with VARIA(昔話)
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コンコン、
『はーい♪』
「う"お"ぉい檸檬、ちょっといいかぁ…?」
『アロちゃん?』
ガチャ、
ドアを開けると、アロちゃんが目をそらしつつ立っていた。
虫さされ
『どーしたの?』
「せ、背中…」
『ん?』
「背中を掻いてくれぇ……」
はい!!?
『と、とりあえず入る?』
「あぁ…」
アロちゃんを椅子に座らせて、もう一度尋ねる。
『どしたの?ホントに。』
するとアロちゃんは少し驚いた顔をして、
「何だぁ、まだ知らねぇのかぁ?」
って。
『何を?』
「これだぁ。」
テレビをつけるアロちゃん。
ほとんど見ないニュースのチャンネルにまわした。
すると…
「この夏、蚊の大量発生が問題となっています!原因はここ数年の平均を大きく上回る湿度と見られており…」
『………蚊って…アロちゃん刺されたの!?』
「だから早く掻いてくれぇ!!!もう檸檬しかいねぇんだぁ!!」
『わ、分かった!分かったから落ち着いてぇ!!』
取り乱すアロちゃんを何とか宥めて、あたしはその背中を掻いてあげた。
その間に、気になった事を尋ねる。
『あたししかいないって、どーゆー事?』
「あぁ、それはだなぁ……」
アロちゃんは話し始めた。
あたしの部屋に来るまでの経緯を。
「最初は談話室にいたヤツに頼んだんだ…ルッスーリアになぁ。」
『ルッスーリア?ちゃんとやってくれそうなのに。』
「それが…」
---「私が気持ちよ~く掻いてア・ゲ・ルvV」
「………あんな事言われたら身の毛がよだっちまってよぉ…」
『あら、そう。(笑)』
「わ、笑い事じゃねぇぞぉ!!そこはもうちょっと上だぁ!」
『あー、はいはい。』
「で、次はマーモンのトコに行ったんだぁ。」
『お金くれって言った?』
「あぁ、一応払った。金で解決するならって思ってなぁ。だが…………アイツ手が小さくて効かねぇんだよぉ!!!」
『あ、なるほど。』
その次、苦しみながら歩くアロちゃんの前に現れたのは、
ボスとモスカだった。
けど、
アロちゃんがボスに頼めるはずもなく、
そしてモスカはあの手(銃口になってる)で掻けるはずもなく。
「仕方なくレヴィのトコに行ったんだぁ。」
『今度こそちゃんとやってくれそうなのに…。』
「いいや!どういうワケかアイツは酷かったんだぁ!!何かこう…憎しみを感じる程痛かった!むしろ爪で抉られるような感じがしやがった!!」
『え…何で…?』
「それが分かれば苦労しねぇ…。」
…そっか。
「とにかく死ぬ程痛かったから、もうやめろって飛び出して来た。」
『んで、今度は……ベルか!』
「あぁ…何でベルに頼もうとしたか今では分からねぇ。自分が分からねぇ。」
『………何されたの?』
ベルの事だからかなり凄い悪戯か何かしたんだろうなぁ…。
「アイツ…ナイフでやりやがったんだぁ!!!」
『あ、もしかしてこの背中の傷……』
「さっきベルにやられたヤツだぜぇ…」
『アロちゃん……』
何て可哀想な…
ただ背中を掻いて欲しかっただけなのにね…。
『てゆーか、だったらあたしのトコにもっと早く来れば良かったのに。』
そう言ったら、アロちゃんはちょっと顔を赤くした。
『え?何?どしたの?』
「い、いや……檸檬は女だろーがぁ!!!」
声を大きくして何を言うかと思いきや。
『そんな事~、別にあたしは気にしないよ?背中掻くだけじゃん。』
ケタケタ笑うと、アロちゃんは更に赤くなって黙ってしまった。
『ってゆーかさぁ、刺され過ぎじゃない?』
「そ、そぉかぁ?」
数えてみると、背中だけで6カ所も刺されていた。
あとは足だの腕だの、
『あ、顔も。』
「うるせぇ!!」
暗殺部隊の隊員が虫にやられるってどうよ。
『アロちゃん、O型?』
「何で分かったんだぁ?」
『O型っておいしいんだって、血。』
「何だとぉ!!?」
『これからも刺されるかもね。人一倍。』
「ふざけんなぁ!叩っ切る!!」
とか言いつつ、
『あ、そこに一匹いるよ?』
「何ぃ!?ど、何処だぁ!!」
………見えてないし。
仕方ない、今回はアロちゃんに味方するか。
『…超五感……』
ビュッ、
パンッ!
