未来編①
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未知なる敵は、
未知なる武器と共に。
未知なる場所は、
未知なる組織と共に。
10年後の戦い
ズガガガ、
身動きが取れない獄寺に撃たれるのは、9ミリ弾丸。
「くっ!」
しかし、突如現れた炎の壁により、それは防がれる。
驚く獄寺の側にある木に着地したのは、
「10代目!!」
超死ぬ気モードになったツナを見て、相手も少しだけ動きを止める。
「9ミリ弾丸をものともしない高密度エネルギー……待ってたぜ、超死ぬ気モードのお前をな。」
その言葉に少し反応しつつ、ツナは聞き返す。
「何故俺達を狙う。」
「今は非常時だ。手っ取り早くが最優先なのさ。」
そこまで言うと、再び左手を構える。
今度は右手を添えて。
「次のは鉛玉とは違う。その炎でも消せはしないぜ。」
ドパッ、
6つの穴から放たれるのは、獄寺が閉じ込められている檻の素材と酷似したもの。
ツナは炎を噴射してかわすが、
それらは迷わずその後を追う。
「追尾(ホーミング)!!」
獄寺が焦りの声を出す。
いつしか追い付かれたツナは、やむを得ず炎の壁を作るが…
ドガガ
「ぐあっ!!」
相手の言った通り、防げないモノで。
煙の中からツナの声。
「10代目ーーー!!」
やがて、煙の中から落下して行くツナが現れる。
ダメージを受けて、炎も小さくなったが、
たった1つ、思う事があった。
「(今の…弾は…まさか……)」
そんなツナに、相手は言う。
「休憩なんてやらないぜ。ここで死ぬようなら、足手纏いになるだけだからな。」
再び武器を向ける。
「生きたきゃ生きろ。」
挑発とも、
教訓とも取れるような、
そんな台詞を放ちながら。
ドパッ、
向かって来る“何か”に目を見開き、
「がっ!」
再び煙に包まれる。
追い討ちをかけるように、攻撃はどんどん打ち込まれて。
ドオオオォォォ…
「じゅ…10代目ー!!」
完全に姿が見えなくなったツナを探すように、獄寺は叫んだ。
「リボーンの指導を受けながら、こんなものか。これでよくザンザスを倒せたな……。リボーンが隣にいて、初めて一人前だったってワケか………」
木の枝に立ち、小さく言う相手。
その黒髪をなびかせる風により、煙も晴れて行く。
しかし、
ダメージを受けだであろうツナは、
その正面にはいなかった。
「何故リボーンのことを知っている。」
声が聞こえたのは、
少し右側。
驚いてそちらを向く相手の視界に、
独特の構えをしたツナが。
ツナの構えを見た途端、相手の声色が変わった。
「零地点突破…改か!!」
自分の技をどうして知っているのかも気になるが、
先程頭に浮かんだ疑問を先にぶつけてみる。
「何故……」
答えさせる為には、
相手にダメージを負わせる事が必要。
今までよりも速く、相手の背後へ移動する。
一瞬見失うものの、気配を察知する相手。
しかし振り向いた時にはもう、ツナの右腕は攻撃をしようと構えられていた。
「……死ぬ気の炎を使えるんだ。」
「くっ、」
かろうじて避ける相手の腹部に、
すかさず空いている左拳を入れた。
ドスッ、
「う"っ!」
相手が吐血したのは、ダメージを与えた証拠。
接近戦では分が悪いと思ったのか、即座に間合いを取られる。
そして、
木の枝に着地した相手。
そのマントは風に舞いながら落ちて行き、
やがて、その正体にツナ達は驚かされる。
---
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------------
「お、お前っ……!!」
『あ…あの…』
助けを求めようとしたら、
銃を向けられた。
「何故起きている!!?何故動けるんだ!!?」
『えっ…?』
「大人しくその場に…!!でないと…」
知らない人。
真っ白な衣装に身を包んで、肩のトコに飾りを付けてる。
でもただ1つ、
ただ1つ分かった事は…
「でないと…殺す!!」
この人が敵だって事だった。
『ちょっ…待って!』
ズガガン!
