ヴァリアー編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
傷つける事で、
助けてくれた。
それはきっと、
不器用な優しさ。
ツナの決意
「よく言ったぞ、ツナ。」
あたしとボスの間に立つツナは、強い瞳をボスに向けていた。
するとボスは、
「ボンゴレの歴史に刻んでやる。ザンザスに楯突いたチビが1人いた、とな。」
それに反応したのは…
「1人じゃないぜ!」
『(隼人……)』
隼人だけじゃない。
みんなみんな、武器を構えてた。
「10代目の意志は、」
「俺達の意志だ!!」
それに、
群れるの嫌いな恭弥まで。
「個人的に。」
だって。
でも、言われて黙ってるヴァリアーじゃない。
「来るか、ガキ共!!」
レヴィがパラボラに手をかけ、
「いいねぇ♪」
ベルはすらっとナイフを用意する。
最後にボスが、
「反逆者どもを根絶やせ。」
と。
『ちょっ………こんなトコで!!』
「お待ち下さい!」
あたしとほぼ同時に、チェルベッロが口を開いた。
「9代目の弔い合戦は、我々が仕切ります。」
「なに!?」
「我々には、ボンゴレリングの行方を見届ける義務があります。」
「何言ってやがる!ザンザスの犬が!!」
怒鳴る隼人にチェルベッロが見せたのは、死炎印の押された巻物。
「口を慎んで下さい。我々は9代目の勅命を受けてます。」
「我々の認証なくしては、リングの移動は認められません。」
すると今度は、バジルが叫んだ。
「よくも抜け抜けと!その死炎印は、9代目に無理矢理押させたものだな!」
『そんな……』
信じたくなくて、
ボスの方を見たけど、
その口角は上がっていて。
『そんなぁ……』
また視界がぼやけて来た。
「我々は、勝利者が次期ボンゴレボスとなるこの戦いを、大空のリング戦と位置付けます。」
チェルベッロが言う。
「即ち、今まで行って来た争奪戦の最終戦です。いかがでしょうか?ザンザス様。」
「悪くねぇ。」
「それでは明晩、並中に皆さんお集り下さい。」
明日の夜…
ホントに全てが決まる……
「あーらら、モドキに執行猶予あげちゃったよ。」
「なに!?」
「てんめー!!」
ベルの言葉に挑発される了平さんと隼人を、リボーンがなだめる。
「ツナは修業で力を使い果たしてたんだ。グッドニュースだぞ。」
『ツナ……』
あたしは座り込んだまま、ツナの顔を見上げた。
そしたらツナは、真剣な表情で。
「心配ないよ、檸檬。」
ほんの少し、笑った。
「フッ、明日が喜劇の最終章だ。」
ボスはにやりと笑って大空のハーフリングを弾く。
「せいぜいあがけ。」
ツナがそれをキャッチした途端、ボスの手が光り出す。
コォォォ……
カッ!
