日常編
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「今日、誕生日会をやるんだぞ」
『リボーン、今日なんだぁー!…って、あれ??』
確か明日…ツナの誕生日じゃなかったっけ??
『ツナ!遅刻するよ!』
「檸檬、先に行っていいよ。俺、足遅いから!」
『何言ってんのよ!しょうがないなー!!』
檸檬はツナの手を取って走り出した。
ツナは少し赤くなる。
「(は、速い…!)」
足がもつれて転びそうになるツナ。
が、突然檸檬は急ブレーキをかけた。
「なっ!どしたの!?」
『隼人と武…』
見ると、獄寺と山本が取っ組み合いをしている。
「10代目!」
「ツナ!」
「ど、どーしたの?」
「いや…」
「何でもないぜ」
隼人と武が足早に去るのを見て、何か考え込むツナ。
『どしたの?』
「今日、みんな変なんだ」
『あぁ、それはねぇ……』
「みんな誕生日会の用意をしてるんだぞ」
「『リボーン!!』」
そんな言い方じゃきっと…
「嬉しそーだな」
「そ、そりゃぁな。(みんな俺の為に誕生会を開いてくれてるんだもん)」
やっぱり、勘違いした……
リボーンはコレを狙ってた、のかな…?
ツナに言おうとしたら、物凄く鋭い視線を投げ掛けられた。
……言うな、ってか。
そんなこんなで放課後、ツナより(リボーンより)早く帰り、クラッカーと一緒に待機する事になった檸檬。
沢田家のドアが開いた。
「「「「『誕生日、おめでとー!!!』」」」」
「え?」
「サンキュー」
「は!?」
ほーら、やっぱりがっかりしてる。
リボーンは満足そうに笑ってた。
何はともあれ、一緒に祝う事になったツナの誕生日。
やるのは勿論、ボンゴリアンバースデーパーティーで、そのルールを知ったツナがまた絶叫。
楽しーな、やっぱり。
こうして皆で、騒いでいられるのって。
『あ、隼人』
「何だよ、檸檬…」
『酷いね、大丈夫?』
隼人の体調は最悪で。
「ごっ、獄寺君!!」
「俺は10代目の誕生日覚えてましたよ…無念です」
バタッ
「今日これでおしまいーーー!!?」
その後、パーティーはきちんと進んでいった。
武はお寿司で80点。
ハルは自作スーツで85点。
ビアンキ姉さんはピザ生地投げ改め新技で90点。
ランボちゃんは…何あれ。
ともかく、ランボの棒(??)で1点…。
「次は檸檬だぞ」
『はーいっ!』
「え?檸檬もあるの!?」
『当然!どーぞ、リボーン』
檸檬は綺麗にラッピングされた箱を取り出した。
「開けるぞ」
『うん♪』
中には、リボーンの名前入りコーヒーカップが入っていた。
『このカップ、“ブレイクタイム”っていう喫茶店の株主優待カップなの。これを持って行けばコーヒーは全部、何杯でもタダだよ!』
「何それーっ!!どんだけ投資したんだよ!!」
『まぁ、その辺は置いといて。ってか、恭弥にも手伝ってもらったんだけど。だから2人分のプレゼント』
「マジで!?あの雲雀さんが!!?」
心の中で檸檬のすごさを実感したツナ達。
『ちなみに、リボーンの名前はあたしがビーズで装飾したの』
「サンキュー、檸檬。92点」
『ありがとう、リボーン』
「次はツナだぞ。棄権なら0点で殺すからな」
「そんな!出し物なんてないってばーっ!!」
ツナが銃を向けられたその時、
「10代目、俺と組みましょう!」
「獄寺君!」
ビアンキ姉さんがピザを焼きに行ったので、体調が回復した隼人。
「俺の出し物は手品です!」
ツナを入れた箱に剣を突き刺す、というアレの事だった。
けど、ホントにタネも仕掛けもなくて。
リボーンに死ぬ気弾を撃たれたツナは、無理矢理体をねじ曲げて剣を刺していった。
「いやぁぁぁっ!!」
