ヴァリアー編
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どうせなら、
もっと後に、
ううん、
もっと前に、
気がつけば良かった。
怒り
校舎と校舎の間から、疲労を表す荒い息。
「参ったな、傷口から血が滲んで来やがった。」
そう言いながら走るのは、雲雀と交代して来た山本。
そこに……
「てめー、誰だ!?」
曲がり角の向こうから、誰かが飛び出して来る。
お互いに警戒しあうのも束の間。
「獄寺!!」
「や、山本!!」
味方だと確認し、両者とも雲雀の助けを得た事を知ると、獄寺は少し眉をひそめた。
「あいつ、俺達に貸し作って何企んでんだ?」
「だが、アイツも相当やられてて動けそうにねぇ。」
「雲雀が?」
「リングは預かって来た。」
現時点で2人が持つリングは、
晴、雷、嵐、雨、雲
「って事は残るは………」
「霧だ!!」
「………あの娘か!」
「あぁ、体育館だ!!」
---
------
『はぁっ……はぁっ………つっ!』
大分毒の侵食が進んで来た。
あたしもうすぐ……ダメになるかもね。
フラフラしながら辿り着いたのは、晴の守護者がいる場所。
『ルッスーリア………』
「檸檬!?」
ルッスーリアのベッドは立てられたままだったから、あたしはそれを横にした。
『この方が、いくらかマシでしょ?』
「檸檬…………ありがとう。でもごめんなさい、リングはボクシングのコが。」
『うん、分かった♪』
あたしが駆け出そうとすると、ルッスーリアが呼び止める。
「檸檬、」
『ん?』
「どうしたの?汗なんてかいて。」
『…………ちょっとね。』
いつもだったら汗腺をコントロールするから、汗はかきにくい。
けど今のあたしは、少しでも分解吸収を続けなくちゃいけないから。
額に滲む汗を、腕で拭った。
『行って来るよ。』
「気を付けてね、檸檬。」
『らじゃ♪』
これ以上心配をかけないように、あたしは俊足で走り去った。
次に向かうのは…校舎B棟。
---
------
「よくもカスの分際で………許さねぇ!!」
煙がはれたその向こうには、古傷の甦ったザンザスが立っていた。
「ぶっ殺す!!!!」
更にたくさんの炎を吸収し、一気に放出する。
その姿に、ツナも一瞬怯んだ。
「なんて奴だ………ここに来て更に炎が増幅してやがる。」
「奴の実力は底無しか。」
畏怖の念を感じるリボーンとコロネロの言葉に答えたのは、それまで聞こえて来なかった声だった。
「あれは怒りだぁ………」
その声に反応して、バジルが振り向く。
と、みるみる目は大きくなって。
「そ、そんな……この声!!」
観覧席の後ろから現れたのは、黒スーツの男達を引き連れた跳ね馬ディーノ。
そして…
ディーノの左側にある車椅子に座らされている人物こそ、先程の言葉を放った者。
反抗出来ないように車椅子に固定され、
傷だらけなのか、包帯は全身に。
何より目立つのは、最早見慣れていた銀色の長髪だった。
---
-------
その頃、体育館に到着した獄寺と山本。
「急がねーと毒の致死時間の30分が経っちまう!」
焦る獄寺に、
「獄寺、お前大丈夫か?」
山本が問いかける。
「お前、血色悪いぜ。」
「てめー人の事言えねーだろ!傷口ずっと抑えてヘロヘロじゃねーか。」
言い合いはしているものの、本当に2人とも顔色が悪かった。
何とかしてドアを開け、体育館の中を覗いてみる。
と…