『きゃぁっ!』
とりあえず1人じゃない。
不安で不安で堪らないけど、何処かに知り合いがいるはず!
立ち上がって、俊足でかわして、
咄嗟に相手を押さえ付けた。
「ぐあっ…!」
『あなたは誰?何であたしを殺そうとしたの?』
「や、やめろ!助けてくれ!!」
あたしは彼を抑えてるだけなのに、何故か命乞いされる。
ふと目に止まったのは、彼が付けていたデジタル時計。
『え……!?』
そこに小さく表示されてる日付を見て驚いた。
あたしが10年バズーカに当たった日と、2ヶ月もずれてる!??
『ねぇ、あたしはココで何をしてたの?』
「生命…維持装置のみ……」
『は?』
生命維持装置?
あの変なビニールの管の束が?
大体どうしてそんなモノにお世話になってるの?
『とりあえず、脱出経路教えてよ。そしたら命は取らないから。』
元々取る気なんて無いけど。
そう思って、彼を立たせたその時だった。
「何があったんだ!!」
「監視カメラが壊れてて…!!」
『うそっ!』
よりによってこんな時に援軍のご到着。
あたしは人質のように彼を前に立たせた。
『このまま歩いて。』
「はい……」
角を曲がった所で、やっぱり援軍とご対面した。
人質にしてる彼と同じ服装。
「ダ…ダーク!!」
「お前……何故!!」
『(ダーク…?)』
この人の名前かな、とか考える。
そして、援軍の皆さんを睨みながら言った。
『この人を殺されたくなかったら、そこを退いてちょうだい。』
「た、助けて……」
これで抜けられるかな…
そう考えたのが、甘かった。
「構わん!撃て!!」
『はぁっ!!?』
「ぎゃ…ぎゃあ!!」
一斉に銃を構える援軍の人々。
あたしだけじゃなくて、人質の人も驚いてた。
『ったく…随分と非情な奴らね!!』
あたしは人質を横に突き飛ばし、自分はナイフで銃弾を弾いた。
そして、そのまま突き進む。
「と、止まれ!!」
『嫌よっ!』
援軍の目の前でひとっ飛び。
タイミング良く天井に足を着いて、そのまま援軍の後ろに回り込む。
「つ、捕まえろーー!!」
「追え!逃がすな!!」
そんな事を言っても、あたしの俊足には適わないでしょうけど。
そう思いながら適当に走る。
だけど…
『うわっ!行き止まり~!!?』
「もう逃がさんぞ!ダーク!!」
え?
ダークって………あたし?
あたしが……………闇?
混乱するあたしの右手側に、
40センチ四方の窓があった。
『何なのよ……』
10年バズーカなのに10年後ぴったりじゃないし、
いきなり命狙われるし、
“逃がすな”って事は“掴まってた”って事だし、
ダークって呼ばれてるし、
生命維持装置とか付けられてたし…
『意味わかんないっ!!!』
こうなったらヤケだ。
『あたしはっ…雨宮檸檬よ!!!』
「捕らえろぉぉおお!!」
近付いて来る4、5人を瞬時に片付ける。
勿論殺しはしないけど。
それからあたしは右拳をぐっと握りしめ、
窓に向かってパンチを放った。
「「「なっ……!!」」」
驚く追っ手達に、笑顔で言ってやる。
『さよーなら♪』
バリーン!!