「うぉっ!」
「さすがっス!」
「100点だぞ。」
だけど、死ぬ気タイム終了後…
「いででででで!!!いたーい!体が折れるぅ~~~~~!!」
ツナは病院送りになってしまった。
---
------
翌日。
『ツーナっ!誕生日おめでとう』
「檸檬!学校は??」
今は昼の2時。本当なら6時間目である。
『早退出来るように恭弥に頼んでおいたの。無理矢理だけど』
「そ、そう…(檸檬って、すげー!)」
『はい!ツナのバースデープレゼント!』
「えっ!あっ、ありがと!」
リボーンの時と同じく、檸檬はツナに綺麗に包装されたプレゼントを渡した。
「開けていい?」
『どうぞ♪』
「これって!」
『タオルハンカチだよ』
水色のタオルハンカチに、“27 VONGOLA FAMILY X” と、刺繍してあった。
「あ、ありがと、檸檬!!あの、この…27って、もしかして…」
『27ってゆーのは、ツナでーす!!』
「(やっぱりー!!)そういえば、檸檬の誕生日は?」
『えっ!?』
檸檬はおどおどし始めた。
『えっとね……、内緒!』
「はぁ!?何で??」
『不確かだし。それに……色々大変かもだし』
「どーゆー事?」
『とにかく内緒っ!じゃーねっ!』
檸檬は病室を出ていった。
「ど、どーしたんだよ……」
「何かあるな」
「リボーン!!」
「君も聞けなかったか」
「ひ、雲雀さん!?」
思わぬ客の登場に、びびるツナ。
「何で!?何時からそこに…??」
「僕も檸檬の誕生日は知らないんだ」
「雲雀さんにも話してないんですか!?」
驚いた。
雲雀さんは何でも知ってそうだったから。
「どんなに聞いても答えないし、調べても出てこないんだ」
「しょーがねぇ、イタリアの檸檬の知人に聞くぞ」
「知人!?それってまさか…」
「ツナ、今度のテスト、10番以内に入れよ」
「んなぁっ!?」
ツナに無茶苦茶な条件を出し、リボーンはディーノに電話をした。
その結果。
「明日~~~~!!!??」
「らしーぞ」
「ふぅん。でも、何で隠す必要があったの?」
雲雀が聞くと、リボーンは自信たっぷりに説明した。
「俺のバースデーが昨日、ツナが今日。さっき檸檬は“大変かも”って言ってたな。つまり……」
「俺達に迷惑かかると思って!!?」
ツナ、呆れる。
「檸檬らしいね。じゃあ僕は行くよ。明日、檸檬は授業に出ないから」
「えぇ~~っ!?サボらせる宣言!!?」
「またね、赤ん坊。礼を言っておくよ」
「じゃーな、雲雀」
その頃、病院の廊下のベンチに1人で座っている檸檬。
誕生日なんて、どうして祝われるか分からなかった。
だから、あたしのはどーでも良かった。
---
-------
翌日、あたしは応接室に呼び出された。
『失礼しまーす……えぇーっ!!?』
目の前にあったのは、ものすごい大きさ、高さのケーキ。
『何これ!?』
「お祝いだよ」
『恭弥!!』
「誕生日おめでとう、檸檬」
突然その言葉を言われて、驚く檸檬。
『な、何で知って…』
「昨日赤ん坊に教えてもらった」
リボーンってば…
『あの、ありがとう…』
その時の檸檬の笑顔は、何だかいつもと違うような気がした。
少し躊躇いが入っているような、いつもの無邪気さが欠けているような。
「嬉しく、ないの?」
僕がそう聞くと、檸檬は申し訳無さそうに肩をすぼめた。
『よく、分からなくて』
「何が?」
『どうして今日をお祝いするの?あたしが生まれたのは13年前であって、今日じゃない。生まれた瞬間じゃなくて、どうして今日を祝うの?』
「じゃあ昨日は、どうして草食動物を祝ったの?」
『大事な人が、生まれてくれた記念日だから……でも、あたしは…』
檸檬は、悩まし気に眉を下げる。
