ヴァリアー編
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かろうじて繋がっていた
彼女の生命の糸。
それが今、
ぷつんと切れた。
初代零地点突破
ツナとザンザスはお互いの手を掴み合い、
その境界から光が溢れる。
いつしかそれは、
2人の姿を飲み込んでいった。
「ツナ………!」
「沢田殿!!」
空気が唸るような音が辺りに広がる。
同時に、真っ白な煙も中庭を包む。
「煙で何も……」
不意に、スクリーンの真ん中にゆらりと浮かぶ1つの影。
「誰かいるぜコラ!」
立っていたのは、ザンザス。
「そ、そんな!」
「当然の結果だぁ。」
バジルが青ざめ、スクアーロは口角を上げるが、
「そう慌てんな。」
リボーンが言う。
「奴の手を見ろ。」
「手……?」
再びスクリーンをよく見る一同。
「あれは!!」
ディーノが何かに気が付く。
煙が消え、視界に入って来たものは、
ザンザスの凍った両手。
それを見て、今度はスクアーロが青ざめた。
「この現象…………ま…まさか……あの時と…………」
やがて、ザンザスと向かい合って立つ、ツナの姿も見え始める。
「これは………」
自分の手を見つめて、目を見開く。
その姿を見て、リボーンが言った。
「恐らく、これが初代の編み出した零地点突破。」
「え!?」
驚く周りに、リボーンは説明した。
「死ぬ気の境地の逆とは、死ぬ気の炎の逆の状態でもあるんだ。」
「そうか!炎の逆、つまり冷気!」
「しかもただの冷気じゃない。ザンザスの炎ごと凍らすなんて、この技はまるで………」
「死ぬ気の炎を封じる為にあるような技だな。」
観覧席と同じように、ザンザスも驚きを隠せないでいた。
「そんな、バカな………こんな事が!!!」
---
-------
その頃、体育館。
ベルは髑髏の吊るしていたロープを切って、ナイフを近付ける。
「フリダシに戻ったな。」
「くそ………!」
「さぁ、雨と雲以外のリングも渡しな。」
その言葉に、マーモンが付け加える。
「じゃないとこの娘、皮を剥ぐどころか………」
途端に、フードから触手が飛び出して来て。
「手足がもげるよ?」
「うぅ………!」
髑髏を縛り付けた。
「てめぇ!!」
「やめろ!!」
思わず大声を出す獄寺と山本に、マーモンは言った。
「まだ分かってないようだね。幻覚を見ている君達に、何の権限もないんだ。」
次の瞬間、獄寺の腕にも触手が巻き付く。
「なっ!」
触手の力が強いせいか、獄寺の右手に握られていた3つのリングは落ちて行く。
「しまっ………!!」
そして、同じように山本にも触手が迫る。
「お前達もここで死ぬのさ。自分の想像力によってね。」
「ぐっ!」
「うわああ!」
マーモンの幻覚からは、逃れられない。
まるでどんどん触手に巻き付かれていくような感覚が、2人を襲う。
スクリーンに映し出されるその光景。
触手の姿は、当然観戦者達からは見えないまま。
「隼人達が!!」
「まずいっ!これではどうする事も!!」
---
------
『あっちだ………』
早く行かなくちゃ。
向かう先は、体育館。
あたしはトップスピードの俊足を使う。
あたしの体も時間の問題。
今は分解吸収が多少機能してるけど、
戻りつつある毒が脳に回って、
制御が出来なくなったら、
そこから死へのカウントダウンが開始する。
そして、リバウンドもきっと始まる。
『あれは………!』
見えて来た体育館。
その壁の前に、包帯をほどいた了平さんが見えた。
---
------
「(来たぜ………絶望的とも言える戦況が………)」
スクリーンの向こうで、コロネロが拳を握る。
「(お前しか、救える男はいないぜ!)」
ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪!!
