未来編①
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イタリア。
街中に聳え立つ高いビル。
その上の方の階に壁はなく、一面ガラス張りになっている。
空に届きそうなその1室から、窓の外を見つめる男が1人。
不意に、その後ろから呼び掛ける部下。
「白蘭様、報告します。」
黒いボードに貼られている報告書を見ながら、彼は言う。
「第14トゥリパーノ隊の報告によりますと、キャバッローネは思いのほか手強いようです。膠着状態に入った模様です。」
「やっぱりね………」
「またメローネ基地より、入江正一氏が日本に到着したとの連絡が入りました。」
「おっ、」
2つ目の報告を聞き、彼は少し嬉しそうな声をあげながら振り返る。
「早いね、正チャン。」
銀色の髪を持ち、左目の下に入れ墨のような模様が。
来ている服は、檸檬を追っていた者達と同じ。
しかし違うのは、左胸に他の者には無い氷柱のような飾りがある事。
「見ない顔だね。」
「はっ!自分はこの度ホワイトスペルの第6ムゲット隊に配属された、レオナルド・リッピ、F級です!」
姿勢を正して挨拶をする新米部下に、白蘭と呼ばれた彼は微笑む。
「あーそー、宜しくね。“様”は付けなくていいよ。暑苦しいから。」
「は……しかし…」
「うちはやる事さえやってくれれば、幸せになれるの。」
そう言って部屋の奥にあるソファに目を移す。
そこには、尋常では無い速さでパソコンを操作する女が1人。
「だよねー、“ライト”♪」
すると彼女は画面から白蘭に視線を移し、一言。
「はい、仰せの通りです。」
白蘭
女の返答に、白蘭は軽くため息をつく。
「だから敬語なくていいって言ったじゃん。」
「白蘭は目上の方ですから。」
「んー、何とか“様”は取ったんだけどねー…。」
白蘭と女のやり取りにレオナルドは呆然とするが、ふと思い出す。
「あの、白蘭様!」
「ん?」
「緊急報告が1つ入っていました!」
それは書類には書いてない事で、レオナルドはたった今思い出したのだ。
「先日捕獲し、ほぼ植物状態だった“ダーク”こと雨宮檸檬が…逃走した模様です。」
「ん?」
ガタッ、
白蘭が疑問符を浮かべると同時に、それまで大人しく座っていた女が突然立ち上がった。
そして、レオナルドに向かって怒鳴る。
「何ですって?それは…本当なの!?」
「は、はい…!」
驚き、怯えるレオナルドに、白蘭は聞く。
「消息は?」
「いいえ全く……。ただ…もうイタリア国内にはいないとの事です。」
「そ…そんな……!!」
「落ち着いて、ね。」
脱力したように座り込む女。
白蘭はその隣に座って彼女の頭を撫でる。
「レオ君、ちょっと頼みがあるんだ。」
「は…はい!」
「日本に行った正チャンにさぁ、花を届けて欲しいんだ。」
「花…でありますか?」
ぽかんとするレオナルドに、白蘭は頷く。
「白いアネモネを、山のようにね。」
「か、畏まりました!」
レオナルドが部屋を出ると、白蘭は女を諭すように言った。
「そんな落ち込まないで。また捕まえればいーじゃん。」
「しかし………やはり殺しておくべきでした…。」
「それじゃー力は手に入らない。それに、ダークのあの状態で包囲網を抜けるのは無理だよ。きっと…」
白蘭の言葉に、彼女は顔を上げる。
「入れ…替わった……と?」
「…かもね♪」
---
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------------
同刻、日本。
並盛の地下深くにあるボンゴレのアジト。
その1室のベッドの上で、ツナはうつ伏せになっていた。
2段ベッドの下には、獄寺が寝転がっている。
何度も何度も寝返りをうちながら、数時間前の事を思い出す。
---
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「散り散りになった6人の守護者を集めるんだ。」