「…そんな事」
『そんな事って…!』
「今日を祝うのはね、周りのエゴ」
『エゴ?』
「生まれて来てくれた事への感謝。誕生日は望んで祝ってもらうわけじゃないから」
雲雀の言葉を聞き、ポーッとする檸檬。
「どしたの?ケーキ、食べないの?」
『恭弥、カッコいい…』
突如檸檬が放ったセリフに、雲雀は固まる。
それもお構い無しに、檸檬は雲雀に飛びついた。
『ありがとうっ!』
首がしまるくらいギュッと抱きつき、その頬にキスをする。
うん、これが、いつもの檸檬だ。
「もう1つ、プレゼントがあるんだ」
『何?』
ケーキを頬張りながら、檸檬は雲雀の方を向く。
「はい」
風紀委員の学ランだった。
『うわぁっ!すごい!』
「檸檬だけそのままは変だからね」
と言っても、実は檸檬に学ランを着せたいだけの雲雀だった…。
『あたし、明日からこれ着て来るっ!』
「そんなに嬉しい?」
『うん!だって、恭弥とお揃いなんだもん!あ、でも、上しか着れないや』
「何で?」
『あたしは身軽さが命だから。下はスカートの方がいいのよね』
「(そんな着方……まぁいいか。それはそれで可愛いし)」
『とにかくありがとう!ケーキも学ランもすごく嬉しい!!』
「それは良かった」
微笑む雲雀を見て、檸檬は思わず赤くなった。
『(やっぱ、王子様フェイス…)』
「何?」
『ううん!何でもない!』
その日檸檬は一日中、雲雀と共に応接室にいた。
=================
『ただいま帰りましたー』
「「「「お誕生日、おめでとー!!」」」」
『えぇっ!?みんな!!』
家に帰ると、ツナだけでなく、隼人と武、ハルとビアンキ姉さんまで、出迎えてくれた。
『なっ、何で!?』
「リボーンちゃんから聞きました!何で教えてくれなかったんですか!!」
「水くせーぞ」
「ったく、馬鹿か、おめーは!」(と言いつつ隼人は体調最悪)
「檸檬の誕生日、祝わないわけないでしょ?」
「ランボさんも!!」
「あの、ごめんね。どうしても祝いたくてさ、みんな呼んだんだ」
「誰も迷惑だなんて思っちゃいねーぞ」
『…………ぐすっ』
「「「「「え!?」」」」」
ぽろぽろと泣き出す檸檬。
『だ、黙っててごめんなさ………あ、ありがとっ…』
リボーンはニッと笑った。
「よっしゃ!じゃぁ、始めよーぜ!」
「はい!」
「ご、ち、そ!」
「五月蝿いわよ、アホ牛」
「(ゼーハー…)」
ぞろぞろとみんなは檸檬の部屋に行く。
「行こう、檸檬」
ツナが振り返って呼び掛ける。
『……うん!』
「順番にプレゼントを渡すぞ」
『わーっ!』
ハルは星の飾りがついたネックレス。
武は檸檬の好物が詰まったお寿司。
隼人は5色チョコレートの詰め合わせ(意外)。
ビアンキ姉さんは可愛いミニスカート。
(隼人に泣かされてバズーカを撃った)10年後のランボちゃんはターコイズが付いた髪留め。(凄い!)
ツナは大きな写真立て。
リボーンは…
「これだぞ」
『CD?』
「それは世界中のありとあらゆる音楽を集めたCDの5枚組だ。音楽のバリエーションが増えれば、戦いの動き方が豊富になるからな」
『わーっ!ありがとうっ!!』
流石リボーン!!わかってるなぁ♪
「檸檬のリュック~!」
『あ!ランボちゃん!!(もう戻ったんだ…)ダメ!』
ランボちゃんはあたしのリュックをひっくり返してしまった。
バサバサ…
ヒラヒラ…
「「「「札束ーーーーー!!!!???」」」」
あちゃー、バレちゃったよ。
話す時が来たみたいだね。
「檸檬!どこでこんな大金!!」
『アメリカで稼いでた時の賞金の一部なの』
「一部!!?これが一部!!?」
ツナは混乱している。
やっぱり最初に話すべきだったかな?