了平さんの足が、少しだけ地面を削る。
その拳が今、
壁に向かって放たれた。
「極限太陽!!!」
(マキシマム・キャノン)
同時にあたしも、
飛び出した。
『(俊足っ!!)』
了平さんのパンチが体育館に穴を開ける。
そこからどんどん崩れて、
完全に倒壊する前に、
ベルとマーモンを助けなきゃ。
「何だ!!」
「外から!?」
隼人とベルの声。
あたしは超五感で本物のマーモンを探し当て、瓦礫に当たる前に抱え込んだ。
『マーモンっ♪』
「ム、檸檬!」
そしてそのままベルの方へ。
『ベルっ!』
「ん♪」
あたしが差し出した手を、
ベルはぎゅっと握った。
『(急げっ!)』
出来るだけ早く、あたしは体育館を出た。
左腕にマーモンを抱え、右手はベルと繋いで。
俊足で、体育館からなるべく離れて校舎裏で止まった。
ベルの手を放し、
マーモンを下ろす。
変なの。
足がフラフラ過ぎて、座り込む事も出来ないや。
完全倒壊した体育館。
砂埃が上がる中、瓦礫の下から獄寺と山本が顔を出す。
山本は、髑髏の事も保護していた。
「一体何だ?体育館ごと吹っ飛んでる………。」
「お前は!!」
獄寺が振り向いた先には、右拳から血を流している了平が立っていた。
「まどろっこしいのは嫌いでな。」
---
------
中庭では、ザンザスがツナを睨み付けていた。
「何故だ!!ありえん!!お前みてぇなカスにボンゴレの奥義など………!!」
「その傷………」
ツナは静かに言う。
「お前が前にも、全身に零地点突破を受けた証拠。」
「なに?!」
観覧席のコロネロが声を上げる。
「もうお前の拳に炎が灯される事はない。お前の負けだ、ザンザス。」
「ふふふ………」
ザンザスの口からは、これまた静かな笑い声が。
「何を言い出すかと思えば!ふざけやがって!!」
怒鳴りながら、両手の氷を膝に叩き付けて割った。
「これごときで!!」
「無駄だ…ザンザス。これ以上やるのなら…………9代目につけられたその傷では済まないぞ。」
ツナの言葉に驚いたのは、シャマルやバジル、コロネロ。
「なに!」
「9代目!?」
「で、では………ザンザスは9代目に零地点突破を!?」
ザンザスは、その事実をツナが知っている事に目を見開き、怒りを込めて怒鳴る。
「黙れ!!俺は名にX(10)の称号を2つ持つ男XANXUS!!!てめーごときに屈すると思うか!!勝つのは俺だ!!」
そう言って、ツナに向かって行く。
「ボンゴレの10代目は!!この俺だ!!!」
ツナは素早い動きでザンザスの鳩尾に1発の拳を入れる。
そして、膝をついてうずくまったザンザスの目の前に立った。
「いくぞ。」
零地点突破をしているせいか、
そのツナは小言弾を撃たれたツナではなかった。
ただ、
決意を宿した瞳だけは共通していた。
「零地点突破・初代エディション…………」
ツナのグローブからは、
静かに冷気が流れ出て。
「ぐおぉ!!」
ザンザスの体を凍らせていく。
それを見て、スクアーロが叫ぶ。
「やめろぉ!!!」
凍りゆくザンザスに、ツナは問いかける。
「何故だ………何でお前は…………」
「うるせぇ!!!!老いぼれと同じ事をほざくな!!」
「9代目と……?」
ツナの脳裏に浮かぶのは、
モスカの中から出て来た9代目が、炎を通して自分の記憶を伝えようとしていた事。
「(まさか………!)」
ツナが気がついた時には、ザンザスは既に何も言わなかった。
いや、言えない状態だった。
ツナの額に再び炎が灯り、
その手には、完成された大空のリング。
しかし、その表情からは勝利の喜びは感じられなかった。
目の前には、凍ってしまって動かないザンザスがいた。
---
------
「サンキュー♪」
「助かったよ、檸檬。」
「さっすが俺のお姫さま♪」
ベルとマーモンに背を向けて、あたしは立っていた。
ヤバい………すごく息が荒い。
「ム、どうしたんだい?檸檬。」
『マーモン…………リングは?』
「ちゃんとあるよ。」
ボスに、守護者のリング集めろって言われたから、
