ヴァリアー編
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教えて欲しいの。
彼女って、
愛してるって、
恋って、
何?
招集
ホテルの部屋の窓から、外を見てみる。
ベッドの上に、縮こまって座って。
ベルは今、髪の毛整えに洗面所に行ってる。
『今日で、決まるんだ……。』
まだちょっと怖い。
昨日、いつもみたいに一緒に寝ようとしたら、ベルが
「俺はソファでいいよ。」
って言った。
一緒の部屋で寝るんだから、変わらないよって言ったけど、
結局ベルはソファで寝てた。
マーモンがいないから?
「お待たせー♪」
物思いに耽ってると、ベルの声が後ろから聞こえてきた。
寝癖直し、終わったんだ。
何だか動く気がしなくて、あたしはそのままベッドに座っていた。
「檸檬?」
ベルに顔を覗き込まれる。
ベッドが少しだけ沈む。
『ベル……』
あたしは、思い切って口を開いた。
ずっとずっと、考えていた事を口にする為に。
『あたしなんかを、彼女にしない方がいいよ………』
「へ……?」
あたしの目線は下に向けたままだったから、
ベルの表情は分からなかった。
.「檸檬…何言ってんの?」
『だって…』
ずっとずっと考えてたの。
『ベルは………あたしの事……その…一番に想ってくれてるのに………あたしっ…………』
あたしは、
全然考えてなくて、
想われる分だけ想うのは当たり前。
なのに…
なのにあたしは……
『想われてばっかりなのは、ダメだよね?でも…でもあたしは……』
分からない。
特別な想いには、
特別な想いを返すべきだと思う。
だけど、
特別な想い方をあたしは知らないんだ。
だから……
『人の想いにも気が付かないで、想いをもらってばっかなの。だから……あたし最低なのっ………!!』
自己嫌悪に浸り過ぎ?
そうかも知れない。
だけど、一理あると思わない?
『ベル………』
震える声でベルを呼ぶと、ベルはあたしを抱き寄せた。
「あのね檸檬、俺も言いたい事言っていい?」
『うん……』
「もし檸檬が、俺を特別な一番にしてくれたらね、俺は他の奴らも大切にするつもり。」
『え?』
ベルは、あたしの頭を撫でながら続ける。
「だってさ、俺が大事にしてる檸檬の大切な人は、護らなきゃいけないじゃん?」
そう…なのかな……?
「それで檸檬が笑ってくれたら、俺も嬉しいし。」
そっか……
「けどね、今はまだみーんな敵。誰に檸檬が取られちゃうか、わかんねーもん。」
『え……?///』
あたしが顔を上げると、ベルは腕を少し緩めた。
「自己中だと思う?」
笑みと共に投げかけられる問いに、ゆっくりと頷く。
するとベルは、ししっと笑って。
「だよね。けど、人を愛するなんて、そんなもんだよ。」
自己中?
“愛してる”が?
あんなに、
あんなにあったかい“愛してる”って言葉が、
自己中なの?
「自己中に誰かを一番特別な存在にして、自己中に想いぶつけてさ。」
ホントに?
「だから檸檬も、自己中に選んでいーんだよ♪」
ホントに?