眩しくて、目を瞑るあたし達。
だけど…
ぐいっ、
『えっ!??』
「檸檬!?」
引っ張られる感触に、思わず声を上げる。
それにツナが反応して、あたしの手を握った。
『ツナ……』
「檸檬、何処に……!」
眩しくて何も見えない。
だけど、地面に足が付いてない。
そんな中聞こえたのは、ボスの声。
「俺の雲の守護者だ。連れてって何が悪ぃ。」
『ボス………!』
直後に離れるツナの手。
あたしはボスに抱きかかえられ、そのまま並中から離れていった。
そうだ。
もう、戻れないんだ。
あの時、
雲のハーフリングを受け取ってしまったから。
ボス、
まだ信じられないよ。
どうしてあんな事したのか。
どうしてあんな事言ったのか。
あたしは黙ったまま、ボスに抱えられてホテルに戻った。
---
------
-----------
再び暗くなった並中のグラウンド。
「消えた………あの女達もだ!」
「檸檬もいねぇぜ!?」
了平と山本が言う。
そしてバジルがグラウンドの真ん中へと駆け出す。
「きゅっ、9代目!!」
その時、
「遅かったか!!」
獄寺達の後ろから現れたのは、ディーノだった。
「お前ら!!9代目と怪我人を!!」
グラウンドからはまだ、黒い煙が立ち上っている。
9代目は担架で運ばれ、残りの地雷は1つ1つ取り除かれていった。
そんな中、ディーノはリボーンに言う。
「門外顧問のチームから連絡を受けた。まさか、こんな事が………お前、大丈夫か?」
「俺達の受けたダメージは、あまりにもでかい。」
リボーンは、ハットの下に瞳を隠したまま。
「でもな………」
一方では、
「大丈夫かよ雲雀!」
「珍しく大人しくしてたじゃねーか。」
山本と獄寺が、足を引きずる雲雀に言う。
「この状況があの草食動物の強さを引き出しているのなら、まだ手は出せないよ。」
雲雀の言葉に、3人も黙り込んだ。
グラウンドの真ん中。
立っているのは小さく弱いと言われた、ボス候補。
「(檸檬………)」
頭から離れない。
---『ツナ………!』
どうして俺は、手を放してしまったんだろう。
ザンザスの言葉に、納得してしまったんだろうか。
---「俺の雲の守護者だ。」
そんなの、イヤなのに。
「帰るぞ。」
「ぎゃ!」
ツナの背中に突如訪れる衝撃。
それは、リボーンの飛び蹴りよるモノ。
「明日の勝負までにしっかり充電しねーとな。」
「何でいちいち蹴るんだ!!」
「なんかムシャクシャしたんだ。」
「どんな理由だ!!」
その光景を見て、ディーノは思う。
まだ、希望はついえていないのだ、と。
---
------
-----------
ホテルのあたしの部屋の前に着くと、ボスはあたしを下ろした。
そして、無言のまま去って行く。
『ま、待ってボス!!』
思い切って引き止めると、ボスはそのまま立ち止まった。
あたしは、泣きそうになりながら言葉を絞り出す。
『あの…負けちゃって、ごめんなさいっ………』
突然だったけど、
ボスがあたしを雲の守護者に選んでくれた。
なのに、
負けるなんて…
「檸檬が手ぇ抜いてねぇ事なんざ、分かってる。」
『ボス……』
「だが、」
振り向かないまま、
言葉だけ。
「全力を出してなかったのも知ってる。」
『………っ!』
体に、
心に、
衝撃が走る。
『ごめんなさい………』
あたしもやっぱり、
“罰”を受けるべきなんだよね?
ルッスーリアや、
アロちゃんや、
マーモンみたいに。
あたし、最低だから。
ここでボスの攻撃受けても、構わないから。
『あたしっ………!』
「檸檬への咎めは、もう終わった。」
『え………?』
