ヴァリアー編
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リスクが体を蝕む前に、
彼が彼を傷つける前に、
大空戦が終わる前に、
貴方の元へ
激戦
「貴様は嵐の爆弾男!邪魔立てするなら消すまでだ。」
「雷雲も出てねーのに消せるのか?あの電気傘の技さえ来なけりゃ、てめーなんぞ怖かねーぞ。」
屋上で向かい合って立つ獄寺とレヴィ。
挑発するような獄寺の口調に、レヴィはニヤリと笑った。
「バカめ、ぬかったな。雨天時にしか出せないような技でヴァリアー幹部になれると思うか!!レヴィ・ボルタは、全天候技だ!!」
『あ………!!』
屋上の上に見えた、レヴィの8本の傘。
何だかイヤな予感がして、あたしは俊足で屋上に向かう。
「だろーな。」
「なに!?」
聞こえて来るのは、隼人の得意そうな声。
「待ってたぜ。てめーの電気傘が、全部開くこの時を!!」
ドシュッ…
ドガガガガガ!!
「ぱ、パラボラが!!」
「てめーと遊んでる暇はねーんだ。果てろ。」
「ぬ、ぬおおお!!」
ドガガガン!!!
『レヴィ……』
あたしが付いた時には、もうレヴィは倒れていた。
そして、隼人がランボちゃんを保護する。
「しっかりしろ、アホ牛。雷のリングは………お前のモンだぜ。」
『レヴィ……!』
あたしがレヴィに駆け寄ると、隼人は吃驚していた。
「檸檬……何でこんなトコに………」
『あぁ、心配しないで。あたしは隼人からリング取ったりしないから。』
「…………………は?」
『ボスに、戦うなって言われてるから。』
「そ、そーかよっ。」
隼人は一言返事をすると、ランボちゃんを抱えて走り出した。
けど、不意に立ち止まり振り向いて。
「おい檸檬!あ、あんま無茶な事すんじゃねーぞ!!」
『え……?』
「勝つのも大事だけどよぉ………檸檬がいなきゃ意味ねーんだからなっ///」
『隼人……』
「それだけだ!」
今度こそ隼人は行ってしまった。
どうか無事であるように、あたしも隼人の背中を見送る。
『あ、レヴィ!』
気を失ってるレヴィが、大怪我をしてないかどうか確かめる。
どうやら、大丈夫みたい。
『良かった……』
あたしがホッと胸を撫で下ろすと、レヴィの小さな声が聞こえた。
「檸檬か………」
『レヴィ、安静にしてて。体全体にダメージいってるから。』
「そう…か………」
レヴィの事だから、ボスを護りたかったんだろうな。
「檸檬、」
『ん?』
「ボスを…………」
『分かってる。出来たら援護するよ♪』
「あぁ……」
レヴィは再び目を閉じた。
あたしは立ち上がる。
『(行かなくちゃ。)』
もう1人の仲間の元へ。
---
------
-----------
その頃、校舎裏。
「俺もお前知ってるよ。エース君だろ?」
「違う、一文字もあってないよ。」
「しし………変な奴…………」
お互いに笑みを浮かべるベルと雲雀。
「でも何だか一気に、楽しくなって来ちゃった♪」
両手を広げると、ナイフがベルを囲むように宙に浮く。
「ナイフが宙に!?」
「あれもナイフとワイヤーの併用か?」
モニターで見るバジルとシャマルは思わず声をあげる。
しかし雲雀はトンファーを構えて、
「ふぅん、曲芸でもするのかい?足怪我してる分のハンデをあげようか。」
と。
「ごケッコー♪だってお前も足ひきずってん………」
白い歯を見せて笑うベルも少し溜めて……
「じゃん♪」
それが、始まりの合図。
雲雀が走り出し、ベルはそちらに体を向ける。
ベルが指を動かすと、ナイフの一部が雲雀に向かって飛んでいく。
「数を撃っても意味ないよ。」
何本かを弾く雲雀。
だが……
カカカカ、
ナイフが壁に刺されば、そこにはワイヤーの罠が仕掛けられる。
ベルの静かな笑みに、雲雀は気付かず走り続ける。
と、
ブシャッ、
次の瞬間、左頬に傷が入った。
「あの切れ方!やはりワイヤー!?」
「あいつ、ベルフェゴールがナイフとワイヤー使いって事、知らねーんじゃねーか?」
やめて……
やめて………
『っ……!』
頭がふらふらする。
解毒が崩れるのも時間の問題みたい………
それでも走る。
貴方の元へ。
壁にナイフが刺さる程、傷は増えて行く。
こいつだけは、潰さなくちゃいけないのに。
僕が動くだけで、どうして傷が付く?