「ま、その相手になれるように、俺は頭を悩ませてんだけど。」
そう言ってベルは、また笑った。
いつもみたいに。
「だから檸檬、自分が最低だなんて言わないで。」
『でも……』
「檸檬は俺のお姫さまだよ?最低なワケねーじゃん♪」
またぎゅっと抱き締められて、優しく頭を撫でられる。
『ベル………』
「んー?」
『…………ありがと。///』
「しししっ♪」
小さい声でお礼を言うと、
ベルはやっぱりいつもみたいに笑った。
“愛してる”って、
確かに自己中。
相手の事を考えないで、勝手に好きになるから。
だけど、
あたしは知ってる。
それがどんなにあったかいモノなのかを。
「さっ、腕の包帯換えよ。」
『え?あ、自分で出来るよっ。』
昨日のモスカの暴走で、あたしは両腕を火傷した。
寝る前に、ベルに手当てしてもらったのだった。
「ダーメ、王子がやるの。」
『で、でもっ…』
「じゃぁ檸檬、後で俺の包帯やって♪交換条件っ!」
『え?う、うん、それならいーよ。』
包帯を巻き終わったあたしとベルは、地下室に案内される。
そこにいたのは、ルッスーリアとマーモンだった。
---
------
-----------
その夜、中山外科病院。
ベッドですやすや眠っているランボの側にいるのは、ツナとリボーン。
「昼に一度意識を取り戻して、相当ウザかったらしいぞ。まだ安静が必要だけどな。」
「良かった、ランボ………」
ランボの回復を聞いたツナは、ホッとする。
そして、恐る恐る9代目の事を尋ねた。
「ここにはいねーぞ。最後の望みを託してディーノが設備のいい所へ運んだ。予断を許さねぇ状況だ。」
黙り込むツナにリボーンは言う。
「お前に新兵器が出来てるぞ。」
「新兵器?」
連れてかれた先には、1つのスーツケース。
「バトル用のマフィアスーツだ。」
それは、レオンの体内で作られた糸で織ったモノだった。
死ぬ気の炎でも簡単に燃えないらしい。
「見ろ。そいつを作ってレオンはすっかりやつれちまった。」
「あ、ありがとな、レオン。」
そっとレオンを撫でるツナ。
レオンもツナの指をぺろ、となめた。
「おまけの機能も付けてくれたぞ。」
「おまけ………?」
それが何かは謎のまま。
「そいつに着替えたら行くぞ。リング争奪戦最後の戦いに。」
「うん………」
大空のハーフリングを見つめ、ツナは力強く頷いた。
---
------
-----------
何処かの廃屋。
「じゃあ骸さんは知ってたんらな。ボンゴレ9代目があの中にいるって。」
「多分。」
中にいるのは、黒曜3人組。
「で、骸様からは?」
「全く反応がないの。」
「何だそれ!骸さんと連絡取れないんじゃ、お前益々いる意味ねーびょん!」
「ごめん………」
「許すかバーカ!」
犬に一言謝り、髑髏は鞄を用意する。
「私、行くね。」
「並中?」
「うん………招集されてるの。」
---
------
-----------
同じ頃、とあるT字路。
「よっ、」
「うす。」
それぞれの方向から歩いて来たのは、
獄寺、山本、了平。
彼らはしばらく黙っていたが、
「行くか。」
「あぁ…」
覚悟を決めたように歩き出す。
と、そこに、
「みなさん!」
バジルが走って来た。
「ツナ達と来るんじゃなかったのか?」
「イタリアにいる仲間と交信してて………」
「どうだった?」
「ダメです………」
バジルがディーノに聞いた話では、家光はまだイタリアを出る事が出来ない状態。
そして、ディーノ自身も今回は手が出せないのだ。
つまり、自分達だけが唯一の戦力。
しかも、揺りかごが起きる前、ボンゴレの上層部の殆どがザンザスをボスにしたがっていたと言う。
それ程ザンザスのボスとしての資質は、圧倒的だったのだ。
そして、ザンザス以外の4人のボス候補の中には、資質に恵まれた3人がいた。
ツナ以外である。
それを聞いた獄寺、山本、了平は、納得したように相槌を打つ。
「うむ。」
「なるほどな。」
「ま、なかあねぇ話だろーな。」
「え……?」
「いいか、新入り。」
疑問符を浮かべるバジルに、獄寺は自信たっぷりに言う。
「10代目ってお人は凄すぎて、分かる奴にしかわかんねーのさ。」
すると山本が、
「どっちかっつーとアイツの凄さって、分かりやす過ぎて見過ごしちまうんじゃね?」