「檸檬、お前の生い立ち、話せるか?」
リボーンが言った。
『分かった。みんないるからね、今がいいよね』
あたしは話し始めた。
『あたし、日本人なんだけど、アメリカ生まれのアメリカ育ちなの』
「イタリアから来たんじゃ…」
『実は、イタリアに渡ったのはほんの半年ぐらい前なんだ。それまで、アメリカでずっと賞金稼ぎをやってたの』
「「賞金稼ぎ~!!?」」
ツナとハルが野蛮な言葉に反応する。
『物心付いた3歳頃から、あたしはストリートファイトの世界に入れられた。そこには、怖いお兄さんしかいなくてね、毎日傷を負うような生活を送っていたの』
「ストリートファイト??」
『直訳すると路上喧嘩。強いものは残り、弱いものは全てを奪われるって世界。あたしの親は親とも呼びたくないくらい最低な人たちでね、3歳のあたしをその世界に残したまま、ずっと遊んでたの。後で聞いた話じゃ、下ろすのも面倒臭くて嫌々産んだみたいよ』
「ひどいです…」
あたしはここで一呼吸置いた。
『6歳の時、父親に再会してね、あたしは尋ねてみたの。“どうしてこんな所に置いて行くの?”って。そしたらあの男、その問いには答えず、あたしに聞き返した。“痛いのは嫌か?”って』
檸檬の顔色が悪くなって行くのが、全員に分かった。
だが、話を止められるものもいなかった。
『勿論“嫌だ。”って答えた。そしたら、あいつはこう言った』
---「ならば強くなれ。誰にも負けないよう、強く」
『これが、あたしがあいつから習った、最初で最後の教訓。“護りたいモノを護る為には、強くなくてはいけない”』
キュッと握られる、檸檬の拳。
『あたしは頑張って強くなった。誰にも負けないくらい。子供のあたしがパワーで勝てるわけなかったから、他を磨いたの』
「他?」
『瞬発力、同体視力、反射神経、跳躍力…などなど。そして、人間を1発で倒す為の体のツボも勉強した』
「全部覚えてるのか?」
『うん。ってか今では、もう頭より体が先に動いてるなぁ、そのツボを目指して』
「マジで!?」
『10歳の時、あたしはストリートファイトの地区大会で優勝した。その時初めて賞金を貰ったの。その後、ある事に気が付いた』
「「ある事?」」
『人間は、自分のリズムに会わせて戦ってるって事。どんな人間にもリズムがある。そのテンポが早いか遅いかで強さが分かる。あと、転調したり出来る人も強い部類に入る』
「それを研究したんだな」
『もともとリズム感が良かったからね、戦い方を決めただけ。相手のリズムをつかんで、攻撃パターンを読む。攻撃を避け続けスタミナを削り、隙が出来たら一気に決める』
「それであの時………」
獄寺は、自分が檸檬と戦った時の事を思い出した。
---「何でだ…?」
---『早くもないし、遅くもない。相手にとってはちょうど良いリズムだよ。それじゃぁ、あたしには勝てないよ♪』
「そういう意味だったのか…」
『それで同じ年、ストリートファイトカリフォルニア州大会で優勝。全米大会に出たのはその翌年。初出場で優勝、翌年も優勝。ま、大会と言っても裏大会だから、結構影で働く組織の人たちが集まってたみたい』
「ひぃ~っ!!」
『2年連続優勝を決めた次の日、あたしの所にあの男がやって来てね、“お前はイタリア行き決定だ”なんて言い出した』
「その行き先が、ボンゴレファミリーだったのか」
『うん、あたしはすぐ了承した。稼いだ賞金を使いまくる親と離れたかった。そんな親にたくさんのお金を払って、ボンゴレ9代目があたしを引き取ったの』
「人身売買ですかーーー!??」
『悪く言えばね。でも、イタリアに行って良かったと思う。日本にも来れたし、みんなに会えたから。というワケで、そのお金は賞金の一部。残りはイタリアのバンクにあるの』
「たいへんだったのね、檸檬」
ビアンキ姉さんはあたしの頭を優しく撫でてくれた。
『暗い話しちゃって、ホントにごめん…』
「そんな事ないよ!檸檬の事が聞けて、俺達嬉しいからさ!」
「そーそー、人間、辛い事は信じてる仲間にしか言えねーからな!」
「辛い昔は忘れちゃって下さい!今は、ハル達が檸檬ちゃんの仲間なんですから!」
そう、この感じ。
あたしが、欲しかったもの。
こんなにも、こんなにもすぐ側にあったんだね…。
『ありがとう』
=================
おまけ
パーティー終了後。
片付け中。
「檸檬!」
『武、』
「ちゃんと話してくれたな。サンキュ」
『ううん、約束してからあんなに経っちゃって、遅過ぎだよね、ごめん』
「いんだよ、話してくれたんだからな」
武はあたしの頭を撫でてくれた。
『武』
「ん?」
『手、あったかいね』
思わず笑みがこぼれて、武を見上げるあたし。
武の顔は何だか赤く見えた。
「毎日楽しいのはさ、檸檬のおかげでもあるんだぜ」
『そうなの!?』
「まぁな」
そう言って武は行ってしまった。
言い逃げなんてずるい。
『何でココの人はみんな、カッコ良いのかなぁ…』
恭弥の言葉を思い出した。
---「祝うのはね、周りのエゴ。生まれて来てくれた事への感謝」
あたしはしばらくぼーっと突っ立っていた。
『リボーン、今日なんだぁー!…って、あれ??』
確か明日…ツナの誕生日じゃなかったっけ??
