未来編①
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過去からやって来た彼らは走る。
森の中を。
過去からやって来た彼女は落ちる。
林の中へと。
野宿
目的地へと走り続けるラル。
何とか見失わないように付いて行くツナと獄寺。
その間も、ツナの頭の中では先程のラルの言葉が渦巻いていた。
「(この時代にはリボーンがいないなんて………そんな事…………)」
その表情を見て心配しつつ、獄寺は叫ぶ。
「おい女!少しは休ませ……」
しかし、その目に止まったのは、川で水を飲むラルの姿。
「川っスよ10代目!!水が飲めます!」
「本当だ…!」
「お先どうぞ。」
「ありがと………」
そのやり取りが行なわれている間に、ラルはマントの裏に隠し持つ匣の1つにリングをはめ、何かを取り出した。
それは、小さな炎を宿し気球のように浮いて行く。
「おい!どれだけ走らせんだよ!!アジトはまだなのかよ。」
突然尋ねる獄寺に、ラルは言う。
「今日はここで野宿だ。」
「な!?」
「の……野宿ー!?」
「闇で目が効かないお前達と動くのは危険過ぎる。まったく、いい迷惑だぜ。」
淡々と話すラルに、獄寺は怒鳴る。
「てめー、調子乗ってんじゃねーぞ!」
「それは俺の台詞だ。」
武器を向けながら続けるラル。
「俺は自分の飯しか用意してないぜ。陽のあるうちに取って来い。」
「め…メシを取るのー!?」
その前に話だけでも聞きたいと言うツナに、ラルは冷たく「そんな時間はない」と。
「行きましょう…10代目。」
「え…あ……」
森の中に入ろうとする獄寺に声をかけられ、ツナは慌てて付いていった。
---
------
「10代目、」
「ん?」
「スイマセン!!俺がいながらあんな奴をのさばらせて!!」
突然土下座し、地面に頭を打ち付ける獄寺。
「獄寺君!!」
「でも…アジトに着くまでの辛抱っスから!」
「え…?」
獄寺の考えでは、
ラルが言ったリボーンの話は嘘で、ツナを脅しているらしい。
「俺はてっきり本当に死ん…」
「忘れたんスか?無敵のリボーンさんスよ!!」
「そう言われてみれば…」
「ただ今は、奴について行くしか手掛かりがないのも確かっス!大丈夫、リボーンさんは生きてますよ。」
「そ、そうだね…。何だかそんな気がして来た!」
「当然スよ!」
獄寺の説得で、ツナはリボーンが生きていると思い、少し安心した。
それでもまだ不安が消えないのは、
十中八九、未だ過去へ帰れない事があるからだろう。
「それにしても…俺達いつまでこの時代にいるんだろう…」
森の中を見回しながら、ツナは言う。
「過去に戻りさえすれば、こんな事にはならないのにさ……。」
「まったくっスね……早く過去に戻って写真の眼鏡をぶっ飛ばさなきゃなんねーのに……」
「それに、さ……檸檬もまだ何処かにいるんだよね……。この時代の…。」
俯くツナの言葉に、獄寺も少し眉を下げた。
「はい…俺がいるって事は、まだこの時代の何処かに……」
「何処にいるんだろう、檸檬…。まさか、とっても危険なトコにいるんじゃ……!」
「今は何とも……檸檬は10年後も色んなトコ飛び回ってるイメージですしね。」
「うん…。早く合流出来るといいけど……」
そう言ってツナが空を見上げると、
バサササ!
たくさんの鳥が一気に飛び立つのが見えた。
「暗い森……こ…こぇ~~~!と…とりあえず急いで食べ物探そうか…」
「そーしましょう!手っ取り早く手分けして探しましょうか?」
「りょ…了解!!」
ツナと獄寺は、そのまま二手に別れた。
---
------
--------------
ザザザザ…!
『(いたたたっ…)』
かなり高いトコから落ちたせいか、なかなかあたしの体は止まってくれない。
普通だったら枝が受け止めてくれるはずなのに。
『全部折れてってるし…』
これはもう死ぬんじゃないか。
この辺一帯を脱出する前にオダブツ?