「え!?」
リボーンの話では、歴代のボスもそうしてきたとの事。
ボンゴレに危機が訪れる時は、ボスと守護者6人で幾多の困難を乗り越えて来たそうだ。
7人がいれば対抗出来る、そんなリボーンの言葉がイマイチ腑に落ちない。
「それより、俺達の知人もボンゴレ狩りの的になるって言ってたけど…それって母さんや京子ちゃん達も入ってんのか!?」
それに答えたのは山本。
「ミルフィオーレが抹殺する対象は拡大し続けている。彼女達も恐らく…」
「そんな…!!大変だ!!」
「手はうってある。」
山本がラルを迎えに行くと同時に、イーピンとランボが京子とハルを探しに行ったのだ。
そして今は、連絡待ちの状況。
「ママンはタイミング悪く5日前に家光とイタリア旅行に行っていてな、状況が掴めねぇ。」
「イタリアって…!」
檸檬が捕らえられているミルフィオーレもイタリアにいる。
そもそも、マフィアの本拠地は大抵イタリアにある。
ボンゴレの本部も。
「まさか…母さん……?」
青ざめるツナ。
山本が付け足す。
「ビアンキとフゥ太は情報収集に出ている。他の仲間だが……この2日間でロンシャン達や持田は行方不明……10年間に出来た知人の殆ども消された……」
「山本の親父もな……」
「そ、そん…な…」
身近にいた人物の死を聞かされ、ツナも獄寺も戸惑いを隠せない。
「だったら…いくら力が欲しいって言っても、檸檬だって危ないんじゃ…」
「あぁ、危険なのは分かってる。だが、手を出せないのも事実だ。」
「え…?」
「檸檬はミルフィオーレの厳重な監視下におかれてんだ。今の状況じゃ100%無駄死にするぞ。」
---
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毛布をかぶり直しながら、ツナは京子から貰ったお守りを握りしめる。
「(どうか…母さんや京子ちゃんやハルや檸檬達が無事でありますように…!!)」
啜り泣く声は少しずつ漏れる。
ベッドの一段目で、獄寺はその声を静かに聞いていた。
---
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「そーか…本国のボンゴレはそこまでダメージを受けてんだな。」
「あぁ…」
翌朝、早く起きたリボーン、山本、ラルが、情報交換をしていた。
「お前の仕事はここの状況を報告する事だったんだろ?だが門外顧問との連絡は断ち切られてる。これからどーするんだ?」
リボーンの言葉にしばし沈黙したラルは、決意したように立ち上がる。
「白蘭を獲る、単独でな。」
「無茶だぞ。外には俺達に有害な非73線(ノントゥリニセッテ)が放射されてんだ。呪いで死ぬぞ。」
「覚悟は出来てる。どうせ俺の命は長くない。なり損ないにしても非73線を浴び過ぎた。」
「今はツナ達にお前の力が必要なんだ。考え直せねーのか?」
「お前と山本がいれば充分だぜ。断る。」
立ち去ろうとするラルに、リボーンは言う。
「コロネロの敵を討つ気だな。」
その瞬間、ラルは一瞬立ち止まり身震いするが、そのままドアの方へ向かう。
と、ドアの向こうには起きたばかりのツナと獄寺が。
「あ!よお…」
「えと…」
ラルは何も言わずに2人の間を抜ける。
「「(コロネロの…敵……?)」」
疑問符を浮かべるツナ達に、
「おめー達よく眠れたか?いよいよ守護者を集めるミッションをスタートさせるぞ。」
「え!?」
リボーンがいきなり指令を出す。
「ちょ…ちょっと待ってよ!!まだ心の準備が…そ、それに……!」
「いつまでも京子達の心配したて始まんねーぞ。守護者を集める事が最終的に京子達を守る事になるし、檸檬を助ける為の戦力にもなるんだ。」
すると、獄寺も。
「大丈夫っスよ、10代目!アホ牛はともかくイーピンは結構やります!きっと無事に帰って来ますよ。」