『ツナ!遅刻するよ!』
「檸檬、先に行っていいよ。俺、足遅いから!」
『何言ってんのよ!しょうがないなー!!』
檸檬はツナの手を取って走り出した。
ツナは少し赤くなる。
「(は、速い…!)」
足がもつれて転びそうになるツナ。
が、突然檸檬は急ブレーキをかけた。
「なっ!どしたの!?」
『隼人と武…』
見ると、獄寺と山本が取っ組み合いをしている。
「10代目!」
「ツナ!」
「ど、どーしたの?」
「いや…」
「何でもないぜ」
隼人と武が足早に去るのを見て、何か考え込むツナ。
『どしたの?』
「今日、みんな変なんだ」
『あぁ、それはねぇ……』
「みんな誕生日会の用意をしてるんだぞ」
「『リボーン!!』」
そんな言い方じゃきっと…
「嬉しそーだな」
「そ、そりゃぁな。(みんな俺の為に誕生会を開いてくれてるんだもん)」
やっぱり、勘違いした……
リボーンはコレを狙ってた、のかな…?
ツナに言おうとしたら、物凄く鋭い視線を投げ掛けられた。
……言うな、ってか。
そんなこんなで放課後、ツナより(リボーンより)早く帰り、クラッカーと一緒に待機する事になった檸檬。
沢田家のドアが開いた。
「「「「『誕生日、おめでとー!!!』」」」」
「え?」
「サンキュー」
「は!?」
ほーら、やっぱりがっかりしてる。
リボーンは満足そうに笑ってた。
何はともあれ、一緒に祝う事になったツナの誕生日。
やるのは勿論、ボンゴリアンバースデーパーティーで、そのルールを知ったツナがまた絶叫。
楽しーな、やっぱり。
こうして皆で、騒いでいられるのって。
『あ、隼人』
「何だよ、檸檬…」
『酷いね、大丈夫?』
隼人の体調は最悪で。
「ごっ、獄寺君!!」
「俺は10代目の誕生日覚えてましたよ…無念です」
バタッ
「今日これでおしまいーーー!!?」
その後、パーティーはきちんと進んでいった。
武はお寿司で80点。
ハルは自作スーツで85点。
ビアンキ姉さんはピザ生地投げ改め新技で90点。
ランボちゃんは…何あれ。
ともかく、ランボの棒(??)で1点…。
「次は檸檬だぞ」
『はーいっ!』
「え?檸檬もあるの!?」
『当然!どーぞ、リボーン』
檸檬は綺麗にラッピングされた箱を取り出した。
「開けるぞ」
『うん♪』
中には、リボーンの名前入りコーヒーカップが入っていた。
『このカップ、“ブレイクタイム”っていう喫茶店の株主優待カップなの。これを持って行けばコーヒーは全部、何杯でもタダだよ!』
「何それーっ!!どんだけ投資したんだよ!!」
『まぁ、その辺は置いといて。ってか、恭弥にも手伝ってもらったんだけど。だから2人分のプレゼント』
「マジで!?あの雲雀さんが!!?」
心の中で檸檬のすごさを実感したツナ達。
『ちなみに、リボーンの名前はあたしがビーズで装飾したの』
「サンキュー、檸檬。92点」
『ありがとう、リボーン』
「次はツナだぞ。棄権なら0点で殺すからな」
「そんな!出し物なんてないってばーっ!!」
ツナが銃を向けられたその時、
「10代目、俺と組みましょう!」
「獄寺君!」
ビアンキ姉さんがピザを焼きに行ったので、体調が回復した隼人。
「俺の出し物は手品です!」
ツナを入れた箱に剣を突き刺す、というアレの事だった。
けど、ホントにタネも仕掛けもなくて。
リボーンに死ぬ気弾を撃たれたツナは、無理矢理体をねじ曲げて剣を刺していった。
「いやぁぁぁっ!!」
「うぉっ!」
「さすがっス!」
「100点だぞ。」
だけど、死ぬ気タイム終了後…
「いででででで!!!いたーい!体が折れるぅ~~~~~!!」
ツナは病院送りになってしまった。