沈黙が流れる。
この階はヴァリアーが貸し切ってるんだ、
そんな事を考えた。
そして、開かれるボスの口。
「あれだけ泣けば、もういいだろ。」
あまりに唐突すぎて、
初めはよく分からなかった。
もしかして、
---「檸檬の親だって、そうだったろ?」
あの言葉は………
「雲戦の事は、もういい。檸檬の償いは、涙だけで十分だ。」
『ボス………』
「だから、もう泣くな。」
まだ、ボスは背中を向けたまま。
大きくて広い背中。
「あとは明日の勝利を願って、腕の火傷治せ。」
いつも厳しくて威厳があって、
何考えてるか分からないのに、
どうして、
どうしてこんなに優しいんだろう。
もう泣くなって言われたのに、
涙が溢れて止まらない。
『ごめ…なさい………あり…がと………』
再び声を絞り出すと、ボスはそのまま歩き出した。
あたしはその場にぺたりと座り込んだ。
「檸檬、」
不意に呼ばれて振り返る。
『ベル………』
「部屋、入ろ。」
『……………うん。』
溢れる涙を拭って、ベルの手をとった。
---
------
------------
翌朝、沢田家。
「何で今日に限って学校行くんだよ。」
玄関で靴を履きながら、リボーンに問いかけるツナ。
「昨日まで休ませてたクセに。」
「中学生が中学行くのは当然だぞ。」
「ちぇ。よくゆーよ。」
言い合いながら家を出るツナとリボーンを、
奈々、フゥ太、ビアンキ、イーピンが見送る。
「いってらっしゃーい!」
「いってきまーす。」
その後ろ姿に、家光の面影を感じる奈々。
だが、それはすぐにフゥ太やビアンキに否定されてしまうのだった。
学校に着いたツナは、校舎の破損を心配する。
しかし、行ってみた先には修復された校舎。
「幻覚だぞ。」
リボーン曰く、チェルベッロの術師が幻覚で表面をコーティングしてるそうだ。
「それで………」
そこに、
「おっ!ダメダメのダメツナじゃん!」
同学年の生徒が2人、やって来る。
リボーンはすぐに姿を消した。
「お前、1週間もズル休みしてんじゃねーよ。」
「俺ら過酷な中学生ライフを過ごしてるってのに。」
「ラクな人生でいいなー、お前。」
好き勝手に言う2人に、ツナは言った。
「ゴメン、ちょっと先に行くね。」
走っていくツナを見て、彼らは言う。
「何だあれ?」
「少しも成長しねーな。」
---
------
-----------
青い空が見える。
白い雲が映える。
屋上に1人で俺は立っていた。
フェンスを握りしめて、昨日の事を考える。
9代目は…
あの時俺に、
何かを伝えようとしていた……
それに………
「檸檬……」
---『やめてぇっ!!!』
もっと早く、止めれば良かった。
俺は今まで何回も檸檬に助けられてるのに、
檸檬を助けられないんだ。
「おはよう、ツナ君!」
急に声をかけられて、振り返る。
「京子ちゃん!おはよう。」
「リボーン君が此処にいるって。」
「あいつが?」
珍しくて、
何かちょっと笑えた。
すると京子ちゃんは、
「本当だ、リボーン君の言ってた通り。」
「?」
「ツナ君の顔、新幹線みたい!」
「ええ!?シンカンセン!!?」
リボーンの奴、何言ってんだよ………
でも、京子ちゃんは笑ってた。
いつもみたいに、無邪気に。
それが嬉しくて、俺もつられるように笑う。
「これ、ツナ君に。」
そう言って京子ちゃんが取り出したのは、
「お守り?」
魚のマークと“安全必勝”の文字。
「えー!?これ俺に!?」
「うん。」
京子ちゃんはニコニコ顔で言う。
「最近夜の相撲大会で怪我人多いでしょ?だから安全祈願!と、必勝祈願も!」
