未来編①
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『ん……』
「気付いたか、檸檬。」
目を開けたら、白い世界が広がっていた。
独特の薬の匂い。
ゆっくりと首を動かして、声がした方を見る。
『家光さん……オレガノ……』
「久しぶりね、檸檬。」
「もう平気か?」
『はい……だいぶ良くなりました……』
家光さんはあたしの隣のベッドに座ってて、オレガノはそのお見舞いに来てるみたいだった。
あたしは、点滴をうたれて寝かされていた。
『ここは…』
「イタリアだ。」
『そう、ですか……』
あたし、無理したんだっけ……
今までの出来事を反芻する。
そうだ、
あたし、
ヴァリアーの雲の守護者で………!
思い出した瞬間、あたしは飛び起きた。
『家光さん!ヴァリアーの皆はっ………!!』
「落ち着け、檸檬。」
『だってあたしは守護者でっ…処罰を受けるべきで……!!』
「ヴァリアーの雲の守護者は、ゴーラ・モスカだ。」
『え……?』
家光さんの言葉に、あたしは止まった。
『だ、だって…あたしは…恭弥と戦って……』
「ザンザスの部屋に、そんな勅命は無かった。」
『でも…』
「記録が無いんだ。あるのは、場にいた人物の記憶だけ。」
「それだけじゃ、証明にはならないのよ。」
『そん…な……』
あたしは震え出した。
確かにチェルベッロは、あたしを雲の守護者に認定した。
確かに勅命はあった。
なのに…どうして?
『ボスに…会えませんか?』
拳をぐっと握りしめて、家光さんに尋ねた。
「…………オレガノ。」
「はい。」
オレガノは家光さんに返事をすると、部屋番号を書いた紙をあたしに渡した。
「私は親方様についていなくちゃいけないから…。まぁ、檸檬だったら顔がきくでしょ?」
『オレガノ………ありがとう!』
ドアに手をかけた檸檬は、一回くるっと振り向く。
『家光さんも、ありがとうございます!』
「無理するなよ、檸檬。」
『はい!』
あたしは走り出した。ボスのいる部屋へと。
---
------
-----------
『あの…面会したいんですけど…』
「雨宮檸檬様!!どっ、どうぞ!!」
オレガノの言う通り、本当に顔がきいて吃驚した。
『あの…失礼します…』
通してもらった先は、薄暗い部屋だった。
ボスは、両手に拘束具を付けられて炎を出せる状態じゃなかった。
『ボス…』
「檸檬か…」
『ボス、どうして?』
「あ?」
いきなり聞いていいのか分からなかったけど、それ以外言う言葉が無かった。
『勅命は、何処に行ったの?』
---
-------
病室にて。
「親方様…本当に勅命は……」
「無かったよ。あったのは、ゴミ箱の中で黒塗りされ破かれ大部分が焦げてた、ただの巻物だけだった……。」
「まさか…」
「あぁそうさ、ザンザスは………」
---
------
「檸檬…罰を受けてぇのか?」
『だってあたし……ツナ達の敵になったんだもん……雲の守護者に…なったんだもんっ!』
肩で息をして、あたしは必死に訴える。
するとボスは、ゆっくりと口を開いて。
「檸檬…罰を受けたいと願う者への罰は、何だか分かるか?」
『え…?』
「それは、罰を与えない事だ。」
『ボス……』
「雲の守護者は、ゴーラ・モスカだ。」
どうしてそんな事言うの?
まるでもう、
仲間じゃないみたいに。
あたしはどんな罰でも受ける覚悟はあるのに…!
「笑ってろ、檸檬。」
『え……?』
「俺達がどんな処分を受けようとも、てめぇは笑ってろ。」
『でもっ……』
「てめぇの涙は……見飽きたんだよ……」
それは無理だよ、ボス。
たとえ、罰を与えないのがあたしにとって一番の罰だとしても、
やっぱり、みんなが処罰されるのは、
とってもとってもつらい事だから。
だから……
---
------
窓の外の晴れ渡った空を見つめながら、家光はオレガノに言った。
「ザンザスは、最後の最後で檸檬を助けたんだ………勅命を“消す”事でな…」
「親方様……」
それが、
檸檬にとって一番の罰だと知っていながら。
---
------
『ボスっ……!』
ぎゅって抱きついて、あたしは泣いた。
ただ、ボスには涙を見せないように、顔をうずめて。
「泣くんじゃねぇっつってんだろーが。」
『ごめん…ごめんなさい………ボス……ありがとう………』
それから頑張って笑って、ボスに言った。
『じゃぁ…またね!ボス!』
「……………あぁ。」
その後すぐに面会時間は終わって、あたしは隣の部屋に入った。
何となく、気配で分かってたから。
この部屋にいる“彼”がずっと、拘束されたままあたしについててくれた事。
「誰ー?」
『あ、あたし!檸檬!』
「檸檬!?」
部屋の奥からやって来たのは…
『ベル…』
「久しぶり、檸檬♪まぁ座ってよ。」
『うん……』
ベルはナイフを全部取られちゃったらしく、体がいつもより軽いって言ってた。
『ベル……付き添っててくれて、ありがとう。』
「んーん、王子が姫の側にいるのは当然じゃん♪」
そう言ってベルはいつもみたいに笑った。
元気になったみたいで、本当に良かった。
俺…マジで心配したんだから。
檸檬、聞こえてたよ。
あの時……檸檬は最後にアイツの名前を呼んでたね。
---『…きょ…や……』
多分、か細すぎて俺以外に聞こえなかっただろうけど。
「ねぇ、檸檬…」
『ん?』
「檸檬は…あのエース君が好き?」
『えっ……?』
少し赤くなった檸檬の顔を見て、
ほんのちょっと悔しくなった。
でも、ちゃんと聞きたいから。
少し黙った後、檸檬は頷いた。
「じゃぁ…大好き?」
『うん……』
「じゃぁさ……」
ホントは聞きたくないよ。
聞きたくないけど……
俺は檸檬が好きだから、
愛してるから、
檸檬の事を知りたいんだ。
「…………一番、好き?」
聞かなくったって分かるよ。
檸檬の真っ赤な顔見れば。
それに檸檬は今、迷ってる。
俺に言っていいのかなって思ってるんだよね?