檸檬、
檸檬を縛る原因はこいつだよね?
こいつを潰せば、僕の方に来てくれるよね?
また僕に、
笑いかけてくれるよね?
「檸檬………」
「うわ、何で俺の姫の名前呼んでんの?」
「うるさいよ。檸檬は僕のだから。」
「ししし、お前うぜー♪」
『(いた………!)』
やっと聞こえて来た2人の声。
同時に…
カラン、カラン……
『え……?』
恭弥のトンファーが落ちた音もした。
そんな、
そんなの……
だってあたしは、
恭弥を護る為に………!
『恭弥っ!!』
曲がり角を曲がると、
見たくない光景が見えた。
壁にもたれて座り込んだ恭弥に、
ナイフを持って立っているベル。
「ししし、天才の勝ちー♪つーか俺、負けなし?」
立ち尽くすあたしに、ベルが気付く。
「あれ?檸檬じゃん♪」
『ベル………ダメ………』
「んー?」
『や…めて………』
怖いよ。
失うのが怖い。
だからやめて。
殺さないで。
「檸檬、俺の我が儘はこれで終わりにするからさ♪」
『え?』
「こいつだけは、大嫌いなんだよね。」
だって、
檸檬の頭ん中にいるの、
こいつなんだもん。
王子が姫の事分からないと思った?
こいつと一緒にいる檸檬は、
すごくすごく綺麗なんだ。
だから俺は、そんなこいつが大嫌い。
つまり、やる事は1つ。
「バイバイ♪」
『ダメ………っ!!』
咄嗟に目を瞑った。
動けなかったから。
あたしは、なんて無力なんだろう。
どうして護れないんだろう。
「ふぅん、糸が付いてたんだ。」
『え……?』
恭弥の元気そうな声が聞こえて、恐る恐る目を開く。
ナイフは、見事恭弥に受け止められていた。
「そういう事なら…」
トンファーの先から鎖が出て来る。
先端には、とんがった重りが付いてる。
ヒュンヒュン……
ヒュンヒュン……
恭弥がそれを回すと、大きく風を切る音がした。
「1本残らず撃ち落とせばいいね。」
『な………!』
「やっべ。」
確かに、全部撃ち落とせばワイヤーは仕掛けられないね。
「覚悟はいいかい?」
「っと………パース!!」
ベルは突然「パスいち!」と言って恭弥の攻撃を避けた。
「自分の血ー見て本気になんのも悪くないけど、今は記憶飛ばしてる場合じゃないからさ。」
『ベル……』
「だってこれ、集団戦だぜ?他のリング取り行こっと。」
そう言いながら、ベルは走り出した。
「檸檬、一緒に行くー?」
『あ、うんっ!』
あたしも走り出そうとした、その時。
ガシッ、
『え?』
「何処に行く気?」
恭弥があたしの手を掴んで、引き止めた。
「あー、お前檸檬放せよ。」
『ベル!』
「どしたの?檸檬。」
逃げられないな。
恭弥からは。
『先に、行ってて。』
「檸檬は?」
『決着付けてから行くよ♪』
「…………分かった、早く来んだよ。」
『うん。』
ベルの言葉に頷いて、あたしは恭弥の方に向き直った。
後ろからは、ベルが遠ざかって行く音がした。
しばらくの間、あたしと恭弥は無言で見つめ合っていた。
まるで、時間が止まったみたいだった。
「決着って?」
恭弥が口を開いた。
あたしは恭弥を真直ぐ見つめつつ答える。
『あのね、』
ゆっくり言葉を紡いで。
『あたしは敵だって言ったでしょ?』
「関係ない。」
『ベルが好きだって言ったじゃない。』
「知らない。」
ほら、
何度言ってもダメ。
しょうがないから、ちょっとストレートに。
『突き放してるの、分からない?』
「何でそんな事するの?」
恭弥のバカ。
そんな事聞かないでよ。
答える代わりに、あたしはポケットからハンカチを取り出す。
「檸檬………?」
『血、出し過ぎ。』
恭弥の頬から流れる血を、少し背伸びして拭き取った。
少し吃驚したように、あたしを見る恭弥。
「敵って言ってるクセに。」
『関係ないんでしょ?恭弥にとっては。』
もう、いいや。
開き直り始めた自分がいる。
