未来編①
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10年後の彼に導かれ、
待ちに待った再会は、
もうすぐそこに。
アジト
「ま、まさかお前……」
「や…山本!?」
面影のある彼に駆け寄りつつ、獄寺とツナは尋ねる。
しかも、彼が放ったのはついこの前リング争奪戦で見た、スクアーロの技だ。
「あれ?悪い冗談じゃ…ねーよな。門外顧問のトコの使者を迎えに来たらお前達までって………ん?でも縮んでねーか?幻…?妖怪か?」
その発言で2人は確信する。
「(やっぱこの人山本だーーー!!!)」
そしてツナが説明した。
10年バズーカでこの世界に来てしまったのだ、と。
すると10年後の山本は少し複雑な表情をして。
「元気そうだな、ツナ。」
と。
「とりあえず行こーぜ。こんな奴…相手にするだけ損だ。」
山本に続いて、3人も歩き出した。
---
------
-------------
その頃、洞穴の奥で仮眠をとっていた檸檬。
『(ん……?)』
何か冷たい風を感じて、目を開けた。
洞穴の中はひんやりしていて、暗くて、檸檬の恐怖を引き出すのに充分だった。
『(超五感…発動……)』
耳をすまして、森の中の音を探ってみる。
すると…
---「ダークは…ダークは何処だ!?」
---「確かにこの林に落ちたよな?」
---「しっ!静かに。何処かに潜んでいるかもしれない…。」
『追っ手…!?』
早く脈打つ心臓を落ち着かせながら、檸檬は洞穴の入口に立ってみる。
数十メートル向こうに、光が見える。
『(懐中電灯でも持ってるのかな…?)』
それにしては、ユラユラ揺れている。
ロウソクの明かりのように。
---「いいか、ダークを見つけたら殺すなよ。生け捕りだ。」
---「ったく、上も無茶を言うもんだぜ。あのダークを生け捕りになんて出来るワケねーってのに…」
『(生け捕り、か……)』
自分の命はとりあえず保障されている。
しかし同時に、掴まれば完全にツナ達の足手纏いになるようだ。
『(人質…?それとも………)』
他に自分を生かしておく理由があるのだろうか。
考えてみるが、今の檸檬にその答えが分かるはずもなく。
『逃げなくちゃ。』
それだけが、確かだった。
---
------
--------------
その頃、森の中を歩くツナ達は、山本から色々話を聞いていた。
「あれから色々あったんだぜ。」
その時の表情は、やはり少し哀愁を帯びていて。
ほんの少し沈黙が流れる。
「そーだ!!この10年間、お前はそりゃー凄かったんだぜ、ツナ!!」
山本がツナの頭に腕を乗せながら言う。
「獄寺、お前もな。」
不意に、ラルが山本に話し掛ける。
「おい…走らないのか?歩いていては朝までかかるぞ。」
「そっか、言ってなかったな。お前の知ってるアジトの在り処の情報はガセなんだ。」
そう言いながら前に出る山本。
「俺を見失わないように、ついて来てくれ。」
内ポケットから1つの匣を取り出す。
右手の指輪からチェーンを外し、匣の穴に差し込んだ。
シュッ、
次の瞬間飛び出て来たのは、炎を帯びた燕。
それは山本の回りを飛び回る。
「な、何だ!?」
「防犯対策のカモフラだ。余所見はするなよ。」
疑問符を浮かべるツナの鼻に、冷たい雫が落ちて来る。
「雨?」
それはどんどん激しくなり、
「うわーーー!!」
「(雨属性の匣か…ボンゴレリング無しで開匣出来るとはな…)」
叩き付けるように降り注ぐ。
「いてて!なんも見えねぇ!」