檸檬は、すごく優しいお姫さまだから。
「檸檬、」
『え?』
「言っていいよ。」
俺がそう言うと、檸檬は驚いたように俺を見つめる。
檸檬が安心出来るように、俺はまた笑った。
『…いちばん……すき……』
あーあ、何だか気ぃ抜けちゃったよ。
エース君ずるいなー。
檸檬のこの言葉受け取るのが、俺だったらどんなにいいだろう。
俺の方が先に出会ったのになー…。
『ベル……ご、ごめ……』
「謝んなくていーよ。」
てか、謝罪なんていらないよ。
檸檬は悪くねーし。
自己中に選んだだけだよね?
俺が自己中に檸檬を姫だって言ったように。
「だって俺………」
エース君ばっかにいい思いはさせないよ。
俺の方が檸檬の事好きだし。
「…………諦めないもん♪」
『え……!?』
ちょっとした悪足掻き。
王子が姫を諦めるワケないじゃん。
だって好きだから。
この想いは、変わんないから。
『ベル……///』
「うししっ♪」
俺が笑うと、檸檬も笑った。
「雨宮様、そろそろ…」
『あ、はい!あの、じゃぁまたね!ベルっ!』
そっか、面会時間って限られてんだっけ。
「うん。………あ、ちょい待って。」
『え?』
立ち止まった檸檬の頬に、キスをした。
『べ…ベルっ!!?』
「ししっ♪またねー、檸檬♪」
ちょっと赤くなった檸檬は、すぐに笑顔になって。
『うんっ!』
手を振りながら、部屋を出て行った。
---『またね!ベルっ!』
“またね”………
その言葉が、どんなに嬉しかったか。
「ありがと、檸檬。」
---
------
自分の病室に戻ったら、オレガノが言った。
「檸檬!ちょうどいいトコに!」
『え?』
「手紙よ。」
家光さんにも手紙が来ていた。
ツナからだった。
封筒を開けてみると、寄せ書きみたいなモノが入っていた。
---
檸檬へ
怪我は治った?みんな心配してるから早く帰って来てね。 (ツナ)
帰って来なかったら許さねぇからな!! (獄寺)
檸檬が帰って来たら、うちでパーティーやろうな!待ってるぜ! (山本)
檸檬ちゃん、早く良くなってね。お兄ちゃんも心配してたから…帰って来るの待ってます。 (京子)
イタリアから帰って来たら、お買い物行きましょうね!! (三浦ハル)
骸様も心配してました。ゆっくり治して下さい。 (クローム)
『みんな……』
泣きそうになるあたしに、オレガノが言った。
「檸檬、裏に何か書いてあるわよ?」
『裏…?』
色紙の裏を見てみると…
“待ってる (雲雀)”
頑張って止めていた涙が、溢れた。
『うっ……ひぐっ…………うわああああんっ!!!』
「檸檬……」
『…帰りたいっ…帰りたいよぉ………』
もう帰れないと知ってるのに、
気持ちが揺らいで動かされて。
色紙にシミを作ったのは、
紛れもなくあたしの涙。
涙が止まらないあたしに、家光さんが言った。
「帰っていいぞ。」
『え………?』
「心配するな、ヴァリアーにだって分かってる。ツナ達が勝った場合、檸檬がまた家庭教師補佐になる事はな。」
『それでも…』
「沢田家のチャイムを押してみろ。ツナの奴、目ん玉落とすんじゃないか?」
そう言って笑う家光さん。
けどあたしには罪悪感が溜まっていて。
「試しに、帰りなさい。ね?」
オレガノにも諭されて。
あたしなんかが帰っていいのかなって思ったけど、無理だったらこっちに戻ればいい。
そう考えて、小さく頷いた。
---
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-------------
2日後、日本。
ピーンポーン、
「「はーい!」」
パタパタと玄関まで走るのは、ランボとリボーンを抱えたツナ。
適当にスリッパを履いて、扉を開く。
「え……あ………!!」
途端に見開かれるツナの目。
リボーンは緩く口角を上げて、ランボは嬉しそうに笑った。
「檸檬っ!!!」
『ただいま……』
少しだけ申し訳なさそうに立っていたのは、
スーツケースを持った檸檬だった。
ほんの少しだけ瞳を潤ませたツナは、すぐに笑顔になる。
「お、お帰り檸檬!!あ、入っていいよ。檸檬の部屋もそのままだし…」
『あ…うん。』
少しぎこちなく動く檸檬に、リボーンが言う。
「檸檬、」
『え?』
「待ってたぞ。」
『リボーン………あたし……』
「余計な心配すんな。帰って来ちゃいけねーワケねーだろ。」
目を見開いた檸檬は、リボーンをぎゅっと抱きしめた。
『ありがと……ありがとリボーン………』
それから、武のお父さんがまた店を貸して下さって、あたしの為にパーティーを開いてくれた。
どうして受け入れてくれるんだろう、とか
あたしは裏切ったのにいいのかな、とか
考えてるうちに暗い表情になって、
その度に皆が笑いかけてくれて、
嬉しかった。
すごくすごく嬉しかった。
次の次の日から、学校に行った。
放課後に恭弥に会いに行った。
ドアをノックすると、聞きたかった声が。
「誰?」