でも、
ヴァリアーを裏切るワケにはいかない。
『このハンカチあげるから、ちゃんと自分で手当てしてね。』
「する必要ないよ。」
『ダメっ。』
一息置いてから、あたしは少し笑う。
『じゃーね♪』
「檸檬っ………!」
超本気の俊足。
あたしは恭弥の視界から消えた。
『ちょっと………休憩しなくちゃ。』
頭が少しくらくらする。
足下もふらついて来た。
もう…黄色信号って事?
---
------
----------
その頃、中庭では、
「おい、ツナの奴、スピードが落ち始めてるぜ。」
「ちげーな。ザンザスが徐々にスピードを上げてるんだ。」
ザンザスに殴られ、ツナは屋上に叩き落とされる。
「おいおい嘘だろ?もう精一杯か?」
弾を入れ替え狙いを定めるザンザス。
そして…
怒りの暴発!!!
(スコッピオ・ディーラ)
「連射!?」
炎の束が、ツナに襲い掛かった。
「直撃!!」
「沢田殿!!」
黒く焦げ、煙を立たせながら、ツナは落ちて行く。
「実力の差が…これ程とは………」
コロネロが歯を食いしばった。
---
『ツナ………!』
息がだんだん荒くなって来た。
ちょっと苦しい。
そもそも、塩素そのものよりDDTの方が“比較的”無害。
それでも毒に変わりはないんだけど。
だから、あたしの体は自己防衛本能として無意識に分解吸収を解除し始めてる。
そうすると、
また毒があたしを襲う。
その毒が脳に回れば………
考えただけでも少し怖い。
脳による身体制御が出来なくなって、
あたしはお終い。
残りの分解吸収も一気に解除されて、毒が元通り。
休んでる暇なんてない、
そんな事分かってる。
だけど、
分解吸収は本当に神経を使う能力だから、
たまに立ち止まる事が大切。
あたしは屋上のフェンスにもたれかかって、
中庭の戦いを観戦していた。
---
「今の一撃、かなりヤバいぜ。」
「直撃を凌いだだけでもラッキーとしなきゃな。」
「しのいだ?」
バジルが首をかしげる。
同時にザンザスは屋上に着地し、リボーンの言葉の意味に気が付いた。
「…………装備に救われたか。」
ツナはボロボロだったが、何とか起き上がる力は残っていた。
「レオンのオマケのおかげだな。ツナのベストだけ10倍の厚みにしてくれたんだぞ。」
「だが今ので吹き飛んだぞ。しかもまだザンザスは余裕だぜコラ!」
「次のラッキーは………もうねぇぞ。」
コロネロとシャマルさんが焦った顔をする。
あたしがツナの様子を見てると、屋上に降り立っていたボスが呼びかけて来た。
「檸檬、」
『ん……?何?』
「顔色悪ぃぞ。」
『まぁ…ね。』
あたしがリストバンドを見せれば、ボスも気が付いて笑う。
「大空のリングか。」
『うん……』
あたしとボスが話している間に、ツナは立ち上がって構えを作った。
「ツナの奴、あれをぶちまかす気だ。」
「そこで見てろ。リングは取って来る。」
『あり…がと………』
最初に毒が注入されてから、15分が経とうとしていた。
彼が彼を傷つける前に、
大空戦が終わる前に、
貴方の元へ
激戦
「貴様は嵐の爆弾男!邪魔立てするなら消すまでだ。」
「雷雲も出てねーのに消せるのか?あの電気傘の技さえ来なけりゃ、てめーなんぞ怖かねーぞ。」
屋上で向かい合って立つ獄寺とレヴィ。
挑発するような獄寺の口調に、レヴィはニヤリと笑った。
「バカめ、ぬかったな。雨天時にしか出せないような技でヴァリアー幹部になれると思うか!!レヴィ・ボルタは、全天候技だ!!」
『あ………!!』
屋上の上に見えた、レヴィの8本の傘。
何だかイヤな予感がして、あたしは俊足で屋上に向かう。
「だろーな。」
「なに!?」
聞こえて来るのは、隼人の得意そうな声。
「待ってたぜ。てめーの電気傘が、全部開くこの時を!!」
ドシュッ…
ドガガガガガ!!