「ジャングルの雨みたいだ!!」
必死に頭を庇う2人の耳に、山本の声が。
「こっちだ。」
その声に反応してうっすら目を開けたツナに見えたのは、
それまで確かに無かった、地下に続く階段だった。
「降りるぜ。」
「アジトって、地下にあんのー!?」
「あぁ、そうだ。」
階段を下ってドアを開けると、指紋認証センサーが。
「他にもこんな入口が、6か所ある。」
開いたドアは、エレベーターのドア。
ツナ達は地下5階まで下る。
「ここはボンゴレの重要な拠点として、急ピッチで建造中だったんだ。」
エレベーターのドアが開く。
その先には、たくさんの太い柱が立つ、広い広い部屋。
「いまんとこ、6割方出来てるってトコだな。」
「す…すげー!!ボンゴレってこんなの作れちゃうの!?」
目を見開くツナに、山本は笑いながら言う。
「いい事教えてやろーか?お前が作らせたんだぜ、ツナ。」
「えー!!?お……俺がー!!?」
「あぁ、もう少しでかくなったお前がな。」
「し…信じらんない…」
呆然とするツナ。
一方、ラルは目の前にある装置を見て何かと尋ねる。
「あぁ、メカニックのジャンニーニが作った、何とかって物質を遮るバリアだそうだ。」
確かにそれは、レーザーの面のようなモノで何かをシャットアウトしているようだった。
ツナ達は普通に通り抜ける。
だが最後にラルが通り抜けた瞬間、
「うっ!」
少しの痛みを伴って、ラルはその場に倒れてしまった。
「うぐ…」
「おい!どーした!?」
「ど…どーなってんの!?」
驚くツナ達に、山本が説明する。
「心配ない。環境の急激な変化に体がショックを起こしただけだ。ここは彼女達にとって、外界とは違う作りになってるからな…」
「彼女達……?」
「少しすりゃ、目を覚ます。」
山本はラルを抱えて長い廊下を歩いて行く。
そして、ある部屋のドアを開けた。
「さぁ、着いたぜ。」
部屋に入ったツナと獄寺に聞こえた声。
「おせーぞ。」
それは、気にかけていた人物のモノだった。
---
------
------------
『はっ…はっ……』
林の中を走る檸檬。
俊足を使わずに走るのは、すごく久しぶりのような感じがする。
ところが、急に右足が痛みだし、止まらざるを得なくなる。
大木の影に隠れて、檸檬は後ろを見た。
『まっずい事になったな~~。』
追っ手は確実に檸檬に迫っている。
俊足を使えば捲くのは容易い。
しかし、ヒビの入った足で俊足を使うのは自殺行為。
折ろうとしているようなモノだ。
かと言って大人しく掴まるのはごめんだ。
だが今の檸檬には、ココが何処かも、皆と合流する術も分からない。
と、その時。
雲に隠れていた月が顔を出す。
よりにもよって満月。
『(や、やばっ…!)』
森の中、空からの光は、確実に檸檬を照らし出して。
『(影が……!)』
「見つけたぞ、人影だ!!」
『(あぁ…もうっ!!)』
ついに、ついに見つかってしまった。
もうダメなんだろうか。
「追え!逃がすな!!」
『ど…しよ……!』
一生懸命走るけど、どうしても距離は縮まって行く。
右足の骨が悲鳴をあげる。
「ダーク!抵抗するなら撃つ!」
「我々はお前を殺さない!大人しくこっちに来い!」
『イヤ……だっての……』
皆に…
皆に会いたい…。
皆のいる…
並盛に帰りたい……。
「来ないならば撃つ!!」
『イヤだって言ってんでしょーが!!!』
帰りたいの…!
だから走ってるの…!
お願い、神様……
もしいるなら、あたしを……
「撃てぇ!!!」
もう一度並盛に………!!
