ヴァリアー編
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ヴァリアーの隊員が吹っ飛ばされる。
それを見つめるあたし達の表情は、まさしく驚愕。
そんな中、髑髏が呟いた。
「あの人……ずっと骸様が話しかけてた…」
「取り違えるなよ、ボンゴレ。俺はお前を助けに来たのではない。」
本当に久しぶりに耳にした彼の声。
「礼を言いに来た。」
「ランチアさん!!」
あぁ、
あの人はランチアさんって言うんだ…
やっと、
やっと本当の名前を知る事が出来た………
犬ちゃんと千種も驚いて、ヴァリアーのみんなも驚いた。
「ランチア…あのランチアが何故……」
「あいつ、何者?」
体調最悪なあたしを抱えつつ、ベルが疑問を投げかける。
すると、アロちゃんの声が聞こえて来た。
「北イタリア最強と恐れられた…ファミリー惨殺事件のランチア。」
「あいつ…あんな強ぇんらっけ?」
「強いよ。」
骸に憑依されてないから、ちゃんとした強さを発揮出来るらしい。
そしたら、ベルはいつもみたいに笑って。
「ししし…そー来たか……そんじゃぁ…」
『だ、ダメ…!』
「とっとと済まそっと♪」
掴んでいた袖が、離れていって。
同時にナイフが放たれる。
『ツナ………!』
キキキキン!
「おっと、そーはいかねーぜ。」
「山本!」
武が剣で弾いてくれた。
その様子を見たマーモンは、
「ムム…こうなってくると……」
『(あ……!)』
地面から突如、火柱が湧き起こる。
「ムギャ!」
見ると、トライデントをしっかり握りしめた髑髏が。
「逃がさない。」
直後に聞こえるのは、鎖が垂れ下がる音。
「ねぇ、」
武の斜め後ろに立つのは、
「決着つけようよ。あと、檸檬返してよ。」
『(恭弥………)』
反対方向からは、
「いかせんぞ。」
拳を構えた了平さんが。
隼人はツナを心配して駆け寄った。
その包囲網のような状況に、ついに2人も…
「ダメだこりゃ。」
「ウム……ボス、ここまでのようだ…」
『…ごめん…なさい……』
あたし達の言葉を聞いて、ボスは言う。
「役立たずのカス共が…くそ!ちくしょう!」
ごめん、
ごめんなさい、
護れなくてごめんなさい…
「てめーら全員!!!呪い殺してやる!!!」
叫びの後に聞こえるのは、やっぱりつらそうな声で。
ツナが複雑な表情をしてるのが分かった。
『ボス……………………うっ…!!』
「檸檬!!?」
苦しくなって、あたしは手で口を抑えた。
手の平に付着したのは、真っ赤な血。
「檸檬っ…!」
『あら…こりゃぁマズイかもねぇ……』
へにゃりと笑うあたしを、ベルは更に強く抱き寄せた。
多分、細胞が壊れて体内に血が溢れてるんだろうな……。
「リングの秘密を知っていたら…ザンザスはボスの座を諦めていたと思うかぁ?」
アロちゃんがディーノに問いかけるのが聞こえた。
ディーノは少し目を細めて答える。
「……どうかな…」
「諦めるわきゃねぇ!!!より怒りを燃やし、掟ごとぶっ壊したはずだぁ!!」
アロちゃんはそこまで大きな声で言って、少しだけ声を小さく低くした。
「これでガキ共はこちらの世界の人間だ。いずれ後悔するだろう、この戦いで死んでいた方が良かったとな。」
『(アロちゃん……)』
そんな中、今度はチェルベッロがボスに近付く。
「ザンザス様……あなたを失格とし、ボンゴレリングを没収します。」
「チェル…ベロ…」
ボスは小さい声で何か言う。
「おま…え達の……望み通りだ……予言が当たり……満足か……」
「お言葉ですが………これは我々の望みでも予言でもありません。」
傷付いたボスの頬にそっと触れるチェルベッロ。
「全ては決まっていた事、あなたは役割を終えたのです。」
「…………………タヌ…キ…が……」
ボスは、つらそうに目を閉じた。
「お疲れ様でした。」
「それでは、リング争奪戦を終了し、全ての結果を発表します。」
途端に輝く、並盛側のメンバーの表情。
「ザンザス様の失格により、大空戦の勝者は沢田綱吉氏…」
「よって次期ボンゴレの後継者となるのは、沢田綱吉氏とその守護者6名です。」
みんなの穏やかな表情が見える。
あたしは、どうなるんだろうなぁ…
「檸檬様、」
チェルベッロの1人が、あたしに近寄る。
すると、ベルがまた腕に力を込めた。
『……ベル、』
「檸檬、危ないって!喋らない方が…」
『ちょっと…だから………ね…?』
あたしが目を合わせると、チェルベッロは言った。
「檸檬様には、引き続き沢田氏の家庭教師補佐をやって頂きます。」