「獄寺君…」
ツナの声が少し落ち着きを取り戻したところで、リボーンが提案する。
「んじゃ始めっぞ。あれから山本と話し合ったんだが、最初に欲しい守護者は即戦力…つまりつえー奴だ。」
その言葉が意味している人物…
探すべき人物は……
「ボンゴレ10代目最強の守護者、雲雀恭弥だ。」
「ま…俺がここにいるし、残りの守護者ん中じゃ最強っスね…」
獄寺がいつものように張り合ったところで、
雲雀の居場所は全く分からない。
「雲雀の手掛かりはコイツだけだ。」
そう言って山本が見せたのは…
丸くてふわふわした黄色い鳥の写真。
「なぁ!?これってバーズの鳥じゃなかった!?」
「今は雲雀が飼っててヒバードっていうらしいぞ。」
「(誰が名前つけたのー!?)」
2人の心を読むように山本が言う。
「ずっと前、ハルが雲雀の肩に乗ってるのを見かけたらしくてな…」
「手掛かり……それ…だけですか?」
ツナが戸惑いながら聞く一方、獄寺は黒曜で鳥が並中の校歌を歌ってるのを思い出していた。
「まぁでも、並盛好きのアイツの事だ。きっとこの街に手掛かりはあるはずだ。俺はいけねーがしっかり連れて帰って来い。」
「お前……そんなに外だと体調酷いのか……?」
心配そうにするツナに、リボーンは何事もないように返す。
「余計な心配すんな。いずれこの話はしてやる。今は出かける準備しろ。」
それでも不安そうなツナ。
「山本がついてるぞ。奴はこの時代の戦い方を熟知してる。」
「そ、そう…だけど」
「なーに、ビビるこたぁないさ。お前達はこの時代の俺達が失ったすんげー力を持ってんじゃねーか。」
山本の言葉に首をかしげる2人。
「失った…すんげー力…?」
「………お前達は希望と共に来てくれたんだ。ボンゴレリングっていうな。」
入って来た場所とは違うところへ向かう3人。
その間に、山本は言う。
「雲雀が来てくれりゃ、檸檬も来るかもな。」
「え…?どーして?」
「そーか。お前達の時代じゃまだ…能力が開花されてねーんだったか……」
「どーゆー意味だよ。」
イライラしながら答える獄寺に、山本は言う。
「檸檬の能力の源、研究された結果が最近出てな。それを元に、檸檬は自分の能力を完成させたんだ。」
「能力の…完成?」
「あぁ、アレはすげーぜ。空間移動だ。」
予想外の単語に、2人とも唖然とする。
「空間って…!」
「んな事出来んのかよ!!?」
「檸檬の能力は遺伝だからな。父親のリズム感と母親の第六感、組み合わせて完成させたってさ。」
「で、どーして雲雀が来ると檸檬が来るんだよ。」
「ん?そりゃあ…」
山本はちらりと後ろの獄寺を見ながら言った。
「檸檬の能力は他人を想う事で発動するからな。」
---
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-------------
「………い……おい…!」
『ん……?』
「おい、大丈夫かね!?お嬢さん!!」
さっきまで林の中にいたはずの檸檬。
物凄い人数に追い詰められて、撃たれそうになって…
『あっ!……………つっ!?』
飛び起きようとする檸檬の右足に、激痛が襲い掛かる。
そこで漸く、自分の右足にヒビが入っている事を思いだした。
「何しとるんじゃ、こんなトコで!」
『え?』
見上げてみれば、そこには60ぐらいのお爺さん。
知らない人だが、明らかに日本人。
『えっと……ここは何処ですか?』
「何を言っとるんじゃ?並盛町内会の本部じゃよ。」
『え…!?並…盛……!??』
信じられないという表情をする檸檬。
その右足を見たお爺さんは言う。
「どうしたんじゃ、そんな怪我して。」
『あの、大丈夫ですから……。』
ヨロヨロしながら立ち上がり、檸檬は壁伝いに歩き出す。
「お嬢さん!」
『あ。』
ふっと振り向いて檸檬は言った。
『あの、御迷惑でなければ大きい布とか欲しいんですけど…』
