かべる彼女。
細く束ねてある後ろ髪が、風になびく。
上はスーツ、下は軽そうなスカートで、
白いブーツにはアルミで出来た器具が付いている。
彼女はちらりと腕時計で目をやり、言った。
『150秒ってトコかな………タイムリミットは。』
それから1つ深呼吸をし、
風のような速さで走り出す。
『---俊足---』
口にしたのは、やはり檸檬と同じ能力の名。
『(急がなきゃ…)』
3秒かからないうちに、彼女は工場の煙突の上に辿り着いた。
『---透視---』
ある程度の位置を捉えて、再び時計を見る。
『あと140秒…』
そして、彼らの名を呟いた。
『ツナ……隼人…武…………無事でいて。』