そっか、
まだ相撲大会だと思ってたんだ………
でも……
「ありがとう!」
お守りを握りしめながら。
「俺、次の戦い……負けるワケにはいかないから。」
その言葉に、京子が赤面したのにツナは気が付かずに。
「えと、あ、そーだ!」
京子は再びポケットを漁る。
「獄寺君や山本君の分もあるんだよ。」
「(俺だけじゃないのねー!!?)」
「それにこれ、みんなで作ったの。」
「みんな………?」
その時、屋上のドアが開く。
「ツナさーん!!」
「ハル!!?」
並盛の制服に身を包んだハルが、2人の前に現れる。
続いてビアンキ、フゥ太、イーピンも。
「見つかったらどーすんだよ!」
「そん時はそん時よ。」
「何言ってんの!困るって!」
大騒ぎするツナ達。
壁の後ろにリボーンがいるとも知らずに。
「忘れんなよ、ツナ。」
みんなの声を聞きながら、リボーンは呟く。
「お前は此処に帰って来るんだ、檸檬と一緒にな。」
その言葉は、青く澄んだ空に吸い込まれていった。
助けてくれた。
それはきっと、
不器用な優しさ。
ツナの決意
「よく言ったぞ、ツナ。」
あたしとボスの間に立つツナは、強い瞳をボスに向けていた。
するとボスは、
「ボンゴレの歴史に刻んでやる。ザンザスに楯突いたチビが1人いた、とな。」
それに反応したのは…
「1人じゃないぜ!」
『(隼人……)』
隼人だけじゃない。
みんなみんな、武器を構えてた。
「10代目の意志は、」
「俺達の意志だ!!」
それに、
群れるの嫌いな恭弥まで。
「個人的に。」
だって。
でも、言われて黙ってるヴァリアーじゃない。
「来るか、ガキ共!!」
レヴィがパラボラに手をかけ、
「いいねぇ♪」
ベルはすらっとナイフを用意する。
最後にボスが、
「反逆者どもを根絶やせ。」
と。
『ちょっ………こんなトコで!!』
「お待ち下さい!」
あたしとほぼ同時に、チェルベッロが口を開いた。
「9代目の弔い合戦は、我々が仕切ります。」
「なに!?」
「我々には、ボンゴレリングの行方を見届ける義務があります。」
「何言ってやがる!ザンザスの犬が!!」
怒鳴る隼人にチェルベッロが見せたのは、死炎印の押された巻物。
「口を慎んで下さい。我々は9代目の勅命を受けてます。」
「我々の認証なくしては、リングの移動は認められません。」
すると今度は、バジルが叫んだ。
「よくも抜け抜けと!その死炎印は、9代目に無理矢理押させたものだな!」
『そんな……』
信じたくなくて、
ボスの方を見たけど、
その口角は上がっていて。
『そんなぁ……』
また視界がぼやけて来た。
「我々は、勝利者が次期ボンゴレボスとなるこの戦いを、大空のリング戦と位置付けます。」
チェルベッロが言う。
「即ち、今まで行って来た争奪戦の最終戦です。いかがでしょうか?ザンザス様。」
「悪くねぇ。」
「それでは明晩、並中に皆さんお集り下さい。」
明日の夜…
ホントに全てが決まる……
「あーらら、モドキに執行猶予あげちゃったよ。」
「なに!?」
「てんめー!!」
ベルの言葉に挑発される了平さんと隼人を、リボーンがなだめる。
「ツナは修業で力を使い果たしてたんだ。グッドニュースだぞ。」
『ツナ……』
あたしは座り込んだまま、ツナの顔を見上げた。
そしたらツナは、真剣な表情で。
「心配ないよ、檸檬。」
ほんの少し、笑った。
「フッ、明日が喜劇の最終章だ。」
ボスはにやりと笑って大空のハーフリングを弾く。
「せいぜいあがけ。」
ツナがそれをキャッチした途端、ボスの手が光り出す。
コォォォ……
カッ!