『はい、一匹退治♪』
「あ…ありがとなぁ…///」
『いーえ♪』
にしても、これだけアロちゃんが刺されたって事は…
『他のみんなも刺されてんじゃないかなぁ?』
「そーかもなぁ…」
『ちょっと見てくるよ。アロちゃん、ここで避難しててもいいけど。』
「冗談じゃねぇ!虫ごとき怖がってられるかぁ!!」
ま、そー来るとは思ってたけど…
『大丈夫なの?』
「余裕だぜぇ!」
『ならいーけどさぁ。』
こうして、あたしとアロちゃんは屋敷の蚊を退治するべく部屋を出た。
『あ、マーモン!』
「ム、檸檬ちょうど良かった。」
『どしたの?』
「ウナク●ル持ってるかい?」
……遅かった…。
既に刺されちゃったんだ、マーモン…。
『確か部屋にあったなぁ…持ってくる!』
俊足を(無駄に)使って部屋からウナク●ルを取って来た。
『はいっ、マーモン。』
「ありがと檸檬。」
『アロちゃんもつける?しみるよ?』
「お、俺はいいぜぇ!」
逃げるように後退りするアロちゃんが、ちょっと笑えた。
と、そこに…
「檸檬、俺にも貸してー…」
『ベル!!』
ベルのホッペに赤い点が一つ。
『刺されたの!?ベルなら大丈夫だと思ったのに!』
「うん、それがさー…」
ベルはちょっと複雑そうに話し始めた。
「俺の頬に止まったんだよ、蚊が。勿論潰そうと思ったワケ。でもさ、王子が自分の頬叩くとかどーよって思って。つーか叩いたら虫の死体がくっつくじゃん。そんなの絶対ヤダし。」
『葛藤してる間に吸われちゃったんだ…』
「そゆ事ー。あーうざっ!王族の血を吸うとかマジありえねー。」
と、ここでマーモンがベルにウナク●ルを渡す。
「はい。」
「サンキュ。」
その横であたしは色々考えた。
思ったよりも被害が拡大してる…。
もしかしたらもう他のみんなも…
「あらっ!どしたのみんな、こんなトコで。」
『ルッスーリア!』
廊下の向こうから歩いて来たルッスーリアに、早速尋ねてみる。
『虫さされ、ある?』
「え?あぁ、私は大丈夫よ♪でも…今ボスに近づかない方がいいわ…。」
『ボス?』
「かゆくてかゆくてご立腹なのよ。」
えぇーーー!!?
ボスが刺されたの!?
「ボスは刺されたのにどーしてお前は大丈夫なんだよー。」
ベルが聞く。
するとルッスーリアは、
「だって私、全部叩き落としたからっvV」
って。
「ちぇ、ヘンタイにはデリカシーがねぇって事か。」
「んまぁ!失礼よベルちゃんっ!」
「てめーにだってねぇだろーがぁ!」
「は?王子がデリカシーないワケねーじゃん。繊細だから蚊を潰せなかったんだし。」
「そもそもスクアーロは蚊を捕まえる事すら出来なかったそうだね。」
「え、マジで?うわダッセー!」
「うるせぇ!かっさばくぞぉ!!」
『あーもーやめてっ!!』
言い合いを始めるみんなを一喝した。
『今の最大の敵は大量発生した蚊だよ!あたし達が仲間割れしちゃダメじゃんっ!』
「ム、そうだね。」
「ちぇ。」
「う"お"ぉい…」
「じゃぁ、一匹でも多く蚊を捕まえなくちゃね。」
『そーよ!そうすればボスだって刺されなくなるから、機嫌もちょっと直るはず!』
ようやく始動した“蚊を駆除しようプログラム”。
まずはノーマ●トを大量に設置する。
「檸檬ーっ、コンセント足りないんだけどどーすんのー?」
『はいっ、延長コード!』
「さっすが♪」
「檸檬、ここにもおいた方がいいかしら?」
『うん、おいといて。』
「う"お"ぉい、そう言えばレヴィはどーしたぁ!?」
『ホントだ、いないね。』
「あぁ、レヴィなら…」
ルッスーリアが思い出すように言った。
「“ボスの部屋には一匹たりとも蚊を入れん!”って言って警護してるわ。」
「ムム、さすがだね。」
「ホント、ムッツリだよなー。」
「それある意味一番楽な仕事じゃねーかぁ!!」
『でもアロちゃんには出来ないよね。』
「う、うるせぇ!!」