割れ目の入った窓を蹴破って、あたしは外に飛び出した。
出られるなら、何でもいい。
此処にいたらきっと、良くない事が起こるんだ。
此処にいてもきっと、ツナ達には会えないままだ。
『あーあ。』
窓の外は、崖だった。
落ちて行きながら見てみると、
遥か下に林が見えた。
『クッションになるかも……』
我ながらのんきだなぁ、と思う。
だけど、
どうしても難しい事を考える気にはなれなかった。
---
------
--------------
「なる…ほどな……」
「女!?」
荒い息を整えながら言う相手の容姿は、
明らかに女だった。
「なかなかどうして見所はありそうだな、沢田綱吉。俺が全力を出してもお前の戦闘能力には及ばないだろうぜ……最も………旧時代的意味においてな。」
最後の言葉に疑問符を浮かべるツナ。
女は構わずに武器を構える。
が、先程とは違う。
攻撃する直前に、右手のリングを何か箱のようなモノに差し込んだ。
「それだけではこの時代、生きてはいけないぜ!雨宮檸檬は別としてな!」
「檸檬!!?」
「何で奴が檸檬の事を………」
檸檬の名が出た事に一瞬驚くが、
超死ぬ気モード、
零地点突破、
リボーン…
彼女がそれらの単語を口にした事から、
もうマフィア関係者である事は分かっている。
自分に向かって撃たれる9ミリ弾丸を、ツナは確実にかわしていった。
しかし…
ヒュッ、
弾丸達の中に、1つだけ異なる物がある事に気がつく。
それはムカデのような形をしていて、みるみるうちにツナに巻き付いて行く。
「なんだ!?」
ツナはすぐに両手でそれを掴み、炎を出した。
大きな炎はすぐにムカデの全体へと広がって行く。
ブオオッ、
それは、森の一部を輝かせるような光を放つ程の炎。
「す……すげぇ!!さすが10代目っス!!」
喜ぶ獄寺とは裏腹に、
「気付けよ、逆効果だ。」
冷酷な言葉を放つ彼女。
その通りに、ツナは気力が無くなっていく感覚を覚えた。
「お前は死ぬ気の炎を自分の意志で出してるんじゃない。無理矢理大気に放出させられてるのさ。炎で動く、玩具によってな。」
「な……」
死ぬ気の炎はだんだんと小さくなり、
「そん…な……」
何も出来ずに落下していくツナ。
「10代目!!」
「うあ…」
炎も出なくなり、地面に倒れるしか出来ないツナに、女は左手の武器を向けた。
「こんな初歩的な罠にかかるとは…情けないな、ボンゴレ10代目。雨宮檸檬さえいれば、もう少しマシな戦いが出来ただろうがな。」
「(また…檸檬って……)」
それでも、武器はそのままツナに向けられる。
「待ちやがれ!!」
檻を壊そうとする獄寺の手首が、火傷する。
ツナは起き上がる事も出来ず、相手の言葉を反芻していた。
「(奴の言う通りだ……)」
俺はリボーンがいないと半人前で…
俺が考えている以上に檸檬に助けてもらってた…
きっと2人がいたらこんな事には………!!
ギュッと目を瞑る俺の耳に入ったのは、
「及第点だ。殺すのは見送ってやる。」
希望の言葉だった。
武器の的は俺から外されて、彼女はゴーグルを取った。
「俺の名はラル・ミルチ。」
同時に獄寺君を囲んでいた檻みたいなのが消えて、駆け寄って来る。
「10代目!お怪我は!」
彼女は落ちていたマントを拾って、俺達に言った。
「派手に暴れ過ぎたな。このままでは奴らに見つかるのも時間の問題だ。これをボンゴレリングに巻きつけろ。」
2つの鎖を目の前に投げられる。
「マモンチェーンと言って、指輪の力を封印する鎖だ。」
「なっ、おい!ちょっと待て!!」
そこで、獄寺君が声をあげる。
「てめーいきなり襲っといてワケわかんねー事言ってんじゃねぇ!!それに何故ボンゴレリングの事を!!一体何者だ!?檸檬とどーゆー関係なんだ!?」
でも、
「急いでココを立ち去る。裸足じゃ無理だ、これを履け。」
獄寺君の問いには一切答えず、彼女は俺にサンダルを投げ付けた。
もしかしてこの人……
敵じゃない………
檸檬の事知ってたし、
何より…
褒めてた。
---「雨宮檸檬さえいれば、もう少しマシな戦いが出来ただろうがな。」