ギュッと目を瞑った檸檬は、その時何が起きたか分からなかった。
ただ、自分が風を切る感じがした。
反対に檸檬を追っていた者達は、ただただ唖然としていた。
明らかに目の前に居た檸檬が、
突然消えてしまったのである。
「な…何が起きた!?」
「ダークが…ダークが消えた!!」
「これが…ダークの力……なのか…」
『(あぁ…もう疲れた……)』
何も分からない状況下、檸檬はすんなり意識を手放した。
---
------
-------------
声のした方を向いてみるツナの視界に、
「ちゃおっス。」
いつものように黒いスーツに身を包んだリボーンが。
その姿を見た瞬間、ツナの目は潤み始める。
「り…リボーン……」
よろめきながらも近付くツナの背後から、またリボーンの声が。
「抱きしめて~vV」
次の瞬間与えられたのは、後頭部への蹴り。
「こっちよ!!」
「ふげーーー!!」
頭を抱えるツナに、獄寺が駆け寄る。
「大丈夫っスか!?」
「なんなんだよ!!このふざけた再会は!!こっちは死ぬ思いでお前を探してたんだぞ………!!またそんな変なカッコして!」
それでも、リボーンの無事が確認されて、思わず笑みがこぼれる。
そんなツナに、全身白いフィットスーツを来たリボーンは言う。
「しょーがねーだろ?このスーツを着てねーと体調最悪なんだ。外のバリアも俺の為に作らせたんだしな。」
「どういう事?」
「俺には厳しい世の中って事だ。」
リボーンの言葉に疑問を持ちつつ、ツナは自分達の疑問を投げかける。
「おかしいんだよ!過去に戻れないんだ!」
「それくらい分かってるぞ。おかしいところはそれだけじゃねーしな。」
10年バズーカなのに、ここは約9年10ヶ月後の世界のようだ。
何でこんな事になったのかは、リボーンにも分からないらしい。
「そ…そうだ!リボーン、檸檬来てない?」
「檸檬…?この世界に来てるのか?」
「獄寺君と一緒に当たったらしくて…」
ツナとリボーンの会話にピクリと反応したのは、山本だった。
その様子を見て、獄寺が問いかける。
「おい山本、10年後の檸檬は何処にいんだよ。」
「そうだ…!10年後の檸檬のいた場所が分かれば……!」
「イタリアだ。」
ツナの言葉を遮って山本がした返答は、予想外に遠い場所。
「なっ……えぇーー!!?」
「何でまた、んなトコに……」
すると山本は、少し苦しそうな表情をする。
イヤな空気を感じ取るツナ達に、リボーンが言った。
「まぁ、俺達がワケのわからねー土地に飛ばされなかったのは良かったな。」
「え…?」
「ここは並盛だぞ。」
証拠としてモニターで見せられた地上には、確かに並中があって。
「って事はホントに並盛なのー!?」
「日本だったんスかーー!?」
「そーだぞ。そして過去に戻れない以上…ここで起こってる事は、お前達の問題だぞ。」
リボーンの言葉に息を飲む2人。
山本が説明を始める。
「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点が同時に攻撃を受けている。勿論ここでも、ボンゴレ狩りは進行中だ。」
「ボンゴレ…」
「狩り…?」
「お前達も見たはずだぞ、ボンゴレマークのついた棺桶を。」
「それって俺の事ー!?」
「てめぇ!!」
次の瞬間、獄寺が山本を思いっきり殴った。
そして、噛み付くように怒鳴る。
「何してやがった!!何で10代目があんな事に!!」
「ひいっ!獄寺君!」
すると山本は至極つらそうな顔をして。
「すまない……」
と。
「てめえ、すまねーで済むワケ…」
「やめろ獄寺。10年後のお前もいたんだぞ。」
リボーンの言葉に、獄寺は項垂れる。
「く……そ…」
獄寺を止めたところで、リボーンは説明する。
「敵であるミルフィオーレファミリーの恐ろしいところは勿論戦闘力の高さだが、それよりもやべーのは、目的がただ指輪を得る為の勝利や制圧だけじゃない事だ。」
山本が続ける。
「本部が陥落した時点で、ミルフィオーレは交渉の席を用意してボンゴレ側のある男を呼び出した。だが奴らは一切交渉などせずその命を奪ったんだ……」
“本部陥落”
“命を奪った”
次々と信じ難い情報が伝えられていく。
「それからもこちらの呼びかけに一切応じず、次々こちらの人間を消し続けている……。」
そして聞かされる敵の目的。
「奴らは……ボンゴレ側の人間を1人残らず殲滅するつもりだ。」
「つ…つまり過去から来た俺達も危ないって事…?」
「それだけじゃねーぞ。お前達と関わりのあった知り合いも的にかけられてんだ。」
「そ…それって……!」