と。
更に了平が、
「というかそもそも沢田は凄いのか分からん時がある。だが、そこが奴の並だが並ではないところだ!」
と。
そして言い合いになった。
「てめーらこんがらがる事言うんじゃねぇ!!」
「つまりどーゆー事だ?」
「うーむ、よく分からなくなったぞ!!」
そんな光景を見て、バジルは思う。
彼らはずっと前から、ツナの非凡な平凡さに気付いているのだ、と。
と、その時。
ガッ、
「何だ!?」
「並中の方向だ!」
“眩しい”だけでは言い表せないような光が、中庭の方向に見えた。
3人がそこへ行くと…
中庭は白い煙に覆われて、まったく視界がきかない状況になっていた。
「熱い!!」
「何だ!?」
そして、煙が消えると同時に見えて来たのは、ザンザス。
楽しそうな笑みを浮かべて、中庭の中心に立っていた。
「向こうも体調はいいみてーだな。」
聞こえて来たのはリボーンの声。
それに反応し、3人が振り向いた先には、ツナの姿。
しっかりと相手を見据えて。
「ザンザス…………」
「来たか、カス………」
そこに飛び出して来たのは、チェルベッロ。
「お待ちしておりました。」
地面に降り立つと共に、確認をし始める。
「これで沢田氏側の守護者は、嵐、晴、雨………そして霧の守護者が揃いました。」
“霧”という言葉に反応して、全員がチェルベッロの視線を辿る。
「髑髏…………!」
「残りは、雲と雷ですね。」
「え?残りって……」
ツナが聞き返すと同時に、革靴の音が聞こえて来る。
「用件は何?」
「雲雀さん!!」
いつもの学ランではなくベストを着用した雲雀が、歩いて来た。
どうやら、守護者は必ず来るように呼ばれたらしい。
「命ある守護者全員に、強制招集を発動しました。」
「強制招集………?」
疑問符を浮かべるツナに、リボーンが言う。
「奴もいるぞ。」
その視線の先には……
レヴィの持つ籠に入ったマーモン。
「マーモン!!」
そして、
『ちょっ……ベル!///』
「ししし♪いーじゃん、仲良しって事で♪」
後ろからベルに抱きつかれてる檸檬。
「(檸檬………)」
ツナ達の視線が痛い。
でも、あたしはヴァリアー側の守護者だから、しょうがないんだよね?
了平さんがルッスーリアを見て、喜びに似た声を上げていた。
「生きていたのか!」
そして、
「沢田氏側の雷の守護者も来たようですね。」
「ランボ!!」
呼吸器がつけられたままだ。
まだ安静が必要なはずなのに。
『(可哀想……)』
「何でランボまで!?意識取り戻したばっかりなんだぞ!!」
「強制招集をかけたのは、他でもありません。」
抗議するツナに、チェルベッロが言い放つ。
「大空戦では、6つのリングと守護者の命を賭けて頂くからです。」
.---
------
----------
『ルッスーリア!マーモン!』
数時間前。
あたしとベルは地下室に閉じ込められていた2人に再会した。
ルッスーリアはホントに酷い怪我で、モスカに撃たれた事を思い出した。
「致命傷は免れてたの。檸檬のおかげよ?」
『良かった…本当に良かったぁ……』
マーモンは、雲戦が終わった夜に掴まったらしい。
『大丈夫?元気?』
「うん。平気だよ。」
あとは、
アロちゃんだけ。
『何処にいるんだろうね、アロちゃん………』
「檸檬…………」
泣きそうになるあたしを、ベルがなだめた。
「檸檬はホントに優しいお姫さまだね。」
『だ、だって……』
「スクアーロ、生きてるかもしんないじゃん♪」
『ベルはそう思う?』
「半分くらい。」
『そっかぁ………』
不思議。
何となくそんな気がしてきたよ。
折角みんな生きてたんだもん、
無事だったんだもん、
また、
みんな揃って笑い合いたいよ。
---
------
------------
『ベル、』
「ん?」
『決まるんだよね。』
「そーだよ♪」
不安を隠せないあたしの手を、ベルは優しく握る。
あたしはその手を握り返して、呟いた。
『もう、迷わないよ。』
あたしが選んだ道、
それは、
みんなが傷付かない道。
負けても構わない。
勝っても構わない。
だから、
どうかみんなが死なないように、と。
金色の月があたし達を照らす。
さまざまな決意を胸に秘めた、あたし達を。
彼女って、
愛してるって、
恋って、
何?