「ポールが!!」
「どーなってやがる!!」
2人の目の前には、倒れたポールとボロボロの床。
「髑髏は何処行きやがった!!」
獄寺の声に答えたのは…
「こっちこっちー♪」
カンカン、と床を叩くトライデント。
2人がそちらを向いてみると、
体育館の観覧席から吊るされた髑髏に、
ベルがナイフを向けていて、
もう片方の隣にはマーモンが立っていた。
「お前達の持つリングを渡してもらおうか。」
「さもなくば、この女は皮をはがされ惨い死に方をするよ。」
ベルとマーモンの言葉に、獄寺が怒鳴る。
「ふざけんじゃねぇ!!そんな安っぽい手に引っ掛かると思ってんのか!?」
「誰だと思ってんの?俺らは暗殺部隊ヴァリアーだぜ?」
ベルは向けていたナイフを髑髏の頬に突き付ける。
「殺しにおいては、嘘はナッシング。」
「やめろ!!」
髑髏の頬から赤い液体がゆっくりとナイフを伝って行く。
「きったねーぞ………リングを渡した所で髑髏を解放するつもりもねーんじゃねーのか?」
「信じる信じないは自由だけどさ、グズグズしてっとひんむく前に毒で死ぬぜ?」
「くっそ~~………」
すると山本が、
「しょーがねー………」
一歩前に出る。
「リングを渡すしかないみてーだな。俺と獄寺でお前達の持つ霧以外の全部のリングを持ってんだ。」
「おっ。」
山本の発言内容に、獄寺は焦りを隠せない。
「おい!!お前!バカか!」
しかし、山本はそのまま続ける。
「ただし、一遍にはやらねーぜ。まずその娘の解毒とこの雨・雲との交換だ。」
「なっ!!」
「それが出来たら信用して、残りのリングとその娘の交換に応じる。」
「おいおい、どっちが主導権握ってんのか分かってんの?」
「ま、でもいいよ、ベル。これで全てが揃うんだ。」
「ししし♪それもそーだな。」
ベルとマーモンも、山本が出した条件に賛成した。
獄寺だけが反対して、山本に向かって怒鳴っている。
「お前の刀のリーチは入んないぜ。その距離からそっとリングを転がしな。」
「同時にだ。」
「うわー生意気。しょーがねーな。」
ベルは髑髏のリストバンドの近くに霧のリングを持っていく。
山本も左手に雨と雲のリングを持った。
「じゃー、せーのっ、」
「ほい。」
「そら。」
ベルは髑髏の解毒をし、
山本はリングを転がした。
と、その時。
「わたっ!」
足下の瓦礫に足を滑らせ、山本は前のめりになった。
しかし、
それは計算の内。
「(行くぜ!!時雨蒼燕流攻式三の型---)」
前のめりになった山本の左肩から、
竹刀がケースごとずり落ちる。
それは、縦に回転し山本の右足の所へ。
遣らずの雨---
右足が袋の端を突き出せば、
そこから変形刀が飛び出して、ベルの肩に刺さる。
「いだぁ!!」
「なに!」
マーモンが驚き振り向こうとすれば、そこにはもう刀を構えた山本が。
「動くな。」
「や、やるじゃねーか山本!」
「形勢逆転だな。」
すると…
「やはりタダモノではない連中だ。警戒しておいて良かったよ。」
マーモンがそう言うと同時に、
痛みに苦しむベルの姿も、
刀を突き付けられたマーモンの姿も、
獄寺と山本の視界から消えていった。
そして、新たに現れるのは、ファンタズマを目覚めさせ分身をしたマーモン。
今まで近くにいた髑髏さえも姿を消し、
また新たな位置に現れる。
体育館の、向かいの壁際に。
「ししし♪さーて、残りのリングも頂こーか?」
「なに!?」
「幻覚だったのか!!」