「へ?」
首をかしげるお爺さんに檸檬は自分の右足を指差す。
『固定出来たらな…って。』
「おぉ!待ってなさい。」
お爺さんはすぐに取って来てくれた。
檸檬は再三念を押す。
『あの、救急車とかに連絡はしないで下さい。』
「何だか…大変だねぇ。気をつけるんだよ。」
『はい、ありがとうございます♪』
お爺さんは更に、早く良くなるようにとビン牛乳を1本檸檬に渡した。
それをすぐに飲み干して、檸檬は歩き出した。
右足を多少引きずりながら。
『(大体どーしてあたし……並盛に…?まさか、ホントに神様に祈りが届いたとか?)』
自分の考えに、思わず笑いが込み上げる。
『まさかね…』
思い出したのは、少し前に両親によって伝えられた自分の持つ能力。
しかし、まだそれを使える程自分は成長していないはず。
『空間移動、なんて……』
---
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その頃、5丁目の工場跡から並中へ向かう事にした山本、ツナ、獄寺。
「おい、ボンゴレリングはどーなってんだよ!!」
「何だ?」
「何でこの時代にねーんだ!!」
「あー、その話な。だいぶ前にリングを砕いて捨てちまったんだ。」
「なーーー!?捨てたー!!?」
ボンゴレリングは、ヴァリアーとの戦いで手に入れたリング。
たくさん修業を積んで、たくさんつらい思いをして手に入れた。
それゆえ、捨てたという事実が信じられない。
「誰がそんな事したんだよ!!」
「うちのボスさ。」
山本の答えに、2人はまた目を見開く。
「それって!!もしかして…!!」
「じゅ…10代目が!!?」
「守護者には反対する奴もいたんだが、そりゃーもーツナの奴譲らなくてな。」
“戦いの火種になるぐらいなら無い方がいい”
マフィア間でリングの重要性が騒がれ始め、略奪戦の様相を呈して来た頃、ツナはそう思ったようだ。
10年後のツナは、ボンゴレの存在事態にも首をかしげていたという。
「つっても今じゃ、俺達もリングに頼ってる部分がデカいんだけどな。お前達にも教えてやる。野球と同じで特訓あるのみだ。」
「そう言えば山本……野球は?」
ツナが尋ねたその時。
ドウッ!
十数メートル前から、物凄い煙と音が。
警戒心を高める3人の耳に、聞き覚えのある声。
「こっちです!急いで!」
同時に、うっすらと煙の中から見覚えのある人物が2人現れる。
「ランボにイーピン!!」
「誰かを連れてるな。」
「それって…まさか!!あそこにいるのは…!」
イーピンは未だ煙で姿が見えない人物に話し掛ける。
「京子さん、ハルさん、逃げて!!ここは私が!!」
「でも!!」
その時、思いきり振るわれる敵の武器。
そこから出た炎は地面に叩き付けられ、再び砂煙を生み出す。
「きゃあっ!!」
「ああ!!」
悲鳴に反応するツナ。
獄寺は咄嗟に攻撃が放たれた方向を見る。
「上か!!」
同じように見上げるツナの視界に、死ぬ気の炎。
いや、正しくは、死ぬ気の炎を纏う靴で飛んでいる男が2人。
体格のいい、色黒の男が言う。
「さぁとどめを刺して来い。」
すると長髪で背丈の小さい男が答えた。
「任してよ、兄弟(ブロー)。」
敵が持つのは、同じように死ぬ気の炎を纏った大鎌だった。
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『はぁっ…はぁ……』
近くにあった高いマンションの屋上に立つ檸檬。
辺りを見回して、自分のいる位置を確認する。
『リボーン達…何処だろう。』
神経を尖らせて、超五感を使う。
すると…
ドゴオッ、
『……戦闘音!!?』
慌ててそちらを向く。
見えたのは、立ち上る大きな煙。
『ま…さか……』
目を見開いた後、歯を食いしばって覚悟を決める。
今のあたしは右足ヤバいし、確実に足手纏い。
だけど…
今使わないで、いつ使うってのよ!!