「あの、ちょっと待って下さい!!俺達過去から来たんです!!さっきから驚く事ばかりで何がなんだかさっぱり……!!」
「口答えするな。」
敵じゃないって思ったけど…
武器を向けられて、やっぱり怖かった。
「ふざけんな!!何でてめーの言う事を!!」
「ついて来れない奴は死んでくれた方が助かる。」
獄寺君の抗議に対して、彼女は真剣な目で答えた。
「俺には、時間がないんだ。」
今まで髪の毛で隠れて見えなかったけど、
その時に見えた。
彼女の右目の辺りにある、酷い火傷のような傷跡。
「知りたい事は、目的地に着いてから調べるんだな。」
「「目的地?」」
「お前達のアジトだ。」
背を向けて歩き出しながら、彼女はそう言う。
「お…俺達のアジト!?」
「まさか…この時代の……!!って事は俺…………あ!」
アジトがあるって事は、
そこに誰か知り合いがいる可能性が高い。
という事は………
「リボーンや檸檬もそこにいるんですか?」
「そうか!俺がまだココにいるって事は、檸檬もまだこの時代にいる!10年前ののリボーンさんだってこの時代にいるって事も………」
俺達の期待に満ちた質問にも、
「知るか。」
と、無関心な返答をされる。
「でも…赤ん坊リボーンがいなくても、この時代のリボーンがいるのかも……」
「そっスね!檸檬はまぁ…確実に入れ替わったままだと思いますが…」
俺と獄寺君の会話を聞いて、彼女はピタリと止まってこう言った。
「俺の体が成長するのも、こうして生き長らえているのも、俺がなり損ないだからだ……」
なり…損ない……?
「コロネロ…バイパー……スカル……最強の赤ん坊・アルコバレーノ達は皆……死んでいった………」
死…んだ……?
「勿論リボーンも………いない。」
その言葉を聞いた瞬間、
嘘か本当かは別として、
俺の中の時間が完全に止まった。
---「リボーンも………いない。」
その言葉が何度も頭を渦巻いて。
ねぇリボーン…
何処行っちゃったんだよ…
どうして急にこんな事になってんだよ…
それに…
檸檬…君は、何処にいるの?
無事なの?
不安で不安で、どうしようもなくなった。
未知なる武器と共に。
未知なる場所は、
未知なる組織と共に。
10年後の戦い
ズガガガ、
身動きが取れない獄寺に撃たれるのは、9ミリ弾丸。
「くっ!」
しかし、突如現れた炎の壁により、それは防がれる。
驚く獄寺の側にある木に着地したのは、
「10代目!!」
超死ぬ気モードになったツナを見て、相手も少しだけ動きを止める。
「9ミリ弾丸をものともしない高密度エネルギー……待ってたぜ、超死ぬ気モードのお前をな。」
その言葉に少し反応しつつ、ツナは聞き返す。
「何故俺達を狙う。」
「今は非常時だ。手っ取り早くが最優先なのさ。」
そこまで言うと、再び左手を構える。
今度は右手を添えて。
「次のは鉛玉とは違う。その炎でも消せはしないぜ。」
ドパッ、
6つの穴から放たれるのは、獄寺が閉じ込められている檻の素材と酷似したもの。
ツナは炎を噴射してかわすが、
それらは迷わずその後を追う。
「追尾(ホーミング)!!」
獄寺が焦りの声を出す。
いつしか追い付かれたツナは、やむを得ず炎の壁を作るが…
ドガガ
「ぐあっ!!」
相手の言った通り、防げないモノで。
煙の中からツナの声。
「10代目ーーー!!」
やがて、煙の中から落下して行くツナが現れる。
ダメージを受けて、炎も小さくなったが、
たった1つ、思う事があった。
「(今の…弾は…まさか……)」
そんなツナに、相手は言う。
「休憩なんてやらないぜ。ここで死ぬようなら、足手纏いになるだけだからな。」
再び武器を向ける。
「生きたきゃ生きろ。」
挑発とも、
教訓とも取れるような、
そんな台詞を放ちながら。
ドパッ、
向かって来る“何か”に目を見開き、
「がっ!」
再び煙に包まれる。
追い討ちをかけるように、攻撃はどんどん打ち込まれて。
ドオオオォォォ…
「じゅ…10代目ー!!」
完全に姿が見えなくなったツナを探すように、獄寺は叫んだ。
「リボーンの指導を受けながら、こんなものか。これでよくザンザスを倒せたな……。リボーンが隣にいて、初めて一人前だったってワケか………」