『にっ、2年A組、雨宮檸檬です!』
返事がない。
『あの…入ってもいい、ですか……?』
それでも返事がなくて立ち往生してると、
バンッ、
突然ドアが開いた。
「檸檬っ………!!」
『恭弥、あの……』
言葉は遮られて、強く強く抱き締められた。
同時に、あたしの目からは涙が溢れて。
『恭弥……ごめ…ごめんね……』
「いい…もう何も言わなくていいから……」
あったかくて、
優しくて、
この感触が大好きで、
あたしは恭弥を抱きしめ返した。
『た…ただいまっ………!』
「お帰り…お帰り檸檬……」
それから、恭弥とずっと話をして、だんだんと安心して来た。
『恭弥、』
「なに?」
『……大好き♪』
「…僕も好きだよ。」
何だか照れくさくて、ちょっと笑えた。
その時、
ピロリロリ、
あたしの携帯が鳴る。
『はい、もしもし…』
---「檸檬!?俺だよ、ツナ!今バジル君とランチアさんが帰るのを見送りに行くトコなんだけど…」
『あっ、あたしも見送りする!!』
ってゆーか、しなくちゃ!!
お世話になったし。
またいつ会えるかわかんないし!
『恭弥、あの…』
電話を切ってから、あたしは恐る恐る恭弥の顔を覗き込む。
「ダメ。」
『おっ、お願い!!』
手を合わせて頼んで、恭弥をちらりと見る。
盛大なため息をついてから、恭弥は言った。
「…戻って来てよね。」
『うんっ!勿論♪』
大きく頷いて、駆け出そうとした。
その時、
グイッ、
左腕を引っ張られて後ろを向かされる。
『えっ?』
みるみるうちに、恭弥の顔が近付いて。
だけどまるで、スローモーションのようで。
気がついた時には、
唇に柔らかい感触が伝わっていた。
『(わ……!)』
恭弥の長い睫が凄く近くに見えて、
驚きっ放しで目が閉じられなくて、
唇が離れた時に漸く、
あたしは真っ赤になった。
『なっ……!///』
右手で唇を押さえるあたしに、恭弥は笑みを見せる。
「……行ってらっしゃい。」
恥ずかしくてフリーズしてるけど、すぐに我に返る。
『いっ……行って来ます♪///』
この時あたしは、
それからしばらく恭弥に会えなくなるなんて、
微塵も思っていなかった。
消えたリボーン
『(俊足っ!)』
走って行くと、ツナとリボーン、バジルとランチアさんを見つけた。
『みんなー!』
「檸檬っ!!」
「檸檬殿!!」
合流してから、いろんな話をした。
ランチアさんは、骸に呼ばれたワケじゃなくて妙な虫の知らせを受け取ったらしい。
骸を許すつもりは無くても、ツナの助けになったならいいと言っていた。
そしてまた、殺してしまったファミリーの家を回って償うそうだ。
「そうだ、こいつをお前にやろう。」
「え?」
ランチアさんは、ツナにボスの形見のリングを渡した。
それからバジルもツナに何かを渡して、2人は去って行った。
途中から飛び入り参加したランボちゃんも一緒に、皆で手を振る。
「気を付けて!」
「バイブゥ~!!」
『またねーっ!』
そんなあたし達を物陰から誰かが見ていたなんて、誰も気がつかなかった。
「ところで、バジルから何貰ったんだ?」
「え……そう言えば…」
右手に握らされたモノを見て、ツナは少し青ざめる。
「死ぬ気丸だ!!」
『あら。』
ランボちゃんはアメ玉だって勘違いしてる。
それでも、これからボスとして狙われるツナには必需品だってリボーンは言った。
「ダメだランボ!死ぬ気って死ぬ程つらいんだぞ!!」
「それに死ぬ程うざくなるぞ。」
リボーンの言葉に反応するランボちゃん。
ヘンテコな挑発をしたせいか、リボーンはレオンで蛇鋼球を作って攻撃した。
攻撃が当たって地面に落ちるランボちゃん。
「が…ま…うあぁあぁ!!!」
『ら、ランボちゃん!』
あたしはランボちゃんを立たせて砂利を払う。
ツナも退院直後のランボをいたわっていた。
「リボーンのバカ者が~~!!タレマユのクセに!!」
『タレ…マユ…?』
それはそれで可愛いと思うんだけど…
って、
「『10年バズーカ!!』」
あたしとツナが止めようとする後ろで、リボーンは地面の欠片を持ち上げた。
そして、それをランボちゃんに思いっきり投げ付ける。
「星になれ。」
「ぐぴゃっ!!!」
同時に放たれるバズーカ。
それでも、石が当たった為方向が定まっていない。
「な!」
上に上がったバズーカの弾は、
「と…飛んで来たぞ!リボーン!!」
真直ぐツナとリボーンの方へ落ちて行く。
『危ない!避けてっ!』
「やべーな、動けねぇ。」
「『え?』」
次の瞬間、
リボーンに10年バズーカが直撃した。
立ち篭める煙。
見慣れた煙だけど、緊張の種類が全然違う。
「まさか…」
『ここに来るのは…』
「『10年後のリボーン!!?』」
ツナと顔を見合わせて、それから息を飲む。
次第に晴れて行く煙。
目を見開いて、
息はほとんど止めて、
あたし達はただ立っていた。
のに、
「あれ…っ?」
『誰も…いない……?』
何だろう、
どうして……?