招集
ホテルの部屋の窓から、外を見てみる。
ベッドの上に、縮こまって座って。
ベルは今、髪の毛整えに洗面所に行ってる。
『今日で、決まるんだ……。』
まだちょっと怖い。
昨日、いつもみたいに一緒に寝ようとしたら、ベルが
「俺はソファでいいよ。」
って言った。
一緒の部屋で寝るんだから、変わらないよって言ったけど、
結局ベルはソファで寝てた。
マーモンがいないから?
「お待たせー♪」
物思いに耽ってると、ベルの声が後ろから聞こえてきた。
寝癖直し、終わったんだ。
何だか動く気がしなくて、あたしはそのままベッドに座っていた。
「檸檬?」
ベルに顔を覗き込まれる。
ベッドが少しだけ沈む。
『ベル……』
あたしは、思い切って口を開いた。
ずっとずっと、考えていた事を口にする為に。
『あたしなんかを、彼女にしない方がいいよ………』
「へ……?」
あたしの目線は下に向けたままだったから、
ベルの表情は分からなかった。
.「檸檬…何言ってんの?」
『だって…』
ずっとずっと考えてたの。
『ベルは………あたしの事……その…一番に想ってくれてるのに………あたしっ…………』
あたしは、
全然考えてなくて、
想われる分だけ想うのは当たり前。
なのに…
なのにあたしは……
『想われてばっかりなのは、ダメだよね?でも…でもあたしは……』
分からない。
特別な想いには、
特別な想いを返すべきだと思う。
だけど、
特別な想い方をあたしは知らないんだ。
だから……
『人の想いにも気が付かないで、想いをもらってばっかなの。だから……あたし最低なのっ………!!』
自己嫌悪に浸り過ぎ?
そうかも知れない。
だけど、一理あると思わない?
『ベル………』
震える声でベルを呼ぶと、ベルはあたしを抱き寄せた。
「あのね檸檬、俺も言いたい事言っていい?」
『うん……』
「もし檸檬が、俺を特別な一番にしてくれたらね、俺は他の奴らも大切にするつもり。」
『え?』
ベルは、あたしの頭を撫でながら続ける。
「だってさ、俺が大事にしてる檸檬の大切な人は、護らなきゃいけないじゃん?」
そう…なのかな……?
「それで檸檬が笑ってくれたら、俺も嬉しいし。」
そっか……
「けどね、今はまだみーんな敵。誰に檸檬が取られちゃうか、わかんねーもん。」
『え……?///』
あたしが顔を上げると、ベルは腕を少し緩めた。
「自己中だと思う?」
笑みと共に投げかけられる問いに、ゆっくりと頷く。
するとベルは、ししっと笑って。
「だよね。けど、人を愛するなんて、そんなもんだよ。」
自己中?
“愛してる”が?
あんなに、
あんなにあったかい“愛してる”って言葉が、
自己中なの?
「自己中に誰かを一番特別な存在にして、自己中に想いぶつけてさ。」
ホントに?
「だから檸檬も、自己中に選んでいーんだよ♪」
ホントに?