『ん………了解……♪』
でもさ、こんな状態で出来るかな。
……無理かも。
『うっ……!』
「檸檬!!」
直後にまた、咳が出て血が出て来る。
「よくやったな、これで帰れるぞ。」
遠くでリボーンの声が聞こえた。
「……みんな………」
お守りを握りしめたツナは、そのまま気を失って、隼人と武が駆け寄るのが見えた。
パーティー
その日、母さんの話によると俺もリボーンも熟睡したようだった。
朝目覚めると、すっごく賑やかな音が耳に入る。
「(そっか…今日は休みか…)」
そんな事を考えながら下に降りると…
「世話になっているぞ。」
「ランチアさん!!」
ランボ、イーピン、フゥ太と遊んでいるランチアさんがいた。
「き、昨日はありがとうございました!っていうかどーして…」
「その話は後でな。」
で、リボーン曰く今日は山本ん家でパーティーが行なわれるらしい。
ランボの退院祝いだそうだ。
「(それはそうと…)」
俺は辺りを見回す。
何か違和感があったんだ。
平和なはずなのに、いつもと何かが違うような…
「檸檬ならいねーぞ。」
「え!!?」
そうだ、檸檬がいないんだ。
いつもならランボとかと遊んでるはずなのに…
「檸檬、どーしたの…?」
俺が尋ねると、リボーンは一瞬深刻そうな顔をして。
「イタリアに帰った。」
とだけ言った。
よく分からないけど、リボーンの表情が“それ以上聞くな”って言ってるのが分かった。
---
------
-----------
「こんばんは…」
「へいらっしゃい!ツナ君御一行!!」
扉を開けたその先には…
「ツナ君!」
「ツナさん!」
「10代目!!」
「みんな!」
驚く俺に、獄寺君が言った。
「表向きはアホ牛の退院祝いスけど、間違いなく今日は祝勝会スから!リング争奪戦の!!」
「え…いや……」
「やりましたね!」
そういう獄寺君の指には嵐のボンゴレリング。
「だな!」
「うむ。」
山本とお兄さんも雨と晴のリングを俺に見せてくれた。
「雲雀とクロームにもいってるはずだぞ。ほれ、お前のだ。」
言いながら大空のリングを差し出すリボーン。
俺は思いっきり拒否する。
「それ燃えるから!!」
「燃えねーぞ。ザンザスを溶かして以来、大人しいもんだ。それにお前、10代目になるのは俺だって言ったじゃねーか。」
「言ってないって!俺はザンザスに10代目にさせないって言ったの!!」
反論する俺に、ディーノさんが言った。
「9代目は無事だったんだ。今すぐお前が10代目になるワケじゃないぜ。」
「いや、だからって…」
「あんなチビもやる気なのにか?」
ディーノさんの視線の先には、“ゴミ箱に落ちてた”と言ってリングを見せびらかすランボ。
「(うそつけー!!)」
「アホ牛の奴、シメてやろーか!!」
「まーまー、ランボも頑張ったじゃねーか!」
そこに、
「聞いたよツナ君!相撲大会勝ったんでしょ?」
「きょ、京子ちゃん!」
「そのお祝いもしようね。」
「あ……ありがとう………そうだ……!お守り、ちゃんと………///」
俺が言おうとすると、ビアンキが遮った。
「デレデレしてる暇があったら食べなさい。」
「何故にポイズンクッキングーーー!!」
叫ぶ俺に、ハルがふと尋ねた。
「ツナさん、檸檬ちゃんは?」
「あ、あぁ、檸檬は今、イタリアに帰ってるんだ。」
「え?」
「どーしてですか?」
更に尋ねる京子ちゃんとハルに、リボーンが答えた。
「ちょっとした用事だぞ。」
「残念ですー…」
---
------
-------------
ツナが気を失った後。
上半身をベルに抱き起こされている檸檬。
その顔は青ざめていて、痙攣した体と止まらない発作に襲われている。
「檸檬…」
『負け…ちゃったね……』
力なく笑う檸檬の頭を、ベルは少し自分に押し付ける。
「…そだね……」
『ごめ…んね……あの………約束……』
「いーから、もう無理して喋っちゃダメだよ。目も閉じてていーから……」
『ベル…』
ダメなの。
だってあたし、ここで目を閉じたら…
「ねぇ、」
一番聞きたかった声がして、あたしは首を動かす。
もう、ぼやけて滲んで朦朧とした世界の中に、
黒い髪と少し派手な腕章が映る。
『…きょ…や……』
あぁ…もう声が出ない。
「檸檬を、返しなよ。」
貴方の声は聞こえるのに、
もう、あたしの声は届かない。
この想いは、伝えられない。
これはきっと、嘘をついた罰だね。
---「あいつが好きなの?」
---『うん、好き。』
ごめんなさい。
ごめんなさい。
好きなの。
誰よりも、貴方が。
恭弥……側に居ていい?