「ただし、1人を除いてな。」
「え……?」
山本の付け加えに、ツナは疑問符を浮かべる。
「1人って…?」
「檸檬の10年後の通り名は知ってっか?」
「DARQって言ってたな、あの女が。」
獄寺がベッドで寝ているラルを見る。
「雲雀とツナはその名を使われるのを嫌がってた。本人以上にな。」
「まさか……1人って!!」
「あぁ、檸檬の事だ。奴らは、檸檬の力を…ダークとしての力を狙ってる。」
「檸檬の…力……?」
山本は再びつらそうに俯きながら話す。
「本部陥落の情報を聞き、真っ先に飛んだのが檸檬だった。だがそこで檸檬は………捕らえられた。」
「そ…そんな!檸檬が!?」
驚くツナ。
反対にリボーンは冷静に問い返す。
「じゃぁ、10年後の檸檬がイタリアにいるってのは…捕まってるからって事か。」
「あぁ…。恐らくまだ殺されない。白蘭達がダークの力を手に入れるまでは。」
「10年後の檸檬が…適わないなんて……そんな敵……」
「10代目…落ち着いて下さい。」
震えるツナをなだめる獄寺。
山本は言った。
「檸檬が弱かったんじゃない。奴らが多過ぎたんだ。」
「え…?」
「檸檬1人潰す為に動員された数は、400人以上と推定されている。」
「よっ…400人!!?」
「勿論、リング所持者も合わせてだ。」
「1対400かよ……卑怯すぎるぜ…。」
「それ程欲しかったんだろう、檸檬の力が。」
暗い沈黙が流れて、ツナはハッと気付く。
「じゃぁ、10年前の檸檬は今……」
「捕まってるって事スね……」
「そ、そんなぁ…」
「うろたえんな。」
リボーンがツナの前に立つ。
「まだ希望が無くなったワケじゃねぇ。それに、檸檬が捕まったまんま何もしねぇなんて事もねぇしな。」
「リボーン…」
「山本、バラバラに散ったとは言え、まだファミリーの守護者の死亡は確認されてねーんだな。」
「あぁ…」
「なら、やる事は1つだ。」
リボーンの目が、キラリと光る。
「お前は散り散りになった6人の守護者を、集めるんだ。」
動き出した歯車は、
もう止まらない。
全てを終局へと導き始める。
終局の種類は、
未だ掴めず-------
待ちに待った再会は、
もうすぐそこに。
アジト
「ま、まさかお前……」
「や…山本!?」
面影のある彼に駆け寄りつつ、獄寺とツナは尋ねる。
しかも、彼が放ったのはついこの前リング争奪戦で見た、スクアーロの技だ。
「あれ?悪い冗談じゃ…ねーよな。門外顧問のトコの使者を迎えに来たらお前達までって………ん?でも縮んでねーか?幻…?妖怪か?」
その発言で2人は確信する。
「(やっぱこの人山本だーーー!!!)」
そしてツナが説明した。
10年バズーカでこの世界に来てしまったのだ、と。
すると10年後の山本は少し複雑な表情をして。
「元気そうだな、ツナ。」
と。
「とりあえず行こーぜ。こんな奴…相手にするだけ損だ。」
山本に続いて、3人も歩き出した。
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その頃、洞穴の奥で仮眠をとっていた檸檬。
『(ん……?)』
何か冷たい風を感じて、目を開けた。
洞穴の中はひんやりしていて、暗くて、檸檬の恐怖を引き出すのに充分だった。
『(超五感…発動……)』
耳をすまして、森の中の音を探ってみる。
すると…
---「ダークは…ダークは何処だ!?」
---「確かにこの林に落ちたよな?」
---「しっ!静かに。何処かに潜んでいるかもしれない…。」
『追っ手…!?』
早く脈打つ心臓を落ち着かせながら、檸檬は洞穴の入口に立ってみる。
数十メートル向こうに、光が見える。
『(懐中電灯でも持ってるのかな…?)』
それにしては、ユラユラ揺れている。
ロウソクの明かりのように。
---「いいか、ダークを見つけたら殺すなよ。生け捕りだ。」
---「ったく、上も無茶を言うもんだぜ。あのダークを生け捕りになんて出来るワケねーってのに…」
『(生け捕り、か……)』
自分の命はとりあえず保障されている。
しかし同時に、掴まれば完全にツナ達の足手纏いになるようだ。
『(人質…?それとも………)』
他に自分を生かしておく理由があるのだろうか。
考えてみるが、今の檸檬にその答えが分かるはずもなく。
『逃げなくちゃ。』
それだけが、確かだった。
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その頃、森の中を歩くツナ達は、山本から色々話を聞いていた。
「あれから色々あったんだぜ。」