あたしがぐるぐる考えていると、考え終わったツナが帰りだした。
『ちょっ…ツナ!?』
「よくわかんないけど、5分後には戻って来るかと思って。」
『でも…』
ここに今誰もいないって事は…
10年後のリボーンって…
まさか…
まさか…
考えるだけで怖くなって来た。
でも、ツナの言う通り5分して戻って来るのは確実。
だったら、戻って来たリボーンに聞けばいいかな…
そしたらきっと、10年後のリボーンを消させない為に今から何か出来るかもしれないし!
ちょっと心配だったけど、あたしもとりあえずツナの家に戻る事にした。
---
------
-------------
翌日。
『おはよう、ツナ。』
「あ、檸檬。おはよう…」
浮かない顔をしているツナに、あたしは首をかしげる。
『え!?リボーンが帰って来ない!?』
「うん…」
もしかして、やっぱりとんでもない事が起きてるんじゃ………
ううん!
もしかしたら今この瞬間戻って来てるかも!
『探そう!』
「うん!」
ツナと二手に別れて探す事にした。
---
------
「何処で道草くってんだよ…」
リボーンを探すツナの前に現れたのは、
「何で獄寺さんもツナさん家行くんですか!?」
「通販で買った生八っ橋をお渡しするんだ!!」
「通販はお土産じゃないです!!」
言い合いをしながら歩いて来る獄寺とハルだった。
「あ!ツナさん!」
「10代目!!」
「並盛駅に地下商店街作る計画聞きました?今日イベントやるんです!皆で行きませんか?」
ハルが勧誘するものの、ツナの困り顔は直らず。
「リボーンが……ちょっと…あって…」
「はひ?」
「リボーンさんがどーかしたんスか?」
とりあえず2人にも説明をするツナ。
しかし、ハルは10年バズーカの存在を知らなかった。
一方獄寺は、少し考えてから青ざめて。
「ま…待って下さい10代目…それってつまり10年後にリボーンさんは存在してないって事なんじゃ………」
「え…?」
とにかく、手分けしてリボーンを探す事になった。
檸檬も探してくれてるし、見つかるよな…
きっと、大丈夫だよな…
にしても、檸檬も獄寺君もどうしてあんなに青ざめて…
色々悩んでいた俺に、ある考えが浮かんだ。
「大人ランボに聞けば、何か分かるかも!!」
急いで家に戻って、ランボに言った。
「10年バズーカで大人になってくれよ!」
「何言ってんのツナ。ランボさんは10年バズーカなんてシ・リ・マ・セ・ン。」
「頭から出てるじゃないか!」
ランボの頭の中から無理矢理引っぱりだして、バズーカを使わせようとする。
だけどランボも往生際が悪い。
「そう言わずに…頼む!!」
「イヤだ!!」
と、その時。
カチッ、
「あら?」
「い"!?」
ドガン!
聞き慣れた爆発音がして、
それでも何か違和感があったのは、
きっと、
当たったのがランボじゃなかったから。
うそ…
じゃぁ俺…
10年後に……!!?
次の瞬間、物凄い勢いで引っ張られて、
「わああ!!」
そのままどっかに落っこちた。
「いて!!」
始めに刺激されたのは、嗅覚だった。
木…じゃなくて花の匂いがするだけで、辺りは真っ暗。
手を伸ばしてみると天井が動いて、
蓋らしきモノがあるんだって分かった。
「よっ、」
それはとても重い金属の蓋で、Xの文字が真ん中に装飾されている。
そして、その金属の箱が置かれているのは森の中だった。
「もしかしてここ10年後…?未来の自分と入れ替わったって事は、10年後の俺が此処にいたんだ……」
それにしては、随分と見覚えのない場所だ。
よく見てみると、入っている黒い箱は棺桶らしいという事が分かった。
「……………って…え"ーーー!!?何で俺棺桶にーーー!!?」
「誰だ!!」
「ひいっ!」
急に違う人の声が聞こえて、俺は思わず震え上がった。
直後に聞こえる、小さい枝を踏む音。
そして…
「あ……貴方は…!」
俺の前に現れたのは、
何処か知っていて、
それでも何処かが違う、
そんな人だった----
---
------
--------------
『ツナ…?』
道の真ん中で、ふと振り返る。
イヤな予感が増したのは、
多分気のせいじゃない……。
「気付いたか、檸檬。」
目を開けたら、白い世界が広がっていた。
独特の薬の匂い。
ゆっくりと首を動かして、声がした方を見る。
『家光さん……オレガノ……』
「久しぶりね、檸檬。」
「もう平気か?」
『はい……だいぶ良くなりました……』
家光さんはあたしの隣のベッドに座ってて、オレガノはそのお見舞いに来てるみたいだった。
あたしは、点滴をうたれて寝かされていた。
『ここは…』
「イタリアだ。」
『そう、ですか……』
あたし、無理したんだっけ……
今までの出来事を反芻する。
そうだ、
あたし、
ヴァリアーの雲の守護者で………!