「ま、その相手になれるように、俺は頭を悩ませてんだけど。」
そう言ってベルは、また笑った。
いつもみたいに。
「だから檸檬、自分が最低だなんて言わないで。」
『でも……』
「檸檬は俺のお姫さまだよ?最低なワケねーじゃん♪」
またぎゅっと抱き締められて、優しく頭を撫でられる。
『ベル………』
「んー?」
『…………ありがと。///』
「しししっ♪」
小さい声でお礼を言うと、
ベルはやっぱりいつもみたいに笑った。
“愛してる”って、
確かに自己中。
相手の事を考えないで、勝手に好きになるから。
だけど、
あたしは知ってる。
それがどんなにあったかいモノなのかを。
「さっ、腕の包帯換えよ。」
『え?あ、自分で出来るよっ。』
昨日のモスカの暴走で、あたしは両腕を火傷した。
寝る前に、ベルに手当てしてもらったのだった。
「ダーメ、王子がやるの。」
『で、でもっ…』
「じゃぁ檸檬、後で俺の包帯やって♪交換条件っ!」
『え?う、うん、それならいーよ。』
包帯を巻き終わったあたしとベルは、地下室に案内される。
そこにいたのは、ルッスーリアとマーモンだった。
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その夜、中山外科病院。
ベッドですやすや眠っているランボの側にいるのは、ツナとリボーン。
「昼に一度意識を取り戻して、相当ウザかったらしいぞ。まだ安静が必要だけどな。」
「良かった、ランボ………」
ランボの回復を聞いたツナは、ホッとする。
そして、恐る恐る9代目の事を尋ねた。
「ここにはいねーぞ。最後の望みを託してディーノが設備のいい所へ運んだ。予断を許さねぇ状況だ。」
黙り込むツナにリボーンは言う。
「お前に新兵器が出来てるぞ。」
「新兵器?」
連れてかれた先には、1つのスーツケース。
「バトル用のマフィアスーツだ。」
それは、レオンの体内で作られた糸で織ったモノだった。
死ぬ気の炎でも簡単に燃えないらしい。
「見ろ。そいつを作ってレオンはすっかりやつれちまった。」
「あ、ありがとな、レオン。」
そっとレオンを撫でるツナ。
レオンもツナの指をぺろ、となめた。
「おまけの機能も付けてくれたぞ。」
「おまけ………?」
それが何かは謎のまま。
「そいつに着替えたら行くぞ。リング争奪戦最後の戦いに。」
「うん………」
大空のハーフリングを見つめ、ツナは力強く頷いた。
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-----------
何処かの廃屋。
「じゃあ骸さんは知ってたんらな。ボンゴレ9代目があの中にいるって。」
「多分。」
中にいるのは、黒曜3人組。
「で、骸様からは?」
「全く反応がないの。」
「何だそれ!骸さんと連絡取れないんじゃ、お前益々いる意味ねーびょん!」
「ごめん………」
「許すかバーカ!」
犬に一言謝り、髑髏は鞄を用意する。
「私、行くね。」
「並中?」
「うん………招集されてるの。」
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同じ頃、とあるT字路。
「よっ、」
「うす。」
それぞれの方向から歩いて来たのは、
獄寺、山本、了平。
彼らはしばらく黙っていたが、
「行くか。」
「あぁ…」
覚悟を決めたように歩き出す。
と、そこに、
「みなさん!」
バジルが走って来た。
「ツナ達と来るんじゃなかったのか?」
「イタリアにいる仲間と交信してて………」
「どうだった?」
「ダメです………」
バジルがディーノに聞いた話では、家光はまだイタリアを出る事が出来ない状態。
そして、ディーノ自身も今回は手が出せないのだ。
つまり、自分達だけが唯一の戦力。
しかも、揺りかごが起きる前、ボンゴレの上層部の殆どがザンザスをボスにしたがっていたと言う。
それ程ザンザスのボスとしての資質は、圧倒的だったのだ。
そして、ザンザス以外の4人のボス候補の中には、資質に恵まれた3人がいた。
ツナ以外である。
それを聞いた獄寺、山本、了平は、納得したように相槌を打つ。
「うむ。」
「なるほどな。」
「ま、なかあねぇ話だろーな。」
「え……?」
「いいか、新入り。」
疑問符を浮かべるバジルに、獄寺は自信たっぷりに言う。
「10代目ってお人は凄すぎて、分かる奴にしかわかんねーのさ。」
すると山本が、