その時の表情は、やはり少し哀愁を帯びていて。
ほんの少し沈黙が流れる。
「そーだ!!この10年間、お前はそりゃー凄かったんだぜ、ツナ!!」
山本がツナの頭に腕を乗せながら言う。
「獄寺、お前もな。」
不意に、ラルが山本に話し掛ける。
「おい…走らないのか?歩いていては朝までかかるぞ。」
「そっか、言ってなかったな。お前の知ってるアジトの在り処の情報はガセなんだ。」
そう言いながら前に出る山本。
「俺を見失わないように、ついて来てくれ。」
内ポケットから1つの匣を取り出す。
右手の指輪からチェーンを外し、匣の穴に差し込んだ。
シュッ、
次の瞬間飛び出て来たのは、炎を帯びた燕。
それは山本の回りを飛び回る。
「な、何だ!?」
「防犯対策のカモフラだ。余所見はするなよ。」
疑問符を浮かべるツナの鼻に、冷たい雫が落ちて来る。
「雨?」
それはどんどん激しくなり、
「うわーーー!!」
「(雨属性の匣か…ボンゴレリング無しで開匣出来るとはな…)」
叩き付けるように降り注ぐ。
「いてて!なんも見えねぇ!」
「ジャングルの雨みたいだ!!」
必死に頭を庇う2人の耳に、山本の声が。
「こっちだ。」
その声に反応してうっすら目を開けたツナに見えたのは、
それまで確かに無かった、地下に続く階段だった。
「降りるぜ。」
「アジトって、地下にあんのー!?」
「あぁ、そうだ。」
階段を下ってドアを開けると、指紋認証センサーが。
「他にもこんな入口が、6か所ある。」
開いたドアは、エレベーターのドア。
ツナ達は地下5階まで下る。
「ここはボンゴレの重要な拠点として、急ピッチで建造中だったんだ。」
エレベーターのドアが開く。
その先には、たくさんの太い柱が立つ、広い広い部屋。
「いまんとこ、6割方出来てるってトコだな。」
「す…すげー!!ボンゴレってこんなの作れちゃうの!?」
目を見開くツナに、山本は笑いながら言う。
「いい事教えてやろーか?お前が作らせたんだぜ、ツナ。」
「えー!!?お……俺がー!!?」
「あぁ、もう少しでかくなったお前がな。」
「し…信じらんない…」
呆然とするツナ。
一方、ラルは目の前にある装置を見て何かと尋ねる。
「あぁ、メカニックのジャンニーニが作った、何とかって物質を遮るバリアだそうだ。」
確かにそれは、レーザーの面のようなモノで何かをシャットアウトしているようだった。
ツナ達は普通に通り抜ける。
だが最後にラルが通り抜けた瞬間、
「うっ!」
少しの痛みを伴って、ラルはその場に倒れてしまった。
「うぐ…」
「おい!どーした!?」
「ど…どーなってんの!?」
驚くツナ達に、山本が説明する。
「心配ない。環境の急激な変化に体がショックを起こしただけだ。ここは彼女達にとって、外界とは違う作りになってるからな…」
「彼女達……?」
「少しすりゃ、目を覚ます。」
山本はラルを抱えて長い廊下を歩いて行く。
そして、ある部屋のドアを開けた。
「さぁ、着いたぜ。」
部屋に入ったツナと獄寺に聞こえた声。
「おせーぞ。」
それは、気にかけていた人物のモノだった。
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『はっ…はっ……』
林の中を走る檸檬。
俊足を使わずに走るのは、すごく久しぶりのような感じがする。
ところが、急に右足が痛みだし、止まらざるを得なくなる。
大木の影に隠れて、檸檬は後ろを見た。
『まっずい事になったな~~。』
追っ手は確実に檸檬に迫っている。
俊足を使えば捲くのは容易い。
しかし、ヒビの入った足で俊足を使うのは自殺行為。
折ろうとしているようなモノだ。
かと言って大人しく掴まるのはごめんだ。
だが今の檸檬には、ココが何処かも、皆と合流する術も分からない。
と、その時。
雲に隠れていた月が顔を出す。
よりにもよって満月。
『(や、やばっ…!)』
森の中、空からの光は、確実に檸檬を照らし出して。
『(影が……!)』
「見つけたぞ、人影だ!!」
『(あぁ…もうっ!!)』
ついに、ついに見つかってしまった。
もうダメなんだろうか。
「追え!逃がすな!!」
『ど…しよ……!』
一生懸命走るけど、どうしても距離は縮まって行く。
右足の骨が悲鳴をあげる。
「ダーク!抵抗するなら撃つ!」
「我々はお前を殺さない!大人しくこっちに来い!」
『イヤ……だっての……』
皆に…
皆に会いたい…。
皆のいる…
並盛に帰りたい……。
「来ないならば撃つ!!」
『イヤだって言ってんでしょーが!!!』
帰りたいの…!