思い出した瞬間、あたしは飛び起きた。
『家光さん!ヴァリアーの皆はっ………!!』
「落ち着け、檸檬。」
『だってあたしは守護者でっ…処罰を受けるべきで……!!』
「ヴァリアーの雲の守護者は、ゴーラ・モスカだ。」
『え……?』
家光さんの言葉に、あたしは止まった。
『だ、だって…あたしは…恭弥と戦って……』
「ザンザスの部屋に、そんな勅命は無かった。」
『でも…』
「記録が無いんだ。あるのは、場にいた人物の記憶だけ。」
「それだけじゃ、証明にはならないのよ。」
『そん…な……』
あたしは震え出した。
確かにチェルベッロは、あたしを雲の守護者に認定した。
確かに勅命はあった。
なのに…どうして?
『ボスに…会えませんか?』
拳をぐっと握りしめて、家光さんに尋ねた。
「…………オレガノ。」
「はい。」
オレガノは家光さんに返事をすると、部屋番号を書いた紙をあたしに渡した。
「私は親方様についていなくちゃいけないから…。まぁ、檸檬だったら顔がきくでしょ?」
『オレガノ………ありがとう!』
ドアに手をかけた檸檬は、一回くるっと振り向く。
『家光さんも、ありがとうございます!』
「無理するなよ、檸檬。」
『はい!』
あたしは走り出した。ボスのいる部屋へと。
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『あの…面会したいんですけど…』
「雨宮檸檬様!!どっ、どうぞ!!」
オレガノの言う通り、本当に顔がきいて吃驚した。
『あの…失礼します…』
通してもらった先は、薄暗い部屋だった。
ボスは、両手に拘束具を付けられて炎を出せる状態じゃなかった。
『ボス…』
「檸檬か…」
『ボス、どうして?』
「あ?」
いきなり聞いていいのか分からなかったけど、それ以外言う言葉が無かった。
『勅命は、何処に行ったの?』
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病室にて。
「親方様…本当に勅命は……」
「無かったよ。あったのは、ゴミ箱の中で黒塗りされ破かれ大部分が焦げてた、ただの巻物だけだった……。」
「まさか…」
「あぁそうさ、ザンザスは………」
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「檸檬…罰を受けてぇのか?」
『だってあたし……ツナ達の敵になったんだもん……雲の守護者に…なったんだもんっ!』
肩で息をして、あたしは必死に訴える。
するとボスは、ゆっくりと口を開いて。
「檸檬…罰を受けたいと願う者への罰は、何だか分かるか?」
『え…?』
「それは、罰を与えない事だ。」
『ボス……』
「雲の守護者は、ゴーラ・モスカだ。」
どうしてそんな事言うの?
まるでもう、
仲間じゃないみたいに。
あたしはどんな罰でも受ける覚悟はあるのに…!
「笑ってろ、檸檬。」
『え……?』
「俺達がどんな処分を受けようとも、てめぇは笑ってろ。」
『でもっ……』
「てめぇの涙は……見飽きたんだよ……」
それは無理だよ、ボス。
たとえ、罰を与えないのがあたしにとって一番の罰だとしても、
やっぱり、みんなが処罰されるのは、
とってもとってもつらい事だから。
だから……
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窓の外の晴れ渡った空を見つめながら、家光はオレガノに言った。
「ザンザスは、最後の最後で檸檬を助けたんだ………勅命を“消す”事でな…」
「親方様……」
それが、
檸檬にとって一番の罰だと知っていながら。
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『ボスっ……!』
ぎゅって抱きついて、あたしは泣いた。
ただ、ボスには涙を見せないように、顔をうずめて。
「泣くんじゃねぇっつってんだろーが。」
『ごめん…ごめんなさい………ボス……ありがとう………』
それから頑張って笑って、ボスに言った。
『じゃぁ…またね!ボス!』
「……………あぁ。」
その後すぐに面会時間は終わって、あたしは隣の部屋に入った。
何となく、気配で分かってたから。
この部屋にいる“彼”がずっと、拘束されたままあたしについててくれた事。
「誰ー?」
『あ、あたし!檸檬!』
「檸檬!?」
部屋の奥からやって来たのは…
『ベル…』
「久しぶり、檸檬♪まぁ座ってよ。」
『うん……』
ベルはナイフを全部取られちゃったらしく、体がいつもより軽いって言ってた。
『ベル……付き添っててくれて、ありがとう。』
「んーん、王子が姫の側にいるのは当然じゃん♪」
そう言ってベルはいつもみたいに笑った。
元気になったみたいで、本当に良かった。
俺…マジで心配したんだから。
檸檬、聞こえてたよ。
あの時……檸檬は最後にアイツの名前を呼んでたね。
---『…きょ…や……』
多分、か細すぎて俺以外に聞こえなかっただろうけど。
「ねぇ、檸檬…」
『ん?』
「檸檬は…あのエース君が好き?」
『えっ……?』
少し赤くなった檸檬の顔を見て、
ほんのちょっと悔しくなった。
でも、ちゃんと聞きたいから。
少し黙った後、檸檬は頷いた。
「じゃぁ…大好き?」
『うん……』
「じゃぁさ……」
ホントは聞きたくないよ。
聞きたくないけど……
俺は檸檬が好きだから、
愛してるから、
檸檬の事を知りたいんだ。
「…………一番、好き?」
聞かなくったって分かるよ。
檸檬の真っ赤な顔見れば。
それに檸檬は今、迷ってる。
俺に言っていいのかなって思ってるんだよね?