木の枝に立ち、小さく言う相手。
その黒髪をなびかせる風により、煙も晴れて行く。
しかし、
ダメージを受けだであろうツナは、
その正面にはいなかった。
「何故リボーンのことを知っている。」
声が聞こえたのは、
少し右側。
驚いてそちらを向く相手の視界に、
独特の構えをしたツナが。
ツナの構えを見た途端、相手の声色が変わった。
「零地点突破…改か!!」
自分の技をどうして知っているのかも気になるが、
先程頭に浮かんだ疑問を先にぶつけてみる。
「何故……」
答えさせる為には、
相手にダメージを負わせる事が必要。
今までよりも速く、相手の背後へ移動する。
一瞬見失うものの、気配を察知する相手。
しかし振り向いた時にはもう、ツナの右腕は攻撃をしようと構えられていた。
「……死ぬ気の炎を使えるんだ。」
「くっ、」
かろうじて避ける相手の腹部に、
すかさず空いている左拳を入れた。
ドスッ、
「う"っ!」
相手が吐血したのは、ダメージを与えた証拠。
接近戦では分が悪いと思ったのか、即座に間合いを取られる。
そして、
木の枝に着地した相手。
そのマントは風に舞いながら落ちて行き、
やがて、その正体にツナ達は驚かされる。
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「お、お前っ……!!」
『あ…あの…』
助けを求めようとしたら、
銃を向けられた。
「何故起きている!!?何故動けるんだ!!?」
『えっ…?』
「大人しくその場に…!!でないと…」
知らない人。
真っ白な衣装に身を包んで、肩のトコに飾りを付けてる。
でもただ1つ、
ただ1つ分かった事は…
「でないと…殺す!!」
この人が敵だって事だった。
『ちょっ…待って!』
ズガガン!
『きゃぁっ!』
とりあえず1人じゃない。
不安で不安で堪らないけど、何処かに知り合いがいるはず!
立ち上がって、俊足でかわして、
咄嗟に相手を押さえ付けた。
「ぐあっ…!」
『あなたは誰?何であたしを殺そうとしたの?』
「や、やめろ!助けてくれ!!」
あたしは彼を抑えてるだけなのに、何故か命乞いされる。
ふと目に止まったのは、彼が付けていたデジタル時計。
『え……!?』
そこに小さく表示されてる日付を見て驚いた。
あたしが10年バズーカに当たった日と、2ヶ月もずれてる!??
『ねぇ、あたしはココで何をしてたの?』
「生命…維持装置のみ……」
『は?』
生命維持装置?
あの変なビニールの管の束が?
大体どうしてそんなモノにお世話になってるの?
『とりあえず、脱出経路教えてよ。そしたら命は取らないから。』
元々取る気なんて無いけど。
そう思って、彼を立たせたその時だった。
「何があったんだ!!」
「監視カメラが壊れてて…!!」
『うそっ!』
よりによってこんな時に援軍のご到着。
あたしは人質のように彼を前に立たせた。
『このまま歩いて。』
「はい……」
角を曲がった所で、やっぱり援軍とご対面した。
人質にしてる彼と同じ服装。
「ダ…ダーク!!」
「お前……何故!!」
『(ダーク…?)』
この人の名前かな、とか考える。
そして、援軍の皆さんを睨みながら言った。
『この人を殺されたくなかったら、そこを退いてちょうだい。』
「た、助けて……」
これで抜けられるかな…
そう考えたのが、甘かった。
「構わん!撃て!!」
『はぁっ!!?』
「ぎゃ…ぎゃあ!!」
一斉に銃を構える援軍の人々。
あたしだけじゃなくて、人質の人も驚いてた。
『ったく…随分と非情な奴らね!!』
あたしは人質を横に突き飛ばし、自分はナイフで銃弾を弾いた。
そして、そのまま突き進む。
「と、止まれ!!」
『嫌よっ!』
援軍の目の前でひとっ飛び。
タイミング良く天井に足を着いて、そのまま援軍の後ろに回り込む。
「つ、捕まえろーー!!」
「追え!逃がすな!!」
そんな事を言っても、あたしの俊足には適わないでしょうけど。
そう思いながら適当に走る。
だけど…
『うわっ!行き止まり~!!?』
「もう逃がさんぞ!ダーク!!」
え?