ずっとずっと、一緒に居ていい?
手を繋いでもいい?
好きになっても………いい?
伝えたい、
伝えられない。
想いじゃなくて、
涙が溢れ。
手を伸ばしたい、
動かない。
体が全部、
言う事聞かない。
貴方との思い出が、隅から隅まで脳を埋め尽くして。
『(あ…前兆だ……)』
まるで、機械の電源が落ちるように、
あたしの意識は飛んで、
目の前は、
真っ暗になった。
「檸檬!!?」
金髪の天才が急に焦ったような声を出して、
僕は檸檬に駆け寄ろうとした。
だけど…
「待て、雲雀。」
赤ん坊が僕を止める。
同時に、金髪の天才も言った。
「日本じゃ治せないよ。」
「……どうして。」
「俺、一回だけこの状態の檸檬見た事あるけどさ、イタリアのボンゴレ本部でしか治せないんだよね。」
何それ…
無理するなって言ったのに、
どうして檸檬は無理するの?
まるで檸檬は生命力を完全に失ったみたいに目を閉じていた。
檸檬…
僕は檸檬に護ってもらいたかったんじゃない。
檸檬を守りたかったんだ。
ぐっと拳を握りしめて、檸檬に向かって歩き出す。
だけど、またすぐ邪魔が入る。
「お待ち下さい。ベルフェゴールの言う通りです。」
「檸檬様は、直ちにボンゴレ本部に搬送致します。」
僕と檸檬の間に立つ、審判の女。
ふと見ると、赤ん坊も深刻そうな顔をしていた。
「僕も行く。」
「やめろ雲雀。」
どうして皆で僕を止めるの?
僕は、
檸檬に触れる事すら許されないの?
僕は…
誰よりも檸檬を愛してるのに……
どうして届かないの?
僕はただ、
どんな檸檬でもいい…
一緒に居たいんだ。
隣に居たいんだ。
目覚めた檸檬の視界に入る、
一番最初の人でありたいんだ。
「お前はお前で傷を治せ。檸檬は帰って来ねぇワケじゃねーんだ。」
「しし…それはどーかな。」
赤ん坊の言葉に、金髪の天才が反応した。
「檸檬はヴァリアーの雲の守護者だぜ?俺らが勝っても負けても、一緒にイタリア行きなんだよ。」
「…………っ!!」
「バイバイ、エース君♪」
僕は何も言い返せず、ヘリの離陸を見ていた。
「ねぇ、赤ん坊……」
「何だ。」
「檸檬は…帰って来るの?」
負けたから、処分を受けるんじゃないの……?