ひとまず、ノーマ●トを屋敷中に置いて一段落。
「じゃぁ私、買い出し行って来るわね。」
『ありがとルッスーリア!』
「売り切れてたらどーすんの?」
「周りを蹴り飛ばしてでも手に入れるわんvV」
何を買いに行くかと言うと、
ア●スジェット(蚊・蝿用)。
ベルみたいに自分で潰したくない人の為に、シューってヤツは必要だから。
とは言っても、イタリア中に蚊が大量発生してるから、入手するのは困難かもしれない。
ルッスーリアを見送って、あたし達は談話室で一休みし始めた。
「あ。」
『どしたの?ベル。』
「ボスの部屋…ノーマ●ト置いてなくね?」
間。
『そー言えば!!』
「ム…いくらレヴィが警護してるとは言え、マズいと思うよ。」
「だなぁ…ボスは窓開けてるかもしれねーし…」
と、その時だった。
「マルテーロ・ディ・フィアンマ!!!!」
ドガァァァァアアン!
…………もの凄い音がした。
『えっとー…』
「ヤバくね?」
「ムゥ…」
「う"お"ぉい…」
逆に蚊が可哀想になって来たかも。
『とりあえず確認しに行こう、レヴィの安否を。』
「ウム、レヴィが巻き添えを食らって死んだかもしれないね。」
「ボス怒ってんのかなー…」
「怒りがこっちに向かねぇ事を祈るぜぇ…」
行ってみると…
部屋の前でレヴィが死んでいました。
「マジで巻き添え食らってんね、うしし♪」
「笑い事じゃねーぞぉ!」
『ボス、いる…?』
ここで部屋に入ろうとする、勇者・檸檬。
するとドアがバンッと開いて。
「おい、ウナク●ル貸せ。」
ボスが出て来た。
『はい…どーぞ…………』
それを手の甲につけながら、ボスは言う。
「俺の部屋にも置け。」
『ノーマ●ト…?』
「あぁ。」
『分かった…。』
マーモンが余ってた一つをすかさずボスの部屋に置く。
「置いたよ、ボス。」
「あぁ。」
ボスは満足(?)したのか、部屋に戻ってドアを閉めた。
あたし達は、まるで嵐が過ぎ去った後のように安堵していた。
「にしても…」
『ん?』
マーモンがポツリと呟く。
「蚊一匹にあの技使うなんて、ボスは相当キレてたんだね…。」
『そう…だね……』
それから、ルッスーリアがア●スジェットを買って来て、ベルがそれを携帯した。
そしてノーマ●ト効果によって、屋敷の中にいる蚊はほとんど落ちて、退治された。
それでも、みんなの虫さされはすぐに消える事はなく。
「う"お"ぉい、檸檬…」
『またー?』
「かゆくて仕方ねーんだぁ!!」
『はいはい。』
あたしはそれから5日間くらいアロちゃんの背中を掻く係になって、
みんなにウナク●ルを貸して、
「檸檬、目立たないバンドエイドねぇ?」
『あるよ、はい。』
「うしし♪サンキュー。」
ホッペに赤い点がある事は、ベルの王子としてのプライドが許せないらしく、
そんなベルにバンドエイドを分けてあげたり、
『大丈夫?ご飯持って来たよ。』
「ぬ…すまんな……」
ボスの部屋の前で巻き添えを食らって重傷になってしまったレヴィにご飯を運んだり、
色々大変だった。
「檸檬、まるでヴァリアーのナースさんみたいねぇvV」
『あはは…』
にしても、蚊の大量発生でこんなにヴァリアーが混乱するなんて。
ちょっと意外だった。
そしてついにあたしのウナク●ルは、
その夏の間に底をついてしまったのだった。
「檸檬、ウナク●ルは?」
『ごめんねマーモン、こないだボスが最後の一滴まで使っちゃったみたいなの。』
「ム!」
『液体ム●ならあるけど、使う?』
「もろこしヘッドのウナク●ルが好きだったよ…」
『キ●カンもあるけど…』
「それはしみるからヤだよ。」
『はーい♪』
「う"お"ぉい檸檬、ちょっといいかぁ…?」
『アロちゃん?』
ガチャ、
ドアを開けると、アロちゃんが目をそらしつつ立っていた。
虫さされ
『どーしたの?』
「せ、背中…」
『ん?』
「背中を掻いてくれぇ……」
はい!!?