話になんないよ、ソレ。
ザザザザ…
『止まれー。』
無気力な声で言ってみても、やっぱり止まらず。
仕方ない、ホントはやりたくないけどね。
縮込めていた手足を、ぐっと伸ばしてつっかえ棒にする。
ミシ…
『おー、止まった♪』
1本の木が、あたしを受け止めてくれた。
つっても……
『よいしょっと。』
起き上がって、そのまま地上にジャンプ。
と、その瞬間。
ズキッ、
『つっ……!』
すんごく痛んだ右足。
よくよく見て、触ってみると…
『あ。』
ヒビ入ってるよ、コレ。
そこまで重傷じゃないけど、多少動きは鈍りそうだ。
『どーしよ。』
俊足使いにくくなっちゃった。
とりあえずテポテポ歩いて、近くの洞穴に入ってみる。
生き物の気配は特にない。
『今夜はここに泊まろうかな。』
体育座りで入口に座って、空を見上げた。
どんより曇っている。
何で帰れないんだろう。
あ、2ヶ月くらい早い時期に到着しちゃったんだよね。
10年ぴったりになるまで戻れないのかな…。
『1人は…怖いよ……』
ふと思い出すのは、
やっぱりあの我が儘王子様で。
『恭弥ぁ……』
溢れそうになる涙を堪えて、
あたしは更に上を向く。
無意識に右手が唇に触れてて、
“あの時”の事を思い出して。
---「……行ってらっしゃい。」
貴方の声が聞こえて来る。
あたしの声は届かないけど。
10年後のあたしは、今頃どうしてるんだろう……。
恭弥に会ってるのかな…
『………何バカな事考えてんだろ。』
頭を左右に大きく振って、あたしは洞穴の奥に寝そべった。
---
------
------------
「森で食べられる物なんて…わかんないじゃん……」
歩きながら獄寺と別行動にした事を後悔するツナ。
と、その時。
「うわっ!」
葉っぱに足を取られて、
「ふもっ!」
そのままコケて、何かを飲み込んだ。
「げっ!!何か飲み込んだ……!!」
目の前にあるのは、キノコの柄の部分で。
「何…?コレ……」
“もしかしたら毒キノコかもしれない”
その思いが、しばらくツナをフリーズさせていた。
---
-------
一方…
「よっしゃ♪」
森の中でちょうどいい長さの木の枝を見つけた獄寺。
「川があるんだ!!魚をご馳走して差し上げるんだ!!」
と、その視界に水面のきらめきが入って来る。
「これって池か?湖か?池か?」
岸まで出て来た獄寺は、女の後ろ姿を目にした。
「あっ…」
水浴びをしているようで、当然彼女・ラルは衣服を纏っていない。
「あ…ありゃあ……///」
顔を赤くしながらも目が離せない獄寺。
しかし表情を見てみると…
涙------
頬に涙を伝わせながら、迷彩柄のバンダナ布を握りしめるラル。
「は??」
その光景に疑問を持ったその時、
「ゴクレラ君ら………」
ツナの声が後ろから聞こえて来た。
しかし、上手くろれつが回ってない。
「じゅ…10代目ぇ!!静かにー!!そして早くー!!」
「ほへ…」
とは言ったものの、ツナの足取りはおぼつかず、そのまま獄寺に激突する。
「ぎゃ!」
頭をぶつけ、
「だぁっ!!」
そのまま池の中へ。
「大丈夫スか、10代目!!」
「なんか…変なキノコ食べたみたいれ……」
そんなやりとりをするツナと獄寺が振り向くと。
「ガキ共が。」
全裸状態のラルが呆れたように立っていた。
「お……」
「うがっ!!」
「のわー!?」
それから2人が倒れたのは、言うまでもない。
案の定まったく食糧を得られなかった2人は、結局ラルに魚を貰った。
「よ…良かったね…。あの人に多く取れた魚もらえて……」
「そ…っスね…」
そんな会話をしていても、先程のショックは抜けないままで。
たき火越しにもラルと目が合わせられないでいた。
不意に、ラルが口を開く。
「お前達の事は、写真で見た事しかない。」
その言葉に、思わず顔をあげるツナと獄寺。
「だが10年バズーカの存在と面影で、何者か識別出来た。」
それでも疑問符を浮かべる2人に、ラルは言った。
「時間が出来たんだ。知っている事を話してやる。」
「ほ……本当ですか!?」
「俺はボンゴレ門外顧問の組織に属している。」