ダークって………あたし?
あたしが……………闇?
混乱するあたしの右手側に、
40センチ四方の窓があった。
『何なのよ……』
10年バズーカなのに10年後ぴったりじゃないし、
いきなり命狙われるし、
“逃がすな”って事は“掴まってた”って事だし、
ダークって呼ばれてるし、
生命維持装置とか付けられてたし…
『意味わかんないっ!!!』
こうなったらヤケだ。
『あたしはっ…雨宮檸檬よ!!!』
「捕らえろぉぉおお!!」
近付いて来る4、5人を瞬時に片付ける。
勿論殺しはしないけど。
それからあたしは右拳をぐっと握りしめ、
窓に向かってパンチを放った。
「「「なっ……!!」」」
驚く追っ手達に、笑顔で言ってやる。
『さよーなら♪』
バリーン!!
割れ目の入った窓を蹴破って、あたしは外に飛び出した。
出られるなら、何でもいい。
此処にいたらきっと、良くない事が起こるんだ。
此処にいてもきっと、ツナ達には会えないままだ。
『あーあ。』
窓の外は、崖だった。
落ちて行きながら見てみると、
遥か下に林が見えた。
『クッションになるかも……』
我ながらのんきだなぁ、と思う。
だけど、
どうしても難しい事を考える気にはなれなかった。
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「なる…ほどな……」
「女!?」
荒い息を整えながら言う相手の容姿は、
明らかに女だった。
「なかなかどうして見所はありそうだな、沢田綱吉。俺が全力を出してもお前の戦闘能力には及ばないだろうぜ……最も………旧時代的意味においてな。」
最後の言葉に疑問符を浮かべるツナ。
女は構わずに武器を構える。
が、先程とは違う。
攻撃する直前に、右手のリングを何か箱のようなモノに差し込んだ。
「それだけではこの時代、生きてはいけないぜ!雨宮檸檬は別としてな!」
「檸檬!!?」
「何で奴が檸檬の事を………」
檸檬の名が出た事に一瞬驚くが、
超死ぬ気モード、
零地点突破、
リボーン…
彼女がそれらの単語を口にした事から、
もうマフィア関係者である事は分かっている。
自分に向かって撃たれる9ミリ弾丸を、ツナは確実にかわしていった。
しかし…
ヒュッ、
弾丸達の中に、1つだけ異なる物がある事に気がつく。
それはムカデのような形をしていて、みるみるうちにツナに巻き付いて行く。
「なんだ!?」
ツナはすぐに両手でそれを掴み、炎を出した。
大きな炎はすぐにムカデの全体へと広がって行く。
ブオオッ、
それは、森の一部を輝かせるような光を放つ程の炎。
「す……すげぇ!!さすが10代目っス!!」
喜ぶ獄寺とは裏腹に、
「気付けよ、逆効果だ。」
冷酷な言葉を放つ彼女。
その通りに、ツナは気力が無くなっていく感覚を覚えた。
「お前は死ぬ気の炎を自分の意志で出してるんじゃない。無理矢理大気に放出させられてるのさ。炎で動く、玩具によってな。」
「な……」
死ぬ気の炎はだんだんと小さくなり、
「そん…な……」
何も出来ずに落下していくツナ。
「10代目!!」
「うあ…」
炎も出なくなり、地面に倒れるしか出来ないツナに、女は左手の武器を向けた。
「こんな初歩的な罠にかかるとは…情けないな、ボンゴレ10代目。雨宮檸檬さえいれば、もう少しマシな戦いが出来ただろうがな。」
「(また…檸檬って……)」
それでも、武器はそのままツナに向けられる。
「待ちやがれ!!」
檻を壊そうとする獄寺の手首が、火傷する。
ツナは起き上がる事も出来ず、相手の言葉を反芻していた。
「(奴の言う通りだ……)」
俺はリボーンがいないと半人前で…
俺が考えている以上に檸檬に助けてもらってた…
きっと2人がいたらこんな事には………!!