ちょっと心配だったのよね。
マーモンの答えを聞くと、あたしはホッとした。
『そう………それは…良かった…………』
直後にやって来る酷い頭痛。
そして目眩。
「檸檬っ!?」
ベルの声が聞こえて、あたしは初めて分かった。
世界が反転していく----
「檸檬っ!!」
フラッ…
ゆらりと前に倒れ込む。
地面が近付いてるな、と思ったら、
ベルが支えてくれた。
「檸檬!どーしたんだよ!?」
ゆっくりとしゃがむベル。
あたしは仰向けで寝かされて、ベルに上半身を支えられつつ抱き起こされる。
もう、
酷い発作が始まっていた。
『ごめ………あたし………限界…みたい………』
「ム!?リバウンド!!?」
マーモンが気がつく。
そう、これは分解吸収が完全に機能しなくなったって事。
毒が脳に回り始めたって事。
リバウンドが、始まってしまったって事。
「解毒は!?雲のリング!?」
「違うよベル、大空のリングみたいだ。」
リストバンドの穴の形を見て、マーモンが言った。
「大空!?檸檬は雲の守護者じゃん。」
「檸檬は次期10代目直属になるんだ、大空が解毒するのは当然だよ。」
「檸檬…………」
更に、マーモンは言った。
「発作か………リバウンド初期症状だね。檸檬、相当無理な事したね?」
『へへ……ちょっとね。』
へらっと笑う檸檬を見て、ベルが言った。
「無理して笑わなくていいよ、檸檬。すぐ俺が助けるから。」
『ベル………』
ベルは檸檬をふわっと抱き上げ、走り出した。
マーモンは浮いたまま移動する。
彼らはおろか、檸檬さえ、
大空のリングの行方は知らない。
細胞が、
壊れていくのを感じる。
悲鳴をあげてるのを感じる。
『ベル………』
「ん?」
『下ろしてもいいよ……ベル…足怪我して…………』
「俺が檸檬を追いてくワケないじゃん。」
ベルの腕の力が、強くなったような気がした。
申し訳なくて、
情けなくて、
視界がぼやける。
「絶対死なせない。絶対解毒するからね、檸檬。」
『ベル………ありがと………』
発作は止まらない。
自分に無理をさせた彼女への、
対価であるから。
彼女の生命の糸。
それが今、
ぷつんと切れた。
初代零地点突破
ツナとザンザスはお互いの手を掴み合い、
その境界から光が溢れる。
いつしかそれは、
2人の姿を飲み込んでいった。
「ツナ………!」
「沢田殿!!」
空気が唸るような音が辺りに広がる。
同時に、真っ白な煙も中庭を包む。
「煙で何も……」
不意に、スクリーンの真ん中にゆらりと浮かぶ1つの影。
「誰かいるぜコラ!」
立っていたのは、ザンザス。
「そ、そんな!」
「当然の結果だぁ。」
バジルが青ざめ、スクアーロは口角を上げるが、
「そう慌てんな。」
リボーンが言う。
「奴の手を見ろ。」
「手……?」
再びスクリーンをよく見る一同。
「あれは!!」
ディーノが何かに気が付く。
煙が消え、視界に入って来たものは、
ザンザスの凍った両手。
それを見て、今度はスクアーロが青ざめた。
「この現象…………ま…まさか……あの時と…………」
やがて、ザンザスと向かい合って立つ、ツナの姿も見え始める。
「これは………」
自分の手を見つめて、目を見開く。
その姿を見て、リボーンが言った。
「恐らく、これが初代の編み出した零地点突破。」
「え!?」
驚く周りに、リボーンは説明した。
「死ぬ気の境地の逆とは、死ぬ気の炎の逆の状態でもあるんだ。」
「そうか!炎の逆、つまり冷気!」
「しかもただの冷気じゃない。ザンザスの炎ごと凍らすなんて、この技はまるで………」
「死ぬ気の炎を封じる為にあるような技だな。」
観覧席と同じように、ザンザスも驚きを隠せないでいた。
「そんな、バカな………こんな事が!!!」
---
-------
その頃、体育館。
ベルは髑髏の吊るしていたロープを切って、ナイフを近付ける。
「フリダシに戻ったな。」
「くそ………!」
「さぁ、雨と雲以外のリングも渡しな。」
その言葉に、マーモンが付け加える。
「じゃないとこの娘、皮を剥ぐどころか………」