「帰らねぇワケねぇ。」
赤ん坊はキリリと言い返したけど、僕にはその理由が分からなかったし、不安にもなった。
ねぇ檸檬…
帰って来てね………
僕はずっと、
「ずっと、待ってる。」
---
------
------------
檸檬の事は後でリボーンに詳しく聞くとして、
皆相変わらずハチャメチャだった。
昨日までの戦いが、本当に嘘みたいだ。
ザンザス達の処分は、父さんと9代目で話し合うって聞いた。
そして俺は………
「何で父さんに手紙書かなくちゃなんねーんだよ!!」
「作文の練習だぞ。俺が家庭教師だって忘れたのか?それに家光の奴、入院先で“奈々奈々”うるせーらしいからな。」
「じゃぁ母さんに書かせろよ!!」
入院って言えば…
「なぁリボーン、檸檬はいつ帰って来るんだよ?」
俺が問いかけると、リボーンは途端に深刻な顔つきになった。
「あと数日は…戻れねぇだろーな…」
「な!どうして!?」
「今回の戦いで、細胞の内部までボロボロになっちまったんだ。本部の医療でも難しいくらいにな。」
「そ、そんな………」
俺が気絶した後、そんな事に………
「それに、檸檬はヴァリアー側の雲の守護者だったんだ。普通に考えて、何の処分も無しに戻って来れるなんて事はねぇ。」
「あ、あれはヴァリアーが勝手に………!」
「でも、勅命があるんだ。」
「え…?」
「マフィアの世界において、勅命の重要性は高いからな。」
そこまで聞いた俺が耐えきれずに俯くと、リボーンは言った。
「心配なら、檸檬にも手紙書いておけ。」
「え?」
「争奪戦中に溜まった宿題と両立出来るならの話だがな。」
「そ、そんなんで…いいの?」
俺が聞き返すと、リボーンはニッと笑って。
「最近アイツ、涙もろいからな。手紙送れば充分だろ。」
「涙もろい?」
「あぁ………お前達が変えたんだぞ。お前達がいたから、檸檬は抱えてきた心の痛みを克服しつつあるんだ。」
言われてみれば、檸檬が涙を自分で止めるのを見るのが減った気がする。
根拠はないけど、きっと戻って来てくれるような気がした。
「書くよ!俺。」
「そーか。けど宿題が先な。」
「え"………」
少し顔を引きつらせると、リボーンは俺の腕をひねりながら言うんだ。
「文句あるのか?」
「いででで!!ギブギブ!!!」
そして、凄く嬉しそうな顔で付け加える。
「また俺との地獄の日々に逆戻りだな。」
「自分で言うな!」
この時俺は、
こんな騒々しい日々がずっと続くと思ってた…
まさか、
「リボーン!!何処だよ!!」
こんな事に…
「何処に行っちゃったんだよ!!リボーン!!」
リボーンがこの世からいなくなる日が来るなんて…。
それを見つめるあたし達の表情は、まさしく驚愕。
そんな中、髑髏が呟いた。
「あの人……ずっと骸様が話しかけてた…」
「取り違えるなよ、ボンゴレ。俺はお前を助けに来たのではない。」
本当に久しぶりに耳にした彼の声。
「礼を言いに来た。」
「ランチアさん!!」
あぁ、
あの人はランチアさんって言うんだ…
やっと、
やっと本当の名前を知る事が出来た………
犬ちゃんと千種も驚いて、ヴァリアーのみんなも驚いた。
「ランチア…あのランチアが何故……」
「あいつ、何者?」
体調最悪なあたしを抱えつつ、ベルが疑問を投げかける。
すると、アロちゃんの声が聞こえて来た。
「北イタリア最強と恐れられた…ファミリー惨殺事件のランチア。」
「あいつ…あんな強ぇんらっけ?」
「強いよ。」
骸に憑依されてないから、ちゃんとした強さを発揮出来るらしい。
そしたら、ベルはいつもみたいに笑って。
「ししし…そー来たか……そんじゃぁ…」
『だ、ダメ…!』
「とっとと済まそっと♪」
掴んでいた袖が、離れていって。
同時にナイフが放たれる。
『ツナ………!』
キキキキン!