だから走ってるの…!
お願い、神様……
もしいるなら、あたしを……
「撃てぇ!!!」
もう一度並盛に………!!
ギュッと目を瞑った檸檬は、その時何が起きたか分からなかった。
ただ、自分が風を切る感じがした。
反対に檸檬を追っていた者達は、ただただ唖然としていた。
明らかに目の前に居た檸檬が、
突然消えてしまったのである。
「な…何が起きた!?」
「ダークが…ダークが消えた!!」
「これが…ダークの力……なのか…」
『(あぁ…もう疲れた……)』
何も分からない状況下、檸檬はすんなり意識を手放した。
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声のした方を向いてみるツナの視界に、
「ちゃおっス。」
いつものように黒いスーツに身を包んだリボーンが。
その姿を見た瞬間、ツナの目は潤み始める。
「り…リボーン……」
よろめきながらも近付くツナの背後から、またリボーンの声が。
「抱きしめて~vV」
次の瞬間与えられたのは、後頭部への蹴り。
「こっちよ!!」
「ふげーーー!!」
頭を抱えるツナに、獄寺が駆け寄る。
「大丈夫っスか!?」
「なんなんだよ!!このふざけた再会は!!こっちは死ぬ思いでお前を探してたんだぞ………!!またそんな変なカッコして!」
それでも、リボーンの無事が確認されて、思わず笑みがこぼれる。
そんなツナに、全身白いフィットスーツを来たリボーンは言う。
「しょーがねーだろ?このスーツを着てねーと体調最悪なんだ。外のバリアも俺の為に作らせたんだしな。」
「どういう事?」
「俺には厳しい世の中って事だ。」
リボーンの言葉に疑問を持ちつつ、ツナは自分達の疑問を投げかける。
「おかしいんだよ!過去に戻れないんだ!」
「それくらい分かってるぞ。おかしいところはそれだけじゃねーしな。」
10年バズーカなのに、ここは約9年10ヶ月後の世界のようだ。
何でこんな事になったのかは、リボーンにも分からないらしい。
「そ…そうだ!リボーン、檸檬来てない?」
「檸檬…?この世界に来てるのか?」
「獄寺君と一緒に当たったらしくて…」
ツナとリボーンの会話にピクリと反応したのは、山本だった。
その様子を見て、獄寺が問いかける。
「おい山本、10年後の檸檬は何処にいんだよ。」
「そうだ…!10年後の檸檬のいた場所が分かれば……!」
「イタリアだ。」
ツナの言葉を遮って山本がした返答は、予想外に遠い場所。
「なっ……えぇーー!!?」
「何でまた、んなトコに……」
すると山本は、少し苦しそうな表情をする。
イヤな空気を感じ取るツナ達に、リボーンが言った。
「まぁ、俺達がワケのわからねー土地に飛ばされなかったのは良かったな。」
「え…?」
「ここは並盛だぞ。」
証拠としてモニターで見せられた地上には、確かに並中があって。
「って事はホントに並盛なのー!?」
「日本だったんスかーー!?」
「そーだぞ。そして過去に戻れない以上…ここで起こってる事は、お前達の問題だぞ。」
リボーンの言葉に息を飲む2人。
山本が説明を始める。
「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点が同時に攻撃を受けている。勿論ここでも、ボンゴレ狩りは進行中だ。」
「ボンゴレ…」
「狩り…?」
「お前達も見たはずだぞ、ボンゴレマークのついた棺桶を。」
「それって俺の事ー!?」