檸檬は、すごく優しいお姫さまだから。
「檸檬、」
『え?』
「言っていいよ。」
俺がそう言うと、檸檬は驚いたように俺を見つめる。
檸檬が安心出来るように、俺はまた笑った。
『…いちばん……すき……』
あーあ、何だか気ぃ抜けちゃったよ。
エース君ずるいなー。
檸檬のこの言葉受け取るのが、俺だったらどんなにいいだろう。
俺の方が先に出会ったのになー…。
『ベル……ご、ごめ……』
「謝んなくていーよ。」
てか、謝罪なんていらないよ。
檸檬は悪くねーし。
自己中に選んだだけだよね?
俺が自己中に檸檬を姫だって言ったように。
「だって俺………」
エース君ばっかにいい思いはさせないよ。
俺の方が檸檬の事好きだし。
「…………諦めないもん♪」
『え……!?』
ちょっとした悪足掻き。
王子が姫を諦めるワケないじゃん。
だって好きだから。
この想いは、変わんないから。
『ベル……///』
「うししっ♪」
俺が笑うと、檸檬も笑った。
「雨宮様、そろそろ…」
『あ、はい!あの、じゃぁまたね!ベルっ!』
そっか、面会時間って限られてんだっけ。
「うん。………あ、ちょい待って。」
『え?』
立ち止まった檸檬の頬に、キスをした。
『べ…ベルっ!!?』
「ししっ♪またねー、檸檬♪」
ちょっと赤くなった檸檬は、すぐに笑顔になって。
『うんっ!』
手を振りながら、部屋を出て行った。
---『またね!ベルっ!』
“またね”………
その言葉が、どんなに嬉しかったか。
「ありがと、檸檬。」
---
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自分の病室に戻ったら、オレガノが言った。
「檸檬!ちょうどいいトコに!」
『え?』
「手紙よ。」
家光さんにも手紙が来ていた。
ツナからだった。
封筒を開けてみると、寄せ書きみたいなモノが入っていた。
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檸檬へ
怪我は治った?みんな心配してるから早く帰って来てね。 (ツナ)
帰って来なかったら許さねぇからな!! (獄寺)
檸檬が帰って来たら、うちでパーティーやろうな!待ってるぜ! (山本)
檸檬ちゃん、早く良くなってね。お兄ちゃんも心配してたから…帰って来るの待ってます。 (京子)
イタリアから帰って来たら、お買い物行きましょうね!! (三浦ハル)
骸様も心配してました。ゆっくり治して下さい。 (クローム)
『みんな……』
泣きそうになるあたしに、オレガノが言った。
「檸檬、裏に何か書いてあるわよ?」
『裏…?』
色紙の裏を見てみると…
“待ってる (雲雀)”
頑張って止めていた涙が、溢れた。
『うっ……ひぐっ…………うわああああんっ!!!』
「檸檬……」
『…帰りたいっ…帰りたいよぉ………』
もう帰れないと知ってるのに、
気持ちが揺らいで動かされて。
色紙にシミを作ったのは、
紛れもなくあたしの涙。
涙が止まらないあたしに、家光さんが言った。
「帰っていいぞ。」
『え………?』
「心配するな、ヴァリアーにだって分かってる。ツナ達が勝った場合、檸檬がまた家庭教師補佐になる事はな。」
『それでも…』
「沢田家のチャイムを押してみろ。ツナの奴、目ん玉落とすんじゃないか?」
そう言って笑う家光さん。
けどあたしには罪悪感が溜まっていて。
「試しに、帰りなさい。ね?」
オレガノにも諭されて。
あたしなんかが帰っていいのかなって思ったけど、無理だったらこっちに戻ればいい。
そう考えて、小さく頷いた。
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2日後、日本。
ピーンポーン、
「「はーい!」」
パタパタと玄関まで走るのは、ランボとリボーンを抱えたツナ。
適当にスリッパを履いて、扉を開く。
「え……あ………!!」
途端に見開かれるツナの目。
リボーンは緩く口角を上げて、ランボは嬉しそうに笑った。
「檸檬っ!!!」
『ただいま……』
少しだけ申し訳なさそうに立っていたのは、
スーツケースを持った檸檬だった。
ほんの少しだけ瞳を潤ませたツナは、すぐに笑顔になる。
「お、お帰り檸檬!!あ、入っていいよ。檸檬の部屋もそのままだし…」
『あ…うん。』
少しぎこちなく動く檸檬に、リボーンが言う。
「檸檬、」
『え?』
「待ってたぞ。」
『リボーン………あたし……』
「余計な心配すんな。帰って来ちゃいけねーワケねーだろ。」
目を見開いた檸檬は、リボーンをぎゅっと抱きしめた。
『ありがと……ありがとリボーン………』
それから、武のお父さんがまた店を貸して下さって、あたしの為にパーティーを開いてくれた。
どうして受け入れてくれるんだろう、とか
あたしは裏切ったのにいいのかな、とか
考えてるうちに暗い表情になって、
その度に皆が笑いかけてくれて、
嬉しかった。
すごくすごく嬉しかった。
次の次の日から、学校に行った。