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翌日。
『ツーナっ!誕生日おめでとう』
「檸檬!学校は??」
今は昼の2時。本当なら6時間目である。
『早退出来るように恭弥に頼んでおいたの。無理矢理だけど』
「そ、そう…(檸檬って、すげー!)」
『はい!ツナのバースデープレゼント!』
「えっ!あっ、ありがと!」
リボーンの時と同じく、檸檬はツナに綺麗に包装されたプレゼントを渡した。
「開けていい?」
『どうぞ♪』
「これって!」
『タオルハンカチだよ』
水色のタオルハンカチに、“27 VONGOLA FAMILY X” と、刺繍してあった。
「あ、ありがと、檸檬!!あの、この…27って、もしかして…」
『27ってゆーのは、ツナでーす!!』
「(やっぱりー!!)そういえば、檸檬の誕生日は?」
『えっ!?』
檸檬はおどおどし始めた。
『えっとね……、内緒!』
「はぁ!?何で??」
『不確かだし。それに……色々大変かもだし』
「どーゆー事?」
『とにかく内緒っ!じゃーねっ!』
檸檬は病室を出ていった。
「ど、どーしたんだよ……」
「何かあるな」
「リボーン!!」
「君も聞けなかったか」
「ひ、雲雀さん!?」
思わぬ客の登場に、びびるツナ。
「何で!?何時からそこに…??」
「僕も檸檬の誕生日は知らないんだ」
「雲雀さんにも話してないんですか!?」
驚いた。
雲雀さんは何でも知ってそうだったから。
「どんなに聞いても答えないし、調べても出てこないんだ」
「しょーがねぇ、イタリアの檸檬の知人に聞くぞ」
「知人!?それってまさか…」
「ツナ、今度のテスト、10番以内に入れよ」
「んなぁっ!?」
ツナに無茶苦茶な条件を出し、リボーンはディーノに電話をした。
その結果。
「明日~~~~!!!??」
「らしーぞ」
「ふぅん。でも、何で隠す必要があったの?」
雲雀が聞くと、リボーンは自信たっぷりに説明した。
「俺のバースデーが昨日、ツナが今日。さっき檸檬は“大変かも”って言ってたな。つまり……」
「俺達に迷惑かかると思って!!?」
ツナ、呆れる。
「檸檬らしいね。じゃあ僕は行くよ。明日、檸檬は授業に出ないから」
「えぇ~~っ!?サボらせる宣言!!?」
「またね、赤ん坊。礼を言っておくよ」
「じゃーな、雲雀」
その頃、病院の廊下のベンチに1人で座っている檸檬。
誕生日なんて、どうして祝われるか分からなかった。
だから、あたしのはどーでも良かった。
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翌日、あたしは応接室に呼び出された。
『失礼しまーす……えぇーっ!!?』
目の前にあったのは、ものすごい大きさ、高さのケーキ。
『何これ!?』
「お祝いだよ」
『恭弥!!』
「誕生日おめでとう、檸檬」
突然その言葉を言われて、驚く檸檬。
『な、何で知って…』
「昨日赤ん坊に教えてもらった」
リボーンってば…
『あの、ありがとう…』
その時の檸檬の笑顔は、何だかいつもと違うような気がした。
少し躊躇いが入っているような、いつもの無邪気さが欠けているような。
「嬉しく、ないの?」
僕がそう聞くと、檸檬は申し訳無さそうに肩をすぼめた。
『よく、分からなくて』
「何が?」
『どうして今日をお祝いするの?あたしが生まれたのは13年前であって、今日じゃない。生まれた瞬間じゃなくて、どうして今日を祝うの?』
「じゃあ昨日は、どうして草食動物を祝ったの?」
『大事な人が、生まれてくれた記念日だから……でも、あたしは…』
檸檬は、悩まし気に眉を下げる。
「…そんな事」
『そんな事って…!』
「今日を祝うのはね、周りのエゴ」