「どっちかっつーとアイツの凄さって、分かりやす過ぎて見過ごしちまうんじゃね?」
と。
更に了平が、
「というかそもそも沢田は凄いのか分からん時がある。だが、そこが奴の並だが並ではないところだ!」
と。
そして言い合いになった。
「てめーらこんがらがる事言うんじゃねぇ!!」
「つまりどーゆー事だ?」
「うーむ、よく分からなくなったぞ!!」
そんな光景を見て、バジルは思う。
彼らはずっと前から、ツナの非凡な平凡さに気付いているのだ、と。
と、その時。
ガッ、
「何だ!?」
「並中の方向だ!」
“眩しい”だけでは言い表せないような光が、中庭の方向に見えた。
3人がそこへ行くと…
中庭は白い煙に覆われて、まったく視界がきかない状況になっていた。
「熱い!!」
「何だ!?」
そして、煙が消えると同時に見えて来たのは、ザンザス。
楽しそうな笑みを浮かべて、中庭の中心に立っていた。
「向こうも体調はいいみてーだな。」
聞こえて来たのはリボーンの声。
それに反応し、3人が振り向いた先には、ツナの姿。
しっかりと相手を見据えて。
「ザンザス…………」
「来たか、カス………」
そこに飛び出して来たのは、チェルベッロ。
「お待ちしておりました。」
地面に降り立つと共に、確認をし始める。
「これで沢田氏側の守護者は、嵐、晴、雨………そして霧の守護者が揃いました。」
“霧”という言葉に反応して、全員がチェルベッロの視線を辿る。
「髑髏…………!」
「残りは、雲と雷ですね。」
「え?残りって……」
ツナが聞き返すと同時に、革靴の音が聞こえて来る。
「用件は何?」
「雲雀さん!!」
いつもの学ランではなくベストを着用した雲雀が、歩いて来た。
どうやら、守護者は必ず来るように呼ばれたらしい。
「命ある守護者全員に、強制招集を発動しました。」
「強制招集………?」
疑問符を浮かべるツナに、リボーンが言う。
「奴もいるぞ。」
その視線の先には……
レヴィの持つ籠に入ったマーモン。
「マーモン!!」
そして、
『ちょっ……ベル!///』
「ししし♪いーじゃん、仲良しって事で♪」
後ろからベルに抱きつかれてる檸檬。
「(檸檬………)」
ツナ達の視線が痛い。
でも、あたしはヴァリアー側の守護者だから、しょうがないんだよね?
了平さんがルッスーリアを見て、喜びに似た声を上げていた。
「生きていたのか!」
そして、
「沢田氏側の雷の守護者も来たようですね。」
「ランボ!!」
呼吸器がつけられたままだ。
まだ安静が必要なはずなのに。
『(可哀想……)』
「何でランボまで!?意識取り戻したばっかりなんだぞ!!」
「強制招集をかけたのは、他でもありません。」
抗議するツナに、チェルベッロが言い放つ。
「大空戦では、6つのリングと守護者の命を賭けて頂くからです。」
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『ルッスーリア!マーモン!』
数時間前。
あたしとベルは地下室に閉じ込められていた2人に再会した。
ルッスーリアはホントに酷い怪我で、モスカに撃たれた事を思い出した。
「致命傷は免れてたの。檸檬のおかげよ?」
『良かった…本当に良かったぁ……』
マーモンは、雲戦が終わった夜に掴まったらしい。
『大丈夫?元気?』
「うん。平気だよ。」
あとは、
アロちゃんだけ。
『何処にいるんだろうね、アロちゃん………』
「檸檬…………」
泣きそうになるあたしを、ベルがなだめた。
「檸檬はホントに優しいお姫さまだね。」
『だ、だって……』
「スクアーロ、生きてるかもしんないじゃん♪」
『ベルはそう思う?』
「半分くらい。」
『そっかぁ………』
不思議。
何となくそんな気がしてきたよ。
折角みんな生きてたんだもん、
無事だったんだもん、
また、
みんな揃って笑い合いたいよ。
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『ベル、』
「ん?」
『決まるんだよね。』
「そーだよ♪」
不安を隠せないあたしの手を、ベルは優しく握る。
あたしはその手を握り返して、呟いた。
『もう、迷わないよ。』
あたしが選んだ道、
それは、
みんなが傷付かない道。
負けても構わない。
勝っても構わない。
だから、
どうかみんなが死なないように、と。
金色の月があたし達を照らす。
さまざまな決意を胸に秘めた、あたし達を。