途端に、フードから触手が飛び出して来て。
「手足がもげるよ?」
「うぅ………!」
髑髏を縛り付けた。
「てめぇ!!」
「やめろ!!」
思わず大声を出す獄寺と山本に、マーモンは言った。
「まだ分かってないようだね。幻覚を見ている君達に、何の権限もないんだ。」
次の瞬間、獄寺の腕にも触手が巻き付く。
「なっ!」
触手の力が強いせいか、獄寺の右手に握られていた3つのリングは落ちて行く。
「しまっ………!!」
そして、同じように山本にも触手が迫る。
「お前達もここで死ぬのさ。自分の想像力によってね。」
「ぐっ!」
「うわああ!」
マーモンの幻覚からは、逃れられない。
まるでどんどん触手に巻き付かれていくような感覚が、2人を襲う。
スクリーンに映し出されるその光景。
触手の姿は、当然観戦者達からは見えないまま。
「隼人達が!!」
「まずいっ!これではどうする事も!!」
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『あっちだ………』
早く行かなくちゃ。
向かう先は、体育館。
あたしはトップスピードの俊足を使う。
あたしの体も時間の問題。
今は分解吸収が多少機能してるけど、
戻りつつある毒が脳に回って、
制御が出来なくなったら、
そこから死へのカウントダウンが開始する。
そして、リバウンドもきっと始まる。
『あれは………!』
見えて来た体育館。
その壁の前に、包帯をほどいた了平さんが見えた。
---
------
「(来たぜ………絶望的とも言える戦況が………)」
スクリーンの向こうで、コロネロが拳を握る。
「(お前しか、救える男はいないぜ!)」
ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪!!
了平さんの足が、少しだけ地面を削る。
その拳が今、
壁に向かって放たれた。
「極限太陽!!!」
(マキシマム・キャノン)
同時にあたしも、
飛び出した。
『(俊足っ!!)』
了平さんのパンチが体育館に穴を開ける。
そこからどんどん崩れて、
完全に倒壊する前に、
ベルとマーモンを助けなきゃ。
「何だ!!」
「外から!?」
隼人とベルの声。
あたしは超五感で本物のマーモンを探し当て、瓦礫に当たる前に抱え込んだ。
『マーモンっ♪』
「ム、檸檬!」
そしてそのままベルの方へ。
『ベルっ!』
「ん♪」
あたしが差し出した手を、
ベルはぎゅっと握った。
『(急げっ!)』
出来るだけ早く、あたしは体育館を出た。
左腕にマーモンを抱え、右手はベルと繋いで。
俊足で、体育館からなるべく離れて校舎裏で止まった。
ベルの手を放し、
マーモンを下ろす。
変なの。
足がフラフラ過ぎて、座り込む事も出来ないや。
完全倒壊した体育館。
砂埃が上がる中、瓦礫の下から獄寺と山本が顔を出す。
山本は、髑髏の事も保護していた。
「一体何だ?体育館ごと吹っ飛んでる………。」
「お前は!!」
獄寺が振り向いた先には、右拳から血を流している了平が立っていた。
「まどろっこしいのは嫌いでな。」
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中庭では、ザンザスがツナを睨み付けていた。
「何故だ!!ありえん!!お前みてぇなカスにボンゴレの奥義など………!!」
「その傷………」
ツナは静かに言う。
「お前が前にも、全身に零地点突破を受けた証拠。」
「なに?!」
観覧席のコロネロが声を上げる。
「もうお前の拳に炎が灯される事はない。お前の負けだ、ザンザス。」
「ふふふ………」
ザンザスの口からは、これまた静かな笑い声が。
「何を言い出すかと思えば!ふざけやがって!!」
怒鳴りながら、両手の氷を膝に叩き付けて割った。
「これごときで!!」
「無駄だ…ザンザス。これ以上やるのなら…………9代目につけられたその傷では済まないぞ。」
ツナの言葉に驚いたのは、シャマルやバジル、コロネロ。
「なに!」