放課後に恭弥に会いに行った。
ドアをノックすると、聞きたかった声が。
「誰?」
『にっ、2年A組、雨宮檸檬です!』
返事がない。
『あの…入ってもいい、ですか……?』
それでも返事がなくて立ち往生してると、
バンッ、
突然ドアが開いた。
「檸檬っ………!!」
『恭弥、あの……』
言葉は遮られて、強く強く抱き締められた。
同時に、あたしの目からは涙が溢れて。
『恭弥……ごめ…ごめんね……』
「いい…もう何も言わなくていいから……」
あったかくて、
優しくて、
この感触が大好きで、
あたしは恭弥を抱きしめ返した。
『た…ただいまっ………!』
「お帰り…お帰り檸檬……」
それから、恭弥とずっと話をして、だんだんと安心して来た。
『恭弥、』
「なに?」
『……大好き♪』
「…僕も好きだよ。」
何だか照れくさくて、ちょっと笑えた。
その時、
ピロリロリ、
あたしの携帯が鳴る。
『はい、もしもし…』
---「檸檬!?俺だよ、ツナ!今バジル君とランチアさんが帰るのを見送りに行くトコなんだけど…」
『あっ、あたしも見送りする!!』
ってゆーか、しなくちゃ!!
お世話になったし。
またいつ会えるかわかんないし!
『恭弥、あの…』
電話を切ってから、あたしは恐る恐る恭弥の顔を覗き込む。
「ダメ。」
『おっ、お願い!!』
手を合わせて頼んで、恭弥をちらりと見る。
盛大なため息をついてから、恭弥は言った。
「…戻って来てよね。」
『うんっ!勿論♪』
大きく頷いて、駆け出そうとした。
その時、
グイッ、
左腕を引っ張られて後ろを向かされる。
『えっ?』
みるみるうちに、恭弥の顔が近付いて。
だけどまるで、スローモーションのようで。
気がついた時には、
唇に柔らかい感触が伝わっていた。
『(わ……!)』
恭弥の長い睫が凄く近くに見えて、
驚きっ放しで目が閉じられなくて、
唇が離れた時に漸く、
あたしは真っ赤になった。
『なっ……!///』
右手で唇を押さえるあたしに、恭弥は笑みを見せる。
「……行ってらっしゃい。」
恥ずかしくてフリーズしてるけど、すぐに我に返る。
『いっ……行って来ます♪///』
この時あたしは、
それからしばらく恭弥に会えなくなるなんて、
微塵も思っていなかった。
消えたリボーン
『(俊足っ!)』
走って行くと、ツナとリボーン、バジルとランチアさんを見つけた。
『みんなー!』
「檸檬っ!!」
「檸檬殿!!」
合流してから、いろんな話をした。
ランチアさんは、骸に呼ばれたワケじゃなくて妙な虫の知らせを受け取ったらしい。
骸を許すつもりは無くても、ツナの助けになったならいいと言っていた。
そしてまた、殺してしまったファミリーの家を回って償うそうだ。
「そうだ、こいつをお前にやろう。」
「え?」
ランチアさんは、ツナにボスの形見のリングを渡した。
それからバジルもツナに何かを渡して、2人は去って行った。
途中から飛び入り参加したランボちゃんも一緒に、皆で手を振る。
「気を付けて!」
「バイブゥ~!!」
『またねーっ!』
そんなあたし達を物陰から誰かが見ていたなんて、誰も気がつかなかった。
「ところで、バジルから何貰ったんだ?」
「え……そう言えば…」
右手に握らされたモノを見て、ツナは少し青ざめる。
「死ぬ気丸だ!!」
『あら。』
ランボちゃんはアメ玉だって勘違いしてる。
それでも、これからボスとして狙われるツナには必需品だってリボーンは言った。
「ダメだランボ!死ぬ気って死ぬ程つらいんだぞ!!」
「それに死ぬ程うざくなるぞ。」
リボーンの言葉に反応するランボちゃん。
ヘンテコな挑発をしたせいか、リボーンはレオンで蛇鋼球を作って攻撃した。
攻撃が当たって地面に落ちるランボちゃん。
「が…ま…うあぁあぁ!!!」
『ら、ランボちゃん!』
あたしはランボちゃんを立たせて砂利を払う。
ツナも退院直後のランボをいたわっていた。
「リボーンのバカ者が~~!!タレマユのクセに!!」
『タレ…マユ…?』
それはそれで可愛いと思うんだけど…
って、
「『10年バズーカ!!』」
あたしとツナが止めようとする後ろで、リボーンは地面の欠片を持ち上げた。
そして、それをランボちゃんに思いっきり投げ付ける。
「星になれ。」
「ぐぴゃっ!!!」
同時に放たれるバズーカ。
それでも、石が当たった為方向が定まっていない。
「な!」
上に上がったバズーカの弾は、
「と…飛んで来たぞ!リボーン!!」
真直ぐツナとリボーンの方へ落ちて行く。
『危ない!避けてっ!』
「やべーな、動けねぇ。」
「『え?』」
次の瞬間、
リボーンに10年バズーカが直撃した。
立ち篭める煙。
見慣れた煙だけど、緊張の種類が全然違う。
「まさか…」
『ここに来るのは…』
「『10年後のリボーン!!?』」
ツナと顔を見合わせて、それから息を飲む。
次第に晴れて行く煙。
目を見開いて、
息はほとんど止めて、
あたし達はただ立っていた。
のに、
「あれ…っ?」
『誰も…いない……?』
何だろう、
どうして……?