「ぱ、パラボラが!!」
「てめーと遊んでる暇はねーんだ。果てろ。」
「ぬ、ぬおおお!!」
ドガガガン!!!
『レヴィ……』
あたしが付いた時には、もうレヴィは倒れていた。
そして、隼人がランボちゃんを保護する。
「しっかりしろ、アホ牛。雷のリングは………お前のモンだぜ。」
『レヴィ……!』
あたしがレヴィに駆け寄ると、隼人は吃驚していた。
「檸檬……何でこんなトコに………」
『あぁ、心配しないで。あたしは隼人からリング取ったりしないから。』
「…………………は?」
『ボスに、戦うなって言われてるから。』
「そ、そーかよっ。」
隼人は一言返事をすると、ランボちゃんを抱えて走り出した。
けど、不意に立ち止まり振り向いて。
「おい檸檬!あ、あんま無茶な事すんじゃねーぞ!!」
『え……?』
「勝つのも大事だけどよぉ………檸檬がいなきゃ意味ねーんだからなっ///」
『隼人……』
「それだけだ!」
今度こそ隼人は行ってしまった。
どうか無事であるように、あたしも隼人の背中を見送る。
『あ、レヴィ!』
気を失ってるレヴィが、大怪我をしてないかどうか確かめる。
どうやら、大丈夫みたい。
『良かった……』
あたしがホッと胸を撫で下ろすと、レヴィの小さな声が聞こえた。
「檸檬か………」
『レヴィ、安静にしてて。体全体にダメージいってるから。』
「そう…か………」
レヴィの事だから、ボスを護りたかったんだろうな。
「檸檬、」
『ん?』
「ボスを…………」
『分かってる。出来たら援護するよ♪』
「あぁ……」
レヴィは再び目を閉じた。
あたしは立ち上がる。
『(行かなくちゃ。)』
もう1人の仲間の元へ。
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その頃、校舎裏。
「俺もお前知ってるよ。エース君だろ?」
「違う、一文字もあってないよ。」
「しし………変な奴…………」
お互いに笑みを浮かべるベルと雲雀。
「でも何だか一気に、楽しくなって来ちゃった♪」
両手を広げると、ナイフがベルを囲むように宙に浮く。
「ナイフが宙に!?」
「あれもナイフとワイヤーの併用か?」
モニターで見るバジルとシャマルは思わず声をあげる。
しかし雲雀はトンファーを構えて、
「ふぅん、曲芸でもするのかい?足怪我してる分のハンデをあげようか。」
と。
「ごケッコー♪だってお前も足ひきずってん………」
白い歯を見せて笑うベルも少し溜めて……
「じゃん♪」
それが、始まりの合図。
雲雀が走り出し、ベルはそちらに体を向ける。
ベルが指を動かすと、ナイフの一部が雲雀に向かって飛んでいく。
「数を撃っても意味ないよ。」
何本かを弾く雲雀。
だが……
カカカカ、
ナイフが壁に刺されば、そこにはワイヤーの罠が仕掛けられる。
ベルの静かな笑みに、雲雀は気付かず走り続ける。
と、
ブシャッ、
次の瞬間、左頬に傷が入った。
「あの切れ方!やはりワイヤー!?」
「あいつ、ベルフェゴールがナイフとワイヤー使いって事、知らねーんじゃねーか?」
やめて……
やめて………
『っ……!』
頭がふらふらする。
解毒が崩れるのも時間の問題みたい………
それでも走る。
貴方の元へ。
壁にナイフが刺さる程、傷は増えて行く。
こいつだけは、潰さなくちゃいけないのに。
僕が動くだけで、どうして傷が付く?