『(俊足っ!!)』
悲鳴をあげる足を無理矢理動かして、
あぁもう、折れちゃうかもしれないけど。
それでも、護るって決めた。
だから…
お願い、無事でいて。
街中に聳え立つ高いビル。
その上の方の階に壁はなく、一面ガラス張りになっている。
空に届きそうなその1室から、窓の外を見つめる男が1人。
不意に、その後ろから呼び掛ける部下。
「白蘭様、報告します。」
黒いボードに貼られている報告書を見ながら、彼は言う。
「第14トゥリパーノ隊の報告によりますと、キャバッローネは思いのほか手強いようです。膠着状態に入った模様です。」
「やっぱりね………」
「またメローネ基地より、入江正一氏が日本に到着したとの連絡が入りました。」
「おっ、」
2つ目の報告を聞き、彼は少し嬉しそうな声をあげながら振り返る。
「早いね、正チャン。」
銀色の髪を持ち、左目の下に入れ墨のような模様が。
来ている服は、檸檬を追っていた者達と同じ。
しかし違うのは、左胸に他の者には無い氷柱のような飾りがある事。
「見ない顔だね。」
「はっ!自分はこの度ホワイトスペルの第6ムゲット隊に配属された、レオナルド・リッピ、F級です!」
姿勢を正して挨拶をする新米部下に、白蘭と呼ばれた彼は微笑む。
「あーそー、宜しくね。“様”は付けなくていいよ。暑苦しいから。」
「は……しかし…」
「うちはやる事さえやってくれれば、幸せになれるの。」
そう言って部屋の奥にあるソファに目を移す。
そこには、尋常では無い速さでパソコンを操作する女が1人。
「だよねー、“ライト”♪」
すると彼女は画面から白蘭に視線を移し、一言。
「はい、仰せの通りです。」
白蘭
女の返答に、白蘭は軽くため息をつく。
「だから敬語なくていいって言ったじゃん。」
「白蘭は目上の方ですから。」
「んー、何とか“様”は取ったんだけどねー…。」
白蘭と女のやり取りにレオナルドは呆然とするが、ふと思い出す。
「あの、白蘭様!」
「ん?」
「緊急報告が1つ入っていました!」
それは書類には書いてない事で、レオナルドはたった今思い出したのだ。
「先日捕獲し、ほぼ植物状態だった“ダーク”こと雨宮檸檬が…逃走した模様です。」
「ん?」
ガタッ、
白蘭が疑問符を浮かべると同時に、それまで大人しく座っていた女が突然立ち上がった。
そして、レオナルドに向かって怒鳴る。
「何ですって?それは…本当なの!?」
「は、はい…!」
驚き、怯えるレオナルドに、白蘭は聞く。
「消息は?」
「いいえ全く……。ただ…もうイタリア国内にはいないとの事です。」
「そ…そんな……!!」
「落ち着いて、ね。」
脱力したように座り込む女。
白蘭はその隣に座って彼女の頭を撫でる。
「レオ君、ちょっと頼みがあるんだ。」
「は…はい!」
「日本に行った正チャンにさぁ、花を届けて欲しいんだ。」
「花…でありますか?」
ぽかんとするレオナルドに、白蘭は頷く。
「白いアネモネを、山のようにね。」
「か、畏まりました!」
レオナルドが部屋を出ると、白蘭は女を諭すように言った。
「そんな落ち込まないで。また捕まえればいーじゃん。」
「しかし………やはり殺しておくべきでした…。」
「それじゃー力は手に入らない。それに、ダークのあの状態で包囲網を抜けるのは無理だよ。きっと…」
白蘭の言葉に、彼女は顔を上げる。
「入れ…替わった……と?」
「…かもね♪」
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同刻、日本。
並盛の地下深くにあるボンゴレのアジト。
その1室のベッドの上で、ツナはうつ伏せになっていた。
2段ベッドの下には、獄寺が寝転がっている。
何度も何度も寝返りをうちながら、数時間前の事を思い出す。
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「散り散りになった6人の守護者を集めるんだ。」