『エゴ?』
「生まれて来てくれた事への感謝。誕生日は望んで祝ってもらうわけじゃないから」
雲雀の言葉を聞き、ポーッとする檸檬。
「どしたの?ケーキ、食べないの?」
『恭弥、カッコいい…』
突如檸檬が放ったセリフに、雲雀は固まる。
それもお構い無しに、檸檬は雲雀に飛びついた。
『ありがとうっ!』
首がしまるくらいギュッと抱きつき、その頬にキスをする。
うん、これが、いつもの檸檬だ。
「もう1つ、プレゼントがあるんだ」
『何?』
ケーキを頬張りながら、檸檬は雲雀の方を向く。
「はい」
風紀委員の学ランだった。
『うわぁっ!すごい!』
「檸檬だけそのままは変だからね」
と言っても、実は檸檬に学ランを着せたいだけの雲雀だった…。
『あたし、明日からこれ着て来るっ!』
「そんなに嬉しい?」
『うん!だって、恭弥とお揃いなんだもん!あ、でも、上しか着れないや』
「何で?」
『あたしは身軽さが命だから。下はスカートの方がいいのよね』
「(そんな着方……まぁいいか。それはそれで可愛いし)」
『とにかくありがとう!ケーキも学ランもすごく嬉しい!!』
「それは良かった」
微笑む雲雀を見て、檸檬は思わず赤くなった。
『(やっぱ、王子様フェイス…)』
「何?」
『ううん!何でもない!』
その日檸檬は一日中、雲雀と共に応接室にいた。
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『ただいま帰りましたー』
「「「「お誕生日、おめでとー!!」」」」
『えぇっ!?みんな!!』
家に帰ると、ツナだけでなく、隼人と武、ハルとビアンキ姉さんまで、出迎えてくれた。
『なっ、何で!?』
「リボーンちゃんから聞きました!何で教えてくれなかったんですか!!」
「水くせーぞ」
「ったく、馬鹿か、おめーは!」(と言いつつ隼人は体調最悪)
「檸檬の誕生日、祝わないわけないでしょ?」
「ランボさんも!!」
「あの、ごめんね。どうしても祝いたくてさ、みんな呼んだんだ」
「誰も迷惑だなんて思っちゃいねーぞ」
『…………ぐすっ』
「「「「「え!?」」」」」
ぽろぽろと泣き出す檸檬。
『だ、黙っててごめんなさ………あ、ありがとっ…』
リボーンはニッと笑った。
「よっしゃ!じゃぁ、始めよーぜ!」
「はい!」
「ご、ち、そ!」
「五月蝿いわよ、アホ牛」
「(ゼーハー…)」
ぞろぞろとみんなは檸檬の部屋に行く。
「行こう、檸檬」
ツナが振り返って呼び掛ける。
『……うん!』
「順番にプレゼントを渡すぞ」
『わーっ!』
ハルは星の飾りがついたネックレス。
武は檸檬の好物が詰まったお寿司。
隼人は5色チョコレートの詰め合わせ(意外)。
ビアンキ姉さんは可愛いミニスカート。
(隼人に泣かされてバズーカを撃った)10年後のランボちゃんはターコイズが付いた髪留め。(凄い!)
ツナは大きな写真立て。
リボーンは…
「これだぞ」
『CD?』
「それは世界中のありとあらゆる音楽を集めたCDの5枚組だ。音楽のバリエーションが増えれば、戦いの動き方が豊富になるからな」
『わーっ!ありがとうっ!!』
流石リボーン!!わかってるなぁ♪
「檸檬のリュック~!」
『あ!ランボちゃん!!(もう戻ったんだ…)ダメ!』
ランボちゃんはあたしのリュックをひっくり返してしまった。
バサバサ…
ヒラヒラ…
「「「「札束ーーーーー!!!!???」」」」
あちゃー、バレちゃったよ。
話す時が来たみたいだね。
「檸檬!どこでこんな大金!!」
『アメリカで稼いでた時の賞金の一部なの』
「一部!!?これが一部!!?」
ツナは混乱している。
やっぱり最初に話すべきだったかな?