「門外顧問って……と…父さんのこと……?」
「じゃあお前……味方なのか!?」
「あぁ…」
ラルが今回受けた命とは、
ボンゴレ全体の緊急事態における、10代目ファミリーの状況確認。
「緊急事態……?」
「そうだ。ボンゴレ本部は、2日前に壊滅状態に陥った。」
その言葉に、沈黙が流れる。
「今のところ本部の生存者は0名…9代目も行方不明…“ダーク”に至っても音信不通だ。急遽門外顧問のチームが救援に向かったが消息が途絶えている……。」
「え…えぇ!?」
「騙されないで下さい、10代目!!」
獄寺が怒鳴りながら立ち上がる。
「やはりこいつの言う事はデタラメです!あの大ボンゴレが壊滅なんてするワケねぇ!!」
「10年前ならな………。だが、この時代にはそれを出来るファミリーがいる。」
落ち着き払った声で、ラルは続けた。
「ミルフィオーレファミリー、ボスの名を白蘭。」
その名を聞いた途端、ツナはハッと思い出す。
「ビャクラン……10年後の獄寺君が言ってた名前だ!!」
ツナはどんどん青ざめていく。
「こ…この人が言っている事は…本当…なのかも…」
震え出す声。
「この時代のリボーンの事も……それに、俺が棺桶にいた事も辻褄が合う………。そ………そんなぁ…」
構わず、説明を始めるラル。
「この時代、戦局を左右するのはリングと匣だ……。奴らはリングと匣を略奪する事により、急激に力を付けて来た…ボンゴレを急襲した目的もそうだ。」
「ボンゴレリングが狙いだってのか!?」
問い返す獄寺に、ラルはしばらく間をおいてから言った。
「ボンゴレ急襲には、もう1つメリットがある。………“ダーク”の力だ。」
「ダーク………闇…?さっきも出てましたけど、ダークって……」
首をかしげるツナを見て、ラルは思い出したようだった。
「そうか…10年前は呼び名が違っていたか……。」
「呼び名…?」
「ダークは、“闇”という意味も含めて一種の通り名になっている。D、A、R、QでDARQ(ダーク)だ。」
「ちょっと待て、それじゃあ綴りが……」
「略称だ。」
反論しようとする獄寺に、ラルはピシャリと言い放つ。
「“Dancing And Rhythm Queen”……こう言えば分かるか?」
ラルは2人の表情を確認する。
「それって……まさか……」
「檸檬の事……!??」
驚愕で体を震わせる2人。
ラルは話の続きをする。
「リングの話に戻ると……もともとリングはマフィアの黎明期に暗黒時代を生き抜く為に、先人達が闇の力との契約を交わした事の象徴だと思われて来た。」
つまり、重要なのはボンゴレリングだけでない。
他のファミリーのリングも大切な戦力なのだ。
「沈黙の掟(オメルタ)に守られて来たマフィアのリングには、人知を超えた力が宿っていたんだ……。お前達も見たはずだ、ボンゴレリングが燃えるのを。」
ツナと獄寺は、ついこないだあったヴァリアーとの戦い、大空戦での結末を思い出した。
「リングの力はそれだけではない。あそこに飛ぶ気球を見ろ。」
そう言って上を見上げたラルの目は、みるみるうちに見開かれた。
その気球から出る僅かな火の粉は、
紛れもなく、敵襲の証。
突如立ち上がったラルは、近くの砂袋に手をかけ、たき火を消す。
「何やってんだ!!」
「敵だ!」
マントを羽織って、2人に注意を呼び掛ける。
「感傷に浸っている場合ではないぞ。奴らは強い!!見つかったら終わりと思え!」
---
-----
ツナと獄寺も着替えて、敵を待つ。
しばらくして聞こえて来たのは、
ズゥン…
という重い音。
「あいつは偵察だな。アレならステルスリングでやり過ごせる。」
呟くラルに対し、重い足音の主を見ようとする2人。
岩影からそっと覗くと………
「ゴーラ・モスカ!!」
その姿は、ヴァリアーの一員として働いていた機械に酷似していた。
「ゴーラのニ世代後の機体だ……ストゥラオ・モスカ。軍は、ボンゴレ以外にも機密を売ってやがったんだ。」
すると、その機械が急に3人の方を向く。
小さな音と共に。
「こっち向いたぜ!」