『と、とりあえず入る?』
「あぁ…」
アロちゃんを椅子に座らせて、もう一度尋ねる。
『どしたの?ホントに。』
するとアロちゃんは少し驚いた顔をして、
「何だぁ、まだ知らねぇのかぁ?」
って。
『何を?』
「これだぁ。」
テレビをつけるアロちゃん。
ほとんど見ないニュースのチャンネルにまわした。
すると…
「この夏、蚊の大量発生が問題となっています!原因はここ数年の平均を大きく上回る湿度と見られており…」
『………蚊って…アロちゃん刺されたの!?』
「だから早く掻いてくれぇ!!!もう檸檬しかいねぇんだぁ!!」
『わ、分かった!分かったから落ち着いてぇ!!』
取り乱すアロちゃんを何とか宥めて、あたしはその背中を掻いてあげた。
その間に、気になった事を尋ねる。
『あたししかいないって、どーゆー事?』
「あぁ、それはだなぁ……」
アロちゃんは話し始めた。
あたしの部屋に来るまでの経緯を。
「最初は談話室にいたヤツに頼んだんだ…ルッスーリアになぁ。」
『ルッスーリア?ちゃんとやってくれそうなのに。』
「それが…」
---「私が気持ちよ~く掻いてア・ゲ・ルvV」
「………あんな事言われたら身の毛がよだっちまってよぉ…」
『あら、そう。(笑)』
「わ、笑い事じゃねぇぞぉ!!そこはもうちょっと上だぁ!」
『あー、はいはい。』
「で、次はマーモンのトコに行ったんだぁ。」
『お金くれって言った?』
「あぁ、一応払った。金で解決するならって思ってなぁ。だが…………アイツ手が小さくて効かねぇんだよぉ!!!」
『あ、なるほど。』
その次、苦しみながら歩くアロちゃんの前に現れたのは、
ボスとモスカだった。
けど、
アロちゃんがボスに頼めるはずもなく、
そしてモスカはあの手(銃口になってる)で掻けるはずもなく。
「仕方なくレヴィのトコに行ったんだぁ。」
『今度こそちゃんとやってくれそうなのに…。』
「いいや!どういうワケかアイツは酷かったんだぁ!!何かこう…憎しみを感じる程痛かった!むしろ爪で抉られるような感じがしやがった!!」
『え…何で…?』
「それが分かれば苦労しねぇ…。」
…そっか。
「とにかく死ぬ程痛かったから、もうやめろって飛び出して来た。」
『んで、今度は……ベルか!』
「あぁ…何でベルに頼もうとしたか今では分からねぇ。自分が分からねぇ。」
『………何されたの?』
ベルの事だからかなり凄い悪戯か何かしたんだろうなぁ…。
「アイツ…ナイフでやりやがったんだぁ!!!」
『あ、もしかしてこの背中の傷……』
「さっきベルにやられたヤツだぜぇ…」
『アロちゃん……』
何て可哀想な…
ただ背中を掻いて欲しかっただけなのにね…。
『てゆーか、だったらあたしのトコにもっと早く来れば良かったのに。』
そう言ったら、アロちゃんはちょっと顔を赤くした。
『え?何?どしたの?』
「い、いや……檸檬は女だろーがぁ!!!」
声を大きくして何を言うかと思いきや。
『そんな事~、別にあたしは気にしないよ?背中掻くだけじゃん。』
ケタケタ笑うと、アロちゃんは更に赤くなって黙ってしまった。
『ってゆーかさぁ、刺され過ぎじゃない?』
「そ、そぉかぁ?」
数えてみると、背中だけで6カ所も刺されていた。
あとは足だの腕だの、
『あ、顔も。』
「うるせぇ!!」
暗殺部隊の隊員が虫にやられるってどうよ。
『アロちゃん、O型?』
「何で分かったんだぁ?」
『O型っておいしいんだって、血。』
「何だとぉ!!?」
『これからも刺されるかもね。人一倍。』
「ふざけんなぁ!叩っ切る!!」
とか言いつつ、
『あ、そこに一匹いるよ?』
「何ぃ!?ど、何処だぁ!!」
………見えてないし。
仕方ない、今回はアロちゃんに味方するか。
『…超五感……』
ビュッ、
パンッ!