眩しくて、目を瞑るあたし達。
だけど…
ぐいっ、
『えっ!??』
「檸檬!?」
引っ張られる感触に、思わず声を上げる。
それにツナが反応して、あたしの手を握った。
『ツナ……』
「檸檬、何処に……!」
眩しくて何も見えない。
だけど、地面に足が付いてない。
そんな中聞こえたのは、ボスの声。
「俺の雲の守護者だ。連れてって何が悪ぃ。」
『ボス………!』
直後に離れるツナの手。
あたしはボスに抱きかかえられ、そのまま並中から離れていった。
そうだ。
もう、戻れないんだ。
あの時、
雲のハーフリングを受け取ってしまったから。
ボス、
まだ信じられないよ。
どうしてあんな事したのか。
どうしてあんな事言ったのか。
あたしは黙ったまま、ボスに抱えられてホテルに戻った。
---
------
-----------
再び暗くなった並中のグラウンド。
「消えた………あの女達もだ!」
「檸檬もいねぇぜ!?」
了平と山本が言う。
そしてバジルがグラウンドの真ん中へと駆け出す。
「きゅっ、9代目!!」
その時、
「遅かったか!!」
獄寺達の後ろから現れたのは、ディーノだった。
「お前ら!!9代目と怪我人を!!」
グラウンドからはまだ、黒い煙が立ち上っている。
9代目は担架で運ばれ、残りの地雷は1つ1つ取り除かれていった。
そんな中、ディーノはリボーンに言う。
「門外顧問のチームから連絡を受けた。まさか、こんな事が………お前、大丈夫か?」
「俺達の受けたダメージは、あまりにもでかい。」
リボーンは、ハットの下に瞳を隠したまま。
「でもな………」
一方では、
「大丈夫かよ雲雀!」
「珍しく大人しくしてたじゃねーか。」
山本と獄寺が、足を引きずる雲雀に言う。
「この状況があの草食動物の強さを引き出しているのなら、まだ手は出せないよ。」
雲雀の言葉に、3人も黙り込んだ。
グラウンドの真ん中。
立っているのは小さく弱いと言われた、ボス候補。
「(檸檬………)」
頭から離れない。
---『ツナ………!』
どうして俺は、手を放してしまったんだろう。
ザンザスの言葉に、納得してしまったんだろうか。
---「俺の雲の守護者だ。」
そんなの、イヤなのに。
「帰るぞ。」
「ぎゃ!」
ツナの背中に突如訪れる衝撃。
それは、リボーンの飛び蹴りよるモノ。
「明日の勝負までにしっかり充電しねーとな。」
「何でいちいち蹴るんだ!!」
「なんかムシャクシャしたんだ。」
「どんな理由だ!!」
その光景を見て、ディーノは思う。
まだ、希望はついえていないのだ、と。
---
------
-----------
ホテルのあたしの部屋の前に着くと、ボスはあたしを下ろした。
そして、無言のまま去って行く。
『ま、待ってボス!!』
思い切って引き止めると、ボスはそのまま立ち止まった。
あたしは、泣きそうになりながら言葉を絞り出す。
『あの…負けちゃって、ごめんなさいっ………』
突然だったけど、
ボスがあたしを雲の守護者に選んでくれた。
なのに、
負けるなんて…
「檸檬が手ぇ抜いてねぇ事なんざ、分かってる。」
『ボス……』
「だが、」
振り向かないまま、
言葉だけ。
「全力を出してなかったのも知ってる。」
『………っ!』
体に、
心に、
衝撃が走る。
『ごめんなさい………』
あたしもやっぱり、
“罰”を受けるべきなんだよね?
ルッスーリアや、
アロちゃんや、
マーモンみたいに。
あたし、最低だから。
ここでボスの攻撃受けても、構わないから。
『あたしっ………!』
「檸檬への咎めは、もう終わった。」
『え………?』
沈黙が流れる。
この階はヴァリアーが貸し切ってるんだ、
そんな事を考えた。
そして、開かれるボスの口。
「あれだけ泣けば、もういいだろ。」
あまりに唐突すぎて、
初めはよく分からなかった。
もしかして、
---「檸檬の親だって、そうだったろ?」
あの言葉は………
「雲戦の事は、もういい。檸檬の償いは、涙だけで十分だ。」
『ボス………』
「だから、もう泣くな。」
まだ、ボスは背中を向けたまま。
大きくて広い背中。