「え!?」
リボーンの話では、歴代のボスもそうしてきたとの事。
ボンゴレに危機が訪れる時は、ボスと守護者6人で幾多の困難を乗り越えて来たそうだ。
7人がいれば対抗出来る、そんなリボーンの言葉がイマイチ腑に落ちない。
「それより、俺達の知人もボンゴレ狩りの的になるって言ってたけど…それって母さんや京子ちゃん達も入ってんのか!?」
それに答えたのは山本。
「ミルフィオーレが抹殺する対象は拡大し続けている。彼女達も恐らく…」
「そんな…!!大変だ!!」
「手はうってある。」
山本がラルを迎えに行くと同時に、イーピンとランボが京子とハルを探しに行ったのだ。
そして今は、連絡待ちの状況。
「ママンはタイミング悪く5日前に家光とイタリア旅行に行っていてな、状況が掴めねぇ。」
「イタリアって…!」
檸檬が捕らえられているミルフィオーレもイタリアにいる。
そもそも、マフィアの本拠地は大抵イタリアにある。
ボンゴレの本部も。
「まさか…母さん……?」
青ざめるツナ。
山本が付け足す。
「ビアンキとフゥ太は情報収集に出ている。他の仲間だが……この2日間でロンシャン達や持田は行方不明……10年間に出来た知人の殆ども消された……」
「山本の親父もな……」
「そ、そん…な…」
身近にいた人物の死を聞かされ、ツナも獄寺も戸惑いを隠せない。
「だったら…いくら力が欲しいって言っても、檸檬だって危ないんじゃ…」
「あぁ、危険なのは分かってる。だが、手を出せないのも事実だ。」
「え…?」
「檸檬はミルフィオーレの厳重な監視下におかれてんだ。今の状況じゃ100%無駄死にするぞ。」
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毛布をかぶり直しながら、ツナは京子から貰ったお守りを握りしめる。
「(どうか…母さんや京子ちゃんやハルや檸檬達が無事でありますように…!!)」
啜り泣く声は少しずつ漏れる。
ベッドの一段目で、獄寺はその声を静かに聞いていた。
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「そーか…本国のボンゴレはそこまでダメージを受けてんだな。」
「あぁ…」
翌朝、早く起きたリボーン、山本、ラルが、情報交換をしていた。
「お前の仕事はここの状況を報告する事だったんだろ?だが門外顧問との連絡は断ち切られてる。これからどーするんだ?」
リボーンの言葉にしばし沈黙したラルは、決意したように立ち上がる。
「白蘭を獲る、単独でな。」
「無茶だぞ。外には俺達に有害な非73線(ノントゥリニセッテ)が放射されてんだ。呪いで死ぬぞ。」
「覚悟は出来てる。どうせ俺の命は長くない。なり損ないにしても非73線を浴び過ぎた。」
「今はツナ達にお前の力が必要なんだ。考え直せねーのか?」
「お前と山本がいれば充分だぜ。断る。」
立ち去ろうとするラルに、リボーンは言う。
「コロネロの敵を討つ気だな。」
その瞬間、ラルは一瞬立ち止まり身震いするが、そのままドアの方へ向かう。
と、ドアの向こうには起きたばかりのツナと獄寺が。
「あ!よお…」
「えと…」
ラルは何も言わずに2人の間を抜ける。
「「(コロネロの…敵……?)」」
疑問符を浮かべるツナ達に、
「おめー達よく眠れたか?いよいよ守護者を集めるミッションをスタートさせるぞ。」
「え!?」
リボーンがいきなり指令を出す。
「ちょ…ちょっと待ってよ!!まだ心の準備が…そ、それに……!」
「いつまでも京子達の心配したて始まんねーぞ。守護者を集める事が最終的に京子達を守る事になるし、檸檬を助ける為の戦力にもなるんだ。」
すると、獄寺も。
「大丈夫っスよ、10代目!アホ牛はともかくイーピンは結構やります!きっと無事に帰って来ますよ。」
「獄寺君…」
ツナの声が少し落ち着きを取り戻したところで、リボーンが提案する。