あたしがぐるぐる考えていると、考え終わったツナが帰りだした。
『ちょっ…ツナ!?』
「よくわかんないけど、5分後には戻って来るかと思って。」
『でも…』
ここに今誰もいないって事は…
10年後のリボーンって…
まさか…
まさか…
考えるだけで怖くなって来た。
でも、ツナの言う通り5分して戻って来るのは確実。
だったら、戻って来たリボーンに聞けばいいかな…
そしたらきっと、10年後のリボーンを消させない為に今から何か出来るかもしれないし!
ちょっと心配だったけど、あたしもとりあえずツナの家に戻る事にした。
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翌日。
『おはよう、ツナ。』
「あ、檸檬。おはよう…」
浮かない顔をしているツナに、あたしは首をかしげる。
『え!?リボーンが帰って来ない!?』
「うん…」
もしかして、やっぱりとんでもない事が起きてるんじゃ………
ううん!
もしかしたら今この瞬間戻って来てるかも!
『探そう!』
「うん!」
ツナと二手に別れて探す事にした。
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「何処で道草くってんだよ…」
リボーンを探すツナの前に現れたのは、
「何で獄寺さんもツナさん家行くんですか!?」
「通販で買った生八っ橋をお渡しするんだ!!」
「通販はお土産じゃないです!!」
言い合いをしながら歩いて来る獄寺とハルだった。
「あ!ツナさん!」
「10代目!!」
「並盛駅に地下商店街作る計画聞きました?今日イベントやるんです!皆で行きませんか?」
ハルが勧誘するものの、ツナの困り顔は直らず。
「リボーンが……ちょっと…あって…」
「はひ?」
「リボーンさんがどーかしたんスか?」
とりあえず2人にも説明をするツナ。
しかし、ハルは10年バズーカの存在を知らなかった。
一方獄寺は、少し考えてから青ざめて。
「ま…待って下さい10代目…それってつまり10年後にリボーンさんは存在してないって事なんじゃ………」
「え…?」
とにかく、手分けしてリボーンを探す事になった。
檸檬も探してくれてるし、見つかるよな…
きっと、大丈夫だよな…
にしても、檸檬も獄寺君もどうしてあんなに青ざめて…
色々悩んでいた俺に、ある考えが浮かんだ。
「大人ランボに聞けば、何か分かるかも!!」
急いで家に戻って、ランボに言った。
「10年バズーカで大人になってくれよ!」
「何言ってんのツナ。ランボさんは10年バズーカなんてシ・リ・マ・セ・ン。」
「頭から出てるじゃないか!」
ランボの頭の中から無理矢理引っぱりだして、バズーカを使わせようとする。
だけどランボも往生際が悪い。
「そう言わずに…頼む!!」
「イヤだ!!」
と、その時。
カチッ、
「あら?」
「い"!?」
ドガン!
聞き慣れた爆発音がして、
それでも何か違和感があったのは、
きっと、
当たったのがランボじゃなかったから。
うそ…
じゃぁ俺…
10年後に……!!?
次の瞬間、物凄い勢いで引っ張られて、
「わああ!!」
そのままどっかに落っこちた。
「いて!!」
始めに刺激されたのは、嗅覚だった。
木…じゃなくて花の匂いがするだけで、辺りは真っ暗。
手を伸ばしてみると天井が動いて、
蓋らしきモノがあるんだって分かった。
「よっ、」
それはとても重い金属の蓋で、Xの文字が真ん中に装飾されている。
そして、その金属の箱が置かれているのは森の中だった。
「もしかしてここ10年後…?未来の自分と入れ替わったって事は、10年後の俺が此処にいたんだ……」
それにしては、随分と見覚えのない場所だ。
よく見てみると、入っている黒い箱は棺桶らしいという事が分かった。
「……………って…え"ーーー!!?何で俺棺桶にーーー!!?」
「誰だ!!」
「ひいっ!」
急に違う人の声が聞こえて、俺は思わず震え上がった。
直後に聞こえる、小さい枝を踏む音。
そして…
「あ……貴方は…!」
俺の前に現れたのは、
何処か知っていて、
それでも何処かが違う、
そんな人だった----
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『ツナ…?』
道の真ん中で、ふと振り返る。
イヤな予感が増したのは、
多分気のせいじゃない……。