「見つかりっこない。ストゥラオはリングの力を探知するセンサーを内蔵しているが、マモンチェーンでリングの力は封じられている。」
しかし、
ズゥン…
ズゥン…
重い足音は、
ズシン、
ズシン、
確実に3人に近付いて来て。
「き……来たぞ!」
次の瞬間、
ピーッ、
それは、
明らかにターゲットを補足した音だった。
ラルは慌てて声を出す。
「バカな!!お前達、ボンゴレリング以外のリングは持っていないな?!」
「あぁ…さっき見せたので全部だ……」
「俺も……」
言いかけたツナだが、
「あ!」
ふと思い出して、ポケットの中を探り出す。
「ランチアさんに貰ったリングが………」
「そのリングは…!!何故話さなかった!!」
ツナに一喝してから、ラルはモスカの方を見る。
その口から出た言葉は、絶望的なモノで。
「3人でも倒せる相手じゃない!全滅だ……」
「へっ、弱気じゃねーか。自慢のリングの力は役に立たねーのかよ!!」
挑発するように言う獄寺に、ラルは更に怒鳴る。
「戦いは力だけではない!相性が重要なんだ!!」
次の瞬間向けられる、モスカの手。
指の1本1本が銃口である事は、昔と変わっていないらしい。
「アジトまであと僅かという所で……!くそっ!」
分が悪いのは分かっているが、ラルは左手の武器を向ける。
獄寺も、ボムを用意した。
と、その時。
シュッ、
突如モスカの背後に現れる、
素早い動きの黒い影。
ガキィィ、
金属音がしたかと思うと、
モスカの動きは突然止まる。
「(衝撃波!?)」
驚き、動きを止めるラル。
同じように止まって、口をぽかんと開けるツナと獄寺の耳に、
何処か聞いた事のあるような声が。
「鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)、こいつで1分は稼げるはずだ。」
目を見開き、
見つめる先には、
一筋の光のような刀。
そして、
「助っ人とーじょーっ♪」
いつも見慣れている姿より一回り大きい、
頼れる男。
森の中を。
過去からやって来た彼女は落ちる。
林の中へと。
野宿
目的地へと走り続けるラル。
何とか見失わないように付いて行くツナと獄寺。
その間も、ツナの頭の中では先程のラルの言葉が渦巻いていた。
「(この時代にはリボーンがいないなんて………そんな事…………)」
その表情を見て心配しつつ、獄寺は叫ぶ。
「おい女!少しは休ませ……」
しかし、その目に止まったのは、川で水を飲むラルの姿。
「川っスよ10代目!!水が飲めます!」
「本当だ…!」
「お先どうぞ。」
「ありがと………」
そのやり取りが行なわれている間に、ラルはマントの裏に隠し持つ匣の1つにリングをはめ、何かを取り出した。
それは、小さな炎を宿し気球のように浮いて行く。
「おい!どれだけ走らせんだよ!!アジトはまだなのかよ。」
突然尋ねる獄寺に、ラルは言う。
「今日はここで野宿だ。」
「な!?」
「の……野宿ー!?」
「闇で目が効かないお前達と動くのは危険過ぎる。まったく、いい迷惑だぜ。」
淡々と話すラルに、獄寺は怒鳴る。
「てめー、調子乗ってんじゃねーぞ!」
「それは俺の台詞だ。」
武器を向けながら続けるラル。
「俺は自分の飯しか用意してないぜ。陽のあるうちに取って来い。」
「め…メシを取るのー!?」
その前に話だけでも聞きたいと言うツナに、ラルは冷たく「そんな時間はない」と。
「行きましょう…10代目。」
「え…あ……」
森の中に入ろうとする獄寺に声をかけられ、ツナは慌てて付いていった。
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「10代目、」
「ん?」
「スイマセン!!俺がいながらあんな奴をのさばらせて!!」
突然土下座し、地面に頭を打ち付ける獄寺。
「獄寺君!!」
「でも…アジトに着くまでの辛抱っスから!」
「え…?」
獄寺の考えでは、
ラルが言ったリボーンの話は嘘で、ツナを脅しているらしい。
「俺はてっきり本当に死ん…」
「忘れたんスか?無敵のリボーンさんスよ!!」
「そう言われてみれば…」