檸檬、
檸檬を縛る原因はこいつだよね?
こいつを潰せば、僕の方に来てくれるよね?
また僕に、
笑いかけてくれるよね?
「檸檬………」
「うわ、何で俺の姫の名前呼んでんの?」
「うるさいよ。檸檬は僕のだから。」
「ししし、お前うぜー♪」
『(いた………!)』
やっと聞こえて来た2人の声。
同時に…
カラン、カラン……
『え……?』
恭弥のトンファーが落ちた音もした。
そんな、
そんなの……
だってあたしは、
恭弥を護る為に………!
『恭弥っ!!』
曲がり角を曲がると、
見たくない光景が見えた。
壁にもたれて座り込んだ恭弥に、
ナイフを持って立っているベル。
「ししし、天才の勝ちー♪つーか俺、負けなし?」
立ち尽くすあたしに、ベルが気付く。
「あれ?檸檬じゃん♪」
『ベル………ダメ………』
「んー?」
『や…めて………』
怖いよ。
失うのが怖い。
だからやめて。
殺さないで。
「檸檬、俺の我が儘はこれで終わりにするからさ♪」
『え?』
「こいつだけは、大嫌いなんだよね。」
だって、
檸檬の頭ん中にいるの、
こいつなんだもん。
王子が姫の事分からないと思った?
こいつと一緒にいる檸檬は、
すごくすごく綺麗なんだ。
だから俺は、そんなこいつが大嫌い。
つまり、やる事は1つ。
「バイバイ♪」
『ダメ………っ!!』
咄嗟に目を瞑った。
動けなかったから。
あたしは、なんて無力なんだろう。
どうして護れないんだろう。
「ふぅん、糸が付いてたんだ。」
『え……?』
恭弥の元気そうな声が聞こえて、恐る恐る目を開く。
ナイフは、見事恭弥に受け止められていた。
「そういう事なら…」
トンファーの先から鎖が出て来る。
先端には、とんがった重りが付いてる。
ヒュンヒュン……
ヒュンヒュン……
恭弥がそれを回すと、大きく風を切る音がした。
「1本残らず撃ち落とせばいいね。」
『な………!』
「やっべ。」
確かに、全部撃ち落とせばワイヤーは仕掛けられないね。
「覚悟はいいかい?」
「っと………パース!!」
ベルは突然「パスいち!」と言って恭弥の攻撃を避けた。
「自分の血ー見て本気になんのも悪くないけど、今は記憶飛ばしてる場合じゃないからさ。」
『ベル……』
「だってこれ、集団戦だぜ?他のリング取り行こっと。」
そう言いながら、ベルは走り出した。
「檸檬、一緒に行くー?」
『あ、うんっ!』
あたしも走り出そうとした、その時。
ガシッ、
『え?』
「何処に行く気?」
恭弥があたしの手を掴んで、引き止めた。
「あー、お前檸檬放せよ。」
『ベル!』
「どしたの?檸檬。」
逃げられないな。
恭弥からは。
『先に、行ってて。』
「檸檬は?」
『決着付けてから行くよ♪』
「…………分かった、早く来んだよ。」
『うん。』
ベルの言葉に頷いて、あたしは恭弥の方に向き直った。
後ろからは、ベルが遠ざかって行く音がした。
しばらくの間、あたしと恭弥は無言で見つめ合っていた。
まるで、時間が止まったみたいだった。
「決着って?」
恭弥が口を開いた。
あたしは恭弥を真直ぐ見つめつつ答える。
『あのね、』
ゆっくり言葉を紡いで。
『あたしは敵だって言ったでしょ?』
「関係ない。」
『ベルが好きだって言ったじゃない。』
「知らない。」
ほら、
何度言ってもダメ。
しょうがないから、ちょっとストレートに。
『突き放してるの、分からない?』
「何でそんな事するの?」
恭弥のバカ。
そんな事聞かないでよ。
答える代わりに、あたしはポケットからハンカチを取り出す。