「形勢再逆転♪」
ベルは再び髑髏の頬にナイフを突きつけた。
---
------
「そんな、信じられない!生きていたなんて!!」
バジルの視線の先にいたのは、
「スクアーロ!!」
ディーノは雨戦の時、山本を救う為水槽に部下を忍ばせていた。
しかし、落ちて来たのはスクアーロ。
かろうじて助けたが瀕死の重体だった為、大手術を施した。
「こいつには、何としても聞き出すべき事があるからな。」
チェルベッロにより、スクアーロやディーノも観覧席に入れられた。
「いいぞぉ………その怒りがお前を強くする。」
モニターを見たスクアーロは、独り言のように呟く。
「その怒りこそが、お前の野望を現実にする力だ。その怒りに、俺は憧れついて来た。」
モニターの向こうでは、ザンザスとツナが物凄い勢いでぶつかって行く。
「死にさらせ!!!」
しかし、拳を喰らわせたのはツナ。
「ぐ、ぬおおおお!!!」
その炎に右頬を焼かれても、ザンザスっは怯まず押し返そうとする。
「おおお!!!」
ツナは炎を増強させ、更に強い拳を鳩尾に入れた。
ザンザスの口から大量の血が流れる。
「それが………どうした!!」
ツナの攻撃を受ける度、ザンザスの“怒り”は増していく。
驚いたツナは、すぐにザンザスを距離をとった。
---
------
『雨のリング………まだあるかなぁ?』
あたしは校舎B棟に向かう。
もしまだ残ってたら、武を助けてからリング取って逃げよう。
そう決めて、足を踏み入れた。
暗い暗い、B棟へ。
『(武………?)』
柱の裏に、誰かいる。
恐る恐る近付いて覗いてみると…
『恭弥……!!』
「檸檬……」
出来れば会わないでおきたかった人が、
そこにいた。
『た、武は………?』
「もう行ったよ。」
『リングは………?』
「持って行った。」
遅かったんだ…
しょうがないな、超五感使うしかないね。
あたしは方向転換をして、走り出そうとした。
「取りに行く気?」
『………ボスに、言われてるから。』
「そんなフラフラの足で?」
『だっ、大丈夫だもんっ!!』
そう言う恭弥は柱のトコから動こうとしない。
自分だって、結構なダメージ受けてるんじゃん。
『あたし、行かなくちゃ。』
まだ此処にいたい、
そう思わないワケじゃないけど、今は………
『じゃーね。』
「檸檬、待っ………………!!」
『恭弥!?』
不自然な言葉の途切れに、思わず振り向いた。
あり得ない光景。
頭を垂らして、うずくまってる恭弥。
『恭弥っ!!?』
咄嗟に駆け寄って、目の前にしゃがんだ。
と、次の瞬間、
ぐいっ、
『へ?』
ぎゅっ、
『な………!』
恭弥はあたしを引き寄せて、きつく抱きしめた。
『え?ちょっ、恭弥!?///』
「やっぱり甘いよね、檸檬は。」
まさか、
まさか…!
『ひ、人が心配したってのに………!』
「うん、知ってる。」
恭弥の腕がほどける気配はなく、
あたしは何でか真っ赤になる。
『ねぇ…………は…なして………』
「ヤだ。」
恥ずかしい、
恥ずかしいよ。
ドキドキして、止まらない。
ホントにそれだけ?
ツゥーッ…
『あ、あれ?』
何で?
何で今涙が出るの?
どうして溢れて止まらないの?
これは、何の涙なの?
涙に比例するように、高鳴る心臓。
だらりと垂れていたはずのあたしの手は、
恭弥の背中に回ってて。
あたし、何か変だ。
何でこんなに変なの?
“ずっとこのままでいい”
そう思うのはどうして?