「おっと、そーはいかねーぜ。」
「山本!」
武が剣で弾いてくれた。
その様子を見たマーモンは、
「ムム…こうなってくると……」
『(あ……!)』
地面から突如、火柱が湧き起こる。
「ムギャ!」
見ると、トライデントをしっかり握りしめた髑髏が。
「逃がさない。」
直後に聞こえるのは、鎖が垂れ下がる音。
「ねぇ、」
武の斜め後ろに立つのは、
「決着つけようよ。あと、檸檬返してよ。」
『(恭弥………)』
反対方向からは、
「いかせんぞ。」
拳を構えた了平さんが。
隼人はツナを心配して駆け寄った。
その包囲網のような状況に、ついに2人も…
「ダメだこりゃ。」
「ウム……ボス、ここまでのようだ…」
『…ごめん…なさい……』
あたし達の言葉を聞いて、ボスは言う。
「役立たずのカス共が…くそ!ちくしょう!」
ごめん、
ごめんなさい、
護れなくてごめんなさい…
「てめーら全員!!!呪い殺してやる!!!」
叫びの後に聞こえるのは、やっぱりつらそうな声で。
ツナが複雑な表情をしてるのが分かった。
『ボス……………………うっ…!!』
「檸檬!!?」
苦しくなって、あたしは手で口を抑えた。
手の平に付着したのは、真っ赤な血。
「檸檬っ…!」
『あら…こりゃぁマズイかもねぇ……』
へにゃりと笑うあたしを、ベルは更に強く抱き寄せた。
多分、細胞が壊れて体内に血が溢れてるんだろうな……。
「リングの秘密を知っていたら…ザンザスはボスの座を諦めていたと思うかぁ?」
アロちゃんがディーノに問いかけるのが聞こえた。
ディーノは少し目を細めて答える。
「……どうかな…」
「諦めるわきゃねぇ!!!より怒りを燃やし、掟ごとぶっ壊したはずだぁ!!」
アロちゃんはそこまで大きな声で言って、少しだけ声を小さく低くした。
「これでガキ共はこちらの世界の人間だ。いずれ後悔するだろう、この戦いで死んでいた方が良かったとな。」
『(アロちゃん……)』
そんな中、今度はチェルベッロがボスに近付く。
「ザンザス様……あなたを失格とし、ボンゴレリングを没収します。」
「チェル…ベロ…」
ボスは小さい声で何か言う。
「おま…え達の……望み通りだ……予言が当たり……満足か……」
「お言葉ですが………これは我々の望みでも予言でもありません。」
傷付いたボスの頬にそっと触れるチェルベッロ。
「全ては決まっていた事、あなたは役割を終えたのです。」
「…………………タヌ…キ…が……」
ボスは、つらそうに目を閉じた。
「お疲れ様でした。」
「それでは、リング争奪戦を終了し、全ての結果を発表します。」
途端に輝く、並盛側のメンバーの表情。
「ザンザス様の失格により、大空戦の勝者は沢田綱吉氏…」
「よって次期ボンゴレの後継者となるのは、沢田綱吉氏とその守護者6名です。」
みんなの穏やかな表情が見える。
あたしは、どうなるんだろうなぁ…
「檸檬様、」
チェルベッロの1人が、あたしに近寄る。
すると、ベルがまた腕に力を込めた。
『……ベル、』
「檸檬、危ないって!喋らない方が…」
『ちょっと…だから………ね…?』
あたしが目を合わせると、チェルベッロは言った。
「檸檬様には、引き続き沢田氏の家庭教師補佐をやって頂きます。」
『ん………了解……♪』
でもさ、こんな状態で出来るかな。
……無理かも。
『うっ……!』
「檸檬!!」
直後にまた、咳が出て血が出て来る。
「よくやったな、これで帰れるぞ。」
遠くでリボーンの声が聞こえた。
「……みんな………」
お守りを握りしめたツナは、そのまま気を失って、隼人と武が駆け寄るのが見えた。
パーティー
その日、母さんの話によると俺もリボーンも熟睡したようだった。
朝目覚めると、すっごく賑やかな音が耳に入る。
「(そっか…今日は休みか…)」
そんな事を考えながら下に降りると…
「世話になっているぞ。」
「ランチアさん!!」
ランボ、イーピン、フゥ太と遊んでいるランチアさんがいた。
「き、昨日はありがとうございました!っていうかどーして…」
「その話は後でな。」
で、リボーン曰く今日は山本ん家でパーティーが行なわれるらしい。
ランボの退院祝いだそうだ。
「(それはそうと…)」
俺は辺りを見回す。
何か違和感があったんだ。
平和なはずなのに、いつもと何かが違うような…
「檸檬ならいねーぞ。」
「え!!?」
そうだ、檸檬がいないんだ。
いつもならランボとかと遊んでるはずなのに…