「んじゃ始めっぞ。あれから山本と話し合ったんだが、最初に欲しい守護者は即戦力…つまりつえー奴だ。」
その言葉が意味している人物…
探すべき人物は……
「ボンゴレ10代目最強の守護者、雲雀恭弥だ。」
「ま…俺がここにいるし、残りの守護者ん中じゃ最強っスね…」
獄寺がいつものように張り合ったところで、
雲雀の居場所は全く分からない。
「雲雀の手掛かりはコイツだけだ。」
そう言って山本が見せたのは…
丸くてふわふわした黄色い鳥の写真。
「なぁ!?これってバーズの鳥じゃなかった!?」
「今は雲雀が飼っててヒバードっていうらしいぞ。」
「(誰が名前つけたのー!?)」
2人の心を読むように山本が言う。
「ずっと前、ハルが雲雀の肩に乗ってるのを見かけたらしくてな…」
「手掛かり……それ…だけですか?」
ツナが戸惑いながら聞く一方、獄寺は黒曜で鳥が並中の校歌を歌ってるのを思い出していた。
「まぁでも、並盛好きのアイツの事だ。きっとこの街に手掛かりはあるはずだ。俺はいけねーがしっかり連れて帰って来い。」
「お前……そんなに外だと体調酷いのか……?」
心配そうにするツナに、リボーンは何事もないように返す。
「余計な心配すんな。いずれこの話はしてやる。今は出かける準備しろ。」
それでも不安そうなツナ。
「山本がついてるぞ。奴はこの時代の戦い方を熟知してる。」
「そ、そう…だけど」
「なーに、ビビるこたぁないさ。お前達はこの時代の俺達が失ったすんげー力を持ってんじゃねーか。」
山本の言葉に首をかしげる2人。
「失った…すんげー力…?」
「………お前達は希望と共に来てくれたんだ。ボンゴレリングっていうな。」
入って来た場所とは違うところへ向かう3人。
その間に、山本は言う。
「雲雀が来てくれりゃ、檸檬も来るかもな。」
「え…?どーして?」
「そーか。お前達の時代じゃまだ…能力が開花されてねーんだったか……」
「どーゆー意味だよ。」
イライラしながら答える獄寺に、山本は言う。
「檸檬の能力の源、研究された結果が最近出てな。それを元に、檸檬は自分の能力を完成させたんだ。」
「能力の…完成?」
「あぁ、アレはすげーぜ。空間移動だ。」
予想外の単語に、2人とも唖然とする。
「空間って…!」
「んな事出来んのかよ!!?」
「檸檬の能力は遺伝だからな。父親のリズム感と母親の第六感、組み合わせて完成させたってさ。」
「で、どーして雲雀が来ると檸檬が来るんだよ。」
「ん?そりゃあ…」
山本はちらりと後ろの獄寺を見ながら言った。
「檸檬の能力は他人を想う事で発動するからな。」
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「………い……おい…!」
『ん……?』
「おい、大丈夫かね!?お嬢さん!!」
さっきまで林の中にいたはずの檸檬。
物凄い人数に追い詰められて、撃たれそうになって…
『あっ!……………つっ!?』
飛び起きようとする檸檬の右足に、激痛が襲い掛かる。
そこで漸く、自分の右足にヒビが入っている事を思いだした。
「何しとるんじゃ、こんなトコで!」
『え?』
見上げてみれば、そこには60ぐらいのお爺さん。
知らない人だが、明らかに日本人。
『えっと……ここは何処ですか?』
「何を言っとるんじゃ?並盛町内会の本部じゃよ。」
『え…!?並…盛……!??』
信じられないという表情をする檸檬。
その右足を見たお爺さんは言う。
「どうしたんじゃ、そんな怪我して。」
『あの、大丈夫ですから……。』
ヨロヨロしながら立ち上がり、檸檬は壁伝いに歩き出す。
「お嬢さん!」
『あ。』
ふっと振り向いて檸檬は言った。
『あの、御迷惑でなければ大きい布とか欲しいんですけど…』
「へ?」
首をかしげるお爺さんに檸檬は自分の右足を指差す。
『固定出来たらな…って。』
「おぉ!待ってなさい。」