「檸檬、」
『なに………?』
「好きだよ。愛してる。」
『恭弥………///』
ほら、
またこんなに
ドキドキしてる。
あたし……………
そっか。
あたし、
恭弥の敵になりなくない。
これからリング取りに行くのもイヤ。
ずっとずっとこのままでいたい。
それくらい、
それくらいあたしは………
恭弥が好き。
大好き。
一番、好き。
抑えきれない。
抑えたくない。
だけどあたしは、
今は…
まだ伝えられない。
伝えちゃいけない。
『い、行かなくちゃ………』
震える声を絞り出して、あたしは恭弥に訴えた。
『これが終わったら………』
これだけ伝えさせて。
『また、一緒にいていい?』
精一杯の笑顔を見せる。
恭弥はしばらく黙ってたけど、腕をゆっくりほどいてくれた。
「無理、しないでね。」
『らじゃ♪』
と言っても、すでにヤバいんだけどね。
分解吸収を発動させ続けたせいか、リバウンドが近付いて来てる。
普段は40分くらいもつんだけど、毒のせいで多分縮まってるだろうし。
それでもあたしは…
『(超五感、俊足!)』
気配を察知しながら、校内を走る。
みんながいるのは…
『(体育館!!)』
---
------
「死ね!!!」
ザンザスの怒りの一撃が、ツナに向かって放たれる。
ツナは零地点突破を使おうとしたが、何かを察して咄嗟に避けた。
「避けた!?」
「あれ程の炎を受けたら、吸収しきれずにツナの方がパンクしちまうからな。」
「そんな!!あの沢田殿の力を凌ぐなんて!!」
彼の怒りは、収まらず。
「かっ消す!!!」
空中にいるツナに向かって、自分も飛び上がる。
それを見たツナは、落ち着きを取り戻すように目を閉じた。
「ツナ!!何をする気だ!?」
ディーノが声を上げた瞬間、ツナの目が開かれる。
同時に、ザンザスも銃を捨ててツナに素手で挑む。
そして…
ガッ!
2人は両手を合わせて、掴み合った。
お互いに歯を食いしばり、睨み合う。
「あの炎を受けて立つ気か!?」
「だがあの体勢では、零地点突破すら………!」
コロネロとバジルが驚き、
「終わりだぁ。」
スクアーロは笑った。
次の瞬間、2人の手が光を放った。
---
-------
毒なんかに捕われない。
体調なんかに構ってらんない。
あたしは浮き雲、
どんな形であろうと、
必ず護ってみせるから。
もっと後に、
ううん、
もっと前に、
気がつけば良かった。
怒り
校舎と校舎の間から、疲労を表す荒い息。
「参ったな、傷口から血が滲んで来やがった。」
そう言いながら走るのは、雲雀と交代して来た山本。
そこに……
「てめー、誰だ!?」
曲がり角の向こうから、誰かが飛び出して来る。
お互いに警戒しあうのも束の間。
「獄寺!!」
「や、山本!!」
味方だと確認し、両者とも雲雀の助けを得た事を知ると、獄寺は少し眉をひそめた。
「あいつ、俺達に貸し作って何企んでんだ?」
「だが、アイツも相当やられてて動けそうにねぇ。」
「雲雀が?」
「リングは預かって来た。」
現時点で2人が持つリングは、
晴、雷、嵐、雨、雲
「って事は残るは………」
「霧だ!!」
「………あの娘か!」
「あぁ、体育館だ!!」
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『はぁっ……はぁっ………つっ!』
大分毒の侵食が進んで来た。
あたしもうすぐ……ダメになるかもね。
フラフラしながら辿り着いたのは、晴の守護者がいる場所。
『ルッスーリア………』
「檸檬!?」
ルッスーリアのベッドは立てられたままだったから、あたしはそれを横にした。
『この方が、いくらかマシでしょ?』
「檸檬…………ありがとう。でもごめんなさい、リングはボクシングのコが。」
『うん、分かった♪』
あたしが駆け出そうとすると、ルッスーリアが呼び止める。
「檸檬、」
『ん?』
「どうしたの?汗なんてかいて。」
『…………ちょっとね。』
いつもだったら汗腺をコントロールするから、汗はかきにくい。
けど今のあたしは、少しでも分解吸収を続けなくちゃいけないから。
額に滲む汗を、腕で拭った。