「檸檬、どーしたの…?」
俺が尋ねると、リボーンは一瞬深刻そうな顔をして。
「イタリアに帰った。」
とだけ言った。
よく分からないけど、リボーンの表情が“それ以上聞くな”って言ってるのが分かった。
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「こんばんは…」
「へいらっしゃい!ツナ君御一行!!」
扉を開けたその先には…
「ツナ君!」
「ツナさん!」
「10代目!!」
「みんな!」
驚く俺に、獄寺君が言った。
「表向きはアホ牛の退院祝いスけど、間違いなく今日は祝勝会スから!リング争奪戦の!!」
「え…いや……」
「やりましたね!」
そういう獄寺君の指には嵐のボンゴレリング。
「だな!」
「うむ。」
山本とお兄さんも雨と晴のリングを俺に見せてくれた。
「雲雀とクロームにもいってるはずだぞ。ほれ、お前のだ。」
言いながら大空のリングを差し出すリボーン。
俺は思いっきり拒否する。
「それ燃えるから!!」
「燃えねーぞ。ザンザスを溶かして以来、大人しいもんだ。それにお前、10代目になるのは俺だって言ったじゃねーか。」
「言ってないって!俺はザンザスに10代目にさせないって言ったの!!」
反論する俺に、ディーノさんが言った。
「9代目は無事だったんだ。今すぐお前が10代目になるワケじゃないぜ。」
「いや、だからって…」
「あんなチビもやる気なのにか?」
ディーノさんの視線の先には、“ゴミ箱に落ちてた”と言ってリングを見せびらかすランボ。
「(うそつけー!!)」
「アホ牛の奴、シメてやろーか!!」
「まーまー、ランボも頑張ったじゃねーか!」
そこに、
「聞いたよツナ君!相撲大会勝ったんでしょ?」
「きょ、京子ちゃん!」
「そのお祝いもしようね。」
「あ……ありがとう………そうだ……!お守り、ちゃんと………///」
俺が言おうとすると、ビアンキが遮った。
「デレデレしてる暇があったら食べなさい。」
「何故にポイズンクッキングーーー!!」
叫ぶ俺に、ハルがふと尋ねた。
「ツナさん、檸檬ちゃんは?」
「あ、あぁ、檸檬は今、イタリアに帰ってるんだ。」
「え?」
「どーしてですか?」
更に尋ねる京子ちゃんとハルに、リボーンが答えた。
「ちょっとした用事だぞ。」
「残念ですー…」
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ツナが気を失った後。
上半身をベルに抱き起こされている檸檬。
その顔は青ざめていて、痙攣した体と止まらない発作に襲われている。
「檸檬…」
『負け…ちゃったね……』
力なく笑う檸檬の頭を、ベルは少し自分に押し付ける。
「…そだね……」
『ごめ…んね……あの………約束……』
「いーから、もう無理して喋っちゃダメだよ。目も閉じてていーから……」
『ベル…』
ダメなの。
だってあたし、ここで目を閉じたら…
「ねぇ、」
一番聞きたかった声がして、あたしは首を動かす。
もう、ぼやけて滲んで朦朧とした世界の中に、
黒い髪と少し派手な腕章が映る。
『…きょ…や……』
あぁ…もう声が出ない。
「檸檬を、返しなよ。」
貴方の声は聞こえるのに、
もう、あたしの声は届かない。
この想いは、伝えられない。
これはきっと、嘘をついた罰だね。
---「あいつが好きなの?」
---『うん、好き。』
ごめんなさい。
ごめんなさい。
好きなの。
誰よりも、貴方が。
恭弥……側に居ていい?
ずっとずっと、一緒に居ていい?
手を繋いでもいい?
好きになっても………いい?
伝えたい、
伝えられない。
想いじゃなくて、
涙が溢れ。
手を伸ばしたい、
動かない。
体が全部、
言う事聞かない。
貴方との思い出が、隅から隅まで脳を埋め尽くして。
『(あ…前兆だ……)』
まるで、機械の電源が落ちるように、
あたしの意識は飛んで、
目の前は、
真っ暗になった。
「檸檬!!?」
金髪の天才が急に焦ったような声を出して、
僕は檸檬に駆け寄ろうとした。
だけど…
「待て、雲雀。」
赤ん坊が僕を止める。
同時に、金髪の天才も言った。
「日本じゃ治せないよ。」
「……どうして。」
「俺、一回だけこの状態の檸檬見た事あるけどさ、イタリアのボンゴレ本部でしか治せないんだよね。」
何それ…
無理するなって言ったのに、
どうして檸檬は無理するの?