「ただ今は、奴について行くしか手掛かりがないのも確かっス!大丈夫、リボーンさんは生きてますよ。」
「そ、そうだね…。何だかそんな気がして来た!」
「当然スよ!」
獄寺の説得で、ツナはリボーンが生きていると思い、少し安心した。
それでもまだ不安が消えないのは、
十中八九、未だ過去へ帰れない事があるからだろう。
「それにしても…俺達いつまでこの時代にいるんだろう…」
森の中を見回しながら、ツナは言う。
「過去に戻りさえすれば、こんな事にはならないのにさ……。」
「まったくっスね……早く過去に戻って写真の眼鏡をぶっ飛ばさなきゃなんねーのに……」
「それに、さ……檸檬もまだ何処かにいるんだよね……。この時代の…。」
俯くツナの言葉に、獄寺も少し眉を下げた。
「はい…俺がいるって事は、まだこの時代の何処かに……」
「何処にいるんだろう、檸檬…。まさか、とっても危険なトコにいるんじゃ……!」
「今は何とも……檸檬は10年後も色んなトコ飛び回ってるイメージですしね。」
「うん…。早く合流出来るといいけど……」
そう言ってツナが空を見上げると、
バサササ!
たくさんの鳥が一気に飛び立つのが見えた。
「暗い森……こ…こぇ~~~!と…とりあえず急いで食べ物探そうか…」
「そーしましょう!手っ取り早く手分けして探しましょうか?」
「りょ…了解!!」
ツナと獄寺は、そのまま二手に別れた。
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ザザザザ…!
『(いたたたっ…)』
かなり高いトコから落ちたせいか、なかなかあたしの体は止まってくれない。
普通だったら枝が受け止めてくれるはずなのに。
『全部折れてってるし…』
これはもう死ぬんじゃないか。
この辺一帯を脱出する前にオダブツ?
話になんないよ、ソレ。
ザザザザ…
『止まれー。』
無気力な声で言ってみても、やっぱり止まらず。
仕方ない、ホントはやりたくないけどね。
縮込めていた手足を、ぐっと伸ばしてつっかえ棒にする。
ミシ…
『おー、止まった♪』
1本の木が、あたしを受け止めてくれた。
つっても……
『よいしょっと。』
起き上がって、そのまま地上にジャンプ。
と、その瞬間。
ズキッ、
『つっ……!』
すんごく痛んだ右足。
よくよく見て、触ってみると…
『あ。』
ヒビ入ってるよ、コレ。
そこまで重傷じゃないけど、多少動きは鈍りそうだ。
『どーしよ。』
俊足使いにくくなっちゃった。
とりあえずテポテポ歩いて、近くの洞穴に入ってみる。
生き物の気配は特にない。
『今夜はここに泊まろうかな。』
体育座りで入口に座って、空を見上げた。
どんより曇っている。
何で帰れないんだろう。
あ、2ヶ月くらい早い時期に到着しちゃったんだよね。
10年ぴったりになるまで戻れないのかな…。
『1人は…怖いよ……』
ふと思い出すのは、
やっぱりあの我が儘王子様で。
『恭弥ぁ……』
溢れそうになる涙を堪えて、
あたしは更に上を向く。
無意識に右手が唇に触れてて、
“あの時”の事を思い出して。
---「……行ってらっしゃい。」
貴方の声が聞こえて来る。
あたしの声は届かないけど。
10年後のあたしは、今頃どうしてるんだろう……。
恭弥に会ってるのかな…
『………何バカな事考えてんだろ。』
頭を左右に大きく振って、あたしは洞穴の奥に寝そべった。
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「森で食べられる物なんて…わかんないじゃん……」
歩きながら獄寺と別行動にした事を後悔するツナ。
と、その時。
「うわっ!」
葉っぱに足を取られて、
「ふもっ!」
そのままコケて、何かを飲み込んだ。
「げっ!!何か飲み込んだ……!!」
目の前にあるのは、キノコの柄の部分で。
「何…?コレ……」
“もしかしたら毒キノコかもしれない”
その思いが、しばらくツナをフリーズさせていた。
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一方…