『行って来るよ。』
「気を付けてね、檸檬。」
『らじゃ♪』
これ以上心配をかけないように、あたしは俊足で走り去った。
次に向かうのは…校舎B棟。
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「よくもカスの分際で………許さねぇ!!」
煙がはれたその向こうには、古傷の甦ったザンザスが立っていた。
「ぶっ殺す!!!!」
更にたくさんの炎を吸収し、一気に放出する。
その姿に、ツナも一瞬怯んだ。
「なんて奴だ………ここに来て更に炎が増幅してやがる。」
「奴の実力は底無しか。」
畏怖の念を感じるリボーンとコロネロの言葉に答えたのは、それまで聞こえて来なかった声だった。
「あれは怒りだぁ………」
その声に反応して、バジルが振り向く。
と、みるみる目は大きくなって。
「そ、そんな……この声!!」
観覧席の後ろから現れたのは、黒スーツの男達を引き連れた跳ね馬ディーノ。
そして…
ディーノの左側にある車椅子に座らされている人物こそ、先程の言葉を放った者。
反抗出来ないように車椅子に固定され、
傷だらけなのか、包帯は全身に。
何より目立つのは、最早見慣れていた銀色の長髪だった。
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その頃、体育館に到着した獄寺と山本。
「急がねーと毒の致死時間の30分が経っちまう!」
焦る獄寺に、
「獄寺、お前大丈夫か?」
山本が問いかける。
「お前、血色悪いぜ。」
「てめー人の事言えねーだろ!傷口ずっと抑えてヘロヘロじゃねーか。」
言い合いはしているものの、本当に2人とも顔色が悪かった。
何とかしてドアを開け、体育館の中を覗いてみる。
と…
「ポールが!!」
「どーなってやがる!!」
2人の目の前には、倒れたポールとボロボロの床。
「髑髏は何処行きやがった!!」
獄寺の声に答えたのは…
「こっちこっちー♪」
カンカン、と床を叩くトライデント。
2人がそちらを向いてみると、
体育館の観覧席から吊るされた髑髏に、
ベルがナイフを向けていて、
もう片方の隣にはマーモンが立っていた。
「お前達の持つリングを渡してもらおうか。」
「さもなくば、この女は皮をはがされ惨い死に方をするよ。」
ベルとマーモンの言葉に、獄寺が怒鳴る。
「ふざけんじゃねぇ!!そんな安っぽい手に引っ掛かると思ってんのか!?」
「誰だと思ってんの?俺らは暗殺部隊ヴァリアーだぜ?」
ベルは向けていたナイフを髑髏の頬に突き付ける。
「殺しにおいては、嘘はナッシング。」
「やめろ!!」
髑髏の頬から赤い液体がゆっくりとナイフを伝って行く。
「きったねーぞ………リングを渡した所で髑髏を解放するつもりもねーんじゃねーのか?」
「信じる信じないは自由だけどさ、グズグズしてっとひんむく前に毒で死ぬぜ?」
「くっそ~~………」
すると山本が、
「しょーがねー………」
一歩前に出る。
「リングを渡すしかないみてーだな。俺と獄寺でお前達の持つ霧以外の全部のリングを持ってんだ。」
「おっ。」
山本の発言内容に、獄寺は焦りを隠せない。
「おい!!お前!バカか!」
しかし、山本はそのまま続ける。
「ただし、一遍にはやらねーぜ。まずその娘の解毒とこの雨・雲との交換だ。」
「なっ!!」
「それが出来たら信用して、残りのリングとその娘の交換に応じる。」
「おいおい、どっちが主導権握ってんのか分かってんの?」
「ま、でもいいよ、ベル。これで全てが揃うんだ。」
「ししし♪それもそーだな。」
ベルとマーモンも、山本が出した条件に賛成した。
獄寺だけが反対して、山本に向かって怒鳴っている。
「お前の刀のリーチは入んないぜ。その距離からそっとリングを転がしな。」
「同時にだ。」
「うわー生意気。しょーがねーな。」
ベルは髑髏のリストバンドの近くに霧のリングを持っていく。
山本も左手に雨と雲のリングを持った。
「じゃー、せーのっ、」
「ほい。」
「そら。」
ベルは髑髏の解毒をし、
山本はリングを転がした。
と、その時。