「9代目!?」
「で、では………ザンザスは9代目に零地点突破を!?」
ザンザスは、その事実をツナが知っている事に目を見開き、怒りを込めて怒鳴る。
「黙れ!!俺は名にX(10)の称号を2つ持つ男XANXUS!!!てめーごときに屈すると思うか!!勝つのは俺だ!!」
そう言って、ツナに向かって行く。
「ボンゴレの10代目は!!この俺だ!!!」
ツナは素早い動きでザンザスの鳩尾に1発の拳を入れる。
そして、膝をついてうずくまったザンザスの目の前に立った。
「いくぞ。」
零地点突破をしているせいか、
そのツナは小言弾を撃たれたツナではなかった。
ただ、
決意を宿した瞳だけは共通していた。
「零地点突破・初代エディション…………」
ツナのグローブからは、
静かに冷気が流れ出て。
「ぐおぉ!!」
ザンザスの体を凍らせていく。
それを見て、スクアーロが叫ぶ。
「やめろぉ!!!」
凍りゆくザンザスに、ツナは問いかける。
「何故だ………何でお前は…………」
「うるせぇ!!!!老いぼれと同じ事をほざくな!!」
「9代目と……?」
ツナの脳裏に浮かぶのは、
モスカの中から出て来た9代目が、炎を通して自分の記憶を伝えようとしていた事。
「(まさか………!)」
ツナが気がついた時には、ザンザスは既に何も言わなかった。
いや、言えない状態だった。
ツナの額に再び炎が灯り、
その手には、完成された大空のリング。
しかし、その表情からは勝利の喜びは感じられなかった。
目の前には、凍ってしまって動かないザンザスがいた。
---
------
「サンキュー♪」
「助かったよ、檸檬。」
「さっすが俺のお姫さま♪」
ベルとマーモンに背を向けて、あたしは立っていた。
ヤバい………すごく息が荒い。
「ム、どうしたんだい?檸檬。」
『マーモン…………リングは?』
「ちゃんとあるよ。」
ボスに、守護者のリング集めろって言われたから、
ちょっと心配だったのよね。
マーモンの答えを聞くと、あたしはホッとした。
『そう………それは…良かった…………』
直後にやって来る酷い頭痛。
そして目眩。
「檸檬っ!?」
ベルの声が聞こえて、あたしは初めて分かった。
世界が反転していく----
「檸檬っ!!」
フラッ…
ゆらりと前に倒れ込む。
地面が近付いてるな、と思ったら、
ベルが支えてくれた。
「檸檬!どーしたんだよ!?」
ゆっくりとしゃがむベル。
あたしは仰向けで寝かされて、ベルに上半身を支えられつつ抱き起こされる。
もう、
酷い発作が始まっていた。
『ごめ………あたし………限界…みたい………』
「ム!?リバウンド!!?」
マーモンが気がつく。
そう、これは分解吸収が完全に機能しなくなったって事。
毒が脳に回り始めたって事。
リバウンドが、始まってしまったって事。
「解毒は!?雲のリング!?」
「違うよベル、大空のリングみたいだ。」
リストバンドの穴の形を見て、マーモンが言った。
「大空!?檸檬は雲の守護者じゃん。」
「檸檬は次期10代目直属になるんだ、大空が解毒するのは当然だよ。」
「檸檬…………」
更に、マーモンは言った。
「発作か………リバウンド初期症状だね。檸檬、相当無理な事したね?」
『へへ……ちょっとね。』
へらっと笑う檸檬を見て、ベルが言った。
「無理して笑わなくていいよ、檸檬。すぐ俺が助けるから。」
『ベル………』
ベルは檸檬をふわっと抱き上げ、走り出した。
マーモンは浮いたまま移動する。
彼らはおろか、檸檬さえ、
大空のリングの行方は知らない。
細胞が、
壊れていくのを感じる。
悲鳴をあげてるのを感じる。
『ベル………』
「ん?」
『下ろしてもいいよ……ベル…足怪我して…………』
「俺が檸檬を追いてくワケないじゃん。」
ベルの腕の力が、強くなったような気がした。
申し訳なくて、
情けなくて、
視界がぼやける。
「絶対死なせない。絶対解毒するからね、檸檬。」
『ベル………ありがと………』
発作は止まらない。
自分に無理をさせた彼女への、
対価であるから。