「てめぇ!!」
次の瞬間、獄寺が山本を思いっきり殴った。
そして、噛み付くように怒鳴る。
「何してやがった!!何で10代目があんな事に!!」
「ひいっ!獄寺君!」
すると山本は至極つらそうな顔をして。
「すまない……」
と。
「てめえ、すまねーで済むワケ…」
「やめろ獄寺。10年後のお前もいたんだぞ。」
リボーンの言葉に、獄寺は項垂れる。
「く……そ…」
獄寺を止めたところで、リボーンは説明する。
「敵であるミルフィオーレファミリーの恐ろしいところは勿論戦闘力の高さだが、それよりもやべーのは、目的がただ指輪を得る為の勝利や制圧だけじゃない事だ。」
山本が続ける。
「本部が陥落した時点で、ミルフィオーレは交渉の席を用意してボンゴレ側のある男を呼び出した。だが奴らは一切交渉などせずその命を奪ったんだ……」
“本部陥落”
“命を奪った”
次々と信じ難い情報が伝えられていく。
「それからもこちらの呼びかけに一切応じず、次々こちらの人間を消し続けている……。」
そして聞かされる敵の目的。
「奴らは……ボンゴレ側の人間を1人残らず殲滅するつもりだ。」
「つ…つまり過去から来た俺達も危ないって事…?」
「それだけじゃねーぞ。お前達と関わりのあった知り合いも的にかけられてんだ。」
「そ…それって……!」
「ただし、1人を除いてな。」
「え……?」
山本の付け加えに、ツナは疑問符を浮かべる。
「1人って…?」
「檸檬の10年後の通り名は知ってっか?」
「DARQって言ってたな、あの女が。」
獄寺がベッドで寝ているラルを見る。
「雲雀とツナはその名を使われるのを嫌がってた。本人以上にな。」
「まさか……1人って!!」
「あぁ、檸檬の事だ。奴らは、檸檬の力を…ダークとしての力を狙ってる。」
「檸檬の…力……?」
山本は再びつらそうに俯きながら話す。
「本部陥落の情報を聞き、真っ先に飛んだのが檸檬だった。だがそこで檸檬は………捕らえられた。」
「そ…そんな!檸檬が!?」
驚くツナ。
反対にリボーンは冷静に問い返す。
「じゃぁ、10年後の檸檬がイタリアにいるってのは…捕まってるからって事か。」
「あぁ…。恐らくまだ殺されない。白蘭達がダークの力を手に入れるまでは。」
「10年後の檸檬が…適わないなんて……そんな敵……」
「10代目…落ち着いて下さい。」
震えるツナをなだめる獄寺。
山本は言った。
「檸檬が弱かったんじゃない。奴らが多過ぎたんだ。」
「え…?」
「檸檬1人潰す為に動員された数は、400人以上と推定されている。」
「よっ…400人!!?」
「勿論、リング所持者も合わせてだ。」
「1対400かよ……卑怯すぎるぜ…。」
「それ程欲しかったんだろう、檸檬の力が。」
暗い沈黙が流れて、ツナはハッと気付く。
「じゃぁ、10年前の檸檬は今……」
「捕まってるって事スね……」
「そ、そんなぁ…」
「うろたえんな。」
リボーンがツナの前に立つ。
「まだ希望が無くなったワケじゃねぇ。それに、檸檬が捕まったまんま何もしねぇなんて事もねぇしな。」
「リボーン…」
「山本、バラバラに散ったとは言え、まだファミリーの守護者の死亡は確認されてねーんだな。」
「あぁ…」
「なら、やる事は1つだ。」
リボーンの目が、キラリと光る。
「お前は散り散りになった6人の守護者を、集めるんだ。」
動き出した歯車は、
もう止まらない。
全てを終局へと導き始める。
終局の種類は、
未だ掴めず-------