『はい、一匹退治♪』
「あ…ありがとなぁ…///」
『いーえ♪』
にしても、これだけアロちゃんが刺されたって事は…
『他のみんなも刺されてんじゃないかなぁ?』
「そーかもなぁ…」
『ちょっと見てくるよ。アロちゃん、ここで避難しててもいいけど。』
「冗談じゃねぇ!虫ごとき怖がってられるかぁ!!」
ま、そー来るとは思ってたけど…
『大丈夫なの?』
「余裕だぜぇ!」
『ならいーけどさぁ。』
こうして、あたしとアロちゃんは屋敷の蚊を退治するべく部屋を出た。
『あ、マーモン!』
「ム、檸檬ちょうど良かった。」
『どしたの?』
「ウナク●ル持ってるかい?」
……遅かった…。
既に刺されちゃったんだ、マーモン…。
『確か部屋にあったなぁ…持ってくる!』
俊足を(無駄に)使って部屋からウナク●ルを取って来た。
『はいっ、マーモン。』
「ありがと檸檬。」
『アロちゃんもつける?しみるよ?』
「お、俺はいいぜぇ!」
逃げるように後退りするアロちゃんが、ちょっと笑えた。
と、そこに…
「檸檬、俺にも貸してー…」
『ベル!!』
ベルのホッペに赤い点が一つ。
『刺されたの!?ベルなら大丈夫だと思ったのに!』
「うん、それがさー…」
ベルはちょっと複雑そうに話し始めた。
「俺の頬に止まったんだよ、蚊が。勿論潰そうと思ったワケ。でもさ、王子が自分の頬叩くとかどーよって思って。つーか叩いたら虫の死体がくっつくじゃん。そんなの絶対ヤダし。」
『葛藤してる間に吸われちゃったんだ…』
「そゆ事ー。あーうざっ!王族の血を吸うとかマジありえねー。」
と、ここでマーモンがベルにウナク●ルを渡す。
「はい。」
「サンキュ。」
その横であたしは色々考えた。
思ったよりも被害が拡大してる…。
もしかしたらもう他のみんなも…
「あらっ!どしたのみんな、こんなトコで。」
『ルッスーリア!』
廊下の向こうから歩いて来たルッスーリアに、早速尋ねてみる。
『虫さされ、ある?』
「え?あぁ、私は大丈夫よ♪でも…今ボスに近づかない方がいいわ…。」
『ボス?』
「かゆくてかゆくてご立腹なのよ。」
えぇーーー!!?
ボスが刺されたの!?
「ボスは刺されたのにどーしてお前は大丈夫なんだよー。」
ベルが聞く。
するとルッスーリアは、
「だって私、全部叩き落としたからっvV」
って。
「ちぇ、ヘンタイにはデリカシーがねぇって事か。」
「んまぁ!失礼よベルちゃんっ!」
「てめーにだってねぇだろーがぁ!」
「は?王子がデリカシーないワケねーじゃん。繊細だから蚊を潰せなかったんだし。」
「そもそもスクアーロは蚊を捕まえる事すら出来なかったそうだね。」
「え、マジで?うわダッセー!」
「うるせぇ!かっさばくぞぉ!!」
『あーもーやめてっ!!』
言い合いを始めるみんなを一喝した。
『今の最大の敵は大量発生した蚊だよ!あたし達が仲間割れしちゃダメじゃんっ!』
「ム、そうだね。」
「ちぇ。」
「う"お"ぉい…」
「じゃぁ、一匹でも多く蚊を捕まえなくちゃね。」
『そーよ!そうすればボスだって刺されなくなるから、機嫌もちょっと直るはず!』
ようやく始動した“蚊を駆除しようプログラム”。
まずはノーマ●トを大量に設置する。
「檸檬ーっ、コンセント足りないんだけどどーすんのー?」
『はいっ、延長コード!』
「さっすが♪」
「檸檬、ここにもおいた方がいいかしら?」
『うん、おいといて。』
「う"お"ぉい、そう言えばレヴィはどーしたぁ!?」
『ホントだ、いないね。』
「あぁ、レヴィなら…」
ルッスーリアが思い出すように言った。
「“ボスの部屋には一匹たりとも蚊を入れん!”って言って警護してるわ。」
「ムム、さすがだね。」
「ホント、ムッツリだよなー。」