「あとは明日の勝利を願って、腕の火傷治せ。」
いつも厳しくて威厳があって、
何考えてるか分からないのに、
どうして、
どうしてこんなに優しいんだろう。
もう泣くなって言われたのに、
涙が溢れて止まらない。
『ごめ…なさい………あり…がと………』
再び声を絞り出すと、ボスはそのまま歩き出した。
あたしはその場にぺたりと座り込んだ。
「檸檬、」
不意に呼ばれて振り返る。
『ベル………』
「部屋、入ろ。」
『……………うん。』
溢れる涙を拭って、ベルの手をとった。
---
------
------------
翌朝、沢田家。
「何で今日に限って学校行くんだよ。」
玄関で靴を履きながら、リボーンに問いかけるツナ。
「昨日まで休ませてたクセに。」
「中学生が中学行くのは当然だぞ。」
「ちぇ。よくゆーよ。」
言い合いながら家を出るツナとリボーンを、
奈々、フゥ太、ビアンキ、イーピンが見送る。
「いってらっしゃーい!」
「いってきまーす。」
その後ろ姿に、家光の面影を感じる奈々。
だが、それはすぐにフゥ太やビアンキに否定されてしまうのだった。
学校に着いたツナは、校舎の破損を心配する。
しかし、行ってみた先には修復された校舎。
「幻覚だぞ。」
リボーン曰く、チェルベッロの術師が幻覚で表面をコーティングしてるそうだ。
「それで………」
そこに、
「おっ!ダメダメのダメツナじゃん!」
同学年の生徒が2人、やって来る。
リボーンはすぐに姿を消した。
「お前、1週間もズル休みしてんじゃねーよ。」
「俺ら過酷な中学生ライフを過ごしてるってのに。」
「ラクな人生でいいなー、お前。」
好き勝手に言う2人に、ツナは言った。
「ゴメン、ちょっと先に行くね。」
走っていくツナを見て、彼らは言う。
「何だあれ?」
「少しも成長しねーな。」
---
------
-----------
青い空が見える。
白い雲が映える。
屋上に1人で俺は立っていた。
フェンスを握りしめて、昨日の事を考える。
9代目は…
あの時俺に、
何かを伝えようとしていた……
それに………
「檸檬……」
---『やめてぇっ!!!』
もっと早く、止めれば良かった。
俺は今まで何回も檸檬に助けられてるのに、
檸檬を助けられないんだ。
「おはよう、ツナ君!」
急に声をかけられて、振り返る。
「京子ちゃん!おはよう。」
「リボーン君が此処にいるって。」
「あいつが?」
珍しくて、
何かちょっと笑えた。
すると京子ちゃんは、
「本当だ、リボーン君の言ってた通り。」
「?」
「ツナ君の顔、新幹線みたい!」
「ええ!?シンカンセン!!?」
リボーンの奴、何言ってんだよ………
でも、京子ちゃんは笑ってた。
いつもみたいに、無邪気に。
それが嬉しくて、俺もつられるように笑う。
「これ、ツナ君に。」
そう言って京子ちゃんが取り出したのは、
「お守り?」
魚のマークと“安全必勝”の文字。
「えー!?これ俺に!?」
「うん。」
京子ちゃんはニコニコ顔で言う。
「最近夜の相撲大会で怪我人多いでしょ?だから安全祈願!と、必勝祈願も!」
そっか、
まだ相撲大会だと思ってたんだ………
でも……
「ありがとう!」
お守りを握りしめながら。
「俺、次の戦い……負けるワケにはいかないから。」
その言葉に、京子が赤面したのにツナは気が付かずに。
「えと、あ、そーだ!」
京子は再びポケットを漁る。
「獄寺君や山本君の分もあるんだよ。」
「(俺だけじゃないのねー!!?)」
「それにこれ、みんなで作ったの。」
「みんな………?」
その時、屋上のドアが開く。
「ツナさーん!!」
「ハル!!?」
並盛の制服に身を包んだハルが、2人の前に現れる。
続いてビアンキ、フゥ太、イーピンも。
「見つかったらどーすんだよ!」
「そん時はそん時よ。」
「何言ってんの!困るって!」
大騒ぎするツナ達。
壁の後ろにリボーンがいるとも知らずに。
「忘れんなよ、ツナ。」
みんなの声を聞きながら、リボーンは呟く。
「お前は此処に帰って来るんだ、檸檬と一緒にな。」
その言葉は、青く澄んだ空に吸い込まれていった。