「檸檬………?」
『血、出し過ぎ。』
恭弥の頬から流れる血を、少し背伸びして拭き取った。
少し吃驚したように、あたしを見る恭弥。
「敵って言ってるクセに。」
『関係ないんでしょ?恭弥にとっては。』
もう、いいや。
開き直り始めた自分がいる。
でも、
ヴァリアーを裏切るワケにはいかない。
『このハンカチあげるから、ちゃんと自分で手当てしてね。』
「する必要ないよ。」
『ダメっ。』
一息置いてから、あたしは少し笑う。
『じゃーね♪』
「檸檬っ………!」
超本気の俊足。
あたしは恭弥の視界から消えた。
『ちょっと………休憩しなくちゃ。』
頭が少しくらくらする。
足下もふらついて来た。
もう…黄色信号って事?
---
------
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その頃、中庭では、
「おい、ツナの奴、スピードが落ち始めてるぜ。」
「ちげーな。ザンザスが徐々にスピードを上げてるんだ。」
ザンザスに殴られ、ツナは屋上に叩き落とされる。
「おいおい嘘だろ?もう精一杯か?」
弾を入れ替え狙いを定めるザンザス。
そして…
怒りの暴発!!!
(スコッピオ・ディーラ)
「連射!?」
炎の束が、ツナに襲い掛かった。
「直撃!!」
「沢田殿!!」
黒く焦げ、煙を立たせながら、ツナは落ちて行く。
「実力の差が…これ程とは………」
コロネロが歯を食いしばった。
---
『ツナ………!』
息がだんだん荒くなって来た。
ちょっと苦しい。
そもそも、塩素そのものよりDDTの方が“比較的”無害。
それでも毒に変わりはないんだけど。
だから、あたしの体は自己防衛本能として無意識に分解吸収を解除し始めてる。
そうすると、
また毒があたしを襲う。
その毒が脳に回れば………
考えただけでも少し怖い。
脳による身体制御が出来なくなって、
あたしはお終い。
残りの分解吸収も一気に解除されて、毒が元通り。
休んでる暇なんてない、
そんな事分かってる。
だけど、
分解吸収は本当に神経を使う能力だから、
たまに立ち止まる事が大切。
あたしは屋上のフェンスにもたれかかって、
中庭の戦いを観戦していた。
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「今の一撃、かなりヤバいぜ。」
「直撃を凌いだだけでもラッキーとしなきゃな。」
「しのいだ?」
バジルが首をかしげる。
同時にザンザスは屋上に着地し、リボーンの言葉の意味に気が付いた。
「…………装備に救われたか。」
ツナはボロボロだったが、何とか起き上がる力は残っていた。
「レオンのオマケのおかげだな。ツナのベストだけ10倍の厚みにしてくれたんだぞ。」
「だが今ので吹き飛んだぞ。しかもまだザンザスは余裕だぜコラ!」
「次のラッキーは………もうねぇぞ。」
コロネロとシャマルさんが焦った顔をする。
あたしがツナの様子を見てると、屋上に降り立っていたボスが呼びかけて来た。
「檸檬、」
『ん……?何?』
「顔色悪ぃぞ。」
『まぁ…ね。』
あたしがリストバンドを見せれば、ボスも気が付いて笑う。
「大空のリングか。」
『うん……』
あたしとボスが話している間に、ツナは立ち上がって構えを作った。
「ツナの奴、あれをぶちまかす気だ。」
「そこで見てろ。リングは取って来る。」
『あり…がと………』
最初に毒が注入されてから、15分が経とうとしていた。