「それある意味一番楽な仕事じゃねーかぁ!!」
『でもアロちゃんには出来ないよね。』
「う、うるせぇ!!」
ひとまず、ノーマ●トを屋敷中に置いて一段落。
「じゃぁ私、買い出し行って来るわね。」
『ありがとルッスーリア!』
「売り切れてたらどーすんの?」
「周りを蹴り飛ばしてでも手に入れるわんvV」
何を買いに行くかと言うと、
ア●スジェット(蚊・蝿用)。
ベルみたいに自分で潰したくない人の為に、シューってヤツは必要だから。
とは言っても、イタリア中に蚊が大量発生してるから、入手するのは困難かもしれない。
ルッスーリアを見送って、あたし達は談話室で一休みし始めた。
「あ。」
『どしたの?ベル。』
「ボスの部屋…ノーマ●ト置いてなくね?」
間。
『そー言えば!!』
「ム…いくらレヴィが警護してるとは言え、マズいと思うよ。」
「だなぁ…ボスは窓開けてるかもしれねーし…」
と、その時だった。
「マルテーロ・ディ・フィアンマ!!!!」
ドガァァァァアアン!
…………もの凄い音がした。
『えっとー…』
「ヤバくね?」
「ムゥ…」
「う"お"ぉい…」
逆に蚊が可哀想になって来たかも。
『とりあえず確認しに行こう、レヴィの安否を。』
「ウム、レヴィが巻き添えを食らって死んだかもしれないね。」
「ボス怒ってんのかなー…」
「怒りがこっちに向かねぇ事を祈るぜぇ…」
行ってみると…
部屋の前でレヴィが死んでいました。
「マジで巻き添え食らってんね、うしし♪」
「笑い事じゃねーぞぉ!」
『ボス、いる…?』
ここで部屋に入ろうとする、勇者・檸檬。
するとドアがバンッと開いて。
「おい、ウナク●ル貸せ。」
ボスが出て来た。
『はい…どーぞ…………』
それを手の甲につけながら、ボスは言う。
「俺の部屋にも置け。」
『ノーマ●ト…?』
「あぁ。」
『分かった…。』
マーモンが余ってた一つをすかさずボスの部屋に置く。
「置いたよ、ボス。」
「あぁ。」
ボスは満足(?)したのか、部屋に戻ってドアを閉めた。
あたし達は、まるで嵐が過ぎ去った後のように安堵していた。
「にしても…」
『ん?』
マーモンがポツリと呟く。
「蚊一匹にあの技使うなんて、ボスは相当キレてたんだね…。」
『そう…だね……』
それから、ルッスーリアがア●スジェットを買って来て、ベルがそれを携帯した。
そしてノーマ●ト効果によって、屋敷の中にいる蚊はほとんど落ちて、退治された。
それでも、みんなの虫さされはすぐに消える事はなく。
「う"お"ぉい、檸檬…」
『またー?』
「かゆくて仕方ねーんだぁ!!」
『はいはい。』
あたしはそれから5日間くらいアロちゃんの背中を掻く係になって、
みんなにウナク●ルを貸して、
「檸檬、目立たないバンドエイドねぇ?」
『あるよ、はい。』
「うしし♪サンキュー。」
ホッペに赤い点がある事は、ベルの王子としてのプライドが許せないらしく、
そんなベルにバンドエイドを分けてあげたり、
『大丈夫?ご飯持って来たよ。』
「ぬ…すまんな……」
ボスの部屋の前で巻き添えを食らって重傷になってしまったレヴィにご飯を運んだり、
色々大変だった。
「檸檬、まるでヴァリアーのナースさんみたいねぇvV」
『あはは…』
にしても、蚊の大量発生でこんなにヴァリアーが混乱するなんて。
ちょっと意外だった。
そしてついにあたしのウナク●ルは、
その夏の間に底をついてしまったのだった。
「檸檬、ウナク●ルは?」
『ごめんねマーモン、こないだボスが最後の一滴まで使っちゃったみたいなの。』
「ム!」
『液体ム●ならあるけど、使う?』
「もろこしヘッドのウナク●ルが好きだったよ…」
『キ●カンもあるけど…』
「それはしみるからヤだよ。」