「よっしゃ♪」
森の中でちょうどいい長さの木の枝を見つけた獄寺。
「川があるんだ!!魚をご馳走して差し上げるんだ!!」
と、その視界に水面のきらめきが入って来る。
「これって池か?湖か?池か?」
岸まで出て来た獄寺は、女の後ろ姿を目にした。
「あっ…」
水浴びをしているようで、当然彼女・ラルは衣服を纏っていない。
「あ…ありゃあ……///」
顔を赤くしながらも目が離せない獄寺。
しかし表情を見てみると…
涙------
頬に涙を伝わせながら、迷彩柄のバンダナ布を握りしめるラル。
「は??」
その光景に疑問を持ったその時、
「ゴクレラ君ら………」
ツナの声が後ろから聞こえて来た。
しかし、上手くろれつが回ってない。
「じゅ…10代目ぇ!!静かにー!!そして早くー!!」
「ほへ…」
とは言ったものの、ツナの足取りはおぼつかず、そのまま獄寺に激突する。
「ぎゃ!」
頭をぶつけ、
「だぁっ!!」
そのまま池の中へ。
「大丈夫スか、10代目!!」
「なんか…変なキノコ食べたみたいれ……」
そんなやりとりをするツナと獄寺が振り向くと。
「ガキ共が。」
全裸状態のラルが呆れたように立っていた。
「お……」
「うがっ!!」
「のわー!?」
それから2人が倒れたのは、言うまでもない。
案の定まったく食糧を得られなかった2人は、結局ラルに魚を貰った。
「よ…良かったね…。あの人に多く取れた魚もらえて……」
「そ…っスね…」
そんな会話をしていても、先程のショックは抜けないままで。
たき火越しにもラルと目が合わせられないでいた。
不意に、ラルが口を開く。
「お前達の事は、写真で見た事しかない。」
その言葉に、思わず顔をあげるツナと獄寺。
「だが10年バズーカの存在と面影で、何者か識別出来た。」
それでも疑問符を浮かべる2人に、ラルは言った。
「時間が出来たんだ。知っている事を話してやる。」
「ほ……本当ですか!?」
「俺はボンゴレ門外顧問の組織に属している。」
「門外顧問って……と…父さんのこと……?」
「じゃあお前……味方なのか!?」
「あぁ…」
ラルが今回受けた命とは、
ボンゴレ全体の緊急事態における、10代目ファミリーの状況確認。
「緊急事態……?」
「そうだ。ボンゴレ本部は、2日前に壊滅状態に陥った。」
その言葉に、沈黙が流れる。
「今のところ本部の生存者は0名…9代目も行方不明…“ダーク”に至っても音信不通だ。急遽門外顧問のチームが救援に向かったが消息が途絶えている……。」
「え…えぇ!?」
「騙されないで下さい、10代目!!」
獄寺が怒鳴りながら立ち上がる。
「やはりこいつの言う事はデタラメです!あの大ボンゴレが壊滅なんてするワケねぇ!!」
「10年前ならな………。だが、この時代にはそれを出来るファミリーがいる。」
落ち着き払った声で、ラルは続けた。
「ミルフィオーレファミリー、ボスの名を白蘭。」
その名を聞いた途端、ツナはハッと思い出す。
「ビャクラン……10年後の獄寺君が言ってた名前だ!!」
ツナはどんどん青ざめていく。
「こ…この人が言っている事は…本当…なのかも…」
震え出す声。
「この時代のリボーンの事も……それに、俺が棺桶にいた事も辻褄が合う………。そ………そんなぁ…」
構わず、説明を始めるラル。
「この時代、戦局を左右するのはリングと匣だ……。奴らはリングと匣を略奪する事により、急激に力を付けて来た…ボンゴレを急襲した目的もそうだ。」
「ボンゴレリングが狙いだってのか!?」
問い返す獄寺に、ラルはしばらく間をおいてから言った。
「ボンゴレ急襲には、もう1つメリットがある。………“ダーク”の力だ。」
「ダーク………闇…?さっきも出てましたけど、ダークって……」
首をかしげるツナを見て、ラルは思い出したようだった。
「そうか…10年前は呼び名が違っていたか……。」
「呼び名…?」
「ダークは、“闇”という意味も含めて一種の通り名になっている。D、A、R、QでDARQ(ダーク)だ。」
「ちょっと待て、それじゃあ綴りが……」
「略称だ。」