「わたっ!」
足下の瓦礫に足を滑らせ、山本は前のめりになった。
しかし、
それは計算の内。
「(行くぜ!!時雨蒼燕流攻式三の型---)」
前のめりになった山本の左肩から、
竹刀がケースごとずり落ちる。
それは、縦に回転し山本の右足の所へ。
遣らずの雨---
右足が袋の端を突き出せば、
そこから変形刀が飛び出して、ベルの肩に刺さる。
「いだぁ!!」
「なに!」
マーモンが驚き振り向こうとすれば、そこにはもう刀を構えた山本が。
「動くな。」
「や、やるじゃねーか山本!」
「形勢逆転だな。」
すると…
「やはりタダモノではない連中だ。警戒しておいて良かったよ。」
マーモンがそう言うと同時に、
痛みに苦しむベルの姿も、
刀を突き付けられたマーモンの姿も、
獄寺と山本の視界から消えていった。
そして、新たに現れるのは、ファンタズマを目覚めさせ分身をしたマーモン。
今まで近くにいた髑髏さえも姿を消し、
また新たな位置に現れる。
体育館の、向かいの壁際に。
「ししし♪さーて、残りのリングも頂こーか?」
「なに!?」
「幻覚だったのか!!」
「形勢再逆転♪」
ベルは再び髑髏の頬にナイフを突きつけた。
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「そんな、信じられない!生きていたなんて!!」
バジルの視線の先にいたのは、
「スクアーロ!!」
ディーノは雨戦の時、山本を救う為水槽に部下を忍ばせていた。
しかし、落ちて来たのはスクアーロ。
かろうじて助けたが瀕死の重体だった為、大手術を施した。
「こいつには、何としても聞き出すべき事があるからな。」
チェルベッロにより、スクアーロやディーノも観覧席に入れられた。
「いいぞぉ………その怒りがお前を強くする。」
モニターを見たスクアーロは、独り言のように呟く。
「その怒りこそが、お前の野望を現実にする力だ。その怒りに、俺は憧れついて来た。」
モニターの向こうでは、ザンザスとツナが物凄い勢いでぶつかって行く。
「死にさらせ!!!」
しかし、拳を喰らわせたのはツナ。
「ぐ、ぬおおおお!!!」
その炎に右頬を焼かれても、ザンザスっは怯まず押し返そうとする。
「おおお!!!」
ツナは炎を増強させ、更に強い拳を鳩尾に入れた。
ザンザスの口から大量の血が流れる。
「それが………どうした!!」
ツナの攻撃を受ける度、ザンザスの“怒り”は増していく。
驚いたツナは、すぐにザンザスを距離をとった。
---
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『雨のリング………まだあるかなぁ?』
あたしは校舎B棟に向かう。
もしまだ残ってたら、武を助けてからリング取って逃げよう。
そう決めて、足を踏み入れた。
暗い暗い、B棟へ。
『(武………?)』
柱の裏に、誰かいる。
恐る恐る近付いて覗いてみると…
『恭弥……!!』
「檸檬……」
出来れば会わないでおきたかった人が、
そこにいた。
『た、武は………?』
「もう行ったよ。」
『リングは………?』
「持って行った。」
遅かったんだ…
しょうがないな、超五感使うしかないね。
あたしは方向転換をして、走り出そうとした。
「取りに行く気?」
『………ボスに、言われてるから。』
「そんなフラフラの足で?」
『だっ、大丈夫だもんっ!!』
そう言う恭弥は柱のトコから動こうとしない。
自分だって、結構なダメージ受けてるんじゃん。
『あたし、行かなくちゃ。』
まだ此処にいたい、
そう思わないワケじゃないけど、今は………
『じゃーね。』
「檸檬、待っ………………!!」
『恭弥!?』
不自然な言葉の途切れに、思わず振り向いた。
あり得ない光景。
頭を垂らして、うずくまってる恭弥。
『恭弥っ!!?』
咄嗟に駆け寄って、目の前にしゃがんだ。
と、次の瞬間、
ぐいっ、
『へ?』
ぎゅっ、
『な………!』
恭弥はあたしを引き寄せて、きつく抱きしめた。
『え?ちょっ、恭弥!?///』
「やっぱり甘いよね、檸檬は。」
まさか、
まさか…!