お爺さんはすぐに取って来てくれた。
檸檬は再三念を押す。
『あの、救急車とかに連絡はしないで下さい。』
「何だか…大変だねぇ。気をつけるんだよ。」
『はい、ありがとうございます♪』
お爺さんは更に、早く良くなるようにとビン牛乳を1本檸檬に渡した。
それをすぐに飲み干して、檸檬は歩き出した。
右足を多少引きずりながら。
『(大体どーしてあたし……並盛に…?まさか、ホントに神様に祈りが届いたとか?)』
自分の考えに、思わず笑いが込み上げる。
『まさかね…』
思い出したのは、少し前に両親によって伝えられた自分の持つ能力。
しかし、まだそれを使える程自分は成長していないはず。
『空間移動、なんて……』
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その頃、5丁目の工場跡から並中へ向かう事にした山本、ツナ、獄寺。
「おい、ボンゴレリングはどーなってんだよ!!」
「何だ?」
「何でこの時代にねーんだ!!」
「あー、その話な。だいぶ前にリングを砕いて捨てちまったんだ。」
「なーーー!?捨てたー!!?」
ボンゴレリングは、ヴァリアーとの戦いで手に入れたリング。
たくさん修業を積んで、たくさんつらい思いをして手に入れた。
それゆえ、捨てたという事実が信じられない。
「誰がそんな事したんだよ!!」
「うちのボスさ。」
山本の答えに、2人はまた目を見開く。
「それって!!もしかして…!!」
「じゅ…10代目が!!?」
「守護者には反対する奴もいたんだが、そりゃーもーツナの奴譲らなくてな。」
“戦いの火種になるぐらいなら無い方がいい”
マフィア間でリングの重要性が騒がれ始め、略奪戦の様相を呈して来た頃、ツナはそう思ったようだ。
10年後のツナは、ボンゴレの存在事態にも首をかしげていたという。
「つっても今じゃ、俺達もリングに頼ってる部分がデカいんだけどな。お前達にも教えてやる。野球と同じで特訓あるのみだ。」
「そう言えば山本……野球は?」
ツナが尋ねたその時。
ドウッ!
十数メートル前から、物凄い煙と音が。
警戒心を高める3人の耳に、聞き覚えのある声。
「こっちです!急いで!」
同時に、うっすらと煙の中から見覚えのある人物が2人現れる。
「ランボにイーピン!!」
「誰かを連れてるな。」
「それって…まさか!!あそこにいるのは…!」
イーピンは未だ煙で姿が見えない人物に話し掛ける。
「京子さん、ハルさん、逃げて!!ここは私が!!」
「でも!!」
その時、思いきり振るわれる敵の武器。
そこから出た炎は地面に叩き付けられ、再び砂煙を生み出す。
「きゃあっ!!」
「ああ!!」
悲鳴に反応するツナ。
獄寺は咄嗟に攻撃が放たれた方向を見る。
「上か!!」
同じように見上げるツナの視界に、死ぬ気の炎。
いや、正しくは、死ぬ気の炎を纏う靴で飛んでいる男が2人。
体格のいい、色黒の男が言う。
「さぁとどめを刺して来い。」
すると長髪で背丈の小さい男が答えた。
「任してよ、兄弟(ブロー)。」
敵が持つのは、同じように死ぬ気の炎を纏った大鎌だった。
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『はぁっ…はぁ……』
近くにあった高いマンションの屋上に立つ檸檬。
辺りを見回して、自分のいる位置を確認する。
『リボーン達…何処だろう。』
神経を尖らせて、超五感を使う。
すると…
ドゴオッ、
『……戦闘音!!?』
慌ててそちらを向く。
見えたのは、立ち上る大きな煙。
『ま…さか……』
目を見開いた後、歯を食いしばって覚悟を決める。
今のあたしは右足ヤバいし、確実に足手纏い。
だけど…
今使わないで、いつ使うってのよ!!
『(俊足っ!!)』
悲鳴をあげる足を無理矢理動かして、
あぁもう、折れちゃうかもしれないけど。
それでも、護るって決めた。
だから…
お願い、無事でいて。