まるで檸檬は生命力を完全に失ったみたいに目を閉じていた。
檸檬…
僕は檸檬に護ってもらいたかったんじゃない。
檸檬を守りたかったんだ。
ぐっと拳を握りしめて、檸檬に向かって歩き出す。
だけど、またすぐ邪魔が入る。
「お待ち下さい。ベルフェゴールの言う通りです。」
「檸檬様は、直ちにボンゴレ本部に搬送致します。」
僕と檸檬の間に立つ、審判の女。
ふと見ると、赤ん坊も深刻そうな顔をしていた。
「僕も行く。」
「やめろ雲雀。」
どうして皆で僕を止めるの?
僕は、
檸檬に触れる事すら許されないの?
僕は…
誰よりも檸檬を愛してるのに……
どうして届かないの?
僕はただ、
どんな檸檬でもいい…
一緒に居たいんだ。
隣に居たいんだ。
目覚めた檸檬の視界に入る、
一番最初の人でありたいんだ。
「お前はお前で傷を治せ。檸檬は帰って来ねぇワケじゃねーんだ。」
「しし…それはどーかな。」
赤ん坊の言葉に、金髪の天才が反応した。
「檸檬はヴァリアーの雲の守護者だぜ?俺らが勝っても負けても、一緒にイタリア行きなんだよ。」
「…………っ!!」
「バイバイ、エース君♪」
僕は何も言い返せず、ヘリの離陸を見ていた。
「ねぇ、赤ん坊……」
「何だ。」
「檸檬は…帰って来るの?」
負けたから、処分を受けるんじゃないの……?
「帰らねぇワケねぇ。」
赤ん坊はキリリと言い返したけど、僕にはその理由が分からなかったし、不安にもなった。
ねぇ檸檬…
帰って来てね………
僕はずっと、
「ずっと、待ってる。」
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檸檬の事は後でリボーンに詳しく聞くとして、
皆相変わらずハチャメチャだった。
昨日までの戦いが、本当に嘘みたいだ。
ザンザス達の処分は、父さんと9代目で話し合うって聞いた。
そして俺は………
「何で父さんに手紙書かなくちゃなんねーんだよ!!」
「作文の練習だぞ。俺が家庭教師だって忘れたのか?それに家光の奴、入院先で“奈々奈々”うるせーらしいからな。」
「じゃぁ母さんに書かせろよ!!」
入院って言えば…
「なぁリボーン、檸檬はいつ帰って来るんだよ?」
俺が問いかけると、リボーンは途端に深刻な顔つきになった。
「あと数日は…戻れねぇだろーな…」
「な!どうして!?」
「今回の戦いで、細胞の内部までボロボロになっちまったんだ。本部の医療でも難しいくらいにな。」
「そ、そんな………」
俺が気絶した後、そんな事に………
「それに、檸檬はヴァリアー側の雲の守護者だったんだ。普通に考えて、何の処分も無しに戻って来れるなんて事はねぇ。」
「あ、あれはヴァリアーが勝手に………!」
「でも、勅命があるんだ。」
「え…?」
「マフィアの世界において、勅命の重要性は高いからな。」
そこまで聞いた俺が耐えきれずに俯くと、リボーンは言った。
「心配なら、檸檬にも手紙書いておけ。」
「え?」
「争奪戦中に溜まった宿題と両立出来るならの話だがな。」
「そ、そんなんで…いいの?」
俺が聞き返すと、リボーンはニッと笑って。
「最近アイツ、涙もろいからな。手紙送れば充分だろ。」
「涙もろい?」
「あぁ………お前達が変えたんだぞ。お前達がいたから、檸檬は抱えてきた心の痛みを克服しつつあるんだ。」
言われてみれば、檸檬が涙を自分で止めるのを見るのが減った気がする。
根拠はないけど、きっと戻って来てくれるような気がした。
「書くよ!俺。」
「そーか。けど宿題が先な。」
「え"………」
少し顔を引きつらせると、リボーンは俺の腕をひねりながら言うんだ。
「文句あるのか?」
「いででで!!ギブギブ!!!」
そして、凄く嬉しそうな顔で付け加える。
「また俺との地獄の日々に逆戻りだな。」
「自分で言うな!」
この時俺は、
こんな騒々しい日々がずっと続くと思ってた…
まさか、
「リボーン!!何処だよ!!」
こんな事に…
「何処に行っちゃったんだよ!!リボーン!!」
リボーンがこの世からいなくなる日が来るなんて…。