「檸檬、お前の生い立ち、話せるか?」
リボーンが言った。
『分かった。みんないるからね、今がいいよね』
あたしは話し始めた。
『あたし、日本人なんだけど、アメリカ生まれのアメリカ育ちなの』
「イタリアから来たんじゃ…」
『実は、イタリアに渡ったのはほんの半年ぐらい前なんだ。それまで、アメリカでずっと賞金稼ぎをやってたの』
「「賞金稼ぎ~!!?」」
ツナとハルが野蛮な言葉に反応する。
『物心付いた3歳頃から、あたしはストリートファイトの世界に入れられた。そこには、怖いお兄さんしかいなくてね、毎日傷を負うような生活を送っていたの』
「ストリートファイト??」
『直訳すると路上喧嘩。強いものは残り、弱いものは全てを奪われるって世界。あたしの親は親とも呼びたくないくらい最低な人たちでね、3歳のあたしをその世界に残したまま、ずっと遊んでたの。後で聞いた話じゃ、下ろすのも面倒臭くて嫌々産んだみたいよ』
「ひどいです…」
あたしはここで一呼吸置いた。
『6歳の時、父親に再会してね、あたしは尋ねてみたの。“どうしてこんな所に置いて行くの?”って。そしたらあの男、その問いには答えず、あたしに聞き返した。“痛いのは嫌か?”って』
檸檬の顔色が悪くなって行くのが、全員に分かった。
だが、話を止められるものもいなかった。
『勿論“嫌だ。”って答えた。そしたら、あいつはこう言った』
---「ならば強くなれ。誰にも負けないよう、強く」
『これが、あたしがあいつから習った、最初で最後の教訓。“護りたいモノを護る為には、強くなくてはいけない”』
キュッと握られる、檸檬の拳。
『あたしは頑張って強くなった。誰にも負けないくらい。子供のあたしがパワーで勝てるわけなかったから、他を磨いたの』
「他?」
『瞬発力、同体視力、反射神経、跳躍力…などなど。そして、人間を1発で倒す為の体のツボも勉強した』
「全部覚えてるのか?」
『うん。ってか今では、もう頭より体が先に動いてるなぁ、そのツボを目指して』
「マジで!?」
『10歳の時、あたしはストリートファイトの地区大会で優勝した。その時初めて賞金を貰ったの。その後、ある事に気が付いた』
「「ある事?」」
『人間は、自分のリズムに会わせて戦ってるって事。どんな人間にもリズムがある。そのテンポが早いか遅いかで強さが分かる。あと、転調したり出来る人も強い部類に入る』
「それを研究したんだな」
『もともとリズム感が良かったからね、戦い方を決めただけ。相手のリズムをつかんで、攻撃パターンを読む。攻撃を避け続けスタミナを削り、隙が出来たら一気に決める』
「それであの時………」
獄寺は、自分が檸檬と戦った時の事を思い出した。
---「何でだ…?」
---『早くもないし、遅くもない。相手にとってはちょうど良いリズムだよ。それじゃぁ、あたしには勝てないよ♪』
「そういう意味だったのか…」
『それで同じ年、ストリートファイトカリフォルニア州大会で優勝。全米大会に出たのはその翌年。初出場で優勝、翌年も優勝。ま、大会と言っても裏大会だから、結構影で働く組織の人たちが集まってたみたい』
「ひぃ~っ!!」
『2年連続優勝を決めた次の日、あたしの所にあの男がやって来てね、“お前はイタリア行き決定だ”なんて言い出した』
「その行き先が、ボンゴレファミリーだったのか」
『うん、あたしはすぐ了承した。稼いだ賞金を使いまくる親と離れたかった。そんな親にたくさんのお金を払って、ボンゴレ9代目があたしを引き取ったの』
「人身売買ですかーーー!??」
『悪く言えばね。でも、イタリアに行って良かったと思う。日本にも来れたし、みんなに会えたから。というワケで、そのお金は賞金の一部。残りはイタリアのバンクにあるの』
「たいへんだったのね、檸檬」
ビアンキ姉さんはあたしの頭を優しく撫でてくれた。
『暗い話しちゃって、ホントにごめん…』
「そんな事ないよ!檸檬の事が聞けて、俺達嬉しいからさ!」
「そーそー、人間、辛い事は信じてる仲間にしか言えねーからな!」
「辛い昔は忘れちゃって下さい!今は、ハル達が檸檬ちゃんの仲間なんですから!」
そう、この感じ。
あたしが、欲しかったもの。
こんなにも、こんなにもすぐ側にあったんだね…。
『ありがとう』
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おまけ
パーティー終了後。
片付け中。
「檸檬!」
『武、』
「ちゃんと話してくれたな。サンキュ」
『ううん、約束してからあんなに経っちゃって、遅過ぎだよね、ごめん』
「いんだよ、話してくれたんだからな」
武はあたしの頭を撫でてくれた。
『武』
「ん?」
『手、あったかいね』
思わず笑みがこぼれて、武を見上げるあたし。
武の顔は何だか赤く見えた。
「毎日楽しいのはさ、檸檬のおかげでもあるんだぜ」
『そうなの!?』
「まぁな」
そう言って武は行ってしまった。
言い逃げなんてずるい。
『何でココの人はみんな、カッコ良いのかなぁ…』
恭弥の言葉を思い出した。
---「祝うのはね、周りのエゴ。生まれて来てくれた事への感謝」
あたしはしばらくぼーっと突っ立っていた。