ギュッと目を瞑る俺の耳に入ったのは、
「及第点だ。殺すのは見送ってやる。」
希望の言葉だった。
武器の的は俺から外されて、彼女はゴーグルを取った。
「俺の名はラル・ミルチ。」
同時に獄寺君を囲んでいた檻みたいなのが消えて、駆け寄って来る。
「10代目!お怪我は!」
彼女は落ちていたマントを拾って、俺達に言った。
「派手に暴れ過ぎたな。このままでは奴らに見つかるのも時間の問題だ。これをボンゴレリングに巻きつけろ。」
2つの鎖を目の前に投げられる。
「マモンチェーンと言って、指輪の力を封印する鎖だ。」
「なっ、おい!ちょっと待て!!」
そこで、獄寺君が声をあげる。
「てめーいきなり襲っといてワケわかんねー事言ってんじゃねぇ!!それに何故ボンゴレリングの事を!!一体何者だ!?檸檬とどーゆー関係なんだ!?」
でも、
「急いでココを立ち去る。裸足じゃ無理だ、これを履け。」
獄寺君の問いには一切答えず、彼女は俺にサンダルを投げ付けた。
もしかしてこの人……
敵じゃない………
檸檬の事知ってたし、
何より…
褒めてた。
---「雨宮檸檬さえいれば、もう少しマシな戦いが出来ただろうがな。」
「あの、ちょっと待って下さい!!俺達過去から来たんです!!さっきから驚く事ばかりで何がなんだかさっぱり……!!」
「口答えするな。」
敵じゃないって思ったけど…
武器を向けられて、やっぱり怖かった。
「ふざけんな!!何でてめーの言う事を!!」
「ついて来れない奴は死んでくれた方が助かる。」
獄寺君の抗議に対して、彼女は真剣な目で答えた。
「俺には、時間がないんだ。」
今まで髪の毛で隠れて見えなかったけど、
その時に見えた。
彼女の右目の辺りにある、酷い火傷のような傷跡。
「知りたい事は、目的地に着いてから調べるんだな。」
「「目的地?」」
「お前達のアジトだ。」
背を向けて歩き出しながら、彼女はそう言う。
「お…俺達のアジト!?」
「まさか…この時代の……!!って事は俺…………あ!」
アジトがあるって事は、
そこに誰か知り合いがいる可能性が高い。
という事は………
「リボーンや檸檬もそこにいるんですか?」
「そうか!俺がまだココにいるって事は、檸檬もまだこの時代にいる!10年前ののリボーンさんだってこの時代にいるって事も………」
俺達の期待に満ちた質問にも、
「知るか。」
と、無関心な返答をされる。
「でも…赤ん坊リボーンがいなくても、この時代のリボーンがいるのかも……」
「そっスね!檸檬はまぁ…確実に入れ替わったままだと思いますが…」
俺と獄寺君の会話を聞いて、彼女はピタリと止まってこう言った。
「俺の体が成長するのも、こうして生き長らえているのも、俺がなり損ないだからだ……」
なり…損ない……?
「コロネロ…バイパー……スカル……最強の赤ん坊・アルコバレーノ達は皆……死んでいった………」
死…んだ……?
「勿論リボーンも………いない。」
その言葉を聞いた瞬間、
嘘か本当かは別として、
俺の中の時間が完全に止まった。
---「リボーンも………いない。」
その言葉が何度も頭を渦巻いて。
ねぇリボーン…
何処行っちゃったんだよ…
どうして急にこんな事になってんだよ…
それに…
檸檬…君は、何処にいるの?
無事なの?
不安で不安で、どうしようもなくなった。