反論しようとする獄寺に、ラルはピシャリと言い放つ。
「“Dancing And Rhythm Queen”……こう言えば分かるか?」
ラルは2人の表情を確認する。
「それって……まさか……」
「檸檬の事……!??」
驚愕で体を震わせる2人。
ラルは話の続きをする。
「リングの話に戻ると……もともとリングはマフィアの黎明期に暗黒時代を生き抜く為に、先人達が闇の力との契約を交わした事の象徴だと思われて来た。」
つまり、重要なのはボンゴレリングだけでない。
他のファミリーのリングも大切な戦力なのだ。
「沈黙の掟(オメルタ)に守られて来たマフィアのリングには、人知を超えた力が宿っていたんだ……。お前達も見たはずだ、ボンゴレリングが燃えるのを。」
ツナと獄寺は、ついこないだあったヴァリアーとの戦い、大空戦での結末を思い出した。
「リングの力はそれだけではない。あそこに飛ぶ気球を見ろ。」
そう言って上を見上げたラルの目は、みるみるうちに見開かれた。
その気球から出る僅かな火の粉は、
紛れもなく、敵襲の証。
突如立ち上がったラルは、近くの砂袋に手をかけ、たき火を消す。
「何やってんだ!!」
「敵だ!」
マントを羽織って、2人に注意を呼び掛ける。
「感傷に浸っている場合ではないぞ。奴らは強い!!見つかったら終わりと思え!」
---
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ツナと獄寺も着替えて、敵を待つ。
しばらくして聞こえて来たのは、
ズゥン…
という重い音。
「あいつは偵察だな。アレならステルスリングでやり過ごせる。」
呟くラルに対し、重い足音の主を見ようとする2人。
岩影からそっと覗くと………
「ゴーラ・モスカ!!」
その姿は、ヴァリアーの一員として働いていた機械に酷似していた。
「ゴーラのニ世代後の機体だ……ストゥラオ・モスカ。軍は、ボンゴレ以外にも機密を売ってやがったんだ。」
すると、その機械が急に3人の方を向く。
小さな音と共に。
「こっち向いたぜ!」
「見つかりっこない。ストゥラオはリングの力を探知するセンサーを内蔵しているが、マモンチェーンでリングの力は封じられている。」
しかし、
ズゥン…
ズゥン…
重い足音は、
ズシン、
ズシン、
確実に3人に近付いて来て。
「き……来たぞ!」
次の瞬間、
ピーッ、
それは、
明らかにターゲットを補足した音だった。
ラルは慌てて声を出す。
「バカな!!お前達、ボンゴレリング以外のリングは持っていないな?!」
「あぁ…さっき見せたので全部だ……」
「俺も……」
言いかけたツナだが、
「あ!」
ふと思い出して、ポケットの中を探り出す。
「ランチアさんに貰ったリングが………」
「そのリングは…!!何故話さなかった!!」
ツナに一喝してから、ラルはモスカの方を見る。
その口から出た言葉は、絶望的なモノで。
「3人でも倒せる相手じゃない!全滅だ……」
「へっ、弱気じゃねーか。自慢のリングの力は役に立たねーのかよ!!」
挑発するように言う獄寺に、ラルは更に怒鳴る。
「戦いは力だけではない!相性が重要なんだ!!」
次の瞬間向けられる、モスカの手。
指の1本1本が銃口である事は、昔と変わっていないらしい。
「アジトまであと僅かという所で……!くそっ!」
分が悪いのは分かっているが、ラルは左手の武器を向ける。
獄寺も、ボムを用意した。
と、その時。
シュッ、
突如モスカの背後に現れる、
素早い動きの黒い影。
ガキィィ、
金属音がしたかと思うと、
モスカの動きは突然止まる。
「(衝撃波!?)」
驚き、動きを止めるラル。
同じように止まって、口をぽかんと開けるツナと獄寺の耳に、
何処か聞いた事のあるような声が。
「鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)、こいつで1分は稼げるはずだ。」
目を見開き、
見つめる先には、
一筋の光のような刀。
そして、
「助っ人とーじょーっ♪」
いつも見慣れている姿より一回り大きい、
頼れる男。