『ひ、人が心配したってのに………!』
「うん、知ってる。」
恭弥の腕がほどける気配はなく、
あたしは何でか真っ赤になる。
『ねぇ…………は…なして………』
「ヤだ。」
恥ずかしい、
恥ずかしいよ。
ドキドキして、止まらない。
ホントにそれだけ?
ツゥーッ…
『あ、あれ?』
何で?
何で今涙が出るの?
どうして溢れて止まらないの?
これは、何の涙なの?
涙に比例するように、高鳴る心臓。
だらりと垂れていたはずのあたしの手は、
恭弥の背中に回ってて。
あたし、何か変だ。
何でこんなに変なの?
“ずっとこのままでいい”
そう思うのはどうして?
「檸檬、」
『なに………?』
「好きだよ。愛してる。」
『恭弥………///』
ほら、
またこんなに
ドキドキしてる。
あたし……………
そっか。
あたし、
恭弥の敵になりなくない。
これからリング取りに行くのもイヤ。
ずっとずっとこのままでいたい。
それくらい、
それくらいあたしは………
恭弥が好き。
大好き。
一番、好き。
抑えきれない。
抑えたくない。
だけどあたしは、
今は…
まだ伝えられない。
伝えちゃいけない。
『い、行かなくちゃ………』
震える声を絞り出して、あたしは恭弥に訴えた。
『これが終わったら………』
これだけ伝えさせて。
『また、一緒にいていい?』
精一杯の笑顔を見せる。
恭弥はしばらく黙ってたけど、腕をゆっくりほどいてくれた。
「無理、しないでね。」
『らじゃ♪』
と言っても、すでにヤバいんだけどね。
分解吸収を発動させ続けたせいか、リバウンドが近付いて来てる。
普段は40分くらいもつんだけど、毒のせいで多分縮まってるだろうし。
それでもあたしは…
『(超五感、俊足!)』
気配を察知しながら、校内を走る。
みんながいるのは…
『(体育館!!)』
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「死ね!!!」
ザンザスの怒りの一撃が、ツナに向かって放たれる。
ツナは零地点突破を使おうとしたが、何かを察して咄嗟に避けた。
「避けた!?」
「あれ程の炎を受けたら、吸収しきれずにツナの方がパンクしちまうからな。」
「そんな!!あの沢田殿の力を凌ぐなんて!!」
彼の怒りは、収まらず。
「かっ消す!!!」
空中にいるツナに向かって、自分も飛び上がる。
それを見たツナは、落ち着きを取り戻すように目を閉じた。
「ツナ!!何をする気だ!?」
ディーノが声を上げた瞬間、ツナの目が開かれる。
同時に、ザンザスも銃を捨ててツナに素手で挑む。
そして…
ガッ!
2人は両手を合わせて、掴み合った。
お互いに歯を食いしばり、睨み合う。
「あの炎を受けて立つ気か!?」
「だがあの体勢では、零地点突破すら………!」
コロネロとバジルが驚き、
「終わりだぁ。」
スクアーロは笑った。
次の瞬間、2人の手が光を放った。
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毒なんかに捕われない。
体調なんかに構ってらんない。
あたしは浮き雲、
どんな形であろうと、
必ず護ってみせるから。